JP4665558B2 - L−グルタミン酸生産微生物及びl−グルタミン酸の製造法 - Google Patents
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Description
しかし、パントエア属細菌や他の微生物では、L−グルタミン酸排出遺伝子の存在が知られておらず、新規のL−グルタミン酸排出遺伝子の創出が望まれていた。
(1) L−グルタミン酸生産能を有し、かつyhfK遺伝子の発現が増強するように改変された微生物。
(2) yhfK遺伝子のコピー数を高めること又はyhfK遺伝子の発現調節配列を改変することにより、yhfK遺伝子の発現が増強するように改変された、(1)の微生物。
(3)yhfK遺伝子が、配列番号10、11、及び12から選択されるアミノ酸配列を有し、かつ、L−グルタミン酸排出活性を有するタンパク質をコードする遺伝子である、(1)の微生物。
(4) yhfK遺伝子が、下記(A)又は(B)に記載のタンパク質をコードする遺伝子である(1)の微生物:
(A)配列番号2または4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(B)配列番号2または4に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、または付加されたアミノ酸配列を有し、かつL−グルタミン酸排出能を有するタンパク質。
(5) yhfK遺伝子が、配列番号2または4に示すアミノ酸配列と70%以上相同なアミノ酸配列を有し、かつL−グルタミン酸排出能を有するタンパク質をコードする遺伝子である、(1)の微生物。
(6) 前記yhfK遺伝子が、下記(a)又は(b)に記載のDNAである、(1)の微生物:
(a)配列番号1の1530〜3620または配列番号3の201〜2288に示す塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号1の1530〜3620または配列番号3の201〜2288に示す塩基配列又は同塩基配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、L−グルタミン酸排出活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(7) 前記微生物が、γ-プロテオバクテリアである、(1)〜(6)のいずれかの
微生物。
(8) 前記微生物がエシェリヒア属細菌、エンテロバクター属細菌、パントエア属細菌、クレブシエラ属細菌、セラチア属細菌からなる群より選ばれるいずれかの腸内細菌である、(1)〜(7)のいずれかの微生物。
(9)前記微生物が、コリネ型細菌である(1)〜(6)のいずれかの微生物。
(10) (1)〜(9)のいずれかの微生物を培地中で培養し、該培地中にL−グルタミン酸を生成・蓄積せしめ、L−グルタミン酸を該培地から採取することを特徴とする、L−グルタミン酸の製造法。
(11) 以下の(A)又は(B)に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
(A)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(B)配列番号2に示すアミノ酸配列と71%以上相同なアミノ酸配列を有し、かつL−グルタミン酸排出能を有するタンパク質。
本発明の微生物は、L−グルタミン酸生産能を有し、かつyhfK遺伝子の発現が増強するように改変された微生物である。「L−グルタミン酸生産能」とは、本発明の微生物を培地中で培養したときに、L−グルタミン酸を細胞又は培地から回収できる程度に、細胞又は培地中に生成、蓄積する能力をいう。L−グルタミン酸生産能を有する微生物としては、本来的にL−グルタミン酸生産能を有するものであってもよいが、以下に示すような微生物を、変異法や組換えDNA技術を利用してL−グルタミン酸生産能を有するように改変したものや、本発明の遺伝子を導入することによってL−グルタミン酸生産能が付与された微生物あってもよい。なお、上記親株は、本来内在的にyhfK遺伝子を有しているものであってもよいし、本来はyhfK遺伝子を有しないが、yhfK遺伝子を導入することにより、L-グルタミン酸排出活性や生産能が向上するものであってもよい。
びその誘導体であるエシェリヒア・コリ MG1655株(ATCC No.47076)、及びW3110株(ATCC No.27325)を用いることができる。エシェリヒア・コリK12株は、1922年にスタンフォード大学で分離されたものであり、λファージの溶原菌であるとともに、F因子を持ち、接合等遺伝的組み換え体の作成が可能である汎用性の高い菌株である。またエシェリヒア・コリK12株のゲノム配列は既に決定されており、遺伝子情報も自由に利用出来る。エシェリヒア・コリK12株や、誘導株を入手するには、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)より分譲を受けることができる(住所ATCC, P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム
