JP4626967B2 - 面発光素子及びその製造方法 - Google Patents
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即ち、まず図10において、有機LED素子1は、表面にITO膜2aを形成した所謂ITO基板2上に、順次にホール輸送層3a、発光層3b及び電子輸送層3cから成る有機層3を積層させた後、最後にAl等の金属や透明電極から成る陰極4を対向電極として成膜することにより、構成されている。
このような構成の有機LED素子1によれば、図11に示すように、ITO膜2a(陽極)と陰極4間に駆動電圧を印加することより、有機層3の発光層3bから光Lが出射し、ITO基板2を通って、図10及び図11にて下方に出射するようになっている。
例えば、青色光と黄色光を組み合わせて一つの有機LED素子から白色発光を得る場合、青色光と黄色光をそれぞれ発する有機材料(例えば蛍光材料やリン光材料)を含む一つまたは二つ以上の発光層を積層させ、各発光層の発光強度を、その膜厚や不純物のドーピング濃度等の調整により制御することにより、白色発光を得るようにしている。
このMPE素子5は、例えば図12に示すように、ITO基板2上に、等電位面形成層6を介して、二つの上記有機層(発光ユニット)3を垂直方向に積層させることにより、構成されている。
ここで、上記等電位面形成層6は、例えば電荷発生層、CGL(Charge Generation Layer)層とも呼ばれている。
尚、このようなMPE素子5においては、一つの発光ユニット中に、二つ以上の発光層を設けて、白色光を得ることも可能である。
本発明において、高視野角度側とは、発光面に垂直な方向から40度から80度の角度側を想定するが、照明装置と観測者との距離や、複数照明装置が用いられる場合の各照明装置との距離など、照明装置の用途や配置により設定される。
そして、各発光層または発光ユニットのうち、視感度の高い波長帯域(例えば比視感度で0.5以上ある510から610nmの波長範囲)の光を発する発光ユニットからの分光放射輝度成分を増大させることにより、外部に照射される光の放射角度分布にて、発光面に垂直な方向からずれた高視野角度側での輝度が高められる。つまり、異なる発光スペクトルの複数の発光ユニットを組み合わせて構成された有機LED素子において、視感度の高い波長帯域の放射角度分布を制御することにより、発光面に垂直な方向からずれた高視野角度側で視感度の高い波長帯域の分光放射輝度成分を増やすことで、高視野角度側での輝度の向上した有機LED素子を得ることができる。
この場合、高視野角度側に照射される光が、視感度の高い波長帯域の分光放射輝度成分の割合が高められているので輝度が明るく感じられ、前方に居る観察者には、より明るい視界が得られることになる。
また、発光面にほぼ垂直な方向、即ち照明器具直下に照射される光は、従来と同様に、通常の発光スペクトル成分であることから、従来と同様に観察され得ることになり、発光色が問題となるようなことはない。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1において、有機LED素子10は、図12に示した従来のMPE素子と同様の構成であり、表面にITO膜11aを形成した所謂ITO基板11上に、順次にホール輸送層、発光層及び電子輸送層から成る第一の有機層12、CGL層13及び同様の構成の第二の有機層14と、を積層させた後、最後に陰極15を対向電極として成膜することにより、構成されている。
これにより、上記有機LED素子10は、それぞれ第一の有機層12、第二の有機層14から成る二つの発光ユニットを備えるようになっている。
そして、上記第一の有機層12からの青色光L1は、図2に示すような発光スペクトルを有している。
この場合、発光スペクトルのピーク波長は、471nm及び502nmであり、短波長(471nm)側のピーク強度が最大になっている。
そして、上記第二の有機層14からの黄色光L2は、図3に示すような発光スペクトルを有している。
ここで、この白色光は、CIE色度座標(0.336、0、334)で表わされるようになっている。
尚、図2乃至図4に示した各発光スペクトルは、何れも発光面、即ちITO基板11の下面に対して正面方向(法線方向)にて測定したものであり、縦軸は分光放射輝度値(W/m2・sr)をピーク強度値で規格化したもの、横軸は波長[nm]である。
