JP4655634B2 - マイクロ波加熱装置 - Google Patents

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Description

本発明は、被加熱物を誘電加熱するマイクロ波加熱装置に関するものである。
従来、マイクロ波加熱装置の代表例である電子レンジでは、マグネトロンから放射されるマイクロ波を加熱室に導波管を通じて伝送して、加熱室内で定在波を形成させ、この定在波の電界成分と被加熱物の誘電損失に応じて被加熱物を発熱させている。被加熱物の単位体積当たりの吸収される電力P[W/m3]は、加えられる電界の強さE[V/m]、周波数f[Hz]、および被加熱物の比誘電率(誘電率の実数部分)εr、誘電正接tanδにより、下式により表わされる(ここで、εr・tanδが誘電損失に相当する)。
P=(5/9)εr・tanδ・f・E2×10−10 [W/m3]
また、電子レンジは、被加熱物を収納する加熱室の大きさが大概、幅寸法および奥行き寸法がそれぞれ30〜40cm、高さ寸法が20cm前後である。一方、使用しているマイクロ波の波長は約12cmであり、加熱室内で共振して定在波となるので強弱の電界分布が必ず生じ、さらには被加熱物の形状やその物理特性の影響が相乗的に作用して局所的な加熱が発生することがある。この局所的な加熱を抑制する方法として、被加熱物を回転させることにより電界分布に対する相対位置を変化させるいわゆるターンテーブルや、マイクロ波を攪拌することにより電界分布を変化させるいわゆるスタラー方式、回転アンテナ方式などを用いる方法がある。これらの場合、回転の中心から等距離にある部位の加熱を平均化するのにある程度の効果があるものの、それでも完全に均一にすることは難しい。
特に、冷凍食品の解凍においては、氷が溶けて水になった領域は誘電損失が急激に大きくなり、加熱エネルギーが集中するので、周囲と比較して温度上昇速度が速くなる。つまり、氷の部分の加熱が遅い反面、氷が溶けた部分の加熱が早まるといった状態で、ますます温度差が拡大する傾向がある。よって、局所的な加熱現象が顕著に現れ、ひどい場合は、煮えている部分と未解凍部分とが共存してしまうこともある。これを防ぐために現在の電子レンジの解凍では、あえてマイクロ波の出力を下げる(例えば、定格高周波出力1000Wの機種でも解凍時には300W以下)とか、マイクロ波を出さない時間を加熱途中に設ける(断続動作)などにより、食品内部の熱伝導による温度の平均化を待つことによって出来映えを向上させている。つまり、加熱時間をあえて延ばすことにより、局所的な加熱を回避しているのである。
一方、マイクロ波が伝送される空間に誘電体を供給することで、マイクロ波分布が変化するということに着目したものがある。その一つは、加熱室の上面に接続された導波管内に誘電体からなる一つの細い管を配置して管内に間欠的に冷媒(誘電体)を送るというマイクロ波加熱装置である(例えば、特許文献1参照)。また、他のものは、加熱室底面のほぼ全域を覆う一つの大きな容器に水(誘電体)と空気を循環させるというマイクロ波加熱装置である(例えば、特許文献2参照)。
特公昭40−17195号公報 特許第3317227号公報
しかしながら、従来のマイクロ波加熱装置は、ある一つの領域で誘電体の有無を制御するので、誘電体が無い時のマイクロ波分布と誘電体がある時のマイクロ波分布との高々二種類の分布を切り替えるものであり、分布の選択肢が少なく、被加熱物の種類や形状や置く位置などによっては、局所的な加熱を回避できない場合があった。
また、特許文献1のものでは、導波管内でのみ冷媒(誘電体)の有無を制御するので、特に導波管内のマイクロ波に作用し、その結果、導波管から加熱室に伝送されるマイクロ波の伝送効率を変えることができるが、これは、全体のマイクロ波の強度を変えているだけに過ぎず、加熱室内のマイクロ波の強いところと弱いところの位置関係を変えるような効果は少ないと考えられる。なぜならば、加熱室内のマイクロ波の分布は、加熱室内部の状態が変わるか、加熱室へのマイクロ波の入射位置が変わるかしないと、変化しないからである。すなわち、特許文献1のものでは、導波管内で冷媒(誘電体)の有無の変化があるものの、加熱室内部では誘電体は常に無いままであり、マイクロ波の入射位置(導波管と加熱室の結合部)も常に一定のままだからである。
また、特許文献2のものでは、加熱室内で水の有無を制御しており加熱室内のマイクロ波分布に十分作用すると考えられる。ただし、加熱室底面の全域を覆うような大量の水を前提としており、マイクロ波は水を通過しない限り被加熱物に到達しない構成となっている。よって、水有りの場合には水自身がマイクロ波を吸収してしまい、被加熱物がマイクロ波を吸収する割合が減少することが懸念される。このことは、具体的に高周波出力の低下について記載されており、水無し時に650Wだったものが、水70g時に512W、水100g時に446Wとなる。つまり、水の量を増やすことで、被加熱物の加熱効率が低下しているのである。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、被加熱物の加熱効率を低下させることなく、マイクロ波加熱特有の局所加熱を抑制して、被加熱物の加熱均一化を図り、加熱後の出来映えを向上させることのできるマイクロ波加熱装置を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波を放射するマイクロ波放射手段と、前記マイクロ波放射手段から放射された前記マイクロ波が伝播可能なマイクロ波空間と、前記マイクロ波空間の少なくとも一部に設けられて被加熱物を収納できる加熱室と、前記マイクロ波空間内に配され内部を誘電体が出入りする複数の通路と、前記複数の通路内への誘電体の出入りを制御して前記複数の通路内における前記誘電体の有無の組み合わせを変えることにより、前記マイクロ波空間内の誘電率分布状態を変化させる制御手段とを備えたものである。
これによって、マイクロ波空間に含まれる加熱室内のマイクロ波分布を変化させることができ、加熱室に収納された被加熱物周辺のマイクロ波の電界分布が変化することになり、単一の分布で加熱するときのような局所加熱を抑制して、被加熱物の加熱均一化を図り、加熱後の出来映えを向上させることができる。
本発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物の加熱均一化を図り、加熱後の出来映えを向上させることができる。
第1の発明は、マイクロ波を放射するマイクロ波放射手段と、前記マイクロ波放射手段から放射されたマイクロ波が伝播可能なマイクロ波空間と、前記マイクロ波空間の少なくとも一部に設けられて被加熱物を収納できる加熱室と、前記マイクロ波空間に配され内部を誘電体が出入りする複数の通路と、前記複数の通路への誘電体の出入りを制御して前記複数の通路内における前記誘電体の有無の組み合わせを変えることにより、前記マイクロ波空間内の誘電率分布状態を変化させる制御手段とを備えたものである。これにより、マイクロ波空間に含まれる加熱室内のマイクロ波分布を変化させることができ、加熱室に収納された被加熱物周辺のマイクロ波の電界分布が変化することになり、単一の分布で加
熱するときのような局所加熱を抑制して、被加熱物の加熱均一化を図り、加熱後の出来映えを向上させることができる。つまり、通路の数が一つしかないと誘電体があるか無いかの2通りのマイクロ波分布しか起こらないが、通路の数を2つとすると4通り(いずれの通路にも誘電体が無い場合、いずれか一方の通路のみに誘電体がある場合、いずれの通路にも誘電体がある場合)のマイクロ波分布、同様に通路の数を3つとすると8通りのマイクロ波分布、通路の数を4つとすると16通りのマイクロ波分布というように、通路の数を増やすごとに選択できるマイクロ波分布の数を飛躍的に増やすことができる。したがって、誘電体の有無の制御によって任意のマイクロ波分布に切り替えることが可能となる。その結果、被加熱物をより一層均一に加熱することができ、特に冷凍品を解凍する場合や、一般的なあたため(再加熱)の出来映えを向上させることが可能となる。
