上記特許文献1のような構成を有する液晶装置では、第1の基板側に設けられた内蔵位相差板の存在により、反射表示領域の液晶層の厚さが透過表示領域の液晶層の厚さより小さく設定されるため、基板間隔を規定するためのスペーサは、一般的に、液晶層の厚さの薄い反射表示領域側に設けられる。
しかしながら、そのような液晶装置において、内蔵位相差板は、例えば、光重合性の液晶を重合硬化させることにより形成されるため、内蔵位相差板は一般的には柔らかく、内蔵位相差板上にスペーサを形成するのには困難を伴う。例え、位相差層上にスペーサを形成することができたとしても、その柔らかさゆえ、スペーサとしての機能を発揮させることは困難であるといった課題がある。
また、かかる液晶装置において、内蔵位相差板が反射表示領域において畝状に設けられた場合には、カラーフィルタが設けられた第1の基板側において、透過表示領域と反射表示領域との間には、所定の段差が形成される。これにより、前記第1の基板の製造過程において、透過表示領域及び反射表示領域に対して液晶層の配向を規制する配向膜を塗布した場合、その段差により、反射表示領域に位置する内蔵位相差層上に塗布された配向膜の一部が、当該反射表示領域に挟む位置に相隣接する1つの透過表示領域側及び他の透過表示領域側に夫々流れ込む。このとき、1つの透過表示領域側に流れ込む配向膜の量と、他の透過表示領域側に流れ込む配向膜の量とは必ずしも同一になるとは限らない。したがって、もし、このとき、1つの透過表示領域側に流れ込む配向膜の量と、他の透過表示領域側に流れ込む配向膜の量とが不均一になってしまった場合には、前記第1の基板において、配向膜の厚さが厚く形成された透過表示領域と、配向膜の厚さが薄く形成された透過表示領域とが存在することになり、配向膜の厚さムラが生じてしまう。そうすると、その配向膜の厚さムラを原因として、ライン状の表示ムラが発生し、表示品位が低下してしまうといった課題がある。
さらに、かかる液晶装置では、一般的に配向膜の厚さは薄い為、内蔵位相差板の成分が配向膜を通じて液晶層へ溶出してしまい、表示品位が低下してしまうといった課題がある。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、半透過反射型の横電界方式の液晶装置において、基板間隔を規定するためのスペーサを確実に形成すること、位相差層の存在に起因した配向膜の厚さムラをなくすことで表示品位の低下を防止すること、液晶層側への位相差層の成分の溶出を防止して表示品位の低下を防止すること、などを可能とする液晶装置及びそれを用いた電子機器を提供することを課題とする。
本発明の1つの観点では、液晶装置は、液晶層を挟持する一対の第1及び第2の基板を備え、前記第1の基板は、第1の電極と、前記第1の電極との間で電界を発生させる第2の電極と、反射層と、を備えると共に、前記第2の基板は、複数の色の着色層と、2分の1波長の位相差を有する位相差層と、を備え、前記第1の基板の前記第1の電極と前記第2の基板との重なり合う領域に対応するサブ画素領域内には、前記第1の基板側から前記液晶層に入射された光を前記第2の基板側に透過させて透過表示を行う透過表示領域と、前記反射層によって前記第2の基板側から前記液晶層に入射された光を前記第2の基板側に反射させて反射表示を行う反射表示領域とが設けられ、少なくとも前記透過表示領域の前記液晶層の厚さは前記反射表示領域の前記液晶層の厚さより大きく設定されており、前記反射表示領域に対応する前記液晶層は4分の1波長の位相差を有すると共に、前記透過表示領域に対応する前記液晶層は2分の1波長の位相差を有し、前記第1の基板の前記液晶層側に対し反対側には、第1の光学軸を有する第1の偏光板が設けられていると共に、前記第2の基板の前記液晶層側に対し反対側には、前記第1の光学軸に対して直交する第2の光学軸を有する第2の偏光板が設けられ、前記第1の偏光板の前記第1の光学軸及び前記第2の偏光板の前記第2の光学軸のいずれか一方は、前記液晶層の液晶分子の配向軸に対して平行であり、前記位相差層は、前記液晶層と前記第2の偏光板との間において、少なくとも前記反射表示領域に対応する位置に設けられ、前記第1の基板及び前記第2の基板のいずれか一方であって、前記位相差層と平面的に重ならない領域には、前記第1の基板と前記第2の基板の間隔を規定するためのスペーサが設けられている。
上記の液晶装置は、液晶層を挟持する一対の第1及び第2の基板を備える。第1の基板は、第1の電極(例えば、画素電極)と、第1の電極との間で電界を発生させる第2の電極(例えば、共通電位が印加される共通電極)と、例えばアルミニウムなどの光反射性を有する反射層と、を備える。一方、第2の基板は、複数の色の着色層と、2分の1波長の位相差を有する位相差層と、を備える。ここで、位相差層は、光重合性の液晶を重合硬化させることにより形成され、液晶モノマー重合体としての高分子液晶からなるのが好ましい。好適な例では、前記電界は、液晶層の駆動時に第1の基板の基板面に対し略平行な方向に強い電界成分を有するフリンジフィールドとすることができる。これにより、横電界方式の一例としてのFFS方式の液晶装置を構成することができる。また、第1の基板の第1の電極と第2の基板との重なり合う領域に対応するサブ画素領域内には、第1の基板側から液晶層に入射された光を第2の基板側に透過させて透過表示を行う透過表示領域と、反射層によって第2の基板側から液晶層に入射された光を第2の基板側に反射させて反射表示を行う反射表示領域とが設けられている。そして、少なくとも透過表示領域の液晶層の厚さは反射表示領域の液晶層の厚さより大きく設定されており、反射表示領域に対応する液晶層は4分の1波長の位相差を有すると共に、透過表示領域に対応する液晶層は2分の1波長の位相差を有する。これにより、この液晶装置は、マルチギャップ構造を備えた半透過反射型の液晶装置を構成している。
また、第1の基板の液晶層側に対し反対側には、第1の光学軸(例えば、透過軸)を有する第1の偏光板が設けられていると共に、第2の基板の液晶層側に対し反対側には、第1の光学軸に対して直交する第2の光学軸(例えば、透過軸)を有する第2の偏光板が設けられ、第1の偏光板の第1の光学軸及び第2の偏光板の第2の光学軸のいずれか一方は、液晶層の液晶分子の配向軸に対して平行である。
ここで、位相差層は、上記したように光重合性の液晶を重合硬化させることにより形成される。このため、位相差層は一般的に柔らかく、位相差層上にスペーサを形成するのには困難を伴う。例え、位相差層上にスペーサを形成することができたとしても、その柔らかさゆえ、スペーサとしての機能を発揮させることはできない。
この点、この液晶装置では、位相差層は、液晶層と第2の偏光板との間において、少なくとも反射表示領域に対応する位置に設けられ、第1の基板及び第2の基板のいずれか一方であって、材質的に柔らかな位相差層と平面的に重ならない領域には、第1の基板と第2の基板の間隔を規定するためのスペーサが設けられている。
