JP4683524B2 - 電解質膜およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリオレフィン系の多孔性基材の細孔内に、プロトン伝導性ポリマーを充填してなる電解質膜およびその製造方法に関し、特に固体高分子型燃料電池や、直接型メタノール固体高分子型燃料電池に有用である。
地球規模の環境に対する懸念が叫ばれるにつれて、いわゆる温暖化ガスやNOxの排出防止が強く望まれている。これらのガスの総排出量を削減するために、自動車用の燃料電池システムの実用化が非常に有効と考えられている。また、地球規模の情報ネットワークが非常に重要になってきている昨今、モバイル環境やユビキタス社会の実現に重要なエネルギーの確保のためにも燃料電池システムが待望されている。
固体高分子型燃料電池(PEFC、Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、低温動作、高出力密度、発電反応で水しか生成されないという優れた特徴を有している。なかでも、メタノール燃料のPEFCは、ガソリンと同様に液体燃料として供給が可能なため、電気自動車動力として、またポータブル機器用電力供給源として有望であると考えられている。
固体高分子型燃料電池は、改質器を用いてメタノールを水素主成分のガスに変換する改質型と、改質器を用いずにメタノールを直接使用する直接型(DMFC、Direct Methanol Polymer Fuel Cell)の二つのタイプに区分される。直接型燃料電池は、改質器が不要であるため、1)軽量化が可能である。また、2)頻繁な起動・停止に耐えうる、3)負荷変動応答性も大幅に改善できる、4)触媒被毒も問題にならないなどの大きな利点があり、その実用化が期待されている。
固体高分子型燃料電池の電解質膜(隔膜)には、通常、陽イオン交換膜が使用され、パーフルオロカーボンスルホン酸膜が主に使用されていた。しかし、この膜は、化学的安定性に優れているが、保水性が不十分であるため陽イオン交換膜の乾燥が生じてプロトンの伝導性が低下し易く、さらに物理的な強度も不十分であるために薄膜化による電気抵抗の低減が困難であった。更にパーフルオロカーボンスルホン酸膜は高価であった。
また、特に燃料としてメタノール水溶液をアノード側に流すDMFCの場合には、パーフルオロカーボンスルホン酸膜がメタノールと極めて親和性が高いため、膜をメタノールが透過してしまい、カソードにまで到達して、カソード電極触媒と反応することにより起電力が低下し、出力密度が下がってしまうという、「メタノール・クロスオーバー現象」が起きやすい。
このため、固体高分子型燃料電池用隔膜として、重量平均分子量が50万以上の高分子量のポリオレフィン系多孔質膜の空孔中に陽イオン交換樹脂を充填してなる陽イオン交換膜が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、その製造方法として、上記多孔質膜に、陽イオン交換樹脂を溶剤に溶解させて含浸させ、その後、溶剤を除去させる方法や、陽イオン交換樹脂の単量体等を上記多孔質膜に含浸させ、その後、上記原料単量体の重合を行う方法などが開示されている。
しかしながら、この陽イオン交換膜は、母材が高分子量のポリオレフィンであるため、陽イオン交換樹脂が溶解する溶液やその原料単量体を上記多孔質膜に含浸させる際に、該多孔質膜が十分に膨潤せず、これらが膜の空孔内の細部まで充分に入り込まない問題があった。特に、陽イオン交換膜の溶液を含浸させる方法では、含浸後に溶剤が除去されるため、充填物の体積変化が生じてしまい、上記多孔質膜の空孔部細部への充填性はさらに低下していた。また、原料単量体を含浸させる方法でも、これらの単量体は多くの場合高粘度であるため、その空孔部細部まで密に充填させることは困難であった。
また、1)メタノール透過阻止性(メタノールが電解質を透過しないこと)、3)起動・終了によって膜への液湿潤・乾燥に伴う面積変化がないか又は少ないこと、及び4)プロトン伝導性の改善を目的として、ポリオレフィン類に二重結合を有するポリマーを添加して、延伸後に架橋させた多孔性基材を使用した電解質膜も知られている(例えば、特許文献2参照)。また、多孔性基材の細孔内表面にプロトン伝導性を有するポリマーを、プラズマグラフト重合法などによって結合したものも開示されている。
しかしながら、この電解質膜では、多孔性基材の細孔内表面に極性基や反応性基が十分残存しておらず、プロトン伝導性モノマーの充填性や反応性に改善の余地があり、得られる電解質膜のプロトン伝導性やメタノール透過阻止性が十分とは言えなかった。プラズマグラフト重合法などによって、細孔内表面にプロトン伝導性ポリマーを結合する方法では、多孔性基材の劣化が生じ易く、製造工程も煩雑化する。
特開平1−22932号公報 国際公開WO03/075386A1号公報
そこで、本発明の目的は、簡易な方法により多孔性基材の細孔内表面に十分な量のプロトン伝導性ポリマーを結合して、プロトン伝導性を改善し、しかもメタノール透過阻止性を上げることができる電解質膜及びその製造方法、並びにそれを用いた固体高分子型燃料電池、および直接型メタノール固体高分子型燃料電池を提供することにある。