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記マイクロ波放射手段は、軸を中心に回転する放射アンテナからマイクロ波を放射する構成とし、放射アンテナのについて対称な少なくとも二箇所に通路を配することにより、第一の通路にのみ誘電体がある場合のマイクロ波分布と、第一の通路に対称な他の通路にのみ誘電体がある場合のマイクロ波分布とを、対称的なマイクロ波分布とすることができる。例えば、通路が二つの場合、第一の通路にのみ誘電体がある場合のマイクロ波分布が軸に対していずれかの方向に変異した部位(第一の部位)に局所的な集中を引き起こすような分布であったとすれば、第二の通路にのみ誘電体がある場合のマイクロ波分布は軸に対して反対の方向に変異した部位(第二の部位)に局所的な集中を引き起こすような分布を生じさせることができる。
特に、第2の発明において、加熱室の正面にはドアを有し、軸は加熱室の下部略中央に位置し、正面から見て少なくとも軸の左に第一の通路と、軸の右に第二の通路を配することにより、第一の通路にのみ誘電体がある場合と第二の通路にのみ誘電体がある場合とで、軸を中心として対称的なマイクロ波分布とすることができる。例えば、左右対称などの分布を起こすことが可能である。マイクロ波加熱装置として一般的な電子レンジの場合は、代表的な被加熱物である食品の形状に平らなものが多いとか、複数個同時に加熱するというようなことも多く行われ、上下方向よりも左右に均一であることが望まれる場合が多い。このような場合に特に加熱分布を均一にすることが期待できる。
特に、第2の発明において、加熱室の正面にはドアを有し、軸は加熱室の下部略中央に位置し、正面から見て少なくとも軸の前に第一の通路と、軸の後ろに第二の通路を配することにより、第一の通路にのみ誘電体がある場合と第二の通路にのみ誘電体がある場合とで、軸を中心として対称的なマイクロ波分布とすることができる。例えば、前後対称などの分布を起こすことが可能である。マイクロ波加熱装置として一般的な電子レンジの場合は、代表的な被加熱物である食品の形状に平らなものが多いとか、複数個同時に加熱するというようなことも多く行われ、上下方向よりも前後に均一であることが望まれる場合が多い。このような場合に特に加熱分布を均一にすることが期待できる。
第3の発明は、特に、第1の発明において、前記マイクロ波放射手段は、軸を中心に回転する放射アンテナからマイクロ波を放射する構成とし、放射アンテナの回転中心からの距離が異なる少なくとも二箇所に通路を配することにより、第一の通路にのみ誘電体がある場合のマイクロ波分布と、第一の通路とは軸からの距離が異なる他の通路にのみ誘電体がある場合のマイクロ波分布とを、軸に対して非対称的なマイクロ波分布とすることができる。例えば、通路が二つの場合、第一の通路にのみ誘電体がある場合のマイクロ波分布が軸上の特定の部位に局所的な集中を引き起こすような分布であったとすると、もし第二の通路が第一の通路と軸から等距離で対称な位置にあった場合は、第二の通路にのみ誘電体がある場合も第一の通路にのみ誘電体がある場合と同様、軸上の部位に局所的な集中を引き起こすことが容易に考えられる。ところが第二の通路が第一の通路とは軸からの距離が異なるように配置することで、第二の通路にのみ誘電体がある場合のマイクロ波分布は
軸に対して非対称な分布、すなわち軸上の特定部位に集中しないような分布、あるいは軸上でも異なる部位に集中させる分布ができる可能性が高くなるのである。
特に、第3の発明において、加熱室の正面にはドアを有し、軸は加熱室の下部略中央に位置し、正面から見て少なくとも軸の上方に第一の通路と、第一の通路のさらに上方に第二の通路を配することにより、第一の通路は放射アンテナに近く、第二の通路は放射アンテナから遠く配されることになる。一般的に放射アンテナから距離が離れるにつれて電界が減衰することが知られており、放射アンテナに近い第一の通路の方がより強い電界にさらされるので、誘電体があるときのマイクロ波への影響、すなわちマイクロ波分布の変化がより大きくなることが想定される。よって誘電体の無い場合のマイクロ波の分布と比較して、第二の通路にのみ誘電体がある場合はマイクロ波の分布を少しだけ変化させて、第一の通路にのみ誘電体がある場合はマイクロ波の分布を大きく変化させるということが可能である。
特に、第3の発明において、加熱室の正面にはドアを有し、軸は加熱室の下部略中央に位置し、少なくとも軸の中心に近い第一の通路と、前記第一の通路の外側で軸の中心から遠い第二の通路を配することにより、第6の発明と同様な効果を得ることができる。
第4の発明は、特に、第1の発明において、被加熱物の温度を検出する温度検出手段をさらに有し、制御手段は、温度検出手段の検出信号に基づき、通路への誘電体の出入りを制御することにより、温度検出手段の検出信号から被加熱物の温度むらを見ながら、むらが大きくなってくれば通路への誘電体の出入りを制御して、分布むらを抑制するようなマイクロ波分布に変更することができる。また、各通路における誘電体の有無の組み合わせを順次切り替えながらそれぞれの温度むらを検出すれば、最も温度むらを小さくできる組み合わせがわかるので、以降はその組み合わせに固定して加熱を進めることで温度むらを小さくできる。また、あらかじめ各通路における誘電体の有無の組み合わせによってどのような加熱分布になるかを把握しておけば、温度むらを検出しながら、温度むらを打ち消す可能性の高い条件になるよう誘電体をこまめに制御することができ、最初から最後まで被加熱物の温度むらをあまり発生させない状態を維持したまま加熱することができる。
第5の発明は、特に、第1の発明において、使用者が設定できる設定手段をさらに有し、制御手段は、設定手段の設定内容に応じて、所定の通路への誘電体の出入りを制御することにより、設定内容に応じて、分布むらを抑制するようなマイクロ波分布に変更することができる。特に、設定手段が操作キーのメニュー設定の場合、キー自体が「牛乳」とか「解凍」とか「コンビニ弁当」などのようになっていれば、被加熱物の形状や材質をある程度特定できる場合が多い。例えば、「牛乳」ならマグカップやコップの形状で対流があるので下の方を加熱すれば良いとか、「解凍」なら平らな形状なので上下の分布よりも前後左右の分布を良くすべきとか、「コンビニ弁当」の場合は面積が広い形状でごはんとおかずの領域が分かれているのでバランスをとるべき、というようなことが予め推測できる。あるいは加熱時間を設定した場合はトータルの時間が決まるので、途中で二回分布を変えるなら何分ずつの配分にしようとか、このようなこともあらかじめ決定することができる。よって設定内容に応じて所定の通路への誘電体の出入りを制御することは、加熱の均一化のためにある程度の効果がある。
特に、第1の発明において、制御手段は、マイクロ波加熱中に通路への誘電体の出入りを制御することにより、途中までは一定のマイクロ波分布で被加熱物を加熱し、所定の通路への誘電体の出入りを制御した後は異なったマイクロ波分布で被加熱物を加熱することができる。特に、誘電体の出入りを制御する電力は、マイクロ波加熱に要する電力(例えば、1200W)と比較してはるかに低電力(10Wオーダー)で済むので、合算で一般の家庭の電力容量内に収めることが容易である。この場合は誘電体の出入りを制御する際
もマイクロ波加熱を中断する必要が無いので、効率的にマイクロ波加熱を継続することができる。
