JP4638926B2 - 自動車の車体側部構造 - Google Patents
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図8(a)、(b)に示すように、従来、自動車100の車体前部に配置されるフード200の左右には、エンジンルームの左右内壁を形成するフロントフェンダ300がそれぞれ設置されている。フロントフェンダ300は、インナフェンダ600が取り付けられるホイールアーチ部310と、フロントピラロア部410を覆うように設置される後端部320と、後端部320の側面上側に設けられてフロントピラアッパ部420に連設される上端部330と、後端部320の側面下側に設けられてサイドアウタパネル400にボルト締めされる下端部340と、を有している。
その他、図9(a)、(b)に示すように、サイドアウタパネル700のドア開口部110の下部のサイドシル部730に、サイドシル部730を覆う樹脂製のガーニッシュ800(サイドシルプロテクタ)を設置した車体側部構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、サイドシル部との見切り線とは、フロントフェンダの外側表面において、このフロントフェンダの後側下端部に隣設されたサイドシル部との境界線をいい、サイドシル部に対向するフロントフェンダの外面下端をいう。
このように形成されたサイドシル部は、フロントフェンダに連続するように、車体の外側表面に露出して配置されているので、従来の自動車に使用されていた樹脂製のガーニッシュ(サイドシルプロテクタ)が不要となる。このため、部品点数及び組付工数を削減してコストの低減を図ることができる。
また、フロントフェンダをサイドアウタパネルに取り付けるための取付部は、前記見切り線からサイドアウタパネルの延出部の内側を通して、延出部の切欠部から下方へ突出して形成されている。このため、フロントフェンダの本体に対する取付部の開き角度を鈍角に拡大することができる。その結果、フロントフェンダは、プレス成形する際のプレス成形方向の自由度が増し、フロントフェンダのデザインの自由度を向上させることができる。また、取付部は、サイドシル部の切欠部から下方へ突出して配置されていることによって、この取付部をサイドアウタパネルに取り付ける際の取付作業が容易となり、作業性がよい。
さらに、フロントフェンダの取付部は、フロントフェンダの後側下端部を車体内側方向へ鈍角に折曲して配置されていることによって、フロントフェンダの本体に対する取付部の開き角度が鈍角に拡開して形成されている。このため、フロントフェンダは、深絞り加工する際のプレス成形方向の自由度を向上させることができる。これに伴って、フロントフェンダのデザインの自由度が向上されて、所望の形状にフロントフェンダを深絞り加工することが可能となる。
なお、本発明の実施形態では、「前」は車両の前進側、「後」は車両の後退側、「上」は鉛直上方側、「下」は鉛直下方側、「左右」は車幅方向側とする。
図1に示すように、自動車1は、車体前部にフード2を有し、左右の車体側部にそれぞれフロントフェンダ3、サイドアウタパネル4、及びサイドドア5を備えた車両である。自動車1は、特に、車両の種類や形状等は限定されず、フード2、フロントフェンダ3、サイドアウタパネル4、及びサイドドア5を備えていれば、乗用車やトラックや作業車等であってもよい。なお、自動車1は、左右対称な車体からなり、以下、乗用車の左側の車体側部を例に挙げて説明し、車体右側の説明は適時に省略する。
図2に示すように、フード2は、エンジンルーム(図示省略)の上方に配置されて、エンジンルームを開閉する蓋部材である。フード2は、例えば、圧延鋼板あるいはアルミニウム合金製板材等によって形成されたフードスキンと、フードスキンの下面に設けられたフードフレームと、を備えて構成されている。フード2の左右両側には、フロントフェンダ3が設置されている。
図1及び図2に示すように、フロントフェンダ3は、エンジンルームの左右内壁と、前輪(図示省略)の周部に配置されるホイールアーチ部31と、車体前部の左右外壁面と、を形成するためのアウタパネル部材である。フロントフェンダ3は、例えば、圧延鋼板あるいはアルミニウム合金製板材等をプレス加工して形成される。フロントフェンダ3は、それぞれ後記する見切り線E,Fと、ホイールアーチ部31と、取付部32と、後側下端部33と、後側上端部34と、後端部35と、を備えている。フロントフェンダ3は、前輪の上側周囲を覆うように配置されると共に、フード2の左右側からサイドドア5の前縁部にわたって車体側部に配置されている。
