JP4553203B2 - 作業補助装置 - Google Patents
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Description
移動機構によって移動する対象物の移動位置を指示するために操作子を利用する技術も知られている。その操作子は作業者が操作することが可能であり、作業者が操作子を操作すると、その操作に追従して移動機構が作動する。作業者が操作子を操作し、対象物に固定された基準点が目標軌道に沿って移動するように指示すると、対象物の基準点を目標軌道に沿って移動させることができる。モータ等の動力を利用して対象物を移動することから、作業者は軽い操作力で対象物に固定された基準点を目標軌道に沿って移動させることができる。
しかしながら従来の技術では、目標軌道に沿った操作を案内する際、基準点が目標軌道上にあれば操作抵抗力が得られない。目標軌道から外れてから初めて目標軌道から外れる操作に対する抵抗力が得られる。
その結果、実際に得られる軌道は、目標軌道に沿ってはいるものの蛇行したものとなりやすい。目標軌道に沿った操作を案内するために、目標軌道から外れたときに操作子に操作抵抗力を与える方式では、蛇行しないように案内することが難しい。
本発明はその問題を解決する。作業者があたかも目標軌道の形状をしている定規ないしテンプレートに倣って操作子を操作しているような操作感が得られ、対象物を蛇行させずに目標軌道に沿って移動する作業を補助する技術を提案する。
その付与機構制御器は、目標軌道を含む仮想案内面を設定し、位置センサで検出される基準点の位置を仮想案内面に投影した位置(投影位置と称する)と目標軌道が一致しているときには仮想案内面における目標軌道の一方の側方から他方の側方に向う大きな操作抵抗力(第1の操作抵抗力)を抵抗力付与機構によって操作子に付与させるとともに、投影位置が目標軌道の他方の側方にあるときには小さな操作抵抗力(第1の操作抵抗力よりも小さい第2の操作抵抗力)を付与させる。
移動機構制御器は、操作子が受ける操作力と抵抗力の合力に基づいて対象物を移動させるように移動機構を制御する。
なお、ひとつの目標軌道に対して複数の仮想案内面を設定してもよい。また目標軌道の異なる部分に夫々異なる仮想案内面を設定してもよい。この場合は夫々の仮想案内面がこれに対応する目標軌道の夫々の部分を含んでいればよい。
本補助装置によると、基準点を目標軌道に一致させるにあたって、空間中をフリーに移動できる操作子の操作位置を作業者が調整する必要がなく、作業者は目標軌道の一方の側方に向けると同時に目標軌道に沿った方向に操作力を加えればよい。
基準点の投影位置と目標軌道が一致している場合には、仮想案内面における目標軌道の一方の側方から他方の側方へ向う大きな操作抵抗力が付与機構によって操作子へ付与される。操作者は投影位置を目標軌道の一方の側方へは移動させ難くなる。これによって仮想案内面が定規ないしテンプレートの役割を果たし、作業者はあたかも定規ないしテンプレートに押付けながら操作子を目標軌道に沿って移動させる操作をすることになる。対象物は目標軌道に沿ってスムースに(蛇行せずに)移動する結果が得られる。基準点が目標軌道と一致しているときは基準点の位置がそのまま投影位置となる。基準点と目標軌道が一致している時に、目標軌道の一方の側方から他方の側方に向う操作抵抗力を付与するようにすると、仮想案内面上で目標軌道の一方の側方に仮想的な定規が存在し、目標軌道の他方の側方には定規が存在しない状態を実現することができる。
本補助装置の作用を比喩的に説明すると次のように説明することができる。例えばペンで目標軌道をなぞる場合、フリーハンドでなぞるよりも、目標軌道の形状をしている定規ないしテンプレートを用意し、その定規等に当ててなぞる方が容易であり、しかも蛇行しない。
対象物に固定された基準点を目標軌道に沿ってスムースに移動させるだけであれば、移動機構を自動制御することができる。操作子を必要としない移動装置を構成することができる。しかしながら、対象物に固定された基準点を目標軌道に移動させるにあたって、その移動速度等を作業の現場で作業者が指示したい場合もある。この場合に本補助装置は特に有効であり、作業者は操作子を操作して目標軌道に沿った移動速度を指示することができる。
