JP4608813B2 - 大入熱溶接用鋼材および大入熱溶接用鋼の溶製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大入熱溶接に適した鋼材とその素材となる溶鋼の溶製方法に関し、特に 200kJ/cm以上の溶接入熱で溶接を行なうのに適した鋼材とその素材となる溶鋼の溶製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、鋼構造物や船舶の大型化が進むにつれて、使用する鋼材の高強度化および厚肉化のニーズが高まっている。厚肉鋼板の溶接においては、溶接能力を高めるために、サブマージアーク溶接,エレクトロガス溶接,エレクトロスラグ溶接等の大入熱溶接が採用される。ところが溶接入熱が大きくなると、溶接熱影響部の組織が粗大になり靱性が低下する。
【0003】
そこで溶接熱影響部の靱性低下を防止するために、鋼板にTiNを微細に分散させて、フェライト変態の核として利用することによって、溶接入熱による溶接熱影響部の組織の粗大化を防止する技術が知られている。
また特開昭60-152626 号公報には、希土類元素(以下、REM という)とTiとを複合添加して、REM の酸化物および/または硫化物(以下、REM(O,S)という)とTiNとを分散させることによって、オーステナイト粗大粒の成長を防止して、溶接熱影響部の靱性を向上する技術が開示されている。
【0004】
一方、溶接技術の進歩にともなって、溶接入熱が 200〜700 kJ/cmの大入熱で、厚さ40mmを超える鋼板を1パスで溶接することも可能になってきた。このような溶接入熱が 200kJ/cm以上の溶接を行なう場合には、従来から知られているようなREM やTiを添加する技術では、溶接熱影響部の靱性低下を十分に防止できない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題を解消し、大入熱溶接を行なう場合でも溶接熱影響部が優れた靱性を有する鋼板と、その素材となる溶鋼の溶製方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、REM を含有する種々の鋼板(厚さ60mm)を用いてエレクトロガス溶接(溶接入熱 500kJ/cm)を行ない、突き合わせ継手を製作した。その溶接熱影響部から試験片を切り出して、シャルピー衝撃試験を行ない、−40℃における吸収エネルギー vE-40 (J)を測定した。なお試験片は、JIS規格Z2202 に規定されるVノッチ標準寸法の試験片を使用し、ノッチ位置は溶接熱影響部とした。
【0007】
さらに、吸収エネルギーの大きい試験片と吸収エネルギーの小さい試験片とを詳細に調査した。その結果、吸収エネルギーの大きい(すなわち靭性の高い)試験片では微細なREM(O,S)粒子が多数分散しているのに対して、吸収エネルギーの小さい(すなわち靭性の低い)試験片ではREM(O,S)粒子が粗大化して個数が減少していることが分かった。
【0008】
そこでREM(O,S)粒子の析出と溶接熱影響部の靭性との関係を定量的に評価するために、シャルピー衝撃試験の試験片断面を電子顕微鏡で観察して、REM(O,S)粒子の試験片断面単位面積あたりの個数(以下、分散密度(個/cm2 )という)とREM(O,S)粒子の粒径を測定した。 REM(O,S)粒子の分散密度(個/cm2 )と−40℃における吸収エネルギー vE-40 が 100J以上の試験片の比率(%)との関係を図1に示す。
【0009】
図1から明らかなように、粒径 500nm以下のREM(O,S)粒子が 107個/cm2 以上分散すると、溶接熱影響部の靭性が著しく向上した。
次に、微細なREM(O,S)粒子が多数分散した鋼板の素材となる溶鋼を得るための溶製方法を検討した。その結果、REM は酸化物や硫化物を形成しやすい元素であるから、鋼板中にREM(O,S)粒子を分散させる上で、溶製段階における溶鋼中のO含有量やS含有量が多大な影響を及ぼすことが分かった。 つまり、溶鋼に REMを添加すると溶鋼中のOやSと反応して、 REM酸化物や REM硫化物が生成される。そして溶鋼が凝固する際に残余の REMがこれらの REM酸化物や REM硫化物を核として析出して、微細なREM(O,S)粒子が多数分散するのである。