本発明者らは、細孔内表面にプロトン伝導性ポリマーを化学結合させる方法について種々検討したところ、下記の発明により上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の電解質膜の製造方法は、ポリオレフィン類から選ばれる少なくとも1種の第1ポリマーと、二重結合を有する第2ポリマーとを含有する多孔性基材の細孔内に、プロトン伝導性を有する第3ポリマーまたは重合により第3ポリマーになるようなモノマーを充填した後、第2ポリマーの残存する二重結合の反応性を利用して第3ポリマーの細孔表面への化学結合を行う工程を含み、前記多孔性基材における前記第2ポリマーの赤外吸収スペクトルによる−CH −伸縮振動1470cm -1 と−C=C−変角振動965cm -1 における透過率ピーク比γ(−C=C−)/δ(−CH −)が0.05以上であることを特徴とする。
本発明の製造方法によると、第2ポリマーに起因する二重結合が残存するため、その反応性を利用して細孔内に充填された第3ポリマーまたはそのモノマーを細孔表面へ化学結合させることができる。また、第3ポリマー等は極性基を有するため、その溶液等を細孔内に進入させる上で、二重結合や他の極性基の残存が有利になる。その結果、簡易な方法により多孔性基材の細孔内表面に十分な量のプロトン伝導性ポリマーを結合でき、これによりプロトン伝導性を改善することができる。また、多孔性基材の細孔内に十分な量の第3ポリマーが基材と化学結合にて結合された状態で充填されると、メタノール透過阻止性を改善する上でも有利となる。本発明では、残存する二重結合の反応性を利用して、加熱処理などにより第1ポリマーの架橋を同時に行うのが好ましい。
また、前記多孔性基材における前記第2ポリマーの赤外吸収スペクトルによる−CH−伸縮振動1470cm-1と−C=C−変角振動965cm-1における透過率ピーク比γ(−C=C−)/δ(−CH−)が0.05以上であるため、第2ポリマーに起因する二重結合が多孔性基材に適当な量残存するため、プロトン伝導性ポリマー等の充填性や反応性をより確実に改善することができるようになる。
前記多孔性基材の原料および溶媒を含む組成物を溶融混練し、押し出し後に冷却してシート状成形物とした後、最終的に脱溶媒処理を行って前記多孔性基材を得る工程を含むことが好ましい。この場合、得られる多孔性基材の空孔率や孔径が好適になるように制御することができ、また、加熱処理によって第1ポリマーの架橋を好適に行うことができる。
第3ポリマーの充填後の前記多孔性基材の細孔内に、プロトン伝導性を有する第4ポリマーまたは重合により第4ポリマーになるようなモノマーをさらに充填する工程を含むことが好ましい。この場合、プロトン伝導性ポリマーの充填量を更に高めることができ、電解質膜のプロトン伝導性を更に改善し、併せてメタノール透過阻止性も改善することができる。
前記第1ポリマーが重量平均分子量50万以上の超高分子量ポリエチレンであることが好ましい。この場合、得られる電解質膜の強度が向上でき、更に、架橋反応も好適に行うことができる。
本発明の電解質膜は、上記いずれかに記載の電解質膜の製造方法によって得られることを特徴とする。本発明の電解質膜によると、上記の如き作用効果によって、多孔性基材の細孔内表面に十分な量のプロトン伝導性ポリマーを結合でき、これによりプロトン伝導性、メタノール透過阻止性を改善することができる。
このため、当該電解質膜を用いてなる本発明の固体高分子型燃料電池や直接型メタノール固体高分子型燃料電池は、出力密度を従来より高めることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の電解質膜の製造方法は、多孔性基材の細孔内に、プロトン伝導性を有する第3ポリマーまたは重合により第3ポリマーになるようなモノマーを充填した後、残存する二重結合の反応性を利用して第3ポリマーの細孔表面への化学結合を行う工程を含むものである。充填前の多孔性基材は、ポリオレフィン類から選ばれる少なくとも1種の第1ポリマーと、二重結合を有する第2ポリマーとを含有する。
第1ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン及びポリ4−メチルペンテンなどのポリオレフィン類などを挙げることができる。また第1ポリマーは、カルボニル基や酸無水物基などがグラフト重合されたポリオレフィン類などでもよい。かかるポリオレフィン類としては、例えば、グラフト重合されたポリオレフィン類−高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA等があげられるが、相溶性などの点から無水マレイン酸グラフトポリエチレンはより好ましく用いることができる。
これらのうち、第1ポリマーとして、ポリエチレン類が耐汚染性、耐腐食性、安価などの理由により好ましい。特に、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどが好ましい。高密度ポリエチレン又は超高分子量ポリエチレンは、得られる多孔性基材の強度の点からより好ましい。 これらのなかでも、特に多孔質フィルムの強度を高くできる観点から、重量平均分子量50万以上の超高分子量ポリエチレンを用いることが好ましい。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。