コリネバクテリウム・アルカノリティカム
コリネバクテリウム・カルナエ
コリネバクテリウム・グルタミカム
コリネバクテリウム・リリウム(コリネバクテリウム・グルタミカム)
コリネバクテリウム・メラセコーラ
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(コリネバクテリウム・エフィシエンス)
コリネバクテリウム・ハーキュリス
ブレビバクテリウム・ディバリカタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)
ブレビバクテリウム・フラバム(コリネバクテリウム・グルタミカム)
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)
ブレビバクテリウム・ロゼウム
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス
ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(コリネバクテリウム・アンモニアゲネス)
ブレビバクテリウム・アルバム
ブレビバクテリウム・セリヌム
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム ATCC13870
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム ATCC15806
コリネバクテリウム・アルカノリティカム ATCC21511
コリネバクテリウム・カルナエ ATCC15991
コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13020、13032、13060
コリネバクテリウム・リリウム(コリネバクテリウム・グルタミカム) ATCC15990
コリネバクテリウム・メラセコーラ ATCC17965
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス AJ12340(FERM BP−1539)
コリネバクテリウム・ハーキュリス ATCC13868
ブレビバクテリウム・ディバリカタム(コリネバクテリウム・グルタミカム) ATCC14020
ブレビバクテリウム・フラバム(コリネバクテリウム・グルタミカム) ATCC13826、ATCC14067
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム ATCC14068
ブレビバクテリウム・ラクトフェルメンタム(コリネバクテリウム・グルタミカム) ATCC13665、ATCC13869
ブレビバクテリウム・ロゼウム ATCC13825
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム ATCC14066
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス ATCC19240
ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(コリネバクテリウム・アンモニアゲネス) ATCC6871
ブレビバクテリウム・アルバム ATCC15111
ブレビバクテリウム・セリヌム ATCC15112
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム ATCC15354
of Industrial and Marine Bacteria、住所 NCIMB Lts., Torry Research Station 135,
Abbey Road, Aberdeen AB9 8DG, United Kingdom)から入手可能である。また、メチロ
バチラス・フラゲラタムとしては、KT株(Arch. Microbiol., (1988), 149巻、p441-446に記載)等が挙げられる。
あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法( Chang,S.and Choen,S.N.,Molec. Gen. Genet., 168, 111 (1979);Bibb,M.J.,Ward,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature, 274, 398 (1978);Hinnen,A.,Hicks,J.B.and Fink,G.R.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75
1929 (1978))も応用できる。また、電気パルス法(特開平2-207791号公報)によっても、微生物の形質転換を行うこともできる。