図1及び図2に示すように、見切り線Eは、フロントフェンダ3の外側表面におけるサイドシル部42との境界線であり、フロントフェンダ3の後側の後側下端部33に形成されている。サイドシル部42との見切り線Eは、サイドドア5のドア下端ライン51の線上付近に車体前後方向に向けて形成されている。
見切り線Fは、フロントフェンダ3におけるフード2との境界線であり、フロントフェンダ3がフード2と対向する上縁部に形成されている。この見切り線Fは、フード2の左右の縁に沿って車体前後方向に向けて形成されている。
図2に示すように、前記ホイールアーチ部31は、フロントフェンダ3において、前輪の外側周部に、この前輪に沿って側面視して略半円状に形成された部位である。ホイールアーチ部31は、後記するホイールハウス11及びフロントピラロア部41の前壁41bにスポット溶接等によって固定される。図3及び図5に示すように、ホイールアーチ部31の内周縁部には、車幅方向内側へ向けて直角に折曲したフランジ部36が形成されている。
フランジ部36は、泥除け用のカバーとしてのインナフェンダ8(図4参照)の外周部が重ねて設けられて固定される部位である。フランジ部36には、インナフェンダ8(図4参照)をホイールアーチ部31に取り付けるためのクリップ(図示省略)が装着される取付孔37と、この取付孔37が穿設された舌片38と、が形成されている。
取付孔37は、クリップ(図示省略)の形状に合わせて四角形に形成されている。
舌片38は、フランジ部36からホイールアーチ部31の内側方向に向けて突出形成されて、適宜な間隔で複数形成されている。
ホイールハウス11は、ホイールアーチ部31の車体内側に設置され、前輪の上側周囲を覆うように配置されたパネル部材であり、車体フレーム(図示省略)にボルトと溶接とによって固定されている。
インナフェンダ8は、例えば、走行中にこのインナフェンダ8に小石等が当たった際の衝撃を吸収可能な弾性を有するゴム、合成樹脂等によって形成された板状の緩衝部材からなる。インナフェンダ8は、ホイールハウス11並びにホイールアーチ部31の前輪側の内面、及びフロントピラロア部41の前壁41bを覆って張り付けるように、クリップ(図示省略)等によって車体に固定される。
図3に示すように、取付部32は、フロントフェンダ3の後側下端部33をサイドアウタパネル4に取り付けるためのブラケットの役目を果たす部位である。取付部32は、見切り線Eがある後側下端部33から車体内側へ斜め下方向に向けて突出した突出片からなり、フロントフェンダ3に一体形成されている。取付部32は、フロントフェンダ3の後側下端部33を車体内側方向へ正面視して逆く字状に折曲形成されて、斜め下側に向かって延設されている。取付部32のフロントフェンダ3の後側下端部33に対する開き角度θは、車体内側方向の下側に向けて鈍角に拡開して形成されている。
このように形成された取付部32は、前記見切り線Eからサイドアウタパネル4の延出部43の内側を通して、切欠部44から下方へ垂直に突出して配置されている。取付部32は、下側の先端部に穿設した締結孔32aにボルト等からなる締結部材Tを螺着することによって、フロントピラロア部41の鍔部41dの下端部に固定される。
図3及び図5に示すように、前記後側下端部33は、フロントフェンダ3において、ホイールアーチ部31の後側の下端部に配置されて、前記見切り線Eが形成される部位である。図3及び図4に示すように、後側下端部33は、下端の見切り線Eが、サイドシル部42の延出部43の上縁43aに当接して一致するように配置されると共に、さらに、その見切り線Eがサイドドア5のドア下端ライン51の線上に一致するように配置されている。この後側下端部33の下端前側には、さらに、前記取付部32が連続形成されている。
図1及び図2に示すように、後側上端部34は、フロントフェンダ3の側面後側の上端部位であり、フロントピラアッパ部45の下端の外面に配置されている。後側上端部34は、フロントピラアッパ部45に連続するように形成されて、フロントピラアッパ部45の下端にスポット溶接等によって固定される。
後端部35は、フロントフェンダ3の車体後方側に配置された前記後側下端部33と前記後側上端部34との間の部位である。この後端部35は、サイドドア5のドア前端ライン52に隣接し、サイドドア5の外側表面に面一に配置されている。後端部35は、フロントピラロア部41を覆うように設置されて、そのフロントピラロア部41にスポット溶接等によって固定される。