即ち、投影位置が目標軌道の他方の側方(定規が存在しない側)にあるときには摩擦力が小さいために比較的に自由に操作子を操作できるのに対し、投影位置が目標軌道の一方の側方(定規が存在する側)にあるときには、投影位置を目標軌道から離れる方向に操作子を操作しようとすると大きな摩擦力が作用するために操作子の操作が強く拘束される状態を実現する。
この場合、移動機構にはモータ等の動力装置が必要とされるが、抵抗力付与機構はブレーキ等で実現することができ、動力は必ずしも必要とされない。操作子の位置あるいは操作子に加えられる力に基づいて移動機構を制御すれば、作業者が操作する操作子によって、移動機構によって移動する基準点の移動位置が制御される。
移動機構が抵抗力付与機構を兼ねることで補助装置全体をコンパクトにすることができる。同時に対象物と操作子が一体となって移動するので、作業者は対象物を移動させたい方向に移動させたい距離だけ操作子を操作すればよい。作業が一層し易くなるという利点が得られる。
この場合、例えば1.0[N]の操作力が加えられたために1.0[kg]の仮想物体に1.0[m/sec2]の加速度が生じると計算する。移動機構は基準点に対して1.0[m/sec2]の加速度を実現する。基準点が固定されている実際の対象物は5.0[kg]であるとすると、5.0[kg]の質量に1.0[m/sec2]の加速度を加えるには5.0[N]の力を必要とする。移動機構を駆動するモータが4.0[N]の力を出力すると上記の結果が得られる。この場合、1.0[N]の操作力から4.0[N]の補助力を引き出して対象物に5.0[N]の力を加えた運動を実現する。作業者は操作子から1.0[N]の反力(即ち操作抵抗力)を受けることになる。実際には5.0[kg]の対象物をあたかも1.0[kg]の物体であるかのように操作することができる。
投影位置が案内面内で目標軌道の他方の側方(仮想的な定規が存在しない側)にあるときには小さな仮想摩擦力が設定される。小さな摩擦力により作業者が操作子に加える力に対して小さな操作抵抗力を付与することになる。投影位置が案内面内で目標軌道の他方の側方にあるときには操作子を操作し易くすることができる。
その一方で投影位置が案内面における目標軌道の一方の側方(仮想的な定規が存在する側)にあるときには大きな仮想摩擦力が設定される。大きな摩擦力により作業者が操作子に加える操作力に対して大きな操作抵抗力を付与することになる。投影位置が案内面における目標軌道の一方の側方にあるときには操作子を操作し難くすることができる。これによって、作業者が投影位置を目標軌道の他方の側方から一方の側方へと移動させると投影位置が目標軌道と一致したところで作業者は操作子から強い抵抗力を受けることになる。作業者は投影位置が目標軌道に一致したところであたかも定規ないしテンプレートに投影位置が接したような感覚を受けることになる。その状態で目標軌道に沿った方向に基準点を移動させるように操作子を操作することで対象物を目標軌道に沿ってスムースに(蛇行せずに)移動させることができる。
ワークの取り付け位置の誤差等によって、作業補助装置が指示する目標軌道が、現実の目標軌道から微妙にずれる場合がある。そのような場合には、作業者は操作子を仮想的な定規に押し付ける操作力を加減する。現実の目標軌道が仮想的定規の内側にある場合には、上限値以上の操作力を加える。その結果、基準点を目標軌道よりも仮想的定規側に移動させ、現実の目標軌道に沿って移動させることができる。作業補助装置内に記憶された目標軌道のデータが現実の目標軌道からずれていても、対象物を現実の目標軌道に沿って移動させることができる。このときも作業者は操作子を仮想的定規に押し付ける操作する。基準点が蛇行することはない。
このことを図8を用いて例示する。図8に模式的に示すように、目標軌道Lで交わる2つの仮想案内面92、94を設定する。抵抗力付与機構は、目標軌道Lで交わる2つの仮想案内面92、94のそれぞれにおいて操作抵抗力を計算してその合力を付与する。図8は、基準点Pと目標軌道Lが一致している時に、仮想案内面94内において目標軌道Lの一方側の側方から他方側の側方に操作抵抗力95が作用することを模式的に例示している。また、基準点Pと目標軌道Lが一致している時に、仮想案内面92内において目標軌道Lの一方の側方から他方の側方に操作抵抗力93が作用することを模式的に例示している。
