JP4658409B2 - ウエビング巻取装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウエビングベルトによって車両の乗員を拘束するシートベルト装置におけるウエビング巻取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
長尺帯状のウエビングベルトによって車両乗員の身体を拘束する所謂シートベルト装置の主要部を構成するウエビング巻取装置には、車両が急減速状態となった場合に巻取軸をロックすることで、急減速状態における慣性で車両前方側へ移動しようとする乗員の身体がウエビングベルトを引き出そうとする力に対抗し、車両急減速時におけるウエビングベルトの拘束力を向上するロック手段が設けられている。
【0003】
以下、この種のロック手段の一例について簡単に説明する。
【0004】
ロック手段は、巻取軸の半径方向に沿って所定範囲変位可能に巻取軸に取り付けられた1乃至複数のロックプレートを備えている。これらのロックプレートの外周部にはラチェット歯が形成されておりロックプレートが巻取軸に対して巻取軸の半径方向外側に変位すると、ウエビング巻取装置のフレームを構成する一対の脚板の一方に形成されたラチェット孔のラチェット歯に噛み合い、巻取軸をロックする。
【0005】
また、これらのロックプレートの近傍には、巻取軸に対して同軸的に回転可能に設けられた回転体が設けられている。回転体は圧縮コイルスプリングや捩じりコイルスプリング等の付勢部材によって巻取軸に機械的に連結されており、巻取軸の回転に追従回転すると共に、この追従回転に抗する外力が回転体に付与された場合には付勢部材が弾性変形することで巻取軸に対して相対回転する。回転体はロックプレートに係合していると共に、回転体が巻取軸に対して相対回転した際にはロックプレートを巻取軸の半径方向外側へ変位させるようになっている。
【0006】
回転体の側方(下方)には加速度センサが設けられている。通常、加速度センサは皿状の鋼球受部を有するセンサハウジングを備えており、この鋼球受部に球形状の鋼球が載置されている。またセンサハウジングには、係合爪が回転体の外周部に形成された外歯に対して接離移動可能に設けられており、車両急減速状態の慣性で鋼球が変位し、鋼球受部の内周斜面を転がり上がると、鋼球が係合爪を押し上げて係合爪を回転体の外歯へ接近させて係合させるようになっている。
【0007】
すなわち、車両急減速時の慣性で乗員の身体がウエビング巻取装置を引き出すと、巻取軸が引出方向へ回転するが、このとき鋼球が転動して係合爪を回転体の外歯へ係合させて回転体の回転を制限する。これにより、巻取軸と回転体との間に相対回転が生じてロックプレートが巻取軸の半径方向外側へ向けて変位し、ロックプレートのラチェット歯がラチェット孔のラチェット歯に噛み合うことで巻取軸の回転がロックされ、ウエビングベルトの引き出しが制限される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した加速度センサは、通常、ヒンジ等によってセンサハウジングに対して係合爪が揺動可能に連結されているが、このような構成の場合、ヒンジの軸は水平方向(車両幅方向若しくは車両前後方向)を向かずに、水平方向に対して傾斜していると、係合爪の揺動を円滑に行なうことが困難となる。
【0009】
しかしながら、このような加速度センサが直接或いは間接的に取り付けられるウエビング巻取装置のフレームは、車種毎によって車体への取付姿勢が異なるため、異なる車種の車体に同種のフレームを取り付けると、ヒンジの軸が傾斜してしまう。このため、センサハウジングを含めた加速度センサは車種毎に個別に設計しなければならず、コスト高であった。
【0010】
本発明は、上記事実を考慮して、フレームの取付姿勢が異なる車体に対しても容易に流用できる加速度センサを備えたウエビング巻取装置を得ることが目的である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のウエビング巻取装置は、装着状態で車両乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトの長手方向基端部が係止され、自らの軸芯周りの一方の回転により前記ウエビングベルトをその基端側から巻き取る巻取軸と、直接或いは間接的に前記巻取軸を支持するフレームと、直接或いは間接的に前記フレームに支持されると共に車両急減速時の慣性で所定方向へ変位する慣性質