第2ポリマーは、主鎖又は側鎖に二重結合を有するものであり、更に酸無水物基やエポキシ基などの官能基を有していてもよい。ポリマー内に二重結合を有する第2ポリマーとしては、例えば、ポリノルボルネンやエチレン−プロピレン−ターポリマー、ポリブタジエンのうち少なくとも1種の第2ポリマーとを有してなるのがよい。この第2ポリマーとして、ビシクロ[3.2.0]へプト−6−エン、ビシクロ[4.2.0]オクト−7−エン及びこれらの誘導体の開環重合物;ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン(本明細書において、「ノルボルネン」ともいう)、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシメチルエステル等のノルボルネン誘導体;ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン及びこの誘導体の開環重合物;並びにジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン及びこれらの誘導体の開環重合物、エチレン−プロピレン−ターポリマー、ポリブタジエン、などを挙げることができる。前記エチレン−プロピレン−ターポリマーはエチレンとプロピレンおよびジエンモノマーとの三元共重合体からなり、その主鎖にそのジエンモノマー単位に由来する脂肪族環と二重結合とを有する。また該重合体は、その二重結合の一部を水素添加してもよい。
前記エチレンとプロピレンおよびジエンモノマーとの三元共重合体中、ジエンモノマーとしてはジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ヘキサジエンなどがあげられる。これらの中では脂肪族環骨格が好ましく、なかでも架橋反応性の点からエチリデンノルボルネンがより好ましい。これらのジエンモノマ−を用いてなる三元共重合体は単独でまたは2種以上を混合して用いた重合体であってもよい。前記エチレン−プロピレン−ターポリマーはポリオレフィン樹脂組成物として、複雑な分子鎖のからみあい構造をもつことが三次元架橋構造に望ましく、分子量が一定以上の高分子量となるエチレン−プロピレン−ターポリマーが好ましい。
この高分子量の目安としては、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が50以上であるエチレン−プロピレン−ターポリマーが好ましい。50以上であれば、ポリオレフィン系樹脂との分散性の観点から好適に用いられる。
また、ポリブタジエンを用いる場合、該ポリブタジエンには、シス型1,4−ポリブタジエン、トランス型1,4−ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエンなどを挙げることができる。シス型1,4−ポリブタジエン骨格を多くするポリブタジエンが、屈曲性構造を取りやすい点、二重結合の反応が進行しやすい点で、好ましい。特に、シス型1,4−ポリブタジエン骨格の割合が30%以上有するポリブタジエンが好ましい。
第2ポリマーを用いる場合、該第2ポリマーの量は、第1ポリマーと第2ポリマーとの双方を合わせたものを100重量部とすると、1〜50重量部、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは1〜35重量部であるのがよい。
なお、前記多孔性基材の樹脂組成物中には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、耐電防止剤、造核剤等の添加物を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
本発明における多孔性基材の製造には、熱誘起又は非溶媒誘起タイプの湿式成膜法、乾式製膜法など公知の方法を利用することができる。たとえば、前記多孔性基材の原料および溶媒を含む組成物を溶融混練し、押し出し後に冷却してシート状成形物とした後、最終的に脱溶媒処理を行って前記多孔性基材を得る工程で製造することができる。更に、シート状成形物を圧延したり、一軸方向以上に延伸した後、溶媒を抽出除去することも可能である。
本発明に用いることのできる溶媒としては、ポリオレフィン樹脂の溶解が可能なものであれば、特に限定されないが、凝固点が−10℃以下のものが好ましく用いられる。このような溶媒の好ましい具体例として、例えば、デカン、デカリン、流動パラフィン等の脂肪族または脂環式炭化水素、沸点がこれらに対応する鉱油留分などが上げられる。ポリオレフィンおよび溶媒の混合割合は、一概に決定できないが、樹脂濃度が5%〜30重量%が好ましい。樹脂濃度がこれ以上の場合には混練不足になりポリマー鎖の十分な絡み合いを得にくくなる。
この製法の過程において、脱溶媒処理後の二重結合を残した状態で、プロトン伝導性を有する第3ポリマーまたは重合により第3ポリマーになるようなモノマーを、その細孔内に充填する。多孔性基材中に残される二重結合の量は、その第2ポリマーにもよるが、例えば多孔性基材の赤外線スペクトル中の−CH−の伸縮振動1470cm-1と、二重結合−C=C−の面外変角振動965cm-1の比γ(−C=C−)/δ(−CH−)が0.05以上であることが好ましく、0.06〜1.0が好ましい。この比が0.05以下では、多孔性基材と第3ポリマーとの一体化を促進させる架橋結合の割合が減少し、多孔膜基材から脱離する可能性も増す傾向がある。