この場合、仮想案内面92、94の間に位置している基準点Pを作業者が目標軌道Lに向ける方向に操作子に付勢すれば、基準点Pは目標軌道L上で安定する。2つの仮想案内面92、94を設定することによって、基準点Pを目標軌道Lと交差する面内で2次元的に蛇行すること防止しつつ目標軌道Lに沿った基準点Pの移動を補助することができる。
なお、基準点Pと目標軌道Lが一致している場合には仮想案内面92、94に対する基準点Pの投影位置は基準点Pの位置と一致する。
なお「カーブの外側」とは、カーブを規定する曲率半径の中心位置に対して目標軌道の反対側をいう。
この場合、作業者はカーブの内側から外側に向けて基準点を押し付けるように操作子に付勢するとともに目標軌道に沿った方向にも操作子に付勢する。操作抵抗力は目標軌道に沿うように基準点をカーブの内側へその方向を変えさせるように作用する。基準点を目標軌道に沿った方向に移動させるために操作子に付勢した力が勢い余って仮想的な定規から目標軌道の他方の側方へ外れてしまうような事態を回避することができる。
なお、本明細書では、「目標軌道がカーブを描く場合」には目標軌道が屈曲する場合を含む概念で用いている。
(第1形態) 仮想案内面における目標軌道の一方の側方から他方の側方へ向う操作抵抗力には上限値が設けられており、操作力のうち、目標軌道の他方の側方から一方の側方へ向う操作力成分が前記上限値よりも小さい場合には、目標軌道の一方の側方から他方の側方へ向う操作抵抗力を、操作力のうち、目標軌道の他方の側方から一方の側方へ向う操作力成分と同じ大きさに設定する。
これにより作業者は、投影位置を目標軌道の他方の側から一方の側へ移動させる際、あたかも目標軌道を境にして一方の側方では大きなクーロン摩擦力(静止摩擦力)を受けるかのように操作子から操作抵抗力を感じることができる。静止摩擦力を下回る操作力では投影位置は目標軌道に一致したところでそれ以上目標軌道の一方の側へは移動しない。
その一方で作業者は上限値を超える作業力を目標軌道の他方の側方から一方の側方へ向う方向へ加えると、その操作力は静止摩擦力を上回り、基準点を目標軌道の一方の側へ移動させることができる。
(第2形態) 仮想案内面における目標軌道の一方の側方から他方の側方へ向う操作抵抗力には上限値が設けられており、投影位置をそれ以外の方向へ向うように操作子を移動させる場合に対する操作抵抗力にも上限値が設けられており、「仮想案内面における目標軌道の一方の側方から他方の側方へ向う操作抵抗力の上限値」は「投影位置をそれ以外の方向へ向うように操作子を移動させる場合に対する操作抵抗力の上限値」よりも大きな値に設定されていることが好ましい。これによって、投影位置を仮想案内面における目標軌道の他方の側から一方の側へ移動させる際の操作抵抗力をそれ以外の方向に移動させる際の操作抵抗力よりも小さくすることができる。投影位置を目標軌道の他方の側から一方の側へ目標軌道を超えて移動させる際の操作抵抗力だけを大きくすることができ、それ以外の方向へは投影位置を小さい操作力で移動させることができる。
作業補助装置10は、対象物である塗布器具30を支持する移動機構11と、移動機構11を制御するコントローラ22を備える。
移動機構11は、移動機構基部13で床に固定されている。移動機構基部13から移動機構11の先端までは、リンク12a、12b、12cと、隣接するリンク12を揺動可能に連結する関節14a、14b、14cで連結されている。なお、関節14aは移動機構基部13とリンク12aを連結している。関節14a、14b、14cの夫々には、アクチュエータ16a、16b、16cが設置されている。アクチュエータ群16により関節群14が駆動される。以後、アクチュエータ群や関節群などを総称する場合には、添え字a,b,cを省略して説明する。アクチュエータ群16を利用することによって、リンク12cの先端を移動機構11の可動範囲内の任意の位置へ移動させることができる。また、リンク12cが伸びる方向を任意の向きに向けることができる。また、関節14a、14b、14cの夫々には位置センサ15a、15b、15cが備えられている。位置センサ郡15はエンコーダ等である。位置センサ群15が出力する値と移動機構11のリンク群12の構造から幾何学的な計算により絶対座標系における基準点Pの座標を求めることができる。
