JP4613460B2 - ブレース構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物躯体に入力される振動エネルギーなどの外力に抵抗するブレース構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建物架構に入力された振動の減衰効果を向上させるために、建物架構に備えられたブレースの接合部に摩擦ダンパーが介装されたブレース構造が知られている。
【0003】
この摩擦ダンパーは、建物架構の柱部材と梁部材とで区画される空間内にこれら柱梁を各一辺とする三角形の仮想対辺に沿って介装してされたブレースと、柱梁の仕口部に設けられたガゼットプレートとの接合部に形成される。例えば、ブレースの端部とガゼットプレートとの間に摩擦板を挟み込みボルト・ナットで締結する際に、ボルト頭部とブレースまたはガゼットプレートとの間に、付勢手段としての皿ばねを介装している。このとき、ブレースとガゼットプレートとに設けられたボルトの挿通孔は、いずれか一方をブレースへの荷重作用方向に沿った長穴とし、ブレースとガゼットプレートとが前記荷重作用方向に相対変位するように構成されている。
【0004】
前記皿ばねは、前記ボルト・ナットの締め込みによって圧縮され、その弾発力によってブレース、ガゼットプレートおよび摩擦板に圧接力が付与されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来のブレース構造にあっては、摩擦ダンパーがブレースと建物架構側のガゼットプレートとの接合部で構成されているため、それらの間に摩擦材を介装する作業、ブレースとガゼットプレートとにボルトを貫通させるとともに皿ばねを備えてナットで固定する作業、ナットを締め込んで所定の圧接力を付与する作業等をいずれも現場で行わなければならない。これらの作業は、煩雑で作業条件が悪い現場で行われるため、施工性が悪く多大な手間と時間がかかり工期が長期化するという課題がある。さらにボルトの締め込みにおいても十分な設備を使用できないため、すべての皿ばねの付勢力を均一に調節することは難しく所望のダンパー効果が得られにくいという課題があった。
【0006】
また、前記摩擦ダンパーはブレースとガゼットプレートとの狭い接合部に設けられる一方で、多数のボルト・ナットや皿ばねを用いるため、柱梁の仕口近傍に多数の皿ばねとボルト・ナットとが集中して見映えが悪くなり露出する部分には適用できないという課題があった。
【0007】
そこで、本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、安定した性能と建物架構に容易に組み込める優れた施工性とを備え、外部に露出しても建物の美観を損ねることがない摩擦ダンパーを備えたブレース構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために本発明は、建物躯体の柱と梁とで囲まれる開口部に取り付けられて、建物躯体に入力される外力に抵抗するブレース構造において、複数の板材が重ね合わされブレースの荷重作用方向に互いに摺動しつつ移動可能にボルト接合され、それらの重合部に前記ボルトによって前記板材同士に圧接力を付与する皿ばねを備えて摩擦ダンパーを構成し、互いに圧接し合う前記板材同士はそれぞれ前記荷重作用方向の相反する側の端部に結合部を備え、この結合部が前記躯体に回動自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、摩擦ダンパーをブレースに組み込んだ状態で単体として構成することができるため、摩擦ダンパーを現場で組み立てる必要はなく、例えば工場等の設備の整った場所で摩擦ダンパーを組み立てることができる。したがって、容易にかつ短時間で摩擦ダンパーを組み立てることができるとともに、機械作業によって皿ばねの付勢力を調節して所望の摩擦力が作用する摩擦ダンパーを構成することができる。
【0010】
さらに、摩擦ダンパーを備えたこのブレースには両端部に結合部が設けられているので、このブレースを建物躯体に取り付けるだけで、建物にブレースと摩擦ダンパーとを容易に備えることができる。
【0011】
また、前記板材は前記両結合部間の全域にわたって重合され、この重合部分に前記ボルト・ナットおよび皿ばねが備えられていることを特徴とする。
【0012】
すなわち、ボルトや皿ばねはブレースの接合部に集中しないので建物架構が局部的に大型化することなく、ブレース全域に分散されて柱梁とのバランスがよい建物架構を構築できる。
