JP4556017B2 - 吸水性耐水性シート、その製造方法及びそれを用いた吸収体製品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高通気性の防漏効果を得ることが可能な吸水性耐水性シートに関する。さらに本発明は、この吸水性耐水性シートを製造する方法、および吸水性耐水性シートを用いた吸収体製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体透過性の表面シートと液体不透過性の裏面シートとの間に吸収体本体を介在させた構造を有する従来の吸収体製品においては、吸収体本体のみが尿便や体液の吸収に関与するので、液を受ける入口である表面シート側のみをオープンとし、両側面は耐水性のある立体ギャザー、下面は防水性のあるバックシートでカバーした構造が採用され、したがって吸収体本体はその周囲に位置するサラウンド部から隔離された状態になっている。この隔離状態に不都合を来すと、モレが発生するということになるのが現状である。
【0003】
このため吸収体本体には次のような役割が担わされている。
【0004】
1) 着用者のあらゆる状態に対応できるだけの大きい吸収能力を持つこと。すなわち着用者の着用***、水分摂取量、季節などの環境変化、体調変化、交換時間変化に対応できるための吸収余力を持つこと。これに単純に対応すると、極めて非効率な製品を作ることになり、例えば現在のMサイズ、Lサイズの子供用オムツで測定すると、平均的な吸収体の実利用率は35%前後であり、実に65%が使用状況に対応するための吸収余力という非効率な製品となっている。この非効率性をいかに改善するかは重要な課題である。
【0005】
2) 特に大量の尿便を処理することが必要な子供用、大人用オムツなどの吸収体製品では、腰部全体を前後から被覆し、しかも弾性糸列で押さえつけることにより、吸収体本体との密着状態を保ち、モレを防ぐことを基本コンセプトとしている。下の表1は、日本の平均的なMサイズ、Lサイズの子供用オムツの全面積と吸収体面積を調査した結果を示したものである。オムツのタイプはテープタイプとはかせるタイプの代表的な2種類で比較した。
【0006】
【表1】
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の調査結果から、オムツの全面積に対して、必要部位をカバーするのに直接使用されている面積は僅か10%以下であることがわかる。このような低い面積利用効率を、どのようにして向上させることができるかは、多くの吸収体製品の材料の節約とコストの低減にとって大きな課題である。
【0008】
上記の表1のデータで示したように、身体を被覆する面積が大きく、しかも全体に防漏機能を持たせるということは、必然的に、極めて蒸れやすく、カブレやすい吸収体製品をもたらすということになる。
【0009】
このような吸収体製品の着用環境(オムツ内気候)の改善のためには、身体のオムツにより被覆されている面積を可及的に少なくするか、あるいは吸収体部を含めたオムツ全体に通気・換気機能を付与することが重要になる。
【0010】
従来、このような吸収体製品の着用環境を改善し、ムレ・カブレを防止するために、少しでも大きい通気性を持つバックシートを用意し、一方、防バイ剤、カブレ防止剤などの添加物をトップシートに加工して、ムレ・カブレ対策を行っている。
【0011】
しかし、通気性バックシートは、ピンホールの発生を防ぎ、また臭気のモレを防ぐための密閉性を保ちながら、通気性を確保するという極めて矛盾に満ちた条件をクリアする材料でなければならない。
【0012】
したがって、結果として発現できる通気レベル(MVTR)は、2.0〜4.0m3/24hr・m2であって、一般の下着が2.0m3/min・m2程度であるのと比較すると、1/1000以下の量に過ぎず、このような通気性レベルでは、ムレ・カブレが解決できないのは当然といえよう。
【0013】
また物流コストの増大、販売店等における棚効率の向上等を目標として、現在、超薄型といわれている、パルプに対してSAP粒子の含有量を高めた吸収体製品が主流となってきているが、SAP粒子の含有量をさらに上げて、より薄い、いわゆるスーパー超薄型になると、吸収速度の低さが大きな障害となってくる。この障害は、SAP粒子の膨潤、吸収スピードと体液の排出スピードがマッチしないために生ずる問題であって、このような吸収スピードを調整する新たな機能を有する素材が必要になってきている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来の効率の悪い、しかもムレ・カブレの生じやすい吸収体製品の欠陥を解消し、バックシート部分にも吸収能力を付与することにより、吸収支援能力を持ち、しかも高吸水性樹脂(SAP粒子)の持つ水ブロック性を耐水バリヤーとして利用し、不織布の持つ多孔質構造を利用してフィルムを用いない高通気性を持った新しいコンセプトにもとづく、吸収支援能力を有するバックアップシートを提供する。
【0015】
本発明はさらに、吸収支援能力を有するバックアップシートに、吸収スピードを上げるための液量のコントロールや、リーク液の均一分配、そして圧力緩和の役割を持つバッファーシートを組合せ、これを吸収体本体と組合せることにより、従来の吸収体製品と比較して、面積効率、容積効率および重量効率が極めて高く、しかもムレ・カブレの少ない吸収体製品を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の目的を達成するためには、吸収体本体からリークしてバックアップシートに吸収されるリーク液のコントロール(入口)とそれを受けるバックアップシート機能(出口)が重要であり、バックアップシートは、次のような基本要件を満たすことが必要である。
1) 吸水性と耐水性を併せ持ち、通気性に優れていること。
2) 下着並みの換気性と通気性を有していること。
【0017】
また、このようなバックアップシートに組合されるバッファーシートが組合せされる場合には、下記の条件を考慮することが望まれる。
1) バックアップシートと吸収体本体間に介在して吸収体本体からのリーク液の量とその分布をコントロールするバッファーシートの性状。
2) バックアップシートとバッファーシートに組合される望ましい吸収体本体の性状。
【0018】
