JP4582819B1 - 高強度ポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
内外層の構造の差がなく、高い引張強度と引張弾性率を併せ持つ炭素繊維を簡単に製造する。
【解決手段】
本発明の炭素繊維の製造方法は、ポリアクリロニトリル系ポリマーにカーボンナノチューブを分散した紡糸原液を調製し、これを紡糸延伸して炭素繊維の前駆体を製造し、次いでこの前駆体を耐炎化、炭素化することを含み、耐炎化を、炭素繊維の前駆体へのエネルギー線の照射によって行うことを特徴とする。本発明の炭素繊維は、繊維最外層と繊維最内層のラマンスペクトルで求められるG/D比をそれぞれRo及びRiとしたときにRo/Riが0.5〜2.0である。
【選択図】なし

Description

本発明は、均一な耐炎化を実現することによって高強度のポリアクリロニトリル系炭素繊維を得るための製造方法に関する。
炭素繊維は、軽量かつ高強度、高弾性率という極めて優れた物性を有することから、釣竿、ゴルフクラブやスキー板等の運動用具からCNGタンク、フライホイール、風力発電用風車、タービンブレード等の形成材料、道路、橋脚等の構造物の補強材、さらには、航空機、宇宙用素材として使われ、さらにその用途は広がりつつある。
このような炭素繊維の用途の拡大につれて、より高強度、高弾性率を有する炭素繊維の開発が望まれるようになってきている。
現在市販されているポリアクリロニトリル系炭素繊維は、最大6GPa程度という極めて高い引張強度を達成することができるが、ピッチ系炭素繊維のように高い引張弾性率を発現しにくいのが現状である。
ポリアクリロニトリル系炭素繊維は、一般的に、ポリアクリロニトリル等から前駆体繊維を製造した後、この前駆体繊維を高温の酸化性ガス又は空気雰囲気中で酸化して耐炎化処理を行い、次いで高温の不活性ガス雰囲気中で炭素化処理を行うことにより製造される。
高い性能の炭素繊維を得るためには、耐炎化処理において前駆体繊維をゆっくりと徐々に温度を上げながら均一に酸化(耐炎化)させることが必要である。しかしながら、この温度上昇工程は、数段階に分けてゆっくりとヒータや熱風等で加熱することにより行われているため、多大な時間を要するとともに、繊維の表面から内部までの均一な耐炎化がなされるように制御することが困難であった。
一方、均一な耐炎化を行う方法としては、前駆体繊維に油剤を付与して耐炎化の斑や単繊維相互間の膠着を少なくする方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法は均一な耐炎化にある程度寄与するが、油剤の付与以外は従来方法と変わりなく、従来と同じ問題を内在したままである。
特開2004−300606号公報
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、簡単な方法で均一な耐炎化工程を行うことにより、内外層の構造の差がなく、高い引張強度と高い引張弾性率を併せ持つポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法を提供することにある。
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、炭素繊維の性能向上のために添加されるカーボンナノチューブに着目し、このカーボンナノチューブがエネルギー線を吸収しやすい性能を利用して、カーボンナノチューブを均一に分散した前駆体繊維にエネルギー線を照射することにより内外層の差がなく均一に簡単に耐炎化できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、ポリアクリロニトリル系ポリマーにカーボンナノチューブを分散した紡糸原液を調製し、これを紡糸延伸して炭素繊維の前駆体を製造し、次いでこの前駆体を耐炎化、炭素化することを含む炭素繊維の製造方法において、耐炎化が、炭素繊維の前駆体へのエネルギー線の照射によって行われることを特徴とする炭素繊維の製造方法である。
本発明の炭素繊維の製造方法の好ましい態様では、エネルギー線が電子線であり、エネルギー線の照射線量が20〜5000kGyである。
また、本発明は、繊維最外層と繊維最内層のラマンスペクトルで求められるG/D比をそれぞれRo及びRiとしたときにRo/Riが0.5〜2.0であることを特徴とする炭素繊維である。本発明の炭素繊維の好ましい態様では、引張強度が6.5GPa以上でありかつ引張弾性率が450GPa以上である。
本発明の製造方法によれば、前駆体繊維に均一に分散されたカーボンナノチューブがエネルギー線照射で加熱されるため、前駆体繊維を内外層の差なく均一に耐炎化させることができ、結果として高い引張強度と高い引張弾性率を併せ持つ炭素繊維を容易に得ることができる。また、エネルギー線の照射で加熱を行うため、従来の方法に比べて耐炎化工程を短い時間で効率良く行うことができ、工程が簡単でかつ生産性が高い。また、本発明の炭素繊維は、カーボンナノチューブが分散されていることに加えてRo/Riが特定の範囲にあるため、内外層の構造の差がなく、高い引張強度と高い引張弾性率を併せ持つ。