なお、第3ポリマーまたはモノマーを、その細孔内に充填する前に、一部架橋処理を行ってもよい。すなわち、その二重結合による架橋を一部事前に多孔膜基材のみで行うことにより、多孔膜基材単体での特性を調製することができる。また、第3ポリマーまたはモノマーを充填して細孔表面に化学結合させた後に、残存する二重結合を用いて各種後処理反応を行ってよい。例えば、後述する第4ポリマーとの反応などに用いることができる。
本発明では、残存する二重結合の反応性を利用して第3ポリマーの細孔表面への化学結合を行うが、第1ポリマーの架橋及び第3ポリマーの細孔表面への化学結合を行うのが好ましい。第1、第2、第3ポリマーは、その一部又はその全てが架橋されている方が、耐熱性、膜強度の面で好ましい。なお、架橋反応を行う際、加熱処理、紫外線照射、電子線照射などの処理を利用することができる。
このようにして得られた多孔性基材の空孔率は、5〜95%、好ましくは5〜90%、より好ましくは10%〜90%、最も好ましくは10%〜80%であるのがよい。また、平均孔径は、0.001μm〜100μmの範囲内にあることが望ましい。さらに、基材の厚さは100μm以下、好ましくは1〜80μm、より好ましくは5〜70μmであるのがよい。
本発明では、第3ポリマーまたは重合により第3ポリマーになるようなモノマーを多孔性基材の細孔内に充填するが、その方法としては、例えばそれらの溶液を細孔内に含浸して溶媒を除去する方法が一般的である。第4ポリマーについても同様である。これらのポリマーの充填量は、多孔性基材の空孔率にもよるが、多孔性基材の10〜200重量%が好ましく、20〜180重量%がより好ましい。なお、第3ポリマーになるようなモノマーは、オリゴマー化して細孔内に充填することも可能である。
第3ポリマー又はそのモノマーは、イオン交換基を有するのがよい。なお、本明細書において、「イオン交換基」とは、例えば−SO3H基由来の−SO3 -など、プロトンを保持し且つ遊離、しやすい基のことをいう。これらが第3ポリマーにペンダント状に存在し、かつ該ポリマーが細孔内を満たすことにより、プロトン伝導性が生じる。したがって、第3ポリマーは、イオン交換基を有する第3のモノマー由来であるのがよい。本発明において、第3ポリマーをその一端を細孔内表面に化学結合するように形成するために、前記多孔性材料からなる多孔性フィルム基材中の二重結合を残存させておき、その後該第3ポリマーと、二重結合を反応せしめることにより充填ポリマーと多孔基材を一体化した膜構造体を形成させることができる。
また、さらに、その結合を強固にするために以下の処理を併用してもよい。例えば、プラズマ、紫外線、電子線、ガンマ線等で基材を励起させて、該基材の少なくとも細孔内表面に反応開始点を生成させて、該反応開始点に第3のモノマーを接触させることにより、第3ポリマーを得る方法である。また、シランカプラー等の化学的方法により、第3ポリマーを細孔内表面に結合させることもできる。
さらに、細孔中に第3モノマーを充填し、その内部で重合反応を行わせて第3ポリマーを得る一般的な重合法を用いた後に、得られた第3ポリマーを基材と、例えば上記シランカプラーなどを含むカップリング剤を用いて、化学結合させることもできる。
本発明の第3モノマーとして使用可能なモノマーは、好適にはアリルスルホン酸ナトリウム(SAS)、メタリルスルホン酸ナトリウム(SMS)、p−スチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、アクリル酸(AA)などが挙げられる。しかしながら、本発明に使用可能なモノマーは、上記に限定されるものではなく、アリルアミン、アリルスルホン酸、アリルホスホン酸、メタリルスルホン酸、メタリルホスホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンホスホン酸、アクリルアミドのスルホン酸(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)またはホスホン酸誘導体、エチレンイミン、メタクリル酸など、構造中にビニル基およびスルホン酸、ホスホン酸などの強酸基、カルボキシル基などの弱酸基、1級、2級、3級、4級アミンのような強塩基、弱塩基を有するモノマーおよびそのエステルなどの誘導体であってもよい。なお、モノマーとしてナトリウム塩などの塩のタイプを用いた場合、ポリマーとした後に、それらの塩をプロトン型などにするのがよい。
また、これらのモノマーを1種のみ用いてホモポリマーを形成してもよく、2種以上用いてコポリマーを形成してもよい。即ち、基材の細孔内の表面にその一端が化学結合した第3ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。電解質膜のプロトン伝導性は、使用する第3のモノマー及び/又は後述する第4のモノマーの種類に依存しても変化する。よって、高いプロトン伝導性を持つモノマー材料を用いることが望ましい。また、電解質のプロトン伝導性は、細孔内を満たすポリマーの重合度にも依存する。