これにより、製造上の困難を伴うことなく、スペーサを確実に形成することが可能となり、また、スペーサとしての機能を発揮させることが可能となる。好適な例では、前記スペーサは前記第2の基板側に設けられていることが好ましい。このように、スペーサを第2の基板側に設けることで、製造過程において、スペーサを位相差層と平面的に重ならない位置に確実に設けることが可能となる。
上記の液晶装置の一つの態様では、前記スペーサは、当該スペーサを確実に支持することが可能な領域、例えば前記液晶層の厚さが前記反射表示領域の前記液晶層の厚さよりも大きい領域に設けられていることが好ましい。
上記の液晶装置の他の態様では、前記サブ画素領域は行列状に複数設けられ、前記第2の基板側であって、少なくとも前記行の方向に相隣接する前記サブ画素領域の間には遮光層が設けられ、前記スペーサは、前記遮光層と平面的に重なる位置に設けられている。これにより、スペーサに起因した光漏れなどが万が一生じた場合でも、その光漏れは遮光層により遮光される。よって、スペーサに起因して表示品位が低下することを防止できる。
上記の液晶装置の他の態様では、前記位相差層は、任意の前記サブ画素領域内に設けられた前記反射表示領域と、当該任意の前記サブ画素領域に対して所定の方向に相隣接する他の前記サブ画素領域内に設けられた他の前記反射表示領域との間に対応する位置にスリットを有する。好適な例では、前記スリットは、前記位相差層において、当該位相差層の厚さ方向に貫通していない。
ここで、比較例として、位相差層にスリット(溝)が形成されていない場合を想定する。上記のように位相差層は、少なくとも反射表示領域に対応する位置に設けられている。つまり、位相差層は、少なくとも反射表示領域において畝状に設けられている。このため、第2の基板側において、透過表示領域と反射表示領域との間には、所定の段差が形成される。これにより、第2の基板の製造過程において、透過表示領域及び反射表示領域に対して液晶層の配向を規制する配向膜を塗布した場合、その段差により、反射表示領域に位置する位相差層上に塗布された配向膜の一部が、当該反射表示領域に対して、所定の方向(例えば、ソース線の延在方向)に相隣接する1つの透過表示領域側及び他の透過表示領域側に夫々流れ込む。このとき、1つの透過表示領域側に流れ込む配向膜の量と、他の透過表示領域側に流れ込む配向膜の量とは必ずしも同一になるとは限らない。したがって、もし、このとき、1つの透過表示領域側に流れ込む配向膜の量と、他の透過表示領域側に流れ込む配向膜の量とが不均一になってしまった場合には、第2の基板において、配向膜の厚さが厚い透過表示領域と、配向膜の厚さが薄い透過表示領域とが存在することになり、配向膜の厚さムラが生じてしまう。そうすると、比較例では、その配向膜の厚さムラを原因として、ライン状の表示ムラが発生してしまうといった課題がある。
この点、この態様では、位相差層は、任意のサブ画素領域内に設けられた反射表示領域と、当該任意のサブ画素領域に対して所定の方向(例えば、前記ソース線の延在方向に対して直交する方向に延在する、後述のゲート線の第2配線又は共通配線の延在方向)に相隣接する他のサブ画素領域内に設けられた他の反射表示領域との間に対応する位置にスリットを有する。このため、第2の基板側の配向膜の形成時において、万が一、1つの透過表示領域側に流れ込む配向膜の量と、他の透過表示領域側に流れ込む配向膜の量とが不均一になってしまった場合でも、位相差層に設けられたスリットを通じて、配向膜の流れ込み量の多い方の1つ(又は他)の透過表示領域側から、配向膜の流れ込み量の少ない方の他(又は1つ)の透過表示領域側へと配向膜が流動するため、1つの透過表示領域側に形成される配向膜の厚さと、他の透過表示領域側に形成される配向膜の厚さとが均一となる。よって、そのスリットの働きにより、配向膜の厚さムラが生じるのを防止でき、これにより表示ムラが発生するのを防止できる。
好適な例では、前記位相差層には、前記所定の方向に相隣接する前記サブ画素領域の間において、前記スリットが設けられた領域と、前記スリットが設けられてない領域とが存在していることが好ましい。
上記のように、スペーサは、第2の基板側において、材質的に柔らかな位相差層と平面的に重ならない領域に設けられている。ここで、もし、スペーサを、位相差層のスリットの近傍若しくはスリットの延在方向の延長線上に設けた場合には、そのスペーサが、第2の基板における、液晶層の配向を規制する配向膜の形成時に、反射表示領域を挟む位置に設けられた、1つの透過表示領域と他の透過表示領域との間におけるスリットを通じた前記配向膜の流れを堰き止めてしまう虞がある。
そこで、このような不具合の発生を防止する為、上記の液晶装置の他の態様では、前記スペーサは、任意の前記サブ画素領域を基準として、前記スリットから最も離れた位置に設けられている。好適な例では、前記スペーサは、前記スリットの延在方向の延長線上に位置していないことが好ましい。これにより、前記配向膜の形成時において、スペーサが位相差層のスリットを通じた前記配向膜の流れを堰き止めるのを防止できる。その結果、前記配向膜の厚さムラが生じるのを防止できる。
上記の液晶装置の他の態様では、少なくとも前記位相差層と前記液晶層との間には前記位相差層を覆う保護層が設けられており、前記保護層は、任意の前記サブ画素領域内に設けられた前記反射表示領域と、当該任意の前記サブ画素領域に対して所定の方向に相隣接する他の前記サブ画素領域内に設けられた他の前記反射表示領域との間に対応する位置にスリットを有する。
一般的に、位相差層上に形成される前記配向膜の厚さは薄いため、これを原因として、位相差層に含まれる成分が前記配向膜を通じて液晶層側へ溶出し、これによって表示品位が低下する恐れがある。また、位相差層は、上記したように、光重合性の液晶を重合硬化させることにより形成され、位相差層は一般的に柔らかいので、前記配向膜の表面に対するラビング処理時などに発生する機械的な衝撃等に対して極めて弱い。
この点、この態様では、少なくとも位相差層と液晶層との間には前記位相差層を覆う保護層が設けられている。ここで、保護層の形成材料としては、例えば、アクリル樹脂などの透明樹脂などが挙げられる。かかる構成によれば、保護層のバリアとしての働きにより、位相差層に含まれる成分が前記配向膜を通じて液晶層側へ溶出するのを抑えることができ、これにより表示品位が低下するのを防止できる。また、保護層の補強層としての働きにより、前記配向膜の表面に対するラビング処理時などに発生する機械的な衝撃等に対して位相差層が保護される。
また、この態様では、前記保護層は、任意の前記サブ画素領域内に設けられた前記反射表示領域と、当該任意の前記サブ画素領域に対して所定の方向(例えば、前記ソース線の延在方向に対して直交する方向に延在する、後述のゲート線の第2配線又は共通配線の延在方向)に相隣接する他の前記サブ画素領域内に設けられた他の前記反射表示領域との間に対応する位置にスリットを有する。このため、第2の基板側の前記配向膜の形成時において、万が一、1つの透過表示領域側に流れ込む配向膜の量と、他の透過表示領域側に流れ込む配向膜の量とが不均一になってしまった場合でも、保護層に設けられたスリットを通じて、前記配向膜の流れ込み量の多い方の1つ(又は他)の透過表示領域側から、前記配向膜の流れ込み量の少ない方の他(又は1つ)の透過表示領域側へと前記配向膜が流動するため、1つの透過表示領域側に形成される前記配向膜の厚さと、他の透過表示領域側に形成される前記配向膜の厚さとが均一となる。よって、その保護層のスリットの働きにより、前記配向膜の厚さムラが生じるのを防止でき、これにより表示ムラが発生するのを防止できる。