本発明の炭素繊維の製造方法は、ポリアクリロニトリル系ポリマーにカーボンナノチューブを分散した紡糸原液の調製工程、紡糸延伸工程、エネルギー線の照射による耐炎化工程、炭素化工程を含むことを特徴とする。
本発明の製造方法では、まずポリアクリロニトリル系ポリマーにカーボンナノチューブを分散した紡糸原液を調製する。
紡糸原液の調製方法は、カーボンナノチューブがポリアクリロニトリル系ポリマーに均一に分散されている限り、いかなる方法も採用することができる。かかる方法としては、例えば、従来の方法で製造された紡糸原液にカーボンナノチューブを添加し、自転公転型ミキサー、多軸混練機、ナノ粒子高性能ミキサー・ディストロミックスなどで強い剪断を与えて紡糸原液にカーボンナノチューブを均一に分散する方法、カーボンナノチューブが比較的分散しやすくかつポリアクリロニトリル系ポリマーが溶解する溶媒(例えばジメチルホルムアミドなど)にカーボンナノチューブ及びポリアクリロニトリル系ポリマーを添加して超音波処理などによりカーボンナノチューブを均一に分散した紡糸原液を作製する方法、キシラン、両性分子などの一般的なカーボンナノチューブ分散剤を用いてカーボンナノチューブをポリアクリロニトリル系ポリマー溶液に均一に分散させて紡糸原液を作製する方法が挙げられる。
本発明で使用するカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブのいずれであっても良く、これらの混合物であっても良い。各種カーボンナノチューブの末端は、閉じていても良いし、穴が開いていても良い。カーボンナノチューブの直径は、好ましくは0.4nm以上100nm以下であり、より好ましくは0.8nm以上80nm以下である。カーボンナノチューブの長さは、制限されるものではなく、任意の長さのものを用いることができるが、好ましくは0.6μm以上200μm以下であり、より好ましくは1μm以上200μm以下である。
本発明で使用するカーボンナノチューブの純度は、炭素純度として80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。炭素純度は、示差熱分析により決定される。カーボンナノチューブの不純物としては、非晶炭素成分や触媒金属が挙げられる。空気中で200℃以上で加熱するか、または、過酸化水素水で洗浄することにより、非晶炭素成分を除くことができる。さらに、塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸で洗浄後、水洗することにより鉄等のカーボンナノチューブ製造時の触媒金属を除去することができる。本発明では、これらの精製操作を組み合わせることにより、種々の不純物を除去し、炭素純度を高めたカーボンナノチューブを使用することが好ましい。
カーボンナノチューブの添加量は、ポリアクリロニトリル系ポリマーの量に対して0.01〜5重量%であることが好ましく、0.1〜3重量%であることがさらに好ましい。上記下限未満では、得られる前駆体繊維中のカーボンナノチューブ量が少なくなり、十分高い引張弾性率を達成できないおそれがある。また、上記上限を越えると、紡糸原液に曵糸性がなくなり、紡糸が困難になる。分散液が目視で黒色透明になれば、カーボンナノチューブは充分分散している。
カーボンナノチューブ分散液の安定性を上げるために安定化剤を添加することができる。安定化剤としては、多級アルコール類、例えば、グリセロール、エチレングリコール等の多級アルコール、ポリビニルアルコール、また、ポリオキシエチレン類、例えば、ポリオキシエチレン化脂肪酸やそのエステル誘導体、また、多糖類、例えば、水溶性セルロース、水溶性デンプン、水溶性グリコーゲン、それらの誘導体、例えば、酢酸セルロース、アミロペクチン、また、アミン類、例えば、アルキルアミン等が挙げられる。これらの安定化剤は単独でも2種類以上用いても良い。
本発明で使用するポリアクリロニトリル系ポリマーとしては、ポリアクリロニトリル、および、アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体からなる共重合体を挙げることができる。かかる共重合体としては、耐炎化反応に有効な作用を有するアクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−イタコン酸共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸−イタコン酸共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル−イタコン酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸−イタコン酸共重合体等が挙げられ、いずれの場合もアクリロニトリル成分が85モル%以上であることが好ましい。これらのポリマーは、アルカリ金属またはアンモニアとの塩を形成していても良い。また、これらのポリマーは単独または2種以上の混合物としても使用できる。