バックアップシートの基本構成は、次の3成分から成り立っている。すなわち、第1の成分はSAPの複合基材として、また同時に耐水材料として働く通気性と耐水性を持つ疎水性不織布層、第2の成分としては吸水成分としてのSAP層、第3の成分はその吸水成分であるSAP層を被覆し、SAP層全体に均一に水性液を供給するような役割を担う親水性シート層の3成分層が必要である。
バックアップシートの性能はこの3成分の適切な選択とその組合せの正確さによって決定づけられる。
【0019】
まず通気性、耐水性のある疎水性不織布として代表的なものは、PE、PP、PET、ナイロン等の疎水性合成繊維から構成される不織布であるが、望ましいのは薄くて緻密な構造を持つPP、PE、PET等のスパンボンド不織布やメルトブローン不織布であり、さらに望ましくはスパンボンドSとメルトブローンMの積層体であるSMS構造、SMMS構造が望ましく、これらの不織布はある程度の耐水抵抗を持つが、本発明の目的を達成するためには、少なくとも150mmH2O以上の耐水圧、好ましくは200mmH2O以上の耐水圧を持つものが望ましい。このため目付は、好ましくは15g/m2〜50g/m2の範囲のものが選択される。
【0020】
通常、オムツ等の吸収体製品のバックシートとして安定に使用するためには、耐水圧で表すと少なくとも400mmH2O以上、好ましくは600mmH2O以上の耐水性が必要とされている。通気性フィルムといわれるミクロポーラスなPEフィルムも、1000mmH2O〜1500mmH2Oの耐水性を持つのが一般的である。パルプ/SAP粒子の混合吸収体からなる従来の吸収体製品では、加圧下ではフリーな水が大量に存在し、しかもそれが直接的にバックシートに接触して加圧耐水負荷が大きくかかるため、上記のような耐圧性が必要であるが、本発明のようなSAP粒子含有量の多い吸収体本体の場合には、SAP粒子が水分を安定に担持するため、未吸収水が極めて少なく、その上バッファー層を介してリークされる液量も少なく、しかもそのリークした液もバックアップシートのSAP粒子に吸収されて、未吸収水の存在量はさらにごく僅かとなるため、基材不織布としては150mmH2O以上の耐水圧があれば十分に対応できる。
【0021】
上記のような不織布は、通気性という意味では、普通の下着並みの1.0〜4m3/min・m2の通気性を持ち、この不織布の通気性をできるだけSAP加工時に維持すれば、通常の肌着と同等の通気性を確保できる。
【0022】
ここで、不織布基材に複合させるSAP粒子(以下、単にSAPという)について説明する。SAPは現在、繊維状、顆粒状、フレーク状および造粒SAP等にその形状が分類されるが、液の抵抗性を保つためには、ある程度緻密な組織を持つことが望ましい。そのためには、最密充填に近い構造をとりやすい球状粒子状の比較的細かい粒子の粒度分布を持つものが望ましい。
【0023】
本発明に用いるSAPとしては、水系塊状重合で得られるSAPでは、粉砕後、篩別して500μm以下にした粉状のものが望ましい。溶媒系サスペンジョン重合で得られるSAPでは、単粒で500μm以上の粒子を取り除いたものが望ましい。細かい方は、100μm以下の微粉と言われるもので差し支えない。また比較的粗い粒子でも、微粉体を混合することによって緻密な構造にすることができる。
【0024】
本発明において、SAPは、吸収体本体に使用されるSAPと違い、ゲル強度や表面架橋度はほとんど問題でなく、むしろ吸収体本体に使用する場合には敬遠される、ゲルブロックを起こしやすい低AULの、表面架橋度の低いSAPの方がむしろ望ましい。AULは、30ml/g (20g/cm2加圧下)以下であることが望ましい。さらに好ましくは、平均粒径が300μm以下でAULは20ml/g以下の微粉SAPが望ましい。なおバックアップシートにおけるSAPの目付は吸収体本体とは異なり、柔軟性も確保する必要もあることから、10g/m2〜100g/m2と低目付に設定される。
【0025】
さらに第3の成分である親水性シート層の存在は、バックアップシートの内層、すなわちバッファーシートからにじみ出したリーク液を、局部に滞らせず拡散して、均一にSAP層に吸収固定させる役割として重要である。
【0026】
親水性シート層としては、レーヨン不織布、パルプと合繊添加不織布、あるいはティッシュのようなセルロース系の水分吸収性と拡散性に優れたシート状不織布が選択されるが、好ましい素材は、サイズ剤で若干耐水性を付与した、目付10g/m2〜40g/m2のティッシュである。
【0027】
次に、本発明の吸水性耐水性シートの具体的な構成の一例について図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、上述したような3成分、すなわち第1の成分としての、例えばSMS構造のような疎水性不織布層1と、この不織布層1の全面に展開する第2の成分である吸水成分としてのSAP層2と、このSAP層2を覆うように配置された、第3の成分としての、例えばティッシュのような親水性シート層3とを備えた吸水性耐水性シートを示している。
【0029】
一方、図2に示した例では、不織布層1上にSAP層2はライン状に配置され、このライン状のSAP層3とその間に露出している不織布層1とを覆うように、親水性シート層3が配置されている。
【0030】
図1の例のように、SAP層2を不織布層1表面の全体に配置した場合には、この吸水性耐水性シートをバックシートとして使用する場合、耐水性は比較的容易に得やすいが、剛性が大きくなるので、これを緩和するために相対的に低目付とすることが望ましい。これに対して図2の例のように、不織布層1だけの領域と、不織布層1およびSAP層2からなる領域とが交互に配置されている場合には、不織布層1のみの領域が薄くて折りたたみしやすく、通気性がそのまま活かせるので、柔軟でしかも大きな通気性が確保される。通気性は大きい方が望ましく、3層が積層された領域で、少なくとも0.5m3/min・m2以上、好ましくは1m3/min・m2以上の通気性を持つことが望ましい。
【0031】
良好な特性を有する吸水性・耐水性シートを構成するためには、3層構造を一体化、安定化する方法もまた重要な要素である。
【0032】
例えば、耐水性疎水性不織布としてSMS構造のものを用い、親水性シートとしてティッシュを用いた例で説明すると、SMS構造の層(以下、SMS層という)とSAPとの接合、SAPとティッシュ層との接合、およびSAP相互の接合という3つの接合系が存在することになるが、バックアップシートの3層構造を形成する上で特に重要な要素は、SMS層とSAP層との接合、およびSAP層とティッシュ層との接合である。
【0033】