第4ポリマーを用いる場合、第4ポリマーは、第3ポリマーと同じであっても異っていてもよい。即ち、第4ポリマーとなる第4のモノマーとして、上記で例示した第3ポリマーと後になる第3のモノマーから1種又は2種以上を選択したものを用いることができる。好適な第4モノマーとしては、第4モノマーとして上述したものが挙げられ、且つこれに加えてビニルスルホン酸を挙げることができる。なお、第4モノマーとして1種選択した場合、第4ポリマーはホモポリマーであり、第4モノマーとして2種以上を選択した場合、第4ポリマーはコポリマーとすることができる。
第4ポリマーを用いる場合、第4ポリマーは、第2または3ポリマーと化学結合及び/又は物理結合しているのが好ましい。例えば、第4ポリマーが全て第2または第3ポリマーと化学結合していてもよく、又は第4ポリマーが全て第2または第3ポリマーと物理結合していてもよい。また、第4ポリマーの一部が第2または第3ポリマーと化学結合しており、その他の第4ポリマーが第2または第3ポリマーと物理結合していてもよい。なお、化学結合として、第2または第3ポリマーと第4ポリマーとの結合が挙げられる。この結合は、例えば第2または第3ポリマーに反応性基を保持させておき、該反応性基と第4ポリマー及び/又は第4モノマーとが反応することなどにより、形成することができる。また、物理結合の状態として、例えば、第2または第3及び第4ポリマー同士が絡み合う状態が挙げられる。
なお、第4ポリマーを用いることにより、メタノールの透過(クロスオーバー)を抑制しつつ、かつ細孔内に充填したポリマー全体が細孔内から溶出又は流出することなく、かつプロトン伝導性を高めることができる。特に、第2または第3ポリマーと第4ポリマーとが化学結合及び/又は物理結合することにより、細孔内に充填したポリマー全体が細孔内から溶出又は流出することがない。また、第3ポリマーの重合度が低い場合であっても、第4ポリマー、特に重合度が高い第4ポリマーが存在することにより、得られる電解質膜のプロトン伝導性を高めることができる。
なお、加熱処理を用いて架橋反応(細孔表面への化学結合を含む)を行うには、一回で熱処理する一段式熱処理法、最初に低温で行いその後にさらに高温で行う多段熱処理法、又は昇温しながら行う昇温式熱処理法など、種々の方法を用いることができる。但し、基材に存在する充填ポリマーまたはモノマーの反応性など考慮して、本発明の基材膜および内部充填膜の諸特性を損なうことなく処理するのが望ましい。熱処理温度は、40〜140℃、好ましくは90〜140℃であるのがよい。処理時間は、0.5〜14時間程度であるのがよい。これらは充填される第3ポリマーまたはモノマーの性質によって適宜反応温度・時間を変えることにより、より最適化できる。
紫外線を用いて細孔表面への化学結合を行う場合、例えば微多孔フィルム、即ち本発明の基材中に第3ポリマーまたはモノマーなどを充填し、そのまま、又は重合開始剤を含むメタノール溶液などに含浸させ、溶媒乾燥後に、この基材を水銀ランプ等によって照射することにより、架橋あるいは重合処理を行うことができる。特に、ベンゾフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等の水素引き抜き型光重合開始剤を用いた場合には、光グラフト重合が優先して起こる。これらの光重合開始剤は、紫外光により励起され、カルボニル基がバイラジカル状態になり、酸素ラジカルサイトが周囲の疎水性プラスチックの炭化水素基から水素を引き抜き、水素を引き抜かれて生成した炭素ラジカルが、系中のビニルモノマーの二重結合に付加してグラフト重合が開始されるものと考えられている。このとき、基材膜中に多くの二重結合が残存していると、生長ラジカル端がこの二重結合に付加し、そこからまたモノマーへのラジカルの付加が起こり、こうしてプロトン交換基を有するポリマーが基材膜としっかり化学結合したグラフト膜が得られる。
電子線を用いて架橋処理(細孔表面への化学結合を含む)を行う場合、例えば微多孔フィルム、即ち本発明の基材中に第3ポリマーまたはモノマーなどを充填し、即ち本発明の基材を放射線線量0.1〜10Mrad照射することにより、架橋処理を行うことができる。照射時の雰囲気は、熱処理法と同様に空気雰囲気下であっても、架橋状態をコントロールする意味で、窒素ガス又はアルゴンガスなどの不活性ガスの雰囲気下であってもよい。
本発明の電解質膜は、燃料電池、特に直接型メタノール固体高分子燃料電池又は改質型メタノール固体高分子燃料電池を含むメタノール燃料電池に用いるのが好ましい。本発明の電解質膜は、直接型メタノール固体高分子燃料電池に用いるのが特に好ましい。
電解質膜のメタノール透過阻止性は、分離できるガラスセルの間に、測定すべき電解質膜を挟んで、セルを締め付け、セルの片方にメタノール水溶液を、他方に純水を入れて、ポンプで循環させながら、一定時間ごとに純水側に透過して出てくるメタノールの量を、ガスクロマトグラフィーにて定量して評価することができる。メタノール透過速度は、単位時間あたり、単位面積あたり、単位膜厚あたりのメタノール透過量として算出することができる。
ここで、メタノール燃料電池の構成を、簡単に説明する。メタノール燃料電池は、カソード極、アノード極、及び該両極に挟まれた電解質を有してなる。メタノール燃料電池は、改質器をアノード電極側に有し、改質型メタノール燃料電池としてもよい。