特に、第1の発明において、誘電体を水で構成したことにより、水は比誘電率が約80と高く、空気の1と比べて80倍もある。一般に誘電体の内部を伝播するマイクロ波の波長は比誘電率の平方根に反比例するので、水の内部では波長は約1/9(≒1/√80)に圧縮される。逆にマイクロ波の波長を一定と考えると、水の存在する領域のみ9倍に拡大したように見えるのである。よって水の有無や、水がある場合はその位置によって、マイクロ波空間の形状がいびつに変形されるのと同様の作用を有することになり、マイクロ波分布を大きく変化させることができる。また水は入手が容易であり、安全であり、扱いが簡単である。通路への水の出入りを制御することに関しても、ポンプやバルブなどの汎用部品を用いることが容易であるし、いろいろな分野で水を搬送するための管が実用化されており、これらを通路として採用することが可能である。
特に、第1の発明において、通路を樹脂製のチューブで構成したことにより、通路を容易に低損失の誘電体材料とすることができる。また形状に自由度があるので、最適設計することで、内部に配される誘電体の形状や位置を任意に決定することができる。
特に、第1の発明において、通路をガラスで構成したことにより、第12の発明と同様な効果を得ることができる。
特に、第1の発明において、通路から排出された誘電体を、循環手段を介して循環させる構成としたことにより、誘電体を再利用できて無駄がないとともに、使用者に誘電体のセッティングや後処理の手間をかけないようにすることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1〜図13は、本発明の実施の形態1におけるマイクロ波加熱装置を示すものである。
図1、図2に示すように、本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置1は、マイクロ波放射手段11と、マイクロ波放射手段11から放射されたマイクロ波が伝播可能なマイクロ波空間9と、マイクロ波空間9の少なくとも一部に設けられて被加熱物2を収納できる正面開放の箱形形状の加熱室3と、マイクロ波空間9に配された複数の通路13〜16と、複数の通路13〜16への誘電体(本実施の形態では水)17の出入りを制御する制御手段33とを有している。そして、複数の通路13〜16内における誘電体17の有無によりマイクロ波空間9の誘電率分布状態を変更し、マイクロ波分布を変化させるようにしている。
また、マイクロ波加熱装置1は、マイクロ波空間9を仕切るとともに被加熱物2を載置する載置台10、使用者が操作できる設定手段32、および加熱室3の正面に開閉自在に装備し使用者が被加熱物2を加熱室3へ出し入れするドア34を有している。なお、載置台10はセラミックやガラスなどの低損失誘電材料からなるので、マイクロ波が容易に透過し、その上部に形成される加熱室3へマイクロ波を送ることができるものである。
前記マイクロ波放射手段11は、マグネトロン4と、放射されたマイクロ波を導く導波管5と、導波管5の開口6に同軸結合した軸7を有する放射アンテナ8と、軸7と接続し放射アンテナ8を回転させてマイクロ波空間9の分布をある程度変化させるモータ12と
を有している。
また、通路13〜16は、誘電体17が移動できる通路であり、ガラス製であり、加熱室3の内外にわたるものである。タンク18内には誘電体17が貯えられ、循環手段を構成するポンプ19〜22によってそれぞれが移動させられる。この通路については、本実施の形態では図3に具体構成を示しているように、ポンプ19〜22と接続されたゴム製の給水ホース23と、低損失誘電材料のガラスからなる分布可変容器24と、ゴム製の排水ホース25とを有している。分布可変容器24の給水口26、排水口27は、それぞれ加熱室3を形成する壁面28に設けられた開口29、30から加熱室3外部へと突出させ、加熱室3外部で給水ホース23、排水ホース25と接続している。この構成により、加熱室3内でマイクロ波にさらされるのは、分布可変容器24の本体31であり、本体31内の誘電体17の有無によってマイクロ波分布が変化することになる。本体31内の誘電体17は、重力に従って排水口27、排水ホース25を介して自然にタンクへ18と排出されるが、ポンプ19〜22により給水ホース23、給水口26を介して排水量と同等以上の誘電体17を供給し続ければ本体31内に誘電体17を満たすことができる。本体31の容積は任意に設計可能であるが、あまり大きくなると誘電体17がマイクロ波を吸収してしまって被加熱物2が加熱されるスピードが遅くなる(効率低下の)危険性があるので、50cc以下で良く、できれば10cc程度が望ましい。
設定手段32は、加熱の開始/終了や、加熱時間の設定、加熱終了温度の設定、メニューの選択などの設定を行なうために使用者が操作するものである。制御手段33は、設定手段32の設定内容に従って所定の制御を行なうもので、マグネトロン4からのマイクロ波の放射や、モータ12の駆動や、ポンプ19〜22の動作などを制御する。
図4には、制御系のブロック図を示しているが、この制御系は、例えば、マイクロプロセッサを備えてなる制御手段33を中心に構成されている。
上記した構成のマイクロ波加熱装置は、被加熱物2を収容する加熱室3にマイクロ波を供給することにより、被加熱物2を加熱処理するものである。マグネトロン4から放射されたマイクロ波は、導波管5内を伝搬して放射アンテナ8からマイクロ波空間9へと放射される。マイクロ波空間9は、載置台10により上下に二分されているが、載置台10はセラミックやガラスなどの低損失誘電材料からなるのでマイクロ波が容易に透過し、載置台10上部に形成される加熱室3へマイクロ波を送ることができる。ここで、放射アンテナ8は指向性を有しており、向きによってマイクロ波の放射の方向が変化することによりマイクロ波空間9の分布をある程度変化させることができる。このため、軸7と接続したモータ12により、放射アンテナ8を回転させる構成となっている。
次に、図5により通路13〜16内、特に、分布可変容器24内の水量の時間変化について説明する。時間t_onでポンプ動作を開始(on)すると、図3に示す給水ホース23から給水口26を介して分布可変容器24内に給水を始めるが、分布可変容器24の下部に排水口27があるので排水口27、排水ホース25を介して誘電体17の一部が排水される。ここで、分布可変容器24内の水量は、ポンプの能力により、給水量が排水量よりも多い間は水量が増加し、給水量と排水量が等しくなると一定とすることができる。そして、t_offでポンプ動作を停止(off)すると、給水が無くなって排水のみが続くので、分布可変容器24内の水量は減少し、いずれ0となる。分布可変容器24内の水量が多いほど水圧が高く排水量が多くなり、分布可変容器24内の水量が少ないと水圧が下がり排水量が減少していく傾向があるため、t_off後の水量変化は図5のような曲線を描くと考えられる。なお、ポンプの動作を制御することで給水量の調節ができるので、t_onからt_offまでの間の分布可変容器24内の水量をできるだけ一定に近づけるようにも制御できる。
次に、具体的な誘電体17の出し入れの制御について説明する。図6は通路13〜16の、特に、分布可変容器24内の水量変化の制御シーケンスである。上から順に、左後の通路13、左前の通路14、右後の通路15、右前の通路16における水量の特性を示している。