量体が設けられたセンサハウジングに、前記所定方向へ変位した前記慣性質量体からの押圧力で移動する移動部が設けられた加速度センサと、前記移動部の前記移動により作動して前記ウエビングベルトを引き出す方向への前記巻取軸の回転を制限するロック手段と、前記フレームに形成され若しくは前記フレームに直接或いは間接的に取り付けられた支持体及び前記センサハウジングの何れか一方に形成された軸部と、前記支持体及び前記センサハウジングの何れか他方に形成されて、前記軸部をその軸芯周りに回転自在に軸支する軸受部と、前記軸受部又は前記軸部の軸心から半径方向に離間した位置で前記支持体若しくは前記センサハウジングに形成された係合凹部と、前記支持体及び前記センサハウジングのうち前記係合凹部が形成されていない側に前記係合凹部へ係合可能に形成され、前記係合凹部への係合状態で前記軸部の軸芯周りの回転が前記係合凹部によって制限される係合凸部と、を備えている。
【0012】
上記構成のウエビング巻取装置によれば、フレームへ直接或いは間接的に支持された巻取軸には、長尺帯状のウエビングベルトの基端部が係止されている。巻取軸に巻き取られたウエビングベルトを引き出して身体に装着することで、車両乗員の身体はウエビングベルトによる拘束状態となる。
【0013】
この状態で、車両が急減速状態になると、このときの慣性で加速度センサの慣性質量体が変位し、更に、変位した慣性質量体に押圧されて移動体が移動する。この移動体の移動によりロック手段が作動して、ロック手段によってウエビングベルトを引き出す方向への巻取軸の回転が制限される。
【0014】
これにより、乗員の身体が車両急減速時の慣性で移動しようとし、これに伴い乗員の身体がウエビングベルトを引き出そうとしてもウエビングベルトの引き出しが制限されるため、乗員の身体が確実に拘束される。
【0015】
ところで、本ウエビング巻取装置では、フレームに形成され若しくはフレームに直接或いは間接的に取付られた支持体及びセンサハウジングの何れか一方には軸部が形成されており、この軸部が支持体及びセンサハウジングの何れか他方に形成された軸受部に軸支される。したがって、基本的には、この軸部の軸心周りに支持体に対してセンサハウジングが回転可能である。
【0016】
但し、軸受部又は軸部の軸心から半径方向に離間した位置で支持体若しくはセンサハウジングに形成された係合凹部には、支持体及びセンサハウジングのうち、係合凹部が形成されていない側に形成された係合凸部が係合しており、軸部又は軸受部の軸心周りの係合凸部の回転が係合凹部により制限されている。したがって、係合凹部による係合凸部の回転制限により、支持体に対するセンサハウジングが回転は規制され、支持体にセンサハウジングが確実に取り付けられる。
【0017】
ここで、軸部又は軸受部周りの係合凹部の形成位置を変えれば、その分、センサハウジングが支持体に対して軸部周りに回転した状態で取り付けられる。このため、例えば、車種毎に支持体に対するセンサハウジングの姿勢が軸部の軸心周りに異なっていても、これに対応して係合凹部の形成位置を変えることにより、センサハウジングを流用でき、ひいては、加速度センサを流用できる。これにより、コストの削減を図ることができる。
【0018】
なお、本発明において、係合凸部並びに係合凹部は軸部若しくは軸受部の軸心から離間した位置に形成されていればよく、係合凸部又は係合凹部と軸部又は軸受部が連続(連通)していても構わないし、それぞれ独立していても構わない。
【0019】
請求項2記載のウエビング巻取装置は、請求項1記載の本発明において、前記軸受部又は前記軸部の軸心周りに所定角度毎に前記係合凹部を複数形成したことを特徴としている。
【0020】
上記構成のウエビング巻取装置によれば、軸受部又は軸部の軸心周りに所定角度毎に係合凹部を複数形成される。このため、支持体に対してセンサハウジングを軸部若しくは軸受部の軸心周りに所定角度回転させた状態でも、何れかの係合凹部に係合凸部が係合するため、支持体にセンサハウジングを取り付けることができる。
【0021】
なお、本発明において係合凸部は1つでもよいし、係合凹部の形成間隔と同じ所定角度若しくはこの所定角度の整数倍の角度毎に複数の係合凸部を形成してもよい。
【0022】
請求項3記載のウエビング巻取装置は、請求項1又は請求項2記載の本発明において、前記巻取軸の軸心周りに回転可能な回転体と、前記巻取軸に対する前記回転体の相対回転により前記巻取軸の回転を制限するロック部材と、を含めて前記ロック手段を構成すると共に、前記回転体側の面が前記軸部若しくは前記軸受部の略軸心周り方向へ湾曲し、前記回転体に対して接離移動可能で、前記慣性質量体の変位により前記回転体に接近して前記回転体に係合して前記回転体の回転を制限する係合部を前記移動部とした、ことを特徴としている。