カソード極は、従来公知の構成とすることができ、例えば電解質側から順に触媒層及び該触媒層を支持する支持体層を有してなることができる。触媒としては、白金触媒を用いるのが一般的である。これには、白金ブラックまたは白金触媒が導電性カーボンブラック担体の上にナノ粒子状態で担持されたカーボン担持触媒などが挙げられる。これら触媒を、プロトン交換性高分子電解質をバインダとして用いて、適宜の溶剤を加えて溶解、均一分散し、触媒塗布用ペーストを作製する。このペーストを、バーコーターやスクリーン印刷などの手法を用いて、導電性多孔質基材であるカーボンペーパー上に塗布し、熱風循環式乾燥機中で溶剤を乾燥して、カソード電極を作る。
また、アノード極も、従来公知の構成とすることができ、例えば電解質側から順に触媒層及び該触媒層を支持する支持体層を有してなることができる。触媒としては、被毒に強い白金ルテニウム合金触媒を用いるのが一般的である。これも、メタルのみからなる白金ルテニウムブラック触媒、または白金ルテニウム合金触媒が導電性カーボンブラック担体の上にナノ粒子状態で担持されたカーボン担持触媒などを用いることができる。これら触媒を、プロトン交換性高分子電解質をバインダとして用いて、適宜の溶剤を加えて溶解、均一分散し、触媒塗布用ペーストを作製する。このペーストを、バーコーターやスクリーン印刷などの手法を用いて、導電性多孔質基材であるカーボンペーパー上に塗布し、熱風循環式乾燥機中で溶剤を乾燥して、アノード電極を作る。
バインダとして用いるプロトン交換性高分子電解質としては、例えばデュポン社製ナフィオン(登録商標)を挙げることができるが、これに限られることはない。ナフィオンの場合、溶剤としては、水/アルコール混合溶剤を用いるのが一般的である。一例を挙げると、水、1−プロパノール、2−プロパノールの混合溶剤は、ナフィオンをよく溶解できるため、好適に用いることができる。
このようにして得られたカソード電極とアノード電極は、電極形状と同じ形状をした金型を用いて、電解質膜を挟むようにしてホットプレスして、MEAと呼ばれる膜電極接合体をつくる。ホットプレス条件は、優れた性能が得られるよう適宜選ばれるが、温度は80℃から200℃、好ましくは90℃から160℃、更に好ましくは100℃から150℃の範囲に設定するのがよい。プレス時間は、0.2分から60分、好ましくは0.5分から10分、更に好ましくは1分から3分くらいがよい。
燃料電池の単位セルは、上記MEAと、流路形成用セパレータと、集電部材などで一般に構成され、かかる単位セルの複数からなる積層物として所望の容量の燃料電池が一般に構成される。
膜電極接合体の燃料電池特性評価は、次のようにして行われる。0Vから作動する電子負荷機を備えた市販の燃料電池評価装置を用いて、グラファイトセルに、ゴムガスケットにて挟んだ上記膜電極接合体をセットし、所定トルクにてセルを締め付け、燃料電池評価装置に取り付ける。加湿器(バブラー)を通って加湿されたガスを、セルに供給する。PEFCの場合は、アノードに水素ガスを流し、DMFCの場合は、所定濃度のメタノール水溶液を定量ポンプにて流す。メタノール濃度は、1重量%〜50重量%の間である。メタノール透過阻止性の低い電解質膜では、メタノール濃度が高いとメタノール・クロスオーバーのため、得られる出力密度は小さい。そのような場合には、メタノール濃度を下げてやる必要がある。カソードガスは、PEFC、DMFC共に、酸素またはエアーである。供給ガス流量は、取り出す電流値により決められるが、大まかにいえば、10mL/min〜1000mL/minの間にある。
燃料電池特性は、横軸に電流密度、縦軸に電圧をプロットした、電流−電圧(I−V)曲線で表すことが多い。高い電圧を維持したまま、大きな電流を取り出せるMEAほど、性能が高いと言える。
以下に実施例および比較例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例における試験方法は次の通りである。
(フィルム厚)
1/10000直読ダイヤル式膜厚測定器により測定した。
(通気度)
JIS P8117に準拠して測定した。
(空孔率)
1/10000 直読ダイヤル式膜厚測定器により測定した厚みを用い、フィルムの単位面積S(cm)あたりの重さW(g)、平均厚みt(μm)、密度d(g/cm)から下式により算出した値を使用した。
[空孔率(%)]=(1−(104×W/S/t/d))×100
(赤外吸収スペクトル測定)
日本分光(株)製 FT/IR−470を用いて赤外吸収スペクトルの−CH−伸縮振動1470cm-1および−C=C−変角振動965cm-1の透過率ピーク比を以下の式Aで求めて評価した。
I=γ(−C=C−)/δ(−CH−) 式A
(膜面積変化率測定)
乾燥状態における膜の面積を測定した(Sd)。また、膜を25℃の水中に浸漬し、一昼夜保持した後の水中での膜面積を測定した(Ss)。乾燥状態(Sd)と膨潤状態(Ss)との面積変化率のφS(%)を以下の式Bで求めて評価した。
φS={100(Ss−Sd)}/Ss 式B
(プロトン伝導率測定)