好適な例では、前記保護層には、前記所定の方向に相隣接する前記サブ画素領域の間において、前記他のスリットが設けられた領域と、前記他のスリットが設けられてない領域とが存在していることが好ましい。
上記の液晶装置の他の態様では、前記スペーサは、任意の前記サブ画素領域を基準として、前記他のスリットから最も離れた位置に設けられている。好適な例では、前記スペーサは、前記他のスリットの延在方向の延長線上に位置していないことが好ましい。これにより、前記配向膜の形成時に、相隣接する透過表示領域間において、スペーサが保護層の他のスリットを通じた前記配向膜の流れを堰き止めるのを防止できる。その結果、前記配向膜の厚さムラが生じるのを防止できる。
上記の液晶装置の他の態様では、前記他のスリットは、前記保護層において、当該保護層の厚さ方向に貫通していないことが好ましい。これにより、他のスリットの位置に対応する、前記配向膜と位相差層との間にバリアとしての保護層が存在することになり、より一層、位相差層に含まれる成分が前記配向膜を通じて液晶層側へ溶出するのを抑えることができる。
本発明の他の観点では、液晶装置は、液晶層を挟持する一対の第1及び第2の基板を備え、前記第1の基板は、第1の電極と、前記第1の電極との間で電界を発生させる第2の電極と、反射層と、を備えると共に、前記第2の基板は、複数の色の着色層と、2分の1波長の位相差を有する位相差層と、を備え、前記第1の基板の前記第1の電極と前記第2の基板との重なり合う領域に対応するサブ画素領域内には、前記第1の基板側から前記液晶層に入射された光を前記第2の基板側に透過させて透過表示を行う透過表示領域と、前記反射層よって前記第2の基板側から前記液晶層に入射された光を前記第2の基板側に反射させて反射表示を行う反射表示領域とが設けられ、少なくとも前記透過表示領域の前記液晶層の厚さは前記反射表示領域の前記液晶層の厚さより大きく設定されており、前記反射表示領域に対応する前記液晶層は4分の1波長の位相差を有すると共に、前記透過表示領域に対応する前記液晶層は2分の1波長の位相差を有し、前記第1の基板の前記液晶層側に対し反対側には、第1の光学軸を有する第1の偏光板が設けられていると共に、前記第2の基板の前記液晶層側に対し反対側には、前記第1の光学軸に対して直交する第2の光学軸を有する第2の偏光板が設けられ、前記第1の偏光板の前記第1の光学軸及び前記第2の偏光板の前記第2の光学軸のいずれか一方は、前記液晶層の液晶分子の配向軸に対して平行であり、前記位相差層は、任意の前記サブ画素領域内に設けられた前記反射表示領域と、当該任意の前記サブ画素領域に対して所定の方向に相隣接する他の前記サブ画素領域内に設けられた他の前記反射表示領域との間に対応する位置にスリットを有する。
上記の液晶装置は、液晶層を挟持する一対の第1及び第2の基板を備える。第1の基板は、第1の電極(例えば、画素電極)と、第1の電極との間で電界を発生させる第2の電極(例えば、共通電位が印加される共通電極)と、例えばアルミニウムなどの光反射性を有する反射層と、を備える。一方、第2の基板は、複数の色の着色層と、2分の1波長の位相差を有する位相差層と、を備える。ここで、位相差層は、光重合性の液晶を重合硬化させることにより形成され、液晶モノマー重合体としての高分子液晶からなるのが好ましい。好適な例では、前記電界は、液晶層の駆動時に第1の基板の基板面に対し略平行な方向に強い電界成分を有するフリンジフィールドとすることができる。これにより、横電界方式の一例としてのFFS方式の液晶装置を構成することができる。また、第1の基板の第1の電極と第2の基板との重なり合う領域に対応するサブ画素領域内には、第1の基板側から液晶層に入射された光を第2の基板側に透過させて透過表示を行う透過表示領域と、反射層によって第2の基板側から液晶層に入射された光を第2の基板側に反射させて反射表示を行う反射表示領域とが設けられている。そして、少なくとも透過表示領域の液晶層の厚さは反射表示領域の液晶層の厚さより大きく設定されており、反射表示領域に対応する液晶層は4分の1波長の位相差を有すると共に、透過表示領域に対応する液晶層は2分の1波長の位相差を有する。これにより、この液晶装置は、マルチギャップ構造を備えた半透過反射型の液晶装置を構成している。
また、第1の基板の液晶層側に対し反対側には、第1の光学軸(例えば、透過軸)を有する第1の偏光板が設けられていると共に、第2の基板の液晶層側に対し反対側には、第1の光学軸に対して直交する第2の光学軸(例えば、透過軸)を有する第2の偏光板が設けられ、第1の偏光板の第1の光学軸及び第2の偏光板の第2の光学軸のいずれか一方は、液晶層の液晶分子の配向軸に対して平行である。
特に、この態様では、位相差層は、液晶層と第2の偏光板との間において、少なくとも反射表示領域に対応する位置に設けられ、反射表示領域に位置する、第2の基板と液晶層との間に設けられた層(例えば、前記位相差層、或いは、前記位相差層と前記液晶層の間に設けられる保護層)は、任意の前記サブ画素領域内に設けられた前記反射表示領域と、当該任意の前記サブ画素領域に対して所定の方向(例えば、前記ソース線の延在方向に対して直交する方向に延在する、後述のゲート線の第2配線又は共通配線の延在方向)に相隣接する他の前記サブ画素領域内に設けられた他の前記反射表示領域との間に対応する位置にスリットを有する。
このため、第2の基板側の配向膜の形成時において、万が一、1つの透過表示領域側に流れ込む配向膜の量と、他の透過表示領域側に流れ込む配向膜の量とが不均一になってしまった場合でも、前記反射表示領域に位置する、第2の基板と液晶層との間に設けられた層に設けられたスリットを通じて、配向膜の流れ込み量の多い方の1つ(又は他)の透過表示領域側から、配向膜の流れ込み量の少ない方の他(又は1つ)の透過表示領域側へと配向膜が流動するため、1つの透過表示領域側に形成される配向膜の厚さと、他の透過表示領域側に形成される配向膜の厚さとが均一となる。よって、そのスリットの働きにより、配向膜の厚さムラが生じるのを防止でき、これにより表示ムラが発生するのを防止できる。
本発明の更に他の観点では、上記の液晶装置を表示部として備える電子機器を構成することができる。
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
[第1実施形態]