即ち、上記各発光ユニットの有機層12、14及びITO膜11aの膜厚を、後述する手法を利用して適宜に調整することによって、上述した有機層12による青色光L1の発光スペクトルの視野角度依存性を制御している。
これにより、ITO基板11の法線方向から60度の視野角度において、有機層12による青色光L1の発光スペクトルは、図2とは異なり、図5に示すように、光学干渉効果によって、短波長(471nm)側のピーク強度が低下すると共に、長波長(502nm)側のピーク強度が上昇して、最大値を与えるようになっている。
ある視野角度(例えば法線方向から60度)における輝度増加分の評価は、以下の手順でおこなった。まず、有機LED素子に対して法線方向の分光放射輝度スペクトルを測定した。次に測定した分光放射輝度スペクトルに関して、最大ピーク強度における値にて規格化し、発光スペクトルを得た。本実施例では図4に示す法線方向でのスペクトルがこれに相当する。図13に示した明所視における標準比視感度曲線に基づいて、比視感度0.5以上に相当する領域(510nmから610nm)から0.8以上に相当する領域(526nmから586nm)に関して、各波長毎に「発光スペクトル強度×比視感度」を計算し、該当する波長領域にわたって積算した(表1に示した図4の計算値、に相当する)。本実施例では、1nm間隔の発光スペクトル強度、比視感度の値を使って計算した。
次に有機LED素子の法線方向から60度の角度で分光放射輝度スペクトルを測定し、上記と同様の作業をおこない、当該波長領域の「発光スペクトル強度×比視感度」を計算した(表1に示した図6の計算値、に相当する)。これらの値を使って、式1に示した「増加分(%)」を求める計算式により、分光放射輝度成分の強度の増大分を計算し、評価した。その結果、比視感度0.5以上に相当する、波長範囲510nmから610nmで輝度が増加していることが確認できた。
このため、従来の有機LED素子10の製造装置をそのまま利用して製造することが可能であり、追加の設備投資等が不要である。
例えば、面発光素子の膜厚構成は、正面方向と所望の角度方向について、それぞれ次の光学距離を満たすように設計される。原則としては、各発光領域からミラーとなる陰極界面、および屈折率差の大きいガラス/ITO界面(一般的なガラスではn=1.52、ITOは1.8前後)までの光学距離を、正面方向、所望の角度方向、それぞれについて、各方向での所望の波長の光が光学干渉効果により強めあうように設定する。
ここで、任意の光学系では一般的に、発光領域からある波長λ(nm)の光が発生し、反射により位相が反転する物質による界面までの光学距離は1/4×λの奇数倍とし、反射により位相が反転しない物質による界面までの光学距離は1/4×λの偶数倍とすることで、光学干渉効果により発光強度を増大することができる。
一般的な有機LED素子の内部では屈折率差の大きいガラス/ITO界面と、ミラーとなる金属陰極間での反射が主であるが、異なる屈折率を持つ有機材料による有機層界面によっても反射が生じること、素子構成に固有の発光層内での発光強度分布が存在すること等により、光学干渉効果を加味した素子設計は、複雑である。
従って、第一の実施形態においては、各発光ユニットにおける発光領域からの金属陰極界面およびガラス/ITO界面までの光学距離を、発光強度が強め合う前記条件(それぞれ1/4×λの奇数倍、および1/4×λの偶数倍)となるように設定することを、有機材料層等の膜厚調整の第一の基準とした。なお、実施形態において、波長λ(nm)は、各発光色の発光スペクトルのピーク波長を用いて検討した。また、発光領域において発光強度が最大となると想定される位置を発光領域の位置として光学距離の計算に用いた。
さらに、第一の実施形態においては、青色波長と黄色波長のそれぞれについて強めあう光学距離の条件を求めた後に、両者を合わせて白色となる条件を選択する必要、視野角度60度付近が緑みの白色となる条件を選択する必要、および、各発光色のユニットを同じ電流密度で電流が流れるため、各発光材料の発光効率の違い等を考慮する必要等から、調整を加えた。調整とは、発光領域からITO側の膜厚および屈折率、発光領域から金属面側の膜厚および屈折率、ITO膜厚および屈折率、金属面の反射率等により行われるが、有機材料の場合には、屈折率は大きく変わらないため、主に、有機層膜厚によっておこなった。