膜を水(温度:25℃)中で膨潤させ、その後2枚の白金箔電極で膜を挟んでプロトン伝導性測定用試料を作製し、ヒューレット・パッカード社製HP4192Aによりインピーダンス測定を行った。測定周波数範囲は10kHz〜1MHzとした。得られたインピーダンスの実数部分を横軸に、虚数部分を縦軸にしてプロットし、極小値の実数部分の値を膜抵抗R(Ω)とした。膨潤させたときの膜の厚みをd(μm)とすると、プロトン伝導率σ(S/cm)は式Cから求めることができる。
σ=10-4×d/R 式C
(重量増加率)
基材膜にポリマーを含浸または重合により充填したとき、もとの基材重量をWb(g)、ポリマー充填後の基材重量をWa(g)とすると、ポリマー充填後の重量増加率J(%)は、下記D式から求めることができる。
J=100×(Wa−Wb)/Wb 式D
架橋剤を用いない場合は、残存モノマー洗浄除去後の重量増加は、全てグラフト重合によるものと見なせる。従って、架橋剤を用いない場合の重量増加率を、「グラフト率」と言うことがある。
〔基材の調製例1〕
ノルボルネンの開環重合体の粉末(日本ゼオン(株)社製、商品名:ノーソレックスNB、重量平均分子量(以下Mw):200万以上)10wt%及び超高分子量ポリエチレン(Mw:200万)90wt%からなる重合体組成物15重量部と、流動パラフィン85重量部とをスラリー状に均一混合し、温度160℃で小型ニーダーを用いて約60分間溶解、混練した。得られた混練物を0℃に冷却したロール又は金属板に挟み込み、シート状・急冷しシート状樹脂を得た。このシート状樹脂を、温度115℃でシート厚が1.0mmになるまでヒートプレスし且つ温度120℃で同時に縦横4×4倍に二軸延伸し、ヘプタンを用いて脱溶媒処理を行い、微多孔フィルム状基材を得た。
この多孔膜基材は厚み31μm、空孔率64%、通気度は210Sec/100mlであった。この多孔膜基材の赤外線スペクトルを測定したし、式Aで評価したところ、−CH−伸縮振動に対する−C=C−変角振動ピーク比は、0.19であった。
〔基材の調製例2〕
ノルボルネンの開環重合体の粉末(日本ゼオン(株)社製、商品名:ノーソレックスNB、重量平均分子量(以下Mw):200万以上)20wt%及び超高分子量ポリエチレン(Mw:200万)80wt%からなる重合体組成物15重量部と、流動パラフィン85重量部とをスラリー状に均一混合し、温度160℃で小型ニーダーを用いて約60分間溶解、混練した。得られた混練物を0℃に冷却したロール又は金属板に挟み込み、シート状に急冷しシート状樹脂を得た。
このシート状樹脂を、温度115℃でシート厚が1.0mmになるまでヒートプレスし且つ温度120℃で同時に縦横4×4倍に二軸延伸し、ヘプタンを用いて脱溶媒処理を行い、微多孔フィルム状基材を得た。この多孔膜基材は厚み30μm、空孔率64%、通気度は200Sec/100mlであった。この多孔膜基材の赤外線スペクトルを測定したし、式Aで評価したところ、−CH−伸縮振動に対する−C=C−変角振動ピーク比は0.42であった。
〔基材の調製例3〕
ノルボルネンの開環重合体の粉末(日本ゼオン(株)社製、商品名:ノーソレックスNB、重量平均分子量(以下Mw):200万以上)3wt%及び超高分子量ポリエチレン(Mw:200万)97wt%からなる重合体組成物15重量部と、流動パラフィン85重量部とをスラリー状に均一混合し、温度160℃で小型ニーダーを用いて約60分間溶解、混練した。得られた混練物を0℃に冷却したロール又は金属板に挟み込み、シート状に急冷しシート状樹脂を得た。
このシート状樹脂を、温度115℃でシート厚が1.0mmになるまでヒートプレスし且つ温度120℃で同時に縦横4×4倍に二軸延伸し、ヘプタンを用いて脱溶媒処理を行い、微多孔フィルム状基材を得た。この多孔膜基材を85℃12時間、次いで128℃2時間の熱処理を施し、架橋処理済みの多孔膜とした。この多孔膜基材は厚み20μm、空孔率45%、通気度は300Sec/100mlであった。この多孔膜基材の赤外線スペクトルを測定したし、式Aで評価したところ、−CH−伸縮振動に対する−C=C−変角振動ピーク比は0.007であった。
〔実施例1〕
上記の調製例1で得られた多孔性基材を用いて、電解質膜を形成した。充填する第3ポリマーとして、東亜合成株式会社製2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以下、「ATBS」と略記する)のホモポリマーを用いた。
具体的には、ATBSの重合用溶液を準備し、この重合用溶液中に調製例1で得られた基材を浸漬し、ATBSの重合を行った。重合用溶液の組成および重合条件を以下に示す。重合用溶液組成:ATBS:43.5wt%、N−メチルピロリドン:19.3wt%
メタノーノレ:19.3wt%、蒸留水:14.7wt%、ベンゾフェノン:0.85wt%、ジビニルベンゼンのキシレン溶液(55wt%):2.35wt%。
この重合溶液に基材の調製例1で得られた基材膜を浸漬し、2枚のガラス板ではさみクリップでガラス板端部を締め付け、空気との接触を抑制した後、アイグラフィックス株式会社製UE−021−203C紫外線固化照射器を用いて、重合用溶液を含有する膜を30分間紫外線照射した後、室温で1時間放置した。その後、ガラス板の間から取り出した膜を蒸留水に入れて、室温下、12時間撹拌洗浄してから、蒸留水を交換し、さらに30分間室温撹拌洗浄を行った。洗浄完了後膜を55℃の真空乾燥器中で10時間以上乾燥させて電解質膜を得た。