時間0〜t1はどの通路にも水が無く、図2に示した通りの状態である。時間t1〜t2は左後の通路13と左前の通路14に誘電体17があり、図7に示した状態である。時間t2〜t3は右後の通路15と右前の通路16に誘電体17があり、図8に示した状態である。時間t3〜t4は左後の通路13と右後の通路15に誘電体17があり、図9に示した状態である。時間t4〜t5は左前の通路14と右前の通路16に誘電体17があり、図10に示した状態である。また、図2、図7〜図10には被加熱物2が特に加熱されやすい部位35〜39を示しており、特に、図2を基準と考えて図7〜図10には図2で示した加熱されやすい部位35も併記している。図7〜図10の加熱されやすい部位36〜39は、いずれも図2の加熱されやすい部位35と比べて位置がずれている。
まず、通路13と通路15、通路14と通路16は、放射アンテナ8の軸7(回転の中心)からみてそれぞれ位置が概ね左右対象の位置にあるので、左側の通路13、14にのみ誘電体17がある状態(図7)と、右側の通路15、16にのみ誘電体17がある状態(図8)とでは加熱されやすい部位の位置のずれ方が逆向きである。すなわち、図2の加熱されやすい部位35に対して、図7の加熱されやすい部位36は左側にずれ、図8の加熱されやすい部位37は右側にずれているのである。よって、図7の状態と図8の状態を均等に切り替えれば、それぞれ加熱される部位が異なるので、加熱分布の均一化につながることになる。
また、通路13と通路14、通路15と通路16は、放射アンテナ8の軸7(回転の中心)からみてそれぞれ位置が概ね前後対象の位置にあるので、後側の通路13、15にのみ誘電体17がある状態(図9)と前側の通路14、16にのみ誘電体17がある状態(図10)とでは加熱されやすい部位の位置のずれ方が逆向きである。すなわち、図2の加熱されやすい部位35に対して、図9の加熱されやすい部位38は前側にずれ、図10の加熱されやすい部位39は後側にずれているのである。よって、図9の状態と図10の状態を均等に切り替えれば、それぞれ加熱される部位がずれるので、被加熱物2の加熱分布の均一化につながることになる。
図11に加熱分布の均一化のイメージ図を示した。図11(a)は一般的なマイクロ波加熱装置の場合で、図2の状態で加熱を続けることにより、加熱されやすい部位35の、特に、中央部分が局所的に加熱されている。図11(b)は本実施の形態により図6のように時間0〜t5まで誘電体17の出入りを制御したもので、加熱されやすい部位35〜39が重なり合うことで加熱部位40が広範囲となり、かつ局所的な加熱しすぎが無くなっている。
図12は、水量変化の他の制御シーケンスを示す。これは、必ずいずれかの通路に誘電体17があるようにしており、できるだけ誘電体17の出し入れの回数を減らすために誘電体17の有/無の状態を長時間維持するようにしたものである。これによりポンプの起動回数が減るので耐久性が向上する効果がある。
図13は、水量変化のさらに他の制御シーケンスを示す。これは、単独の通路にのみ誘電体17があるようにしたものである。もちろん四つのうち、三つの通路に誘電体17を満たしても良いし、四つとも満たすことも考えられる。
以上のように、本実施の形態のマイクロ波加熱装置1は、マイクロ波放射手段11と、マイクロ波放射手段11から放射されたマイクロ波が伝播可能なマイクロ波空間9と、マイクロ波空間9の一部に設けられて被加熱物2を収納できる加熱室3と、マイクロ波空間9に配されたガラス製などの複数の通路13〜16と、複数の通路13〜16への誘電体17の出入りを制御する制御手段33とを有し、複数の通路13〜16内における誘電体17の有無によりマイクロ波空間9の誘電率分布状態を変更し、マイクロ波分布を変化させるものである。
これによって、マイクロ波空間9に配された複数の通路13〜16内における誘電体17の有無により、マイクロ波空間9の誘電率分布状態を変更し、マイクロ波空間9内のマイクロ波分布を変化させることができ、その結果、マイクロ波空間9に含まれる加熱室3内のマイクロ波分布を変化させることができる。よって、加熱室3に収納された被加熱物2周辺のマイクロ波の電界分布が変化することになり、単一の分布で加熱するときのような局所加熱を抑制して、被加熱物2の加熱均一化を図り、加熱後の出来映えを向上させることができる。
通路の数が一つしかないと誘電体17があるか無いかの2通りのマイクロ波分布しか起こらないが、通路の数を2つとすると4通り(いずれの通路にも誘電体が無い場合、いずれか一方の通路のみに誘電体がある場合、いずれの通路にも誘電体がある場合)のマイクロ波分布、同様に通路の数を3つとすると8通りのマイクロ波分布、通路の数を4つとすると16通りのマイクロ波分布というように、通路の数を増やすごとに選択できるマイクロ波分布の数を飛躍的に増やすことができ、誘電体17の有無の制御によって任意のマイクロ波分布に切り替えることが可能となる。その結果、被加熱物2をより一層均一に加熱することができる。本実施の形態においては、通路の数が4つなので16通りのマイクロ波分布を切り替えられる。
また、マイクロ波加熱装置1は、特に、マイクロ波放射手段11は、軸7を中心に回転する放射アンテナ8からマイクロ波を放射する構成とし、軸7から見て対称な位置に通路13〜16を配する構成としている。これによって、ある通路に誘電体17がある場合のマイクロ波分布と、対称な他の通路に誘電体17がある場合のマイクロ波分布とを、対称的なマイクロ波分布とすることができる。例えば、第一の通路にのみ誘電体17がある場合のマイクロ波分布が軸に対していずれかの方向に変異した部位(第一の部位)に局所的な集中を引き起こすような分布であったとすれば、第二の通路にのみ誘電体17がある場合のマイクロ波分布は軸に対して反対の方向に変異した部位(第二の部位)に局所的な集中を引き起こすような分布を生じさせることができる。
特に、加熱室3の正面にはドア34を有し、軸7は加熱室3の下部略中央に位置し、正面から見て少なくとも軸7の左に通路13、14と、軸7の右に通路15、16を配する構成としている。また、正面から見て少なくとも軸7の前に通路14、16と、軸7の後ろに通路13、15を配する構成としている。これらによって、左の通路13、14にのみ誘電体17がある場合と右の通路15、16にのみ誘電体17がある場合や、前の通路14、16にのみ誘電体17がある場合と後の通路13、15にのみ誘電体17がある場合に、軸7を中心として対称的なマイクロ波分布とすることができる。マイクロ波加熱装置1として一般的な電子レンジの場合は、代表的な被加熱物2である食品の形状に平らなものが多いとか、複数個同時に加熱するというようなことも多く行われ、上下方向よりも左右や前後に均一であることが望まれる場合が多い。このような場合に特に加熱分布を均一にすることが期待できる。
また、マイクロ波加熱装置1は、制御手段33は、マイクロ波加熱中に通路13〜16への誘電体17の出入りを制御する構成としている。これによって、途中までは一定のマ
イクロ波分布で被加熱物2を加熱し、所定の通路への誘電体17の出入りを制御した後は異なったマイクロ波分布で被加熱物2を加熱することができる。特に、誘電体17の出入りを制御する電力は、マイクロ波加熱に要する電力(例えば、1200W)と比較してはるかに低電力(100W以下)で済むので、合算で一般の家庭の電力容量内に収めることが容易である。この場合は、誘電体17の出入りを制御する際もマイクロ波加熱を中断する必要が無いので、効率的にマイクロ波加熱を継続することができる。
また、マイクロ波加熱装置1は、誘電体17を水で構成している。これによって、水は比誘電率が約80と高く、空気の1と比べて80倍もある。一般に誘電体17の内部を伝播するマイクロ波の波長は比誘電率の平方根に反比例するので、水の内部では波長は約1/9(≒1/√80)に圧縮される。逆にマイクロ波の波長を一定と考えると、水の存在する領域のみ9倍に拡大したように見えるのである。よって、水の有無や、水がある場合はその位置によって、マイクロ波空間の形状がいびつに変形されるのと同様の作用を有することになり、マイクロ波分布を大きく変化させることができる。また、水は入手が容易であり、安全であり、扱いが簡単である。通路13〜16への水の出入りを制御することに関しても、ポンプ19〜22(およびバルブ)などの汎用部品を用いることが容易であるし、いろいろな分野で水を搬送するための管が実用化されており、本発明の通路として採用することが可能である。
