JP4614495B2 - 二重共鳴吸収顕微鏡 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、二重共鳴吸収過程を用いて超解像性を実現する二重共鳴吸収顕微鏡に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、レーザー技術や電子画像技術をはじめとする周辺技術の進歩にともない、様々なタイプの高性能かつ多機能な顕微鏡が開発されてきている。本願発明の発明者も、その一つとして、複数波長の光を試料に照明することによって発生する二重共鳴吸収過程を用いて、得られる画像のコントラスト制御および試料の化学分析を可能とする顕微鏡(以下、二重共鳴吸収顕微鏡と呼ぶ)をすでに提案している(特願平6−329165参照)。
【0003】
この二重共鳴吸収顕微鏡では、二重共鳴吸収過程を用いて特定の分子を選択し、特定の光学遷移に起因する吸収および蛍光を観測することができる。その原理を説明すると、まず、基底状態(S0状態:図1)の試料分子(つまり、試料を構成する分子)が持つ価電子軌道の電子を、レーザー光などの共鳴波長λ1光により第一電子励起状態へ励起させ(S1状態:図2)、続いて共鳴波長λ2光により第二電子励起状態またはさらに高位の励起状態へ励起させる(S2状態:図3)。分子は、この励起状態から蛍光あるいは燐光を発光したりして基底状態に戻る(図4)。そして、図2に示した吸収や図4に示した蛍光や燐光の発光を用いて吸収像や発光像を観察する。
【0004】
1状態への励起過程においては、単位体積内のS1状態の分子数は照射する光の強度が増加するにしたがって増加する。線吸収係数は、分子一個当たりの吸収断面積と単位体積当たりの分子数の積で与えられるので、S2状態への励起過程においては続いて照射する共鳴波長λ2に対する線吸収係数は最初に照射した共鳴波長λ1の光の強度に依存する。すなわち、共鳴波長λ2(以下、波長λ2と略称)に対する線吸収係数は共鳴波長λ1(以下、波長λ1と略称)の光の強度で制御できる。このことは、波長λ1および波長λ2の2波長の光で試料を照射し、波長λ2による透過像を撮影すれば、透過像のコントラストを波長λ1の光で完全に制御できることを示している。また、S2状態からの蛍光または燐光による脱励起過程が可能である場合には、その発光強度はS1状態にある分子数に比例する。したがって、蛍光顕微鏡として利用する場合にも画像コントラストの制御が可能となる。
【0005】
また、この二重共鳴吸収顕微鏡は、コントラストの制御のみならず、化学分析も可能にする。図1に示される最外穀価電子軌道は個々の分子に固有なエネルギー準位をもつので、波長λ1は分子によって異なる。同時に波長λ2も分子固有のものとなる。単一波長で照明・観察を行う従来の顕微鏡においても、ある程度は特定の分子の吸収像あるいは蛍光像を観察することが可能ではあるが、一般にはいくつかの分子の吸収帯の波長領域は重複するため、試料の化学組成の正確な同定までは不可能である。これに対し、二重共鳴吸収顕微鏡では波長λ1および波長λ2の2波長により吸収あるいは発光する分子を限定するので、従来技術よりも正確な試料の化学組成の同定が可能となる。また、価電子を励起する場合、分子軸に対して特定の電場ベクトルを持つ光のみが強く吸収されるので、波長λ1および波長λ2の偏光方向を決めて、吸収像または蛍光像を撮影すれば、同じ分子でも配向方向の同定をも行うことができる。
【0006】
本願発明の発明者はさらに、回折限界を越える高い空間分解能の二重共鳴吸収顕微鏡をも提案している(特願平8−302232参照)。二重共鳴吸収過程については、図5に例示したようにS2状態からの蛍光が極めて弱くなるある種の分子が存在する。このような光学的性質を持つ分子に対しては、以下のような極めて興味深い現象が起きる。図6は、図5と同じく二重共鳴吸収過程の概念図であるが、横紬にX軸を設けて空間的距離の広がりを表現しており、波長λ1光および波長λ2光が照射されている空間領域A1(=蛍光抑制領域)と、波長λ1光のみが照射されて波長λ2光が照射されていない空間領域A0(=蛍光領域)について示している。空間領域A0では波長λ1光による励起によってS1状態の分子が多数生成される。このとき空間領域A0からは波長λ3で発光する蛍光が見られる。しかし空間領域A1では、波長λ2光が照射されるので、S1状態の分子が即座に高位のS2状態へと励起され、S1状態の分子は存在しなくなる。このため空間領域A1においては、波長λ3の蛍光は全く発生せず、しかもS2状態からの蛍光はもともとないので、完全に蛍光自体が抑制されることとなる。すなわち蛍光が発生するのは空間領域A0のみとなる。このような現象の発生が数種類の分子において確認されている。
【0007】
したがって、従来の走査型レーザー顕微鏡などでは、レーザー光を集光して観察試料上に形成されるマイクロビームのサイズが集光レンズの開口数と波長による回折限界で決まるので、それ以上の空間分解能が原理的に期待できないにの対し、図6で示した現象によれば波長λ1光と波長λ2光を空間的に一部分重ね合わせることで、波長λ2光の照射で蛍光領域が抑制されるため、たとえば波長λ1光の照射領域に着目すると、蛍光領域は集光レンズの開口数と波長とで決まるビームのサイズよりも狭くなっており、実質的に空間分解能の向上が図られている。本願発明者による二重共鳴吸収顕微鏡(特願平8−302232参照)は、この原理を用いて、回折限界を越える超解像顕微鏡を実現しているのである。
【0008】
