JP4691985B2 - 樹脂成形体、樹脂組成物及びそれを用いた塗料、並びに樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

樹脂成形体、樹脂組成物及びそれを用いた塗料、並びに樹脂成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、バインダ樹脂とシリカとを含有する樹脂成形体、樹脂組成物及びそれを用いた塗料、並びに樹脂成形体の製造方法に関し、特に、シリカが有する吸放出性能を顕著に発揮することが可能な樹脂成形体、樹脂組成物及びそれを用いた塗料、並びに樹脂成形体の製造方法に関する。
従来、建築物から電化製品まで、さまざまなものを構成する材料として、樹脂組成物が用いられている。ここで樹脂組成物とは、バインダ樹脂と何らかの材料とを混合したものであり、バインダ樹脂の種類のみならず混合させた材料によっても、多様な機能を発揮することができる。
このようにバインダ樹脂と混合させる材料として、しばしばシリカが用いられる。シリカは多様な機能を有する物質であり、樹脂組成物に含有される有力な材料として、広く用いられている(特許文献1)。
特許第3398830号公報
シリカはその微細な細孔構造に起因する様々な機能を有しており、例えばその細孔内に種々の物質を吸着させることができる。しかし、従来用いられてきた、バインダ樹脂にシリカを混合した樹脂組成物では、バインダ樹脂がシリカの細孔を塞いだり埋めたりしてしまうため、シリカが有する吸放出性能などの細孔の機能を十分に発揮していないという課題があった。なお、ここでいう吸放出性能とは、シリカがその細孔内に物質を吸着する吸着性能、吸着した物質を放出する放出性能など、シリカの物質を吸着させる性質にともない発現する様々な性能のことをいう。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、吸放出性能を従来よりも向上させた樹脂成形体及び樹脂組成物を提供すると共に、その樹脂組成物を用いた塗料、並びにその樹脂成形体の製造方法を提案することを目的とする。
即ち、本発明の要旨は、少なくともバインダ樹脂とシリカとからなる樹脂成形体であって、該シリカの細孔容積の63%以上が、該樹脂成形体の外部に開放されており、該シリカが、下記(a)〜(f)の条件を満たすことを特徴とする、樹脂成形体に存する(請求項1)。
a)該シリカの細孔容積が、0.3ml/g以上3.0ml/g以下。
(b)該シリカの比表面積が、100m2/g以上1000m2/g以下。
(c)該シリカの最頻細孔直径が、2nm以上50nm以下。
(d)該シリカの平均粒径が2μmを超え、最頻細孔直径(D max )の値の±20%の範囲にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の50%以上。
(e)該シリカの固体Si−NMR測定における、−OSiが3個結合したSi(Q )と−OSiが4個結合したSi(Q )とのモル比を示すQ /Q の値が1.4以上。
(f)該シリカがシリコンアルコキサイドを加水分解し、水熱処理して得られたものである。
また、該樹脂成形体は、基材を更に備えると共に、該基材の少なくとも一部に、該シリカが該バインダ樹脂によって固着されていることが好ましい(請求項)。
さらに、該基材は、少なくとも繊維からなることが好ましい(請求項
また、バインダ樹脂のガラス転移温度は、−80℃以上110℃以下であることが好ましい(請求項)。
またさらに、該樹脂成形体が、該バインダ樹脂、該シリカ、及び溶剤を混合し、該溶剤を除去して得られるものであり、該バインダ樹脂が、該溶剤中でコロイドとなり、エマルジョンを形成するものであることが好ましい(請求項5)。
本発明によれば、吸放出性能に優れた樹脂成形体、樹脂組成物及びそれを用いた塗料、並びに樹脂成形体の製造方法を提供することができる。また、これらの樹脂成形体は吸湿性、放湿性、調湿性、吸着発熱性(特に吸湿発熱性)、担持した薬剤の徐放性、消臭性等の吸着性の少なくともいずれかを発揮することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
[I]本発明の樹脂成形体:
本発明の樹脂成形体(以下、適宜「本発明の成形体」と略称する)は、少なくともバインダ樹脂とシリカとからなる樹脂成形体であって、シリカの細孔容積の30%以上が、本発明の成形体の外部に開放されていることを特徴とする。
なお、ここでシリカの細孔容積が本発明の成形体の外部に開放されているとは、シリカの細孔内と本発明の成形体の外部とが連通していることをいう。細孔が成形体の外部に開放されることにより、本発明の成形体は、吸湿性、放湿性、調湿性、吸着発熱性(特に吸湿発熱性)、薬剤徐放性、吸着性、消臭性、抗菌性などの、シリカが物質を吸着させる性質に伴い発現する様々な吸放出性能を、従来よりも効果的に発揮することができるのである。
[1]シリカ:
本発明の成形体に含まれるシリカに制限は無く、任意のシリカが使用可能であるが、その細孔を成形体の外部に確実に開放する観点から、下記のシリカ(以下適宜、「本発明のシリカ」という)を用いること好ましい。また、本発明においてシリカは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、本発明において「シリカ」とは含水ケイ酸のことを指す。さらに、含水ケイ酸のみで形成された純粋なシリカだけでなく、シリカに金属、有機物等のその他の成分が含有及び/又は担持されたものも、シリカとして扱う。含水ケイ酸は、SiO2・nH2Oの示性式で表される(ただし、nは正の数である)。本発明では、シリカの中でもいわゆる「シリカゲル」やミセルテンプレート型シリカ等に於いて、その効果が顕著である。また、シリカは、多数の細孔を有する多孔質体であることが広く知られている。
[1−1]本発明のシリカの構成:
本発明のシリカは、少なくとも以下の条件(a)〜(c)を満たすシリカである。
(a)シリカの細孔容積が、0.3ml/g以上3.0ml/g以下。
(b)シリカの比表面積が、100m2/g以上1000m2/g以下。
(c)シリカの最頻細孔直径が、2nm以上50nm以下。
・条件(a)
本発明のシリカは、窒素ガス吸・脱着法で測定した細孔容積の値が、通常0.3ml/g以上、中でも好ましくは0.4ml/g以上、より好ましくは0.6ml/g以上、さらに好ましくは0.8ml/g以上であり、また、通常3.0ml/g以下、中でも好ましくは2.5ml/g以下、より好ましくは2.0ml/g以下、さらに好ましくは1.6ml/g以下である。これにより本発明の成形体は高い吸放出性能を発揮することができる。なお、細孔容積は、吸着等温線の相対圧0.98における窒素ガスの吸着量から求めることができる。
・条件(b)
また、本発明のシリカは、その細孔の比表面積の値が、通常100m2/g以上、好ましくは200m2/g以上、より好ましくは300m2/g以上、さらに好ましくは350m2/g以上、特に好ましくは400m2/g以上であり、通常1000m2/g以下、好ましくは900m2/g以下、より好ましくは800m2/g以下、さらに好ましくは700m2/g以下である。比表面積の値は、窒素ガス吸脱着によるBET法で測定される。
上記のように、本発明のシリカが大きな比表面積を有しているために、本発明の成形体において、細孔内に吸着する吸着物質とシリカとの相互作用面積を大きくすることができる。よって、シリカの細孔の表面状態を変えることで物質との相互作用を大きく調整することが可能となる。
・条件(c)
更に、本発明のシリカは、窒素ガス吸脱着法で測定した等温脱着曲線から、E. P. Barrett, L. G. Joyner, P. H. Haklenda, J. Amer. Chem. Soc., vol. 73, 373 (1951)に記載のBJH法により算出される細孔分布曲線、即ち、細孔直径d(nm)に対して微分窒素ガス吸着量(ΔV/Δ(logd);Vは窒素ガス吸着容積)をプロットした図上での最頻細孔直径(Dmax)が、通常2nm以上、また、通常50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは17nm以下、特に好ましくは15nm以下である。最頻細孔直径(Dmax)が上記範囲よりも小さいと、シリカ中の空間が小さくなるため、吸放出性能が低下する虞があり、また、上記範囲よりも大きいと、シリカの強度が弱くなり、シリカの細孔構造が経時的に壊れたりバインダ樹脂が細孔内に浸入したりしやすくなるため、吸放出性能が低下する虞がある。なお、本発明のシリカは、用途に応じて様々な最頻細孔直径(Dmax)を有するものを使い分けできるようにすることが望ましい。
また、本発明のシリカは、後述するように製造時に水熱処理するが、この水熱処理の温度条件を調整することにより、細孔直径を任意に調整する事ができる。本発明の成形体が発揮する吸放出性能の中には、この細孔直径に応じてその性能を発揮するものがあるため、細孔直径は用途に応じて適宜設定することが望ましい。例えば、吸放出性能の中でも調湿性においては、シリカにより調整される湿度は一般に、その細孔直径に応じたものとなる。
本発明のシリカは、上記の条件(a)〜(c)を満たしていれば他に制限は無いが、通常、上記の条件(a)〜(c)に加えて以下の条件を満たしていることが望ましい。
・条件(d)
本発明のシリカは、上記の最頻細孔直径(Dmax)の値の±20%の範囲にある細孔の総容積が、例えば平均粒径が2μm以下のシリカについては全細孔容積の通常20%以上、好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上であることが望ましい。また、例えば平均粒径が2μmを超えるシリカにおいては、最頻細孔直径(Dmax)の値の±20%の範囲にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の通常50%以上、好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上であることが望ましい。このことは、本発明のシリカが有する細孔の直径が、最頻細孔直径(Dmax)付近の細孔で揃っていること、つまり細孔径(細孔直径)の分布が極めて狭い(シャープである)ことを意味する。なお、この比の値の上限は特に制限されないが、通常は90%以下である。シリカに部分的にもろい部分が生じると、その部分の細孔構造が壊れやすい。しかし、上記のように細孔径の分布が小さければ、本発明のシリカの構造は均一なものとなり、したがって、シリカの強度にバラツキが生じ難くなり、部分的にもろい部分が生じることを防止することができる。このため、本発明の成形体全体が安定して高い耐久性を発揮することができる。さらに、特定の樹脂サイズを有するバインダ樹脂が細孔に浸入することを精度よく制御することが可能となる。また、シリカの細孔径の分布がシャープだと、調湿性、吸湿発熱性、徐放性などにおいて機能が高まるため、これを含む本発明の成形体も高い調湿性、吸湿発熱性、徐放性を発揮することが可能になる。
・条件(e)
かかる特徴に関連して、本発明のシリカは、上記のBJH法により算出された最頻細孔直径(Dmax)における微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が、通常2ml/g以上、中でも好ましくは3ml/g以上、より好ましくは5ml/g以上であることが望ましく、通常40ml/g以下、中でも好ましくは30ml/g以下、より好ましくは25ml/g以下、さらに好ましくは20ml/g以下、特に好ましくは12ml/g以下であることが望ましい{なお、上式において、dは細孔直径(nm)であり、Vは窒素ガス吸着容積である}。微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が前記範囲に含まれるものは、最頻細孔直径(Dmax)の付近に揃っている細孔の絶対量が極めて多いものと言える。
・条件(f)
また、本発明のシリカは、以上の細孔構造の特徴に加えて、その三次元構造を見るに、非晶質であること、即ち、結晶性構造が認められないことが好ましい。このことは、本発明のシリカをX線回折で分析した場合に、結晶性ピークが実質的に認められないことを意味する。なお、本明細書において非晶質でないシリカとは、X線回折パターンで0.6ナノメートル(nm Units d−spacing)を越えた位置に、少なくとも一つの結晶構造のピーク(結晶性ピーク)を示すものを指す。このようなシリカの例としては有機テンプレートを用いて細孔を形成するミセルテンプレートシリカが挙げられる。非晶質のシリカは、結晶性のシリカに較べて、極めて生産性に優れている。
・条件(g)
更に、本発明のシリカの構造に関しては、固体Si−NMR測定による分析でも特徴ある結果が得られる。
シリカは非晶質ケイ酸の水和物であり、SiO2・nH2Oの示性式で表されるが、構造的には、Siの四面体の各頂点にOが結合され、これらのOに更にSiが結合して、ネット状に広がった構造を有する。そして、Si−O−Si−O−の繰り返し単位において、Oの一部が他の成員(例えば−H、−CH3など)で置換されているものもあり、一つのSiに注目した場合、下記式(A)に示す様に4個の−OSiを有するSi(Q4)や、下記式(B)に示す様に3個の−OSiを有するSi(Q3)等が存在する〔下記式(A)及び(B)では、上記の四面体構造を無視し、Si−Oのネット構造を平面的に表わしている〕。そして、固体Si−NMR測定において、上記の各Siに基づくピークは、順にQ4ピーク、Q3ピーク、・・と呼ばれる。
Figure 0004691985
本発明のシリカにおいては、固体Si−NMR測定における、−OSiが3個結合したSi(Q3)と−OSiが4個結合したSi(Q4)とのモル比を示すQ4/Q3の値が、通常1.2以上、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.4以上、さらに好ましくは1.5以上である。なお、上限値は特に制限されないが、通常は10以下である。
一般に、この値が高い程、シリカの熱安定性が高いことが知られており、ここから本発明のシリカは、熱安定性に極めて優れていることが判る。つまり、本発明のシリカは熱によって構造が壊れる虞が小さいので、本発明の成形体は長期間にわたって安定して使用することが可能である。これに対して、結晶性のミセルテンプレートシリカの中には、Q4/Q3の値が1.2を下回るものがあり、熱安定性、特に水熱安定性などが低い。
なお、Q4/Q3及び、後述するQ4ピークのケミカルシフトの値は、固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(ピーク位置の決定)は、例えば、ガウス関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
・条件(h)
また、本発明のシリカは、水中での加熱処理(耐水熱試験)を施されても、細孔特性の変化が少ないことが、その特徴の一つとして挙げられる。耐水熱試験後におけるシリカの細孔特性の変化は、例えば比表面積、細孔容積、細孔径分布などの多孔性に関する物性の変化として観察される。例えば、本発明のシリカにおいては、200℃、6時間の耐水熱試験をした際、該試験後の比表面積が該試験前の比表面積に対して20%以上(比表面積残存率が20%以上)であることが好ましい。この様な特性を有する本発明のシリカは、長時間の厳しい使用条件下においても、多孔性の特徴が失われないので好ましい。また、この比表面積の残存率は、中でも35%以上、特に50%以上であることが好ましい。
そして、本発明のシリカは、この耐水熱処理試験後においても、細孔径分布がシャープであるという特性の劣化が極めて少なく、且つ、細孔容積の変化が極めて少ないか、或いは、細孔容積が増加するという、従来のシリカにはない特徴を有する。
なお、本発明に於ける耐水熱試験とは、密閉系内に於いて、特定温度(200℃)の水とシリカとを一定時間(6時間)接触させることであり、シリカの全てが水中に存在するのであれば、密閉系内が全て水で満たされていても、また、系内の一部が加圧下の気相部を有し、この気相部に水蒸気があってもよい。この場合の気相部の圧力は、例えば60000hPa以上、好ましくは63000hPa以上であればよい。なお、特定温度の誤差は通常±5℃以内、中でも±3℃以内、特に±1℃以内とするのが好ましい。
・条件(i)
さらに、本発明のシリカは、その粒子径が通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、また、通常300μm以下、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下である。粒子径がこの範囲内になることにより、本発明のシリカを塗料や成形体に用いる場合に、シリカを均一に分散させることが容易になる。特に基材として繊維を使用する場合には、素材(基材+樹脂成形体)の風合いと洗濯耐久性等の観点から、シリカの粒子径を通常0.1μm以上、中でも0.2μm以上、また、通常5μm以下、中でも2μm以下の範囲とすることが好ましい。
・条件(j)
加えて、本発明のシリカは、骨格を形成するシロキサン結合の結合角に歪みが少ないことが望ましい。ここで、シリカの構造的な歪みは、固体Si−NMR測定におけるQ4ピークのケミカルシフトの値によって表わすことができる。
上記の、シリカの構造的な歪みと、前記のQ4ピークのケミカルシフトの値との関連の点から、本発明のシリカは、上記のQ4ピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合に、δが下記式(1)
−0.0705×(Dmax)−110.36>δ ・・・式(1)
を満足する〔即ち、δの値が上記式(1)の左辺で表わされる値{−0.0705×(Dmax)−110.36}よりも小さい(よりマイナス側に存在する)〕ことが望ましい。なお、本明細書において「ppm」とは、重量に対する割合を表わすものである。
従来のシリカでは、上記のQ4ピークのケミカルシフトの値δは、上記式(I)の左辺
に基づいて計算した値よりも、一般に大きくなる(よりプラス側に存在する)。よって、本発明のシリカは、従来のシリカに比べて、Q4ピークのケミカルシフトがより小さな値を有することになる。これは、本発明のシリカにおいて、Q4ピークのケミカルシフトがより高磁場に存在するということに他ならず、ひいては、Siに対して2個の−OSiで表される結合角がより均質であり、構造的な歪みがより少ないことを意味している。
本発明のシリカにおいて、Q4ピークのケミカルシフトδは、上記式(1)の左辺(−0.0705×(Dmax)−110.36)に基づき算出される値よりも、好ましくは0.05%以上小さい値であり、更に好ましくは0.1%以上、特に好ましくは0.15%以上小さい値である。通常、シリカゲルのQ4ピークの最小値は、−113ppmである。
本発明のシリカは、優れた耐熱性や耐水性等を有しており、また、物性変化しにくい。したがって、高温・高湿度下でも長期間調湿機能が持続される。このような点と、上記の様な構造的歪みとの関係については、必ずしも明らかではないが、次の様に推定される。すなわち、シリカは大きさの異なる球状粒子の集合体で構成されているが、上記の様な構造的に歪みの少ない状態においては、球状粒子全体のミクロ構造的な高度の均質性が維持されるので、その結果、優れた耐熱性や耐水性等が発現されるものと考えられる。なお、Q3以下のピークは、Si−Oのネット構造の広がりに制限があるため、シリカの構造的な歪みが現れにくい。
また、本発明のシリカは、耐久性、耐熱性、耐水性等を向上させるため、シリカの骨格を構成するケイ素を除いた金属元素(金属不純物)の合計の含有率が、通常500ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下と、非常に低く抑えられ、極めて高純度であってもよい。このように不純物の影響が少なければ、耐久性、耐熱性、耐水性などの優れた性質を発現できる。また、金属不純物が少ないことにより、本発明のシリカを含む本発明の成形体において、バインダ樹脂と金属不純物とが接触することによる光劣化、熱劣化、経時劣化などを抑制することができるので、本発明の成形体は長期にわたって安定して使用することが可能となる。
ただし、後述するように、本発明のシリカは、その用途等に応じて、特定の原子や原子団などの他の成分を意図的に含有させることにより、有利な機能を獲得することができる場合もある。したがって、本発明のシリカにシリカ以外の成分を含有させるか否かは、その用途等に応じて選択するべきである。
また、本発明のシリカは、前記のようにシリカの他の成分を有していても良い。本発明のシリカが有していても良いその他の成分について特に制限は無く、各種の助剤、有用な元素(以下適宜、「有用異元素」という)の単体及び/又は化合物、有機基(以下適宜、「有用有機基」)など、任意の成分を含有及び/又は担持していてもよい。
なお、前記のその他の成分は、本発明の成形体(並びに、後述する本発明の樹脂組成物及び本発明の塗料)に、その目的とする機能を失わない状態で含有させることができれば、どのような状態で、製造過程のどの工程で含有させても良い。例えば、シリカに含有及び/又は担持させる以外に、適宜、バインダ樹脂中に含有させて用いても良く、塗料などに用いる溶剤中に含有させても良い。また、後述する塗料を調製中又は調製後、その塗料中に含有させて用いても良く、樹脂成形体を作製中又は作製後、その樹脂成形体に含有させて用いても良い。また、前記のようにシリカに含有及び/又は担持させて用いる場合、シリカに含有/又は担持させる方法に制限は無いが、例えば、助剤をシリカの製造中または製造後に含有・担持する方法と、樹脂成形体製造後に成形体中のシリカに担持する方法とがある。また、後述する添加剤も、あらかじめシリカに担持して用いても構わない。さらに、これら助剤や添加剤は素材(樹脂成形体+基材)を作製した後に、最後に含浸などの操作によって含有させても良い。さらに、助剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
その他の成分の具体例を挙げれば、本発明のシリカには、その吸湿発熱性をさらに向上させる目的で、助剤として発熱助剤を担持させてもよい。なお、発熱助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
発熱助剤としては、吸湿発熱性を有する任意の物質を用いることができるが、例えば、特公平7−59762号公報、特開平9−158040号公報、特開2002−212880号公報、特開2000−129574号公報などに記載された吸湿発熱性を有する高分子化合物(以下適宜、「吸湿発熱性ポリマー」という)を用いることができる。ここで例示した各特許公報について説明すると、特公平7−59762号公報には吸湿発熱性を有する繊維製品等が記載されている。また、特開平9−158040号公報にはアクリル繊維を改質して高吸湿性を持たせた、吸湿発熱性を有する素材等が記載されている。また、特開2002−212880号公報には、繊維表面に吸湿発熱性ポリマーをコーティングする技術が記載されている。さらに、特開2000−129574号公報には、吸湿発熱性ポリマーの微粒子を繊維表面に付着させる技術が記載されている。
本発明のシリカに吸湿発熱性ポリマー等の発熱助剤を担持させた場合、本発明のシリカは大きい比表面積を有しているために、従来の吸湿発熱性を有する製品に比べて表面に担持された発熱助剤の比表面積が格段に大きくなり、従来よりも大きな吸湿発熱性を発揮することが可能となる。
吸湿発熱ポリマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等のビニルカルボン酸;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS−Na)、2−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等のビニルスルホン酸などの吸水性モノマーが重合した高分子化合物や、デンプン、セルロースなどの多糖が挙げられる。また、これら吸水性モノマーの中では、アクリル酸、メタクリル酸、AMPS、スチレンスルホン酸ナトリウムが好ましい。なお、上記の吸湿発熱性ポリマーは1種を用いた重合体でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用した共重合体やグラフト重合体でもよい。さらに、例示したもの以外のモノマーと吸水性モノマーとを併用した重合体や共重合体を吸湿発熱ポリマーとして用いても良いが、その場合、吸水性モノマーの比率が多いほど好ましい。
