JP4603187B2 - ゴルフクラブヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、目標に対して構えやすいゴルフクラブヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来のウッド型のゴルフクラブヘッドにあっては、図10に示すように、ボールを打球するフェース部aの水平方向の曲面(いわゆる「フェースラウンド」)は、伝統的に254mm(10インチ)の曲率半径Rに設定されるのが一般的である。このため、フェース部aと、ヘッド上面をなすクラウン部bとの境界線cも、概ね254mmの曲率半径を有する円弧状曲線として設定される。
【0003】
しかしながら、ゴルファは構える際に、通常、ヘッドの前記境界線cが目標方向dに対して垂直となるように調節するため、前記境界線cが上述のように比較的小さな曲率半径で湾曲していると、目標方向にフェース部aを合わせづらく構え難いという問題がある。
【0004】
なお従来、フェース部を目標方向に正確に合わせるために、例えば、図9(A)に示す如く、クラウン部に三角形状のマークを着色したり、さらには特開平3−114477号公報のようにクラウン部のフェース寄りにフェース部の上縁に沿ってのびる凹凸部を形成すること等が提案されているが、いずれも境界線の形状などについては実質的な改善がなされていないため、構え易さの向上には限界があり、さらなる改善の余地が残されている。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、フェース部とヘッド上面をなすクラウン部との境界線を280〜650mmの曲率半径を有する曲線から構成するとともにクラウン部に前記境界線と実質的に平行にのびる稜線を設け、しかも境界線と稜線との前後方向の間隔Waを一定範囲に限定することを基本として、境界線を違和感無く直線に近づけて構え易さを向上しうるゴルフクラブヘッドを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、ヘッドの前後方向の最大長さであるソール巾SWと、ヘッドのトウーヒール方向の最大長さであるヘッド長さHとの比(H/SW)が1.60〜1.80であるゴルフクラブヘッドであって、ゴルフクラブヘッドを規定のライ角、ロフト角で水平面に載置した基準状態における平面視において、フェース部とヘッド上面をなすクラウン部との境界線は、280〜650mmの曲率半径を有する曲線からなり、かつクラウン部に前記境界線と実質的に平行にのびる稜線を具えるとともに、前記境界線と前記稜線との前後方向の間隔Waを、前記境界線からヘッドの最後端点までの前後方向長さであるヘッド巾Wの25〜35%とし、しかも前記境界線Laの曲率半径Raと、前記稜線の曲率半径Rbとの比(Ra/Rb)が1.05〜1.20であり、前記基準状態におけるフェース部の外表面と直角な垂直断面図において、前記クラウン部は、前記境界線と前記稜線との間を形成しかつ外表面がヘッド外方に凸となる円弧状の曲面で形成されるクラウン前部分と、前記クラウン前部分の後方に、ヘッド外方に中心を有する曲率半径の曲面からなることにより外表面がヘッド内方に凹む副部と、この副部に滑らかに連なりかつ外表面がヘッド外方に凸となる円弧状の曲面でヘッド最後端に連なるクラウン後部分とを具えるとともに、前記稜線が、前記クラウン前部分と、該クラウン前部分とは曲率が反転する副部とのエッジ状の交わり部で形成されたことを特徴としている。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記クラウン前部は、フェース面と直角な垂直断面において、曲率半径r1が20〜150mmである請求項1記載のゴルフクラブヘッドであり、請求項3記載の発明は、前記副部の曲面の曲率半径r2は20〜100mmである請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッドである。また請求項4記載の発明は、前記垂直断面図において、前記クラウン後部分の曲率半径は、前記クラウン前部分の曲率半径よりも大きい請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。また請求項5記載の発明は、前記間隔Waは、前記ヘッド巾Wの30〜35%である請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は、ゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)を規定のライ角α、ロフト角βで水平面に載置した基準状態における平面図、図2はその正面図、図3は図1のA−A線断面図を示している。前記ロフト角αは、図3に示す如く垂直線に対するフェース面Fの角度であり、前記ライ角βは、図2に示す如くシャフトが差し込まれるシャフト差込部6の軸中心線CLと水平面とのなす角度である。なおこれらの角度は、各ヘッド毎に設定されている。