そして本願発明の発明者は、この二重共鳴吸収顕微鏡の超解像性をさらに高めるべく、その機能を十分に活かすための試料の調整や波長λ1光・波長λ2光の試料への照射タイミングなどをもすでに提案している(特願平9−255444参照)。より具体的には、試料を染色分子により染色する。この染色分子として、基底状態を含め少なくとも3つの量子状態(S0状態,S1状態,S2状態・・・)を有し、且つS1状態を除く高位の量子状態から基底状態へ脱励起するときの遷移において蛍光による緩和過程よりも熱緩和過程が支配的である各種分子(以下、蛍光ラベラー分子と呼ぶ)を用いるのである。このような蛍光ラベラー分子と生化学的な染色技術を施した生体分子とを化学結合させてなる試料に、波長λ1光を照射して蛍光ラベラー分子をS1状態に励起させ、続いて即座に波長λ2光を照射して蛍光ラベラー分子をより高位の量子準位に励起させることで、S1状態からの蛍光を効果的に抑制できるようになる。この際に、上述したような空間的な蛍光領域の人為的な抑制を行うことにより、空間分解能のさらなる向上が実現される。
【0009】
上記の蛍光ラベラー分子の光学的性質は、以下のように量子化学的な見地から説明できる。一般に、分子はそれを構成する各原子のσまたはπ結合によって結ばれている。言い換えると、分子の分子軌道はσ分子軌道またはπ分子軌道をもっていて、これらの分子軌道に存在する電子が各原子を結合する重要な役割を担っている。そのなかでも、σ分子軌道の電子は、各原子を強く結合し、分子の骨格である分子内の原子間距離を決める。これに対して、π分子軌道の電子は、各原子の結合にほとんど寄与しないで、むしろ分子全体に極めて弱い力で束縛される。
【0010】
多くの場合、σ分子軌道にいる電子を光で励起させると、分子の原子間隔が大きく変化し、分子の解離を含む大きな構造変化が起こる。その結果として、原子の運動エネルギーや構造変化するために光が分子に与えたエネルギーのほとんどが熱エネルギーに形を変える。したがって、励起エネルギーは蛍光という光の形態で消費されない。また、分子の構造変化は極めて高速におこるので(たとえばピコ秒より短い)、その過程で仮に蛍光が起きても極めて蛍光寿命が短い。しかしそれに対して、π分子軌道の電子が励起しても、分子の構造自体はほとんど変化せず、高位の量子的な離散準位に長時間とどまり、ナノ秒のオーダーで蛍光を放出して脱励起する性質を持つ。
【0011】
量子化学よれば、分子がπ分子軌道を持つことと、二重結合を持つこととは同等であり、用いる蛍光ラベラー分子には、二重結合を豊富に持つ分子を選定することが必要条件となる。そして、二重結合を持つ分子でもベンゼンやビラジンなどの6員環分子においては、S2状態からの蛍光が極めて弱いことが確かめられている(例えば、M..Fujii et.al., Chem. Phys. Lett. 171 (1990) 341)。したがって、ベンゼンやビラジンなどの6員環分子を含む分子を蛍光ラベラー分子として選定すればS1状態からの蛍光寿命が長くなり、しかも光照射によりS1状態からS2状態に励起させることで分子からの蛍光を容易に抑制でき、上述の二重共鳴吸収顕微鏡の超解像性を効果的に利用することができるようになる。
【0012】
すなわち、これらの蛍光ラベラー分子により試料を染色して観察を行えば、高空間分解能の蛍光像を取得することができるだけでなく、その蛍光ラベラー分子の側鎖の化学基を調整することにより生体試料の特定の化学組織のみを選択的に染色でき、試料の詳細な化学組成までも分析可能となる。
【0013】
一般に、二重共鳴吸収過程は二つの光の波長や偏光状態等が特定の条件を満たす場合のみに起こるので、これを用いることで非常に詳細な分子の構造を知ることが可能となる。すなわち、光の偏光方向と分子の配向方向とは強い相関関係があり、二波長光それぞれの偏光方向と分子の配向方向とが特定の角度をなすとき二重共鳴吸収過程が強く起こる。したがって、二波長光を試料に照射して、各光の偏光方向を回転することにより、蛍光の消失の程度が変化するので、その様子から観察しようとする組織の空間配向の情報も得られる。さらに、二つの波長の光を調整させることでもこのことが可能である。
【0014】
他方、波長λ1光と波長λ2光の照射タイミングを適当なものに調整することにより(特願平9−255444参照)、蛍光像のS/Nを改善し、且つ蛍光抑制をさらに効果的に起こすことも可能となっている。
【0015】
また、本願発明の発明者により、波長λ1光と波長λ2光の照射タイミングのさらなる工夫により、S/Nおよび蛍光抑制のさらなる向上を実現することも提案されている(特願平10―97924参照)
ところで、前述した波長λ1光の照射領域の一部分への波長λ2光の照射領域の重ね合わせは、波長λ2光を中空ビーム化して、つまり中央部(軸近傍領域)がゼロ強度であり、且つ軸対象な強度分布を有する中空ビーム光にして、波長λ1光の一部分と空間的に重ね合わせ、試料上に集光することで実現できる。図7は、この重合せおよびそれによる蛍光抑制を例示した概念図である。波長λ2光は、図8にも例示したような位相板により中空ビーム化されており、この中空ビーム化された波長λ2光と波長λ1光の重ね合わせにより、波長λ2光の強度がゼロとなる光軸近傍の領域以外では蛍光は抑制され、波長λ1光の広がりよりも狭い領域に存在する蛍光ラベラー分子(または試料分子)の蛍光のみが観察される。その結果、超解像性が発現する。
【0016】