【0023】
上記構成のウエビング巻取装置によれば、車両急減速状態で慣性質量体が変位し、これにより、移動部としての係合部がロック手段を構成する回転体に係合すると、回転体の回転が制限される。一方、上述したように、車両急減速状態では慣性で乗員の身体がウエビングベルトを引き出そうとして、これにより、巻取軸が回転しようとする。したがって、この状態では回転体と巻取軸との間に相対回転が生じる。
【0024】
このように、回転体と巻取軸との間に相対回転が生じるとロック部材が巻取軸の回転を制限するため、ウエビングベルトの引き出しが制限される。これによって、乗員の身体がウエビングベルトにより確実に拘束される。
【0025】
ここで、係合部の回転体側の面は軸部若しくは前記軸受部の軸心と同方向の軸周りに張り出すように湾曲している。このため、センサハウジングと共に係合部の位置が軸部周りに回転が変化しても、回転体への係合タイミングが変わらない。
【0026】
これにより、センサハウジングと共に係合部の位置を軸部周りに変化させても、変化前と変わらぬ安定したタイミングでロック手段を作動させることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
図4には、本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置10の全体構成を示す縦断面図が示されている。この図に示されるように、ウエビング巻取装置10は平面視で略コ字形に形成されたフレーム14を備えており、当該フレーム14が車体側に固定されている。フレーム14は互いに平行に延出された第1脚板16と第2脚板18とを備えており、これらの第1脚板16、第2脚板18間にダイカストによって製作された巻取軸としてのスプール12が回転可能に軸支されている。
【0028】
スプール12は、軸芯部を構成する円筒形状のスプール軸12Aと、このスプール軸12Aの両端部に略円板形状にそれぞれ形成された一対のフランジ部(以下、第1脚板16側に配置されるフランジ部を「第1フランジ部12B」と称し、第2脚板18側に配置されるフランジ部を「第2フランジ部12C」と称す)とによって構成されており、全体としては鼓形状をなしている。
【0029】
スプール軸12Aの軸芯部には、シャフト挿通孔20が形成されている。シャフト挿通孔20における第1フランジ部12B側には、シャフト挿通孔20よりも大径とされた凹部状のベースロック受入れ部22が同軸上に形成されている。ベースロック受入れ部22は、その大半を占める凹部本体22Aと、当該凹部本体22Aよりも大径とされた凹部端末部22Bとからなる。
【0030】
このベースロック受入れ部22には、ダイカストによって製作されたベースロック24が抜け止めされた状態で装着されている。なお、ベースロック24の装着の仕方は、ベースロック受入れ部22内へベースロック24を挿入した後に、正面視でコ字形に形成された図示しないストッパ(抜止め部材)を軸直角方向から圧入するという手法が採られている。また、本実施の形態では、ベースロック24をダイカストによって製作しているが、必ずしもダイカストによる必要はなく、後述する作用並びに効果から明らかなように、車両急減速時にラチェット歯38Aに圧接された際に塑性変形により当該ラチェット歯38Aに係合可能な材質で構成されていればよい。
【0031】
ベースロック24は鍔付き円筒形状に形成されており、ベースロック受入れ部22の凹部本体22Aに嵌合される基部24Aと、基部24Aよりも大径とされかつベースロック受入れ部22の凹部端末部22Bに嵌合される中間部24Bと、中間部24Bよりも大径とされかつ第1フランジ部12Bの外側面に当接状態で配置される保持部24Cとによって構成されている。また、ベースロック24における軸芯部外端を除いた部分には六角穴形状の嵌合孔26が形成されており、更に当該軸芯部外端には嵌合孔26の軸芯部と相互に連通されかつこれよりも小径とされた小孔28が形成されている。
【0032】