さらに、本発明を適用する用途との関係で言えば、本発明の技術を紙おむつ、寝具、衣類等の生活用品用途に用いる場合には、吸湿発熱ポリマーとしては、ポリアクリル酸系、ポリスルホン酸塩系、ポリビニルアルコール/ポリアクリル酸塩共重合系等の合成高分子系ポリマーや、グラフト重合系、カルボキシメチル化系等のデンプン系ポリマー及びセルロース系ポリマーなどが好ましく例示される。なお、ここで例示した吸湿発熱ポリマーのうち、主要なものの種類と構造の例を表1に示す。ただし、下記表1においてm1,m2及びm3はそれぞれ独立に0以上の数を表す。
Figure 0004691985
また、本発明の技術を繊維用途に用いる場合には、吸湿発熱ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルホルムアミド、及びこれらの共重合体が好ましい。
また、吸湿発熱ポリマーは、架橋していることが好ましい。
さらに、吸湿発熱ポリマーは吸湿性を発揮する特定の官能基を有していることが好ましい。具体的には、−COOH基、−COONa基、−CONH2基、−OH基、エーテル結合などの官能基を有していることが好ましい。この中では、−COOH基、−COONa基、−CONH2基が好ましい。
また、発熱助剤の存在状態は、シリカの細孔を塞がない状態で担持されていれば他に制限はなく、例えばシリカ中に分子状、クラスター状、粒子状、その他何れかの状態で均一に分散していても、若しくはそれらがシリカ表面に添着、付着していてもよい。また、上記発熱助剤の一部が、直接又は酸素を介して珪素原子と結合していてもよい。特に、洗濯などでの耐久性の面から、発熱助剤の一部がシリカの細孔壁に固定されていることが好ましい。
発熱助剤の含有率は、本発明のシリカに対し、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下の範囲である。なお、2種以上の発熱助剤を含む場合は、その含有率の合計が、上記範囲内となるようにする。
また、発熱助剤を担持させる担持方法は任意であり、後述するような一般的な助剤の導入方法により担持させることが可能である。ただし、発熱助剤として吸湿発熱性ポリマーを用いる場合には、通常は、それ以外の方法によりシリカに担持させる。以下、その方法について説明する。
発熱助剤として吸湿発熱性ポリマーを用いる場合、例えば、吸湿発熱性ポリマーを溶媒に溶解させたり融点以上に加熱したりして溶解させ、シリカの細孔内に導入する。具体的な導入方法としては、含浸法やポアフィリング法などが挙げられる。
また、例えば、吸湿発熱性ポリマーが、モノマーとしてアクリル酸を含むものを用いる場合には、細孔内に導入した後に多価イオンでイオン交換してアクリルをシリカに固定化しても良い。この処理により、イオン交換された吸湿発熱性ポリマー末端がシリカと結合すること、及び、吸湿発熱性ポリマー同士が結合することが期待され、細孔外に吸湿発熱性ポリマーが流出するのを防止することができる。
さらに、別の担持方法としては、シリカの細孔内でモノマーを重合して吸湿発熱性ポリマーを細孔内に担持させるようにしても良い。この場合、通常は、モノマーと反応開始剤とを細孔内に導入し、その後、モノマーを細孔内部で重合させる。
モノマーを細孔内で重合させる方法としては、ラジカル重合に用いられるあらゆる手段が適用可能である。例えば、乾熱処理、スチーム処理、浸漬法、コールドバッチ法、マイクロ波処理、紫外線処理などが挙げられる。ここでマイクロ波処理とは、2450MHzまたは920MHz等の波長の高周波を被加熱物に当てることで発熱させるものである。これらの処理手段は、単独で適用してもよいし、加熱効率を高めるために、例えば、スチーム処理または乾熱処理時にマイクロ波処理または紫外線処理を併用するなどしてもよい。なお、空気中の酸素が存在すると重合が進みにくくなるので、乾熱処理、マイクロ波処理、紫外線処理の場合には、不活性ガス雰囲気下で処理するのが好ましく、コールドバッチ法の場合にも、系内をシール材で密封することが好ましい。
これらの重合法の中では、スチーム処理が重合効率および処理の安定性の観点から好適である。スチーム処理は、常圧スチーム、加熱スチーム、高圧スチームのいずれでもよいが、コスト面からは、常圧スチームまたは加熱スチームが好ましい。スチーム処理温度は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上、また、通常180℃以下、好ましくは160℃以下である。さらに、スチーム処理時間は、1〜10分程度でよい。
なお、細孔内にモノマーを導入した後、重合を開始させる前に、風乾あるいは乾燥機などで予備乾燥することも好ましく行なわれる。
さらに、細孔内で重合を行なうことにより吸湿発熱性ポリマーを担持させる場合には、吸水性モノマーとジビニルモノマーとの重量比が1:1〜20:1となるようにジビニルモノマーを混合し、重合させることが好ましい。これにより、吸湿発熱ポリマーの耐久性を向上させることが可能となる。この際用いるジビニルモノマーに制限は無いが、例えば、特開2002−212880号公報に記載のものを用いることができる。
また、その他の助剤としては、例えば、吸湿助剤を担持させてもよい。吸湿助剤は、高機能な調湿効果を付与すべくシリカに含有させるためのもので、水分に対する親和性の高いものであれば良く、有機化合物,無機化合物,金属塩類などの群に属する様々な物質を選択することができる。なお、吸湿助剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
シリカに担持させる際には、このような群に属する物質の内、少なくとも1種類の含有率が、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下の範囲で担持させることが望ましい。また、吸湿助剤は、1種を単独で用いても良く、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
特に、吸湿助剤が金属塩類であり、且つ、金属塩類を細孔内に含有させる場合には、吸湿助剤の含有量は、使用条件における最高湿度において、吸湿により細孔内に貯留された吸湿助剤の水溶液の体積がシリカの総細孔容積以下の量となるような含有量とすることが望ましい。金属塩類は高湿度条件下で水溶液として細孔内に存在するためである。
つまり、金属塩と金属塩に吸着された湿分とからなる水溶液の量が細孔容積を越えてしまうと、細孔内からこの水溶液が溢れてしまい、このため、脱湿により再びシリカを乾燥した際に、水溶液に含有されて細孔内から排出された金属塩が細孔外部に不要に付着してしまう。この結果、シリカの吸湿特性を悪化させてしまう虞がある。このため、金属塩の含有量が多くなると吸湿能力は増加するが、上記の理由により高湿度域で便用できない虞があり、使用しうる湿度範囲を制限しなければならなくなってしまうことがある。
但し、付帯設備を設けるなど装置的な工夫が許容されるならば、細孔内の水溶液の量が細孔容積以上となる前にシリカを再生させるような運転サイクルを組むことにより、静的な吸着データ上では使用できない高湿度領域においても使用可能とすることができる。
また、上記の吸湿助剤としては、中でもアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩をシリカに含有させると、シリカによる水蒸気吸着量が非常に高くなる。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、水蒸気と非常に親和性が高く、吸湿性能の強化に繋がるため、これらを吸湿助剤として用いることができる。このため、吸湿助剤を使用する場合には、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩の内、少なくとも1種類の金属塩をシリカに吸湿助剤として含有させることが好ましい。
ここで、含有させるアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は何れでも良いが、水蒸気との親和性が特に強いことから、例えば、LiF、NaF、KF、CaF2、MgF2、Li2SO4、Na2SO4、K2SO4、CaSO4、MgSO4、LiNO3、NaNO3、KNO3、Ca(NO32、Mg(NO32、NaCl、LiCl、CaCl2、MgCl2、LiBr、LiI、KBrの中から選択される少なくとも1種、或いは2種以上であることが好ましい。これらの中でも特にリチウム塩が最も吸湿性に優れ好ましく、中でも塩化リチウムが単位重量あたりの吸湿量が大きく好ましい。
上記の吸湿助剤の存在状態は任意であり、例えばシリカ中に分子状、クラスター状、粒子状、その他何れかの状態で均一に分散していても、若しくはそれらがシリカ表面に添着、付着していてもよい。また、上記吸湿助剤の少なくとも一部が、直接又は酸素を介して珪素原子と結合していてもよい。さらに、これらの吸湿助剤は固体状であっても液体状であっても良い。また、これらの吸湿助剤は水和物の状態であっても良く、細孔内で一部が水溶液となっていても良い。
ここで、吸湿助剤がアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩である場合、その含有率は、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下であることが望ましい。ここで、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩とは、本発明のシリカに含有される、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩のうち、含有率の多いものから順に、通常4種、好ましくは3種、更に好ましくは2種、特に好ましくは1種を指すこととする。また、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩が2種以上の場合には、その合計の金属塩の含有率が、上記範囲内となるようにする。
ところで、本発明のシリカに吸湿助剤を含有させる場合、本発明のシリカは従来のシリカと比較して金属塩を高分散に担持することができ、担持した後も優れた細孔特性を維持することが可能である。この結果、担持された金属塩はその理論吸湿量に近い高効率な吸湿性能を発揮することができる。その理由は、様々な複合的な要因によるものと思われ、詳細は不明であるが以下のように推定される。
要因1:担体(シリカ)が非常に高純度であり、且つ、そのシロキサン結合の結合角の歪みが少なく均質な構造とすることができるため、担体の表面状態が均質で金属塩が特異的に吸着する活性点が少ない。したがって、一般的に、細孔内に担持される金属塩は、低湿度下では固体で存在するが、本発明のシリカにおいては、細孔内に高分散に(すなわち均一に)担持されて高い表面積を有することとなり、高い吸着能力を発揮することができる。一方、高湿度下では、一般に、金属塩は細孔内に水溶液として存在するが、本発明のシリカにおいては、低湿度下の場合と同様に、細孔内に高分散に(すなわち均一に)担持される。金属塩が例えばリチウム塩だと、上記水溶液は粘度が比較的高く、特に細孔内に不均一に担持されてしまうと粘度の高い個所や液膜の厚い個所が局所的に生じてしまう。このような粘度の高い個所や液膜の厚い個所では、従来のシリカでは細孔内に吸湿された水分の細孔内(つまり粘度の高いリチウム塩水溶液内)での拡散速度が不十分となり、細孔内の全てのリチウム塩が有効に吸湿に寄与しない(細孔内の一部のリチウム塩しか吸湿に寄与しない)状態になりがちであるが、本発明のシリカでは上記のように金属塩水溶液が細孔内に均一に担持されるようになるので、これが抑制される。
要因2:本発明のシリカでは、細孔径分布が非常にシャープである(細孔径が揃っている)ため担持された塩が細孔分布に応じて異なる条件で細孔内に析出することが無く、均一な粒径で担持される。つまり、一般に、細孔径分布がブロードだと(即ち、細孔径が不揃いだと)、細孔内に担持される金属塩の量などが不揃いとなり、粗大な粒径の金属塩では、水蒸気との接触効率が低下するため、吸湿に寄与しにくくなったり、吸湿速度が低下したりして、十分な調湿機能を発現できなくなる。これに対し、本発明のシリカでは、細孔径が揃っていれば、細孔内の多くの金属塩を均一な細かい粒径で担持することができ、吸湿に寄与しにくい粗大な粒子が少なくなるので十分な調湿機能を発現できるようになる。
なお、発熱助剤や調湿助剤等の助剤を担持することにより、シリカの細孔の径は若干小さく変化する。このため、発熱助剤を担持させる場合には、予め助剤担持前の細孔径は、その変化を考慮して大きく設計することが好ましい。
また、シリカが有していても良い他の成分としては、周期表の3A族,4A族及び5A族及び遷移金属等の有用異元素の単体及び化合物が挙げられ、用途に応じては、これらの有用異元素をシリカが有していても良い。なお、有用異元素の単体及び化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
シリカがその他の成分として有用異元素の単体又は化合物を有している場合、その有用異元素としては、例えば、周期表の3A族,4A族及び5A族並びに遷移金属等からなる元素群(有用異元素群)から選ばれる少なくとも1種の元素の単体又は化合物が挙げられる。そのうち、好ましいものの具体例としては、B,Al,Ga,In,Tl等の3A族元素、C,Si,Ge,Sn,Pb等の4A族元素、N,P,As,Sb,Bi等の5A族原子、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,ランタノイド類,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Hg,アクチノイド類,Rf,DB,Sg、Bh,Hs,Mt等の遷移金属元素が挙げられる。中でも、B,Al,Ga,In,Tl,Ge,Sn,Pb,P,As,Sb,Bi,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,ランタノイド類,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Hg,アクチノイド類などが、各種用途において活性が高く有用である点から好ましい。
これらの有用異元素のうち、特に固体酸触媒・固体塩基触媒用途としてはB,Al,Ga,In,Tl,Fe,Ti,P,W,Mo,Zn等が好ましい。また、水素化触媒・脱水素触媒用途としては、W,Mo,Tc,Re,Ru,Os,Rh,Ir,Pd,Pt,Ag,Au、Ni,Cu等が好ましい。さらに、酸化還元触媒用途としては、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sn,Ge,Pb等が好ましい。また、光触媒用途としてはTi,Zn,W,Sn,Cd等が好ましい。さらに、重合触媒用途としてはTi,Zr,Cr,Fe,Ge,Sb,Bi,V,Mo,W,Mn,Co,Cu,Sc,Nb等が好ましい。
ただし、勿論、3A族,4A族及び5A族並びに遷移金属に属する元素の用途は、上述したものに限定されるわけではなく、その他にも抗菌剤用途(Ti,Ag,Cu,Zn等)、耐水性向上(安定性付与)用途(Zr,Ti等)、蛍光体用途(希土類、ランタノイド類)など、各種の用途が挙げられるのは言うまでも無い。
なお、本発明のシリカがこれらの有用異元素の単体及び/又は化合物を有するとは、有用異元素がシリカ内部に取り込まれて含有されている場合や、シリカ表面に担持されている場合などを含むものとする。また、有用異元素の単体及び/又は化合物は、粒子状に形成されていることが好ましい。ただし、その粒子の径は、シリカの細孔を塞がない程度に小さいことが望ましい。
また、本発明のシリカは、用途に応じては、他の成分として有機基を有していてもよい。以下適宜、シリカが有する有機基を「有用有機基」と呼び、有用有機基を有するシリカを、以下適宜、「有機基含有シリカ」という。なお、有用有機基は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
有機基含有シリカに導入される有用有機基の種類に制限は無いが、例えば、いわゆるシランカップリング剤の有機基として公知のものを、いずれも選択して使用することができる。ただし、特に有用な有用有機基の条件を挙げると、以下のとおりである。
有用有機基は、その炭素数が、通常1以上、また、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは50以下である。
また、有用有機基は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、脂肪芳香族化合物より誘導される1価又は2価以上の有機基であることが望ましい。
さらに、有用有機基は、それが有する水素の少なくとも一部が原子や原子団等によって置換されていても良い。有用有機基に置換する原子や原子団は任意であるが、例えば原子や有機官能基が挙げられ、具体例としては、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、フェニル基、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、アンモニウム基、アリル基などが挙げられる。
これらの原子又は原子団で置換された有用有機基をシリカに導入すると、有機官能基の各々の官能基特性に基づいた機能性が発現するわけであるが、どのような官能基を選択するかは、官能基を導入したシリカ材料の用途に負うところが大きい。
さらに、これらの有機官能基の水素の少なくとも一部は、さらにO、N、又はS等の各種の原子又は原子団により置換されていても良い。ただし、ここで例示した有機官能基はシリカに導入しやすいものの一例であり、使用目的に応じてこの他各種の化学的反応性、物理化学的機能性を持つ有機官能基を導入しても良い。また、有用有機基に置換する原子や原子団は、1種が単独で置換していても良く、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していても良い。
また、有用有機基はその中に連結基としてO、N、又はS等の各種の原子又は原子団を有するものであっても良い。
さらに、シリカの表面に有用有機基を担持させると、シリカの表面を改質することになる場合がある。この場合、表面改質により得られる特性のひとつに有機物質との親和性向上がある。この特性を獲得するためには、例えば、有用有機基として、炭素数1〜50のアルキル基の他、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基等の有機樹脂等のマトリックスとの親和性もしくは化学反応性が高い官能基を用いることが好ましい。中でも、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基を有用有機基に用いた場合は、官能基内に二重結合を持ち、同様に二重結合を有する有機樹脂と共有結合により強固に結合するので、得られる有機基含有シリカが高い構造強度及び耐水性を発現する。また、担持させた有用有機基は、各種の機能性材料の骨格としても用いられる。
有用有機基はどのような状態で有機基含有シリカに導入されていても良い。通常は、有用有機基は、その価数に応じた数のケイ素原子と共有結合により直接結合していて、これにより、有用有機基は有機基含有シリカに含有されている。この場合、有用有機基と結合するケイ素原子はシリカ骨格を形成するものの一部であるので、有用有機基は実質的にシリカ骨格に直接導入された状態となっている。このような状態で有用有機基を本発明のシリカへ導入する場合には、有用有機基にシロキサン結合を形成し得る反応性末端が導入された試薬を用いればよい。このような試薬として最も入手が容易であり代表的なものは、下記に示すシランカップリング剤である。このほかにもシラノールと反応し、シロキサン結合を形成する一般合成試薬(以下適宜、「有機基導入試薬」という)が数種あるが、工業的な入手が容易ではなく、また反応条件に制限のあることが多い。
本明細書においてシランカップリング剤とは、ケイ素原子に前述のような有用有機基が直結しているものの総称であり、以下の式(I)〜(IV)に示される化合物である。
3SiR1 ・・・式(I)
式(I)において、Xはそれぞれ独立に、水溶液中、空気中の水分、または無機質表面に吸着された水分などにより加水分解されて、反応性に富むシラノール基を生成する加水分解性シリル基を表わす。その具体的な種類に制限は無く、従来より公知のものを任意に使用することが出来る。例えば、炭素数が通常1以上4以下の低級アルコキシ基、アセトキシ基、ブタノキシム基、クロル基等が挙げられる。なお、これらの加水分解性シリル基は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、R1は上記の有用有機基のうち、1価のものを表わす。
式(I)で表わされるシランカップリング剤はもっとも汎用であり、その具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、4−クロロフェニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることが出来る。
2SiR23 ・・・式(II)
式(II)において、Xはそれぞれ独立に、式(I)のXと同様の加水分解性シリル基を表わす。
また、R2及びR3は、それぞれ式(I)のR1と同様、1価の有用有機基を表わす。なお、R2及びR3はそれぞれ同じ基であっても異なる基であってもよい。
式(II)で表わされるシランカップリング剤の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン等を挙げることが出来る。
XSiR456 ・・・式(III)
式(III)において、Xは式(I)のXと同様の加水分解性シリル基を表わす。
また、R4,R5,R6は、それぞれ式(I)のR1と同様、1価の有用有機基を表わす。なお、R4,R5,R6はそれぞれ同じ基であっても異なる基であっても良い。
式(III)で表わされるシランカップリング剤の具体例としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン等を挙げることが出来る。
(X3Si)m7 ・・・式(IV)
式(IV)において、Xはそれぞれ独立に、式(I)のXと同様の加水分解性シリル基を表わす。
また、R7はm価の有用有機基を表わす。なお、mは2以上の整数を表わす。
式(IV)で表わされるシランカップリング剤の具体例としては、各種有機ポリマーやオリゴマーに側鎖として加水分解性シリル基が複数結合しているものなどが挙げられる。
これら式(I)〜式(IV)に具体的に例示した化合物は、入手容易な市販のシランカップリング剤の一部であり、更に詳しくは、科学技術総合研究所発行の「カップリング剤最適利用技術」9章のカップリング剤及び関連製品一覧表により示すことが出来る。
また、当然のことながら、本発明に使用できるシランカップリング剤は、これらの例示により制限されるものではない。
また、導入する有用有機基の種類及び量は、有用有機基が機能性を発現する範囲であれば特に限定されない。したがって、これらの有用有機基を有するシランカップリング剤又は有機基導入試薬は、どのような種類のものを、どれだけ用いても良い。また、高純度な有機基含有シリカを得る観点から、有用有機基を含むシランカップリング剤又は有機基導入試薬も高純度なものを用いることが好ましい。
なお、上述した有用異元素や有用有機基をはじめ、シリカが有していても良いその他の成分は、1種を単独でも用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[1−2]本発明のシリカの製造方法:
続いて、本発明のシリカの製造方法を説明する。
本発明のシリカの製造方法は特に制限されず、公知の任意の方法によって製造することができる。シリカの製造方法としてよく用いられる方法の例としては、次のような方法が挙げられる。
i.水ガラスを硫酸等の酸により中和してからゲル化する方法。
ii.アルコキシシランを加水分解してからゲル化する方法。
iii.アルコキシシラン又は水ガラスを原料とし、界面活性剤を有機テンプレートとして細孔形成を行なう方法(いわゆる、ミセルテンプレートシリカ)。
上記のように、本発明のシリカの製造方法について特に制限は無いが、好ましくは、以下に説明する方法によって本発明のシリカを製造することが好ましい。
即ち、本発明のシリカは、シリカヒドロゲルを水熱処理し、得られたスラリーの液体成分中の水分含有率を例えば5重量%以下とした後、乾燥することによって製造することが好ましい。
具体的には、シリコンアルコキシドを加水分解し、得られたシリカヒドロゲルを、好ましくは実質的に熟成することなしに水熱処理し、シリカ中の水分を除去する。なお、水熱処理後、親水性有機溶媒と接触させる工程を含んでいても良い。
シリカヒドロゲルの製造方法は任意であり、例えば珪酸アルカリ塩を加水分解して得られるシリカヒドロゲル、またはシリコンアルコキシドを加水分解して得られるシリカヒドロゲルが挙げられる。中でも、シリコンアルコキシドを加水分解して得られるシリカヒドロゲルは、その原料であるシリコンアルコキシドの高純度化が可能であり、シリカヒドロゲルへの不純物の混入を容易に防止できるので好ましい。
本発明のシリカの原料として使用されるシリコンアルコキシドとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の炭素数1〜4の低級アルキル基を有するトリ又はテトラアルコキシシラン或いはそれらのオリゴマーが挙げられる。中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリゴマー、特にテトラメトキシシランやそのオリゴマーを用いると、良好な細孔特性を有するシリカが得られるので好ましい。その主な理由としては、シリコンアルコキシドは蒸留により容易に精製し、高純度品が得られるので、高純度のシリカの原料として好適であることが挙げられる。シリコンアルコキシド中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属に属する金属元素(金属不純物)の総含有量は、通常100ppm以下、中でも50ppm以下、更には10ppm以下、特に1ppm以下が好ましい。これらの金属不純物の含有率は、一般的なシリカ中の不純物含有率の測定法と同じ方法で測定できる。
本発明では、先ず、加水分解・縮合工程において、触媒の不存在下にシリコンアルコキシドを加水分解すると共に得られたシリカヒドロゾルを縮合してシリカヒドロゲルを形成する。
シリコンアルコキシドの加水分解に用いる水の量は任意であるが、シリコンアルコキシド1モルに対して、通常2モル倍以上、好ましくは3モル倍以上、特に好ましくは4モル倍以上、また、通常20モル倍以下、好ましくは10モル倍以下、特に好ましくは8モル倍以下の水を用いて行なう。シリコンアルコキシドの加水分解により、シリカのヒドロゲルとアルコールとが生成し、生成したシリカヒドロゾルは逐次縮合してシリカヒドロゲルとなる。
また、加水分解時の温度も任意であるが、通常室温以上、100℃以下であるが、加圧下で液相を維持することで、より高い温度で行なうことも可能である。加水分解に要する反応時間は反応液組成(シリコンアルコキシドの種類や、水とのモル比)並びに反応温度に依存し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定されない。この反応時間は、本発明のシリカのように細孔特性に優れたシリカを得る為には、ヒドロゲルの破壊応力が6MPaを越えない時間であることが好ましい。
なお、この加水分解反応系に、触媒として、酸、アルカリ、塩類などを共存させることで加水分解を促進させることができる。しかしながら、かかる触媒の使用は、後述のように、生成したヒドロゲルの熟成を引き起こすことになるので、本発明のシリカの製造においてはあまり好ましいことではない。
上述したシリコンアルコキシドの加水分解に際しては、攪拌を充分に行なうことが重要となる。例えば、回転軸に攪拌翼を備えた攪拌装置を用いた場合、その攪拌速度(回転軸の回転数)としては、攪拌翼の形状・枚数・液との接触面積等にもよるが、通常は30rpm以上、好ましくは50rpm以上である。
また、この攪拌速度は、一般的に速過ぎると、槽内で生じた飛沫が各種のガスラインを閉塞させたり、また反応器内壁に付着して熱伝導を悪化させ、物性制御に重要な温度管理に影響を及ぼしたりする場合がある。更に、この内壁の付着物が剥離し、製品に混入して品質を悪化させる場合もある。この様な理由から、攪拌速度は2000rpm以下、中でも1000rpm以下であることが好ましい。
本発明に於いて、分液している二液相(水相、及びシリコンアルコキシド相)の攪拌方法は、反応を促進させる方法であれば任意の攪拌方法を用いることが出来る。中でも、この二液相をより混合させるような装置としては、例えば以下の(A)、(B)が挙げられる。
(A):回転軸が液面に対し垂直又は僅かに角度を持って挿入され、上下に液の流動が生じる攪拌翼を有する装置。
(B):回転軸方向を二液相の界面と略平行に設け、二液相間に攪拌を生じさせる攪拌翼を有する攪拌装置。
上述した(A)、(B)の様な装置を用いた際の攪拌翼の回転速度は、攪拌翼の周速度(攪拌翼先端速度)で、通常0.05m/s以上、好ましくは0.1m/s以上、また、通常10m/s以下、好ましくは5m/s以下、さらに好ましくは3m/s以下であることが好ましい。
攪拌翼の形状や長さ等は任意であり、攪拌翼としては例えばプロペラ型、平羽根型、角度付平羽根型、ピッチ付平羽根型、平羽根ディスクタービン型、湾曲羽根型、ファウドラー型、ブルマージン型等が挙げられる。
翼の幅、枚数、傾斜角等は反応器の形状、大きさ、目的とする攪拌動力に応じて適宜選定すればよい。たとえば反応器の槽内径(回転軸方向に対して垂直面を形成する液相面の最長径)に対する翼幅(回転軸方向の翼の長さ)の比率(b/D)は0.05〜0.2、傾斜角(θ)90゜±10゜、翼枚数3〜10枚の攪拌装置が好適な例として挙げられる。
中でも、上述の回転軸を反応容器内の液面よりも上に設け、この回転軸から伸ばした軸の先端部分に攪拌翼を設ける構造が、攪拌効率及び設備メンテナンスの観点から好適に使用される。
上記のシリコンアルコキシドの加水分解反応では、シリコンアルコキシドが加水分解してシリカヒドロゾルが生成するが、引き続いて該シリカヒドロゾルの縮合反応が起こり、反応液の粘度が上昇し、最終的にゲル化してシリカヒドロゲルとなる。
次いで、本発明では、物性調節工程として、上記の加水分解により生成したシリカヒドロゲルの硬さが上昇しないように、実質的に熟成することなく、シリカヒドロゲルの水熱処理を行なう。シリコンアルコキシドを加水分解すると、軟弱なシリカヒドロゲルが生成する。なお、このヒドロゲルの物性を安定させるべく、熟成、あるいは乾燥させ、次いで水熱処理を施すという方法では、本発明のシリカを製造することは通常、困難である。
上記にある、加水分解により生成したシリカヒドロゲルを、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうということは、シリカヒドロゲルが生成した直後の軟弱な状態が維持されたままで、次の水熱処理に供するようにするということを意味する。
具体的には、シリカヒドロゲルが生成した時点から、一般的には10時間以内に水熱処理することが好ましく、中でも8時間以内、更には6時間以内、特に4時間以内にシリカヒドロゲルを水熱処理することが好ましい。
また、工業用プラント等に於いては、大量に生成したシリカヒドロゲルを一旦サイロ等に貯蔵し、その後水熱処理を行なう場合が考えられる。この様な場合、シリカヒドロゲルが生成してから水熱処理に供されるまでの時間、いわゆる放置時間が、上述の範囲を超える場合が考えられる。この様な場合には、熟成が実質的に生じないように、サイロ内での静置中に、例えばシリカヒドロゲル中の液体成分が乾燥しないようにすればよい。
具体的には、例えば、サイロ内を密閉したり、湿度を調節したりすればよい。また、水やその他の溶媒にシリカヒドロゲルを浸した状態で、シリカヒドロゲルを静置してもよい。
静置の際の温度は、できるだけ低くすることが好ましく、例えば50℃以下、中でも35℃以下、特に30℃以下で静置することが好ましい。また、熟成が実質的に生じないようにする別の方法としては、シリカヒドロゲル中のシリカ濃度が低くなるように、予め原料組成を制御してシリカヒドロゲルを調製する方法が挙げられる。
シリカヒドロゲルを実質的に熟成せずに水熱処理することにより奏する効果と、この効果が得られる理由を考察すると、以下のことが考えられる。
まず、シリカヒドロゲルを熟成させると、−Si−O−Si−結合によるマクロ的網目構造が、シリカヒドロゲル全体に形成されると考えられる。この網目構造がシリカヒドロゲル全体に有ることで、水熱処理の際、この網目構造が障害となり、メソポーラスの形成が困難となることが考えられる。またシリカヒドロゲル中のシリカ濃度が低くなるように、予め原料組成を制御して得られたシリカヒドロゲルは、静置中に生ずるシリカヒドロゲルにおける架橋の進行を抑制できる。その為、シリカヒドロゲルが熟成しないと考える。
よって、このシリカの製造方法では、シリカヒドロゲルを熟成することなく、水熱処理を行なうことが重要である。
シリコンアルコキシドの加水分解反応系に酸、アルカリ、塩類等を混合すること、又は加水分解反応の温度を厳しくし過ぎることなどは、ヒドロゲルの熟成を進行させるという点からも好ましくない。また、加水分解後の後処理における水洗、乾燥、放置などにおいて、必要以上に温度や時間をかけるべきではない。
更に、シリコンアルコキシドの加水分解で得られたシリカヒドロゲルは、水熱処理を行なうまえに、これを平均粒径10mm以下、中でも5mm以下、更には1mm以下、特に0.5mm以下となるよう、粉砕処理等を施すことが好ましい。
上述の通り、この本発明のシリカの製造方法では、シリカヒドロゲルの生成の直後に、直ちにこれを水熱処理する方法が重要である。但し、この本発明のシリカの製造方法に於いては、水熱処理するシリカヒドロゲルが熟成していなければよいので、例えば暫時低温下で静置した後に水熱処理するなど、必ずしもシリカヒドロゲルの生成直後、直ちにこれを水熱処理することを必要としない。
このように、シリカヒドロゲルの生成の直後、直ちにこれを水熱処理しない場合には、例えばシリカヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認してから水熱処理を行なえばよい。ヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認する手段は任意であるが、例えば、ヒドロゲルの硬度を参考にする方法が挙げられる。即ち、先述したとおり、この破壊応力が通常6MPa以下の柔らかい状態のヒドロゲルを水熱処理することで、本発明で規定する物性範囲のシリカを得ることができる。この破壊応力は、中でも3MPa以下であることが好ましく、特に2MPa以下であることが好ましい。
この水熱処理の条件は任意であり、水の状態が液体、気体のいずれでもよいが、中でも、液体の水を使い、シリカヒドロゲルに加えてスラリー状として、水熱処理を行なうことが好ましい。また、水熱処理においては、まず、処理するシリカヒドロゲルに、シリカヒドロゲルの重量に対して通常0.1重量倍以上、好ましくは0.5重量倍以上、特に好ましくは1重量倍以上、また、通常10重量倍以下、好ましくは5重量倍以下、特に好ましくは3重量倍以下の水を加えてスラリー状とする。そしてこのスラリーを、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下の温度で、通常0.1時間以上、好ましくは1時間以上、また、通常100時間以下、好ましくは10時間以下にわたって、水熱処理を行なう。水熱処理の温度が低すぎると、細孔分布がシャープになり難く、また、細孔容積を大きくすることも困難となる場合がある。
なお、水熱処理に使用される水には、溶媒が含まれていてもよい。溶媒として、具体的には、例えば、低級アルコール類であるメタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。この溶媒は、例えばアルコキシシランを加水分解して得られたシリカヒドロゲルを水熱処理する際には、その原料であるアルコキシシランに由来するアルコール類であってもよい。
熱処理に用いる水における、この様な溶媒の含有量は任意だが、少ない方が好ましい。例えば、上述した様な、アルコキシシランを加水分解して得られたシリカヒドロゲルを水熱処理する際には、このシリカヒドロゲルを水洗し、水洗されたものを水熱反応に供することにより、150℃程度まで温度を下げて水熱処理を行なった場合でも、細孔特性に優れ且つ細孔容積の大きいシリカを製造することが出来る。また、溶媒を含んでいる水で水熱処理を行なっても、200℃程度の温度での水熱処理を行なうことで、本発明のシリカを容易に得ることが出来る。
また、メンブランリアクターなどを作る目的で、シリカを膜状あるいは層状に粒子、基板、あるいは管などの基体上に形成させた場合にも、この水熱処理方法は適用される。なお、加水分解反応の反応器を用い、続けて温度条件変更により水熱処理を行なうことも可能であるが、加水分解反応とその後の水熱処理では最適条件が通常は異なっているため、この様に水を新たに加えないで行なう方法では、本発明のシリカを得ることは一般的には難しい。
以上の水熱処理の条件において、温度を高くすると、得られるシリカの径、細孔容積が大きくなる傾向がある。また、処理時間とともに、得られるシリカの比表面積は、一度極大に達した後、緩やかに減少する傾向がある。以上の傾向を踏まえて、所望の物性値に応じて条件を適宜選択する必要がある。例えば、調湿性能に注目すれば、高度な調湿性能を発揮するシリカを製造する場合には、水熱処理温度は、100℃〜200℃の範囲であることが好ましい。水熱処理は、シリカの物性を変化させる目的なので、通常、前記の加水分解の反応条件より高温条件とすることが好ましい。
なお、ミクロ構造的な均質性に優れるシリカを製造するためには、水熱処理の際に、反応系内の温度が5時間以内に目的温度に達する様に、速い昇温速度条件とすることが好ましい。具体的には、槽に充填して処理される場合、昇温開始から目標温度到達までの平均昇温速度として、通常0.1℃/min以上、好ましくは0.2℃/min以上、また、通常100℃/min以下、好ましくは30℃/min以下、さらに好ましくは10℃/min以下の範囲の値を採用するのが好ましい。
熱交換器などを利用した昇温方法や、あらかじめ作っておいた熱水を仕込む昇温方法なども、昇温速度を短縮することができて好ましい。また、昇温速度が上記範囲であれば、段階的に昇温を行なってもよい。反応系内の温度が目的温度に達するまでに長時間を要した場合には、昇温中にシリカヒドロゲルの熟成が進み、ミクロ構造的な均質性が低下する虞がある。
上記の目的温度に達するまでの昇温時間は、好ましくは4時間以内、更に好ましくは3時間以内である。昇温時間の短縮化のため、水熱処理に使用する水を予熱することもできる。
水熱処理の温度、時間を上記範囲外に設定すると、本発明のシリカを得ることが困難となる虞がある。例えば、水熱処理の温度が高すぎると、シリカの細孔径、細孔容積が大きくなりすぎ、また、細孔分布も広がる。逆に、水熱処理の温度が低過ぎると、生成するシリカは、架橋度が低く、熱安定性に乏しくなり、細孔分布にピークが発現しなくなったり、前述した固体Si−NMRにおけるQ4/Q3値が極端に小さくなったりする。
なお、水熱処理をアンモニア水中で行なうと、純水中で行なう場合よりも低温で同様の効果が得られる。また、アンモニア水中で水熱処理すると、アンモニアを含まない水を用いた水熱処理と比較して、最終的に得られるシリカは一般に疎水性となる。この際、水熱処理の温度を通常30℃以上、好ましくは40℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下という比較的高温とすると、特に疎水性が高くなる。ここでのアンモニア水のアンモニア濃度としては、好ましくは0.001重量%以上、特に好ましくは0.005重量%以上、また、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
得られた本発明のシリカは適当な条件下で乾燥させる。乾燥時の条件は任意であるが、通常40℃以上、好ましくは60℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは120℃以下で乾燥する。乾燥方法は特に限定されるものではなく、バッチ式でも連続式でもよく、且つ、常圧でも減圧下でも乾燥することができる。中でも、真空乾燥を行なうことは、乾燥が迅速に行なえるのみならず、得られるシリカの細孔容積、比表面積が大きくなるので好ましい。
必要に応じ、原料のシリコンアルコキシドに由来する炭素分が含まれている場合には、通常400℃〜600℃で焼成除去することができる。また、表面状態をコントロールするため最高900℃の温度で焼成することもある。さらに、シランカップリング剤や無機塩,各種有機化合物などにより親疎水性を調節するための表面処理を行なっても良い。なお、この表面処理で用いるシランカップリング剤の種類は任意であるが、例えば、有用有機基導入に用いるものといして上述したシランカップリング剤と同様のものを用いることができる。
更に、得られたシリカを、必要に応じて粉砕、分級することで、最終的に目的としていた本発明のシリカを得る。
なお、上記の水熱処理の後に、シリカに含まれる水を親水性有機溶媒と置換してから、乾燥を行なうことが好ましい。これによって、乾燥工程に於けるシリカの収縮を抑制し、シリカの細孔容積を大きく維持でき、細孔特性に優れ、且つ細孔容積の大きいシリカを得ることが出来る。この理由は定かではないが、以下のような現象によるものと考えられる。
水熱処理後のシリカスラリー中の液体成分の多くは水である。この水は、シリカと互いに強く相互作用しあっている為に、シリカから完全に水を除去するには大きなエネルギーが必要と考える。
多量の水分が存在する条件下で乾燥過程(例えば加熱乾燥)を行なうと、熱エネルギーを受けた水が未反応のシラノール基と反応し、本発明のシリカの構造が変化する。この構造変化のうち最も顕著な変化はシリカ骨格の縮合であり、縮合によってシリカが局所的に高密度化することが考えられる。シリカ骨格は3次元的構造を有するので、骨格の局所的な縮合(シリカ骨格の高密度化)はシリカ骨格により構成されているシリカ粒子全体の細孔特性に影響を及ぼし、結果的に粒子が収縮して、細孔容積や細孔径が収縮すると考えられる。
そこで、例えばシリカスラリー中の(水を多量に含む)液体成分を親水性有機溶媒で置換することで、このシリカスラリー中の水を除去し、上述したようなシリカの収縮を抑えることが可能となる。
ここで用いる親水性有機溶媒とは、上述した考えに基づき、水を多く溶かすものであればよい。中でも、分子内分極の大きいものが好ましい。さらに好ましくは、比誘電率が15以上のものがよい。
また、ここで説明した上記本発明のシリカの製造方法に於いては、純度の高いシリカを得るために、親水性有機溶媒にて水を除去した後の乾燥工程で、この親水性有機溶媒を除去する必要がある。よって、親水性有機溶媒としては、乾燥(例えば加熱乾燥や真空・減圧乾燥等)により容易に除去可能な低沸点のものが好ましい。親水性有機溶媒の沸点としては、通常150℃以下、中でも120℃以下、特に100℃以下のものが好ましい。
具体的な親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、アルデヒド類、エーテル類等が挙げられる。中でも、アルコール類やケトン類が好ましく、特に、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類やアセトンが好ましい。本発明のシリカの製造時には、これら例示の親水性有機溶媒のうち、一種を単独で使用しても良く、二種以上を任意の組み合わせ及び任意の割合で混合して使用してもよい。
なお、水の除去が可能であれば、使用する親水性有機溶媒中に水が含まれていてもよい。もっとも、親水性有機溶媒における水分含有量は当然少ない方が好ましく、通常20重量%以下、中でも15重量%以下、更には10重量%以下、特に5重量%以下であることが好ましい。
本発明のシリカの製造に於いて、上述の親水性有機溶媒による置換処理時の温度及び圧力は任意である。処理温度は任意であるが、通常0℃以上、中でも10℃以上、通常100℃以下、中でも60℃以下とすることが好ましい。処理時の圧力は常圧、加圧、減圧のいずれでもよい。
シリカスラリーと接触させる親水性有機溶媒の量も任意である。但し、用いる親水性有機溶媒の量が少な過ぎると水との置換進行速度が充分でなく、逆に多過ぎると水との置換効率は高まるが、親水性有機溶媒の使用量増加に見合う効果が頭打ちとなり、経済的に好ましくない。よって、用いる親水性有機溶媒の量は、シリカの嵩体積に対して通常0.5〜10容量倍である。この親水性有機溶媒による置換操作は、複数回繰り返して行なうと、水の置換がより確実となるので好ましい。
親水性有機溶媒とシリカスラリーとの接触方法は任意であり、例えば攪拌槽でシリカスラリーを攪拌しながら親水性有機溶媒を添加する方法や、シリカスラリーから濾別したシリカを充填塔に詰めて、この充填塔に親水性有機溶媒を通液する方法、また、親水性有機溶媒中にシリカを入れて浸漬し、静置する方法などが挙げられる。
親水性有機溶媒による置換操作の終了は、シリカスラリーの液体成分中の水分測定を行なって決定すればよい。例えば、定期的にシリカスラリーをサンプリングして水分測定を行ない、水分含有量が通常5重量%以下、好ましくは4重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下となった点を終点とすればよい。水分の測定方法は任意であり、例えばカールフィッシャー法が挙げられる。
親水性有機溶媒による置換操作の後、シリカと親水性有機溶媒とを分離し、乾燥することで、本発明のシリカを製造することが出来る。この際の分離法としては、従来公知の任意の固液分離方法を用いればよい。即ち、シリカ粒子のサイズに応じて、例えばデカンテーション、遠心分離、濾過等の方法を選択して固液分離すれば良い。これらの分離方法は、一種を単独で用いても良く、また二種以上を任意の組み合わせで用いてもよい。
ところで、上述したように、製造されたシリカは、通常、粉砕、分級などして造粒し、粒子状のシリカとして用いられる。この際製造されるシリカの粒子の形状は限定されず任意であるが、例えば、球状であっても良いし、形の規定されないその他の塊状であっても良いし、破砕して細かな形状(破砕状)としても良いし、さらには、破砕状のものを集めて造粒したものであっても良い。コスト的には、粒径の制御が容易な破砕状又はこれを造粒したものが好ましい。さらに、シリカをハニカム状に成形するなどしても良い。また、シリカの粒径は、その使用条件によって適宜設定されるものである。
さらに、シリカの粉砕、分級の方法は、それぞれ任意である。
具体例を挙げると、シリカの分級は、例えば篩,重力分級機,遠心分級機などを使用して行なわれる。
また、シリカの粉砕は、例えば、ボールミル(転動ミル、振動ボールミル、遊星ミル等)、攪拌ミル(塔式粉砕器、攪拌槽型ミル、流通管型ミル、アニュラー(環状)ミル等)、高速回転微粉砕機(スクリーンミル、ターボ型ミル、遠心分級型ミル)、ジェット粉砕機(循環ジェットミル、衝突タイプミル、流動層ジェットミル)、せん断ミル(擂解機、オングミル)、コロイドミル、乳鉢などの装置・器具を用いることができる。これらの中で、シリカを比較的の小さな径(例えば2μm以下)とする場合には、ボールミル、攪拌ミルがより好ましい。また、粉砕時の状態としては、湿式法及び乾式法があり、何れも選択可であるが、シリカを比較的の小さな径とする場合には湿式法がより好ましい。湿式法の場合、使用する分散媒としては、水及びアルコール等の有機溶媒の何れを用いても、また2種以上の混合溶媒としても良く、目的に応じて使い分ける。微粉砕時に不必要に強い圧力や剪断力を長時間かけ続けることは、シリカの細孔特性を損なうことがあり好ましくない。