SMS層とSAP層との接合の方法について例示すると、1つは、カードウェブとの接合、物理的擦過加工などの手段を用いて、SMS層の表面に起毛状の空隙組織を形成し、その空隙内にSAP粒子を捕捉する方法である。他の方法は、SMS層の表面に粘着性のあるホットメルトを塗布し、その粘着性を利用してSAP粒子を固定する方法である。
【0034】
次にティッシュ層とSAP層との接合方法について例示すると、SMS層との接合の場合と同様にホットメルトで固定する方法と、SAP層の中に、SAPに対して2〜3%のミクロフィブリル状セルロース(MFC)を共存させ、このMFCの持つ強力な水素結合力によりSAP粒子相互とSAP層とティッシュ層を結合する方法がある。
【0035】
図3は、耐水性疎水性不織布層1、SAP層2および親水性シート層3を備えた吸水性耐水性シートにおいて、SAP層2と親水性シート3とをホットメルト層4によって接合して構成した吸水性耐水性シートの断面図である。
【0036】
また図4、図5および図6に、耐水性疎水性不織布層、SAP層および親水性シート層からなる図3に示した層構成のバックアップシートを製造するプロセス例を示す。図4は、ホットメルトのみで接合するプロセス例、図5は起毛構造とホットメルトの組合せプロセス例、図6はSAP/MFC系にホットメルトを組合せたプロセス例である。
【0037】
図4のプロセス例は、不織布層1を準備するステップ(a)、この不織布層1の表面にホットメルトを塗布してホットメルト層5を形成するステップ(b)、このホットメルト層5上にSAPパウダーを散布してSAP層2を形成するステップ(c)、このSAP層2上にホットメルトを塗布してホットメルト層4を形成するステップ(d)、およびこのホットメルト層4の接着性を利用して親水性シートであるティッシュ3を接合するステップ(e)を備えている。
【0038】
図5のプロセス例は、不織布層1を準備するステップ(a)、この不織布層1上にカードウェブを積層して起毛状構造6を形成するステップ(b)、この起毛面にSAPパウダーを散布してSAP層2を形成するステップ(c)、このSAP層2上にホットメルトを塗布してホットメルト層4を形成するステップ(d)、およびこのホットメルト層4の接着性を利用して親水性シートであるティッシュ3を接合するステップ(e)を備えている。
【0039】
また図6のプロセス例は、親水性シートとしてのティッシュ7を準備するステップ(a)、このティッシュ7の表面に、SAP/MFCスラリーを塗布してSAP層2を形成するステップ(b)、このSAP層2中の溶媒成分を除去してSAP粒子を固定するステップ(c)、SAP層2上にスプレーコート等の手段でホットメルトを塗布してホットメルト層5を形成するステップ(d)、およびこのホットメルト層5上にSMS構造のような不織布層1を重ねて接合するステップ(e)を備えている。
【0040】
図4〜図6に示したプロセスにおいて重要なことは、耐水性疎水性不織布層にピンホールの発生等のダメージを与えないことであり、その意味では、ホットメルトの粘着性を利用し接合することが望ましく、しかも繊維状ネットワークを持ったホットメルトの得られるカーテンスプレー法によるアプリケータを使用することが望ましい。
【0041】
上述のようにして得られたバックアップシートは、図7(a)、(b)および(c)に示すように、吸収体本体と組合せて使用される。図7(a)は最も一般的な例で、吸収体本体11の下面部からサイドにわたってバックアップするようにバックアップシート12を配置して構成した例、図7(b)はセンター部分のみにフィルム13を加えてバックアップシート12を適用した例、(c)は吸収体本体11の下面側には従来のバックシートとしてフィルム13を使用し、サイド部にバックアップシート12を組合せた例である。
【0042】
吸収体本体とバックアップシートの間に介在させるバッファーシートのコンセプトとその効果について説明する。
【0043】
本発明の吸水性耐水性シートで構成されたバックアップシートは、吸水機能を持つ、高通気性の防漏性シート材料であり、前述のように吸収体本体と組合せて使用されるが、加圧状態で一時的に多量な水性液がバックアップシートに直接供給されると、漏れを完全には防止できないという点で、通常のフィルム系バックシートとは異なる。この欠点は、前述の図7(b)および(c)に示したように、従来のフィルムタイプのバックシートを組合せることで解消できるが、せっかくの通気性がある程度犠牲になる。
【0044】
したがって、吸収体本体に一時的に多量の液が供給され、吸収体本体の保有能力を一時的にオーバーしてバックアップシートに溢流(flooding)する場合には、系外に漏らすことなく、しかもバックアップシートに大きい負荷をかけずに効率的に吸収機能を発揮させるためには、バックアップシートに広い面積にわたって均一に、かつ徐々に液が供給されるという条件を満たすように、時間的、量的あるいは圧力的な緩和機能を持った新たな機能部分を設けることが望ましい。
【0045】
このような機能を持った層は、バッファーシートと称されるが、このバッファーシートをバックアップシートに組合せることにより、バックアップシートの機能を効果的に発揮させることが可能になる。
【0046】
このような機能を持つバッファーシートに必要とされる主な条件は次の通りである。
(1) バックアップシートの持つ高通気性を阻害することがないような、十分な透湿、透気性(通気構造)を持つこと。
(2) 吸収体本体からの一時的な液の受け入れ能力を持ち、バックアップシートに対する時間的、流量負荷に対する底部一時貯留機能(Bottom Acquisition効果)を持つこと。
(3) 一時的に貯留した液を、多数の細孔構造(開孔フィルム、あるいはフォームセル等)により、バックアップシート全体に均一に分配して放流する機能(分配、放流効果)を持つこと。
(4) 望ましくは、バックアップシートに着用者の体重が直接かかるのを軽減するための、圧力緩和効果を持つこと。
【0047】
第一の要素である通気構造について説明する。
【0048】
本発明の吸水性耐水性シートの最大の特徴は、バックアップシートが下着と同等の大きい通気性を持っているということである。この特徴を阻害しないためには、これに組合されるバッファーシートにも、下着と同等の通気度が必要であり、後述する吸収体本体についても同様なことが言える。通気性が大きく、上述したような4つの条件を満たす素材は限られていて、凹凸を持った開孔ネット、開孔フィルム、および連続気泡で高発泡のフォーム(スポンジ)類のような多孔性素材の3種である。