(液晶装置の構成)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る液晶装置の電極及び配線構成を中心とした平面構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る液晶装置の電極及び配線構成を模式的に示す平面図である。図1では、紙面手前側(観察側)にカラーフィルタ基板92が、また、紙面奥側に素子基板91が夫々配置されている。また、図1において、カラーフィルタ基板92側に設けられた矩形状の平面形状を有するR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の着色層22の各々に対応する領域と、素子基板91側に設けられた各画素電極9との重なり合う領域は、表示の最小単位となる1つのサブ画素領域(一サブ画素領域)Gを示している。一サブ画素領域Gがマトリクス状に並べられた領域が、文字、数字、図形等の画像が表示される有効表示領域V(2点鎖線により囲まれる領域)である。有効表示領域Vの外側の領域は表示に寄与しない額縁領域38である。
液晶装置100は、素子基板91と、その素子基板91に対向して配置されるカラーフィルタ基板92とが枠状のシール材45を介して貼り合わされ、そのシール材45で区画される領域に、ホモジニアス配向を呈する液晶が封入されて液晶層40が形成されてなる。
ここで、この液晶装置100は、電極が形成された素子基板91側において、当該素子基板91の基板面に略平行な方向にフリンジフィールド(電界E)を発生させて液晶分子の配向を制御する、横電界方式の一例としてのFFS(Fringe Field Switching)方式の液晶装置である。また、この液晶装置100は、明所では外光を利用して反射表示を行う反射表示モードと、暗所ではバックライトなどの光源を利用して透過表示を行う透過表示モードとを有する半透過反射型の液晶装置である。さらに、この液晶装置100は、R、G、Bの3色の着色層22を用いて構成されるカラー表示用の液晶装置であると共に、スイッチング素子としてα−Si型のTFT(Thin Film Transistor)素子30を用いたアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置である。
まず、素子基板91の電極及び配線構成を中心とした平面構成について説明する。
素子基板91は、主として、複数のソース線4、複数のゲート線3、複数の共通配線2、配線37、複数のα−Si型TFT素子30、複数の共通電極7、複数の画素電極9、ドライバIC42、外部接続用配線35、及びFPC43を有する。
素子基板91は、カラーフィルタ基板92の一辺側から外側へ張り出してなる張り出し領域36を有しており、その張り出し領域36上には、液晶を駆動するためのドライバIC42が実装されている。ドライバIC42の入力側の各電極(図示略)は、各外部接続用配線35の一端側と電気的に接続されていると共に、各外部接続用配線35の他端側はFPC43の各電極(図示略)と電気的に接続されている。FPC43の一端側(図示略)は、後述する電子機器と電気的に接続されている。
各ソース線4は、ドライバIC42の長手方向に適宜の間隔をおいて、且つ張り出し領域36から有効表示領域Vにかけて延在するように形成されている。各ソース線4の一端側は、ドライバIC42の出力側の各電極(図示略)に電気的に接続されている。
各ゲート線3は、ドライバIC42の長手方向に適宜の間隔をおいて、且つ張り出し領域36から有効表示領域Vにかけて延在するように形成された第1配線3aと、その第1配線3aの終端部から有効表示領域V内に延在するように形成された第2配線3bとを備えている。各ゲート線3の第1配線3aの一端側は、ドライバIC42の出力側の各電極(図示略)に電気的に接続されている。
各共通配線2は、各ゲート線3に対応して設けられ、当該各ゲート線3の第2配線3bと一定の間隔をおいて且つ同方向に延在するように形成されている。各共通配線2は、例えばシール材45の隅の位置E1において配線37と電気的に接続されている。配線37は、ドライバIC42のCOMに対応する出力用電極に電気的に接続されている。
各α−Si型TFT素子30は、各ソース線4と各ゲート線3の第2配線3bの交差位置に対応して設けられ、各ソース線4及び各ゲート線3の各々に電気的に接続されている。
各共通電極7は、各サブ画素領域Gに対応して設けられ、対応する各共通配線2と電気的に接続されている。このため、各共通電極7には、ドライバIC42のCOMに対応する出力用電極から、対応する各共通配線2を通じて共通電位が印加される。
各画素電極9は、各サブ画素領域Gに対応して設けられ、対応する各α−Si型TFT素子30に電気的に接続されている。
次に、カラーフィルタ基板92の平面構成について説明する。
カラーフィルタ基板92は、光を遮光する黒色樹脂などからなる遮光層(一般に「ブラックマトリクス」と呼ばれ、以下では、単に「BM」と略記する)、R、G、Bの3色の着色層22などを備える。なお、以下の説明において、色を問わずに着色層を指す場合は単に「着色層22」と記し、色を区別して着色層を指す場合は「着色層22R」などと記す。
BMは、各サブ画素領域SGを区画する位置や、各α−Si型TFT素子30に対応する位置などに形成されている。なお、本発明では、BMは、必ずしも黒色樹脂である必要はなく、光を遮光する機能を有する金属膜によって形成されていても構わない。R、G、Bの各色の着色層22は、各サブ画素領域Gに対応して設けられている。本実施形態では、着色層22は、ゲート線3の第2配線3bの延在方向にR、G、Bの順に配列されているが、その配列順序に特に限定はない。
以上の構成を有する液晶装置100は、その駆動時に次のようにして動作を行う。
まず、画像信号を供給するソース線4はα−Si型TFT素子30のソース電極30s(図2を参照)に電気的に接続されており、画素電極10は、α−Si型TFT素子30のドレイン電極30d(図2を参照)に電気的に接続されている。そして、α−Si型TFT素子30のゲート電極30(図示略)にはゲート線3が電気的に接続されており、スイッチング素子であるα−Si型TFT素子30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、ソース線4から供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。この画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、或いは、相隣接する複数のゲート線32同士に対して、グループ毎に供給するようにしても良い。また、ゲート信号G1、G2、…、Gmは、ゲート線3に所定のタイミングでパルス的に、この順に線順次で印加される。これにより、液晶層40の液晶分子の配向状態が制御され、表示画像が観察者により視認される。
(画素構成)
次に、図2を参照して、第1実施形態に係る液晶装置100の平面的な画素構成について説明する。図2は、液晶装置100の画素構成を示す要部拡大平面図である。
一サブ画素領域SGは、素子基板91の画素電極9と、カラーフィルタ基板92の着色層22との重なり合う領域に対応している。一サブ画素領域SG内には、素子基板91側のバックライト14(図3を参照)から入射された照明光をカラーフィルタ基板92側に透過させて透過表示を行う透過表示領域Tと、反射層6(図3を参照)によってカラーフィルタ基板92側から入射された光をカラーフィルタ基板92側に反射させて反射表示を行う反射表示領域Rとが設けられている。