【0010】
Sは溶鋼中に不可避的に含まれる元素であるが、Oは脱酸処理を施すことによって溶鋼中の溶存量を調整することは可能である。そこで REMを添加するときの溶鋼中の溶存酸素量(質量%)とREM(O,S)粒子の分散密度(個/cm2 )との関係について調査した。その結果を図2に示す。
図2から明らかなように、溶存酸素量が 0.002〜0.02質量%の範囲内を満足する溶鋼に REMを添加すると、その溶鋼を凝固し、さらに圧延して得られた鋼板に粒径 500nm以下のREM(O,S)粒子が 107個/cm2 以上分散された。
【0011】
本発明は、Cを0.01〜0.15質量%、Siを0.05〜0.40質量%、Mnを 0.5〜2.0 質量%、Alを 0.005〜0.02質量%、希土類元素を 0.003〜0.013 質量%、Sを 0.005質量%以下含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる組成を有し、かつ希土類元素の酸化物および/または硫化物からなる粒子が 107個/cm2 以上分散し、粒子の粒径が 500nm以下である組織を有する大入熱溶接用鋼材である。
【0012】
前記した大入熱溶接用鋼材の発明においては、第1の好適態様として、前記組成に加えて、Nb: 0.005〜0.10質量%およびV: 0.005〜0.15質量%のうちの1種または2種を含有する組成を有することが好ましい。
また第2の好適態様として、前記組成に加えて、Cu: 0.1〜1.0 質量%、Ni: 0.1〜2.0 質量%、Cr: 0.1〜1.0 質量%、Mo:0.05〜0.5 質量%およびB:0.0005〜0.0025質量%のうちの1種または2種以上を含有する組成を有することが好ましい。
【0013】
また本発明は、Cを0.01〜0.15質量%、Siを0.05〜0.40質量%、Mnを 0.5〜2.0 質量%、Alを 0.005〜0.02質量%、Sを 0.005質量%以下含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる溶鋼を溶製し、溶鋼中の溶存酸素量を 0.002〜0.02質量%として希土類元素を添加し、溶鋼中の希土類元素の含有量を 0.003〜0.013 質量%とする大入熱溶接用鋼の溶製方法である。
【0014】
前記した大入熱溶接用鋼の溶製方法の発明においては、第1の好適態様として、溶鋼が、Nb: 0.005〜0.10質量%およびV: 0.005〜0.15質量%のうちの1種または2種を含有することが好ましい。
また第2の好適態様として、溶鋼が、Cu: 0.1〜1.0 質量%、Ni: 0.1〜2.0 質量%、Cr: 0.1〜1.0 質量%、Mo:0.05〜0.5 質量%およびB:0.0005〜0.0025質量%のうちの1種または2種以上を含有することが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の溶製方法で溶製される大入熱溶接用鋼に含有される成分の限定理由を説明する。
C:0.01〜0.15質量%
Cは、鋼材の強度を確保するために必要な元素である。C含有量が0.01質量%未満では、構造用鋼として要求される強度が得られない。一方、0.15質量%を超えると、溶接時に多量の炭化物が溶接熱影響部に生成して、溶接熱影響部の靱性が低下する。したがって、Cは0.01〜0.15質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0016】
Si:0.05〜0.40質量%
Siは、脱酸作用を有する元素である。Si含有量が0.05質量%未満では、脱酸が不十分になる。一方、0.40質量%を超えると、鋼材や溶接熱影響部の靱性が低下する。したがって、Siは0.05〜0.40質量%の範囲内を満足する必要がある。
Mn: 0.5〜2.0 質量%