一方、スプール軸12Aのシャフト挿通孔20における第2フランジ部12C側には、シャフト挿通孔20よりも大径とされた凹部状のスリーブ受入れ部30が形成されている。このスリーブ受入れ部30の内周部には雌スプラインが形成されており、当該スリーブ受入れ部30には外周部に雄スプラインが形成されかつ軸芯部には六角穴形状の嵌合孔32が形成されたスリーブ34が嵌合されている。なお、スリーブ34の先端部には、スプール12をウエビング巻取回転方向へ回転付勢する付勢手段(ぜんまいばね)の内端が図示しないアダプタを介して係止されている。また、上記構成のスリーブ34は、車両急減速時にスプール12を瞬時にウエビング巻取方向回転させるプリテンショナーの構成部品の一つである。
【0033】
上述したベースロック24とスリーブ34とは、トーションシャフト36によって相互に連結されている。図7にも示されるように、トーションシャフト36は、その主部を構成する軸部36Aと、軸部36Aの一端部に形成された六角形状の頭部36Bと、軸部36Aの他端部に形成された六角形状の嵌合部36Cと、嵌合部36Cの軸芯部から軸部36Aと同軸上に延出された小径部36Dと、小径部36Dからテーパ面を経て縮径された後に環状に拡径されたギヤ保持部36Eと、このギヤ保持部36Eから更に同軸上に延出されてキーが形成された先端部36Fとによって構成されている。図4に示されるように、トーションシャフト36の頭部36Bはスリーブ34に形成された六角穴形状の嵌合孔32へ嵌合されており、又トーションシャフト36の嵌合部36Cはベースロック24に形成された六角穴形状の嵌合孔26へ嵌合されている。これにより、トーションシャフト36は、ベースロック24及びスリーブ34を介してスプール軸12Aと一体化されている。なお、上記構成のトーションシャフト36は、車両急減速時に所定値以上のウエビング張力がスプール12に作用することにより、捩じれ変形してエネルギー吸収を行うフォースリミッタの主要構成部品である。
【0034】
図5及び図6に示されるように、上述したフレーム14の第1脚板16の上部側には内歯ラチェット38が打ち抜きにより形成されている。内歯ラチェット38のラチェット歯38Aは高強度に設定されている。
【0035】
この内歯ラチェット38の内側には、ベースロック24の保持部24Cが配置されている。なお、保持部24Cの軸芯部に形成された前述した小孔28内へは、トーションシャフト36の小径部36Dが挿入されている。この保持部24Cの正面側には、小孔28周りに周方向に形成された凹状の収容部40(図2、図3、図5参照)が形成されている。収容部40の一端部は閉止されているが、収容部40の他端部は開放されている。なお、ベースロック24における保持部24Cの収容部40の他端部側は、次述するロックプレート42の内歯ラチェット38への係合動作を阻害しないように面取りされている。この収容部40には、全体的に略円弧板形状とされ、ロック機構の構成部品としてロック手段を構成する単一のロックプレート42(図5、図6、図9参照)が収容されている。さらに、ベースロック24の保持部24Cにおける外側面には、ロックプレート42の脱落防止用に薄肉円板形状のロックカバー44が回り止めされた状態で取り付けられている。
【0036】
図9等に示されるように、ロックプレート42は、略円弧板形状をなす金属製のプレート本体42Aと、このプレート本体42Aの一端部から張り出された矩形状の突起部42Bと、プレート本体42Aの他端部の外周部に形成されかつ第1脚板16の内歯ラチェット38のラチェット歯38Aと噛み合う高強度のロック歯42Cと、同じくプレート本体42Aの他端部から立設されたガイドピン42Dとによって構成されている。なお、プレート本体42Aの幅と突起部42Bの突出長さとを足した長さは、ベースロック24の収容部40の幅広部40A(図5、図6参照)の幅と概略一致している。
【0037】
上述したベースロック24に隣接する位置には、これよりも大径に形成された略円板形状で回転体としてロック手段を構成するVギヤ46が配置されている。図2に示されるように、Vギヤ46の軸芯部には円筒状のボス48が形成されており、トーションシャフト36のギヤ保持部36Eに追従回転可能に軸支されている。また、Vギヤ46には「へ」の字形状のガイド孔50が形成されており、当該ガイド孔50へはロックプレート42から立設されたガイドピン42Dが挿入されている。さらに、Vギヤ46の外周部には、ロック歯46Aが一体に形成されている。
【0038】