ポリアクリロニトリル系ポリマーは、乳化重合、塊状重合、溶液重合などの従来公知の方法により合成されることができる。また、溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、硝酸、ロダンソーダ水溶液などが用いられ、これにポリアクリロニトリル系ポリマーが溶解されて紡糸原液が調製される。
紡糸原液の粘度は、通常30℃で、湿式紡糸では、2〜20Pa・secであることが好ましく、乾湿式紡糸では100〜500Pa・secであることが好ましい。それぞれの紡糸方法において、上記範囲を下回ると、紡糸時にノズル面に紡糸原液が付着してしまう恐れがあったり、吐出糸条の切断や品質斑の問題があり、上記範囲を上回ると、メルトフラクチャーが生じて安定に紡糸を行うことができなくなるなど、紡糸の操業性に問題が生じるおそれがある。
次に、この紡糸原液から、湿式又は乾湿式紡糸法によって凝固糸を得る。
紡糸口金の孔径は、湿式紡糸では、0.03〜0.1mmであることが好ましく、乾湿式紡糸では0.1〜0.3mmであることが好ましい。上記範囲を下回ると、紡糸時にドラフト比が小さくなり生産性を著しく損なうおそれがあったり、吐出糸条の切断や品質斑の問題があり、上記範囲を上回ると、紡糸原液の吐出線速度が小さくなり凝固槽内での糸の張力が大きくなるなど、紡糸の操業性に問題が生じるおそれがある。
凝固浴としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、硝酸などの有機溶媒、水、塩化亜鉛もしくは塩化アルミニウム等のルイス酸塩水溶液、又はロダン塩水溶液などの水溶液を用いることが好ましい。その濃度は、使用する溶剤によって異なるが、ロダン塩水溶液の場合、10〜20重量%であることが好ましい。濃度が10重量%未満では、吐出された紡糸原液の表面から急速に凝固が進み、繊維中心部の凝固が不充分となり、均一な糸の構造形成が行われないおそれがある。また、20重量%よりも濃度が高いと、凝固が遅くなり、巻き取りまでの工程で隣接する糸同士の接着を生じるおそれがある。
また、凝固は多段で行われることが好ましく、特に好ましくは2〜3段で行われる。凝固が1段の場合、糸中心部までの凝固が不充分となり、均一な糸構の形成ができないおそれがある。また、4段以上では、生産設備が重厚となり、現実的でない。
次に、得られた凝固糸を延伸して炭素繊維の前駆体繊維を得る。延伸することによって、繊維中の分子鎖の配向性を高めて力学物性に優れた炭素繊維を得ることができる。延伸は、トータルの延伸倍率が4〜12倍になるように行うことが好ましく、より好ましくは、トータルの延伸倍率が5〜7倍になるように行う。トータルの延伸倍率が上記範囲未満では、糸中のカーボンナノチューブの配向が不充分で、ポリアクリロニトリル系高分子が緻密に配向した炭素繊維前駆体を得ることができないおそれがある。また、トータルの延伸倍率が上記範囲を越える場合は、延伸時に糸切れが頻発し、延伸安定性に欠けるおそれがある。延伸操作は、冷延伸、熱水中での延伸、蒸気中での延伸のいずれの方法でも良い。また、1度に延伸しても、多段で延伸しても良い。
次に、得られた炭素繊維の前駆体を耐炎化、炭素化する。耐炎化工程は、通常、酸化性ガス又は空気中で延伸しながら200〜300℃で多段で徐々に加熱しながら行うが、本発明では、その代わりにカーボンナノチューブを均一に分散した前駆体繊維にエネルギー線を照射することが特徴である。本発明の方法では、前駆体繊維にエネルギー線を照射すると、均一に分散されたカーボンナノチューブがエネルギー線を吸収して発熱し、内外層の差がない均一な耐炎化を達成することができる。エネルギー線としては、特に限定されないが、照射透過力が大きい電子線やγ線が好ましい。エネルギー線の照射量は、十分な耐炎化を達成できれば特に限定されないが、20〜5000kGyが好ましく、より好ましくは100〜3000kGyである。エネルギー線の照射線量が低すぎると酸化、環化反応が完了せず、耐炎化が不十分となり、逆に高すぎると、酸化が進みすぎ、炭素繊維での力学物性が大きく低下してしまう場合があり好ましくない。
エネルギー線の照射は一般的に常温で行われるプロセスであるが、0〜300℃の任意の温度環境下において照射することができる。エネルギー線の照射は酸化性ガス又は空気雰囲気下で行うことが必要である。耐炎化反応は酸化反応であり、還元雰囲気下では行うことができない。
エネルギー線の照射時間は、上述のエネルギー線の照射量の条件が満たされる範囲であれば特に限定されないが、照射時間の上限は、60分以下が好ましく、さらに好ましくは40分以下、より好ましくは30分以下である。また、照射時間の下限は、45秒以上が好ましく、さらに好ましくは5分以上、より好ましくは8分以上である。照射時間が上記上限を超えると、プロセスが過大となり、一方、上記下限を下まわると、エネルギー線のエネルギー密度が高くなり均一な耐炎化が行えないおそれがある。