従って、このように、ユニット数や色調整の観点からも、光学距離は調整を加えられるため、前記光学距離は、厳密に1/4×λの整数倍とされるわけではない。
上記第一の実施形態においては、上記パラメータを用いた簡易なシミュレーションにより光学膜厚を見積もり、素子作製において膜厚の微調整を施して得たものであり、法線方向において、青色の光学距離はガラス/ITO界面側で6.7/4×λ、金属陰極側で3.4/4×λ、また黄色の光学距離はガラス/ITO界面側で7.7/4×λ、金属陰極側で0.5/4×λであった。
そして、これらの青色光L1及び黄色光L2が下方に向かって進んで、ITO基板11の下面から下方に向かって出射すると共に、これらの青色光L1及び黄色光L2が互いに混色されて、白色光Lとなって、下方に向かって照射されることになる。
その際、ITO基板11の下面に対して法線方向に関しては、従来と同様に図4に示す発光スペクトルを有する白色光Lが照射されることになり、明るい視野が得られる。
また、明所視における比視感度が0.5以上の波長帯域の分光放射輝度成分量について、放射角度分布における発光面に垂直な方向における当該成分量より、発光面に垂直な方向から一定角度ずれた方向における当該成分量を10%以上高め、発光面に垂直な方向から一定角度ずれた方向における輝度を10%以上高めることにより、観察者にとって視認性の高い照明器具を提供することができる。
このようにして、本発明実施形態による有機LED素子10によれば、ITO膜11aや有機層12、14の膜厚を適宜に調整し、あるいはITO膜11aの屈折率を適宜に調整することにより、有機層12からの発光スペクトルを変形させて、ITO基板11の法線方向からずれた高視野角度側にて、視感度の高い波長帯域の強度を高めることにより、法線方向の輝度はそのまま保持されながら、照射光の高視野角度側での輝度が向上することになり、視認性の高い照射光が得られる。
即ち、図8は、有機LED素子20から外部に照射される白色光の輝度を、ITO基板11の正面(法線方向)を0度として、0度から80度まで測定し、0度から−80度までは上記法線に関して線対称であるとして作図したものが、符号Wで示す特性曲線である。
符号Bで示す青色成分は、50度付近の高視野角度にて最も強くなる放射角度分布を示した。このことは、青色発光材料由来の成分は視野角度によりスペクトルが変化し、50度付近においては、緑色成分をも有するため相対的に輝度が高くなったものと考えられる。
これに対して、符号Yで示す黄色成分は、図8にて符号Dで示す所謂ランバシアン発光分布(I=Io・cosθで表わされる)と比較して、ほぼ同様な放射角度分布であり、30度から80度で輝度がわずかに低下している。
そして、符号Wで示す白色光の放射角度分布は、40度から80度で上記ランバシアン発光分布を上回る輝度となっている。
従って、本有機LED素子20においては、視感度の高い波長域510nmから610nmにスペクトルを有する青色成分の放射角度分布を50度付近の高視野角度において強め、緑みの白色光を得たことで、従来のランバシアン発光分布を有する有機LED素子と比較して、高視野角度側で輝度が向上していることが分かる。このことは、各発光ユニット即ち各有機層12及び14毎の放射角度分布を制御することにより、高視野角度側の強度を高めることができることを示唆するものである。
尚、0度から40度の視野角度においては、本有機LED素子20の輝度は、ランバシアン発光分布の場合と比較して、僅かに低くなっている。
従って、本有機LED素子10、20を照明器具に組み込んだ場合、例えば図9に示すように、観察者Pの眼に対して斜め方向に位置する照明器具30からの高視野角度の光が、視感度の高い波長帯域で強度が高められていることから、観察者Pにとってより明るく感じられることになる。例えば目の高さから1.5m高い位置に照明器具が配置されている場合、器具の法線方向から40°の光は約1.3m前方、同様に80°の光は8.5m前方からの発光が直接目に入射することになる。
また、直上の照明器具31からの照射光は、従来の有機LED素子からの照射光と同様に白色光であることから、観察者Pが照射光により照明された物体等を観察する場合に、正しく色彩を判断することが可能であり、色的に問題とはならない。