また、図1乃至図3に示されるように、Vギヤ46の中心と外周部との間にはVギヤ46の厚さ方向に沿って貫通した矩形の挿入孔102が形成されている。挿入孔102は、Vギヤ46の外周部のうち挿入孔102の形成部分を介してVギヤ46の中心とは反対側の部分で形成される仮想の弧の両端を結ぶ仮想直線に沿って長手とされた長方形状で、その長手方向全長は、図1乃至図3に示される圧縮コイルスプリング104の自然長よりも短く、圧縮コイルスプリング104を圧縮して全密着させた際の全長よりも長いか、或いは、全密着状態での圧縮コイルスプリング104の全長と同等の長さとされている。また、挿入孔102の幅方向長さは圧縮コイルスプリング104の外径寸法よりも長い。
【0039】
さらに、Vギヤ46の組付状態でベースロック24と対向する側の端面には回転体側の壁部(一方の壁部)としての壁部106が形成されている。壁部106は上述した挿入孔102の長手方向両端部のうち、相対的にスプール12が図示しないウエビングベルトを巻き取る際のスプール12の回転方向である巻取方向(図2の矢印C方向)側の端部102Aを介して他方の端部102Bとは反対側で、挿入孔102の長手方向に沿って端部102Aから所定距離離間した位置に形成されている。
【0040】
挿入孔102の端部102Aから壁部106までの距離は、挿入孔102の長手方向寸法との和(すなわち、壁部106から挿入孔102の長手方向他方の端部102Bまでの距離)が圧縮コイルスプリング104の自然長よりも十分に短くなる程度とされている。
【0041】
この壁部106の幅方向両端部には挿入孔102の端部102Bへ向けて制限部としての一対の制限壁108、110が形成されている。また、壁部106のVギヤ46との連結部分とは反対側の端部からは制限壁108、110を繋ぐように制限部としての制限壁112が形成されており、制限壁108、110と共にスプリングボックス114を構成している。制限壁108と制限壁110との間の距離及び制限壁112とVギヤ46との間の距離はともに圧縮コイルスプリング104の外径寸法よりも僅かに大きい。このスプリングボックス114の内側には、圧縮コイルスプリング104の軸方向(より詳細に言えば、圧縮コイルスプリング104をその外形から円筒と見なした場合の円筒の軸方向)一端側が収容されると共に、収容状態では圧縮コイルスプリング104の軸方向一端部が当接する。
【0042】
一方、上述したロックカバー44にはVギヤ46の組付状態では、スプリングボックス114が貫通する略扇形状の透孔118が形成されている。この透孔118は、単にスプリングボックス114の貫通が可能であるのみならず、この貫通状態でVギヤ46の中心周りにスプリングボックス114の所定角度の回転が可能とされており、このため、Vギヤ46はロックカバー44に対して同軸的に所定角度相対回転可能とされている。
【0043】
さらに、上述したベースロック24の保持部24Cには、Vギヤ46の組付状態で透孔118を貫通したスプリングボックス114及び圧縮コイルスプリング104を収容するスプリング収容部120が形成されている。
【0044】
スプリング収容部120はベースロック24及びVギヤ46の組付状態でVギヤ46と対向する側の端部で開口した凹部で、その一部は上述した透孔118と略同形状である。このスプリング収容部120の内周壁のうち、相対的に引出方向側に位置する部分は押圧部としての押圧壁122とされており、引出方向とは反対の巻取方向にベースロック24が回転した際には、押圧壁122がスプリングボックス114を押圧する。一方、引出方向(巻取方向)に沿った方向のスプリング収容部120の中間部よりも巻取方向側でのスプリング収容部120の内周壁は、壁部124と、互いに対向した制限部としての制限壁126、128とにより構成される制限凹部130とされている。
【0045】
制限凹部130の制限壁126と制限壁128との間の寸法は、圧縮コイルスプリング104の外径寸法よりも僅かに大きく、制限壁126と制限壁128との間に圧縮コイルスプリング104を軸方向他端側の一部を収容できる。また、制限凹部130の壁部106は、概ね上述した挿入孔102の長手方向に沿って壁部106と対向しており、Vギヤ46、ベースロック24、及び圧縮コイルスプリング104の組付状態では圧縮コイルスプリング104の軸方向他端部が当接する。
【0046】
一方、Vギヤ46の下方側には加速度センサ52(図10参照)が配設されている。
【0047】
図10及び図11に示されるように、加速度センサ52は、ポリアセタール(POM)等の合成樹脂材によって形成されたセンサハウジング56を備えている。センサハウジング56には略平板状の底壁部56Aが設けられている。底壁部56Aの上面には、所定の曲率で上方へ向けて開口するように湾曲した載置部56Bが形成されており、慣性質量体としてのボール54が載置されている。