【0013】
更に、前記摩擦ダンパーは前記板材の座屈変形を防止する鋼管でその外周を覆われていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、相対変位する板材は鋼管によって座屈変形が防止されるので、安定したダンパー性能を確保することができる。さらに、この鋼管によって皿ばねおよびボルトナットが覆われて外部に露出しないので見映えがよく、露出する部分であってもこのブレース構造を適用することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。図1〜図3は本発明のブレース構造の一実施形態を示し、図1は該ブレース構造の側断面図、図2は図1の平断面図、図3は図1のA−A断面図である。
【0016】
本発明のブレース構造は、ブレースユニット30が建物架構の柱12と梁16とで囲まれる開口部の対角に設けられた上下のガゼットプレート20に回動自在にピン結合されて、建物架構に入力される振動エネルギーなどの外力を吸収する。
【0017】
前記ブレースユニット30は、前記下ガゼットプレート20aに取り付けられる下ブレース体32と、前記上ガゼットプレート20bに取り付けられる上ブレース体38とで構成されている。
【0018】
下ブレース体32は短冊状の板材でなる3枚のブレース材34とこれらブレース材34を一体としてガゼットプレート20に結合する結合部材36とで構成されている。
【0019】
前記3枚のブレース材34は、その板面が互いに対向され適宜間隔を隔てた状態で、それらの長手方向の一方の端部が結合部材36に溶接されている。
【0020】
結合部材36は、前記ガゼットプレート20を挟む2枚の軸受け板36aとこれら軸受け板36aの一端を間隔を隔てて接合する接合部36bとで構成され、この接合部36bに軸受け板36aと反対側から前記ブレース材34が溶接されている。前記軸受け板36aには、この下ブレース体32をガゼットプレート20にピン接合するための貫通孔36cが設けられ、この貫通孔36cにはガゼットプレートの開口20cと共に回動軸44が挿通される。
【0021】
前記上ブレース体38は、前記下ブレース体32と同様の板材でなり間隔を隔てた2枚のブレース材40とそれらの一端部に設けられた前記結合部材36とで構成されている。結合部材36には下ブレース体32と同様にその接合部36bに軸受け板36aと反対側から前記ブレース材40が溶接されている。
【0022】
前記下ブレース体32の3枚のブレース材34間にそれぞれ、前記上ブレース体38の2枚のブレース材40が挿入されて5枚のブレース材34、40は重合されている。下ブレース体32のブレース材34にはそれぞれ幅方向の中央に位置させて、長手方向に適宜間隔を隔ててボルト46が貫通される複数の挿通孔34aが設けられ、この挿通孔34aに対応させて上ブレース体38のブレース材40には、その長手方向に沿わせて長穴40aが形成されている。重合された各ブレース材34、40には、前記挿通孔34aおよび長穴40aを避けてそれぞれ摩擦板48が固定されている。ここで、摩擦板48は熱硬化型樹脂を結合材として、アラミド繊維,ガラス繊維,ビニロン繊維,カーボンファイバー,アスベストなどの繊維材料と、カシューダスト,鉛などの摩擦調整材と、硫酸バリュームなどの充填剤とからなる複合摩擦材料で形成され、一定の摩擦係数を有する摩耗の著しく少ない特性を備える。
【0023】
前記5枚のブレース材34、40の重合部の挿通孔34aと長穴40aとにボルト46を貫通させ、その突出した部分に7枚の皿ばね50aを重ね合わせた皿ばねユニット50を挿通させてナット52で締結し、皿ばねユニット50を圧縮させる。この皿ばねユニット50の圧縮による弾発力が各ブレース材34、40の摩擦板48を押圧するように付勢する。
【0024】
そして、建物架構が入力された振動によって層間変位すると、このブレースユニット30は上ブレース体38と下ブレース体32とがその荷重作用方向に相対変位し、その変位エネルギーを摩擦によって消費して振動を減衰させる摩擦ダンパーとして機能する。このとき、ボルト頭部46aとブレース材34間、皿ばねユニット50とブレース材34およびナット52間には大型のワッシャ54を介在させるとボルト軸力が確実に皿ばねユニット50に入力され、所定の摩擦力が得られやすい。
【0025】