より行ってもよい。L−グルタミン酸の生合成経路から分岐してL−グルタミン酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素としては、2−オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ、イソクエン酸リアーゼ、リン酸アセチルトランスフェラーゼ、酢酸キナーゼ、アセトヒドロキシ酸シンターゼ、アセト乳酸シンターゼ、ギ酸アセチルトランスフェラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、1−ピロリンデヒドロゲナーゼなどが挙げられる。この中では特に、2−オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を低下又は欠損させることが好ましい。
エシェリヒア・コリAJ12624(FERM BP-3853)
エシェリヒア・コリAJ12628(FERM BP-3854)
エシェリヒア・コリAJ12949(FERM BP-4881)
ブレビバクテリム・ラクトファーメンタム ΔS株 (国際公開95/34672号パンフレット参照)
パントエア・アナナティス AJ13601(FERM BP-7207 欧州特許公開明細書1078989)
パントエア・アナナティス AJ13356(FERM BP-6615 米国特許6.331,419号)
パントエア・アナナティス SC17sucA(BP-8646)
クレブシエラ・プランティコーラ AJ13410(FERM BP-6617 米国特許6,197,559号)
尚、SC17sucA株は、SC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株(2001-333769)のプラスミドを導入する前の菌株であり、プライベートナンバーAJ417が付与され、平成16年2月26日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(郵便番号305−8566 茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に受託番号FERM BP-08646として寄託されている。
よい。また、yhfK遺伝子の増幅により、L−グルタミン酸生産能が付与された微生物でもよい。なお、yhfK遺伝子の発現増強は、後述するように、プロモーター改変を始めとする発現調節領域改変などによる内因性yhfK遺伝子の発現増強であってもよいし、yhfK遺伝子を含むプラスミドの導入などによる外因性yhfK遺伝子の発現増強であってもよい。さらに、これらを組み合わせてもよい。
なお、上記シゲラ・フレキシネリ、サルモネラ・ティフィムリウムのyhfK遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号4のアミノ酸配列と、それぞれ、99%、86%相同であり、配列番号2のアミノ酸配列と、それぞれ、70%、71%の相同性である。さらに、配列番号2と4のアミノ酸配列の間の相同性は70%である。アミノ酸配列および塩基配列の相同性は、例えばKarlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993))やFASTA(Methods Enzymol., 183, 63
(1990))を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている (http://www.ncbi.nlm.nih.gov参照)。
例えば配列番号10に示すアミノ酸配列をコードする遺伝子、配列番号11、12に示すアミノ酸配列をコードする遺伝子が挙げられる。(配列番号10のアミノ酸配列は、エシェリヒア・コリ、パントエア・アナナティス、シゲラ・フレキシネリ、サルモネラ・ティフィムリウムのyhfKタンパク質の間で保存されている配列、配列番号11のアミノ酸配列は、エシェリヒア・コリとサルモネラ・ティフィムリウムのyhfKタンパク質の間で保存されている配列、配列番号12は、エシェリヒア・コリ、サルモネラ・エンテリカのyhfKタ
ンパク質の間で保存されている配列を示す。)yhfK遺伝子ホモログは、例えば、配列番号2または、4のアミノ酸配列全体と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有し、かつ、L-グルタミン酸排出活性を有するタンパク質をコードするものを意味する。
上記置換は機能的に変化しない中性変異である保存的置換が好ましい。保存的変異とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、phe, trp, tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、leu, ile, val間で、極性アミノ酸である場合には、gln, asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、lys, arg, his間で、酸性アミノ酸である場合には、asp, glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、ser, thr間でお互いに置換する変異である。例えば、配列番号10、11、12のXの領域を野生型のアミノ酸配列を元にして中性的変異を導入することにより、機能上同一のYhfKタンパクを取得することが出来る。