図8の位相板は、波長λ2光にその光軸を中心対象としてπだけ位相差を与えるものである。この位相板に波長λ2光を通すことで、波長λ2光の光軸近傍領域(光軸を含む)の位相が反転するため、その光軸近傍領域の電場強度はゼロとなり、蛍光抑制による超解像性の発現に理想的な中空ビーム形状をもつ波長λ2光が得られるのである。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
さて、以上のように本願発明の発明者によってこれまで開発されてきた二重共鳴吸収顕微鏡は、その超解像性と分析能力において際立った有用性と技術的優位性を示しているものの、未だに以下に示すような改良すべき点が残されているのが実情である。なおここからは、試料分子(=試料を構成する分子)をS0状態からS1状態へ励起させる波長λ1光をポンプ光、S1状態の分子をS2状態へ励起させる波長λ2光をイレース光と呼び、中空ビーム形状を有するイレース光を中空イレース光と呼ぶこととする。また、S0状態からS1状態への励起はS0→S1励起、S1状態からS2状態への励起はS1→S2励起と略称する。また、超解像性の実現をより効果的なものとすべく、蛍光ラベラー分子を用いて試料を染色する場合には、試料分子とはこの蛍光ラベラー分子のこととなる。
【0018】
二重共鳴吸収顕微鏡において、ポンプ光およびイレース光の照射領域の一部重合せによる蛍光領域の抑制によって理論通りの超解像度を実現するためには、中空イレース光が期待どおりの中空ビーム形状となっている必要がある。この中空ビーム形状の乱れ、つまり強度分布の乱れはそのまま顕微鏡画像の劣化を招いてしまう。
【0019】
イレース光の光源としてはレーザーがしばしば用いられるが、光源からのイレース光を期待通りの中空ビームに成形するためには、その大前提としてレーザ光のビームプロファイルが整っている必要がある。すなわち、ビームの強度分布が光軸軸対称であることが必要となる。しかしながら、たとえば色素レーザーでは、そのビーム形状が三角形に近く、強度分布も一様でないことから、期待する中空ビームを得ることが難しい場合がある。このため、試料上で集光したビーム形状が崩れたビームパターンとなり、顕微鏡画像の解像度劣化や画質低下の原因となっている。
【0020】
また、輪帯アパーチャーを介して中空イレース光を取得することが提案されてはいる。しかしながら、輪体アパーチャーを利用すると、光紬合わせや焦点合わせなどが難しく、良好な画像を得るまでの調整時間や手間が非常に多くなり、且つそのための熟達技能も必要となる。実用上好ましいものではない。
【0021】
さらにまた、中空イレース光として理想的なビームプロファイルを持つ一次のベッセルビームも提案されてはいる。一次ベッセルビームは、たとえば図9に例示したように、光紬を中心にして1周すると位相が2π変化する。理論上は、光軸に関して軸対称な点ではお互いの位相がπずれることから、軸上では電場が完全に相殺されてゼロとなる。しかしながら、実際にはレーザー光は、そのビーム面内で完全に位相面が揃っているわけではなく、ビーム中央部から外れるに従って位相面が乱れてくるため、一次ベッセルビームを形成する際、この位相面の乱れに起因して、電場の相殺が不完全となり、ビーム中央部の強度が完全にゼロとならない不完全な一次ベッセルビームができてしまう。これでは二重共鳴吸収顕微鏡にとって理想的な中空イレース光とはいえない。
【0022】
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来の二重共鳴吸収顕微鏡を改良し、超解像性に理想的な中空イレース光を発生させることのできる、新しい二重共鳴吸収顕微鏡を提供することを課題としている。
【0023】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、試料分子を基底状態から第一電子励起状態へ励起させる波長λ1のポンプ光の光源と、第一電子励起状態の試料分子を第二電子励起状態またはより高い励起状態へ励起させる波長λ2のイレース光の光源と、ポンプ光およびイレース光の照射領域を一部分重ね合わせる重ね手段とを備えており、重ね手段を介してポンプ光およびイレース光を試料に照射することにより、第一電子励起状態の試料分子が基底状態へ脱励起する際の発光領域を一部分抑制する二重共鳴吸収顕微鏡において、集光レンズおよびコリメートレンズとその間に設けられたピンホールとを有し、イレース光を集光レンズによりピンホールに集光し、且つピンホールを通過したイレース光のみをコリメートレンズにより平行光にコリメートする空間フィルターが、イレース光の光路に備えられ、さらに、前記空間フィルターを通過したイレース光にその光軸を中心としてπだけ位相差を与える位相変調素子が備えられていることを特徴とする二重共鳴吸収顕微鏡(請求項1)を提供する。
【0024】
また、この二重共鳴吸収顕微鏡において、ピンホールの半径aが、
【0025】
【数3】
Figure 0004614495
【0026】
の条件または
【0027】
【数4】
Figure 0004614495
【0028】
の条件を満たしていること(請求項)や、前記位相変調素子は、イレース光に対して透明かつオプティカルフラットな平行基板の上に、イレース光に光軸を中心としてπだけ位相差を与え得る厚み分布を持つ光学薄膜が被膜されてなること(請求項)や、前記位相変調素子は、イレース光に対して透明かつオプティカルフラットな平行基板に、イレース光に光軸を中心としてπだけ位相差を与え得るエッチングが施されてなること(請求項)や、試料は、基底状態を含め少なくとも三つの電子状態を有する蛍光ラベラー分子により染色されており、前記試料分子はこの蛍光ラベラー分子であること(請求項)をその態様として提供する。