【0048】
また、底壁部56Aの一端からは上方へ向けて縦壁部56Cが略直角に立設されている。一方、底壁部56Aの上方にはセンサレバー58が設けられている。このセンサレバー58はセンサハウジング56と同一の合成樹脂材により形成されており、縦壁部56Cの上端部に形成されたインテグラルヒンジ56Dによって上述したVギヤ46の回転軸方向と同方向の軸周りに所定角度回動(揺動)可能に縦壁部56Cへ連結されている(すなわち、底壁部56A、縦壁部56C、及びセンサレバー58は一体形成されている)。
【0049】
センサレバー58の縦壁部56Cとは反対側には移動部(係合部)としての係合爪58Aが形成されている。係合爪58Aは、基本的にVギヤ46の半径方向側方に位置するように形成されており、センサレバー58の回動によってVギヤ46の外周部に対して接離移動する。
【0050】
また、係合爪58Aの上面(Vギヤ46側の面は)は、係合爪58Aの長手方向(係合爪58AがVギヤ46のロック歯46Aへ係合した部分でのVギヤ46の接線方向)を軸方向としてこの軸周りに上方へ張り出すように所定の曲率で湾曲した湾曲面とされている。
【0051】
一方、縦壁56Cからは軸部としての支持軸56Eが延出されている。支持軸56Eは係合爪58AがVギヤ46のロック歯46Aへ係合した部分でのVギヤ46の接線方向と略同方向に沿って長手(軸方向)の棒形状とされている。
【0052】
また、支持軸56Eの外周部には、係合凸部としての複数の突状部56Fが支持軸56E周りに一定角度毎に突出形成されている
一方、センサハウジング56の支持軸56Eが形成された側には、フレーム14の脚板16から支持体16Aが屈曲形成されている。この支持体16Aには上述した支持軸56Eを嵌入可能な軸受部16Bが形成されており、軸受部16Bに支持軸56Eを嵌入させることで、センサハウジング56がフレーム14に支持されるようになっている。
【0053】
また、軸受部16Bの内周部には複数の係合凹部16Cが形成されている。これらの係合凹部16Cは軸受部16Bの中心周りに上述した支持軸56E周りの突状部56Fの形成間隔と同じ角度で形成されており、支持軸56Eが軸受部16Bに嵌入した状態では、これらの係合凹部16Cの各々に各突状部56Fが嵌入する。
【0054】
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0055】
乗員がウエビングに挿通された図示しないタングプレートを持ち、ぜんまいばねの付勢力に抗してウエビングベルトをスプール12から引き出し、当該タングプレートを図示しないバックル装置に係合させることにより、乗員は三点式シートベルト装置のウエビング装着状態となる。
【0056】
以上のような通常のウエビングベルトの引き出しの際には、乗員がウエビングベルトを引っ張ることでスプール12が引出方向へ回転させられると、スプール12に一体的に設けられたベースロック24のスプリング収容部120の内周壁の一部である壁部124が、圧縮コイルスプリング104の軸方向他端部を押圧して圧縮しようとする。壁部124からの押圧力を受けた圧縮コイルスプリング104は、自らの弾性力で軸方向一端部が当接している壁部106を押圧し、Vギヤ46を引出方向に回転させる。このため、通常の引き出しにおいては、Vギヤ46がスプール12に対して追従回転する。
【0057】
この状態から車両走行状態となった場合において車両急減速時になると、図示しないプリテンショナーが作動し、スリーブ34を介してスプール12を瞬時にウエビング巻取方向回転させる。またこれと同時に、車両急減速状態が加速度センサ52によって検出される。すなわち、加速度センサ52のボール54がセンサハウジング56上を転動してセンサレバー58を揺動させる。これにより、センサレバー58の係合爪58AがVギヤ46のロック歯46Aに係合され、Vギヤ46のウエビング引出方向回転が阻止される。
【0058】
一方、急減速時の慣性で車両前方側へ移動しようとする乗員の身体は、装着しているウエビングベルトを引っ張るため、スプール12は乗員から受けるウエビング張力によって引出方向回転しようとする。このため、ウエビング引出方向回転しようとするスプール12と引出方向の回転が阻止されたVギヤ46との間で圧縮コイルスプリング104の付勢力に抗して相対回転が生じる。両者の間に相対回転が生じると、図5と図6の対比から判るように、ベースロック24の保持部24Cに形成された収容部40に保持されたロックプレート42のガイドピン42DがVギヤ46のガイド孔50にガイドされて、ベースロック24の略半径方向外側へ移動される。これにより、ロックプレート42のロック歯42Cがフレーム14の第1脚板16に設けられた内歯ラチェット38のラチェット歯38Aと噛み合う。