より具体的には、alaからser又はthrへの置換、argからgln、his又はlysへの置換、asnからglu、gln、lys、his又はaspへの置換、aspからasn、glu又はglnへの置換、cysからser又はalaへの置換、glnからasn、glu、lys、his、asp又はargへの置換、gluからgly、asn、gln、lys又はaspへの置換、glyからproへの置換、hisからasn、lys、gln、arg又はtyrへの置換、ileからleu、met、val又はpheへの置換、leuからile、met、val又はpheへの置換、lysからasn、glu、gln、his又はargへの置換、metからile、leu、val又はpheへの置換、pheからtrp、tyr、met、ile又はleuへの置換、serからthr又はalaへの置換、thrからser又はalaへの置換、trpからphe又はtyrへの置換、tyrからhis、phe又はtrpへの置換、及び、valからmet、ile又はleuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、または逆位等には、yhfK遺伝子を保持する微生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。
さらに、yhfK遺伝子は、配列番号2又は4のアミノ酸配列全体に対して、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有し、かつ、L−グルタミン酸排出活性を有するタンパク質をコードするものであってもよい。また、それぞれ導入する宿主により、遺伝子の縮重性が異なるので、それぞれyhfKが導入される宿主で使用しやすいコドンに置換したものでもよい。同様にyhfK遺伝子は、L−グルタミン酸の排出機能を有する限り、N末端側、C末端側が延長したものあるいは、削られているものでもよい。例えば延長する長さは、アミノ酸残基で50以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
て生じるものも含まれる。これらの遺伝子がL−グルタミン酸排出活性を有するタンパク質をコードしているか否かは、例えば、これらの遺伝子を適当な細胞で発現させ、培地中に排出されるL−グルタミン酸の量を増大させているかを調べることにより、確かめることができる。
エシェリヒア・コリ細胞内において自律複製可能なベクターとしては、pUC19、pUC18、pHSG299, pHSG399, pHSG398, pACYC184, pTrc99(pHSG、pACYCは宝バイオ社より入手可), RSF1010, pBR322, pMW219(pMWはニッポンジーン社より入手可)等が挙げられる。
コリネ型細菌で自律複製できるプラスミドとして具体的には、以下のものが例示される。
pAM330 (特開昭58-67699号公報参照)
pHM1519 (特開昭58-77895号公報参照)
pSFK6 (特開2000-262288号公報参照)
pVK7 (米国特許出願公開明細書2003-0175912)
また、これらのベクターからコリネ型細菌中でプラスミドを自律複製可能にする能力を持つDNA断片を取り出し、前記エシェリヒア・コリ用のベクターに挿入すると、エシェリヒア・コリ及びコリネ型細菌の両方で自律複製可能ないわゆるシャトルベクターとして使用することができる。
また、発現量の上昇は、m-RNAの生存時間を延長させることや、酵素タンパク質の細胞内での分解を防ぐことによっても達成可能である。
yhfKのプロモーター等の発現調節領域は、プロモーター検索ベクターやGENETYX等の遺伝子解析ソフトを用いて決定することも出来る。これらのプロモーター置換または改変によりyhfK遺伝子の発現が強化される。発現調節配列の置換は、例えば温度感受性プラスミドを用いて行うことができる。コリネ型酸菌の温度感受性プラスミドとしては、p48K及びpSFKT2(以上、特開2000-262288号公報)、pHSC4(フランス特許公開1992年2667875号公報、特開平5-7491号公報)等が挙げられる。これらのプラスミドは、コリネ型細菌中で少なくとも25℃では自律複製することができるが、37℃では自律複製できない。なお、発現調節配列の改変は、yhfK遺伝子のコピー数を高めることと組み合わせてもよい。