【0049】
本発明の目的を達成するためには、通気度が1.5m3/min・m2(ASTM D-737)以上のものが望ましく、開孔ネットおよび開孔フィルムの場合には、開孔数および開孔率を、発泡フォームであれば厚さおよび発泡度を調節して対応する。
【0050】
第二の条件である、底部一時貯留機能(Bottom Acquisition)とは、従来から超薄型吸収体に使用されてきたトップ層に設ける上部一時貯留機能(Surface Acquisition)に対比した表現であって、本発明に適するようなシート状のSAPが主構成成分であるような超々薄型吸収体では、表面に供給された水性液は、SAPの吸収速度が遅いために、急速に吸収体本体のSAP層を通過して下層側に移動する。液の一部はSAP層に吸収されるが、大略半分以上は下層に移動して防漏シート上に一時的に滞留する。滞留した未吸収水は、SAPの膨潤によってSAP層に再び移動し、そこで吸収固定される。
【0051】
防漏体に代わって適用される本発明の吸水性耐水性シートで構成されたバックアップシートは、高い通気性および吸収性を有しているが、吸収能力には限界を持っている。従って吸収体本体のSAPに未だ十分な吸収余力がある場合には、一時的に下部に滞留した未吸収水を時間の経過とともにSAPに再吸収させ、一時的に安定にトラップさせた未吸収水を、バックアップシートには直接的に移行させないような工夫が必要である。しかしトラップ能力を超えたために止むを得ずバックアップシートに吸収される水性液部分については、部分的に偏ることなく、平均的にしかも均一に液をコントロールされた状態でバックアップシートに移行させることが重要である。これによってバックアップシートの能力を安定にしかも十分発揮させることができる。
【0052】
このように通気性を保ちながら未吸収水のトラップ機能とトラップ水位の調整機能を備えた、いわばダムのような効果を発揮するのが、バッファーシートの役割である。
【0053】
このような効果は、凹凸構造を持った網目構造体、凹凸構造を持った開孔フィルムあるいは連続発泡フォームなどの嵩高で多孔性である素材を巧妙に利用することによって実現することができる。
【0054】
次に、バッファーシートの嵩高性と多孔性についてより詳しく説明する。
【0055】
嵩高性については、機能的な面ではいくら嵩高であっても構わないが、一方、製品のハンドリングに関しては、コンパクトで薄い方がよい。本発明に好んで用いられる吸収体本体は、前述したようなSAPを主体とするシート状吸収体であり、製品厚み(乾燥時)は3mm以下の超薄型であり、さらには製品厚み1mm前後のスーパー超薄型吸収体のような薄さを特長とするものである。従ってこれらの吸収体本体の機能をサポートする役割のバッファーシートの厚さも、最大でも3mm以下、好ましくは1mm以下が好ましい。
【0056】
好ましい嵩高状態とは、製品として包装された状態はもちろん、開封された状態でも、着用状態でもできるだけ薄い状態を保ち、体液の排出時に生起する吸水湿潤化に伴って吸収体の膨潤、膨化に相呼応するように、このバッファーシートも膨化、嵩高化することである。例えば、高圧プレスすることによって圧力緩和、いわゆる「へたり」を起こしやすいレオロジカルな性質を利用して、上述したような厚さ1mm以上の凹凸化開孔ネット、開孔フィルム、あるいは発泡スポンジを1mm以下に高圧圧縮して仮セットしてバッファーシートとして使用し、製品としての薄物化を達成し、使用時には吸水、湿潤化に伴って嵩を回復するような性状を賦与することが好んで行われている。
【0057】
したがって本発明に適用される凹凸シートとしては、特開2001-19777号公報に示されているような、圧縮回復性のある嵩高性のものよりは、むしろ厚くて安定にへたりやすいものか、薄くても圧力変形しないものの方が望ましい。厚いシートの圧縮薄層化は、発泡スポンジのような例では比較的容易に実現できる。例えばPE、PPなどの熱可塑性ポリマーの発泡体であれば、ガラス転移点以上の温度で、しかも熱溶融温度以下で加圧プレスすることによって、1/10〜1/5程度まで圧縮が可能となる。可塑化温度の高いポリウレタンフォームの場合も、加熱下に高圧で処理することによって1/5程度に圧縮することが可能になる。またセルローススポンジのような熱可塑性のないスポンジでも、湿分を持った状態で加熱加圧処理することで、やはり1/5程度まで圧縮することができる。これらの圧縮化されたスポンジも、使用時体重のかかった加圧下で吸水すると、発泡セルの抱水により嵩が元のレベル近くまで回復する。
【0058】
次に多孔性について詳しく説明する。本発明の吸水性耐水性シートとともに使用されるバッファーシートにおいて、多孔性は、耐水性を保持しながら同時に通気性を保つために重要な要素である。多孔性バッファーシートは、常圧では、疎水性素材の表面張力で水性液が遮断され、加圧下では液が滲み出てくるような大きさの細孔が必要である。例えば凹凸成型ネットであれば、少なくとも50mesh以下、好ましくは100mesh以下で、しかも水の濡れ現象の少ないPE、PP、PETなどの疎水性素材、あるいはシリコーンまたはテフロン(登録商標)処理により疎水化した表面を持たせたものが望ましい。
【0059】
発泡フォームであれば、PE、PP、ポリウレタンなどの連続気泡を有するもので、例えば、セル数は20個/25mm(20ppi)以上、好ましくは30個/25mm〜100個/25mmであり、発泡度でいえば20〜40倍発泡したものが望ましい。凹凸構造を持った開孔フィルムとして代表的なものは、底部と頂部が開孔径の異なるいわゆる漏斗状形状を持つ開孔フィルムである。このような開孔フィルムは従来から、生理用ナプキンのトップシートとして、開孔径の大きいサイドを上にして液の受け入れ側に配置し、液の流入を容易にすると同時に逆流を防ぐように配置し、ステンフリー性の高い表面材として多用されている。
【0060】
これに対して本発明では、前述とは逆の方向、すなわち開孔径の小さい側を上に向けて配置し、ロート状の周壁で吸収体本体を下部から支えるように配置される。図8は、本発明に好んで用いられる、凹凸を持った開孔フィルムからなるバッファーシート20の外観を示し、図9はその拡大断面を示している。この開孔フィルムは、適当な厚さのフィルム21を、その厚さ方向に裁頭円錐形に膨出させてロート状周壁22を形成し、その頂部に円形の開孔23を開けた膨出部24を、適当な密度で多数設けたものである。
【0061】