素子基板91側の平面的な画素構成は次の通りである。
ソース線4と、ゲート線3の第2配線3b及び共通配線2とは相互に直交する方向に延在している。ソース線4と、ゲート線3の第2配線3b又は共通配線2との交差位置には、α−Si型TFT素子30が対応して設けられている。ここで、α−Si型TFT素子30は、ゲート線3の一部をなすゲート電極(図示略)と、ゲート電極上に形成されたゲート絶縁層(図示略)と、ゲート絶縁層上に形成されたアモルファスシリコン層(α−Si層)30aと、ソース線4の本線からゲート線3の第2配線3b側へ分岐して、α−Si層30aと電気的に接続されたソース電極30sと、ソース電極30sと一定の間隔をおいて配置され、且つα−Si層30aと電気的に接続されたドレイン電極30dと、を有する。反射表示領域Rに対応する位置には、アルミニウムなどの光反射性を有する反射層6が設けられている。共通電極7は、一サブ画素領域G内に対応して設けられ、第1の絶縁層5に設けられたコンタクトホール(図示略)を通じて、対応する共通配線2に電気的に接続されている。画素電極9は、一サブ画素領域G内に対応して設けられ、第2の絶縁層8(図3を参照)を介して共通電極7と平面的に重なり合っている。画素電極9は、図3の第2の絶縁層8及び第1の絶縁層5の各々に設けられたコンタクトホール(図示略)を通じてα−Si型TFT素子30のドレイン電極30dに電気的に接続されている。また、画素電極9は、ソース線4と交差する方向に延在する複数の平行四辺形状のスリット9sを有し、スリット9sの各々は、ソース線4の延在方向に一定の間隔をおいて設けられている。
また、上記の素子基板91の平面的な画素構成に対応する、カラーフィルタ基板92の平面的な構成は次の通りである。
着色層22R、22G、22Bは、一サブ画素領域G内に対応して設けられている。着色層22R、22G、22Bは、この順にゲート線3の第2配線3bの延在方向に沿って配置されている。反射表示領域Rに対応する位置には、位相差層25(図3も参照)が設けられている。
次に、図3を参照して、液晶装置100の一サブ画素領域Gの断面構成について説明する。図3は、図2の切断線A−A’に沿った一サブ画素領域Gの断面構成を示す断面図である。
まず、図3に示す素子基板91の断面構成は次の通りである。
素子基板91は、第1基板1と、第1の基板1上に形成されたゲート線3の第2配線3b及び共通配線2と、第1基板1上に形成され、ゲート線3の第2配線3b及び共通配線2を覆う第1の絶縁層(層間絶縁膜)5と、反射表示領域Rに対応する第1の絶縁層5上に形成された反射層6と、反射表示領域Rに対応する反射層6及び透過表示領域Tに対応する第1の絶縁層5の上に形成された共通電極7と、共通電極7を覆う位置に設けられた第2の絶縁層8と、第2の絶縁層8上に設けられた画素電極9と、画素電極9を覆う位置に設けられた配向膜10と、を有する。
第1基板1は、石英やガラスなどの透光性材料により形成されている。第1の絶縁層5は、アクリル樹脂などの絶縁性を有する透明材料にて形成されている。反射表示領域Rに位置する第1の絶縁層5上には、光を散乱させるための微小な凹凸が形成されている。反射層6は、微小な凹凸が形成された第1の絶縁層5上に形成されているため、反射層6は、その形を反映した形状を有する。このため、反射層6にて反射された光は観察側へ適度に散乱される。第2の絶縁層8は、窒化シリコン(SiN)などの絶縁性を有する透明材料にて形成されている。共通電極7及び画素電極9は、ITO(Indium-Tin-Oxide)などの透明導電材料により形成されている。共通電極7と画素電極9とは相互に平面的に重なり合っており、液晶層40に対する電圧印加時には、画素電極9と共通電極7との間にスリット9sを通じて電界Eが形成されるが、電界Eは第2の絶縁層8によりアーチ状に歪められて液晶層40中を通過し、液晶分子の配向が制御される。配向膜10は水平配向性のポリイミド樹脂などの有機材料により形成され、その表面にはラビング処理が施されている。このため、配向膜10は液晶分子を、所定の方向に配向させる役割を有する。なお、素子基板91の液晶層40側に対し反対側には、第1の偏光板13が配置されていると共に、第1の偏光板13の外側には照明装置としてのバックライト14が配置されている。
次に、図3に示すカラーフィルタ基板92の断面構成は次の通りである。
カラーフィルタ基板92は、第2の基板21と、第2の基板21上に形成された着色層22(図3では着色層22G)と、着色層22上に形成された絶縁層(オーバーコート層)23と、絶縁層23上に形成された第1の配向膜24と、反射表示領域Rに対応する第1の配向膜24上に形成された位相差層25と、透過表示領域Tに対応する絶縁層23、及び、反射表示領域Rに対応する位相差層25の上に夫々形成された第2の配向膜26と、第2の配向膜26上に形成された柱状のスペーサ35と、を有する。
第2の基板21は、石英やガラスなどの透光性材料により形成されている。絶縁層23は、アクリル樹脂などの絶縁性を有する透明材料にて形成され、液晶装置100の製造工程中に使用される薬剤等による腐食や汚染から着色層22を保護する機能を有する。第1の配向膜24は、水平配向性のポリイミド樹脂などの有機材料により形成され、その表面にはラビング処理が施されている。第1の配向膜24は、位相差層25の遅相軸方向を定める機能を有する。位相差層25は、光重合性の液晶を重合硬化させることにより形成され、液晶モノマー重合体としての高分子液晶からなる。また、位相差層25は、2分の1波長の位相差を有し、素子基板91の第1の絶縁層(層間絶縁膜)5及び柱状のスペーサ35と共に、透過表示領域Tの液晶層40の厚さdtと反射表示領域Rの液晶層4の厚さdrとの関係をdt>drとする厚さを有する。本例では、透過表示領域Tの液晶層40の位相差が2分の1波長に、また、反射表示領域Rの液晶層4の位相差が4分の1波長となるように、透過表示領域Tの液晶層40の厚さdtと反射表示領域Rの液晶層4の厚さdrとの関係が相対的に決定されており、いわゆるマルチギャップ構造をなす。また、位相差層25の所定位置には、第2の配向膜26の厚さムラに起因した表示ムラを防止するためにスリット(溝)25sが設けられるが、この点については後述する。第2の配向膜26は水平配向性のポリイミド樹脂などの有機材料により形成され、その表面にはラビング処理が施されている。このため、第2の配向膜26は液晶分子を所定の方向に配向させる役割を有する。柱状のスペーサ35は、ポリイミド樹脂などの透明樹脂により形成されており、素子基板91とカラーフィルタ基板92とを一定の間隔に規定する機能、具体的には、透過表示領域Tの液晶層40の厚さdtと反射表示領域Rの液晶層4の厚さdrとの関係をdt>drとする機能を有する。なお、カラーフィルタ基板92の液晶層40側に対し反対側には、第2の偏光板28が配置されている。
次に、図4を参照して、液晶装置100における、液晶分子の配向方向の軸と、偏光板の透過軸と、位相差層の遅相軸等との関係について説明する。