また、マイクロ波加熱装置1は、通路13〜16をガラスで構成している。これによって、通路を容易に低損失の誘電体材料とすることができる。また、形状に自由度があるので、最適設計することで、内部に配される誘電体17の形状や位置を任意に決定することができる。
さらに、マイクロ波加熱装置1は、通路13〜16から排出された誘電体17をポンプ(循環手段)19〜22を介して循環させる構成としている。これによって、誘電体17を再利用できて無駄がないとともに、使用者に誘電体17のセッティングや後処理の手間をかけないようにすることができる。
(実施の形態2)
図14〜図19は、本発明の実施の形態2におけるマイクロ波加熱装置を示すものである。実施の形態1と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
図14に示すように、本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置41は、誘電体(水)17が移動できる通路42、43を加熱室3の内外にわたって設けてある。タンク44内には誘電体17が貯えられ、循環手段としてのポンプ45とバルブ46、47によって移動させられるものである。ここで通路42、43は直列に接続されているので、一つのポンプ45と二つのバルブ46、47により、通路42、43内への誘電体17の出し入れを切り替える。通路42については、特に、図15に示すように、ポンプと接続された給水チューブ48と、低損失誘電材料のガラス窓49と加熱室3を形成する壁面50とで形成される分布可変容器51と、排水チューブ52とを有している。分布可変容器51の給水口53、排水口54は、それぞれ壁面50をしぼり加工で加熱室3外部へと突出させ、加熱室3外部で給水ホース48、排水ホース52と接続している。この構成により、加熱室3内でマイクロ波にさらされるのは、分布可変容器51であり、分布可変容器51内の誘電体17の有無によってマイクロ波分布が変化することになる。分布可変容器51内の誘電体17は、排水口54、排水ホース52を介して通路43へと導かれるが、通路43との間に配置されたバルブ46の開閉状態によって排出されるか維持されるかが切り替えられるものである。パッキン55はシリコンなどの材料からなり、ガラス窓49と壁面50との隙間を埋めて水漏れを防いでいる。
設定手段56は、加熱の開始/終了や、加熱時間の設定、加熱終了温度の設定、メニューの選択などの設定を行なうために使用者が操作するものである。制御手段57は、設定手段56の設定内容に従って所定の制御を行なうもので、マグネトロン4からのマイクロ波の放射や、モータ12の駆動や、ポンプ45、バルブ46、47の動作などを制御する。図16にその制御系のブロック図を示しているように、この制御系は、例えば、マイクロプロセッサを備えてなる制御手段57を中心に構成されている。特に、設定手段56はメニュー選択手段58を有し、選択できるメニューの中に「牛乳」や「根菜」というメニューを有している。
次に、具体的な誘電体17の出し入れの制御について説明する。図17は、被加熱物2が「牛乳」でも「根菜」でも無い平らな食品59の場合で、通路42、43のいずれも誘電体17が無い状態の場合である。この場合は、一般のマイクロ波加熱装置と同等の分布性能が得られる。
ここで、一般のマイクロ波加熱装置における上下方向の加熱分布について説明を加える。一般にいろいろな食品をできるだけ均一に加熱しようとすると、上下方向の加熱分布も無くしたいので、実際に使用される食品の高さを想定して載置台10上の高さ30〜50mm程度の位置にマイクロ波が集中するように設計することが考えられる。この場合、牛乳などの飲み物でも、馬鈴薯などの根菜でも、一様に中央部分が早く加熱される傾向がある。根菜の場合は固体のため対流が無く、中央から周囲への熱伝導が均等であるから、中央部分が早く加熱されればある程度満足できる出来映えが得られる。しかし、飲み物の場合は対流があり、熱い部位が低い位置にあると上方へと流れて混ざり合うが、冷たい部位が低い位置にあると上方とは混ざらずに低温のまま維持されてしまう。よって、中央部分が早く加熱される場合は、中央から上方にかけては均一で、底の部分だけが冷たいままとなってしまう傾向がある。このため、飲み物の分布を改善するために、マイクロ波の集中する高さを低めにして載置台10上の高さ10〜20mmに集中させることが考えられる。こうすれば飲み物は底の部分もある程度加熱されるので、あとは対流によって全体的に均一にすることができる。しかし、この場合は根菜においても底の部分の加熱が早くなり、対流が無いので底が先に煮えてしまって上側が冷たいままということが起こりうる。よって、飲み物と根菜のバランスをとりながら設計する(例えば、20〜30mmに集中させる)ことになり、どちらも完璧ではないがそこそこの出来映え、つまり、飲み物はやや底が冷たく、根菜は底がやや熱いということが起こりやすい。
そこで、本実施の形態では、通路42、43ともに誘電体17が無い状態では上下方向の分布はあまり考慮せずに平らな食品の分布が良くなるように設計しておき、通路42に誘電体17を満たすと飲み物の底が加熱されやすくなり、通路43に誘電体17を満たすと根菜の中央が加熱されやすくなる(もちろん通路42、43の傾向は逆でも良いが)、というように加熱分布を切り替えられる位置に通路42、43を設けている。
図18は、被加熱物2が牛乳60の場合であり、使用者が設定手段56のメニュー選択手段58から「牛乳」キーを選択するので、それに基づいて制御手段57がポンプ45、バルブ46、47を制御して、上方の通路42のみに誘電体17を満たしている。設計段階で上方の通路42のみに誘電体17がある場合は飲み物の底にマイクロ波が集中して加熱されることがわかっており、この結果、対流によって自然と攪拌されて均一な出来映えが得られる。
図19は、被加熱物2が馬鈴薯61の場合であり、使用者が設定手段56のメニュー選択手段58から「根菜」キーを選択するので、それに基づいて制御手段57がポンプ45、バルブ46、47を制御して、下方の通路43のみに水17を満たしている。設計段階で下方の通路43のみに水17がある場合は根菜の中央にマイクロ波が集中して加熱され
ることがわかっており、この結果、熱伝導によって自然と均一な出来映えが得られる。よって飲み物も根菜もどちらも均一な出来映えを提供することができる。
以上により、本実施の形態のマイクロ波加熱装置41は、軸7から見て距離が異なる少なくとも二箇所に通路42、43を配する構成としている。これによって、通路42にのみ誘電体17がある場合のマイクロ波分布と、通路42とは軸7からの距離が異なる他の通路43にのみ誘電体17がある場合のマイクロ波分布とを、軸7に対して非対称的なマイクロ波分布とすることができる。通路42にのみ誘電体17がある場合のマイクロ波分布が軸7上の特定の部位(飲み物の底部)に局所的な集中を引き起こすような分布であったとすると、もし通路43が通路42と軸7から等距離で対称な位置にあったとすれば、通路43にのみに誘電体17がある場合も通路42にのみ誘電体17がある場合と同様、軸7上の特定の部位(飲み物の底部)に局所的な集中を引き起こすことが容易に考えられる。ところが、通路43が通路42とは軸7からの距離が異なるように配置することで、通路43にのみ誘電体17がある場合のマイクロ波分布は軸7に対して非対称な分布、すなわち、軸7上の部位で異なる高さ(根菜の中央)に集中する分布にすることもできる。