開孔フィルムで重要なのは、第一に、膨出部の頂部に形成された23の開孔径である。図10に示すように、バッファーシート20が吸収体本体10とバックアップシート12との間に配置された吸収体製品において、吸収体本体10に吸収された水性液の量が吸収体本体10の吸収能力を超えたとき、この開孔から溢れた水性液をバックアップシート12側へ排出する排出孔として作用するため、開孔23の開孔径は、通気性を損なわない範囲で小さい方がよい。この開孔径は、開孔形状を真円に近似させたとき、その好ましい直径は少なくとも2mm以下、好ましくは1mm以下である。
【0062】
このような条件では、吸収体本体を通過して下層に滲み出た水性液は、凹凸開孔フィルムの凹部に一旦トラップされ、そこから溢れるまでは開孔の抵抗により、直接バックアップシートに流出することが防止される。しかし開孔径が1mm以上、特に2mm以上になると、吸収体本体から下層に移行した水性液は、ほとんど抵抗を受けることなく直接的にバッファーシート20内の空隙を通してバックアップシート12へとバイパスしてしまい、トラップ効果、すなわち底部一時貯留機能(Bottom Acquisition効果)を意味のないものにしてしまう場合がある。
【0063】
第二に重要な点は、開孔フィルムに設けられる開孔の数である。凹凸メッシュや発泡フォームの場合には、開孔面積の小さい多数の開孔が全体に均一分布しているが、開孔フィルムの場合には相対的に開孔数が少ないので、開孔径との関係もあり、開孔数が重要になる。また開孔数は、バックアップシート側へ溢れて流出する水性液の分割、分流数にも密接に関係する。このような観点から、開孔は、個数/cm2で表現すると、5個/cm2以上が好ましく、さらに好ましくは10個〜100個/cm2 である。5個/cm2以下では、均一な分配放流効果を出すことが難しくなる。
【0064】
図11は、PE開孔フィルムの頭頂部の開孔の分布例を示したものである。図11(a)に示すサンプルAは、Tredegar社(米国)製の、比較的目の粗くて厚いものであり、図11(b)に示すサンプルBはAvgol社(イスラエル)製の比較的目の細かいものである。頭頂部の直径(φt)が0.75mmと目が細かく、開孔数55個/cm2のサンプルBは、単独層として用いても十分なトラップ効果および分配放流効果を示すが、φtが1.2mmと開孔径が大きく、開孔数15個/cm2のサンプルAは、SMS構造を有する耐水性不織布を抵抗シートとして積層接合して用いられる。
【0065】
次にバックアップシートとしての開孔フィルムの厚さとクッション効果について説明する。吸収体製品を実用に供する場合、着用者の体重を直接受ける部分には、当然厚みが厚く、圧縮回復性があり、クッション効果が大きい方が、吸収体本体に対する負荷は少なくなるという点で望ましい。しかし本発明では、上述したクッション性よりも、形状保持性の方がより重要である。
【0066】
凹凸の度合いは、図9に符号Hで示したような厚みで表現される。発泡フォーム等は圧縮状態で用いられるので、へたりやすいものでよいが、開孔フィルムの場合には、厚みは薄くても、膨出部が潰れないような、変形の少ないものが望ましく、生理用品のトップシートに使用されるような薄くて柔らかいものは不適当である。また原料フィルムの材質も、メタロセン系やエラストマー系をブレンドした比較的柔らかい弾性のあるものではなく、通常の高圧および低圧PE、あるいはPPのような、目付の割には安価で硬い素材の方が望ましい。凹凸を形成する膨出部の数はフィルムの厚さにも関係する。厚いフィルムを原料にした場合には、大きなクレープ状の波形でもよく、薄いフィルムを用いる場合には、剛性を保つために凹凸数を多くしてコントロールすることが可能である。
【0067】
バックアップシートとバッファーシートの組合せ実施態様
上述したようなバックアップシートとバッファーシートを組合せて吸収体製品を構成する場合の具体的な配置例について説明する。
【0068】
図12は、吸収体本体11、バックアップシート12およびバッファーシート20の相対配置の具体例を断面図で示したもので、図12(a)は吸収体本体11の下面全体にバッファーシート20を配置した例、図12(b)は吸収体本体11の下面からサイド部にわたって吸収体本体11全体をバッファーシート20で包んだ例、図12(c)は吸収体本体11のセンター部分のみにバッファーシート20を配置した図、図12(d)は吸収体本体11のサイド部分のみをバッファーシート20で包んだ例をそれぞれ示している。
【0069】
図13はバックアップシートとバッファーシートと吸収体本体との相対配置について、その実施態様を平面図で示したものである。(a)はバックアップシート12に対してバッファーシート20が吸収体11全体をカバーするように重ねて配置した場合、(b)はバックアップシート12が全面にあるが、バッファーシート20を縦方向の中央のみに配置した場合、(c)はバックアップシート12を全面に、バッファーシート20は横方向の中央のみに配置した場合を示す例である。
【0070】
前述の図13は、バッファーシートを単独で使用した場合、すなわち前述の開孔フィルムサンプルBのように比較的小さい開孔の開孔フィルムと組合せた場合の例である。図14は、前述の図11(a)に示した開孔フィルムサンプルAのように比較的大きな開孔を持つ開孔フィルムからなるバッファーシート20を、吸収体本体11およびバックアップシート12と組合せる場合において、バッファーシート20にさらに抵抗シート30を組合せて、バックアップシート12にかかる負荷の低減と、スムーズな分流とを実現するための耐水抵抗を保つことを目指している例である。
【0071】
ここで「抵抗シート」とは、開孔フィルムや凹凸メッシュ等のバッファーシートと組合せて、さらにバッファーシートの効果を増強させる役割を担うものである。したがって抵抗シートとして使用される素材は、開孔フィルムや凹凸メッシュと比較して、はるかに微細な多孔構造を持ち、しかも高通気性を持つことが要求される。このような性能を持つものの例として、構成繊維デニールの細い不織布がある。
【0072】
このような不織布には、上述のような多孔性とともに、水に対して濡れ性が少なく、浸透抵抗を持つできるだけ薄くて均一な疎水性、撥水性不織布が望ましい。それらは例えば、PE、PP、ポリウレタン等のメルトブローン不織布、スパンボンド不織布、あるいはその複合体であるSMS構造やSMMS構造を有するものである。用いる不織布の目付は、5g/m2〜20g/m2のものが望ましい。耐水圧は高くてもよいが、バックアップシートの耐水性材料として用いるほどの耐水圧は必須ではない。
