JP4666794B2 - キャップレス筆記具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャップレスの筆記具に関し、特に、乾燥防止機構を有するキャップレスの筆記具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、水性や油性のマーキングペン、水性ボールペンや万年筆などの筆記具においては、筆記部の先端のインクが乾燥して筆記できなくなることを防止するために、先端部を密閉するためのキャップを備えるものが一般に用いられている。
また、上記のようにキャップを備えた筆記具の場合には、頻繁に使用する際に、使用するたびにキャップを着脱する必要があり面倒であることから、別体のキャップを不要とした、いわゆるキャップレスの筆記具が数多く提案されている。
【0003】
しかしながら、キャップレスの筆記具の場合、別体のキャップの代わりに狭い筆記部本体内部に先端部を密閉するための密閉機構を構成する必要があり、従来の方式によると密閉機構が複雑となり、構成部品の部品点数が多くなることで、組立て作業が複雑となり、さらに、生産コストが高くなるという問題点があった。
【0004】
そこで、筆記部先端を密閉する方法として、実開昭49−32731号公報(以下、従来例1と称する。)に開示されているように、筆記具の軸筒内部の先端部に中央から外側に向かい切り込みを入れた弁板を組み込み、その切り込み部分より筆記部先端を突出するようにした方式や、実開昭49−107421号公報(以下、従来例2と称する。)に開示されているように、筆記具の軸筒内部の基端部及び先端部にパッキンを設けて軸筒内部を密閉するとともに、先端部の対向当接させたパッキンの当接部より筆記部先端を突出するようにした方式や、実開昭63−23084号公報(以下、従来例3と称する。)に開示されているように、キャップ本体の前方に開口部を有する弾性自閉体を設けて、軸筒先端部のペン先部を突出するようにしたものが提案されている。
【0005】
また、その他の方法として、特開平1−281999号公報(以下、従来例4と称する。)に開示されているように、筆記具の軸筒内部の先端部に形成され、筆記部のペン先部が収容されるシール室の先端側を開閉自在とするシール手段を備え、該ペン先部が先端部より突出する時に、シール室の先端側を開放するようにした方式や、実開昭58−89394号公報(以下、従来例5と称する。)に開示されているように、筆記具の軸筒内の先端部配置される先軸先端部にペン先部を密閉する密閉部材が密嵌固定されて、先軸の動作に伴ない密嵌部材の先端部が開閉するようにした方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来例1、2、3のような方式によると、ペン先が突出するシール部にはすでに開口部が形成されているため、使用する以前においても密閉性に問題がある。
また、従来例4のような方式によると、シール室やシール開閉機構など構造が複雑になるという問題点があり、同様に、従来例5のような方式においても、別部品でシール室を構成して開口機構を設けるなど構造が複雑になるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で軸筒内部のペン先部を密閉できるとともに、使用する前においてのペン先部の密閉状態を確実にしたキャップレス筆記具を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、キャップレス筆記具に係り、軸筒内に筆記体を配置して、該軸筒の先端開口より筆記体のペン先部が出入自在に構成されるキャップレス筆記具において、
前記軸筒の先端開口の内側に、先端側の形状がドーム状凸部であり、未使用時にはペン先部から離間されたゴム材または弾性樹脂材で形成されるインナーキャップが嵌め合わされ、
前記インナーキャップには、ドーム状凸部の基部の外周端部に外周に沿って先端側シール部が先端方向に向かい突設され、
前記軸筒にはその先端部の内側にシール溝が形成され、
該シール溝に前記先端側シール部を嵌め合わして、インナーキャップを先端部の内側に取付け、インナーキャップにより軸筒内部を密閉するようにし、
前記インナーキャップの軸心方向の略中央部を通って筋状薄膜部を形成し、ペン先部が軸筒の先端開口より外部へ突出する最初の動作で、前記筋状薄膜部が破断されて、スリットが形成されることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記筋状薄膜部は、幅を0.01〜1.0mmとし、膜厚を0.01〜0.5mmとすることが好ましい。
また、前記インナーキャップは、スポンジ状の弾性体で形成されることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、以下のような作用が得られる。