【0009】
図において、ヘッド1は、ボールを打撃するフェース面Fを有するフェース部2と、ヘッド上面をなすクラウン部3と、ヘッド底面をすソール部4と、クラウン部3とソール部4との間をフェース部2のトウ端2tからバックフェースを通りヒール端2hに連なるサイド部5と、図示しないシャフトが装着されるシャフト取付部6とを具え、本例ではウッド型とアイアン型の中間的な形状を有するユーティリティ型のヘッドとした構成されたものを例示している。
【0010】
前記ヘッド1は、内部に中空部iを有し、かつ飛距離と方向性をバランス良く実現するために、例えばヘッド体積が50〜130cm3 程度、前記ロフト角αは15〜30゜程度、前記ライ角βは57〜60゜程度に設定されうる。またヘッド1を構成する材料としては、例えばチタンないしチタン合金等、スレンレス、マレージング鋼、炭素鋼など1以上の材料が採用できる。
【0011】
本発明のヘッド1では、図1の如く前記基準状態における平面視において、フェース部2とクラウン部3との境界線Laは、280〜650mmの曲率半径Raを有する曲線から形成される。このような境界線Laは、従来のものに比して曲率半径が大となっている。このため、ゴルファが本発明のヘッド1を構えた際には、境界線Laを従来に比して直線的に感じることができ、目標方向に対してこの境界線Laを垂直に合わせ易くなる。これにより本発明のヘッド1は構え易さを向上しうる。
【0012】
前記境界線Laは、構えた際にゴルファによって把握されるが、図4(A)にヘッド1の縦部分断面図を示すように、曲率半径Rfのフェース部2と曲率半径r1のクラウン部3とが明瞭なエッジeを有して交わるときには当該エッジeによって定められる。他方、図4(B)に示す如く、フェース部2とクラウン部3とがそれぞれの外表面の曲率半径と異なった曲率半径rtの円弧面9を介して滑らか連なるときには、この円弧面9の円弧長さ(9a〜9b)の中間点Cをフェース部2のトウ、ヒール方向に順次連ねることにより定めうる。
【0013】
なお前記境界線Laの曲率半径Raが280mm未満であると、従来のものと大差がないため構え易さの向上効果が期待できず、逆に650mmを超えるとフェースラウンドの曲面との兼ね合いにより、構えた際に違和感を生じやすい形状となり好ましくない。このような観点より、境界線Laの曲率半径Raは、好ましくは300〜500mm、より好ましくは300〜400mm、特に好ましくは300〜350mmとするのが望ましい。また境界線Laの曲率半径Raの測定は、前記境界線を基準状態の水平面に投影した状態で行う。
【0014】
また本発明のヘッド1は、図1に示すように、クラウン部3に前記境界線Laと実質的に平行にのびる稜線Lbを具える。クラウン部3は、図1、図3に示すように本実施形態では、境界線Laからヘッド後方に小巾でのびかつ該境界線Laに沿って延在するクラウン前部分3aと、このクラウン前部分3aの後方に設けられかつ外表面が凹む小長さの副部3bと、この副部3bに滑らかに連なりかつ外表面が凸となるクラウン後部分3cとを具えるものが例示される。
【0015】
前記クラウン前部分3aは、外表面が外方に凸となる円弧状の曲面で形成されている。このクラウン前部分3aは、フェース面Fと直角な垂直断面において、前記外表面の曲率半径r1を好ましくは15〜250mm、より好ましくは20〜150mmに設定している。このクラウン前部分3aの前記曲率半径r1が15mm未満であると、このクラウン前部分3aが過度に丸くなり、ヘッド形状が歪となる他、境界線Laを視認しづらくするなど構え難くなる傾向があり、逆に前記曲率半径r1が250mmを超えると、クラウン前部分3aが過度に平坦化するため、目の錯覚などにより構えた際に凹んで見え、違和感がある。
【0016】
また副部3bは、本例ではヘッド外方に中心を有する曲率半径r2の曲面からなる外表面を具える。前記曲率半径r2は、例えば15〜250mm程度、より好ましくは20〜100mm程度に設定される。そして、本実施形態のヘッド1では、前記クラウン前部分3aと、曲率が反転する副部3bとのエッジ状の交わり部で前記稜線Lbを形成している。なお前記クラウン後部分3cは、副部3bに連なりヘッド最後端点Eに滑らかに連なっている。