【0073】
抵抗シートとバッファーシートとは、密着状態で一体化して機能することが重要であり、そのためには、バッファーシートと抵抗シートとを接合剤や融着により接合して使用するのが好ましい。たとえば特表2001-501883(Tredegar社)のようにキャリアと開孔フィルムとの複合材料を製造するのと同様なプロセスで開孔フィルムとメルトブローンをその製造工程で一体化した開孔フィルム/メルトブローン複合体を使用してもよいし、吸収体製品の加工工程にバッファーシートと抵抗シートとの接合行程を組み込ませてもよい。
【0074】
図14に戻って説明すると、図14(a)は、バッファーシート20の下面全体、すなわちバッファーシート20とバックアップシート12との間に、バッファーシート20とほぼ同一サイズの抵抗シート30を配した例である。
【0075】
図14(b)は、抵抗シート30として用いられる不織布により吸収体本体11全体を包む(Core Wrapping)ように応用した例、図14(c)は抵抗シート30をバッファーシート20の上面、すなわち吸収体本体11とバッファーシート20の間に抵抗シート30を配した例である。また図14(d)および(e)は、ともに抵抗シート30をバッファーシート20の一部に配した例で、(d)は圧力を受けやすいサイドエッジ部分のみに抵抗シート30を配した例、(e)は抵抗シート30を液がバイパスしやすいセンター部分のみに配した例である。
【0076】
図14(d)および(e)に示した例のように、バッファーシート20の下面の一部分のみに抵抗シート30を使用する場合には、全体の通気バランスを阻害しないような範囲で、その抵抗シート30を不織布ではなく、PE、PPまたはPETフィルムのような、無孔で通気性のないフィルム素材を使用して、部分的に耐水性を増強することも可能である。
【0077】
次に、本発明の吸水性耐水性シートを用いた吸収体製品に適用される吸収体本体について説明する。
【0078】
SAP含有量が50%以上を占めるようなSAP含有量の高い系では、吸収体の厚みが従来品の1/2程度、すなわち2.0〜3.0mmの超薄型と呼ばれている吸収体になり、特にパルプレスといわれる、SAP含有量が80%以上を占めるようなシート状吸収体の場合には、吸収体の厚みが従来品の1/5、すなわち1mm程度の超々薄型の吸収体の開発が行われている。
【0079】
しかし、例えばエアレイド法によって不織布に大量のSAPを添加する方法や、本発明者らが提案した特許第P3046367号(日本吸収体技術研究所)のような方法で得られた、メガシン(登録商標)と呼ばれているシート状吸収体などの超々薄型吸収体の場合には、そのまま従来通りの利用法に従えば、100ccの液を吸収するのに90秒程度を要する。これに対して、健康な幼児の排尿は100ccについて20秒間程度の高スピードで排出する。したがって当然、その間のスピード差を調節する機能が必要になる。本発明はこのような使用形態において特に効果的である。
【0080】
吸収スピードの差を調節する方法としては、その第一は、本発明者らが特願2001-043494号で提案したように、液体分配ユニットを用いて吸収体の表面全体に液を急速に拡散させ、面積利用効率を上げる方法、第二には本発明のようにバッファーシートのBottom Acquisition効果を利用して未吸収水をトラップして時間を稼ぐ方法が挙げられる。本発明の吸水性耐水性シートからなるバッファーシートは、さらに液体分配ユニットと組合せて利用することにより、吸収スピードはさらに大幅に向上する。
【0081】
次に耐水性の評価方法について説明する。
【0082】
図17は評価装置の全体を示す図である。図18は評価サンプル装着部分の詳細を示す図である。
【0083】
サンプルサイズは5cm×5cm以上とする。
【0084】
サンプルの設置は以下のとおり行う。
【0085】
ジャッキ上のガラス板にろ紙(型:No.2、サイズ:15cm×15cm、以下、同様とする。)を2枚重ねて敷く。
【0086】
ろ紙の中心部に、SAPコート面が上になるように、サンプルを置く。
【0087】
サンプルの上にサンプルより小さめのティッシュ(4cm×4cm以上)を敷く。
【0088】
つぎにアクリルパイプを以下のとおり設置する。
【0089】
パイプと一体化したアクリル台座の下面の穴(20mmφ)に合わせたクッション用パッキンを貼り付ける。
【0090】
スタンドのクランプにてアクリルパイプを保持して、サンプルの中心部にパイプの下端の穴が合うように位置を調節する。この場合にサンプルに対して垂直になるように保持する。
【0091】
パイプの位置決めに続いてクランプを締めてパイプの位置を固定する。
【0092】
ジャッキを上昇させてガラス板とアクリルパイプの下端の台座との間にクッション用パッキンを介して液漏れのないように締め付ける。
【0093】
次に以下の手順で耐水圧の測定を行い、耐水性を評価する。
【0094】
アクリルパイプの上方先端から洗浄ビンに入れた測定液(0.9NaCl水溶液、食用青色1号で着色)を静かに少量(例えば、2〜3ml)入れる。この場合サンプル面が十分に吸液していることを確認する。
【0095】
1分間放置してサンプル面のSAP粒子を膨潤させる。この場合測定液が漏れていないことを確認する。
【0096】
アクリルパイプの上方先端にロートを付け、測定液を加えていく。ガラス板上のろ紙に液漏れが発生したときのアクリルパイプの目盛りを読み、耐水圧(P)とする。10mmH2O単位で読み取るものとする。
【0097】
【実施例】
本発明の吸水性耐水性シートをバックアップシートとし、このバッファーシートを吸収体本体と重ね合わせて吸収体製品モデルとする。この製品モデルに、100mlずつ3回、計300mlの生理食塩水を添加し、吸液量、バックアップシートへの移行量等の液の物質収支を検証した。
【0098】
まず吸収体製品モデルの構成について説明する。
【0099】
・バックアップシートの調整
特許第3046367号の製造方法に従い、20g/m2のティッシュを基材として、微粒SAP(三菱化学製、商品名「AP211-D」、平均粒径200μm)、MFC(特種製紙製、商品名「S-MFC」)を複合させてシート状吸収体を下記の条件で調製した。
【0100】