.51 p49841-49849)。例えば、yhfK遺伝子を発現させた菌体より反転膜小胞を作成し、ATPあるいはその他駆動力となる基質を添加し、RIラベルしたグルタミン酸の取り込み活性を測定することによって測定可能である。また生菌を使用して、ラベル化グルタミン酸と非ラベル化グルタミン酸の交換反応の速度を検出することによっても測定できる。
本発明の微生物を培地に培養し、培地中にL−グルタミン酸を生成蓄積せしめ、L−グルタミン酸を該培地から採取することにより、L−グルタミン酸を製造することが出来る。
シウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等が使用できる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
L−グルタミン酸排出遺伝子の探索は以下のようにして行った。L−グルタミン酸は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼによってトリカルボン酸サイクルの中間体である2−オキソグルタル酸に、1段階で変換されるため、グルタミン酸デヒドロゲナーゼやトリカルボン酸サイクルを持つ多くの微生物では、酸性条件で細胞内に流入するL−グルタミン酸は容易に代謝されることが予想される。しかし、2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼを欠損させた株は、酸性条件でL−グルタミン酸に対して感受性を示す。ここでは、2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ欠損株としてパントエア・アナナティスSC17sucA株を用い、酸性条件下でのL−グルタミン酸耐性を指標にL−グルタミン酸排出系遺伝子の取得を試みた。
高濃度のL−グルタミン酸を含むpH4.5の最少培地(最少培地にL−グルタミン酸を30g/L, L−リジン塩酸塩,、DL-メチオニン,ジアミノピメリン酸各100mg/Lを混合したpH4.5に調整した培地 糖源としてグルコースとシュークロースを用いた)に塗布した。
yhfKに関しては、タンパク質のモチーフ検索の結果、トランスポーターをコードしている可能性が示唆されていたため(J.Mol.Microbiol.Biotechnol.(2000) 2 (2):195-198)、上記遺伝子のうち、yhfKに関して単独増幅効果を検証することとした。
培地に塗布した。SC17sucAがコロニーを形成出来ないのに対し、SC17sucA/pSTV-yhfKは最少培地上でコロニーを形成することを確認した。
次にこの遺伝子が、L−グルタミン酸生産に与える影響を検討するため、yhfK増幅用プラスミドpSTV-yhfKを配列番号9に示すL−グルタミン酸生産用プラスミドRSFCPG を有するL−グルタミン酸生産菌SC17sucA/RSFCPG(特開平2001-333769号公報参照)に導入して、L−グルタミン酸生産における影響を調べた。
培地は以下の組成で行った。
〔培養培地組成〕
シュークロース 50g/L
MgSO4・7H20 0.4g/L
KH2PO4 2.0g/L
酵母エキス 4.0g/L
FeSO4・7H20 0.01g/L
MnSO4・5H20 0.01g/L
L−リジン塩酸塩 0.4g/L
DL-メチオニン 0.4g/L
ε−ジアミノピメリン酸 0.4g/L
テトラサイクリン塩酸塩 25mg/L
クロラムフェニコール 25mg/L
次にエシェリヒア・コリのyhfK遺伝子のパントエア・アナナティスSC17sucA/RSFCPG株に導入して効果を調べた。
〔種培養培地組成〕
シュークロース 50g/L
MgSO4・7H20 0.4g/L
GD113 0.1mL/L
(NH4)2SO4 4g/L
KH2PO4 2.0g/L
酵母エキス 4.0g/L
FeSO4・7H20 0.01g/L
MnSO4・5H20 0.01g/L
L−リジン塩酸塩 0.4g/L
DL-メチオニン 0.4g/L
ε−ジアミノピメリン酸 0.4g/L
テトラサイクリン塩酸塩 12.5mg/L
クロラムフェニコール 25mg/L
シュークロース 50g/L
(NH4) 2S04 5.0g/L
MgSO4・7H20 0.4g/L
GD113 0.1mL/L
酵母エキス 6.0g/L
KH2PO4 6.0g/L
NaCl 1.5g/L
FeSO4・7H20 0.02g/L
MnSO4・5H20 0.02g/L
L−リジン塩酸塩 0.8g/L
DL-メチオニン 0.6g/L
DL-α,ε-ジアミノピメリン酸 0.6g/L
テトラサイクリン塩酸塩 12.5mg/L
クロラムフェニコール 25mg/L
塩化カルシウム二水塩 0.75g/L
パントテン酸カルシウム 12mg/L(パントテン酸添加培養時のみ添加)