さらに、湿式粉砕のなかでも繊維用途のシリカを製造する際は、粉砕に用いるビーズ直径を小さくすると好ましい。具体的には、ビーズ直径は、通常0.5mm以下、好ましくは0.3mm以下とすることが望ましい。これにより、繊維用途のシリカ(即ち、基材として繊維を用い、成形体を作製するために、その繊維にバインダ樹脂によって固着させられるシリカ)の粒子径を好適な範囲{前述の条件(i)}に簡単に収めることができる。
また、粉砕機はビーズ効率(ビーズ当たりの粉砕処理量)が高いほど好ましい。
なお、上述したように製造されたシリカが粉砕等されることで粒子状となっている場合、粉砕されたシリカの粒子(一次粒子)を公知の方法により造粒し、粒状(例えば球状)或いは凝集体の形状としてもよい。シリカは一般に一次粒子径2μm以下の場合、特にバインダ樹脂を混合しなくても水スラリーとしてこれを乾燥するだけで凝集粒子を得ることができるが、2μmを越える粒子の場合、凝集させるためにはバインダが必要であることが多い。バインダ樹脂を混合した場合の凝集体は、シリカとバインダ樹脂とからなるものであり、その細孔容積の30%以上が外部に開放されていれば、本発明の成形体に該当する。
凝集粒子を製造する場合にバインダ樹脂として用いることができる物質は任意であるが、例えば水に溶解する場合は砂糖、デキストローズ、コーンシロップ、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、その他の水溶性高分子、水ガラス、シリコンアルコキシド加水分解液(これは溶媒系にも使用可)などを用いることができ、溶媒に溶解して用いる場合には各種ワックス、ラッカー、シラック、油溶性高分子等を用いることができる。なお、この際用いるバインダ樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。但し、シリカの多孔質性能を損なわずに凝集体とするためには、バインダ樹脂を使用しないことが望ましく、やむを得ず使用する場合には最低限の使用量とし、シリカの物性変化を誘起するような金属不純物量の少ない高純度なものを用いることが好ましい。
ところで、上記のように、シリカの造粒方法(粉砕方法)は公知の何れの方法を用いても良いが、代表的な方法として、転動法、流動層法、攪拌法、解砕法、圧縮法、押し出し法、噴射法等が挙げられる。このうち本発明の制御された細孔特性のシリカの粒子を得るためには、バインダ樹脂の種類及び使用量、純度の選択に注意を払い、シリカを造粒する際に不要な圧力をかけないことなどが重要である。
以上、本発明のシリカの製造方法の具体例について説明したが、細孔制御のための水熱処理の前にシリカヒドロゲルを熟成しないという点を除けば、その製造方法は実質的に制限されるべきではない。
ところで、上述したように、本発明のシリカにはその他の成分を含有させることができる。シリカにその他の成分を含有させる際の具体的方法は任意である。
例えば、助剤をシリカに導入する場合、以下のような導入方法を用いることができる。即ち、助剤を水熱処理前にドープして本発明のシリカを製造する場合には、原料である珪酸アルカリ塩又はシリコンアルコキシドを加水分解した後、これをゲル化する前に、助剤と混合し、これにより得られたシリカヒドロゲルに水熱処理を行なうことによって、助剤を含有した本発明のシリカを製造することができる。また、この応用例として、好ましくは、シリコンアルコキシドと助剤とを混合して加水分解してから、水熱処理を行なってもよい。
助剤は、シリコンアルコキシドを加水分解しシリカヒドロゲルを得る工程において、1種又は2種以上系内に混合される。その形態などについては、均質なシリカヒドロゲルの形成を妨げない範囲であれば特に限定されず、シリコンアルコキシドの加水分解に対して強い触媒活性を発現しないものが好ましい。また、高純度なシリカを得る観点から、助剤も高純度なものを用いることが好ましい。
助剤の混合方法は、均質なシリカヒドロゲルの形成を妨げない方法であれば特に限定されず、助剤をシリコンアルコキシド加水分解のための水に混合しても、シリコンアルコキシドに混合しても、加水分解直後に均一溶液となったヒドロゾルに混合してもよく、操作性に応じ適宜選択される。また、必要であれば、助剤を前もって加水分解した後に上記の系に混合したり、逆に、シリコンアルコキシドの部分加水分解を行なった後に助剤を混合したりしてもよい。
また、本発明のシリカは、細孔制御後の高純度シリカに助剤を後担持させる方法でも製造できる。この場合、まず、シリカ細孔中に助剤を導入する。その方法としては、公知のいかなる方法でも良いが、例えば、触媒調整法としてよく知られている含浸法が挙げられる。具体例としては、吸着(absorption)法,ポアフィリング(pore-filling)法,“incipient wetness”法,蒸発乾固(evaporation to dryness)法,スプレー(spray)法、ドライコンセントレート法などが挙げられる。ただし、助剤として吸湿助剤を担持させる場合、細孔外に吸湿助剤が付着するとこの吸湿助剤が大粒子となり、吸湿特性が低下するため、特にポアフィリング法のように吸湿助剤の水溶液が細孔外にあふれない方法が好ましい。
さらに、この場合も、助剤は、シリコンアルコキシドを加水分解し、熟成すること無しに水熱処理して得られたシリカに、上記の方法で担持させることができるが、その形態などは、助剤が機能性を発現する範囲であれば特に限定されない。また、高純度なシリカを得る観点から、助剤も高純度なものを用いることが好ましい。
また、必要に応じて担体であるシリカ表面の親疎水性や表面活性や酸性度などの状態を変化させるための表面処理を施しても良い。助剤を含有させる方法は前述のいかなる方法によっても良いが、細孔制御を確実に行なうことができ、含有する助剤を幅広く選択可能なことから、担持による方法がより好ましい。
なお、ここで説明した方法は、上記の発熱助剤及び吸湿助剤等にも適用可能であることは言うまでもない。
また、シリカにその他の成分として有用異元素の単体又は化合物を含有及び/又は担持させる場合には、上述した助剤の導入方法と同様の方法を用いることができる。
さらに、シリカにその他の成分として有用有機基を導入する場合、例えば、上述した助剤の導入方法において、助剤に代えてシリカカップリング剤(もしくは有機基導入試薬)を用いる以外は同様の操作を行なうことで、有用有機基の導入を行なうことができる。
即ち、助剤をシリカに導入する場合、シリコンアルコキシドを加水分解する際に、前述の有用有機基を含むシランカップリング剤(もしくは有機基導入試薬)を混合してからゲル化を行なう。ついで、これにより得られたシリカヒドロゲルを用いて、水熱処理による方法を応用して有機基含有シリカを製造することができる。
また、この応用例として、好ましくはシリコンアルコキシドとシランカップリング剤又は有機基導入試薬とを混合してから加水分解する方法が挙げられる。なお、この工程においては、有機基導入試薬のうち、水分により失活するものを用いることは難しい。
さらに、シランカップリング剤や有機基導入試薬は、シリコンアルデヒドを加水分解しシリカヒドロゲルを得る工程において、1種又は2種以上系内に混合される。有機基導入試薬の種類及び量などについては、前述のように均質なシリカヒドロゲルの形成を妨げない範囲であれば特に限定されず、これらのシランカップリング剤や有機基導入試薬は、それらの試薬自身や反応に伴う分解生成物が、均質なヒドロゲルの形成を妨げない限り、どのような種類のものを用いても良い。また、高純度なシリカゲルを得る観点から、シランカップリング剤や有機基導入試薬も、高純度なものを用いることが好ましい。
また、シランカップリング剤や有機基導入試薬の混合方法は、均質なシリカヒドロゲルの形成を妨げない方法であれば特に限定されず、シランカップリング剤や有機基導入試薬をシリコンアルコキシド加水分解のための水に混合しても、シリコンアルコキシドに混合しても、加水分解直後に均一溶液となったヒドロゾルに混合してもよく、操作性に応じ適宜選択される。また、必要であれば、シランカップリング剤や有機基導入試薬を前もって加水分解した後に上記の系に混合したり、逆に、シリコンアルコキシドの部分加水分解を行なった後にシランカップリング剤又は有機基導入試薬を混合したりしてもよい。
さらに、有機基含有シリカは、細孔制御後の高純度シリカに目的とする有用有機基を含む化合物を後担持させる方法でも製造できる。この場合、まず、シリカの細孔中にシランカップリング剤や有機基導入試薬を導入する。その方法としては、例えば、無機粉体のシランカップリング剤処理法としてよく知られている湿式処理法(水溶媒系、非水溶媒系)、乾式処理法、スラリー法、スプレー法、ドライコンセントレート法等の公知の方法の何れを用いても良い。
以上のように、有用有機基は、シリコンアルコキシドを加水分解し、熟成すること無しに水熱処理して得られたシリカゲルに、上記の方法で導入させることができるが、目的有機基を後担持させる場合には、担体となる高純度シリカゲルに対して前処理を行なってもよい。例えば、前述した原料由来の炭素分の焼成除去、表面状態をコントロールするための焼成、無機酸による煮沸処理などを行なってもよい。
[1−3]本発明のシリカの特性:
本発明のシリカは、大きな細孔容積及び比表面積を有するように、その構造を制御されたものであり、したがって、吸着発熱性、調湿性、吸湿発熱性、薬剤徐放性、吸着性、及び抗菌性などの吸放出性能を効果的に発揮することできる。また、上記の発熱助剤や吸湿助剤等のように、助剤を用いることで目的とする特性をさらに高めることができる。
また特に、本発明のシリカは以下に示す理由から優れた調湿機能を有する。
シリカは高湿度では余剰の水蒸気を吸湿する一方、低湿度では吸湿していた水蒸気を放出する性質があり、平均細孔径を3〜5nmに設定すれば、系内を平均細孔径に対応した快適な湿度(40%〜60%)に調湿することができる。また平均細孔径を5nm〜10nmに設定すれば、高湿度(60%〜90%)の水蒸気を吸湿して調湿するため、例えば衣服内の運動後などの高湿度下での蒸れなどを解消することができる。この調湿機能はシリカに対する水蒸気の吸着等温線により評価されるが、細孔径分布がシャープであるほど、最頻細孔直径に対応する相対湿度付近で、湿度の増加に対し急激に水蒸気の吸着量(吸湿能力)が増加する傾向となる。しかし、従来のシリカでは、その細孔径分布がブロードなので、湿度の変化に対する水蒸気の吸着量の変化は緩慢になり、その調湿も緩慢なものとなってしまう。
吸着物質(ここでは水蒸気)が毛管凝縮を起こしシリカに急激に吸着され始める相対蒸気圧(P/P0)〔ここでは、吸着物質が水蒸気なので、(P/P0×100)が相対湿度(%)に相当する〕と細孔半径r(nm)との相関関係は、下式(2)のケルビン式で表せる。
ln(P/P0)=−(2Vmγcosθ)/(rRT) ・・・式(2)
上式(2)において、Vmは吸着物質のモル体積、γは吸着物質の表面張力、θは吸着物質の接触角、Rは気体定数、Tは吸着物質の絶対温度(K)である。
ここで、吸着物質を水蒸気とし温度T=298K(=25℃)とすると、モル体積Vm=18.05×10-63/mol,表面張力γ=72.59×10-3N/mとなり、さらに、気体定数R=8.3143J/deg・mol、接触角θ=0とすると、上式(2)は下式(3)となる。
ln(P/P0)=−1.058/r ・・・式(3)
上式(3)より、細孔半径r(nm)のシリカでは、相対蒸気圧(P/P0)がexp
(−1.058/r)になると、水蒸気が毛細管凝縮してシリカの細孔内に急激に吸着されることがわかる。
このように、シリカの細孔により水蒸気の吸着が行なわれるようになる相対蒸気圧(P/P0)ひいては相対湿度は、その細孔径2r(nm)を主な要因として決定される。したがって、上述したように、細孔径分布がシャープなシリカでは、周囲の湿度が、その最頻細孔直径に対応する所定の湿度を上回ると急激に吸湿が行なわれるようになり、一方、上記所定湿度を下回ると急激に脱湿が行なわれるようになる。この結果、細孔径分布がシャープなシリカは、周囲の湿度を上記所定湿度に迅速且つ精度良く制御できるという優れた調湿作用を示すのである。
また、本発明のシリカは、直径がDmax±20%の範囲内にある細孔の総容積が全細孔の総容積の50%以上となるようにし、他のシリカと比較して細孔分布がシャープとなるようにして、その細孔径を従来よりも精密に制御することが可能である。そして、本シリカでは、細孔径を2〜20nmの範囲の任意の径に制御可能なので、このような細孔径制御に対応して、周囲の相対湿度を、35〜90%の幅広い範囲で任意に精度良く調湿できるという利点がある。
また、住環境において快適な湿度とされる相対湿度40%〜60%に調湿しうる3〜10nmの細孔径を有し且つシャープな細孔径分布を有するシリカを再現性良く製造することは、従来法のシリカにおいては困難であったが、本発明のシリカでは、上記の細孔径領域においても精度良く細孔制御を行なえる。
さて、一般にシリカは水分の存在下で加熱すると劣化しやすいのに対し、本発明のシリカは、不純物の含有率を非常に低く、さらに、シロキサン結合角の歪みの少ない均質で安定な構造とすることができることから、たとえ過酷な環境下(例えば高温・高湿下)においても細孔特性などの物性変化が少ないといった特性を有する。したがって、長時間にわたって使用したり、加熱による再生工程を伴う繰り返し行なったりしても、細孔特性ひいては吸放出特性の劣化が少ないという利点がある。
そして、本発明のシリカにおいては、有機テンプレートを使用することなく製造され、高精度な細孔制御により上記の利点を有するシリカを安価に製造できる利点がある。
さらに、本発明のシリカは、同程度の細孔径を有する他のシリカと比較して、比較的高細孔容積且つ高比表面積という特徴を有しており、このため、同程度の細孔径を有する他のシリカよりも、吸着物質の吸着能力に優れ、且つ、吸着容量が大きい。したがって、調湿性に注目すると、高湿度下のためシリカの吸湿能力が飽和した場合にはシリカが結露してしまい、シリカによる調湿が不可能になるが、本発明のシリカではこのようなことが抑制され少ない量で効率的に調湿を行なえるという利点がある。
また、本発明のシリカは非晶質であることから極めて生産性に優れているという利点がある。
[2]バインダ樹脂:
本発明に用いるバインダ樹脂は任意である。ただし、シリカの細孔にバインダ樹脂が浸入し、細孔を埋めると、吸放出性能が低下する虞がある。したがって、本発明の成形体とした場合に、バインダ樹脂がシリカの細孔を埋めないようにすることが望ましい。
上記のような観点から、本発明においては、バインダ樹脂としては、バインダ樹脂が自由に動ける状態にあるとき、即ち、バインダ樹脂が液体状態にあるときや何らかの溶剤に溶解又は分散しているとき(例えば、本発明のシリカ及びバインダ樹脂が溶剤に混合されて塗料となっているとき)に、シリカの細孔内に浸入し難いものを用いることが望ましい。これにより、樹脂成形体(本発明の成形体)を製造した際にシリカの細孔がバインダ樹脂で塞がれることを防止することができ、シリカの吸放出性能を高めることができる。
以上のように、バインダ樹脂が自由に動ける状態にある場合に、バインダ樹脂がシリカの細孔内に浸入しないようにするためには、以下の条件(α)及び条件(β)の内の少なくともいずれかの条件を満たすことが望ましい。
条件(α):分子量が通常10000以上、好ましくは20000以上、より好ましくは30000以上、さらに好ましくは35000以上、また、通常1000000以下、好ましくは800000以下、より好ましくは500000以下のバインダ樹脂を用いる。バインダ樹脂の分子量を10000以上とすることにより、バインダ樹脂がシリカ(特に、本発明のシリカ)の細孔を埋めることを防止でき、また、分子量を1000000以下とすることにより、シリカ及びバインダ樹脂を溶剤と共に塗料とした場合に、バインダ樹脂の粘性が高くなりすぎて塗料の取り扱い性が低下することを防止することができる。
また、バインダ樹脂が自由に動ける状態にある場合に、バインダ樹脂がシリカの細孔内に浸入しないようにするためには、「バインダ樹脂の分子量/シリカの最頻細孔直径(Dmax)」で表されるバインダ樹脂の分子量とシリカの最頻細孔直径(Dmax)との比の値(但し、この際のシリカの最頻細孔直径(Dmax)の単位は「nm」とする)が、通常200以上、好ましくは2500以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは35000以上、また、通常500000以下、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下であることが望ましい。これによっても、バインダ樹脂がシリカ(特に、本発明のシリカ)の細孔を埋めることを防止でき、また、シリカ及びバインダ樹脂を溶剤と共に塗料とした場合に、バインダ樹脂の粘性が高くなりすぎて塗料の取り扱い性が低下することを防止することができる。
条件(β):バインダ樹脂は、そのガラス転移温度Tgが通常−80℃以上、好ましくは−70℃以上、より好ましくは−50℃以上、さらに好ましくは−30℃以上、また、通常110℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは15℃以下が望ましい。これによっても、バインダ樹脂がシリカ(特に、本発明のシリカ)の細孔を埋めることを防止できる。
条件(α)と条件(β)とは一方のみを満たしていてもよく、両方を満たしていても良い。ただし、後述するようにシリカ及びバインダ樹脂を溶剤に混合して塗料とする際、溶剤として有機溶剤を用いる場合には条件(α)を満たすことが好ましく、水系溶剤を用いる場合には条件(β)を満たしていることが好ましい。
ここで、バインダ樹脂が自由に動ける状態にある場合であっても、バインダ樹脂がシリカの細孔内に浸入しないようにすることができる理由を説明する。
上記のように、バインダ樹脂が自由に動ける状態にある場合にバインダ樹脂がシリカの細孔内に浸入しないようにするためには、バインダ樹脂の径がシリカの細孔の径よりも大きくなるようにすることなどによって、バインダ樹脂がシリカの細孔内に浸入できないようにすれば良い。ここで、バインダ樹脂の径とはバインダ樹脂の分子の径をいうが、バインダ樹脂が有機溶剤や水系溶剤などの溶剤に溶解または分散して、その分子が凝集した粒子(例えば、凝集塊やコロイドなど)となっているときには、バインダ樹脂の径とは、その凝集した粒子の径を指すものとする。
ところで、バインダ樹脂の径(大きさ)は、バインダ樹脂の分子量の大きさに関連しており、分子量が大きいバインダ樹脂ほどその径も大きいことが知られている。よって、シリカの細孔に浸入しない程度に大きいバインダ樹脂を選択する場合には、所定の範囲の大きさの分子量を有するバインダ樹脂を選択すればよいことになる。
したがって、分子量が上記範囲内にあるバインダ樹脂、または、バインダ樹脂の分子量とシリカの最頻細孔直径(Dmax)との比が上記範囲内にあるバインダ樹脂は、シリカ(特に、本発明のシリカ)の細孔に浸入し難い程度以上の大きさの径を有しているため、バインダ樹脂が自由に動ける状態にある場合であっても、シリカ内にバインダ樹脂が入り込むことを防止することができる。これにより、バインダ樹脂がシリカの細孔を埋めることを防止することができる。
なお、バインダ樹脂の分子量は、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)や、バインダ樹脂を溶解させた溶液の粘度測定などにより計測することができる。
また、固体状態におけるバインダ樹脂の径D(nm)は、通常、固体状態のバインダ樹脂の密度a(g/ml)とバインダ樹脂の分子量Mとを用いて、下記計算式により算出することができる。
Figure 0004691985
また、溶剤中に溶解又は分散している場合のバインダ樹脂の径は、多角度光散乱検出器(MALS)などを用い、溶剤にレーザ光を照射し、そこから得られる光散乱強度から測定することができる。さらに、透過型電子顕微鏡によりバインダ樹脂を観察して径を測定する方法、バインダ樹脂が溶解または分散している溶剤の濁り度(turbidity)から径を
測定する方法、CHDF(Capillary Hydrodynamic Fractionation)法などによっても、バインダ樹脂の径を測定することができる。
なお、バインダ樹脂が溶剤中に溶解や分散している場合も、濃度が高い場合には、バインダ樹脂のポリマー鎖は糸まり状となっており、固体状態の分子径に近い分子径を有していると考えられる。
ただし、通常、溶剤に溶解していない状態ではバインダ樹脂はポリマー鎖が球状に縮まって存在するが、溶解した状態においては、バインダ樹脂は分子単独で存在するのではなく複数の分子が絡み合って分子サイズが大きくなった状態や、膨潤して分子サイズが大きくなった状態となっていることがある。したがって、分子量から算出されるバインダ樹脂の径がシリカの最頻細孔直径(Dmax)よりも小さくても、溶剤中においてバインダ樹脂がシリカの細孔内に浸入することを防止することができることがある。具体例としては、平均分子量が95000のアクリル樹脂の場合には、その径(分子サイズ)は6nmとなるが、最頻細孔直径(Dmax)が15nmのシリカの細孔を塞ぐことは無い。
また、溶解した状態のバインダ樹脂の分子サイズは、バインダ樹脂と溶剤との溶解度によっても変化する。しかし、いずれの状態においても、バインダ樹脂の分子量とシリカの最頻細孔直径(Dmax)との比、または、バインダ樹脂の分子量が上記範囲内であれば、バインダ樹脂がシリカの細孔を埋めることを防止することができる。
また、特にバインダ樹脂が溶剤(特に水系溶剤)中でコロイドとなりエマルジョンが形成されている場合には、エマルジョン中のバインダ樹脂(コロイド)は、分子が凝集した構造となって界面活性剤(保護コロイド)により安定化し、シリカの細孔に浸入しない程度に大きくなっている。即ち、バインダ樹脂の径(ここでは、エマルジョン中のバインダ樹脂のコロイドの径)が、シリカの細孔の径よりも大きくなっているのである。
また、仮にバインダ樹脂の分子量が上述した範囲に収まっていない場合であっても、バインダ樹脂の分子量に関わらず、通常、バインダ樹脂のコロイドの大きさはシリカの細孔に浸入しない程度に大きくなる。このため、バインダ樹脂のコロイドが安定している限りはバインダ樹脂がシリカの細孔に浸入することを防止することができる。
ところで、エマルジョン中におけるバインダ樹脂のコロイドの安定性はガラス転移温度Tgに関係している。したがって、コロイドが安定するガラス転移温度Tgを有するバインダ樹脂を用いることで、溶剤を用いたエマルジョン中でシリカの細孔にバインダ樹脂が浸入することを防ぐことができる。具体的には、上記のようにガラス転移温度Tgが通常−80℃以上通常110℃以下のバインダ樹脂を用いれば、溶剤とともにエマルジョンとなった状態において、バインダ樹脂がシリカ(特に、本発明のシリカ)の細孔に浸入することを防止することができる。
さらに、ガラス転移温度Tgが−80℃以上となることにより、バインダ樹脂が適当な強度を有することができるため、シリカ及びバインダ樹脂の組成物(例えば、本発明の樹脂組成物)を成形して本発明の成形体とした場合に、吸湿機能の低下や、べた付きなどの物性・取扱い性が悪くなる虞がなく、また、シリカの分散を行ない易い。また、ガラス転移温度Tgが110℃以下となることにより、バインダ樹脂が硬すぎることがなく、シリカ及びバインダ樹脂の組成物(例えば、本発明の樹脂組成物)を成形して本発明の成形体とした場合に、シリカが成形体から脱離する虞を無くすことができ、また、風合いを良好にすることができる。なお、本発明の樹脂組成物とは、後で説明するように、本発明のシリカと、上記条件(α)及び条件(β)の少なくともいずれか一方を満たすバインダ樹脂とからなる組成物のことを言う。また、適宜、本発明の樹脂組成物を本発明の組成物と略称する。