図4は、第1実施形態に係る液晶装置100における、電界Eの方向Edrと、液晶分子40xの配向方向の軸40a(以下、「液晶配向軸40a」と呼ぶ)と、第1の偏光板13の第1の透過軸13aと、第2の偏光板28の第2の透過軸28aと、位相差層25の遅相軸25aと、第1の配向膜24のラビング方向24aと、第2の配向膜26のラビング方向26aとの関係を模式的に示す。図4において、破線で示す直線50は、画素電極9のスリット9sの長手方向(又は長軸方向)と平行な方向を示す基準線である。
電界Eの方向Edr(図3も参照)と基準線50とのなす角度は90[°]に設定されている。このため、電界Eの方向Edrは、画素電極9のスリット9sの短手方向(又は短軸方向)と平行な方向に設定されている。液晶配向軸40aと、第1の偏光板13の第1の透過軸13aと、第2の配向膜26のラビング方向26aとは相互に平行に設定され、それらの各軸と基準線50とのなす角度は約15[°]に設定されている。液晶配向軸40a、第1の偏光板13の第1の透過軸13a又は第2の配向膜26のラビング方向26aと、第1の配向膜24のラビング方向24a又は位相差層25の遅相軸25aとのなす角度は約68[°]に設定されている。第1の偏光板13の第1の透過軸13aと、第2の偏光板28の第2の透過軸28aとのなす角度は90[°]に設定されている。
以上の構成を有する液晶装置100では、その駆動時、画素電極9と共通電極7との間において生じるフリンジフィールド(電界E)により液晶分子の配向状態が制御され、これによりカラー反射表示又はカラー透過表示が行われる。具体的には、反射表示の際、液晶装置100に入射した外光は、図3に示す経路Lrに沿って進行する。つまり、液晶装置100に入射した外光は、反射層7によって反射され観察者に至る。この場合、その外光は、着色層22、画素電極9及び共通電極7等が形成されている領域を通過して、反射表示領域Rに位置する共通電極7の下側に位置する反射層7により反射され、再度、画素電極9及び着色層22等を通過することによって所定の色相及び明るさを呈する。一方、透過表示の際、バックライト14から出射した照明光は、図3に示す経路Ltに沿って進行し、共通電極7、画素電極9及び各着色層22等を通過して観察者に至る。この場合、その照明光は、その着色層22等を透過することにより所定の色相及び明るさを呈する。こうして、所望のカラー表示画像が観察者により視認される。
(位相差層とスペーサの位置関係)
上記したように、位相差層25は、光重合性の液晶を重合硬化させることにより形成される。このため、位相差層25は一般的に柔らかく、位相差層25上に、素子基板91とカラーフィルタ基板92との間隔を規定する役割を果たす柱状のスペーサ35を形成するのには困難を伴う。例え、位相差層25上に柱状のスペーサ35を形成することができたとしても、その柔らかさゆえ、柱状のスペーサ35を、本来的なスペーサとして機能させることはできない。
この点を考慮して、本発明の第1実施形態では、図2及び図3に示すように、柱状のスペーサ35は、カラーフィルタ基板92側において、材質的に柔らかな位相差層25と平面的に重ならない領域に設ける。これにより、製造上の困難を伴うことなく、柱状のスペーサ35を確実に形成することが可能となり、また、柱状のスペーサ35を本来的なスペーサとして機能させることが可能となる。また、柱状のスペーサ35をカラーフィルタ基板92側に設けることで、製造過程において、柱状のスペーサ35を位相差層25と平面的に重ならない位置に確実に設けることが可能となる。好適な例では、柱状のスペーサ35は、図2及び図3に示すように、柱状のスペーサ35を確実に支持することが可能な領域、具体的には、液晶層40の厚さが反射表示領域Rの液晶層40の厚さdtよりも厚い領域(例えば、図3に示すように透過表示領域Tの近傍の液晶層40の厚さの厚い領域)に設けられていることが好ましい。また、柱状のスペーサ35は、BM(遮光層)と平面的に重なる位置に設けられていることが好ましい。これにより、柱状のスペーサ35に起因した光漏れなどが万が一生じた場合でも、その光漏れはBMにより遮光される。よって、柱状のスペーサ35に起因して表示品位が低下することを防止できる。
なお、本発明では、液晶装置100における、柱状のスペーサ35の設定数に限定はない。
(位相差層におけるスリットの設定位置)
次に、図2乃至図5(a)を参照して、カラーフィルタ基板92側の位相差層におけるスリットの設定位置について説明する。
図5(a)は、図2の切断線B−B’に沿った反射表示領域Rに対応するカラーフィルタ基板92の断面図である。
ここで、比較例として、図2において、位相差層25にスリット(溝)25sが形成されていない場合を想定する。図2及び図3に示すように、位相差層25は、所定の厚さを有し、反射表示領域Rに対応する位置にのみ設けられている。つまり、位相差層25は、カラーフィルタ基板92側の反射表示領域Rにおいて畝状に設けられている。このため、カラーフィルタ基板92側において、透過表示領域Tと反射表示領域Rとの間には、図3に示すように所定の段差d1が形成される。これにより、カラーフィルタ基板92の製造過程において、透過表示領域Tに位置する第1の配向膜24及び反射表示領域Rに位置する位相差層25等の上に第2の配向膜26を塗布した場合、その段差d1により、反射表示領域Rに位置する位相差層25上に塗布された第2の配向膜26の一部が、当該反射表示領域Rに対して、ソース線4の延在方向に相隣接する透過表示領域T1側及び透過表示領域T2側に夫々流れ込む。このとき、透過表示領域T1に位置する第1の配向膜24上に流れ込む第2の配向膜26の量と、透過表示領域T2に位置する第1の配向膜24上に流れ込む第2の配向膜26の量とは必ずしも同一になるとは限らない。したがって、もし、このとき、透過表示領域T1に位置する第1の配向膜24上に流れ込む第2の配向膜26の量と、透過表示領域T2に位置する第1の配向膜24上に流れ込む第2の配向膜26の量とが不均一になってしまった場合には、カラーフィルタ基板92において、第2の配向膜24の厚さが厚い透過表示領域Tと、第2の配向膜24の厚さが薄い透過表示領域Tとが存在することになり、第2の配向膜26の厚さムラが生じてしまう。そうすると、比較例では、その第2の配向膜26の厚さムラを原因として、ライン状の表示ムラが発生してしまうといった課題がある。
この点を踏まえ、本発明の第1実施形態では、位相差層25に対し、任意のサブ画素領域SG内に設けられた反射表示領域Rと、当該任意のサブ画素領域SGに対して、ゲート線3の第2配線3b又は共通配線2の延在方向に相隣接する他のサブ画素領域SG内に設けられた他の反射表示領域Rとの間に対応する位置にスリット(溝)25sを設けることにより、前記した課題を解決する。