【0029】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴を持つものであり、ポンプ光光源、イレース光光源、および重ね手段を基本構成として備え持つ二重共鳴吸収顕微鏡において、超解像性をより効果的に発現させるべく、空間フィルターを用いてイレース光の中空ビーム化について改善している。
【0030】
図10は、この空間フィルター(100)の一例を示した概略図である。この図10に例示したように、空間フィルター(100)は、集光レンズ(101)およびコリメートレンズ(103)とその間に設けられたピンホール(102)とを有しており、入射したイレース光を集光レンズ(101)で集光して、ピンホール(102)を照明した後、ピンホール(102)を通過したイレース光をコリメートレンズ(103)により平行光にコリメートするように構成されている。この場合、位相が乱れた、すなわち波面が乱れたレーザー光はピンホール(102)を通過できず、結果的に波面の揃ったレーザー光のみがピンホール(102)を通過することになる。
【0031】
この原理を図11を用いて説明する。図11は、半径hの入射ビームを、焦点距離fのレンズによりその焦平面に置かれた半径aのピンホールに照射した場合を例示したものである。
【0032】
まず、たとえば、レンズ位置(あるいは瞳位置)ξ1で点光源とする波面を考える。点ξ1からピンホールの縁Zu(点ξ1に近い側)までの光路長l1uは、光路の屈折率をnとして、次式で与えられる。
【0033】
【数5】
Figure 0004614495
【0034】
また、点ξ1からピンホールの縁Zd(点ξ1に遠い側)までの光路長l1dは、同様に次式で与えられる。
【0035】
【数6】
Figure 0004614495
【0036】
したがって、これらの光路差Δlは、次式で与えられる。
【0037】
【数7】
Figure 0004614495
【0038】
この数7をテーラー展開して、1までの微小量をとると、
【0039】
【数8】
Figure 0004614495
【0040】
となる。このΔ1が、点ξ1から出た光がピンホールを通り抜けたときの波面の最大のズレを表す。このとき、光の波長をλとすると、位相差δ1は、
【0041】
【数9】
Figure 0004614495
【0042】
で与えられる。これは、波面収差であり、これ以上の位相差がでるものはピンホールを通る抜けることができないということを示している。
【0043】
また、光軸上の点ξ0からピンホールの縁Zuまでの光路長l0uは、次式で与えられる。
【0044】
【数10】
Figure 0004614495
【0045】
この場合、最大の位相差は光軸上を通る光との光路差であるから、同様な計算をすると、位相差δ0は、
【0046】
【数11】
Figure 0004614495
【0047】
である。すなわち、図11のようなレーザービームがピンホールを通り抜けるとき、各瞳面において発した光が持つ最大位相差はδ1〜δ0の間の値をとり、結果として全ビームがピンホールを通る時には、δ1以下の位相差をもって通過することになる。したがって、仮にレーザービームの波面が乱れていても、図10に例示した空間フィルター(100)を設けることで、δ1以下の位相ズレを持つレーザー光だけを通すことができる。
【0048】
このことを二重共鳴吸収顕微鏡における中空イレース光の形成の場合で説明すると、中空イレース光として、光軸近傍領域で電場強度がゼロとなる一次ベッセルビームを、図8に例示した位相板を用いて形成する場合、少なくとも位相板に入射されるイレース光の位相差が光軸に関して対称な位置でπ/2でないと、光軸で電場強度が相殺せず、良好な中空ビーム形状とならない。しかし、図10の空間フィルター(100)をイレース光(波長λ2)の光路上に設ければ、イレース光の位相差をδ1以下にすることができる。具体的には、
【0049】
【数12】
Figure 0004614495
【0050】
の条件を満たす位相板を利用すれば、イレース光の位相差が光軸に関して対称な位置で電場強度の符号が反転し、光軸上で電場強度が弱くなる。すなわち、超解像性を実現できる最低限のビームプロファイルを持った中空イレース光を発生することができる。数12を変形して、空間フィルター(100)を構成するピンホール(102)についての条件とすると、
【0051】
【数13】
Figure 0004614495
【0052】
となる。これは、ピンホール(102)のサイズを与える条件である。さらに、この数13を、イレース光のビーム径すなわち瞳面で制限される実効的な開口数NAで書けば、次式が得られる。
【0053】
【数14】
Figure 0004614495
【0054】
したがって、この発明の二重共鳴吸収顕微鏡における空間フィルター(100)には、数13あるいは数14で与えられる条件を満たすピンホール(102)を用いることが好ましく、この空間フィルター(100)を通すことによって、位相差δ1以下のビームプロファイルのイレース光のみを取り出すことができ、このイレース光をもって超解像性の発現に好適な中空イレース光を位相板を介して生成できるようになる。
【0055】
なお、数13および数14は、ピンホール(102)の条件ではあるが、集光レンズの焦点距離fや開口数NAなどの数値をも用いているので、ピンホール(102)と集光レンズ(101)との条件、あるいは空間フィルター(100)自体の条件とも言うことができる。
【0056】