図1に示すように、サイドアウタパネル4は、サイドドア5が設置されるドア開口部12を形成すると共に、車体側部表面を形成する外装パネル部材である。サイドアウタパネル4には、それぞれ後記するフロントピラロア部41(図2参照)と、サイドシル部42と、延出部43と、フロントピラアッパ部45と、ルーフサイドレール部46と、リヤピラ部47と、リヤフェンダ部48と、リヤドアリヤピラ部49と、が一体形成されている。サイドアウタパネル4は、車体前後方向に延びる車体側部の骨格を構成する部材であり、例えば、圧延鋼板あるいはアルミニウム合金製板材によって形成されている。
図2に示すように、フロントピラロア部41は、ドア開口部12の前側下半分を形成する骨格部分であり、上下方向に延設されている。このフロントピラロア部41の車幅方向の外側は、フロントフェンダ3によって覆われている。図3及び図5に示すように、フロントピラロア部41の前壁41bの下側部位は、後記するスチフナ6と、エクステンション7とが設けられて補強されている。その前壁41bの車体内側には、車体前方方向へ向けて直角に折曲した鍔部41dが形成されている。鍔部41の下端部には、取付部32の先端部が固定される固定孔41c(図5参照)が穿設されている。
図2に示すように、サイドシル部42は、フロントピラロア部41の下端41aから車体後方に向けて延設されて、ドア開口部12の下縁部位を形成する筒状の骨格部分である。図3及び図4に示すように、サイドシル部42の前端42a側には、ホイールアーチ部31の後側下端部33の下部まで延長して形成された延出部43を有している。
図3に示すように、前記延出部43は、サイドシル部42の前側に形成された延長部位であり、前記取付部32を覆うように配置されている。延出部43の上縁43aは、サイドドア5のドア下端ライン51の延長線上と一致させて配置されている。延出部43の前端42aには、内側方向へ直角に折曲して形成された取付フランジ部42b及び舌片42dと、取付フランジ部42bから後方へ向けて形成された切欠部44と、が設けられている。
取付フランジ部42bは、延出部43の前端42a全体にわたって、車体内側方向に折曲して形成されている。この取付フランジ部42bには、インナフェンダ8(図4参照)の周縁部が重ねて設置される。
舌片42dには、前記フロントフェンダ3の舌片38と同様に、インナフェンダ8(図4参照)を取付フランジ部42bに固定するためのクリップ(図示省略)が挿入される取付孔42cが穿設されている。
図6に示すように、前記切欠部44は、取付部32に穿設された締結孔32aをサイドシル部42の下方に露出した状態にして、サイドシル部42の車体の横方向から締結部材Tを締結孔32aに挿入し、取付部32を車体外側からフロントピラロア部41に締結可能にするために形成されたものである。切欠部44は、延出部43とフロントピラロア部41との間に配置されて、略U字状に切欠形成されている。図5に示すように、切欠部44の周辺のサイドアウタパネル4には、後記するエクステンション7が重ねて配置されている。
図1に示すように、フロントピラアッパ部45は、ドア開口部12の前側上縁部を形成する柱状部分であり、フロントフェンダ3の後側上端部34から斜め上後方側に向けて露出して延設されている。
ルーフサイドレール部46は、ドア開口部12の上縁部を形成する骨格部分であり、フロントピラアッパ部45の上端部からリヤピラ部47の上端部にわたって架設されている。
図1に示すように、リヤピラ部47は、ルーフサイドレール部46の後端から下方へ向けて延設された柱状部分である。
リヤフェンダ部48は、リヤピラ部47の下端からサイドシル部42の後端からわたって配置された車体外装パネルである。
リヤドアリヤピラ部49は、リヤドア53が配置されるドア開口部12の後側上縁部を形成する柱状部分であり、ルーフサイドレール部46からリヤフェンダ部48にわたって上下方向に架設されている。
図1に示すように、サイドドア5は、フロントフェンダ3及びサイドシル部42に隣接して前席外側に配置されるフロントサイドドアである。図2に示すように、サイドドア5は、外側下端に形成されたドア下端ライン51と、外側前端に形成されたドア前端ライン52とを有している。なお、自動車1において、リヤドア53は、なくても構わない。
ドア下端ライン51は、サイドシル部42に隣接した状態で、ドア開口部12の下縁に沿って車体前後方向に配置されて、前記見切り線Eと同一線上に配置されている。
ドア前端ライン52は、フロントフェンダ3の後端部35に隣接した状態で、ドア開口部12の前縁に沿って車体上下方向に配置されている。
図3及び図5に示すように、スチフナ6は、フロントピラロア部41の前壁41bを補強するための補強部材であり、例えば、鋼板等によって形成されている。スチフナ6は、前壁41bの下側部位の表面に重ねるように配置して、スポット溶接等によってフロントピラロア部41に固定される。