Mnは、鋼材の強度を向上させる元素である。Mn含有量が 0.5質量%未満では、構造用鋼として要求される強度が得られない。一方、 2.0質量%を超えると、上部ベイナイト相が析出するので溶接熱影響部の靱性が低下する。したがって、Mnは 0.5〜2.0 質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0017】
Al: 0.005〜0.02質量%
Alは、脱酸作用を有する元素である。Al含有量が 0.005質量%未満では、脱酸が不十分になる。一方、0.02質量%を超えると、鋼材や溶接熱影響部の靱性が低下し、さらには溶接金属へのAlの拡散によって溶接金属の靱性を劣化させる。したがって、Alは 0.005〜0.02質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0018】
S: 0.005質量%以下
Sは、 REMとともに、本発明の重要な元素であり、微細なREM(O,S)粒子を分散させて、溶接時にオーステナイト温度域まで加熱された溶接熱影響部のオーステナイト粒の成長をピンニング効果で抑制することによって、溶接熱影響部の靭性を向上する効果を有する。 S含有量が 0.005質量%を超えると、硫化物が鋼中に残留して、その硫化物が起点となって、脆性破壊が生じる危険性がある。したがって、Sは 0.005質量%以下とした。
【0019】
REM : 0.003〜0.013 質量%
REM は、Sとともに、本発明の重要な元素であり、微細なREM(O,S)粒子を分散させて、溶接時にオーステナイト温度域まで加熱された溶接熱影響部のオーステナイト粒の成長をピンニング効果で抑制することによって、溶接熱影響部の靭性を向上する効果を有する。 REM含有量が 0.003質量%未満では、REM(O,S)粒子が不足して粗大なオーステナイト粒が成長する。一方、 0.013質量%を超えると、 REM酸化物が凝集して粗大化するので、ピンニング効果が得られない。しかも粗大な REM酸化物が起点となって、脆性破壊が生じる危険性がある。したがって、 REMは 0.003〜0.013 質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0020】
なお、本発明の溶製方法で大入熱溶接用鋼を溶製するにあたって、REM を添加するときの溶鋼中の溶存酸素量が 0.002質量%未満では、 REM酸化物が析出しないので、 REM硫化物の析出核が不足して、図2に示すように、粒径 500nm以下の微細なREM(O,S)粒子の分散密度が所定量に到達しない。一方、0.02質量%を超えると、 REM酸化物が凝集して粗大化するので、 REM硫化物の析出核が不足して、図2に示すように、粒径 500nm以下の微細なREM(O,S)粒子の分散密度が所定量に到達しない。したがって、REM を添加するときの溶鋼中の溶存酸素量は 0.002〜0.02質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0021】
このように溶鋼中の溶存酸素量を調整するために、前記した通りSiおよびAlを添加して、その脱酸作用によって溶存酸素量を 0.002〜0.02質量%とするのである。
以上に説明した元素に加えて、さらに溶接熱影響部の靭性を向上するために、次に説明する元素を添加するのが好ましい。
【0022】
Nb: 0.005〜0.10質量%およびV: 0.005〜0.15質量%のうちの1種または2種
Nb,Vは、いずれも鋼材の熱間圧延後の冷却過程において、炭窒化物を形成して鋼材の強度を向上させる元素である。Nb,Vの含有量が不足すると、構造用鋼として要求される強度が得られない。一方、過剰に含有すると、鋼材や溶接熱影響部の靱性が低下する。したがって、これらの元素を含有する場合は、Nbは 0.005〜0.10質量%,Vは 0.005〜0.15質量%とするのが好ましい。
【0023】
Cu: 0.1〜1.0 質量%,Ni: 0.1〜2.0 質量%,Cr: 0.1〜1.0 質量%,Mo:0.05〜0.5 質量%およびB:0.0005〜0.0025質量%のうちの1種または2種以上