この出願の発明は、以上のとおりの特徴を持つものであるが、以下に実施例を示し、さらに具体的に説明する。
【0057】
【実施例】
図12は、この発明の二重共鳴吸収顕微鏡の一実施例を示した概略図である。この図12に例示した二重共鳴吸収顕微鏡は、レーザー走査型蛍光顕微鏡を構成しており、ポンプ光およびイレース光を集光してスポット化し、試料(523)をそのスポットと相対的に走査させながら蛍光を検出し、蛍光信号をコンピュータ(501)を用いて画像化するシステムとなっている。
【0058】
このシステム全体は、コンピュータ(501)により制御される。コンピュータ(501)は、レーザーコントローラー(502)を介して、基本光源であるNd:YAGレーザー(505)の発振のタイミングを制御する。それと同時に、試料ステージコントローラー(503)を介して、試料ステージ(524)の移動をレーザー発振のタイミングと同期させながら制御し、試料(523)を二次元走査する。また、同様にレーザー発振と同期させてカメラコントローラー(504)を介して、ICCDカメラ(540)から試料(523)の蛍光信号を取得する。
【0059】
本実施例では、試料(523)は蛍光ラベラー分子により染色されたものとし、その蛍光ラベラー分子としてはローダミン系分子を想定する。図13は、ローダミン系分子の一つであるローダミン6Gの分光データを例示したものである。この図13に例示したように、S0→S1励起に相当する吸収バンドが530nm前後に存在し、S1→S2励起および蛍光発光帯域が600nm前後に存在する。したがって、波長λ1=532nmのポンプ光でS0→S1励起させ、波長λ2=599nmのイレース光でS1→S2励起させることで、二重共鳴吸収過程と誘導放出過程により、599nm以外の波長の蛍光は消失する。
【0060】
波長532nm光は、Nd:YAGレーザー(505)の基本波(波長1064nm)をBBO結晶やKTP結晶などからなる波長変調素子(507)により2倍波変調することで生成できる。波長599nm光は、Ba(NO32等のラマンシフター(512)で波長532nmを599nmに変換することで生成できる。波長変調素子(507)からの波長532nm光は、ハーフミラー(508)により分光され、その透過光は、テレスコープ(509)により適正サイズの平行光に拡大されて、ポンプ光として利用される。他方、反射光は、ラマンシフター(512)によって波長599nm光に変調されて、イレース光として利用される。
【0061】
一般にNd:YAGレーザー(505)は、共振器にガウシアンミラーを用いているため、ビームの光軸近傍の中央部の波面は比較的揃っているが、ビーム周縁部は波面の乱れが多くなり、中央部と比較すると位相差が生じる。この波面すなわち位相面の歪みのために、レーザービームの全径を利用して中空イレース光としての一次ベッセルビームを形成しようとすると、超解像性の実現に良好な中空ビームとならない。
【0062】
そこで、本実施例では、前述した空間フィルター(100)を、ラマンシフター(512)後のイレース光の光路上に設けており、この空間フィルター(100)を通過させて、波面の乱れを少なくともλ2/4以下に抑制したビームプロファイルのイレース光のみを取り出すことができる。具体的には、まず、ラマンシフター(512)から出力されるイレース光のビーム径を2mmとして、焦点距離f=50cmの集光レンズ(101)でピンホール(102)に集光する。この場合、イレース光の光路の屈折率n、つまり空気の屈折率nを1.0として、前記数13によりピンホール(102)の半径aを求めると、半径a=38μmとなる。このピンホール(102)を通過したイレース光は、集光レンズ(101)と同じ焦点距離fを持つコリメータレンズ(103)により2mmのビーム径に戻される。
【0063】
このようにして得られた良好なビームプロファイルのイレース光から、完全な一次ベッセルビームを生成することができる。具体的には、空間フィルター(100)を出たイレース光は、テレスコープ(513)で適正サイズの平行光に拡大された後、位相板(514)によって一次ベッセルビームとなる。
【0064】
本実施例では、イレース光の波長λ2は599nmであるので、位相板(514)として、図14に例示したようにガラス基板をエッチングしたものを利用した。ガラスの屈折率は1.46(波長599nm)であるため、イレース光の1/4波長はガラス基板の厚み325.5nmに対応する。したがって、図14に例示したように、位相板(514)の領域を4分割し、隣接する各領域で位相差が1/4波長ずつになるように厚さを設定してエッチングしておけば、イレース光を理想的に中空ビーム化させることができる。すなわち、イレース光を、その光軸と位相板(514)の中心とを一致させるようにして位相板(514)を通過させることで、位相板(514)の中心部分で対向した各領域を通るイレース光の光軸付近領域の位相が反転するため、その光軸付近領域の電場強度はゼロとなる。これにより、蛍光抑制による超解像性の発現に理想的な中空ビーム形状をもつイレース光が得られるのである。このように中空ビーム化されたイレース光は、一次ベッセルビームとなっている。
【0065】
なお、位相板(514)としては、エッチングの代わりに弗化マグネシウム等の薄膜を位相差を与えるものとして基板上に蒸著したものを用いてもよい。また、理想的な中空ビーム・イレース光が得られる限り、ラマンシフター(512)、テレスコープ(513)、位相板(514)の順序は変更してもよいことは言うまでもない。
【0066】