また、エマルジョンは、分散している粒子の径に応じてコロイダルディスパージョン(粒子径10nm〜50nm)、エマルジョン(50nm〜500nm)、サスペンジョン(0.5μm〜10μm)などの分類がある。
以上のように、本発明の成形体に用いるバインダ樹脂においてはその分子量及びガラス転移温度Tgのいずれか一方が上記条件を満たすことが望ましいが、当然、分子量及びガラス転移温度Tgの両方が上記条件を満たすことがより望ましい。
さらに、バインダ樹脂の架橋度が大きい場合にも、バインダ樹脂の径は大きくなる。したがって、バインダ樹脂としては高架橋度のものが好ましい。よって、バインダ樹脂の製造中、本発明の組成物等のバインダ樹脂とシリカとの組成物、本発明の塗料等のバインダ樹脂とシリカとを溶剤に混合した塗料などに、バインダ樹脂を架橋する架橋剤を適宜混合することが好ましい。なお、バインダ樹脂の架橋度は有機溶媒に対する溶解性を調べることで測定することができる。
バインダ樹脂の具体例としては、ニトロセルロース、酢酸セルロース、酪酢酸セルロースなどのエステル系セルロース;メチルセルロース、エチルセルロースなどのエーテル系セルロース;ポリアミド樹脂、塩化ゴム、環化ゴム、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン、もしくはアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン・尿素樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリベンゾチアゾール等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。
また、油脂、ボイル油、煮あまに油、桐油スタンド油、油性フェノール樹脂、マレイン化油などの加工油脂;乾性油変性フタル酸樹脂、不乾性油変性フタル酸樹脂、変性アルキド樹脂、エポキシ−脂肪酸エステル樹脂、エポキシ−アルキド樹脂、油編成ポリウレタン樹脂などの油あるいは脂肪酸変性フタル酸樹脂;不飽和ポリエステル樹脂、フッ素変性ポリエステル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂などのポリエステル樹脂;シリコーン樹脂;アクリルシリコーン樹脂;含フッ素樹脂;無機系樹脂等が挙げられる。
さらに、スチレンマレイン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシエステル樹脂、ポリアミン樹脂などの樹脂のほか、天然ゴム、再生ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ステレオゴム(合成天然ゴム)、エチレンプロピレンゴム、ブロックコポリマーゴム(SBS,SIS,SEBS等)などのゴムも、バインダ樹脂として使用することができる。
さらに、後述するように、シリカ及びバインダ樹脂(例えば、本発明の組成物)を水系溶剤(親水性の溶剤)と共に塗料とする場合には、バインダ樹脂としては、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン、熱反応型ウレタン系樹脂、NBR、SBR、アクリル、イソシアネート系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ポリアクリル酸系エマルジョン、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、高分子ラテックス等のポリマーを用いることが好ましい。
中でも、本発明の成形体を、繊維や布材等の基材にシリカ及びバインダ樹脂(例えば、本発明の樹脂組成物)を含浸させたものとして形成する場合には、柔軟性、強度、耐候性、耐摩耗性などの観点から、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルポリウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましく、特にポリカーボネート系ポリウレタンがより好ましい。さらに、素材(後述するように、シリカがバインダ樹脂により基材に固着された形態の成形体)の柔軟性と洗濯耐久性の点から、シリコーン系樹脂が最も好ましい。
また、粘着性の観点からは、バインダ樹脂として、高分子ラテックスに含まれる樹脂を用いることが好ましい。高分子ラテックスとしては、合成樹脂ラテックスおよびゴムラテックスがある。
合成樹脂ラテックスの具体例としては、ポリ塩化ビニルラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス、ポリウレタンラテックス、アクリル樹脂ラテックス、ポリ酢酸ビニルラテックス、ポリアクリロニトリルラテックスおよびこれらの変成体、共重合体などが挙げられる。したがって、この場合のバインダ樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル及びこれらの変性体、共重合体などが挙げられる。
代表的な合成樹脂ラテックスであるアクリル酸ラテックスについて、さらに詳細に説明する。
特に好ましいアクリル樹脂ラテックスとしては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合体エマルジョンがある。その重合体エマルジョン中のバインダ樹脂の主成分となる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。この主成分と併用して用いられるものとして、共重合可能なエチレン性不飽和単量体があり、単量体としては、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アミド、N−メチロールアクリル酸アミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸などが挙げられる。
上記の単量体と併用する場合、主成分となる(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、50重量%以上とするのがよい。また、アクリル樹脂は、乳化重合法により形成したものがよい。例えば窒素置換した反応容器で水、エチレン性不飽和単量体、乳化剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなど)、およびラジカル重合開始剤を混合し、加熱攪拌して所定の温度で重合する。アクリル樹脂の粒子径の制御は、乳化重合時における乳化剤の濃度を調整することにより行なうことができる。
また、ゴムラテックスに含まれるバインダ樹脂としては、具体的には、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレインイソブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリエチレンプロピレンなどが挙げられる。
ブタジエン共重合体としてはブタジエンを20〜80重量%含みこれと共重合可能な不飽和モノマー20〜80重量%を含むものが好ましい。不飽和モノマーとしては、メタアクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸アミド、N−メチロールアクリル酸アミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸などが利用できる。
ブタジエン共重合体の共重合組成は、例えば車両用に用いる際のように耐熱性と耐候性とを必要とする場合には、ブタジエン20〜60重量%、(メタ)アクリル酸エステル40〜80重量%、他の不飽和モノマー0〜20重量%であることが望ましい。
さらに、ガラス転移温度Tgが−80℃〜110℃のバインダ樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ブタジエン系樹脂などが挙げられる。
また、上記バインダ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[3]成形体の特徴:
本発明の成形体は、バインダ樹脂と、シリカとからなる樹脂成形体であり、さらに、シリカの細孔容積の通常30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上が、本発明の成形体の外部に開放されている、即ち、細孔内と成形体外部とが連通していることを特徴とする。なお、シリカの細孔のうち、本発明の成形体の外部に開放されている細孔の容積の割合は、本発明の成形体、シリカ、及びバインダ樹脂それぞれについて細孔容積を測定することにより、算出することができる。
また、本発明の成形体の形状は任意であり、例えば、膜状(基材表面に塗布した場合等の様子)、平板状、シート状、ブロック状、パイプ状、繊維状(練り混みで繊維内にシリカが入っている場合等の様子)などの形状に成形して用いることができる。
さらに、本発明の成形体には、必要に応じて各種の処理、例えば、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深しぼり加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を施すことができる。
なお、本発明の成形体を層状の成形体とする場合、少なくともシリカ及びバインダからなる層を有していれば他に制限は無く、例えば、シリカ及びバインダ(例えば、本発明の組成物)を含有する層のみからなる単層構造物として構成してもよく、シリカ及びバインダ(例えば、本発明の組成物)を含有する層を1層又は2層以上含む、複数の層からなる積層構造物として構成してもよい。
積層構造物を製造するには、例えば、シリカ及びバインダの組成物(例えば、本発明の組成物)を含有する層の片面又は両面に他の材料からなる層をラミネートすればよい。ラミネート方法としては例えばシリカ及びバインダ樹脂の組成物(例えば、本発明の組成物)で形成されたフイルム、シートに他の樹脂などを溶融押出する方法、逆に他の樹脂などからなる基材にシリカ及びバインダの組成物(例えば、本発明の組成物)を溶融押出する方法、シリカ及びバインダの組成物(例えば、本発明の組成物)と他の樹脂とを共押出する方法、更にはシリカ及びバインダで形成されたフイルム、シートと他の基材のフイルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられる。なお、本発明に言うフィルムとは、シート、テープ、管、容器等の形態を含む広義のフィルムを意味する。
また、例えば、本発明の成形体は、空調機等に組み込むためにハニカム状に成形することもでき、これは、シリカを結合剤(バインダ樹脂)と混合してこれを成形したり、シリカ、バインダ樹脂及び水と混合しスラリーにしたものを用いて成形体(本発明の樹脂成形体)を得たりすることによりできる。なお、場合によってはシリカだけを用いてハニカムを作製することもできる。この際、上記シリカを含むスラリーは、例えば、シリカと、このシリカ100重量部に対して通常2〜20重量部の有機結合剤と、通常10〜50重量部の無機結合剤と、通常150〜200重量部の水とからなる。上記有機結合剤としては、例えばメチルセルロース等を用いる。また、上記無機結合剤としては、例えばシリカゾル等を用いる。
さらに、本発明の成形体は、シリカ及びバインダ樹脂をそのまま成形する以外に、バインダ樹脂及びシリカが固着した基材を含むことが好ましい。即ち、シリカ及びバインダ樹脂を含む組成物が基材に固定されることにより、本発明の成形体が形成されることが好ましい。このように基材を含む成形体は、例えば、シリカ及びバインダ樹脂を溶剤に溶解又は分散させたもの(例えば、本発明の塗料)を、基材に塗布、含浸等することにより製造することができる。
また、ここで、基材について特に制限はなく、繊維、紙、プラスチック、木材、コンクリート、金属、皮革等を素材とするフィルム、シート、板材、布地等、任意のものを基材として用いることができるが、中でも、繊維及びシートが好ましい。また、基材として繊維を用いた場合、その繊維を紡績して糸としたり、織って布としたり、圧縮成形して繊維板としたりして用いてもよい。これらの基材は、何れか一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
繊維の例としては、天然繊維及び合成繊維の何れでも良く、また、これら両方を用いた繊維でも良い。また、繊維も織布、編布、不織布等、任意の状態のものを用いることができる。具体的には、織物、モケット、タオル地、トリコット、ダブルラッセル、丸編、ニードルパンチ等が挙げられる。また、ここでいう繊維としては、例えば、木綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、あるいはレーヨン;アセテート;蛋白質繊維;塩化ゴム;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン−12等のポリアミド;ポリビニルアルコ−ル;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリアクリロニトリル;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリウレタン;ポリシアン化ビニリデン;ポリフルオロエチレン等、さらにそれらの共重合体、ブレンド体からなる繊維が挙げられる。汎用性の観点から、ポリエステル、ポリアミドを用いることが好ましい。また、これらは他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料などの添加物を含有していてもよい。
さらに、静電気を有効に放散させるために利用されている導電性の布地を用いてもよい。ここでいう導電性の布地とは、銅、アルミニウム、ステンレス、カーボン、導電性高分子などの導電性の物質を、有機質繊維の中に粒子状で混合したり、有機質繊維の表面に真空蒸着法でコーティングしたり、有機質繊維とクラッドさせたもの、または導電性の物質そのものからなる導電性繊維を上記布地に対して添加したものなどである。布地への導電性繊維の添加方法としては、繊維状態での混合、スライバー状態でのミックス、糸状での撚糸、フィラメント状でのミックスまたは撚糸、組織上での配列のいずれでもよい。
また、上記繊維の単糸繊度は通常0.01dtex以上、好ましくは0.1dtex以上、より好ましくは1dtex以上、また、通常100dtex以下、好ましくは10dtex以下である。100dtex以下であれば、繊維として十分な表面積があるため、吸湿性能を充分発揮でき、好ましい。また0.01dtex以上であれば、シリカを含浸した場合でも繊維として実用的な機械的強度を確保できるため好ましい。
また、合成繊維の断面形状については丸断面、中空断面、三葉断面等の多葉断面、その他の異形断面についても自由に選択することが可能である。また、合成繊維の形態は、長繊維、短繊維等特に制限は無い。布地としては、用途に応じて織物、編物が使用でき、織物では平織、綾織、朱子織、それらを組み合わせたものなど、編物ではメリヤス編など、何れを用いても良い。
さらに、塗料を基材に含浸させて本発明の成形体を形成し、その成形体を光拡散シートとする場合、基材の形状もシート状であることが好ましい。また、その場合は、基材は透明な材質で形成されていることが好ましく、特に、無色透明の材質で形成されていることがより好ましい。
透明な素材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、塩化ビニルなどの合成樹脂等が挙げられる。
また、透明な素材の厚みについて特に制限は無いが、その用途に応じて、通常50μm以上1cm以下の適当な厚みに形成することが望ましい。
また、前述したように本発明の成形体をハニカム状に形成する場合、セラミック製などのハニカム体を基材とし、この基材にシリカ及びバインダ樹脂を塗布して用いることができる。この場合、例えばシリカ及びバインダ樹脂を溶剤に混合して塗料とし、これをハニカム体にコートする。上記ハニカム体としては、例えばコージライト製のものを用いることができる。また、シリカは、これを球状体,柱状体等の粒子形態としてからカラムに充填して用いることができる。この場合、粒子の大きさは、カラムの充填部の通気性の確保や水蒸気との接触面積の確保を考慮して、球状体では、通常、直径0.1〜30mm、また、柱状体では、通常、柱径0.1〜10mmで長さ1〜30mm程度とすることが好ましい。
なお、上記シリカを配したカラムあるいはハニカムに、調湿すべき空間の空気を導入する導入口、そして調湿した空気を吹き出す吹出口を付け、必要であれば空気を循環させる動力機(ポンプ,ファンなど)を取り付けても良い。上記カラム或いはハニカム体は、空調機に取り付けた場合などに、調湿すべき空間の空気を積極的に通すことにより、より多くの空気がシリカ表面や湿度調節剤と接触可能となる。そのため、短時間で空間の湿度を一定に保つことができる。
また、基材を用いて本発明の成形体を作製する場合、シリカは基材に固着していればどのような状態で固着していてもよく、例えば、シリカ及びバインダ樹脂が基材の全体を被覆するようにして基材に固着していてもよく、基材の一部のみに添着するように固着していてもよい。
なお、基材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[4]成形体の組成:
本発明の成形体中におけるシリカの比率は任意であるが、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上、また、通常95重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下とすることが望ましい。シリカの含有率がこの範囲よりも小さいと十分な吸放出性能を発揮することができない虞があり、また、この範囲よりも大きいとバインダ樹脂がシリカを保持しきれなくなる虞がある。
また、本発明の成形体中におけるバインダ樹脂の比率も任意であるが、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、また、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下とすることが望ましい。バインダ樹脂の含有率がこの範囲よりも小さいとシリカを保持しきれなくなる虞があり、また、この範囲よりも大きいと十分な吸放出性能を発揮することができない虞がある。
さらに、本発明の成形体中において、シリカとバインダ樹脂との比(シリカ/バインダ樹脂)は任意であるが、重量比で、通常0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上、特に好ましくは0.8以上、また、通常50以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは2以下である。上記の比がこの範囲よりも小さいと十分な吸放出性能を発揮することができない虞があり、また、この範囲よりも大きいとバインダ樹脂がシリカを保持しきれなくなる虞がある。
また、シリカ及びバインダ樹脂を混合して組成物とし、その組成物を成形して本発明の成形体とする場合、その組成物をそのままの組成で成形してもよいが、成形時にシリカ及びバインダ樹脂の一方或いは両方をさらに加え、その組成を調整してから成形を行なっても良い。
さらに、本発明の成形体は、その他の成分(添加剤)を有していてもよい。したがって、本発明の成形体は、成形体の用途等によっては、シリカ及びバインダ樹脂に加え、可塑剤、安定剤、界面活性剤、架橋性物質(架橋剤)、充填剤、着色剤(色材)、pH調整剤、難燃剤、導電剤、硬化剤、顔料分散剤、乳化剤、乾燥剤、消泡剤、防腐剤、凍結防止剤、増粘剤、発熱助剤、吸湿助剤、補強材としての繊維(ガラス繊維、炭素繊維など。また、基材としての繊維も使用可能)、消臭剤、抗菌剤、機能性薬剤等のその他の成分を適当量配合した上で、これを成形体とすることもできる。また、これらその他の成分は、本発明の成形体を製造するいずれの段階において配合してもよく、例えば、本発明の成形体の原料(即ち、シリカ及びバインダ樹脂)に混合してもよく、本発明の成形体の成形過程で混合してもよく、成形してから導入してもよい。なお、これらその他の成分は本発明の成形体のみならず、後述する本発明の組成物及び塗料に混合させることもできる。また、予めシリカの細孔内に担持してから本発明の成形体を作製しても良い。さらに、作製後の樹脂成形体に後から含浸などの操作により混合しても良い。
これらの添加剤のうち、代表的なものについて詳述する。
例えば、本発明の成形体を着色するために色材を混合させても良い。なお、色材は本発明の成形体に製造途中で用いる塗料(本発明の塗料を含む)に混合させたり、予めシリカに混合してシリカを着色して用いるようにしたりしてもよい。色材としては、公知の各種色材を任意に選択して用いることができ、例えば、無機顔料、有機顔料、及び染料などを用いることができる。
無機顔料の具体例としては、クレー、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、雲母、雲母状酸化鉄、黄土などの天然無機顔料や、鉛白、鉛丹、黄鉛、銀朱、群青、紺青、酸化コバルト、二酸化チタン、二酸化チタン被覆雲母、ストロンチウムクロメート、チタニウムイエロー、チタンブラック、カーボンブラック、グラファイト、ジンククロメート、鉄黒、モリブデン赤、モリブデンホワイト、リサージ、リトポンなどの合成無機顔料や、アルミニウム、金、銀、銅、亜鉛、鉄などの金属類が挙げられる。
また、有機顔料の具体例としては、染料を体質顔料に染め付けて沈殿剤でレーキとした染色レーキ、溶性アゾ、不溶性アゾ、縮合アゾ等のアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、ニトロソ系顔料、ニトロ系顔料、塩基性染料系顔料、酸性染料系顔料、建染染料系顔料、媒染染料系顔料などが挙げられる。
また、その他使用できる色材の例としては、粒状物、砂状物、粉状物の、ガラス、アイオノマー、AS、ABS、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂(プラスチック)、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、これらは着色物、非着色物を問わない。
なお、上記の色材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、例えば、本発明の成形体を製造する途中で用いる塗料をエマルジョンとするために界面活性剤を混合させてもよい。界面活性剤としては、公知の各種界面活性剤を任意に選択して用いることができ、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどのトリポリリン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルフォン酸塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、スチレン−マレイン酸共重合体などの合成高分子、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリオキシエチレンフェノールエーテル、ポリオキシブチレンフェノールエーテルなどのポリオキシアルキレンアリールエーテルなどを用いることができる。
なお、上記の界面活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、例えば、pH調整剤を混合させてよい。pH調整剤を用いることで、シリカ及びバインダ樹脂を含む塗料などにおいて、例えばバインダ樹脂としてアクリル樹脂ラテックス等のアルカリ性領域(通常pH8〜10)で安定化させてある高分子ラテックスと、水系溶剤中で酸性を示すシリカとを用いる場合などに、バインダ樹脂を安定化させることができる。pH調整剤としては、公知の各種pH調整剤を任意に選択して用いることができ、例えば、アンモニア水などを用いることができる。