炭素化工程は、常法に従って行えばよく、例えば、不活性気体中で延伸比0.9〜1.5で延伸しながら300〜800℃に加熱して予備炭素化し、さらに、不活性気体中で延伸比0.9〜1.1で1000〜2000℃に加熱して炭素化することによって炭素繊維を得ることができる。
炭素化処理時に用いられる不活性気体としては、窒素、アルゴン、キセノン、および二酸化炭素等が挙げられる。経済的な観点からは窒素が好ましく用いられる。炭素化処理時の最高到達温度は所望の炭素繊維の力学物性に応じて1200〜3000℃の間で設定される。一般的に炭素化処理の最高到達温度が高い程、得られる炭素繊維の引張弾性率が大きくなる。一方、引張強度は1500℃で極大となる。従って、炭素化処理を1000〜2000℃、より好ましくは1200〜1700℃、さらに好ましくは1300〜1600℃で行うことにより、引張弾性率と引張強度の2つの力学物性を最大限に発現させることが可能である。
上記のようにして得られた本発明の炭素繊維は、繊維最外層と繊維最内層のラマンスペクトルで求められるG/D比をそれぞれRo及びRiとしたときにRo/Riが0.5〜2.0である。より好ましくは、0.75〜1.5、さらに好ましくは、0.8〜1.2である。このような内外層の差がなく均一な構造を有する炭素繊維は、カーボンナノチューブを分散したものには従来存在しない。Ro/Riがこの範囲からはずれると、炭素繊維の断面方向の均一性が劣り、極めて高い引張強度及び引張弾性率を持つ炭素繊維にはなりにくい。Ro/Riが1であるとき、繊維の内外層差が全くなく、最も理想的である。なお、繊維最外層とは繊維断面において、表面から繊維の平均直径の20%の長さだけ内側の領域を指す。また、繊維最内層とは繊維断面において、繊維断面の重心を中心に、繊維の平均直径の20%の長さを半径として描いた円の内側の領域を指す。平均直径は、繊維断面が完全な円でない場合、最長となる直径、最短となる直径を測定し、両者を足して2で割って求めることができる。
本発明の炭素繊維は、上記のように繊維の構造の内外層差がないため、450GPa以上の引張弾性率を維持しながら、6.5GPa以上の引張強度を達成することができる。なお、引張弾性率及び引張強度の上限は、特に限定されないが、それぞれ例えば550GPa及び8.0GPaであることができる。
本発明の炭素繊維の直径は、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは3〜40μmであり、さらに好ましくは4〜30μmである。この範囲よりも細い場合は、工程での単糸切れが多く、生産性が悪く、工程通過性も悪くなる可能性がある。一方、この範囲より太い場合は、均一な焼成が困難となり、内外層差の悪化を導く可能性がある。
以下、実施例で本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、本実施例で得た炭素繊維の引張強度および引張弾性率は、JIS R7606(2000)「炭素繊維−単繊維の引張特性の試験方法」に従ってNMB社製引張試験機「TG200NB」を用いて測定した。
また、炭素繊維の繊維内外層差の測定は、JEOL製顕微ラマン分光システムJRS−SYSTEM 1000において、He−Neレーザーを用いて測定を行った。得られたスペクトルに対して、1600cm−1付近のピーク、1330cm−1付近のピークとベースライン、それぞれに対してピーク分離を行い、ピーク分離後の1600cm−1付近のピーク(G−band)と1330cm−1付近のピーク(D−band)の面積比をG/D比とした。繊維最内層については、繊維断面の重心となる位置を中心とする半径1μmの円の内側の領域で測定を行い、繊維最外層については繊維表面から1μmだけ内側の範囲内の領域で測定した。繊維最外層のG/D比をRo、繊維最内層のG/D比をRiとし、Ro/Riを求めた。
実施例1
紡糸原液の調製:水1688g、水分含有率43重量%のアクリロニトリル/メタクリル酸(94:6の重量比)共重合体596.5gを測って混合し、これに多層カーボンナノチューブ(バイエル社製Baytubes)5gを添加した後、攪拌してスラリー状とした。これにチオシアン酸ナトリウム1712gを添加し、ナノ粒子高性能ミキサー・ディストロミックスを用い、4000rpmで20分間処理して、カーボンナノチューブを分散させ、紡糸原液を得た。
紡糸、延伸:上記紡糸原液を、80℃にて孔径0.055mm、孔数250の紡糸口金から、−3℃の15重量%チオシアン酸ナトリウム水溶液からなる凝固浴中へ押し出し、5重量%チオシアン酸ナトリウム水溶液で水洗した。その後、2.75倍に延伸し、水洗し、さらにpH2の硝酸で洗浄した。この後、さらにこの糸を沸騰水中で4倍延伸を行い、アミノ変性シリコーン油剤を付与して、乾燥、熱処理をすることにより、単糸繊度1.0dtexの前駆体繊維を得た。
耐炎化処理:上記の前駆体繊維に空気中で一定長にて、1000kGyの線量及び10分間の照射時間で加速電圧165keVの電子線を照射した。