ポンプ光および中空ビーム化されたイレース光は、各々、反射ミラー(510)および反射ミラー(515)を介してビームコンバイナー(511)に入射され、同軸光となる。もちろん両光はテレスコープ(509)(513)によって同一サイズとされている。同軸光とされたポンプ光およびイレース光は、一種のテレスコープ光学系であるビームリデューサー(520)によって、集光対物レンズ(522)の開口一杯に両光を取り込むべく、集光対物レンズ(522)の口径と等しいサイズに調整される。そして、集光対物レンズ(522)により試料(523)面上に集光される。
【0067】
また、本実施例では、ポンプ光とイレース光の試料面への到達時刻を調整するため、イレース光の光路長を調整できるようになっている。具体的には、直線移動ステージ(518)およびそれに搭載されたプリズム(519)からなる遅延光学系が、反射ミラー(516)による反射光路側に備えられている。テレスコープ(513)からのイレース光は、反射ミラー(515)(516)を介して遅延光学系のプリズム(519)に入射される。このとき、直線移動ステージ(518)を、イレース光のポンプ光に対する遅延距離だけ移動させ、プリズム(519)を介したイレース光の折り返し距離を調整する。遅延距離は、到達時間差1nsecに対して30cmとなる。この遅延距離は、たとえばマイクロメーター等を用いて測定でき、その測定結果を直線移動ステージ(518)の移動距離に反映させればよい。これにより、完全にポンプ光の照射時間がイレース光のそれとオーバーラップする、蛍光抑制の発現に最適な照射が可能となる。なお、ポンプ光の光源およびイレース光の光源として、独立したレーザー、たとえば二台のNd:YAGパルスレーザーを用いた場合には、時間差を持つ二つのトリガーパルスを与えることにより、独立に各光源のQスイッチシグナルを電気的制御しても、ポンプ光およびイレース光の試料(523)への到達時刻を調整することできる。
【0068】
さて、このようにしてポンプ光およびイレース光が試料(523)に照射されると、ポンプ光の照射領域の一部に中空イレース光が重なっていることで、両光が重なり合っている照射領域は蛍光抑制領域A1となり、中空イレース光の中空部分であるポンプ光のみの照射領域は蛍光領域A0となり(図6参照)、この蛍光領域A0(=観察領域)のみからローダミン系分子の蛍光が発生する。
【0069】
この蛍光は、再び集光対物レンズ(522)を通過し、接眼レンズ(538)から分光器(539)へ入射する。分光器(539)は、たとえば図15に例示したように、コリメータ球面鏡(5391)、フォーカシング球面鏡(5392)、および機械的に切り替え可能な回折格子(5393)を基本光学系として備えている。入射スリット(5395)を通過した蛍光は、反射ミラー(5394)でコリメータ球面鏡(5391)に入射され、コリメータ球面鏡(5391)で回折格子(5393)上へ集光される。そして、回折格子(5393)上で波長分解された蛍光は、フォーカシング球面鏡(5392)でICCDカメラ(540)のCCD素子上に結像される。
【0070】
このときのICCDカメラ(540)で得られる信号は、レーザー1ショット当りの蛍光スペクトルである。レーザー1ショットに同期させて試料ステージ(524)を二次元移動させて、そのときの蛍光スペクトルをコンピュータ(501)により積算画像化することで、試料(523)の二次元蛍光像を構築することができる。また、蛍光信号にポンプ光およびイレース光が混在してしまっている場合には、コンピュータ(501)による画像生成において、ポンプ光およびイレース光の波長成分の信号を取り除き、本来の蛍光波長成分のみの信号を用いて画像化すれば、十分な超解像性が発現し、且つ高いS/Nの蛍光像を得ることができる。
【0071】
また、超解像性をさらに向上すべく、分光器(539)の前に、ポンプ光波長をカットするノッチフィルター(536)およびイレース光波長をカットするノッチフィルター(537)を挿入しておいてもよい(図15中では、分光器(539)への接眼レンズ(538)の前に挿入されている)。これにより、分光器(539)に入射する前にポンプ光およびイレース光を蛍光信号から分離して、本来の蛍光成分のみをスペクトル分析することができ、蛍光信号のいわゆる純度を高め、より効果的に超解像性を発現させることができる。もちろん、ノッチフィルター(536)(537)以外にも、必要に応じてバンドパスフィルターやシャープカットフィルターを挿入し、蛍光ラベラー分子からの蛍光以外の不要な波長成分をカットするようにしてもよい。
【0072】
なお、仮に分光器(539)の入射スリット(5395)を開いて、回折格子(5393)のゼロ次光をICCDカメラ(540)のCCD素子上に結像すれば、試料(523)面からの蛍光像そのものとなる。特にこの場合では、S/N向上のため、上記のノッチフィルター(536)(537)や、バンドパスフィルターあるいはシャープカットフィルターを挿入しておくことが好ましい。
【0073】
次に、本実施例の試料移動機構について説明する。前記のようにコンピュータ制御される試料ステージ(524)は、XYZφθ方向への5次元移動ステージとなっている。
【0074】
まず、光軸方向であるZ方向への移動には、たとえば、ピエゾ圧電素子の一種を用いたインチワームステージ機構を用いることができ、ローターリーエンコーダーでその絶対位置をモニターできるように構成されていることが好ましい。
【0075】
一般に、開口数の大きい対物レンズで集光すると、焦点深度は非常に浅くなり、その焦点位置の探索が非常に困難である。たとえば、開口数NAのレンズで集光したときの、焦点からδzだけ離れた点における集光ビームの広がりdは、以下の式で与えられる。