なお、pH調整剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、例えば、難燃剤を混合させても良い。難燃剤としては、公知の各種難燃剤を任意に選択して用いることができ、無機系難燃剤及び有機系難燃剤のいずれも使用することができる。一般に、難燃剤としては、アンチモン系化合物、リン系化合物、塩素系化合物、臭素系化合物、グアジニン系化合物、ホウ素化合物、アンモニウム化合物、臭素系ジアリールオキサイド、臭素化アレン等が知られている。具体例としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、リン酸第一アンモニウム、リン酸第二アンモニウム、リン酸トリエステル、亜リン酸エステル、フォスフォニウム塩、リン酸トリアミド、塩素化パラフィン、デクロラン、臭化アンモニウム、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモエタン、塩酸グアニジン、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、リン酸グアニル尿素、四ホウ酸ナトリウム10水和物(ほう砂)、硫酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、デカブロモジフェニールオキサイド、ヘキサブロモフェニールオキサイド、ベンタブロモフェニールオキサイド、ヘキサブロモベンゼンなどが挙げられる。
なお、難燃剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、例えば、導電剤、帯電防止剤を混合させても良い。導電剤としては、公知の各種導電剤を任意に選択して用いることができ、例えば、導電性カーボンブラック、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性高分子、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属粉末、カーボン繊維、金属繊維等の導電性繊維物質、アニオン系、カチオン系、ノニオン系帯電防止剤、第4級アンモニウム化合物等を用いることができる。
なお、導電剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、例えば、充填剤を混合させても良い。充填剤としては、公知の各種充填剤を任意に選択して用いることができ、例えば、セピオライト、パリゴルスカイト等の含水ケイ酸マグネシウム質粘土鉱物、活性炭、活性炭素繊維、シリカゲル、合成ゼオライト、クリストバライトなどの多孔性吸着材料が挙げられる。
なお、充填剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、例えば、耐光性、耐熱性、耐水性、耐溶剤性等の各種耐久性を改善する目的で、安定剤を混合させても良い。安定剤としては、公知の各種安定剤を任意に選択して用いることができ、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等を用いることができる。
なお、安定剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、例えば、耐光性、耐熱性、耐水性、耐溶剤性等の各種耐久性を改善する目的で、バインダ樹脂の架橋度を高める架橋剤を混合させても良い。架橋剤としては、公知の架橋剤を任意に選択して用いることができ、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、ポリカルボジイミド化合物等を用いることができる。
なお、架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、例えば、上述した発熱助剤や吸湿助剤などの助剤を混合させてもよい。これら助剤も、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、その他、シリコーン系、フッ素系などの撥水剤、ポリエチレングリコールなどの親水性の剤、補強充填剤、可塑剤、劣化防止剤、分散剤、帯電防止剤などを用いることも可能であり、これらも1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
この他、基材に粒子添着剤をあらかじめ処理しておいてもよい。これにより、シリカと基材とを強固に固着させることができる。したがって、例えば基材として繊維を用いて本発明の成形体を作製し、作製した繊維状の成形体で衣類を製造した場合、繊維からシリカが脱離することを防止でき、その衣類の洗濯耐久性を向上させることができる。この粒子添着剤は基材とシリカとの2つを結合させるものが用いられる。具体例を挙げると、シランカップリング剤などが好適に用いられる。また、これらは添加剤として樹脂組成物(例えば、本発明の組成物)と共に混合して用いても良い。なお、粒子添着剤も、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[5]成形体の性質:
以上説明した本発明の成形体は、優れた耐久性や耐水性を有するシリカを用いているので、この性質を損なわないようにバインダ樹脂やその他併用する成分の種類を適切に選択すれば、高い耐久性や耐水性をも備えさせることができる。
さらに、本発明の成形体は、シリカの細孔容積の大部分が成形体外部に開放されているため、シリカが有する優れた吸放出性能を十分に発揮することが可能となるのである。また、大量の物質を吸着できるため、本発明の成形体は、優れた吸着性(悪臭物質の吸着による消臭性等を含む)を発揮することができ、また、薬剤等の吸着物質の優れた徐放性を発揮することができる。
以下、本発明の成形体が発現しうる吸放出性能のうち、代表的なものとして、吸着発熱性、調湿性、吸湿発熱性、薬剤徐放性、吸着性、抗菌性等について詳細に説明する。
<吸着発熱性(吸湿発熱性)>
何らかの物質がシリカの細孔に吸着すると吸着熱が発生する。この吸着に伴い発熱する性質が吸着発熱性である。
特に、吸着物質が湿気である場合、多孔質のシリカが水を吸着する際に水素結合、溶解熱、ファンデルワールス力などによる発熱が生じる。この性質を吸湿発熱性といい、シリカの比表面積が大きいほどシリカ表面への化学結合力による発熱量も増加することになる。また、細孔容積が大きいと細孔内部への水の吸着量が多くなり、発熱量を大きくすることができる。
したがって、本発明の成形体においても、例えば湿気(水)などの吸着物質を吸着した場合などには、吸着熱が発生することになる。このとき、本発明の成形体は、上記のように大量の物質(ここの例では、水)を吸着することが可能であるため、大きな吸着熱を発生させることになる。これは、換言すれば、本発明の成形体が優れた吸着発熱性及び吸湿発熱性を有していることを意味する。
したがって、本発明の成形体には、例えば、次のような利点がある。何らかの繊維を基材として本発明の成形体を形成し、その成形体(即ち、繊維)で衣服を製造した場合、その衣服は、着た直後に速やかに汗などの湿気を吸収して発熱するため、着衣直後の冷え感を低減することが可能となる。
また、上述したように、本発明の成形体に発熱助剤を用いた場合、吸着発熱性及び吸湿発熱性は更に高まり、より効果的に発熱を生じさせることができるようになる。
さらに、シリカの細孔径分布がシャープである場合には、吸着速度が速くなるため、発熱速度も速くなる。したがって、シリカとしてシャープな細孔径分布を有する上記本発明のシリカを用いた場合には、その発熱性能もより優れたものとなる。
<吸湿性>
シリカは多孔質の材料であり、その細孔径に依存した特定の水蒸気圧で水蒸気を吸着及び脱離する性質がある。したがって、シリカの細孔径を制御することで、水蒸気(湿気)の吸着、脱離挙動を制御することができ、湿度制御を行なうことができる。よって、このようなシリカの性質を発揮できる本発明の成形体を用いれば、調湿が可能となる。具体例を挙げると、上記のように本発明の成形体を用いた繊維で衣服を製造した場合、衣服の内側を所定の湿度に保つこと(即ち、調湿)が可能になる。また、用いるシリカの細孔分布がシャープなほど(即ち、細孔径がそろっているほど)、環境湿度の微妙な変化に対する吸放湿応答性が高く、一定湿度に調湿する能力が高くなる。したがって、シリカとして上記本発明のシリカを用いた場合には、その調湿性能もより優れたものとなる。さらに、本発明のシリカが吸湿助剤を有している場合、そのシリカを用いた成形体は特に調湿性に優れている。
<薬剤徐放性>
シリカが有する機能の一つに徐放性がある。これを利用し、本発明の成形体にも徐放性を備えさせることができる。特に、薬剤徐放性に注目すると、本発明の成形体の利用可能性が高まると考えられる。例えば、衣服の高機能化として、衣服に薬剤徐放性を備えさせるという方法がある。具体例としては、上記のように本発明の成形体を用いた繊維で衣服を製造した場合、衣服を構成する本発明の成形体のシリカに保湿、ビタミン補給、美白、癒し効果などを奏する薬剤を担持させることができる。これにより、香料、スキンケア成分などの徐放効果が高まり、高いスキンケア効果を発揮することできるようになる。また、従来の衣服にこれらの薬剤を担持させた従来品に比べ、洗濯耐久性を向上させる効果もある。なお、担持させる薬剤としては、ビタミンC(アスコルビン酸誘導体など)、ビタミンE、コラーゲン、セリシン、キトサン、ヒパ油(ヒノキチオール)、スクワラン、アロエエキス、プロテインなどが挙げられる。
また、薬剤を担持する際に界面活性剤をともに使用すると、安定性の面から好ましい。界面活性剤は任意のものを用いることができるが、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系界面活性剤を使用できる。具体例としては、各種脂肪酸石鹸、ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルホスホコハク酸ナトリウム、アルキルリン酸カリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。また、これらは適宜、非イオン系界面活性剤とともに用いても良い。非イオン系界面活性剤も任意であるが、例えば、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタンモノアルキレート、ソルビタンジアルキレート、ソルビタントリアルキレート等を用いることができる。
さらに洗濯耐久性の面から、界面活性剤をシリカの一部に固定化しておくと良い。この場合、本発明の成形体を作製した後で薬剤の導入を行なうと、樹脂と薬剤との混合が避けられるため好ましい。
<吸着性>
シリカ表面に存在する水酸基により、塩基性のガスをイオン結合で成形体のシリカ表面に吸着することができる。例えば、アンモニア、ピリジン、トリメチルアミン、インドールなどを吸着することができる。これらの物質は、汗臭、加齢臭、***臭、タバコ臭、生ゴミ臭などの悪臭の原因物質であるが、本発明の成形体を用いることにより、シリカを用いて消臭除去できるため、例えば上記のように本発明の成形体を用いた繊維で衣服を製造した場合、その衣服内環境を清潔に保つことできる。
<抗菌性>
本発明の成形体のシリカに予め消臭、抗菌物質を担持させておくことにより、本発明の成形体に消臭、抗菌効果を備えさせることも可能である。抗菌物質としては、フェノール系、カルボン塩系、ピグアナイド系、ハロゲン系、界面活性剤等の有機系抗菌剤、銀系等の無機系抗菌剤、キトサン、カテキン等の天然由来の抗菌剤などがある。
また、本発明の成形体に消臭効果を備えさせるためには、シリカに各種金属を担持させたり、シリカを3−メルカプトプロピル基修飾シリカにしたりして、メチルメルカプタン、硫化水素などを吸着消臭することもできる。さらに、シリカを3−アミノプロピル基修飾シリカとして、ノネナール、アセトアルデヒドなどを消臭することも可能である。このように、シリカの末端基を修飾することも、本発明の成形体に機能を備えさせるためには有効な手段である。
<その他の効果>
以上説明した各種の効果の他にも、本発明の成形体によれば、様々な効果を得ることができる。ここでは具体例の一つとして、洗濯時等の機能性成分の吸着に伴う効果について説明する。
繊維を基材として本発明の成形体を作製し、その成形体(即ち、繊維)を用いて布材や衣服等の繊維製品を製造した場合、その繊維製品を洗濯すると、洗濯時に使用する洗剤や柔軟剤・仕上げ剤等に含まれる各種の機能性成分、例えば芳香成分、防臭成分、マスキング成分、柔軟剤成分、吸着成分、抗菌成分等がシリカの細孔に吸着される。こうしてシリカの細孔に吸着された機能性成分が、洗濯の終了後も繊維製品に多量に残存したり、更にはシリカから徐放されたりすることにより、これらの機能性成分が発揮する機能がより強められたり、その機能がより長時間持続するなど、様々な効果が見られることになる。
特に、洗濯時に柔軟剤成分を用いる場合には、更に特徴的な効果が見られる。柔軟剤成分は通常、その親水性基が正に帯電した界面活性剤からなる。上述したようにシリカの細孔表面には水酸基が残存し、これによって負に帯電するため、正に帯電した親水性基を有する柔軟剤成分を良く吸着する(なお、洗剤成分も界面活性剤であるが、その親水性基は通常は負に帯電しているため、シリカの細孔には吸着され難い。)。この様に、洗濯時に柔軟剤成分がシリカの細孔に吸着されることによって、柔軟剤成分自体の有する静電気防止やからみ抑制等の機能が増強され、長時間維持されることになる。シリカとして上述した本発明のシリカを用いた場合には、細孔容積や比表面積が従来のシリカよりも大きいことから、柔軟剤成分がより多く吸着されることになり、得られる効果もより顕著となる。
また、シリカの細孔に柔軟剤成分が吸着されると、シリカの細孔内表面には柔軟剤成分の疎水性基が固定化されることになる。これらの疎水性基は、他の機能性成分(芳香成分、防臭成分、マスキング成分、吸着成分、抗菌成分等)がシリカの細孔内に侵入すると、それらの機能性成分を細孔内に包含する作用を持つ。これによって、シリカ細孔によるこれらの機能性成分の吸着量が増加するとともに、その吸着保持力や徐放性能も向上する。よって、機能性成分の有する効果(芳香効果、防臭効果、マスキング効果、吸着効果、抗菌効果等)がより強められ、またその効果が長期間にわたり安定して発揮されることになる。
[II]樹脂成形体の製造方法:
本発明の成形体の製造方法について特に制限は無く、上記の本発明の成形体を製造することができる方法であれば、任意の製造方法によって製造することができる。ただし、通常は、後述する本発明の組成物を成形することによって製造することが望ましい。
中でも特に、バインダ樹脂とシリカと溶剤とを混合し、その後、混合した溶剤を除去することによって成形を行なうことが好ましい。この際使用する溶剤に制限は無く任意の溶剤を使用することができるが、通常は、有機溶剤又は水系溶剤を使用することが好ましい。
なお、以下、本発明の成形体の製造方法の説明において、バインダ樹脂及びシリカを溶剤に混合したものを塗料と呼ぶ。特に、ここでいう塗料の中でも、上記条件(α)及び条件(β)の少なくとも一方を満たすバインダ樹脂と、本発明のシリカと、溶剤とを混合したものは、溶剤中に本発明の組成物を含有してなるものであり、本発明の塗料に該当する。したがって、本発明の成形体は、本発明の組成物から製造する場合には、本発明の塗料から溶剤を除去することによって製造することもできる。また、塗料は、溶液、分散液、エマルジョンなど、どのような状態で溶剤中に本発明のシリカ及びバインダ樹脂を含んでいても良い。
以下、上記の、バインダ樹脂とシリカと溶剤とを混合し、その後、混合した溶剤を除去することにより本発明の成形体を製造する方法(以下適宜、「本発明の製造方法」という)について説明する。
[1]シリカ、バインダ樹脂、及び溶剤の混合:
本発明の製造方法においては、まず、溶剤にシリカ及びバインダ樹脂を混合する。これにより、塗料を製造することとなる。
本発明の製造方法において用いられる溶剤としては、上述のバインダ樹脂及びシリカを溶解又は分散させることができるものであれば、その種類に他に制限はない。
ただし、バインダ樹脂が条件(α)を満たしている場合、即ち、バインダ樹脂の分子量が10000以上1000000以下の範囲にある場合には、溶剤として、有機溶剤を用いることが好ましい。この場合、バインダ樹脂とシリカと有機溶剤との混合により製造されることとなる塗料は、有機溶剤中に、バインダ樹脂及びシリカの組成物(例えば、本発明の組成物)を含有してなるものとなり、溶液、分散液、エマルジョンなど任意の状態の液体としてなる。
また、バインダ樹脂が条件(β)を満たしている場合、即ち、バインダ樹脂のガラス転移温度Tgが−80℃以上110℃以下の範囲にある場合には、溶剤として、水性溶剤を用いることが好ましい。この場合、バインダ樹脂とシリカと溶剤との混合により製造されることとなる塗料は、水系溶剤中に、バインダ樹脂及びシリカの組成物(例えば、本発明の組成物)を含有してなるものとなり、溶液、分散液、エマルジョンなど任意の状態の液体としてなる。なお、バインダ樹脂として、既に水系溶剤中で水系エマルジョンとなっているものを用いる場合には、シリカと混合させるときに水系溶剤を更に混合させることなく塗料を製造することができる。
なお、バインダ樹脂が条件(α)及び条件(β)の両方を満たしている場合、用いる溶剤は有機溶剤であっても水系溶剤であっても好ましく使用することができる。
さらに、溶剤は、有機溶剤及び水系溶剤のいずれも、乾燥や加熱などによって簡単に除去できるものが好ましい。また、基材に塗布や含浸などを行なう場合には、塗布や含浸などの対象である基材を損なうことが無いものが好ましい。
以下、有機溶剤及び水系溶剤それぞれについて説明する。なお、以下の説明において、有機溶剤と水系溶剤とを区別せずに述べる場合、単に「溶剤」という。
[1−1]有機溶剤:
有機溶剤について特に制限は無く、公知の有機溶剤を任意に用いることができる。上述したように、バインダ樹脂の分子量とシリカの最頻細孔直径(Dmax)との比の値が上記所定の範囲にあれば、バインダ樹脂がシリカの細孔に入り込むことが無いため、本発明の成形体を安定して製造することができる。
有機溶剤の中でも、特に、シリカの細孔に浸入し難いもの(例えば、シリカに対して大きい接触角を有しているもの)を用いれば、塗料においてシリカの細孔にバインダ樹脂が浸入することを防止することができ、好ましい。
また、有機溶剤として、バインダ樹脂に対して貧溶媒を用いる、または、溶剤中に一部貧溶媒を加えることも好ましい。これにより、バインダ樹脂のポリマー鎖を伸ばしきらず(即ち、絡み合ったままとして)有機溶剤中に溶解させることが可能となり、バインダ樹脂がシリカの細孔内に浸入することを抑制することができる。
さらに、バインダ樹脂のポリマー鎖を伸ばしきらないという観点から、粘度が高い有機溶剤を用いることも好ましい。ただし、使用する際のことを考慮すると、例えばコーティングなどする場合には操作が困難となる場合がある。
使用できる有機溶剤の具体例としては、例えば、ネオペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ソルベッソ等の鎖状炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、セロソブル、ブチルソルブ、セロソルブアセテートなどのエーテル類、ミネラルスピリット(炭化水素油)などが挙げられる。
なお、上記有機溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[1−2]水系溶剤:
水系溶剤について特に制限は無く、公知の水系溶剤を任意に用いることができる。上述したように、バインダ樹脂のガラス転移温度Tgが上記所定の範囲にあれば、バインダ樹脂がコロイドを形成し、シリカの細孔に入り込むことが無いため、本発明の成形体を安定して製造することができる。即ち、水系エマルジョンを用いると、上述したように、分散状態でのバインダ樹脂の径(樹脂サイズ)がシリカの細孔径よりもかなり大きくなることが期待できるため、シリカの細孔内にバインダ樹脂が浸入することを防止できる。
さらに、水系溶剤は、設備を防爆化する必要がないという利点がある。
また、環境上好ましくない物質の使用、発生を抑制できるという利点もある。完全密閉の難しい場合に、できるだけ有機溶剤を発生させないことが好ましいからである。
さらに、水性溶剤を用いると、後述のように本発明の成形体を成形した場合に、成形体から残存有機溶剤量を容易に減少させること、及び、接着力を向上させることができる。
ところで、水性溶剤を用いてバインダ樹脂を水性エマルジョンとして存在させる場合、塗料を適用する対象である基材の種類、用途、使用環境等に応じて、凝固特性が発現する温度が適当な温度となる水性エマルジョンを用いることが望ましい。これにより、塗料を適用する対象である基材が耐熱性に優れないものである場合などでも、塗料を適用することができる。なお、水性エマルジョンの凝固特性が発現する温度とは、種々の添加剤を配合したエマルジョンを攪拌しながら昇温した時に、エマルジョンが流動性を失い凝固する温度であり、例えば露点を下げる添加剤などを加えることで凝固温度を調節することが可能である。
また、溶剤として水系溶剤を用いて塗料を水系エマルジョンとする場合には、バインダ樹脂よりもシリカを先に水に水系溶剤に分散させておくと、シリカの細孔内が水で満たされて安定化し、また、後から混合するバインダ樹脂も細孔の外部で安定化するため、安定化するもの同士を混合する際、バインダ樹脂が個々のポリマー鎖に解けてシリカの細孔内に浸入することは無いと考えられる。
使用できる水系溶剤の具体例としては、例えば、水や任意の水溶液等が挙げられる。また、適宜、水や水溶液と有機溶剤とを混合した混合液を用いてもよい。
[1−3]シリカ、バインダ樹脂及び溶剤の比率:
シリカとバインダ樹脂と溶剤とを混合する際、混合によって製造された塗料中のシリカの比率は、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下とする。シリカの含有率がこの範囲よりも小さいと、塗料が塗布後に十分な吸放出性能を発揮できない虞があり、また、この範囲よりも大きいと塗料の塗布性が低下する虞があるためである。
特に、基材として繊維を用いる場合、塗料(添着用の塗布液)中におけるシリカの割合は、通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下の範囲とすることが望ましい。さらに、後述するように、塗料を繊維に含浸して本発明の成形体を作製する際には、塗料中の機能性粒子(例えば、シリカや添加剤など)の濃度と絞り率とを最適化して、基材に対する機能性粒子の塗布量を決定する。
また、塗料中における上記バインダ樹脂の比率は、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上、さらに好ましくは2.5重量%以上、特に好ましくは3重量%以上、なかでも好ましくは5重量%以上、また、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下とする。バインダ樹脂の含有率がこの範囲よりも小さいと、塗料の接着性が低下する虞があり、また、この範囲よりも大きいと、塗料の塗布後に得られる本発明の成形体の吸放出性能が低下する虞があるためである。
また、基材として繊維を用いる場合、塗料(添着用の塗布液)中におけるバインダ樹脂の割合は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.02重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、また、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下の範囲とすることが望ましい。バインダ樹脂の比率がこの範囲よりも小さいと、機能性粒子(例えば、シリカや添加剤など)を保持し切れなくなる虞があり、また、この範囲よりも大きいと、求める機能を十分に発揮することができない虞がある。