また、下ブレース体32には、前記摩擦ダンパーをその外部から覆う角形鋼管56が設けられ、3枚のブレース材34のうち真ん中に位置するブレース材34bが他のブレース材34cよりわずかに幅広く形成されこのブレース材34bの側部に角形鋼管56が溶接され一体をなしている。この角形鋼管56は下ブレース体32と上ブレース体38とが相対変位する際にガイドとして作用しそれらの座屈変形を防止する機能を有している。すなわち、このブレースユニット30は外観上は角形鋼管56の両端部にガゼットプレート20との結合部材36を備えた形態をなしている。
【0026】
このブレースユニット30は、工場等で組み立てられて現場に搬入され、柱梁の仕口部に設けられたガゼットプレート20を結合部材36の軸受け板36a間に挟むように上下のブレース体32、38を配設し、それら軸受け板36aとガセットプレート20を貫通する回動軸44で固定する。したがって、このブレースユニット30を建物躯体に取り付けるだけで、建物架構にブレースと摩擦ダンパーとを容易に備えることができる。
【0027】
すなわち、本実施形態のブレース構造は建物のブレースを構成する躯体との接合部に形成される形態ではなく、ユニットとして建物架構とは別体として構成することができるため、摩擦ダンパーを現場で組み立てる必要はない。したがって、工場等の充実した設備を使って容易にかつ短時間で摩擦ダンパーを組み立てることができるとともに、機械作業によって皿ばねユニット50の付勢力を正確に調節し所望の摩擦力が作用する摩擦ダンパーを構成することができる。
【0028】
また、摩擦ダンパーに押圧力を付勢する皿ばねユニット50やボルト46・ナット52をブレース材34、40の全域にわたって分散させてたので、ボルト46や皿ばねユニット50がブレースの接合部に集中せず、柱梁とのバランスがよい建物架構を構築できる。
【0029】
さらに、摩擦ダンパーを構成するブレース材34、40の重合部は角形鋼管56によってその変位方向にガイドされて座屈変形しないので、安定したダンパー性能および高い信頼性を確保することができる。また、その角形鋼管56によって皿ばねユニット50およびボルト46・ナット52が覆われて外部に露出しないので見映えがよく、露出する部分であっても摩擦ダンパーを備えることができる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のブレース構造にあっては、摩擦ダンパーを備えたブレースを単体として構成し、工場等で容易にかつ短時間で摩擦ダンパーを組み立てることができるとともに、機械作業によって所望の摩擦力に設定することができ、建物に容易に備えることができる。
【0031】
また、前記板材の全域にわたって複数のボルトおよび皿ばねを備えた構成とすると、柱梁とのバランスがよい建物架構を構築できる。
【0032】
更に、前記摩擦ダンパーにはその外周を板材の座屈変形を防止する鋼管で覆うので、安定したダンパー性能を確保することができるとともに、建物の美観を損ねることなく露出する部分に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すブレース構造の側断面図である。
【図2】図1の平断面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【符号の説明】
30 摩擦ダンパー
34 ブレース材(板材)
36 結合部材(結合部)
40 ブレース材(板材)
46 ボルト
50a 皿ばね
56 角形鋼管(鋼管)
Claims (3)
- 建物躯体の柱と梁とで囲まれる開口部に取り付けられて、建物躯体に入力される外力に抵抗するブレース構造において、
複数の板材が重ね合わされブレースの荷重作用方向に互いに摺動しつつ移動可能にボルト・ナット接合され、それらの重合部に前記ボルトによって前記板材同士に圧接力を付与する皿ばねを備えて摩擦ダンパーを構成し、互いに圧接し合う前記板材同士はそれぞれ前記荷重作用方向の相反する側の端部に結合部を備え、この結合部が前記躯体に回動自在に取り付けられていることを特徴とするブレース構造。 - 前記板材は前記両結合部間の全域にわたって重合され、この重合部分に前記ボルト・ナットおよび皿ばねが備えられていることを特徴とする請求項1に記載のブレース構造。
- 前記摩擦ダンパーは前記板材の座屈変形を防止する鋼管でその外周を覆われていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレース構造。
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