すなわち、本発明のキャップレス筆記具によれば、軸筒の先端開口の内側に、先端側の形状がドーム状凸部であり、未使用時にはペン先部から離間されたゴム材または弾性樹脂材で形成されるインナーキャップが嵌め合わされることで軸筒内部を密閉することができる。また、前記インナーキャップには、ドーム状凸部の基部の外周端部に外周に沿って先端側シール部が先端方向に向かい突設され、前記軸筒にはその先端部の内側にシール溝が形成され、該シール溝に前記先端側シール部を嵌め合わして、インナーキャップを先端部の内側に取付け、インナーキャップにより軸筒内部を密閉するようにしている。
しかも、前記インナーキャップの軸心方向の略中央部を通って未貫通の筋状薄膜部を形成することで、ペン先部を突出させて使用開始するまで長時間にわたり、軸筒内の密封状態を確実にすることができる。
また、ペン先部が軸筒の先端開口より外部へ突出する最初の動作で前記筋状薄膜部を破断してスリットを形成することにより、該スリットを通ってペン先部を容易に突出させることができるとともに、前記インナーキャップをゴム材または弾性樹脂材で形成することにより、ゴム材や樹脂材の弾性力により該スリットを容易に密着させて密閉状態にすることができる。
【0011】
また、前記筋状薄膜部の幅を0.01〜1.0mmとし、膜厚を0.01〜0.5mmとすることで、キャップレス筆記具を使用開始する時に、ペン先部でスリットを確実にかつ容易に破断することができるとともに、前記筋状薄膜部が破断した後でも、キャップレス筆記具未使用時にはスリットを密着させて軸筒内を密閉状態にすることができる。
また、前記インナーキャップをスポンジ状の弾性体で形成することで、容易に軸筒内を密閉可能にできる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図3は発明を実施する形態の一例であって、図中、図と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
図1は本発明の実施形態に係るキャップレス筆記具の全体の構成を示す断面図、図2は前記キャップレス筆記具の使用時の状態を示す断面図、図3の(a)は図1のA−A断面矢視図、(b)は図3の(a)のB−B断面矢視図、(c)は図3の(a)のC−C断面矢視図である。
【0013】
本実施形態に係るキャップレス筆記具1は、図1に示すように、軸筒2内に筆記部本体5を配置して、該軸筒2の先端部3に形成された開口部4より筆記部本体5のペン先部6が出入自在に構成されたものである。
前記筆記部本体5は、軸筒2内の前側の内周に沿って配置されたコイルスプリング7によって後部方向に付勢されるとともに、軸筒2内後部に設けられるストッパ10により後方で保持されている。また、筆記部本体5の後端部11には、ペン先部6を突出させるための押し部14が、軸筒後端部12より出入自在に設けられている。
【0014】
前記筆記部本体5の後部には、ストッパ係止部15が軸心方向に沿って後方に向かい広いクサビ状に、かつ軸心方向に向かい突設形成されている。前記ストッパ係止部15の後端には、軸心方向に略垂直に係止部15aが形成され、前記ストッパ10には、前記係止部15aと対向してノッチ10aが形成されている。
前記筆記部本体5は、その後端部11を前方に向かい、コイルスプリング7のばね力に勝って先端側へ押圧すると、ペン先部6が先端の開口部4より突出するようにされている。
【0015】
前記軸筒2内の先端部3には、図1、3の(a)〜(c)に示すように、先端方向にドーム状に突出形成された凸部21を有するインナーキャップ20が設けられている。前記インナーキャップ20は、ゴム材または弾性樹脂材により形成され、前記ドーム状凸部21の基部22の一部位22aより、該ドーム状凸部21のほぼ中央部23を通り、軸心方向を中心に対向する部位22bに亘り、平面視で略直線状に外形に沿って筋状に凹んだ未貫通のスリット溝25が形成されている。前記スリット溝25の底部には筋状の薄膜部26が形成されている。
【0016】
前記スリット溝25は、図3の(a)に示すように、前記ドーム状凸部21の内側に形成され、スリット幅を0.01〜1.0mmとするとともに、溝の開口側を広く、底部側すなわち薄膜部26側を狭くした略くさび状で形成されている。前記薄膜部26は、前記ドーム状凸部21の外周に沿って形成され、膜厚を0.01〜0.5mmとして形成されている。
【0017】
前記インナーキャップ20は、図3の(b)に示すように、ドーム状凸部21の基部22の外周端部に、三角形状断面を有する先端側シール部27が外周に沿って円周に亘りに連続的に先端方向に向かい突設されている。また、前記基部22の後端面28には、前記先端側シール部27よりも内側で小径の矩形断面を有する後側シール部29が円周方向全周に亘りに連続的に後部方向に向かい突設されている。