【0076】
【数15】
Figure 0004614495
【0077】
ここで仮にδzが600nmであるとすると、dは約400nm程度となる。これは、ポンプ光を回折限界まで絞ったサイズと同等であり、基本的には1μm以下の精度で位置制御を行なう必要があることを意味している。そのため、ピエソ圧電素子の一種を用いたインチワームステージは、サブμmでの位置制御が可能なために、超解像性を発現するこの発明の二重共鳴吸収顕微鏡に適したステージである。また、絶対位置をモニターすることで、試料(523)を交換したとしても、迅速に観察領域を発見できる。
【0078】
図16は、試料ステージ(524)のXY方向の二次元移動機構の一例を示したものである。この図16に例示したXY二次元移動機構は、板バネ(601)および二つの積層型ピエゾ圧電素子(602)(603)から構成されており、積層型ピエゾ圧電素子(602)(603)で板バネ(601)を駆動し、一方の積層型ピエゾ圧電素子(602)でX軸方向へ、他方の積層型ピエゾ圧電素子(603)でY軸方向へ、試料ステージ(524)を光軸と直交する面内において二次元移動させる。また、図17に例示したように、直接、積層型ピエゾ圧電(602)(603)を試料ステージ(524)に取り付けた移動機構を用いることもできるが、図16のように板バネ(601)を介した機構の方が、走査面の歪みによる画質劣化の発生をより効果的に抑制することができる。
【0079】
また、試料ステージ(524)にはθφ方向の駆動機構をも設けているが、これらは試料(523)表面とポンプ光およびイレース光の光軸とを正確に直交させるために付加されたものである。
【0080】
以上の五次元移動機構による試料ステージ(524)は、試料(523)に対するメカニカルスキャンを前提としている場合のものであるが、たとえば、揺動するガルバノミラーを光路上に設けて、レーザービーム自体を走査することもできる。
【0081】
さてここで、ポンプ光およびイレース光の光軸調整の一例について説明する。光軸調整用の標準試料としては、ポンプ光およびイレース光の両光に対して透明な薄膜にローダミンBを分散させてなるものを用いる。ローダミンBは、ポンプ光およびイレース光の両光によって高い確率でS0→S1励起が起きるため、十分な量の蛍光を観測することが可能となる。この標準試料としての薄膜は、たとえば、溶液状態のPMMAにローダミンBを分散させて、スライドガラスの上に厚さ数μmでスピンコートすることで製作される。
【0082】
光軸調整の手順としては、上記標準試料にポンプ光およびイレース光を同時照射し、発生される蛍光をICCDカメラ(540)を介してコンピュータ(501)で観察しながら、ポンプ光の集光点とイレース光の集光点が一致するように、ポンプ光の光路上にある反射ミラー(510)またはイレース光の光路上にある反射ミラー(515)の傾きなどを調節して集光点の位置を移動させる。このとき、ポンプ光およびイレース光の集光点が一致するときの蛍光像は、発光面積が最小となり、且つ、発光輝度が最大となるので、そのような蛍光像が得られるように光学系を調整すれば、ポンプ光およびイレース光の光軸一致が実現される。
【0083】
なお、図12において、(533)はハーフミラー、(534)は照明光用レンズ、(535)は照明光源であり、これらは光軸調整のために用いられる光学系である。
【0084】
また、図12に例示したように、光軸調整のための別の顕微鏡光学系を、試料(523)の後側に設けておいてもよい。図12において、(525)は透過光用レンズ、(526)はハーフミラー、(527)は照明光用レンズ、(528)は照明光源、(529)(530)はポンプ光およびイレース光をカットするノッチフィルター、(531)は接眼レンズ、(532)はICCDカメラであり、これらによって光軸調整用の顕微鏡光学系が構成されている。
【0085】
以下に、上述したシステム全体の制御について説明する。
【0086】
本実施例の顕微鏡システムは、電気的制御を行うユニットとして、ICCDカメラ(540)(上記光軸用顕微鏡光学系を併せ備えた場合にはICCD(532)も)を制御するカメラコントローラー(504)と、試料ステージ(524)を制御する試料ステージコントローラー(503)と、Nd:YAGレーザー(505)を制御するレーザーコントローラー(502)とを有しており、これらのコントローラーはコンピュータ(501)により集中管理される。
【0087】
ICCDカメラ(540)に対しては蛍光信号の検出時間を決めるゲートパルスの発生と取得された蛍光信号のコンピュータ(501)ヘの送信、試料ステージ(524)に対してはピエゾ圧電素子(602)(603)(図16、図17参照)のステップ移動、Nd:YAGレーザー(505)に対してはQスイッチ信号の制御がそれぞれ行われる。システムの処理シーケンスとしては、
1.Nd:YAGレーザーの発振
2.ICCDカメラのゲートパルス発生
3.データ取り込み
4.ピエゾ圧電素子のステップ移動
というサイクルを、取得する画像の画素数分だけ繰り返すことになる。ICCDカメラ(540)からの各画素毎の蛍光スペクトルは、コンピュータ(501)にて数値データとして取り込まれ、全画素分のデータを取得後、数値演算処理によって、バックグラウンド信号として混在しているポンプ光およびイレース光の波長成分を除去し、その他の波長成分の積分値を1画素の画像信号とする。このようにして得られた画像データは必要に応じて、CRTやプリンター等の外部出力装置に出力されたり、HDDやFDD等の記憶装置に記憶される。