また、マイクロ波加熱装置41は、正面から見て少なくとも軸7の上方に通路43と、通路43のさらに上方に通路42を配する構成としている。これらによって、通路43は放射アンテナ8に近く、通路42は放射アンテナ43から遠く配されることになる。一般的に放射アンテナ8から距離が離れるにつれて電界が減衰することが知られており、放射アンテナ8に近い通路43の方がより強い電界にさらされるので、誘電体17があるときのマイクロ波への影響、すなわちマイクロ波分布の変化がより大きくなることが想定される。よって、誘電体17の無い場合のマイクロ波の分布と比較して、通路42にのみ誘電体がある場合はマイクロ波の分布を少しだけ変化させて、通路43にのみ誘電体17がある場合はマイクロ波の分布を大きく変化させる、ということも可能である。
また、マイクロ波加熱装置41は、使用者が設定できる設定手段56を有し、制御手段57は、設定手段56の設定内容に応じて、所定の通路42、43への誘電体17の出入りを制御する構成としている。これによって、設定内容に応じて、分布むらを抑制するようなマイクロ波分布に変更することができる。特に、設定手段56がメニュー選択手段58を有し、「牛乳」とか「根菜」が選択できるので、被加熱物2の形状や材質をある程度特定できる。「牛乳」ならマグカップやコップの形状で対流があるので下の方を加熱すれば良いとか、「根菜」なら馬鈴薯の中央くらいを加熱すればよい、などである。
なお、他にも「解凍」なら平らな形状なので上下の分布よりも前後左右の分布を良くすべきとか、「コンビニ弁当」の場合は面積が広い形状でごはんとおかずの領域が分かれているのでバランスをとるべき、というようなことがあらかじめ推測できる。
また、設定手段56で加熱時間を設定した場合はトータルの時間が決まるので、途中で二回分布を変えるなら何分ずつの配分にしようとか、このようなことも予め決定することができる。よって、設定内容に応じて所定の通路への誘電体17の出入りを制御することは、加熱の均一化のためにある程度の効果がある。
(実施の形態3)
図20〜図34は、本発明の実施の形態3におけるマイクロ波加熱装置を示すものである。実施の形態1と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
図20、図21に示すように、本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置62は、誘電体(水)17が移動できる通路63、64を、ループ状にして放射アンテナ8の上方に配置し、マイクロ波空間9の内外にわたって設けてある。タンク65内には誘電体17が貯
えられ、循環手段としてのポンプ66、67によってそれぞれが移動させられる。通路63、64は、低損失誘電材料、例えば、シリコンチューブからなり、ある程度可撓性があり配設が容易である。
また、加熱室3の壁面には、複数箇所(例えば8箇所)の温度を同時に測定可能な赤外線センサ(温度検出手段)68が揺動自在に配置されている。赤外線センサ68を揺動させるスキャン動作により、加熱室3内における複数の測定点の温度を測定することができ、さらに、測定点の温度を経時的に監視することで被加熱物2の位置を知ることもできる。
設定手段69は、加熱の開始/終了や、加熱時間の設定、加熱終了温度の設定、メニューの選択などの設定を行なうために使用者が操作するものである。制御手段70は、設定手段69の設定内容と赤外線センサ68からの温度検出信号に従って所定の制御を行なうもので、マグネトロン4からのマイクロ波の放射や、モータ12の駆動や、ポンプ66、67の動作、赤外線センサ68のスキャン動作などを制御する。図22には、制御系のブロック図を示している。
ここで、赤外線センサ68を用いて冷凍状態の被加熱物2の温度測定、位置判定、分量判定などの制御方法について説明する。
図23(a)に示すように、赤外線センサ68は一度に複数点(n点)の温度を同時に検出しながら赤外線センサ68自体を揺動することで、図中、矢印方向にスキャンしつつ加熱室3内を複数の測定点(スキャン方向にm点)に対する温度測定を行なう。従って、赤外線センサ68の1スキャンで、図23(b)に示すn×m点の測定点全ての温度が検出される。被加熱物Mに対する温度は、連続的に検出される各測定点における温度の経過時間に対する上昇率に基づいて被加熱物Mの載置位置を求め、この載置位置における検出温度を被加熱物Mの温度として扱う。
図24に、赤外線センサ68によるスキャンを連続的に複数回行なったときの図23(b)におけるL線位置の温度分布を示した。図24において、1スキャン幅内で温度が特に変化している温度分布のピーク位置(谷の位置)は、図23(b)におけるL線上の被加熱物Mの位置に対応する。従って、加熱室3における被加熱物Mの位置は、この温度分布のピーク存在位置から求められる。ここで、この被加熱物Mの位置に対応する温度を、加熱初期時或いは温度測定開始時まで遡って求めることにより、被加熱物Mの初期温度を判定することができる。また、図24における温度分布曲線のピーク同士を連結する線(図24における点線)の勾配から被加熱物Mの温度上昇率ΔTを求めることにより、被加熱物Mの分量を推定することができる。これは、図25に示すように、同じ初期温度で重量の異なる2つの被加熱物M1、M2を同じ条件で加熱すると、その重量に応じて温度上昇率ΔTが異なり、分量の少ない被加熱物M1を加熱した場合には温度上昇率がΔTLとなり、分量が多い被加熱物M2を加熱した場合には温度上昇率がΔTLより小さなΔTMとなるためである。上記の被加熱物Mの初期温度の判定および温度上昇率ΔTから被加熱物Mの分量を推定することで、冷凍品の解凍処理終了時間を設定することができる。
一方、加熱分布を均一化するために、ポンプ66、67による通路63、64への水17の制御について説明する。
図26は通路63、64内における水量変化の制御シーケンスである。横軸は時間であり、上から順に、分量判定のタイミング、内側の通路63の水量、外側の通路64の水量を示している。まず、赤外線センサ68のシーケンスに従い時間t0で分量判定が完了したとする。制御手段70は、このときの分量から加熱すべきトータル時間をt4と決定し
、1/4ずつの時間配分で通路63、64内の水量を制御することにして、図26のような順番で制御を行なう。
時間0〜t1はどの通路にも水が無く、図27のように冷凍の被加熱物Mにリング状に加熱されやすい部位71が生じている。時間t1〜t2は内側の通路63に誘電体17があり、図28のように加熱されやすい部位72が部位71の外側に生じている。時間t2〜t3は外側の通路64に誘電体17があり、図29のように加熱されやすい部位73が部位71の内側と外周に生じている。以上の加熱されやすい部位71〜73については、それぞれ位置が異なるので、互いに合成すればより均一に加熱できることは明白である。その後、時間t3〜t4は、再度、内側の通路63に誘電体17があり、図28に示した状態に戻している。