【0018】
前記軸筒2の先端部3の内側には、図1に示すように、前記インナーキャップ取付け部3aが段付き形成され、前記先端側シール部27が嵌め合わされるシール溝3bが形成されている。
また、前記インナーキャップ20の後方には、該インナーキャップ20を先端部3内側に取付けるためのインナーキャップホルダ30が配置されている。
【0019】
前記インナーキャップホルダ30は、リング状に形成され、その円周方向の外周面を前記先端部3の内壁部に嵌合するとともに、前記インナーキャップ20を先端部3の内側へ取付けることで、前記インナーキャップ20により軸筒2内部を密閉するようにしている。
【0020】
次に、本実施形態に係るキャップレス筆記具の作動を説明する。
まず、キャップレス筆記具1を使用しない場合、図1に示すように、軸筒2の内部に筆記部本体5とともにペン先部6も収容されている。
ここで、キャップレス筆記具1が一度も使用されていない場合は、インナーキャップ20に形成されたスリット溝25をペン先部6が貫通していないため、スリット溝25の底部に形成された薄膜部26は破壊されていない。したがって、軸筒2内部の気密状態は完全に保たれ、キャップレス筆記具1が使用されるまでは塗布剤の揮発を最小限に止めることができる。
【0021】
次に、前記キャップレス筆記具1を使用する場合、図2に示すように、軸筒2を握り、筆記部本体5の後端部に形成された押し部14をコイルスプリング7のばね力に勝って先端方向へ押し込む。
図1から2に示すように、筆記部本体5が軸筒2内部に入り込むとともに、該筆記部本体5の後端部11に形成されたストッパ係止部15が先端方向に移動する。そして、ストッパ10を通過して該ストッパ10端部のノッチ10aとストッパ係止部15の係止部15aと対向する位置まで移動する。この時、前記押し部14は軸筒後端部12の端部に配置され、一方、ペン先部6は軸筒2の先端部3の開口部4より突出した状態となる。
【0022】
この状態で、前記押し部14を開放すると、コイルスプリング7のばね力により筆記部本体5は後方に押し戻されるが、前記ノッチ10aに係止部15aが止められるため、前記筆記部本体5が後方から突出することはない。したがって、開口部4よりペン先部6が突出した状態で保持される。
【0023】
ここで、インナーキャップ20において、ドーム状凸部21の内側のスリット溝25は薄膜部26のみにより連結されているだけなので、強度的に一番弱くなっている。そこに、ペン先部6によって先端方向に当接押圧されることにより、スリット溝25を容易に貫通することができる。しかも、円周方向に沿ってスリット溝25が形成されているので、インナーキャップ20は溝に沿ってきれいに2分割される。
【0024】
ペン先部6を収容する場合は、ストッパ10の側面を押し込むことで、ノッチ10aと係止部15aとを容易に外すことができ、コイルスプリング7のばね力により筆記部本体5を後方に移動して、ペン先部6を軸筒2内部に収容することができる。
【0025】
前記インナーキャップ20は、ペン先部6が回避するとペン先部6により広げられたスリット溝25は弾性力によって元のスリット溝25の状態に戻ろうとするため、最小の隙間状態に復元される。したがって、キャップレス筆記具1を使用しない場合であっても、スリット溝25の合わせ部からの塗布剤の揮発を最小限に止めることができる。
【0026】
以上のように構成したので、本実施形態によるキャップレス筆記具1によれば、ペン先部6が出入自在とされるスリット溝25を有するインナーキャップ20を備えることで、ペン先部6が収容される軸筒2内部を容易に密閉できるとともに、該スリット溝25に薄膜部26を形成することで、キャップレス筆記具1を最初に使用するまでの軸筒内部の密閉状態を確実にすることができる。
【0027】
また、インナーキャップ20および薄膜部26にゴム材または弾性樹脂材を使用したので、破断した後のインナーキャップ20の弾性力により該スリット溝25を閉じる方向に力が作用するため、密閉状態を良好に保つことができる。さらに、前記インナーキャップ20に先端側シール部27および後側シール部29を形成したので、軸筒2内部の密閉状態を確実にすることができる。
【0028】
また、前記薄膜部26の膜厚を0.01〜0.5mmとすることで、キャップレス筆記具1を使用開始する時に、ペン先部6でスリット溝25に沿って確実にかつ容易に薄膜部26を破断することができる。また、前記スリット溝25のスリット幅を0.2〜1.0mmとすることで、薄膜部26が破断した後でも、キャップレス筆記具1未使用時にはスリット溝25を密着させて軸筒2内の密閉状態を保つことができる。
【0029】