即ち、本発明の第1実施形態では、比較例と同様に、反射表示領域Rにのみ畝状に位相差層25が形成されているため、図3に示すように、反射表示領域Rと透過表示領域Tとの間には段差d1が形成される。このため、カラーフィルタ基板92側において、第2の配向膜26の形成時には、任意の反射表示領域Rに設けられた位相差層25上に塗布された第2の配向膜25の一部は、当該反射表示領域Rに対して、ソース線4の延在方向に相隣接する透過表示領域T1側及び透過表示領域T2側に夫々流れ込むことになる。ここで、万が一、透過表示領域T1に位置する第1の配向膜24上に流れ込む第2の配向膜26の量と、透過表示領域T2に位置する第1の配向膜24上に流れ込む第2の配向膜26の量とが不均一になってしまった場合でも、位相差層25に設けられたスリット25sを通じて、第2の配向膜26の流れ込み量の多い透過表示領域T1(又はT2)側から、第2の配向膜26の流れ込み量の少ない透過表示領域T2(又はT1)側へと第2の配向膜26が流動するため、透過表示領域T1に位置する第1の配向膜24上に形成される第2の配向膜26の厚さと、透過表示領域T2に位置する第1の配向膜24上に形成される第2の配向膜26の厚さとが均一となる。つまり、第1実施形態では、位相差層25は、任意のサブ画素領域SG内に設けられた反射表示領域Rと、当該任意のサブ画素領域SGに対して、ゲート線3の第2配線3b又は共通配線2の延在方向に相隣接する他のサブ画素領域SG内に設けられた他の反射表示領域Rとの間に対応する位置にスリット(溝)25sを有するので、そのスリット25sの働きにより、第2の配向膜26の厚さムラが生じるのを防止でき、これにより表示ムラが発生するのを防止できる。
また、この構成によれば、スリット25sの形状に起因して、スリット25sの位置において液晶分子の配向不良による光漏れが万が一生じた場合でも、スリット25sは、図2の矩形の破線部分に示すように、表示に寄与しないサブ画素領域SG間に設けられているので、表示品位が低下するのを防止できる。また、スリット25sの幅はBMの幅より小さく設定され、スリット25sは、BMと平面的に重なる位置に設けられていることが好ましい。これは、位相差層25のスリット25sの形状に起因した光漏れなどが万が一生じた場合でも、その光漏れはBMにより遮光されるので、表示品位が低下するのを防止できるからである。
なお、本発明では、位相差層25におけるスリット25sの設定数に限定はない。例えば、位相差層25には、図2に示すように、ゲート線3の第2配線3bの延在方向に相隣接するサブ画素領域SG間において、スリット25sが設けられた領域と、スリット25sが設けられていない領域とが存在していても構わない。また、本発明では、図5(a)の対応図である図5(b)に示すように、位相差層25のスリット25sは、当該位相差層25の厚さ方向に貫通していなくても構わない。
(スペーサと位相差層のスリットとの位置関係)
上記のように、柱状のスペーサ35は、カラーフィルタ基板92側において、材質的に柔らかな位相差層25と平面的に重ならない領域に設けられていた。ここで、もし、柱状のスペーサ35を、位相差層25のスリット25sの近傍若しくはスリット25sの延在方向の延長線上に設けた場合には、その柱状のスペーサ35が、カラーフィルタ基板92の第2の配向膜26の形成時に、反射表示領域Rを挟む位置に設けられた、透過表示領域T1と透過表示領域T2との間におけるスリット25sを通じた第2の配向膜26の流れを堰き止めてしまう虞がある。
そこで、このような不具合の発生を防止する為、本発明の第1実施形態では、柱状のスペーサ35は、図2に示すように、任意のサブ画素領域SGを基準として、位相差層25のスリット25sから最も離れた位置に設ける。好適な例では、柱状のスペーサ35は、図2に示すように、位相差層25のスリット25sの延在方向の延長線Ls上に位置していないことが好ましい。これにより、第2の配向膜26の形成時に、相隣接する透過表示領域T1及びT2の間において、柱状のスペーサ35が位相差層25のスリット25sを通じた第2の配向膜26の流れを堰き止めるのを防止できる。その結果、第2の配向膜26の厚さムラが生じるのを防止できる。
[第2実施形態]
次に、図6(a)等を参照して、本発明の第2実施形態に係るカラーフィルタ基板94の構成について説明する。図6(a)は、図5(a)に対応する、第2実施形態に係るカラーフィルタ基板94の断面図である。
第2実施形態と第1実施形態とを比較した場合、第2実施形態では、カラーフィルタ基板94側において、反射表示領域Rにおける、位相差層25と第2の配向膜25の間に保護層27を更に設けており、この点のみが第1実施形態と構成上異なる。よって、以下では、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。
一般的に、位相差層25上に形成される第2の配向膜26の厚さは薄いため、これを原因として、位相差層25に含まれる成分が当該第2の配向膜26を通じて液晶層40側へ溶出し、これによって表示品位が低下する恐れがある。また、位相差層25は、上記したように、光重合性の液晶を重合硬化させることにより形成され、位相差層25は一般的に柔らかいので、第2の配向膜26の表面に対するラビング処理時などに発生する機械的な衝撃等に対して極めて弱い。
そこで、第2実施形態では、これらの課題を一挙に解決する為、位相差層25と第2の配向膜26との間に所定の厚さの保護層27を設ける。ここで、保護層27の形成材料としては、例えば、アクリル樹脂などの透明樹脂などが挙げられる。この構成によれば、保護層27のバリアとしての働きにより、位相差層25に含まれる成分が当該第2の配向膜26を通じて液晶層40側へ溶出するのを抑えることができ、これにより表示品位が低下するのを防止できる。また、保護層27の補強層としての働きにより、第2の配向膜26の表面に対するラビング処理時などに発生する機械的な衝撃等に対して位相差層25が保護される。
また、第2実施形態では、保護層27には、図2において、任意のサブ画素領域SG内に設けられた反射表示領域Rと、当該任意のサブ画素領域SGに対して、ゲート線3の第2配線3b又は共通配線2の延在方向に相隣接する他のサブ画素領域SG内に設けられた他の反射表示領域Rとの間に対応する位置にスリット(溝)27sが設けられる。ここで、第2実施形態と第1実施形態とは、上記の相違点を除けば、その両者の液晶装置の各要素の平面的な位置関係は同様である。これにより、その保護層27のスリット27sは、上記した位相差層25のスリット25sと同様の働きを有し、そのスリット27sの働きにより、第2の配向膜26の厚さムラが生じるのを防止できる。よって、表示ムラが発生するのを防止できる。
また、この構成によれば、スリット27sの形状に起因して、スリット27sの位置において液晶分子の配向不良による光漏れが万が一生じた場合でも、スリット27sは、図2の矩形の破線部分に示すように、表示に寄与しないサブ画素領域SG間に設けられているので、表示品位が低下するのを防止できる。また、スリット27sの幅はBMの幅より小さく設定され、スリット27sは、BMと平面的に重なる位置に設けられていることが好ましい。これは、保護層27のスリット27sの形状に起因した光漏れなどが万が一生じた場合でも、その光漏れはBMにより遮光されるので、表示品位が低下するのを防止できるからである。