Cu,Ni,Cr,Mo,Bは、いずれも鋼材の強度と靱性を向上させる元素である。Cu,Ni,Cr,Mo,Bの含有量が不足すると、構造用鋼として要求される強度が得られない。一方、過剰に含有すると、鋼材や溶接熱影響部の靱性が低下する。したがって、これらの元素を含有する場合は、Cuは 0.1〜1.0 質量%,Niは 0.1〜2.0 質量%,Crは 0.1〜1.0 質量%,Moは0.05〜0.5 質量%,Bは0.0005〜0.0025質量%とするのが好ましい。
【0024】
なお本発明においては、溶鋼を溶製する際に使用する精錬装置は特定の構成に限定しない。上記の組成を有する溶鋼を溶製すれば良いのであるから、転炉や電気炉等の従来から知られている精錬炉を使用できる。さらに真空精錬等の2次精錬を併用しても問題はない。
また、得られた溶鋼を凝固させて鋳片を製造し、さらにその鋳片を熱間圧延して大入熱溶接用鋼板を製造する各工程におけるそれぞれの手段は特定の構成に限定しない。すなわち、溶鋼を凝固させて鋳片を製造する際には、連続鋳造や造塊−分塊等の従来から知られている手段が使用できる。さらに鋳片を熱間圧延するにあたって、鋳片を加熱炉で加熱して熱間圧延を行なっても良いし、あるいは直送圧延を行なってもよい。さらに熱間圧延が終了した後は、通常の空冷を行なっても良いし、あるいは加速冷却や熱処理を行なっても良い。
【0025】
次に、このようにして製造する本発明の大入熱溶接用鋼板の組成について説明する。
C:0.01〜0.15質量%
Cは、鋼材の強度を確保するために必要な元素である。C含有量が0.01質量%未満では、構造用鋼として要求される強度が得られない。一方、0.15質量%を超えると、溶接時に多量の炭化物が溶接熱影響部に生成して、溶接熱影響部の靱性が低下する。したがって、Cは0.01〜0.15質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0026】
Si:0.05〜0.40質量%
Siは、脱酸作用を有する元素である。Si含有量が0.05質量%未満では、脱酸が不十分になる。一方、0.40質量%を超えると、鋼材や溶接熱影響部の靱性が低下する。したがって、Siは0.05〜0.40質量%の範囲内を満足する必要がある。
Mn: 0.5〜2.0 質量%
Mnは、鋼材の強度を向上させる元素である。Mn含有量が 0.5質量%未満では、構造用鋼として要求される強度が得られない。一方、 2.0質量%を超えると、上部ベイナイト相が析出するので溶接熱影響部の靱性が低下する。したがって、Mnは 0.5〜2.0 質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0027】
Al: 0.005〜0.02質量%
Alは、脱酸作用を有する元素である。Al含有量が 0.005質量%未満では、脱酸が不十分になる。一方、0.02質量%を超えると、鋼材や溶接熱影響部の靱性が低下し、さらには溶接金属へのAlの拡散によって溶接金属の靱性を劣化させる。したがって、Alは 0.005〜0.02質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0028】
REM : 0.003〜0.013 質量%
REM は、Sとともに、本発明の重要な元素であり、微細なREM(O,S)粒子を分散させて、溶接時にオーステナイト温度域まで加熱された溶接熱影響部のオーステナイト粒の成長をピンニング効果で抑制することによって、溶接熱影響部の靭性を向上する効果を有する。 REM含有量が 0.003質量%未満では、REM(O,S)粒子が不足して粗大なオーステナイト粒が成長する。一方、 0.013質量%を超えると、 REM酸化物が凝集して粗大化するので、ピンニング効果が得られない。しかも粗大な REM酸化物が起点となって、脆性破壊が生じる危険性がある。したがって、 REMは 0.003〜0.013 質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0029】
S: 0.005質量%以下