さらに、塗料中における溶剤の比率は、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、また、通常98重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下とする。溶剤の含有率がこの範囲よりも小さいと、塗料の塗布性が低下する虞があり、また、この範囲よりも大きいと、塗料に含まれるシリカやバインダ樹脂の量が小さくなりすぎ、また、乾燥に時間がかかり作業性が悪化する虞があるためである。
また、特に基材として繊維を用いる場合、塗料中における溶剤の比率は、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、また、通常99.95重量%以下、好ましくは99.90重量%以下、より好ましくは99.75重量%以下、さらに好ましくは99.5重量%以下とする。
また、塗料中における、シリカとバインダ樹脂との比(シリカ/バインダ樹脂)は、重量比で、通常0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上、特に好ましくは0.8以上、また、通常50以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下とする。上記の比がこの範囲よりも小さいと、十分な吸放出性能を発揮することができない虞があり、また、この範囲よりも大きいと、塗料が乾燥した際にバインダ樹脂がシリカを保持しきれなくなる虞がある。
[1−4]塗料中のその他の成分:
塗料には、シリカ及びバインダ樹脂と溶剤との他、適宜、別の物質(添加剤)を含有させても良い。なお、これらの塗料が含有していても良い成分としては、本発明の成形体が含有していても良い成分と同様のもの(即ち、例えば助剤、有用異元素、有用有機基、添加剤など)が挙げられる。さらに、塗料が含有していても良い成分は、シリカ、バインダ樹脂、及び溶剤の混合前、混合中、混合後のどの段階で塗料に配合してもよい。
通常は、これら添加剤の分子量も大きいほうが好ましい。シリカの細孔内に添加剤が浸入することを防止するためである。ただし、添加剤をシリカに担持して機能を出す場合、素材に後から添加剤を導入する場合は、細孔内に入れる必要があるので、分子量は小さい方が好ましい。
[2]溶剤の除去:
バインダ樹脂、シリカ、及び溶剤を混合したものを成形後、溶剤を除去することにより、本発明の成形体を製造する。即ち、塗料を成形後、溶剤を除去することにより、本発明の成形体を製造する。成形の手法、及び、溶剤除去の手法はそれぞれ任意である。
具体例としては、適用対象となる基材に塗料を塗布して塗料の塗膜を形成することにより成形し、その塗膜から溶剤を乾燥除去して本発明の成形体を形成したり、あるいは、塗料を基材に含浸させて塗料の層を別途作製することで成形し、その層から溶剤を除去して本発明の成形体を形成することなどが挙げられる。
[2−1]塗布:
塗布により成形を行なう場合、基材に塗料を塗布して塗膜を形成させ、その塗膜から溶剤を除去してバインダ樹脂を固化させ、本発明の成形体を得る。
塗料の適用対象となる基材については特に制限はなく、上述したように、任意のものを基材として塗料を塗布することができる。基材の具体例としては、紙、プラスチック、木材、コンクリート、金属等を素材とするフィルム、シート、板材、繊維、布地、皮革などが挙げられる。
具体的方法としては、例えば、塗布対象である基材に塗料を塗布し、溶剤を乾燥除去して、基材表面に本発明の成形体を塗膜(塗布層)として形成させる方法が挙げられる。形成された塗膜は、シリカとバインダ樹脂とを含有した本発明の成形体であり、高い吸放出性能を有するので、塗膜が形成された基材は高い吸放出性能を獲得することができる。
ここで、塗布方法については特に制限はなく、通常用いられる方法を任意に用いることができる。具体例としては、ハケ塗り、スプレー、静電塗装、ロールコーティング、ディップコーティング、バーコーティング、フローティング・ナイフコーター、ナイフオーバーロール・コーター、リバースロール・コーター、ロールドクター・コーター、グラビアロール・コーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、キスロールコーター、ニップロールコーター、キャストコーター、コンアダイレクト・コーター、コンアリバースコーター、スリットコーター、ラミネート、ボンディング方式、パッド法、ブレードコーティング法、インクジェット法などが挙げられる。なお、これらの方法は、塗料の粘度や量、塗料の特性、塗布対象である基材の特性などにより種々使い分けることが好ましい。また、これらの塗布方法は適宜組み合わせて行なってもよい。
また、塗布後に本発明の塗料を乾燥し、溶剤を除去する方法についても特に制限は無く、任意の手法を用いることができる。例えば、本発明の塗料の性質に応じて適宜、自然乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、焼き付け、紫外線照射、電子線照射等の方法を用いればよい。なお、これらの乾燥方法は適宜組み合わせて行なってもよい。
[2−2]含浸:
また、含浸により成形を行なう場合、含浸性の基材(以下適宜、「含浸性部材」という)に塗料を含浸させ、溶剤を除去してバインダ樹脂を固化させ、本発明の成形体を得る。
塗料を含浸させる含浸性部材は任意であり、その素材や形状は用途に応じて任意に選択することができる。その具体例としては、天然繊維、合成繊維、ロックウール、ガラス繊維、炭素繊維等を素材とするフェルト、不織布、布材等の繊維や、紙、セラミックスシート、皮革、防水・透湿シート等のシートなどが挙げられる。なお、ここでいう含浸性部材は、塗料を含浸させた際にその全部に含浸せず、一部に含浸するものも含む。例えば、含浸性部材の厚みの一側から含浸を行なった場合に他側を含浸させないことにより、その含浸性部材の一側と他側とで性質の違い(接着しやすさなど)を生じさせ、この違いを利用する(他側を接着面する、など)ことなどを行なってもよい。
特に、塗料を含浸させるのに好適な含浸性部材としては、例えば繊維が挙げられる。その具体例としては、成形体の構成の説明において例示した繊維と同様のものが挙げられる。
含浸方法について特に制限はなく、任意の方法によって含浸を行なえばよい。その例を挙げると、塗料を満たした槽の中に含浸性部材を浸す方法(いわゆるディッピング)や、公知の塗布手段により含浸性部材の片側もしくは両側から塗布する方法が挙げられる。塗料が十分浸透してから、余剰分をサクションドクター、ドクターロール、もしくは丸棒にワイヤーを巻き付けたワイヤーバー等の適宜なかき取り装置または除去装置によってかき取るか、または除去するかを行ない、所定の量のシリカ及びバインダ樹脂を含浸性部材に含浸させる。なお、これらの含浸方法は適宜組み合わせて行なってもよい。
含浸後、含浸性部材を乾燥させて溶剤を除去し、本発明の成形体を得ることができる。
本発明の塗料を乾燥させる方法についても特に制限は無く、塗布の場合と同様に、任意の手法を用いることができる。
[2−3]その他:
また、塗料を用いて基材に塗膜を形成する場合などには、他の塗膜や層と組み合わせて実施することもできる。具体例としては、プライマ層や化粧コートなどと組み合わせることができる。
プライマ層は、基材と塗料の塗膜との間に形成される層で、基材の種類やシリカ及びバインダ樹脂の性質などに応じた適当な素材からなる層である。プライマ層を形成することにより、例えば、塗料の塗膜が基材に接着する接着力を向上させて製品の耐久性を向上させたり、基材表面の平滑性を向上させ塗料により塗膜を均一に形成したりするのに効果がある。また、基材が金属からなる場合には適当なプライマ層を形成することによってさび防止の効果を得ることもできる。
化粧コートは、通常は塗料の塗膜の外側に形成される層で、基材のデザイン性(意匠性)を高めるために形成される層である。化粧の施しかたには、着色、印刷、エンボス、またはワイピング塗装等の手法があり、これらの化粧の手法は、適宜に二つ以上を組合わせて、適用することもできる。また、化粧を施した最表面には、透明樹脂塗料の塗付、もしくは透明樹脂シートのラミネート等により、透明樹脂保護層を形成してもよい。ただし、塗料が色材を含む場合は、化粧コートを用いる代わりに塗料自体を描画等に用いてデザイン性を高めることも可能である。
なお、これらのプライマ層、化粧コート、透明樹脂保護層などは、基材、或いは塗膜等の本発明の成形体の層などに直接形成させるほか、適宜な紙やプラスチックシート等の別の部材に施して、基材、或いは塗膜等の本発明の成形体の層などとは別体のシートとして作製したものを設置するようにしてもよい。さらに、基材、プライマ層、塗膜等の本発明の成形体の層、化粧コート、透明樹脂保護層などの間には、それぞれ接着剤層或いは粘着材層を設けても良い。
以上説明したように、上述した塗料は、本発明の成形体の成分であるシリカとバインダ樹脂とを含んでいるため、それを塗布して得られた塗膜も、シリカとバインダ樹脂とからなる(例えば本発明の組成物を含有する)層を形成する。したがって、塗料を塗布した塗膜や、塗料を含浸性部材に含浸させたものとして形成した成形体は、高い吸着性能を奏するとともに、吸湿発熱性や徐放性に優れているほか、耐久性、耐候性にも優れる。また、本発明の成形体を、基材に塗料を塗布して作製した場合には、その成形体は、塗布対象である基材を大きな細孔容積を有するシリカで覆った構造になるため、防水性、防音性などにも優れた物性を示す。なお、上記塗料を、本発明の成形体の製造以外の目的で使用することも可能である。
また、もちろん、本発明の成形体を、上記塗料を用いず、本発明の製造方法以外の方法によって製造しても良い。例えば、シリカと、バインダ樹脂と、適宜使用される添加剤や助剤等とを混合し、混錬成形することによって、本発明の成形体を製造してもよい。また、このように本発明の製造方法以外の方法により成形体を製造する場合には、例えば、プレス成型、押し出し成形(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形などを行なうことにより成形し、本発明の成形体を製造しても良い。また、例えば二色成形、インジェクションブロー成形法などを行なってもよく、これらにより、寸法精度の良好な成形品を得ることができる。
[III]本発明の樹脂組成物:
[1]組成物の構成:
本発明の樹脂組成物(本発明の組成物)は、少なくともシリカとバインダ樹脂とからなる樹脂組成物である。ただし、本発明の組成物に用いられるシリカは、少なくとも、上述した本発明のシリカを含有している。また、バインダ樹脂は、上記条件(α)及び条件(β)のうち少なくとも一方を満たしている。なお、バインダ樹脂は、上記条件(α)及び条件(β)の両方を満たしていることが更に好ましい。
本発明の組成物においても、本発明の成形体と同様、シリカ内の細孔にバインダ樹脂が浸入することが抑制される。このため、通常はシリカの細孔がバインダ樹脂によって埋められることが無く、本発明のシリカが有する吸放出性能などの様々な利点を有効に活用することができる。また、本発明の組成物は、本発明の成形体の原料として用いて好適であり、成形することにより、本発明の成形体とすることが可能である。
本発明の組成物に用いるシリカは、本発明のシリカとして既に説明したので、ここではその説明を省略する。ただし、本発明の組成物は、本発明のシリカ以外のシリカを含有していてもよい。
また、本発明の組成物に用いるバインダ樹脂は、条件(α)及び条件(β)のうち少なくとも一方を満たすバインダ樹脂であれば他に制限は無い。分子量、ガラス転移温度Tg、架橋度、具体例等についても、本発明の成形体の説明においてバインダ樹脂として上述したものと同様である。ただし、本発明の組成物は、条件(α)及び条件(β)のうちのいずれの条件も満たさないバインダ樹脂を含有していてもよい。
なお、本発明の組成物は、本発明の成形体と同様、シリカ及びバインダ樹脂の他に、公知の物質(添加剤、助剤、有用異元素、有用有機基等)を含有させて様々な機能を付与し、複合的な機能性組成物とすることもできる。具体的には、耐薬品性、消臭性、耐摩耗性、耐候性、抗菌性、耐燃焼性、防炎性、保温性、断熱性、紫外線カット性、芳香性、光拡散性、導電性、安定性などを付与する場合が挙げられる。添加剤や助剤などとして含有させることができる他の成分の具体例としては、本発明の成形体の説明において上述したものと同様のものが挙げられる。
[2]組成物の組成:
本発明の組成物の組成は、本発明の成形体と同様である。
即ち、本発明の組成物は、用途によって異なるが、上記本発明のシリカを、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上、また、通常95重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下含有していることが好ましい。本発明のシリカの含有量がこの範囲よりも小さいとシリカの吸放出性能を十分に発揮することができない虞があり、また、この範囲よりも大きいとバインダ樹脂が本発明のシリカを保持しきれなくなる虞がある。
また、本発明の組成物は、条件(α)及び条件(β)のうち少なくとも一方を満たすバインダ樹脂を、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、また、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下含有していることが好ましい。バインダ樹脂の含有量がこの範囲よりも小さいと本発明のシリカを保持しきれなくなる虞があり、また、この範囲よりも大きいとシリカの吸放出性能を十分に発揮することができない虞がある。
さらに、本発明の組成物中において、本発明のシリカと、条件(α)及び条件(β)のうち少なくとも一方を満たすバインダ樹脂との比(シリカ/バインダ樹脂)は、重量比で、通常0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上、特に好ましくは0.8以上、また、通常50以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは2以下である。上記の比がこの範囲よりも小さいとシリカの吸放出性能を十分に発揮することができない虞があり、また、この範囲よりも大きいとバインダ樹脂が本発明のシリカを保持しきれなくなる虞がある。
[3]組成物の特性:
本発明の組成物では、バインダ樹脂が本発明のシリカの細孔内に浸入しないようにすることができるため、本発明の成形体と同様に、通常は、高い吸着性能を奏するとともに、シリカが有する吸着発熱性、調湿性、吸湿発熱性、薬剤徐放性、吸着性、抗菌性等の優れた特性を発揮することができる。
また、本発明の組成物においては、シリカの細孔径分布がシャープな均一な構造となっているため、シリカは均一な強度を有しており、したがって、本発明の組成物は安定して高い耐久性、耐候性を奏することができる。
[4]組成物の用途:
本発明の組成物の用途は任意であるが、成形して本発明の成形体として用いることが好ましい。また、その他、溶剤とともに液状物として塗料等として用いたりすることができる。
上記のように、本発明の組成物は、任意の形状に成形することにより、本発明の成形体として用いることができる。成形の方法は任意であるが、本発明の成形体の説明で述べたのと同様、塗料を基材に塗布又は含浸させることで成形すれば、シリカの有する優れた特性を有効に発揮させることができるため、好ましい。即ち、本発明の組成物と溶剤とを混合し、その後、混合した溶剤を除去することにより成形体とすることが好ましい。なお、成形時に、本発明のシリカと、条件(α)及び条件(β)の少なくともいずれかを満たすバインダ樹脂と、溶剤とを混合したものは、溶剤中に本発明の組成物を含有してなるものであり、後述する本発明の塗料である。
[IV]本発明の塗料:
[1]塗料の構成並びに組成:
本発明の塗料は、上記の本発明の組成物を溶剤中に含有するものであり、即ち、少なくとも本発明のシリカと、条件(α)及び条件(β)のうち少なくとも一方を満たすバインダ樹脂とを溶剤中に含有するものである。また、その製造方法は任意であるが、通常は、本発明の成形体の製造方法において説明した塗料と同様にして製造することができる。
本発明の塗料においても、本発明の成形体の製造方法において説明した塗料と同様、シリカの細孔内へのバインダ樹脂の浸入は抑制されるため、何らかの基材に塗布し、乾燥させた場合に、容易に本発明の成形体を塗膜として製造することができる。
塗料に含まれる本発明の組成物の構成要素、即ち、本発明のシリカ、バインダ樹脂、及び、適宜用いられるその他の成分(添加剤、助剤、有用異元素、有用有機基等)については、本発明の成形体及び組成物の説明において上述したので、ここではその説明を省略する。
また、本発明の塗料に用いる溶剤も、本発明の成形体の製造方法において説明した塗料と同様である。即ち、バインダ樹脂が条件(α)を満たしている場合には溶剤として有機溶剤を用いることが好ましい点、バインダ樹脂が条件(β)を満たしている場合には溶剤として水性溶剤を用いることが好ましい点、並びに、溶剤の性質、具体例、使用量、除去方法などは、本発明の成形体の製造方法において説明した塗料と同様である。
[2]塗料の特性:
本発明の塗料は、本発明の組成物の成分であるシリカとバインダ樹脂とを含んでいるため、それを基材に塗布して得られた塗膜や、基材(含浸性部材)に含浸させた成形体は、本発明の成形体となり、シリカとバインダ樹脂とからなる層を形成する。したがって、塗料を塗布した塗膜や、塗料を含浸性部材に含浸させたものとして形成した成形体は、本発明の成形体で説明したものと同様、高い吸着性能を奏するとともに、シリカが有する吸着発熱性、調湿性、吸湿発熱性、薬剤徐放性、吸着性、抗菌性等の優れた特性を発揮することができる。また、塗布時には、塗膜により形成される成形体は塗布対象を大きな細孔容積を有するシリカで覆った構造になるため、防水性、防音性などにも優れた物性を示す。さらに、シリカの細孔径分布がシャープな均一な構造となっているため、シリカは均一な強度を有しており、したがって、本発明の塗料から形成された塗膜等の成形体は安定して高い耐久性、耐候性を奏することもできる。
なお、本発明の塗料の適用対象となる基材や、塗布、含浸等の適用方法についても、本発明の成形体の製造方法において説明した塗料と同様である。
また、基材へ塗布や含浸させる際に、他の塗膜や層(プライマ層や化粧コートなど)と組み合わせて実施することができることも、本発明の成形体の製造方法において説明した塗料と同様である。
[3]塗料の用途:
本発明の塗料の用途は任意であるが、成形して本発明の成形体として用いることが好ましい。
[V]成形体、組成物、塗料の用途:
以上のように、本発明の成形体、組成物、及び塗料は、高い吸放出性能を有し、吸湿発熱性や徐放性などに優れている。また、本発明に用いるシリカ(特に、本発明のシリカ)は、吸放出性能や吸湿発熱性の他、調湿性、徐放性、低屈折率などの優れた性質を有するため、本発明の成形体、組成物、及び塗料は、これら本発明に用いるシリカの有する性質を効果的に発揮する。
以上より、本発明の成形体、組成物、及び塗料は、例えば以下のような分野において広く用いることができる。
例えば、産業用設備で製品の製造及び処理に用いられる用途分野においては、各種触媒及び触媒担体(酸塩基触媒、光触媒、貴金属触媒等)、廃水・廃油処理剤、臭気処理剤、ガス分離剤、工業用乾燥剤、バイオリアクター、バイオセパレータ、メンブランリアクター等の用途が挙げられる。
また、例えば建材用途では、調湿材、防音・吸音材、耐火物、断熱材等の用途が挙げられる。
また、例えば空調分野の用途では、デシカント空調機用調湿剤、ヒートポンプ用蓄熱剤等が挙げられる。
また、例えば塗料・インク用途分野においては、艶消し剤、粘度調整剤、色度調整剤、沈降防止剤、消泡剤、インク裏抜け防止剤、スタンピングホイル用、壁紙用等の用途が挙げられる。
また、例えば樹脂用添加剤用途分野においては、フィルム用アンチブロッキング剤(ポリオレフィンフィルム等)、プレートアウト防止剤、シリコーン樹脂用補強剤、ゴム用補強剤(タイヤ用・一般ゴム用等)、流動性改良材、パウダー状樹脂の固結防止剤、印刷適性改良剤、合成皮革やコーティングフィルム用の艶消し剤、接着剤・粘着テープ用充填剤、透光性調整剤、防眩性調整剤、多孔惟ポリマーシート用フィラー等の用途が挙げられる。
また、例えば製紙用途分野においては、感熱紙用フィラー(カス付着防止剤等)、インクジェット紙画像向上用フィラー(インク吸収剤等)、ジアゾ感光紙用フィラー(感光濃度調整剤等)、トレーシングペーパー用筆記性改良剤、コート紙用フィラー(筆記性、インク吸収性、アンチブロッキング性改良剤等)、静電記録用フィラー等の用途が挙げられる。
さらに、製紙用途分野においては、本発明の成形体を調湿用の湿度調節紙として用いることもできる。以下、この湿度調節紙について説明するが、同様の方法、材料などで作製した紙を調湿以外の用途に用いても良い。
基材としてセルロース繊維を用い、これを本発明のシリカ及びバインダ樹脂と混合,成形して湿度調節剤(本発明の樹脂成形体)とすることができる。これを、溶剤と混合してスラリーとし、次いで、スラリーを脱水,成形して半湿濾過体とする。その後、該半湿濾過体を乾燥,固化して一体固化物とする。これにより、本発明の成形体として湿度調節紙が得られる。
湿度調節紙は、通常は、セルロース繊維100部(重量部)と、シリカ100〜3000部と、前記シリカ100部に対して固形分で1〜20部の有機系バインダ樹脂とにより構成することが好ましい。これにより、成形性が良く、かつ優れた湿度調節能を有する湿度調節紙を得ることができる。
また、上記湿度調節紙の製造方法は、例えば、セルロース繊維とシリカと水とを混合してスラリーとする第1混合工程と、前記スラリーと有機系バインダ樹脂とを混合して混合スラリーとする第2混合工程と、前記混合スラリーを脱水,成形して半湿濾過体とする成形工程と、前記半湿濾過体を乾燥,固化して一体固形物とする乾燥工程とから成る。
ここで用いるセルロース繊維は、上記基材の説明において例示したものの他、天然セルロース繊維としては、綿花,ボンバックス綿(キワタ),カボック等の種子毛繊維,麻,亜麻,黄麻,ラミー,コウゾ,ミツマタ等のジン皮繊維,マニラ麻,ニュージーランド麻等の葉繊維,針葉樹(マツ,モミ,トウヒ,ツガ,スギ),広葉樹(ブナ,カバ,ボプラ,カエデなど)の木材繊維等が挙げられる。
また、人造のセルロース繊維としては、ビスコース人造絹糸,銅アンモニアレーヨン,フォルチザン,硝酸人絹等の再生セルロース繊維,アセテート人絹等の半合成繊維等がある。更に、このセルロース繊維は、古新聞,チリ紙,古雑誌等の再生資源から得られるものであってもよい。これらのセルロース繊維は、繊維長が0.1mm〜数十mmの範囲のものであることが好ましい。繊維長が0.1mm未満である場合には、繊維の絡みが不十分で成形性が悪い。また,数十mmを越える場合には、該繊維とシリカゲルとが均質に分散しにくく、また、比表面積が小さくなり、湿度調節性能が低下する虞があるからである。
なお、湿度調節紙においては、本発明のシリカは、セルロース繊維100部に対して100〜3000部混合することが好ましい。100部未満の場合には、気中の湿気を吸収する充分な能力が得られない虞があるからである。また、3000部を越える場合には、湿度調節剤として一定の形状を保持することが困難となるおそれがある。また、バインダ樹脂は、シリカ100部に対して1〜20部とすることが好ましい。1部未満の場合には、十分な耐水性を有する材料とすることができない虞がある。一方、20部を越える場合には、十分な湿度調節を期待し難いからである。
また、湿度調節紙においても、他の成形体と同様、その優れた性能を損なわない程度に他の添加剤を混合することができる。添加剤に制限は無いが、好ましい添加剤の具体例としては、分散性を向上する分散剤としてポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられる。また、繊維質の補強材としては、ガラス繊維、セラミックファイバー等の無機質繊維、またはナイロン繊維、レーヨン繊維等の合成繊維が挙げられる。更に、添加助剤として顔料や染料等が挙げられる。また、強度を向上する結合剤として水ガラス、セメント、石膏等が上げられる。