なぜ戻したかについては図30によって説明する。図30は赤外線センサ68で検出した被加熱物Mの温度分布のうち、最高温度と最低温度の時間変化を表したもので、両者の差がいわゆる加熱むらと考えることができる。これまでの加熱分布(すなわち、図27の状態)を継続させると、最高温度K1、最低温度K2の差は時間とともに増えていく。しかし本実施の形態のように図26の制御シーケンスで時間t3まで加熱すると、最高温度K3、最低温度K4で推移することになる。時間0〜t1においては、どの通路にも誘電体17が無いので、本実施の形態でもこれまでの加熱分布と同じとなり、K1とK3、K2とK4が一致しており、t1時点の温度むらはΔT1となる。しかし時間t1〜t2には内側の通路63に誘電体17があり、図28のように加熱されやすい部位がシフトするので最高温度K3の上昇の傾きが鈍り、最低温度K4の上昇の傾きは大きくなり、よってt2時点の温度むらはΔT2に減少する。そして時間t2〜t3は外側の通路64に誘電体17があり、図29のように加熱されやすい部位がシフトするものの、時間t1〜t2間と比べるとK3の傾きがわずかに大きくなりK4の傾きが小さくなるなど温度むらはΔT3に拡大する。そしてt3時点では残り時間はt3〜t4(全体の1/4の時間)しか無いので最も加熱むらを低減する加熱分布で再度加熱することにしている。よって、t3〜t4の水の制御に関しては、t3時点でどの条件が最も良いのかを判定する必要があり、その方法は各条件にて発生した加熱むらのレベルを比較するのが良い。つまり、ΔT1(>0)と、ΔT2−ΔT1(<0)と、ΔT3−ΔT2(>0)を比較し、t3時点のむらΔT3(>0)をできるだけ0に近づける条件として、ΔT2−ΔT1(<0)が最も適当である。それは、すなわち時間t1〜t2のときの加熱分布であり、内側の通路63にのみ水17を満たす条件になる。こういった演算や判定などの処理は、制御手段70の中で実行することが可能である。
以上により、加熱終了時t4での加熱むらはΔT4となり、従来の加熱方法による加熱むらΔT0と比較して、かなり小さくすることができる。
さて、図31〜図34により、マイクロ波空間9内の分布、特に、マイクロ波の定在波分布が生じる原理について説明する。
説明を簡単にするために放射アンテナ8の代わりに加熱室3の底面中央にマイクロ波を供給するための電波開口部74が存在すると仮定すると、この電波開口部74の付近では、強磁界75(破線矢印)により、同一方向の強磁界76、77(それぞれ破線矢印)が起こりやすくなる。すると、マイクロ波が加熱室3内に入ることにより加熱室3内でマイクロ波が共振を起こす。共振状態では、導波管内のような伝送状態とは異なり、磁界と電界の位相は90゜ずれるので、強磁界76、77とは位相のずれた強電界78、79(実線矢印)が電波開口部74を挟み込むように生じる。
共振状態は被加熱物が無い状態では、加熱室3形状と電波開口部74の位置によって決
まり、本実施の形態においては、強磁界76、77とは位相のずれた強電界78、79が加熱室3の底面に対して垂直に立ち、同時に強電界78と同方向(図31の奥向き)に強電界80が立ち、強電界79と同方向(図31の手前向き)に強電界81が立つとする。勿論、2.45GHzのスピードで、それぞれ向きが反転するものである。ここで、図31中の斜線部は、加熱室3の底面に生じる電界のうち、ある程度以上に電界が強い領域を示しており、加熱室3の奥行き方向(x方向)に三つ、幅方向に(y方向)に四つ、強電界が生じている。これは共振状態となったために加熱室3内に電磁波が定在波として分布することによって起こる電界の腹であり、この腹の数をモードと呼ぶ。通常、加熱室形状を三次元で表し、各方向の寸法をx、y、zとするとき、それぞれの方向に電界の腹がr、s、t個だけあれば、そのモードは(r s t)であるという。図示した場合では、r=3かつs=4である。
図32は、図31に示した強電界のモードをより簡略化してr=2、s=2かつt=3として3次元的に表示した例である。図中の斜線部は、加熱室3の壁面上に生じる電界のうち、ある程度以上に電界が強い領域を示しており、向かい合う壁面は対称な電界分布を示している。斜線部で示す強電界82の数(電界の腹)を数えると、x方向に2個(r=2)、y方向に2個(s=2)、z方向に3個(t=3)立っており、モード(223)ということがわかる。
ここで、被加熱物が加熱室3内に存在しない状態で、加熱室3が直方体である場合には、加熱室3の寸法と電波開口部74の位置により、立ちうるモードを解析的に求めることができる。いま、加熱室3の寸法をx、y、zとし、各方向に立つモードの数は(1)式を満たすr、s、tの組み合わせとなる(x、y、zはmm単位、r、s、tは整数、λはマイクロ波の波長であって約122mm)。
1/λ2=(r/(2x))2+(s/(2y))2+(t/(2z))2 ・・・(1)
一方、被加熱物が加熱室3内に存在する場合は、被加熱物の誘電率による波長圧縮の影響などで(1)式からずれが生じる。しかし、被加熱物が加熱室3内にあっても、電波開口部74付近では(1)式を満たすモードが立とうとしており、電波開口部74から離れた位置でモードが乱されることが多いことが実験的にわかってきている。よって、波長λ≒122mmとして(1)式に基づき所望のモードが得られるように加熱室3の寸法を決定すれば、概ね任意のモードを発生させることが可能となる。また、回転可能な放射(あるいは攪拌用のスタラー羽根)を有する場合は、回転により、図31で示すところの電波開口部74の位置を連続的に変化させるようなものと考えられるので、ある程度モードを変更することができる。
さらに、マイクロ波の波長λを変化させることでモードを変更することができる。具体的には、加熱室3内に誘電体17を供給することにより、マイクロ波の波長が変化する。ここで、変化後の波長をλa、加熱室11内の誘電率をεとすると、変化後の波長λaは(2)式で表される。
λa=λ/√ε ・・・(2)
誘電率εは、空気の場合は1で、水では80前後となる。つまり、前述したように加熱室3内の通路63、64に誘電体17を供給することにより、加熱室3内の通路63、64部分の誘電率が変化し、これにより、(2)式の関係からマイクロ波の波長が短波長側にシフトする。すると、(1)式によって決定される強電界のモードが変化する。この変化の度合いは誘電体17の比誘電率に比例することになるので、比誘電率が大きければ少量でも効果があり、比誘電率が小さいと大量に入れないと効果が上がらないと考えられる。理想的には比誘電率が大きく、誘電損失が小さいものが望ましい。誘電体17が水の場合
は比誘電率も誘電損失も大きいので、あまり大量に入れると水自体がマイクロ波を吸収してしまって、被加熱物の加熱効率が低下することも起こりうるので注意を要する。
図33は加熱室の壁面上に発生する強電界のバリエーションを示す。表示された強電界83が加熱室3底面の強電界の位置だとすると、(a)はr=2、s=2のモードである。(a)の状態から加熱室3内の通路に誘電体17を供給することにより、例えば、(b)、(c)、(d)に示すような状態に遷移することも考えられる。(b)はr=5、s=1のモード、(c)はr=3、s=3のモード、(d)はr=4、s=4のモードであり、強電界の状態が変化する。
図34はマイクロ波加熱途中に誘電体17を制御して、モードを第1の状態から第2の状態に切り替えて均一化をねらう場合の説明図である。図示のように、例えば、第1の状態が強電界84によりr=2、s=2のモード(r、s、tのうちいずれか2つが2であるモード)である場合には、第2の状態において、第1の状態で強電界が生じなかった位置に強電界が発生するように、補完すべき位置を含むように強電界85や強電界86を発生させるのが望ましい。
このように、第2の状態において補完すべき位置に強電界を発生させるためには、加熱室3内に供給する誘電体17の量や位置を調整したり、通常回転させる放射アンテナ8やスタラー羽根を所定の向きに停止させたりすることで微調整が行なえる。この強電界の位置制御により、被加熱物を一層ムラなく均一にマイクロ波加熱することができ、加熱後の出来映えがさらに良好となる。