なお、本発明では、保護層27に設けるスリット27sの設定数に限定はない。例えば、保護層27には、図2に示すように、ゲート線3の第2配線3bの延在方向に相隣接するサブ画素領域SG間において、スリット27sが設けられた領域と、スリット27sが設けられていない領域とが存在していても構わない。また、本発明では、図6(a)の対応図である図6(b)に示すように、保護層27のスリット27sは、当該保護層27の厚さ方向に貫通していないことが好ましい。これにより、スリット27sの位置に対応する、第2の配向膜26と位相差層25との間にバリアとしての保護層27が存在することになり、より一層、位相差層25に含まれる成分が当該第2の配向膜26を通じて液晶層40側へ溶出するのを抑えることができる。また、本発明では、保護層27は、反射表示領域Rに位置する位相差層25上のみならず、反射表示領域Rに位置する位相差層25上から透過表示領域Tに位置する第1の配向膜24上にかけて形成されていても構わない。
(スペーサと保護層のスリットとの位置関係)
柱状のスペーサ35は、カラーフィルタ基板94側において、材質的に柔らかな位相差層25と平面的に重ならない領域に設けられている。ここで、もし、柱状のスペーサ35を、保護層27のスリット27sの近傍若しくはスリット27sの延在方向の延長線上に設けた場合には、その柱状のスペーサ35が、カラーフィルタ基板94の第2の配向膜26の形成時に、反射表示領域Rを挟む位置に設けられた、透過表示領域T1と透過表示領域T2との間におけるスリット27sを通じた第2の配向膜26の流れを堰き止めてしまう虞がある。
そこで、このような不具合の発生を防止する為、本発明の第2実施形態では、柱状のスペーサ35は、図2に示すように、任意のサブ画素領域SGを基準として、保護層27のスリット27sから最も離れた位置に設ける。好適な例では、柱状のスペーサ35は、図2に示すように、保護層27のスリット27sの延在方向の延長線Ls上に位置していないことが好ましい。これにより、第2の配向膜26の形成時に、相隣接する透過表示領域T1及びT2の間において、柱状のスペーサ35が保護層27のスリット27sを通じた第2の配向膜26の流れを堰き止めるのを防止できる。その結果、第2の配向膜26の厚さムラが生じるのを防止できる。
[変形例]
上記の各種の実施形態では、画素電極9は、図2に示すように、平面的に閉じたスリット(開口)9sを複数有して構成されていたが、これに限らず、本発明では、画素電極9は櫛歯形状となるように形成されていても構わない。画素電極9を櫛歯形状とすれば、画素電極9の櫛歯の先端部分を、ゲート線3の第2配線3bの延在方向に隣接する他の画素電極9側へより近づけるように形成することが可能となり、開口率の向上に寄与し得る。但し、その櫛歯の先端付近は開放されているので、その櫛歯の先端付近を、位相差層25のスリット25s又は保護層27のスリット27sの近傍まで延在するように形成してしまうと、スリット25s又は27sの近傍に位置する櫛歯の先端付近は、それに隣接する前記他の画素電極9側からの不要な電界Eの影響を受け易くなり、スリット25s又は27sの近傍に位置する櫛歯の先端付近では、ディスクリネーション(液晶分子の配向異常)が発生し、光漏れなどが生じてしまうといった課題が生じ得る。
そこで、本発明の変形例では、図2の対応図である図7に示すように、ディスクリネーションの影響を受け易い反射表示領域Rに位置する画素電極9の部分には平面的に閉じたスリット(開口)9sを設けて当該ディスクリネーションの影響を受け難くする構造にすると共に、ディスクリネーションの影響を受け難い透過表示領域Tに位置する画素電極9の部分には切り欠き9kを設けて、当該透過表示領域Tに位置する画素電極9は櫛歯形状とする。これにより、ディスクリネーションの影響を受け難くしつつ、開口率の向上を図ることができる。
また、上記の各種の実施形態では、柱状のスペーサ35は、カラーフィルタ基板92又は94側において、位相差層25と平面的に重ならない領域に設けたが、これに限らず、本発明では、素子基板91側において、位相差層25と平面的に重ならない領域に設けるようにしても構わない。
また、上記の各種実施形態では、R、G、Bの各色の着色層22は、矩形状の平面形状を有し、カラーフィルタ基板92又は94側であって、各サブ画素領域SGに対応する位置に設けられていた。そして、当該R、G、Bの各色に対応する各サブ画素領域SGを区画する位置にはBM(遮光層)が設けられ、柱状のスペーサ35は、BMと平面的に重なる位置に設けられていた。これに限らず、本発明では、R、G、Bの各色の着色層22は、ソース線4の延在方向に延びるストライプ形状を有し、当該ソース線4の延在方向に配列された複数のサブ画素領域SGと平面的に重なる位置に設けられていてもよい。この場合、ゲート線3の第2配線3b又は共通配線2の延在方向に相隣接するサブ画素領域SGの間には、ソース線4の延在方向に延びる直線状のBM(遮光層)が設けられ、柱状のスペーサ35は、その直線状のBMと平面的に重なる位置に設けられる。
また、上記の各種実施形態では、スイッチング素子としてα−Si型TFT素子30を有する液晶装置に対して本発明を適用したが、これに限定されず、TFD(Thin Film Diode)素子などに代表される二端子型非線形素子を有する液晶装置に対して本発明を適用しても構わない。
また、上記の各種実施形態では、横電界方式の一例としてのFFS方式を有する液晶装置に対して本発明を適用したが、これに限定されず、横電界方式の他の例としてのIPS(In-Plane Switching)方式を有する液晶装置に対して本発明を適用しても構わない。
その他、本発明では、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形をすることが可能である。
[電子機器]
次に、上述した第1実施形態(又は第2実施形態)に係る液晶装置100を備える電子機器の具体例について図8を参照して説明する。
まず、この液晶装置100を、可搬型のパーソナルコンピュータ(いわゆるノート型パソコン)の表示部に適用した例について説明する。図8(a)は、このパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。同図に示すように、パーソナルコンピュータ710は、キーボード711を備えた本体部712と、本発明に係る液晶装置100を適用した表示部713とを備えている。
続いて、この液晶装置100を、携帯電話機の表示部に適用した例について説明する。図8(b)は、この携帯電話機の構成を示す斜視図である。同図に示すように、携帯電話機720は、複数の操作ボタン721のほか、受話口722、送話口723とともに、本発明に係る液晶装置100を適用した表示部724を備える。
なお、本発明に係る液晶装置100を適用可能な電子機器としては、図8(a)に示したパーソナルコンピュータや図8(b)に示した携帯電話機の他にも、液晶テレビ、ビューファインダ型・モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ディジタルスチルカメラなどが挙げられる。