【0059】
さらに、ロックプレート42のロック歯42Cが内歯ラチェット38のラチェット歯38Aと噛み合うと、その際の反力がベースロック24の保持部24Cに作用する。この反力は車両急減速時に高強度のロック歯42Cとラチェット歯38Aとが噛み合ったことによって生じるものなのでかなり大きく、そのためベースロック24の軸芯部を貫通するトーションシャフト36にも当然に作用する。さらに、トーションシャフト36の先端部36Fは樹脂製のセンサホルダ60のボス60Aに軸支されているため、当該反力はトーションシャフト36の先端部36Fからセンサホルダ60のボス60Aに作用し、センサホルダ60のボス60Aを反力の作用方向側、つまりロックプレート42の係合位置と反対方向側へ弾性変形させる。
【0060】
このため、ベースロック24の保持部24Cの外周一部がフレーム14の内歯ラチェット38のラチェット歯38Aに強く押し付けられる。ベースロック24はダイカストによって製作されており、比較的軟質であるため、ラチェット歯38Aに圧接されると、塑性変形して当該ラチェット歯38Aに食い込み、直接的に係合される。その結果、本実施の形態によれば、半径方向に対向する二箇所でのロック状態が得られるため、十分なロック強度を確保することができる。
【0061】
ところで、上述したように本ウエビング巻取装置10では、センサハウジング56の底壁部56Aに形成された支持軸56Eが支持体16Aに形成された軸受部16Bに軸支されることで加速度センサ52がフレーム14に取り付けられる。したがって、本来は支持軸56Eの軸心周りに支持体16Aに対してセンサハウジング56が回転可能である。
【0062】
しかしながら、この支持軸56Eを軸受部16Bに嵌入した状態では、支持軸56Eの外周部に形成された突状部56Fが軸受部16Bの内周部に形成された係合凹部16Cに入り込むため、軸受部16B内で支持軸56Eを回転させようとすると、係合凹部16Cの内壁が突状部56Fに干渉する。これにより、軸受部16Bに支持軸を嵌入した状態では、支持軸56Eをその軸心周りに回転させることはできず、支持体16Aにセンサハウジング56を確実に取り付けることができる。
【0063】
ここで、支持軸56E周りの突状部56Fと軸受部16Bの軸心周りの係合凹部16Cの間隔は同じであるため、支持軸56Eをその軸心周りに一定角度回転させた状態であっても、支持軸56Eを軸受部16Bに嵌入させることができる。これにより、センサハウジング56を支持体16Aに対して支持軸56E周りに回転した状態で取り付けることができ、例えば、車種毎に支持体16Aに対するセンサハウジング56の姿勢が支持軸56Eの軸心周りに異なっていても、これに対応して支持軸56Eを回転させて軸受部16Bに嵌入させることで、センサハウジング56の姿勢を正すことができる。このため、支持体16Aに対するセンサハウジング56の姿勢が異なる車種であっても、センサハウジング56を流用でき、ひいては、加速度センサ52を流用できる。これにより、コストの削減を図ることができる。
【0064】
さらに、上記のように、係合爪58Aの上面の形状は支持軸56Eと同方向で、また、係合爪58AがVギヤ46へ係合した位置でのVギヤ46のロック歯46A側へ張り出すように湾曲している。このため、センサハウジング56と共に係合爪58Aの位置が支持軸56E周りに変化しても、ロック歯46Aへの係合タイミングや係合角度等の諸条件を変えることなく維持できる。
【0065】
なお、本実施の形態では、支持軸56Eを縦壁56C(すなわち、センサハウジング56)に形成し、軸受部16Bを脚板16の支持体16B(すなわち、フレーム14)に形成したが、支持軸56Eを脚板16の支持体16B(すなわち、フレーム14)に形成して軸受部16Bを縦壁56C(すなわち、センサハウジング56)に形成してもよい。
【0066】
また、本実施の形態では、支持軸56Eに係合凸部としての突状部56Fを形成し、軸受部16Bの内周部に係合凹部16Cを形成したが、係合凸部や係合凹部16Cを支持軸56Eや軸受部16Bとは別の位置で独立して形成してもよい。
【0067】