以上のように本実施の形態のマイクロ波加熱装置62は、被加熱物の温度を検出する赤外線センサ(温度検出手段)68を有し、制御手段70は、赤外線センサ(温度検出手段)68の検出信号に基づき、通路63、64への誘電体17の出入りを制御する構成としている。これによって、赤外線センサ(温度検出手段)68の検出信号から被加熱物Mの温度むらを見ながら、むらが大きくなってくれば通路63、64への誘電体17の出入りを制御して、分布むらを抑制するようなマイクロ波分布に変更することができる。また、各通路における誘電体17の有無の組み合わせを順次切り替えながらそれぞれの温度むらを検出すれば、最も温度むらを小さくできる組み合わせがわかるので、以降はその組み合わせに固定して加熱を進めることで温度むらを小さくできる。また、予め各通路63、64における誘電体17の有無の組み合わせによってどのような加熱分布になるかを把握しておけば、温度むらを検出しながら、温度むらを打ち消す可能性の高い条件になるよう誘電体17をこまめに制御することができ、最初から最後まで被加熱物の温度むらをあまり発生させない状態を維持したまま加熱することができる。
また、制御手段70は、マイクロ波加熱中に通路63、64への誘電体17の出入りを制御する構成としている。これによって、途中までは一定のマイクロ波分布で被加熱物を加熱し、所定の通路への誘電体17の出入りを制御して異なったマイクロ波分布で被加熱物Mを加熱することができる。特に、誘電体17の出入りを制御する電力は、マイクロ波加熱に要する電力(例えば、1200W)と比較してはるかに低電力(100W以下)で済むので、合算で一般の家庭の電力容量内に収めることが容易である。この場合は誘電体17の出入りを制御する際もマイクロ波加熱を中断する必要が無いので、効率的にマイクロ波加熱を継続することができる。
また、通路63、64を樹脂製のチューブで構成している。これによって、通路63、64を容易に低損失の誘電体材料とすることができる。また、形状に自由度があるので、最適設計することで、内部に配される誘電体の形状や位置を任意に決定することができる。
なお、本実施の形態では、誘電体17として水を使って説明しているが、比誘電率が高い材料であれば良いし、かつ誘電損失が小さければより望ましい。また水は零下では凍ってしまって出し入れの制御ができないなどの危険性があるので、不凍液とすることも容易に考えられる。
なお、以上に示した各実施の形態1〜3はさまざまに組み合わせて実施できるものであり、実施の形態そのものの構成に限られるものではない。
以上のように、本発明にかかるマイクロ波加熱装置は、被加熱物の加熱均一化を図り、加熱後の出来映えを向上させることができるので、食品などの各種誘電体の加熱、解凍、陶芸加熱、乾燥、焼結あるいは生体化学反応などの用途に適用できる。
本発明の実施の形態1におけるマイクロ波加熱装置の正断面図 同マイクロ波加熱装置の平断面図 (a)同マイクロ波加熱装置における誘電体の通路部分を図1のA方向よりみた正面図(b)(a)のB−B断面図 同マイクロ波加熱装置を制御するための制御系のブロック図 同マイクロ波加熱装置の通路部分における分布可変容器内の水量変化を示す特性図 同マイクロ波加熱装置の通路部分における分布可変容器内の水量変化の制御シーケンスを示す説明図 同マイクロ波加熱装置の左後の通路と左前の通路に誘電体がある状態の説明図 同マイクロ波加熱装置の右後の通路と右前の通路に誘電体がある状態の説明図 同マイクロ波加熱装置の左後の通路と右後の通路に誘電体がある状態の説明図 同マイクロ波加熱装置の左前の通路と右前の通路に誘電体がある状態の説明図 (a)一般的なマイクロ波加熱装置で加熱した場合における加熱分布の均一化のイメージ図(b)図6の制御シーケンスによる加熱分布の均一化のイメージ図 同マイクロ波加熱装置の他の制御シーケンスを示す説明図 同マイクロ波加熱装置のさらに他の制御シーケンスを示す説明図 本発明の実施の形態2におけるマイクロ波加熱装置の正断面図 同マイクロ波加熱装置における誘電体の通路部分の断面図 同マイクロ波加熱装置を制御するための制御系のブロック図 同マイクロ波加熱装置による平らな食品を加熱する状態の説明図 同マイクロ波加熱装置により牛乳を加熱する状態の説明図 同マイクロ波加熱装置により馬鈴薯を加熱する状態の説明図 本発明の実施の形態3におけるマイクロ波加熱装置の正断面図 同マイクロ波加熱装置における誘電体の通路部分の平面図 同マイクロ波加熱装置を制御するための制御系のブロック図 (a)同マイクロ波加熱装置における赤外線センサによる被加熱物の温度測定の様子を示す図(b)測定により得られるデータを示す説明図 同マイクロ波加熱装置における赤外線センサによる温度測定を連続的に複数回行なったときの温度分布を示す特性図 同マイクロ波加熱装置により重量の異なる2つの被加熱物を同じ条件で加熱する場合の温度変化の様子を示す特性図 同マイクロ波加熱装置の制御シーケンスを示す説明図 同マイクロ波加熱装置の通路に水が無い状態の説明図 同マイクロ波加熱装置の内側の通路に誘電体がある状態の説明図 同マイクロ波加熱装置の外側の通路に誘電体がある状態の説明図 同マイクロ波加熱装置の赤外線センサで検出した被加熱物の最高温度と最低温度の時間変化を示す特性図 同マイクロ波加熱装置の加熱室の底面を上から見た平面図 同マイクロ波加熱装置の強電界のモードを簡略化して3次元的に例示した説明図 同マイクロ波加熱装置の加熱室の壁面上に発生する強電界のバリエーションを示す説明図 同マイクロ波加熱装置の第1の状態と第2の状態における強電界の位置の例を示した説明図
1、41、62 マイクロ波加熱装置
2、M 被加熱物
3 加熱室
7 軸
8 放射アンテナ
9 マイクロ波空間
11 マイクロ波放射手段
13、14、15、16、42、43、63、64 通路
17 誘電体
19、20、21、22、45、66、67 ポンプ(循環手段)
32、56、69 設定手段
33、57、70 制御手段
34 ドア
59 平らな食品(被加熱物)
60 牛乳(被加熱物)
61 馬鈴薯(被加熱物)
68 赤外線センサ(温度検出手段)

Claims (5)

  1. マイクロ波を放射するマイクロ波放射手段と、前記マイクロ波放射手段から放射された前記マイクロ波が伝播可能なマイクロ波空間と、前記マイクロ波空間の少なくとも一部に設けられて被加熱物を収納できる加熱室と、前記マイクロ波空間に配され内部を誘電体が出入りする複数の通路と、前記複数の通路への誘電体の出入りを制御して前記複数の通路内における前記誘電体の有無の組み合わせを変えることにより、前記マイクロ波空間内の誘電率分布状態を変化させる制御手段とを備えたマイクロ波加熱装置。
  2. 前記マイクロ波放射手段は、軸を中心に回転する放射アンテナからマイクロ波を放射する構成とし、前記放射アンテナのについて対称な少なくとも二箇所に前記通路を配する請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
  3. 前記マイクロ波放射手段は、軸を中心に回転する放射アンテナからマイクロ波を放射する構成とし、前記放射アンテナの回転中心からの距離が異なる少なくとも二箇所に前記通路を配する請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
  4. 被加熱物の温度を検出する温度検出手段をさらに有し、前記制御手段は、前記温度検出手段の検出信号に基づき、前記通路への誘電体の出入りを制御する請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
  5. 使用者が設定できる設定手段をさらに有し、前記制御手段は、前記設定手段の設定内容に応じて、所定の前記通路への誘電体の出入りを制御する請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
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