【0088】
この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0089】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、この出願の発明によって、超解像性に理想的な中空イレース光を発生させることができ、超解像性をより確実に実現できる、新しい二重共鳴吸収顕微鏡が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】基底状態の試料分子の電子配置を例示した図である。
【図2】S1状態に励起された試料分子の電子配置を例示した図である。
【図3】S2状態に励起された試料分子の電子配置を例示した図である。
【図4】脱励起した試料分子の電子配置を例示した図である。
【図5】二重共鳴吸収過程を例示した概念図である。
【図6】二重共鳴吸収過程を空間的に例示した概念図である。
【図7】ポンプ光およびイレース光の一部重合せおよびそれによる蛍光抑制を例示した概念図である。
【図8】イレース光の中空ビーム化のための位相板の一例を示した図である。
【図9】光紬を原点とした一次ベッセルビームの断面の位相分布を例示した概念図である。
【図10】この発明の二重共鳴吸収顕微鏡にて用いられる空間フィルターの一例を示した概略図である。
【図11】空間フィルターによる良好なビームプロファイルのイレース光形成の原理を説明する図である。
【図12】この発明の一実施例である二重共鳴吸収顕微鏡を用いたレーザー走査型蛍光顕微鏡システムを例示した概略図である。
【図13】ローダミン6Gの吸収特性(実線)および蛍光特性(点線)を例示した図である。
【図14】ガラス基板のエッチングによる位相板の一例を示した概略図である。
【図15】図12の顕微鏡システムにおける分光器の内部構造を例示した概略図である。
【図16】図12の顕微鏡システムにおける試料ステージのXY二次元移動機構の一例を示した概略図である。
【図17】試料ステージのXY二次元移動機構の別の一例を示した概略図である。
【符号の説明】
100 空間フィルター
101 集光レンズ
102 ピンホール
103 コリメートレンズ
501 コンピュータ
502 レーザーコントローラー
503 試料ステージコントローラー
504 カメラコントローラー
505 Nd:YAGレーザー
507 波長変調素子
508 ハーフミラー
509 テレスコープ
510 反射ミラー
511 ビームコンバイナー
512 ラマンシフター
513 テレスコープ
514 位相板
515,516,517 反射ミラー
518 直線移動ステージ
519 プリズム
520 ビームリデューサー
521 ハーフミラー
522 集光対物レンズ
523 試料
524 試料ステージ
525 透過光用レンズ
526 ハーフミラー
527 照明光用レンズ
528 照明光源
529,530 ノッチフィルター
531 接眼レンズ
532 ICCDカメラ
533 ハーフミラー
534 照明光用レンズ
535 照明光源
536,537 ノッチフィルター
538 接眼レンズ
539 分光器
5391 コリメータ球面鏡
5392 フォーカシング球面鏡
5393 回折格子
5394 反射ミラー
5395 スリット
540 ICCDカメラ
601 板バネ
602,603 積層型エピゾ圧電素子

Claims (5)

  1. 試料分子を基底状態から第一電子励起状態へ励起させる波長λ1のポンプ光の光源と、第一電子励起状態の試料分子を第二電子励起状態またはより高い励起状態へ励起させる波長λ2のイレース光の光源と、ポンプ光およびイレース光の照射領域を一部分重ね合わせる重ね手段とを備えており、重ね手段を介してポンプ光およびイレース光を試料に照射することにより、第一電子励起状態の試料分子が基底状態へ脱励起する際の発光領域を一部分抑制する二重共鳴吸収顕微鏡において、
    集光レンズおよびコリメートレンズとその間に設けられたピンホールとを有し、イレース光を集光レンズによりピンホールに集光し、且つピンホールを通過したイレース光のみをコリメートレンズにより平行光にコリメートする空間フィルターが、イレース光の光路に備えられ、さらに、前記空間フィルターを通過したイレース光にその光軸を中心としてπだけ位相差を与える位相変調素子が備えられていることを特徴とする二重共鳴吸収顕微鏡。
  2. ピンホールの半径aが、
    Figure 0004614495
    の条件または
    Figure 0004614495
    の条件を満たしている請求項1の二重共鳴吸収顕微鏡。
  3. 前記位相変調素子は、イレース光に対して透明かつオプティカルフラットな平行基板の上に、イレース光に光軸を中心としてπだけ位相差を与え得る厚み分布を持つ光学薄膜が被膜されてなる請求項1または2の二重共鳴吸収顕微鏡。
  4. 前記位相変調素子は、イレース光に対して透明かつオプティカルフラットな平行基板に、イレース光に光軸を中心としてπだけ位相差を与え得るエッチングが施されてなる請求項1または2の二重共鳴吸収顕微鏡。
  5. 試料は、基底状態を含め少なくとも三つの電子状態を有する蛍光ラベラー分子により染色されており、前記試料分子はこの蛍光ラベラー分子である請求項1ないし4のいずれかの二重共鳴吸収顕微鏡。
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