さらに、本実施の形態では係合凸部としての突状部56Fの数と係合凹部16Cの数が同じであったが、支持軸56がその軸心周りに所定角度回転した状態で係合凹部へ係合可能でありさえすれば係合凸部は係合凹部より少なくても構わない。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、軸部を軸受部に対して一定角度回転させた状態でセンサハウジングを支持体へ取り付けることができ、これにより、フレームの取付姿勢が異なる車体に対しても加速度センサを容易に流用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るウエビング巻取装置の要部の構成を拡大した分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るウエビング巻取装置のVギヤの平面図である。
【図3】圧縮コイルスプリングを組み付ける際の様子を示す図2の3−3線に沿った断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るウエビング巻取装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るウエビング巻取装置の非ロック状態を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る本ウエビング巻取装置のロック状態を示す側面図である。
【図7】図4に示されるトーションシャフトの正面図である。
【図8】図4に示されるベースロックの側面図である。
【図9】図4に示されるロックプレートの正面図である。
【図10】加速度センサの側面図である。
【図11】加速度センサの斜視図である。
【符号の説明】
10 ウエビング巻取装置
12 スプール(巻取軸)
14 フレーム
16A 支持体
16B 軸受部
16C 係合凹部
42 ロックプレート(ロック部材、ロック手段)
46 Vギヤ(回転体、ロック手段)
52 加速度センサ
54 ボール(慣性質量体)
56 センサハウジング
56E 支持軸(軸部)
56F 突状部(係合凸部)
58A 係合爪(係合部)
Claims (3)
- 装着状態で車両乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトの長手方向基端部が係止され、自らの軸芯周りの一方の回転により前記ウエビングベルトをその基端側から巻き取る巻取軸と、
直接或いは間接的に前記巻取軸を支持するフレームと、
直接或いは間接的に前記フレームに支持されると共に車両急減速時の慣性で所定方向へ変位する慣性質量体が設けられたセンサハウジングに、前記所定方向へ変位した前記慣性質量体からの押圧力で移動する移動部が設けられた加速度センサと、
前記移動部の前記移動により作動して前記ウエビングベルトを引き出す方向への前記巻取軸の回転を制限するロック手段と、
前記フレームに形成され若しくは前記フレームに直接或いは間接的に取り付けられた支持体及び前記センサハウジングの何れか一方に形成された軸部と、
前記支持体及び前記センサハウジングの何れか他方に形成されて、前記軸部をその軸芯周りに回転自在に軸支する軸受部と、
前記軸受部又は前記軸部の軸心から半径方向に離間した位置で前記支持体若しくは前記センサハウジングに形成された係合凹部と、
前記支持体及び前記センサハウジングのうち前記係合凹部が形成されていない側に前記係合凹部へ係合可能に形成され、前記係合凹部への係合状態で前記軸部の軸芯周りの回転が前記係合凹部によって制限される係合凸部と、
を備えるウエビング巻取装置。 - 前記軸受部又は前記軸部の軸心周りに所定角度毎に前記係合凹部を複数形成したことを特徴とする請求項1記載のウエビング巻取装置。
- 前記巻取軸の軸心周りに回転可能な回転体と、
前記巻取軸に対する前記回転体の相対回転により前記巻取軸の回転を制限するロック部材と、
を含めて前記ロック手段を構成すると共に、
前記回転体側の面が前記軸部若しくは前記軸受部の略軸心周り方向へ湾曲し、前記回転体に対して接離移動可能で、前記慣性質量体の変位により前記回転体に接近して前記回転体に係合して前記回転体の回転を制限する係合部を前記移動部とした、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のウエビング巻取装置。
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