エクステンション7は、切欠部44の周辺、及びフロントピラロア部41の前壁41bの下端部を補強するための部材であり、例えば、鋼板等によって形成されている。エクステンション7は、スチフナ6の下端部位の表面及び延出部43の内壁に重ねて、スチフナ6から延出部43の内壁に沿って下方向及び車体外側方向に延びるように配置されている。エクステンション7は、スポット溶接等によってスチフナ6及び延出部43の内壁に固定されている。
次に、図1〜図6を参照しながら本発明の実施形態に係る自動車の車体側部構造の作用を説明する。
つまり、サイドシル部42及び延出部43は、車体の外装パネルを構成している。このため、従来の車両に使用されていた樹脂製ガーニッシュ(サイドシルプロテクタ)が不要となり、部品点数及び組付工数を削減してコストの低減を図ることができる。
このため、図1に示すフード2との見切り線Fをフード2側に寄せた状態にフロントフェンダ3を深絞り加工することが可能となる。そして、見切り線Fの車体前側をヘッドランプユニッット13の内側付近に配置して、フード2の形状を車体前側に向かって先細形状にしたデザインにすることも可能となる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
図7は、本発明の実施形態に係る自動車の車体側部構造の変形例を示す図であり、ステイを車体に固定するときの状態を示す要部拡大正面図である。
この場合、ステイ9は、上端部91が、フロントフェンダ3Aの後側下端部33Aに形成された連結部3Aaにボルト(図示省略)または溶接によって連結され、下端部92が、フロントピラロア部41の固定孔41cに締結部材Tによって固定される。ステイ9は、金属製板材をプレス成形して形成されたブラケットからなる。
2 フード
3,3A フロントフェンダ
4 サイドアウタパネル
5 サイドドア
6 スチフナ
7 エクステンション
9 ステイ
31 ホイールアーチ部
32,32A 取付部
33,33A 後側下端部
41 フロントピラロア部
41a 下端
42 サイドシル部
42a 前端
43 延出部
43a 上縁
44 切欠部
51 ドア下端ライン
91 上端部
92 下端部
E,F 見切り線
θ 取付部の開き角度
Claims (4)
- 上下方向に延びるフロントピラロア部と、該フロントピラロア部の下端から後方向に延びるサイドシル部と、を有するサイドアウタパネルと、
該サイドアウタパネルの前側に取り付けられてホイールアーチ部を有するフロントフェンダと、を備えた自動車の車体側部構造であって、
前記サイドアウタパネルは、前記サイドシル部の前端を前記ホイールアーチ部まで延長する延出部と、該延出部と前記フロントピラロア部との間に配置された切欠部と、を有すると共に、前記延出部の上縁を、サイドドアのドア下端ラインと一致させて配置し、
前記フロントフェンダは、前記サイドシル部との見切り線を前記ドア下端ラインの線上付近に形成し、
該フロントフェンダを前記サイドアウタパネルに取り付ける取付部は、前記フロントフェンダの後側下端部を車体内側方向へ鈍角に折曲して配置されていることを特徴とする自動車の車体側部構造。 - 上下方向に延びるフロントピラロア部と、該フロントピラロア部の下端から後方向に延びるサイドシル部と、を有するサイドアウタパネルと、
該サイドアウタパネルの前側に取り付けられてホイールアーチ部を有するフロントフェンダと、を備えた自動車の車体側部構造であって、
前記サイドアウタパネルは、前記サイドシル部の前端を前記ホイールアーチ部まで延長する延出部と、該延出部と前記フロントピラロア部との間に配置された切欠部と、を有すると共に、前記延出部の上縁を、サイドドアのドア下端ラインと一致させて配置し、
前記フロントフェンダは、前記サイドシル部との見切り線を前記ドア下端ラインの線上付近に形成し、
該フロントフェンダを前記サイドアウタパネルに取り付ける取付部は、前記フロントフェンダとは別体のステイからなり、
前記ステイは、上端部が前記フロントフェンダに連結され、下端部が前記フロントピラロア部に固定されることを特徴とする自動車の車体側部構造。 - 前記切欠部は、エクステンションによって補強されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車の車体側部構造。
- 前記サイドパネルに切欠形成された前記切欠部の周辺は、板状のエクステンションが重ねて配置されて補強されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自動車の車体側部構造。
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