図7において、有機LED素子20は、図1に示した有機LED素子10とほぼ同じ構成であるので、同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
第二の実施形態として、前記第一の実施形態と同様に二つの発光ユニットを備えた有機LED素子を作製した。前記第一の実施形態とは、ITOの膜厚および有機層の膜厚が異なる。
発光部位置から陰極による金属反射面までの光学距離が長い第一発光ユニット側、すなわち、陽極となるITOガラス基板(ITO厚さ1800Å)上に、発光波長の短い青色発光層を有する第一発光ユニットを蒸着し、つづいて黄色発光層を有する第二発光ユニットを積層した。
第一発光ユニットはホール注入層(600Å)/ホール輸送層(200Å)/青色発光層(300Å)/電子輸送層(300Å)からなる1400Åの厚みとした。この第一発光ユニット上に300ÅのCGL層を蒸着した後、第二発光ユニットとしてホール注入層(500Å)/ホール輸送層(200Å)/黄色発光層(300Å)/電子輸送層(200Å)を蒸着し、第一発光ユニット、およびCGL層と合わせて2900Åの膜厚とし、最後に金属からなる陰極を蒸着した。法線方向において、青色の光学距離はガラス/ITO界面側で4.2/4×λ、金属陰極側で3.1/4×λ、また黄色の光学距離はガラス/ITO界面側で5.4/4×λ、金属陰極側で0.5/4×λであった。
図14は、作製した素子の法線方向での発光スペクトル(実線)と、法線方向から60度の角度で観測した発光スペクトル(破線)である。
作製した素子の法線方向での発光スペクトルによる白色光はCIE色度座標(0.318、0.338)であり、法線方向から60度の角度で観測した発光スペクトルではCIE色度座標(0.305、0.378)を示した。
両者の発光スペクトルを比較したところ、高視野角度(60度)のスペクトルでは、480から570nmの波長領域でスペクトル成分が、法線方向のスペクトルと比較して増加していることがわかった。また、比視感度0.5以上に相当する領域(510nmから610nm)での分光放射輝度成分の増加量を求めたところ、+17%であった。
さらに、これらMPE素子においては、光学干渉効果によりスペクトル波形、発光強度を調整しやすい短波長側の発光色のユニットを、反射率の高い電極から遠い側の発光ユニットとして配置することが好ましい。ガラス、ITO、有機材料等、用いられる材料の屈折率は短波長側で高いという性質を有するため、物理的な膜厚が同じでも短波長に対する光学距離は、長波長に対する光学距離より長くなるためである。また、光学距離が長いほど、1/4×λの整数倍、つまり、強めあい・弱めあいのポイントを多く有するため、所望の発光スペクトルへ調整するにあたり、選択できる自由度が高くなるためである。
Claims (4)
- 互いに異なる発光波長を有する発光スペクトルの複数の発光層または発光ユニットを組み合わせて構成された面発光素子において、510nmから610nmの波長帯域の分光放射輝度成分量は、放射角度分布における発光面に垂直な方向における当該成分量より、発光面に垂直な方向から一定角度ずれた方向における当該成分量が高く、
前記発光面に垂直な方向から一定角度ずれた方向の照射光の輝度は、発光面に垂直な方向の照射光の輝度より高いことを特徴とする面発光素子。 - 前記発光層または発光ユニットが、有機層から構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の面発光素子。
- 前記発光ユニットが、等電位面形成層を介して、互いに積層されたMPE素子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の面発光素子。
- 前記面発光素子は、金属からなる反射性の電極を含み、
前記発光ユニットとして、複数の発光色の発光ユニットを含み、
短波長側の発光色の前記発光ユニットを、長波長側の発光色の前記発光ユニットより前記反射性の電極から遠い位置に配置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の面発光素子。
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