すなわち、前記SAPおよびMFCからなる固形物を、エタノール/水(70/30)混合溶媒系に分散して、SAP濃度20%、MFC濃度0.6%のスラリーを用意した。このスラリーを、前記基材に7mm/3mmの幅で(SAP層7mm、3mm間隔)でライン状パターンにコーティングした後、脱溶媒、乾燥した。乾燥シートにカーテンスプレー式ホットメルトアプリケーターからEVA系ホットメルトを2g/m2になるよう繊維状に塗工して、SAP 50g/m2、EVA 2g/m2、MFC 1.5g/m2、基材 20g/m2の、全目付 73.5g/m2のシート状吸収体を調製した。
【0101】
このシート状吸収体に、PPスパンボンドSとPPメルトブローンMの積層体であるSMMS構造を有するもの(Avgol社製)を重ね合わせ、熱プレスをして接合一体化し、これをバックアップシートとした。なお、用いたSMMS構造のものの目付は 20g/m2で、その耐水圧は200mmH2Oであった。SAPの存在しない基材のみの層が連続して存在するため、通気性は阻害されない。
【0102】
・バッファーシートの用意
図10(b)に示した開孔フィルムサンプルB(Avgol社製)を用いた。このシートも、ほとんど通気抵抗を示さないほどに通気性は高い。
【0103】
・吸収体本体の用意
スパンレース基材上にSAPをコーティングしたシート状吸収体(特種製紙製、商品名「メガシン」)を用意する。このシート状吸収体の構成は、SAP 150g/m2、不織布基材40g/m2、SAPのコート幅7mm、間隔3mm(7/3)で、全目付 190g/m2であった。
【0104】
このシート状吸収体を100mm×270mmにカットしたものを2枚重ねて、ティッシュで包んだものを吸収体本体とした。この吸収体本体の吸収量は450ml、保持量は320mlであった。この吸収体本体も、不織布基材部分が連続的に存在するため、通気性を阻害しない。
【0105】
前記の吸収体本体の下面全体にバッファーシートを、その開孔径の小さい頭頂部が吸収体本体に対面する図10のように配置し、これにバックアップシートを、ティッシュ面がバッファーシートに接するように配置して吸収体製品モデルを調製した。
【0106】
この製品モデルに、300mlの生理食塩水を100ccずつ10分間隔で3回に分けて添加し、吸収液の存在状態を解析して物質収支を比較した。バッファーシートがない場合と、バッファーシートがある場合についての物質収支をそれぞれ図15および図16に示す。
【0107】
図15のバッファーシートを使用しない系では、吸収体で捕捉できなかった水性液はバックアップシートへと流出した。吸水直後と放置して10分後の変化は、トップシートに含まれたわずかな未吸収液が吸収体本体に再吸収されるのみであった。吸収されずに放出された流出量は、1回目23ml、2回目25ml、3回目30mlと、300mlのうち合計78mlがバックアップシートに流出し、バックアップシートはこの量を確実に処理しなければならなかった。その分バックアップシートに大きな負荷がかかり、漏水の危険性も高くなった。
【0108】
ところがバッファーシートを用いた図16(b)の系で観測すると、まず1回目の100mlが供給されると吸収直後の供給液はトップシートに5ml、吸収体に75ml、そして未吸収の19mlがバッファーシートにトラップされ、それからリークした1mlだけがバックアップシートに吸収処理された。第2回目の供給が行われる間に吸収体本体のSAPが膨潤し吸収余力を持つようになり、トップシートとバッファーシートから液を吸い上げて再吸収した。これによりバッファーシートのトラップ水は空になって、第2回目の液を受け入れる準備が整った。
【0109】
このようにして第3回目の液の吸収を終了すると、1回目 1ml、2回目 2ml、3回目1mlと300mlのうち5mlだけがバックアップシートの負荷として処理された。
【0110】
結果的に、バッファーシートの配置によって、バックアップシートへの負荷を78mlから5mlに大幅に減少させるとともに、バックアップシートとしていつでもトラブル時の予備吸収体としての機能を温存させることができた。
【0111】
【発明の効果】
本発明の吸水性耐水性シートによれば、SAPを含有するバックアップシートの採用により防水フィルムを用いることなしに、高通気性の防漏効果を得ることが可能になる。さらに、このバックアップシートと多孔性のバッファーシートを接合し、これとSAPを主体とする吸収体本体とを組合せることによりアクイジション機能を発揮させることになり、吸収スピードや拡散の問題点を解決することができる。これにより通気性にすぐれた超コンパクトな吸収体製品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による吸水性耐水性シートの層構成を示す概略的断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態による吸水性耐水性シートの層構成を示す概略的断面図である。
【図3】本発明のさらに他の実施の形態による吸水性耐水性シートの層構成を示す概略的断面図である。
【図4】本発明の吸水性耐水性シートを製造するプロセスを示す説明図である。
【図5】本発明の吸水性耐水性シートを製造する他のプロセスを示す説明図である。
【図6】本発明の吸水性耐水性シートを製造するさらに他のプロセスを示す説明図である。
【図7】 (a)、(b)および(c)は、本発明の吸水性耐水性シートを応用した吸収体製品のそれぞれ異なる形態を示す概略的平面図と縦断面図である。
【図8】本発明に用いられる、凹凸を持った開孔フィルムの外観を示す斜視図である。
【図9】図8の開孔フィルムの部分切欠側面図である。
【図10】吸収体本体に吸収された水性液が開孔フィルムの開孔からバックアップシート側へ排出される状態を示す説明図である。
【図11】 (a)および(b)は、互いに異なるPE開孔フィルムの頭頂部の開孔の分布例を示す説明図である。
【図12】 (a)〜(d)は、互いに異なるバックアップシート、バッファーシートおよび吸収体本体の相対配置の具体例を示す縦断面図である。
【図13】 (a)〜(e)は、吸収体本体、バックアップシートおよびバッファーシートの相対配置の互いに異なる具体例を示す平面図である。
【図14】 (a)〜(e)は、吸収体本体、バックアップシート、バッファーシートおよび抵抗シートの相対配置の互いに異なる具体例を示す縦断面図である。
【図15】バッファーシートがない場合についての物質収支を示すブロック図である。
【図16】バッファーシートがある場合についての物質収支を示すブロック図である。
【図17】評価装置の全体を示す図である。
【図18】評価サンプル装着部分の詳細を示す図である。