Sは、 REMとともに、本発明の重要な元素であり、微細なREM(O,S)粒子を分散させて、溶接時にオーステナイト温度域まで加熱された溶接熱影響部のオーステナイト粒の成長をピンニング効果で抑制することによって、溶接熱影響部の靭性を向上する効果を有する。 S含有量が 0.005質量%を超えると、硫化物が鋼中に残留して、その硫化物が起点となって、脆性破壊が生じる危険性がある。したがって、Sは 0.005質量%以下とした。
【0030】
以上に説明した元素に加えて、さらに溶接熱影響部の靭性を向上するために、次に説明する元素を添加するのが好ましい。
Nb: 0.005〜0.10質量%およびV: 0.005〜0.15質量%のうちの1種または2種
Nb,Vは、いずれも鋼材の熱間圧延後の冷却過程において、炭窒化物を形成して鋼材の強度を向上させる元素である。Nb,Vの含有量が不足すると、構造用鋼として要求される強度が得られない。一方、過剰に含有すると、鋼材や溶接熱影響部の靱性が低下する。したがって、これらの元素を含有する場合は、Nbは 0.005〜0.10質量%,Vは 0.005〜0.15質量%とするのが好ましい。
【0031】
Cu: 0.1〜1.0 質量%,Ni: 0.1〜2.0 質量%,Cr: 0.1〜1.0 質量%,Mo:0.05〜0.5 質量%およびB:0.0005〜0.0025質量%のうちの1種または2種以上
Cu,Ni,Cr,Mo,Bは、いずれも鋼材の強度と靱性を向上させる元素である。Cu,Ni,Cr,Mo,Bの含有量が不足すると、構造用鋼として要求される強度が得られない。一方、過剰に含有すると、鋼材や溶接熱影響部の靱性が低下する。したがって、これらの元素を含有する場合は、Cuは 0.1〜1.0 質量%,Niは 0.1〜2.0 質量%,Crは 0.1〜1.0 質量%,Moは0.05〜0.5 質量%,Bは0.0005〜0.0025質量%とするのが好ましい。
【0032】
次に本発明の大入熱溶接用鋼材の組織について説明する。
図1に示すように、粒径 500nm以下のREM(O,S)粒子の分散密度が 107個/cm2 以上であると、溶接熱影響部の靭性が著しく向上する。一方、REM(O,S)粒子の粒径が 500nmを超えると、分散密度が 107個/cm2 以上であっても溶接熱影響部の靭性は向上しない。したがって、粒径 500nm以下のREM(O,S)粒子を 107個/cm2 以上分散させる必要がある。
【0033】
このようにして、大入熱溶接において優れた溶接熱影響部の靱性を有する鋼材を製造できる。
【0034】
【実施例】
表1に示す成分の溶鋼を溶製し、次いで連続鋳造で得られた鋳片を表2に示す加熱−圧延−冷却条件にて板厚60mmの鋼板を製造した。一部の鋼板には、加速冷却または焼入れ焼戻しを施して強度を向上させた。鋼板の圧延条件と厚さは、表2に示す通りである。表2中の鋼板番号の数字は、表1中の鋼片番号に対応する。たとえば、表2中の鋼板番号1は、表1中の鋼片番号1を圧延して得られた鋼板であることを示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表2に示す各鋼板について、厚さ方向1/4の位置から引張試験片(JIS規格Z2201 4号試験片)とシャルピー衝撃試験片(JIS規格Z2202 Vノッチ標準寸法)を採取して、引張試験とシャルピー衝撃試験を行ない、鋼板のYS(MPa ),TS(MPa )およびシャルピー破面遷移温度 VTrs(℃)を測定した。またシャルピー衝撃試験片の断面を電子顕微鏡で観察して、REM(O,S)粒子の分散密度を測定した。 その結果は表2に示す通りである。
【0038】
次いで、表2に示す各鋼板を用いてエレトクロガス溶接で突き合わせ継手を製作した。溶接入熱は 500kJ/cmとした。
表2に示す各継手の溶接熱影響部の厚さ方向1/4の位置からシャルピー衝撃試験片(JIS規格 Z2202 Vノッチ標準寸法)を3個採取して、シャルピー衝撃試験を行ない、吸収エネルギー(J)を測定した。なお試験片のノッチ位置は溶接熱影響部とし、試験温度は−40℃とした。その結果は、表2に示す通りである。
【0039】
発明例(すなわち鋼板番号1〜17)の継手の溶接熱影響部では、 200Jを超える吸収エネルギー値が得られ、優れた靱性を有することが確かめられた。