得られた電解質膜の重量増加率、水濡れ後面積変化率とプロトン伝導率を測定した。その結果、重量増加率190wt%、面積変化率20%、プロトン伝導率7.35×10-2S/cmであった。
分割できるガラスセルを用いて、電解質膜を間に挟み、片側に1.23mol/Lのメタノール水溶液、反対側に純水を入れ、40℃にて80mL/minの流量で液を循環させながら、純水側に透過してくるメタノール量を、ガスクロマトグラフィにより定量し、この電解質膜のメタノール透過性を評価したところ、メタノール透過速度は、比較に用いたナフィオン117の1/5と低かった。
アノード電極として、白金ルテニウム触媒電極(ドイツ Umicore社製、R300E)、カソード電極として白金触媒電極(ドイツ Umicore社製、R300E)を用い、上記電解質膜をこれら電極の間に挟み、135℃にて2分間、ホットプレスを行い、MEA(膜電極接合体)を作製した。電極面積は5cmであった。このMEAをグラファイトセルにセットして、東陽テクニカ製燃料電池評価装置にてPEFC特性を評価した。アノードガスに水素、カソードガスに酸素を用いたときの、セル温度25℃におけるPEFC I−V曲線を図1に示す。加湿器温度は、アノード、カソード共に25℃とした。アノードガス流量は350mL/min、カソードガス流量は500mL/minで、最大出力密度は、560mW/cmであった。
〔参考例1〕
実施例1において、基材調製例1で得られた基材膜の代わりに、調製例3で得られた基材膜を用いた以外は、実施例1とまったく同様にして、電解質膜を調製した。これを用いて重合結果、面積変化率およびプロトン伝導率を測定したところ、重量増加率87wt%、面積変化率17%、プロトン伝導率2.8×10-3S/cmであり、実施例1の結果と比べて、プロトン伝導率は1/20であった。
これを用いて実施例1と同様にして、MEAを作製し、PEFC特性を評価した。測定条件は実施例1と同じである。結果を図2に示す。最大出力密度は90mW/cm2と、実施例1の最大出力密度の1/6以下であった。
〔実施例2〕
ATBSの重合溶液を準備し、この重合溶液に調製例2の基材を浸漬し、ATBSの重合を行った。重合溶液の組成は、重合用溶液組成:ATBS:45wt%、N−メチルピロリドン:20wt%、メタノール:19.1wt%、蒸留水:15wt%、ベンゾフェノン:0.9wt%であった。
実施例1と同様の方法に、重合、洗浄および乾燥を行ってからATBSグラフト膜を得た。得られたグラフト膜をホットプレス機を用いて、110℃、200kg/cm2の条件で十分間プレスし、電解質膜を得た。重合結果および得られた電解質膜の面積変化率、イオン伝導率を測定したところ、重量増加率26wt%、面積変化率7%、プロトン伝導率 9×10-3S/cmであった。
〔参考例2〕
実施例2において、基材調製例2で得られた基材膜の代わりに、基材調製例3で得られた基材膜を用いた以外は、実施例2とまったく同様にして、電解質膜を調製した。重合結果、面積変化率およびプロトン伝導率を測定したところ、重量増加率18wt%、面積変化率6%、プロトン伝導率2.7×10-3S/cmであった。また、実施例2の結果と比べて、非常に低いグラフト率であり、プロトン伝導性も1/3以下であった。
実施例1で得られた電解質膜の電流密度と電圧および出力密度との関係を示すグラフ 参考例1で得られた電解質膜の電流密度と電圧および出力密度との関係を示すグラフ

Claims (7)

  1. ポリオレフィン類から選ばれる少なくとも1種の第1ポリマーと、二重結合を有する第2ポリマーとを含有する多孔性基材の細孔内に、プロトン伝導性を有する第3ポリマーまたは重合により第3ポリマーになるようなモノマーを充填した後、第2ポリマーの残存する二重結合の反応性を利用して第3ポリマーの細孔表面への化学結合を行う工程を含み、前記多孔性基材における前記第2ポリマーの赤外吸収スペクトルによる−CH −伸縮振動1470cm -1 と−C=C−変角振動965cm -1 における透過率ピーク比γ(−C=C−)/δ(−CH −)が0.05以上である電解質膜の製造方法。
  2. 前記多孔性基材の原料および溶媒を含む組成物を溶融混練し、押し出し後に冷却してシート状成形物とした後、最終的に脱溶媒処理を行って前記多孔性基材を得る工程を含む請求項1に記載の電解質膜の製造方法。
  3. 第3ポリマーの充填後の前記多孔性基材の細孔内に、プロトン伝導性を有する第4ポリマーまたは重合により第4ポリマーになるようなモノマーをさらに充填する工程を含む請求項1又は2に記載の電解質膜の製造方法。
  4. 前記第1ポリマーが重量平均分子量50万以上の超高分子量ポリエチレンである請求項1〜3いずれかに記載の電解質膜の製造方法。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載の電解質膜の製造方法によって得られる電解質膜。
  6. 請求項5に記載の電解質膜を用いてなる固体高分子型燃料電池。
  7. 請求項5に記載の電解質膜を用いてなる直接型メタノール固体高分子型燃料電池。
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