【符号の説明】
1 疎水性不織布層
2 SAP層
3 親水性シート層
4,5 ホットメルト層
6 起毛構造
7 ティッシュ
11 吸収体本体
12 バックアップシート
20 バッファーシート
21 フィルム
22 ロート状周壁
23 開口
24 膨出部
30 抵抗シート
Claims (29)
- 少なくとも150mmH2O以上の耐水性を有する疎水性不織布と、水分拡散性を有する親水性シートと、前記疎水性不織布と前記親水性シートとの間に介在する、平均粒径が500μm以下のSAP粒子と該SAP粒子のそれぞれを相互に結合するミクロフィブリル状セルロースとから構成されているSAP層とで構成された、3層構造を持つことを特徴とする吸水性耐水性シート。
- 前記SAP層が、実質的に全面に均一な厚みで存在する請求項1に記載の吸水性耐水性シート。
- 前記SAP層が、部分的に目付の異なる目付分布を持っている請求項1に記載の吸水性耐水性シート。
- 前記SAP層が、前記SAP粒子の存在域と前記SAP粒子の非存在域からなる請求項1に記載の吸水性耐水性シート。
- 前記SAP粒子の存在域と前記SAP粒子の非存在域とが交互にライン状に分布している請求項4に記載の吸水性耐水性シート。
- 前記疎水性不織布が、スパンボンド不織布をSで表し、メルトブローン不織布をMで表した場合に、SMSまたはSMMSの順序で配置されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の吸水性耐水性シート。
- 前記親水性シートが、木材パルプ、レーヨンおよびコットンのいずれかのセルロース系繊維を含むものである請求項1〜5のいずれかに記載の吸水性耐水性シート。
- 前記親水性シートが、木材パルプからなるティッシュペーパーである請求項1〜7のいずれかに記載の吸水性耐水性シート。
- 前記SAP粒子が、平均粒径300μm以下、AUL30ml/g以下のゲルブロッキング性を有する微粉状SAP粒子である請求項1〜8のいずれかに記載の吸水性耐水性シート。
- 通気度が0.5m3/min・m2以上である請求項1〜9のいずれかに記載の吸水性耐水性シート。
- 前記疎水性不織布と前記SAP層との間、および前記親水性シートと前記SAP層との間の接合が繊維状ホットメルト樹脂によってなされている請求項1〜10のいずれかに記載の吸水性耐水性シート。
- 前記SAP層と前記セルロース系繊維を含む前記親水性シートの接合が、前記SAP層に含まれるミクロフィブリル状セルロースによって行われ、前記SAP層と前記疎水性不織布との接合が繊維状ホットメルト樹脂によって行われている請求項7〜11のいずれかに記載の吸水性耐水性シート。
- ティッシュペーパーからなる基材の表面に、ミクロフィブリル状セルロース、SAP粒子およびエタノール/水系の混合溶媒からなるスラリーを塗工し、ついで前記スラリー中の溶媒を除去したのち乾燥することにより、シート状吸収体を調製する工程と、前記シート状吸収体の前記SAP粒子の露出面にホットメルト樹脂を繊維状にスプレーし、このホットメルト樹脂の上に耐水性不織布を重ね合わせ、次に加熱して前記ホットメルト樹脂により前記シート状吸収体と前記耐水性不織布とを接合することを特徴とする吸水性耐水性シートの製造法。
- 請求項1〜12の吸水性耐水性シートの前記疎水性シート面を外面、前記親水性シート面が内面になるように配置してバックアップシートとし、このバックアップシートの内面側に、シート状の吸収体本体を組合せて構成したことを特徴とする吸収体製品。
- 前記吸収体本体が、前記SAP粒子を50%以上含有するシート状吸収体である請求項14に記載の吸収体製品。
- 前記吸収体本体と前記バックアップシートの間に、圧力緩和および流量制御のための高通気性のバッファーシートが介在している請求項14または15に記載の吸収体製品。
- 前記バッファーシートが多数の開孔を有し、各開孔の周壁が他の部分から表面起立して凹凸表面を形成している開孔フィルムである請求項16に記載の吸収体製品。
- 前記開孔フィルムの前記開孔の周壁が、その一端から他端に向かうにしたがって順次減少するテーパー面を形成し、前記開孔フィルムが、その開孔の開孔径の小さい側を吸収体本体面に接して配置され、開孔径の大きい側が前記バックアップシート面に接して配置されている請求項17に記載の吸収体製品。
- 前記開孔の開孔面積の総和が、前記開孔フィルムの全面積の10%〜50%である請求項17または18に記載の吸収体製品。
- 前記開孔フィルムの開孔数が1〜100個/cm2であり、前記開孔の周壁の高さを含む前記開孔フィルムの厚みが1mm以下である請求項17〜19のいずれかに記載の吸収体製品。
- 前記バッファーシートが、加圧状態で水性液の透過を許容する連続気泡を持った厚み3mm以下、セル数20個/25mm以上の発泡スポンジシートである請求項16に記載の吸収体製品。
- 前記発泡スポンジシートが、着用時の乾燥時には厚さが1mm以下であり、使用時の吸水により厚みが1mm以上に膨化するように圧着処理されている請求項21に記載の吸収体製品。
- 前記発泡スポンジシートが、疎水性のポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォームまたはポリウレタンフォームのいずれかである請求項21または22に記載の吸収体製品。
- 前記バッファーシートが、前記吸収体本体の下面全体をカバーするように配置されている請求項16〜23のいずれかに記載の吸収体製品。
- 前記バッファーシートが、前記吸収体本体の下面部において中央部位から後身頃相当部位の一部をカバーするように配置されている請求項16〜23のいずれかに記載の吸収体製品。
- 前記バッファーシートが、前記吸収体本体の下面部において中央部位から前見頃相当部位の一部をカバーするように配置されている請求項16〜23のいずれかに記載の吸収体製品。
- 前記バッファーシートが、前記吸収体本体の両側面部位と両側面下部位のみをカバーするように配置されている請求項16〜26のいずれかに記載の吸収体製品。
- 前記バッファーシートおよび前記バックアップシートに、抵抗シートとして耐水性不織布がさらに配置されている請求項16〜27のいずれかに記載の吸収体製品。
- 前記バッファーシートの多孔性領域の一部に、耐水性不織布または非水透過性フィルムをさらに重ねてなる請求項16〜28のいずれかに記載の吸収体製品。
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