一方、比較例として REMを添加していない鋼板番号18は、REM(O,S)粒子が観察されず、溶接熱影響部の吸収エネルギーは全て30J未満で著しく低かった。
また REMの添加量が本発明の範囲の上限を超えた鋼板番号19は、微細なREM(O,S)粒子の分散密度は本発明の範囲を満足しているものの、粗大なREM(O,S)粒子が多数存在しているので、溶接熱影響部の吸収エネルギーは著しく低かった。
【0040】
S含有量が本発明の範囲の上限を超えた鋼板番号20,21,22は、微細なREM(O,S)粒子の分散密度は本発明の範囲を満足しているものの、余剰のSがMnS等の介在物を形成するので、溶接熱影響部の吸収エネルギーは低かった。
製鋼段階で REMを添加するときの溶鋼中の溶存酸素量が本発明の範囲を外れ、かつREM(O,S)粒子の分散密度は本発明の範囲を外れる鋼板番号23,24,25,26,27,28は、溶接熱影響部の吸収エネルギーは低く、しかもその測定値のばらつきも大きかった。
【0041】
C含有量が本発明の範囲の上限を超えた鋼板番号29,あるいはMn含有量が本発明の範囲の上限を超えた鋼板番号30は、いずれも溶接熱影響部の吸収エネルギーは低下した。
【0042】
【発明の効果】
本発明では、大入熱溶接を行なった場合でも、溶接熱影響部が優れた靱性を有する鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 REM(O,S)粒子の分散密度と−40℃における吸収エネルギーが 100J以上の試験片の比率との関係を示すグラフである。
【図2】 REM を添加するときの溶存酸素量とREM(O,S)粒子の分散密度との関係を示すグラフである。
Claims (6)
- Cを0.01〜0.15質量%、Siを0.05〜0.40質量%、Mnを 0.5〜2.0 質量%、Alを 0.005〜0.02質量%、希土類元素を 0.003〜0.013 質量%、Sを 0.005質量%以下含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる組成を有し、かつ希土類元素の酸化物および/または硫化物からなる粒子が 107個/cm2 以上分散し、前記粒子の粒径が 500nm以下である組織を有することを特徴とする大入熱溶接用鋼材。
- 前記組成に加えて、Nb: 0.005〜0.10質量%およびV: 0.005〜0.15質量%のうちの1種または2種を含有する組成を有することを特徴とする請求項1に記載の大入熱溶接用鋼材。
- 前記組成に加えて、Cu: 0.1〜1.0 質量%、Ni: 0.1〜2.0 質量%、Cr: 0.1〜1.0 質量%、Mo:0.05〜0.5 質量%およびB:0.0005〜0.0025質量%のうちの1種または2種以上を含有する組成を有することを特徴とする請求項1または2に記載の大入熱溶接用鋼材。
- Cを0.01〜0.15質量%、Siを0.05〜0.40質量%、Mnを 0.5〜2.0 質量%、Alを 0.005〜0.02質量%、Sを 0.005質量%以下含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる溶鋼を溶製し、前記溶鋼中の溶存酸素量を 0.002〜0.02質量%として希土類元素を添加し、前記溶鋼中の希土類元素の含有量を 0.003〜0.013 質量%とすることを特徴とする大入熱溶接用鋼の溶製方法。
- 前記溶鋼が、Nb: 0.005〜0.10質量%およびV: 0.005〜0.15質量%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項4に記載の大入熱溶接用鋼の溶製方法。
- 前記溶鋼が、Cu: 0.1〜1.0 質量%、Ni: 0.1〜2.0 質量%、Cr: 0.1〜1.0 質量%、Mo:0.05〜0.5 質量%およびB:0.0005〜0.0025質量%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項4または5に記載の大入熱溶接用鋼の溶製方法。
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