また、本実施形態によれは、インナーキャップ20の先端側を、先端開口に向かいドーム状に突出形成したので、先端側外周部の剛性を高くでき、スリット25を閉じる方向に力が作用した場合に確実にスリット25を密着させることができる。
【0030】
尚、本実施形態においては、インナーキャップ20をゴム材または弾性樹脂材で形成しているが、本発明は、これに限定されるものではなく、変形例として、スポンジ状のゴム材または弾性樹脂材で形成するものであってもよい。このような構成によると、ペン先を出し入れする時にインナーキャップ20のペン先部6が突出する部分、スリット25をさらに容易に変形、復元できるので、該スリット25の密着性を高めてより密閉性を高めることができるとともに、液漏れが生じた場合であっても吸水性があるので直接液だれとなることがない。
【0031】
また、本実施形態は、インナーキャップ20の先端側の形状をドーム状としている。
【0032】
また、本実施形態は、インナーキャップ20のドーム状凸部21の中央部を通るスリット25を1箇所に形成しているが、本発明は、スリットの形状や数に限定されるものではなく、スリットを複数形成したものであっても良く、例えば、ドーム状凸部21の中央部より放射状に3本形成して略三菱状にしたものや、4本形成して十字状に形成したもの、あるいは6本形成したものであってもよい。
【0033】
また、本実施形態は、スリット溝25をドーム状凸部21の内側に形成し、薄膜部26を該スリット溝25の底部、すなわちドーム状凸部21外側に形成しているが、本発明は、薄膜部を形成するものであれば、薄膜部が形成される位置や、スリット溝と組合わせて形成することに限定されるものではなく、例えば、インナーキャップの先端側に形成されたスリットのインナーキャップ内側に薄膜部を形成するようにしたものや、該スリットの中に薄膜部を形成するようにしたものであっても良い。
【0034】
また、本発明のキャップレス筆記具は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0035】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の請求項1〜3記載のキャップレス筆記具によれば、ゴム材または弾性樹脂材で形成するとともに、未貫通の筋状の薄膜部を備えるインナーキャップを軸筒内の先端部に設けることで、使用する前における軸筒内のペン先部の密閉状態を確実にでき、しかも、使用時にはペン先部を簡単な構成で出入自在にできるとともに、未使用時にはペン先部が収容される軸筒内を確実に密閉することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に実施形態に係るキャップレス筆記具の全体の構成を示す断面図である。
【図2】前記キャップレス筆記具の使用時の状態を示す断面図である。
【図3】(a)は図1のA−A断面矢視図、(b)は図3の(a)のB−B断面矢視図、(c)は図3の(a)のC−C断面矢視図である。
【符号の説明】
1 キャップレス筆記具
2 軸筒
3 先端部
3a インナーキャップ取付け部
3b シール溝
4 開口部
5 筆記部本体
6 ペン先部
20 インナーキャップ
21 ドーム状凸部
25 スリット溝
26 薄膜部
27 先端側シール部
29 後側シール部
30 インナーキャップホルダ
Claims (3)
- 軸筒内に筆記体を配置して、該軸筒の先端開口より筆記体のペン先部が出入自在に構成されるキャップレス筆記具において、
前記軸筒の先端開口の内側に、先端側の形状がドーム状凸部であり、未使用時にはペン先部から離間されたゴム材または弾性樹脂材で形成されるインナーキャップが嵌め合わされ、
前記インナーキャップには、ドーム状凸部の基部の外周端部に外周に沿って先端側シール部が先端方向に向かい突設され、
前記軸筒にはその先端部の内側にシール溝が形成され、
該シール溝に前記先端側シール部を嵌め合わして、インナーキャップを先端部の内側に取付け、インナーキャップにより軸筒内部を密閉するようにし、
前記インナーキャップの軸心方向の略中央部を通って筋状薄膜部を形成し、ペン先部が軸筒の先端開口より外部へ突出する最初の動作で、前記筋状薄膜部が破断されて、スリットが形成されることを特徴とするキャップレス筆記具。 - 前記筋状薄膜部は、幅を0.01〜1.0mmとし、膜厚を0.01〜0.5mmとすることを特徴とする請求項1に記載のキャップレス筆記具。
- 前記インナーキャップは、スポンジ状の弾性体で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のキャップレス筆記具。
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