【0017】
稜線Lbは、前記境界線Laと実施的に平行に形成される。実質的に平行とは、図1、図3に示す如く、境界線Laと稜線Lbとの水平面に沿った前後方向の間隔Waをトウ、ヒール方向に複数位置で測定するとともに、その最大値Wa1と最小値Wa2との差(Wa1−Wa2)が0〜3.0mmの範囲内にあるものとし、より好ましくは前記差(Wa1−Wa2)を0〜2.0mm、さらに好ましくは0〜1.0mmとするのが特に望ましい。
【0018】
また稜線Lは、境界線Laの全長さに沿って実質的に平行に形成されていることが最も望ましいが、本発明の効果を奏するためには例えば境界線Laの全長さの50%以上、より好ましくは65%以上の連続した長さで実質的に平行にのびる部分を具えていれば足りるものである。なお図1に示す如く、稜線Lbの曲率半径Rbは、境界線Laと稜線Lbとの前後方向の間隙Waと、境界線Laの曲率半径Raによって実質的に定まるが、前記曲率半径の比(Ra/Rb)は1.05〜1.20程度とする。
【0019】
さらに本発明では、図3に示す如く、境界線Laと稜線Lbとの前後方向の前記間隔Waを、境界線Laからヘッド1の最後端点Eまでの前後方向の最大長さであるヘッド巾Wの25〜35%に限定する。本発明者らは、多数のテスターによって繰り返し実験を試みたところ、前記間隔Waがヘッド巾Wの25%に満たない場合、或いは前記間隔Waがヘッド巾Wの35%を超える場合には、図5、図6に示すように、いずれも構えた際に視覚されるヘッド形状のバランスが悪くなり、ひいては多くのゴルファにとって目標にフェース面Fを合わせづらく構えにくくなるとの統計的な知見を得た。特に好ましくは、前記間隔Waを、ヘッド巾Wの25〜33%、より好ましくは25〜30%に限定するのが望ましい。
【0020】
なお図3に示すように、ヘッド1の前後方向の最大長さであるソール巾SWは、特に限定はされないが、小さすぎるとヘッド1を構えた際の安定性に劣りかつ安心感を損ねがちとなり、逆に大きすぎるとダフリが生じやすい印象を与えかねない。このような観点より、ソール巾SWは、好ましくは50〜80mm、より好ましくは50〜70mm、さらに好ましくは55〜65mmとすることが望ましい。
【0021】
同様に、図1に示すように、ヘッドの横方向(トウーヒール方向)の最大長さであるヘッド長さHは、大きすぎてもヘッドの返りが悪くなって打球の方向安定性が悪化しやすく、逆に小さすぎても心理的に不安感を与えやすい。このような観点より、前記ヘッド長さHは、好ましくは95〜120mm、より好ましくは95〜110mm、さらに好ましくは100〜110mmとすることが望ましい。そして、前記ソール巾SWとヘッド長さHとの比(H/SW)は、1.60〜1.80とし、より好ましくは1.65〜1.78、さらに好ましくは1.68〜1.75とするのが望ましい。
【0022】
以上説明したような本実施形態のヘッド1は、境界線Laをより直線に近似させ、目標方向に対してフェース部2を合わせ易くできるとともに、境界線Laから一定の距離を後方に隔てる位置にこの境界線Laと実質的に平行な稜線Lbを設けたことにより、よりフェース部2を目標方向に容易に合わせることができ、さらに構え易さを向上しうる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について、ユーティリティ型のゴルフクラブヘッドを例に挙げ説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、中空部を有するヘッドであれば、ドライバーなどのウッド型ゴルフクラブヘッドについても適用しうるのは言うまでもない。また稜線は、クラウン前部分3aと副部3bとの境界をなすものを示したが、これに限定されることなく、図4(B)に示したように、境界線Laと同様、前後部分の曲率半径と異なる曲率半径を有する円弧面などで形成されることもあり、この場合には稜線Lbを境界線Laと同様に定めうる。
【0024】
【実施例】
表1、表2に示す仕様によりユーティリティ型のゴルフクラブヘッドを試作し、このヘッドに同一のシャフト、グリップを装着したクラブを製造するとともに、各供試クラブを4人のテスター(AないしD)により実際に構えてもらい構え易さのテストを行った。評価は、構えやすいものを○、構えにくいものを×、いずれでもない普通と感じるものを△として評価した。なお各ヘッドは、いずれも同一のロフト角、ライ角に設定している。テストの結果を表1、表2に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