炭素化処理:上記耐炎化処理糸を窒素気流中で一定長にて、700℃で2分間加熱して予備炭素化し、さらに窒素気流中で一定長にて、1300℃で2分間加熱して炭素化して、繊維直径5μmの炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の引張強度、引張弾性率、及びRo/Riを表1に示す。
実施例2
耐炎化処理での電子線の照射線量を2500kGy(照射時間10分間)としたこと以外は、実施例1と同様にして、繊維直径5μmの炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の引張強度、引張弾性率、及びRo/Riを表1に示す。
実施例3
耐炎化処理での電子線の照射線量を300kGy(照射時間10分間)としたこと以外は、実施例1と同様にして、繊維直径5μmの炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の引張強度、引張弾性率、及びRo/Riを表1に示す。
実施例4
耐炎化処理での電子線の照射時間を20分間(照射線量1000kGy)としたこと以外は、実施例1と同様にして、繊維直径5μmの炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の引張強度、引張弾性率、及びRo/Riを表1に示す。
実施例5
耐炎化処理での電子線の照射時間を1分間(照射線量1000kGy)としたこと以外は、実施例1と同様にして、繊維直径5μmの炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の引張強度、引張弾性率、及びRo/Riを表1に示す。
比較例1
紡糸原液の調製においてカーボンナノチューブを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得ようとしたが、耐炎化が十分にできず、炭素繊維を得ることはできなかった。
比較例2
紡糸原液においてカーボンナノチューブを添加せず、耐炎化処理において、前駆体繊維に電子線を照射する代わりに、前駆体繊維を空気中で一定長にて、1段目220℃、2段目230℃、3段目240℃、4段目245℃でそれぞれ30分間加熱したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維直径5μmの炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の引張強度、引張弾性率、及びRo/Riを表1に示す。
比較例3
耐炎化処理において、前駆体繊維に電子線を照射する代わりに、前駆体繊維を空気中で一定長にて、1段目220℃、2段目230℃、3段目240℃、4段目245℃でそれぞれ30分間加熱したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維直径5μmの炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の引張強度、引張弾性率、及びRo/Riを表1に示す。
Figure 0004582819
表1からわかるように、紡糸原液の調製においてカーボンナノチューブを添加し、耐炎化処理において電子線の照射を行った実施例1〜5はいずれもRo/Riが1.0前後であり、高い引張強度、引張弾性率を達成している。これに対してカーボンナノチューブを添加せずに耐炎化処理において電子線の照射を行った比較例1やカーボンナノチューブを添加せずに従来の耐炎化処理を行った比較例2は本発明から明らかに劣るものであった。また、比較例3はカーボンナノチューブを添加して従来の耐炎化処理を採用したものであり、Ro/Riの値は1から遠く、実施例1〜5に比べて引張強度が低く、しかも耐炎化処理が複雑で時間を要するため生産性に問題があった。
本発明によれば、内外層の構造の差がなく、高い引張強度と高い引張弾性率を兼ね備えた炭素繊維を簡単で均一な耐炎化処理で得ることができる。かかる方法は、生産性が高く、しかも得られた炭素繊維は航空機材料や宇宙船材料として極めて有用である。

Claims (3)

  1. ポリアクリロニトリル系ポリマーにカーボンナノチューブを分散した紡糸原液を調製し、これを紡糸延伸して炭素繊維の前駆体を製造し、次いでこの前駆体を耐炎化、炭素化することを含む炭素繊維の製造方法において、耐炎化が、炭素繊維の前駆体へのエネルギー線の照射のみによって行われることを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  2. エネルギー線が電子線であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
  3. エネルギー線の照射線量が20〜5000kGyであることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素繊維の製造方法。
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