次に、湿度調節紙の製造方法につき例示する。まず、上記セルロース繊維とシリカと水とを混合してスラリーとする(第1混合工程)。これら原料を混合する順番は、特に限定するものではないが、まずセルロース繊維を叩解機等により叩解してセルロース繊維の水性スラリーを用意する。次いで、別に用意した適宜の大きさ、形状に乾式粉砕又は湿式粉砕したシリカに上記セルロース繊維のスラリーを混合する。上記の混合の方法は任意であるが、好ましくは、プロペラミキサー、ヘンシエルミキサー、ボールミル、振動ミル、ディスパーミル等を用いて行なう。
次に、得られたスラリーと有機系バインダ樹脂とを混合して混合スラリーとする(第2混合工程)。上記のセルロース繊維、シリカ及び有機系バインダ樹脂の混合割合は前記と同様である。なお、上記第1または第2混合工程において、濾水性向上の目的で、硫酸バン土、アクリルアミド重合体、アクリルアミド変性重合体等の凝集剤を適宜、混合してもよい。また、染料、顔料等の添加剤を適宜混合してもよい。
次に、得られた上記の混合スラリーを、抄造法、フィルタープレス法、スリップキャスト法等を用いて所望の形状に脱水、成形し、半湿濾過体を得る(成形工程)。また、該脱水,成形により得られた半湿濾過体の水分量は、50〜80重量%であることが好ましい。これは、該水分量が80重量%を越えた場合、該成形工程における成形がしにくく、また、収縮率が大となり乾燥工程でひび割れやクラック等が発生して強度低下をもたらすおそれがあるからである。また、50重量%未満の場合には、結合力が弱いので好ましくないからである。尚、該水分量が55〜70重量%の場合には、より好ましい。
次いで該半湿濾過体を加熱・固化して一体固化物とする(乾燥工程)。この乾燥工程においては、常温乾燥法、真空乾燥法、加圧乾燥法、加圧・加熱乾燥法,真空加熱乾燥法、真空凍結乾燥法等により該半湿濾過体の乾燥を行なう。この場合、上記乾燥は、成形工程における成形と同時に行ってもよい。上記製造方法においては、添加剤として、強度向上,外観向上等の目的で適宜充填剤を混合してもよい。この添加剤としては、例えばカオリン,珪砂等が挙げられる。また、防カビ剤,香料,顔料,染料等の各種添加剤を適宜混合してもよい。
上記の湿度調節紙は、含有するシリカの細孔の大部分が湿度調節紙の外部に開放されているため、従来よりも優れた湿度調節機能を有している。そのため、例えば住宅の建材、壁材、壁紙、食料品を包装する包装紙、食品等の運搬時に使う段ボール紙、自動車の内装材、書物や絵画の保存庫の壁材などに配合することにより用いることができる。
本発明の適用分野の説明に戻ると、例えば食品用途分野においては、ビール用濾過助剤、醤油・清酒・ワイン等発酵製品のおり下げ剤、各種発酵飲料の安定化剤(混濁因子タンパクや酵母の除去等)、食品添加剤、粉末食品の固結防止剤等の用途が挙げられる。
また、例えば医農薬分野においては、薬品等の打錠助剤、粉砕助剤、分散・医薬用担体(分散・徐放・デリバリー性改善等)、農薬用担体(油状農薬キャリア・水和分散性改菩、徐放・デリバリー性改善等)、農薬用添加剤(固結防止剤・粉粒性改良剤等)・農薬用添加剤(固結防止剤・沈降防止剤等)等が挙げられる。
また、例えば分離材料分野では、クロマトグラフィー用充填剤、分離剤、フラーレン分離剤、吸着剤(タンパク質・色素・臭等)、脱湿剤等の用途が挙げられる。
また、例えば農業用分野では、飼料用添加剤、肥料用添加剤が挙げられる。
また、例えば生活関連分野では、調湿剤、乾燥剤、化粧品添加剤、抗菌剤、消臭・脱臭・芳香剤、洗剤用添加剤(界面活性剤粉末化等)、研磨剤(歯磨き用等)、粉末消火剤(粉粒性改良剤・同結防止剤等)、消泡剤、バッテリーセパレーター等が挙げられる。
また、例えば衣料分野では、調湿繊維、吸湿発熱繊維、徐放繊維等として、シャツ、ブラウス、パンツ、ジャケット、セーター、ブルゾン、インナー、ストッキング等の一般衣料やアスレティックウエア、ウインドブレーカー等のスポーツ衣料、ユニフォーム、作業着、防塵衣の他帽子等に好適に用いることができる。
さらに、本発明の成形体を徐放性担体とし、高分子材料用の老化防止剤、硬化剤、農薬、肥料、殺菌剤、消毒剤、抗菌剤、防虫剤、殺虫用、除草剤、芳香剤、害虫忌避剤、各種の医薬や生理活性物質等、種々の機能や作用を持つ化学物質(薬剤等)を被担持成分として担持させることにより、これらの被担持成分を貯留すると共に経時的に徐々に放出させる徐放剤として、好適に使用することができる。
木発明の成形体を徐放性担体に用い、各種薬剤等を担持させて徐放剤として使用する場合、その薬剤等は用途に応じて自由に選択することができる。
具体的には、例えば農薬用殺虫剤としてのサリチオン、マラソン、ジメトエート、ダイアジノン、ジエチルアミド、2−エチルチオメチルフェニル=メチルカルバメート、チオリン酸、2−メチル−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸等が挙げられる。
また、例えば殺菌剤としては、ノニルフェノールスルホン酸銅、ジネブ、アンゼプ、チウラム、ポリオキシン、シクロヘキシミド等が挙げられる。
また、例えば除草剤では、クロメトキシニル、ニトラリン、3−(3,3−ジメチルウレイド)フェニル=ターシャリ−ブチルカルバマート等が挙げられる。
また、例えば抗菌剤としては、ヒノキチオールが挙げられる。
また、例えば害虫忌避剤としては、フェノール系化合物が挙げられる。
また、例えばプラスチック用酸化防止剤としては、2,2−ビス(4−ヒドロキジフェニル)プロパン等のビスフエノール、シクロヘキサンの縮合物、ジサリチルレゾルシン、亜リン酸エステル等が挙げられる。
また、例えば老化防止剤としては、フェニル−β−ナフチルアミン等のアミン化合物、スチレン化フェノール等のフェノール化合物、チオ尿素誘導体、ベンゾイミダゾール類が挙げられる。
また、例えば肥料としては、尿素、硫安、硝安等のアンモニア系化合物、過リン酸石灰、重過リン酸石灰等のリン化合物、カリを含む化合物等が挙げられる。
さらに、例えば医薬や生理活性物質としては、降圧利尿剤、血管拡張剤、不整脈治療剤、強心剤、ホルモン剤、免疫調整剤、抗生物質、坑腫瘍剤、坑潰瘍剤、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤、鎮咳去剤、鎮静剤、筋弛緩剤、抗癇癪剤等に分類される薬物を挙げることができる。これらの医薬・生理活性物質の具体的なものとしては、医業品要覧第5版(株式会社薬業時報社発行)に記載されている薬物又はそれらの類似薬物を挙げることができる。
但し、上に列挙した薬剤はあくまでも一例であり、徐放性担体に把持させることのできる薬剤はこれらに限定されるものではない。
[VI]その他:
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記の説明に制限されるものではなく、適宜変形して実施することができる。
例えば、本発明の組成物、成形体、及び塗料の使用形態は上述したものに制限されるものではなく、その他の用途や形態で用いることも勿論可能である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲において、以下の実施例に制限されること無く、任意に変形して実施することができる。なお、本明細書において、「部」は、特に言及しない限り「重量部」を意味する。
(1)分析方法
(1−1)細孔容積、比表面積
試料について、カンタクローム社製AS−1にてBET窒素吸着等温線(等温脱着曲線)を測定し、細孔容積(ml/g)、比表面積(m2/g)、最頻細孔直径Dmax(nm)、及び、最頻細孔直径Dmax±20%の細孔容積の全細孔容積に占める割合(%)を求めた。具体的には、細孔容積は相対圧P/P0=0.98のときの値を採用し、比表面積はP/P0=0.1,0.2,0.3の3点の窒素吸着量よりBET多点法を用いて算出した。
また、最頻細孔直径(Dmax)が5nm以下のものについては、当業者に公知のHK法又はSF法で、5nm以上のものについてはBJT法で、それぞれ細孔分布曲線及び最頻細孔直径(Dmax)における微分細孔容積を求めることとした。なお、測定する相対圧の各点の間隔は0.025とした。
(1−2)粉末X線回折
理学電機社製RAD−RB装置を用い、CuKaを線源として、試料の粉末X線回折図の測定を行なった。測定時の条件は、発散スリット1/2deg、散乱スリット1/2deg、受光スリット0.15mmとした。
(1−3)金属不純物の含有量
試料2.5gにフッ酸15mlを加えて加熱し、乾固させたのち、水を加えて50mlとした。この水溶液を用いてICP発光分析を行なった。なお、ナトリウム及びカリウムはフレーム炎光法で分析した。
(1−4)固体Si−NMR測定
Bruker社製固体NMR装置(MSL300)を使用するとともに、共鳴周波数59.2MHz(7.05テスラ)、7mmのサンプルチューブを使用し、CP/MAS(Cross Polarization/Magic Angle Spining)プローブの条件で測定した。
具体的な測定条件を下の表2に示す。
Figure 0004691985
測定データの解析(Q4ピーク位置の決定)は、ピーク分割によって各ピークを抽出する方法で行なう。具体的には、ガウス関数を使用した波形分離解析を行なう。この解析には、サーモガラナック(Thermogalatic)社製の波形処理ソフト「GRAMS386」を使用することができる。
これにより、Q4/Q3の値を算出した。
(2)本発明の成形体の外部に開放されたシリカの細孔容積の測定方法
(1−1)で説明した分析方法と同様にして、本発明の成形体中に含まれるシリカのみの細孔容積Vp(ml/g)、本発明の成形体の細孔容積Vq(ml/g)、本発明の成形体の最頻細孔直径Dmax(nm)、及び、最頻細孔直径Dmax±20%の細孔容積の全細孔容積に占める割合(%)、並びに、シリカを含まない他は同様にして作製した成形体の細孔容積Vr(ml/g)を求める。
次いで、本発明の成形体中のシリカの重量割合をa%、シリカ以外のものの重量割合をb%、a+b=100として、以下の計算式1により、成形体の外部に開放されているシリカの細孔容積Sを求める。
S=(Vq−Vr×b/100)×100/a ・・・計算式1
また、本発明の成形体の外部に開放されたシリカの細孔容積の割合T(%)は、以下の計算式2で求められる。
T=(S/Vp)×100 ・・・計算式2
(3)実施例1
(シリカの製造方法)
ガラス型で、上部に大気開放の水冷コンデンサが取り付けてある5Lセパラプルフラスコ(ジャケット付き)に、純水1000gを仕込んだ。80rpmで攪拌しながら、これにテトラメトキシシラン1400gを3分間かけて仕込んだ。
水/テトラメトキシシランのモル比は約6/1である。セバラプルフラスコのジャケットには50℃の温水を通水した。引き続き攪拌を継続し、内容物が沸点に到達した時点で、攪拌を停止した。引き続き約0.5時間、ジャケットに50℃の温水を通水して生成したゾルをゲル化させた。
その後、速やかにゲルを取り出し、目開き600ミクロンのナイロン製網を通してゲルを粉砕し、粉体状のウェットゲル(シリカヒドロゲル)を得た。このヒドロゲル450gと純水450gとを1Lのガラス製オートクレープに仕込み、170℃で水熱処理を実施した。3時間水熱処理した後、目開き100ミクロンのナイロン製網を通して液を切り、濾滓を水洗することなく150℃で恒量となるまで減圧乾燥した。
得られたシリカゲル(本発明のシリカ)を粉砕機(ホソカワミクロンAFG−200型)で粉砕し、気力分級によって平均粒径5μmの粉体(平均粒径5μmのシリカゲル)を得た。
また、この平均粒径5μmのシリカゲルの粉体を湿式粉砕機{三井鉱山SCミル(SC−50型)}で粉砕し、平均粒径1μmのシリカゲルスラリー(平均粒径1μmのシリカゲル)を得た。
さらに、水熱処理の温度を200℃に変更し、また、粉砕を三井鉱山ファインミル(SF−30型)で行なうようにした他は、上述した平均粒径5μmのシリカゲルの調製方法と同様にして、平均粒径2μmの粉体(平均粒径2μmのシリカゲル)を得た。
得られた粉体、及び、スラリーの乾固物を、それぞれ走査型電子顕微鏡で観察したところ、これらの粒子はいずれも破断面を持った破砕状の粒子であった。
得られたシリカゲルについて、それぞれ、最頻細孔直径(nm)、細孔容積(ml/g)、比表面積(m2/g)、最頻細孔直径(Dmax)±20%の細孔容積の全細孔容積に占める割合(%)、及び、Q4/Q3を測定した結果を表3に示す。
また、粉末X線回折図には結晶性のピークは出現しておらず、また周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピークも認められなかった。
なお、得られたシリカゲルの不純物濃度は、いずれも、鉄とアルミニウムとがそれぞれ2ppmずつ検出された以外は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、チタン、及びクロムはいずれも1ppm以下であった。
Figure 0004691985
(成形体の作製)
固形分(バインダ樹脂+シリカ)に対するシリカの割合が60重量%となるように配合した溶液(本発明の塗料)をPETフィルム(基材,シート)にバーコータ#30を用い塗布した。溶液は、バインダ樹脂のエマルジョン0.8g(固形分50重量%:バインダ樹脂0.4g)、水3.6g、上記平均粒径5μmのシリカゲル0.6gを混合して調製した。
バインダ樹脂のエマルジョンとしては、ボンコートCG−5010(大日本インキ化学工業(株)、アクリルウレタンエマルジョン)を用いた。なお、バインダ樹脂であるアクリルウレタンのガラス転移温度Tgは30℃である。
塗布したPETフィルムを、80℃の真空乾燥機で乾燥した。これにより、PETフィルム表面に、本発明の成形体としての塗膜が形成された。
この塗膜について、最頻細孔直径(nm)、細孔容積(ml/g)、比表面積(m2/g)、最頻細孔直径(Dmax)±20%の細孔容積の全細孔容積に占める割合(%)、及び、塗膜を形成したPETフィルム(本発明の成形体)の外部に開放されたシリカの細孔容積の割合T(%)を測定した。測定結果を、使用したシリカのQ4/Q3とともに、表4に示す。
Figure 0004691985
塗料を塗布したPETフィルムに液晶サーモメーターを付け、相対湿度90%の小型環境試験器(ESPECSH240)に入れ、吸湿発熱性を観察したところ、サーモテープにおいて2℃の温度上昇が観察された。
また、上記塗料を塗布したPETフィルムをシリカの細孔容積に相当する量のリモネン溶液に浸漬し室温で徐放性を確認したところ、1週間後でもリモネンの香りが確認された。これに対し、同じリモネン溶液を通常の布に浸漬したところ、リモネンの香りは1日で消失した。
以上の結果から、シリカ及びバインダ樹脂を溶剤と混合し、基材に塗布し、その後、溶剤を除去することにより、シリカの細孔容積の30%以上が外部に開放された成形体を作製することができることが確認された。さらに、本発明の成形体は、高い吸湿発熱性及び徐放性を示すことが確認された。また、上述したように、観察された温度上昇は水の吸着熱に起因するものと考えられるため、本発明の成形体には多量の水が吸着したものと思料されるので、本発明の成形体は、吸放出性能に優れ、また、高い調湿性が期待できる。
(4)実施例2
実施例1と同様にして、平均粒径5μmのシリカゲル(本発明のシリカ)を作製した。次いで、得られた平均粒径5μmのシリカゲルを水と混合して、固形分10重量%のシリカスラリーとした。
このシリカスラリーを、重量比でシリカゲル:バインダ樹脂=3:1となり、基材に対して塗布量がシリカ3重量%、バインダ樹脂1重量%となるように、バインダ樹脂及び水の混合液160gと混合して塗布用溶液(塗料)とし、これに基材として綿(繊維)を含浸させた。なお、バインダ樹脂としては、アクリルエマルジョン{三菱レイヨン(株)ダイアナールLX−100}を用いた。
含浸後、基材である綿を、絞り率150%で絞り、その後110℃で乾燥させ、成形体を作製した。なお、絞り率は
「絞り率=(基材に含浸された塗布溶液の重量/基材の重量)×100」
にて定義される値である。
次いで、作製した成形体について、最頻細孔直径(nm)、細孔容積(ml/g)、比表面積(m2/g)、最頻細孔直径(Dmax)±20%の細孔容積の全細孔容積に占める割合(%)、及び、本発明の成形体の外部に開放されたシリカの細孔容積の割合T(%)を測定した。測定結果を、使用したシリカのQ4/Q3とともに、表5に示す。
(5)実施例3
バインダ樹脂として、アクリルエマルジョン{大日本インキ化学工業(株)ボンコートCG−5010}を用いた他は、実施例2と同様にして成形体を作製し、作製した成形体について、最頻細孔直径(nm)、細孔容積(ml/g)、比表面積(m2/g)、最頻細孔直径(Dmax)±20%の細孔容積の全細孔容積に占める割合(%)、及び、本発明の成形体の外部に開放されたシリカの細孔容積の割合T(%)を測定した。測定結果を、使用したシリカのQ4/Q3とともに、表5に示す。
(6)実施例4
バインダ樹脂として、シリコーンエマルジョン{北広ケミカル(株) TF−3500}を用いた他は、実施例2と同様にして成形体を作製し、作製した成形体について、最頻細孔直径(nm)、細孔容積(ml/g)、比表面積(m2/g)、最頻細孔直径(Dmax)±20%の細孔容積の全細孔容積に占める割合(%)、及び、本発明の成形体の外部に開放されたシリカの細孔容積の割合T(%)を測定した。測定結果を、使用したシリカのQ4/Q3とともに、表5に示す。
(7)実施例5
バインダ樹脂として、ウレタンエマルジョン{大日精化工業(株) レザミンD−2020}、及び、架橋剤{大日精化工業(株)レザミンD−54 ウレタンエマルジョン重量に対し5%混合}を用いた他は、実施例2と同様にして成形体を作製し、作製した成形体について、最頻細孔直径(nm)、細孔容積(ml/g)、比表面積(m2/g)、最頻細孔直径(Dmax)±20%の細孔容積の全細孔容積に占める割合(%)、及び、本発明の成形体の外部に開放されたシリカの細孔容積の割合T(%)を測定した。測定結果を、使用したシリカのQ4/Q3とともに、表5に示す。
(8)比較例1
シリカ粒子として、ファインミルにて粒径2μmに粉砕したシリカゲル(即ち、実施例1において調製した平均粒径2μmのシリカゲルと同様のシリカゲル)を用いた他は、実施例4と同様にして成形体を作製し、作製した成形体について、最頻細孔直径(nm)、細孔容積(ml/g)、比表面積(m/g)、最頻細孔直径(Dmax)±20%の細孔容積の全細孔容積に占める割合(%)、及び、本発明の成形体の外部に開放されたシリカの細孔容積の割合T(%)を測定した。測定結果を、使用したシリカのQ4/Q3とともに、表5に示す。
(9)比較例2
シリカ粒子として、SCミルにて1μmに粉砕したシリカゲル(即ち、実施例1において調製した平均粒径1μmのシリカゲルと同様のシリカゲル)を用いた他は、実施例4と同様にして成形体を作製し、作製した成形体について、最頻細孔直径(nm)、細孔容積(ml/g)、比表面積(m/g)、最頻細孔直径(Dmax)±20%の細孔容積の全細孔容積に占める割合(%)、及び、本発明の成形体の外部に開放されたシリカの細孔容積の割合T(%)を測定した。測定結果を、使用したシリカのQ4/Q3とともに、表5に示す。
Figure 0004691985
実施例2〜5、比較例1及び2から、シリカ及びバインダ樹脂を溶剤と混合し、基材に含浸させ、その後、溶剤を除去することにより、シリカの細孔容積の30%以上が外部に開放された成形体を作製することができることが確認された。
また、実施例4で作製した成形体について、小型環境試験機(ESPEC SH240)を用いて吸湿実験を行なった。具体的には、実施例4で作製した成形体を温度20℃、湿度65%系内で24時間吸湿させた後、温度30℃、湿度90%系内で15分間吸湿させ、吸湿率を測定した。その後、さらに同条件で2回目の測定を行ない、2回目の吸湿量を成形体全体の重量で割って、吸湿率を求めた。
同様の条件で測定した綿のみの吸湿率が4.1重量%であるのに対し、ここで測定した、綿に塗布用溶液を含浸させて製造した成形体の吸湿率は5.5重量%であった。これにより、本発明の成形体は、高い吸湿性を示すことが確認された。
また、実施例4で作製した成形体と実施例4で使用した未加工の綿について、家庭用全自動洗濯機で洗濯処理(洗濯、脱水、すすぎ、脱水、すすぎ、脱水、の運転サイクル)を実施した。洗濯洗剤としては花王(株)製アタックを使用し、洗濯温度は室温で行なった。これらを室温で3時間乾燥させ、布の香りの強さを10人が嗅いで比較した。その結果、10人全員が、実施例4の成形体の方が香りが強いと判定した。また、5時間後に同様に10人が嗅いだところ、10人全員が香りの残存があると判定した。
さらに、実施例4で作製した成形体と実施例4で使用した未加工の綿を、市販の柔軟仕上げ剤(花王(株)製ハミングフレア)が0.03%となるように調合した水溶液に浸した後、洗濯機で脱水した。これらを室温で3時間乾燥させ、布の香りの強さを10人が嗅いで比較した。その結果、10人全員が、実施例4の成形体の方が香りが強いと判定した。また、5時間後に同様に10人が嗅いだところ、10人全員が香りの残存があると判定した。
更に、実施例4,比較例1及び2で作製した成形体について、それぞれ、HITACHI全自動電気洗濯機{白い約束60(NW−6CY)}を用いて10回洗濯{各回とも洗い:6分、すすぎ:2回、脱水:3分、水量:25L、洗剤(花王アタック)16.7g、共洗:新品Tシャツ7枚}を実施し、洗濯前後の成形体についてセイコーインスツルメンツ製TG−DTA6300型(白金パン使用:空気下200ml/min)を用いてシリカゲルの残存量測定実験を行なった。
その結果、洗濯前後のシリカゲル残存率は、実施例4で作製した成形体は51%、比較例1で作製した成形体は61%、比較例2で作製した成形体は59%であった。このことから、本発明の成形体は充分な洗濯耐久性を有していることが確認された。
本発明の樹脂成形体、樹脂組成物、及び塗料は、建材用途分野、触媒用途分野、空調分野、塗料・インク分野、樹脂用添加剤用途分野、製紙用途分野、食品用途分野、医農薬分野、分離材料分野、農業用途分野、生活関連分野、衣料分野など、様々な分野に用いることができる。

Claims (5)

  1. 少なくともバインダ樹脂とシリカとからなる樹脂成形体であって、
    該シリカの細孔容積の63%以上が、該樹脂成形体の外部に開放されており、
    該シリカが、下記(a)〜(f)の条件を満たす
    ことを特徴とする、樹脂成形体。
    (a)該シリカの細孔容積が、0.3ml/g以上3.0ml/g以下。
    (b)該シリカの比表面積が、100m 2 /g以上1000m 2 /g以下。
    (c)該シリカの最頻細孔直径が、2nm以上50nm以下。
    (d)該シリカの平均粒径が2μmを超え、最頻細孔直径(D max )の値の±20%の範囲にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の50%以上。
    (e)該シリカの固体Si−NMR測定における、−OSiが3個結合したSi(Q )と−OSiが4個結合したSi(Q )とのモル比を示すQ /Q の値が1.4以上。
    (f)該シリカがシリコンアルコキサイドを加水分解し、水熱処理して得られたものである。
  2. 基材を更に備えると共に、
    該基材の少なくとも一部に、該シリカが該バインダ樹脂によって固着されている
    ことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂成形体。
  3. 該基材が、少なくとも繊維からなる
    ことを特徴とする、請求項に記載の樹脂成形体
  4. 該バインダ樹脂のガラス転移温度が、−80℃以上110℃以下である
    ことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂成形体
  5. 該樹脂成形体が、該バインダ樹脂、該シリカ、及び溶剤を混合し、該溶剤を除去して得られるものであり、該バインダ樹脂が、該溶剤中でコロイドとなり、エマルジョンを形成するものである
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
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