テストの結果、実施例のものは、比較例と比べて構え易さを向上していることが確認できた。
【0028】
【発明の効果】
上述したように、本発明のゴルフクラブヘッドは、フェース部とクラウン部との境界線を違和感を感じさせることなく直線に近似させることができ、目標方向に対してフェース部を合わせ易くできる。また境界線から一定の距離を後方に隔てるクラウン部に該境界線と実質的に平行な稜線をバランス良く設けたことにより、フェース部を目標方向にさらに容易に合わせることができ、より一層構え易さを向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のゴルフクラブヘッドの基準状態における平面図である。
【図2】本実施形態のゴルフクラブヘッドの基準状態における正面図である。
【図3】基準状態におけるフェース部の外表面と直角な垂直断面図である。
【図4】(A)、(B)は、境界線を説明するための断面略図である。
【図5】(A)は比較例1のゴルフクラブヘッドの平面図、(B)はその断面図である。
【図6】(A)は比較例2のゴルフクラブヘッドの平面図、(B)はその断面図である。
【図7】(A)は比較例3のゴルフクラブヘッドの平面図、(B)はその断面図である。
【図8】(A)は比較例4のゴルフクラブヘッドの平面図、(B)はその断面図である。
【図9】(A)は比較例5のゴルフクラブヘッドの平面図、(B)はその断面図である。
【図10】従来のゴルフクラブヘッドの平面図である。
【符号の説明】
1 ゴルフクラブヘッド
2 フェース部
3 クラウン部
3a クラウン前部分
3b 副部
3c クラウン後部分
La フェース部とクラウン部との境界線
Lb 稜線
Wa 境界線と稜線との前後方向の間隔
W ヘッド巾
E ヘッドの最後端点
Claims (5)
- ヘッドの前後方向の最大長さであるソール巾SWと、ヘッドのトウーヒール方向の最大長さであるヘッド長さHとの比(H/SW)が1.60〜1.80であるゴルフクラブヘッドであって、
ゴルフクラブヘッドを規定のライ角、ロフト角で水平面に載置した基準状態における平面視において、
フェース部とヘッド上面をなすクラウン部との境界線は、280〜650mmの曲率半径を有する曲線からなり、かつクラウン部に前記境界線と実質的に平行にのびる稜線を具えるとともに、
前記境界線と前記稜線との前後方向の間隔Waを、前記境界線からヘッドの最後端点までの前後方向長さであるヘッド巾Wの25〜35%とし、しかも
前記境界線Laの曲率半径Raと、前記稜線の曲率半径Rbとの比(Ra/Rb)が1.05〜1.20であり、
前記基準状態におけるフェース部の外表面と直角な垂直断面図において、前記クラウン部は、前記境界線と前記稜線との間を形成しかつ外表面がヘッド外方に凸となる円弧状の曲面で形成されるクラウン前部分と、
前記クラウン前部分の後方に、ヘッド外方に中心を有する曲率半径の曲面からなることにより外表面がヘッド内方に凹む副部と、
この副部に滑らかに連なりかつ外表面がヘッド外方に凸となる円弧状の曲面でヘッド最後端に連なるクラウン後部分とを具えるとともに、
前記稜線が、前記クラウン前部分と、該クラウン前部分とは曲率が反転する副部とのエッジ状の交わり部で形成されたことを特徴とするゴルフクラブヘッド。 - 前記クラウン前部分は、フェース面と直角な垂直断面において、曲率半径r1が20〜150mmである請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記副部の曲面の曲率半径r2は20〜100mmである請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記垂直断面図において、前記クラウン後部分の曲率半径は、前記クラウン前部分の曲率半径よりも大きい請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記間隔Waは、前記ヘッド巾Wの30〜35%である請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
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