YhfK遺伝子増幅株の菌体内のL−グルタミン酸の濃度を測定した。菌体内のL−グルタミン酸の濃度はA.Ishizaki et al, Biotech.Teqniq.(1995) Vol9, No.6,p409-の方法を参考に測定した。500mLのシリコンオイルを張り込んだ1.5mL Tubeに1mL培養液を加え、すぐに遠心機にて15000回転 3分遠心し、チューブの底を切り取り、菌体を回収する。この菌体を200μLの5規定の過塩素酸の入った2mL チューブに入れ、測定まで-80℃にて保存した。この過塩素酸溶液を室温で溶かし、菌体を懸だくし、200mLの2.5モル の炭酸カリウムを添加することにより中和し、遠心にて沈殿を除去後、上澄みを菌体内抽出物としてL−グルタミン酸濃度を測定した。
次にパントエア・アナナティス由来のyhfK遺伝子をエシェリヒア・コリに導入して増幅効果を検討した。
グルコース 40g/L
MgSO4・7H20 1.0g/L
(NH4)2SO4 20g/L
KH2PO4 1.0g/L
酵母エキス 1.0g/L
FeSO4・7H20 0.01g/L
MnSO4・5H20 0.01g/L
クロラムフェニコール 25mg/L
炭酸カルシウム 30g/L
(pH7.0に調整)
コリネ型細菌のL−グルタミン酸生産株としてコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869株を用いることが出来る。またyhfK増幅株の親株としては、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を低下させた菌株が好適である。ATCC13869株のyhfK増幅株は例えば以下のような方法で構築することが出来る。
yhfK遺伝子は、エシェリヒア・コリ、パントエア・アナナティス等の腸内細菌の染色体を鋳型にして、yhfKと相補的な合成オリゴヌクレオチド、例えば、配列番号5,6あるいは7,8のプライマーを用いてPCRにて増幅出来る。得られたPCR産物は、pCG1由来のエシェリヒア・コリネ型細菌のシャトルベクターpVK7(米国特許出願公開明細書2003-0175912)にクローニングし、yhfK増幅用プラスミドpVK9yhfKと命名する。 pVK7yhfKと比較対照用プラスミドpVK7を形質転換し、カナマイシン耐性株を得る。このようにして、yhfK増幅株ATCC13869/pVK9yhfK,比較対照用プラスミド導入株ATCC13869/pVK9を取得出来る。
生育した菌体を20mlのフラスコ培地(グルコース30g/l, 硫酸アンモニウム 15g/l, KH2PO4 1g/l, MgSO4・7H2O 0.4g/l, FeSO4・7H2O 0.01g/l, MnSO4・4〜5H2O 0.01g/l, VB1
200μg/l, Biotin 300μg/l, 大豆加水分解物(T-N)0.48g/l, KOHを用いてpH8.0に調整:オートクレーブ115℃10分)に接種した後、予め乾熱滅菌しておいた炭酸カルシウムを1g加え、31.5℃で20-40時間振とう培養を行う。培養終了後、残糖とL−グルタミン酸の濃度をバイオテックアナライザーで測定する。このような方法でL−グルタミン酸生産能の向上したコリネ型細菌のyhfK増幅株を取得することが出来る。
Claims (5)
- L−グルタミン酸生産能を有し、かつyhfK遺伝子の発現が増強するように改変された、エシェリヒア属細菌またはパントエア属細菌である微生物を培地中で培養し、該培地中にL−グルタミン酸を生成・蓄積せしめ、L−グルタミン酸を該培地から採取することを特徴とする、L−グルタミン酸の製造法。
- 前記微生物がyhfK遺伝子のコピー数を高めること又はyhfK遺伝子の発現調節配列を改変することにより、yhfK遺伝子の発現が増強するように改変された微生物である、請求項1に記載のL−グルタミン酸の製造法。
- yhfK遺伝子が、下記(A)又は(B)に記載のタンパク質をコードする遺伝子である請求項1または2に記載のL−グルタミン酸の製造法:
(A)配列番号2または4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(B)配列番号2または4に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、または付加されたアミノ酸配列を有し、かつL−グルタミン酸排出能を有するタンパク質。 - yhfK遺伝子が、配列番号2または4に示すアミノ酸配列と90%以上相同なアミノ酸配列を有し、かつL−グルタミン酸排出能を有するタンパク質をコードする遺伝子である、請求項1または2に記載のL−グルタミン酸の製造法。
- 前記yhfK遺伝子が、下記(a)又は(b)に記載のDNAである、請求項1または2に記載のL−グルタミン酸の製造法:
(a)配列番号1の1530〜3620または配列番号3の201〜2288に示す塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号1の1530〜3620または配列番号3の201〜2288に示す塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、L−グルタミン酸排出活性を有するタンパク質をコードするDNA。
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