移動機構11の先端のリンク12cには塗布器具30が支持されている。塗布器具30の先端からは接着剤が吐出する。この塗布器具30の先端に基準点Pが固定されている。また塗布器具30には接着剤を供給する供給ホース34が接続されている。
移動機構11の先端のリンク12cにはまた、塗布器具30の近くで力センサ20を介して操作子18が配置されている。即ち、本実施例の作業補助装置10は、塗布器具30(対象物)を移動させる移動機構11が操作子18に操作抵抗力を加える抵抗力付与機構を兼ねている。従ってコントローラ22は移動機構11を制御するための移動機構制御器であると同時に抵抗力付与機構を制御する付与機構制御器でもある。
作業者が操作子18を操作すると、その操作力は力センサ20によって検出される。検出された操作力はコントローラ22に送られる。コントローラ22は操作力の方向へ塗布器具30を移動させるように移動機構11のアクチュエータ群16を制御する。制御の内容については図2により後述する。
本実施例では、フロントガラスWが回転する。従って接着剤を塗布すべきフロントガラスWに設定された塗布ラインLも回転する。作業者は回転する塗布ラインLに塗布器具30先端の接着剤が吐出される部分、即ち基準点Pが一致するように操作子18を操作する。接着剤を塗布すべきフロントガラスWが回転するので、作業者はフロントガラスWの周囲を歩き回ることなく、大きなフロントガラスWの周囲へ接着剤を塗布することができる。
本実施例では、塗布ラインLが塗布器具30に設定された基準点Pが追従すべき目標軌道に相当する。以下では塗布ラインLを目標軌道Lと称することにする。基準点Pが目標軌道Lに沿って動くことが重要であり、目標軌道Lが絶対座標系に対して静止している必要はない。目標軌道Lが絶対座標系に対して移動する場合であっても、基準点Pが目標軌道Lに沿って動けばよい。
コントローラ22はフロントガラスWの面と同じ面に仮想案内面40を設定する。仮想案内面40は目標軌道Lを含むことになる。そして仮想案内面40の面内で目標軌道Lの外側(フロントガラスWの外側)を第1側方42(仮想案内面における目標軌道Lの一方の側方に相当する)として設定し、目標軌道Lの内側を第2側方44(仮想案内面における目標軌道Lの他方の側方に相当する)として設定する。
コントローラ22は基準点Pを仮想案内面40へ投影した位置(投影位置)が目標軌道Lの第2側方44側にあるときには作業者が操作子18に加えた操作力FIに対して小さな操作抵抗力が操作子18に付与されるように移動機構11を制御する。また投影位置が目標軌道Lの第1側方42側にあるときには作業者が操作子18に加えた操作力FIに対して大きな操作抵抗力が操作子18に付与されるように移動機構11を制御する。このことは換言すれば、操作力FIに対して上記の操作抵抗力が操作子18に付与されるように移動機構11を移動させることに他ならない。別言すれば、移動機構は操作子が受ける操作力と操作抵抗力の合力に基づいて対象物を移動させることになる。
作業者が操作子18に加える操作力FIに対して、小さな操作抵抗力を操作子18に付与する場合には、移動機構11に支持された対象物の移動量は大きくなる。一方大きな操作抵抗力を操作子18に付与する場合には同じ操作力FIに対して対象物の移動量は小さくなる。操作力FIと操作抵抗力の大きさが同じであれば対象物は移動しない。
第1側方42から第2側方44へ向う方向は直線Pyの負方向となると同時に直線Syの負方向ともなる。
作業補助装置10は、図1に示すように基準点Pが目標軌道Lに一致しているときに(この場合には基準点Pの位置が投影位置となる)、目標軌道Lの第1側方42から第2側方44へ向う方向(即ち、直線Syの負の方向)に大きな操作抵抗力FRyが操作子18に付与されるように移動機構11を制御する。作業補助装置10はまた、操作力FIのPx直線方向成分FIxに対して小さな操作抵抗力FRxが操作子18に付与されるように移動機構11を制御する。
同時に直線Px方向には操作力FIxに対して操作抵抗力FRxが付与される。移動機構11には、操作力FIxと操作抵抗力FRxの合力が一定となるように基準点Pを直線Pxの方向(目標軌道Lの方向)に移動させる。
これにより作業者は基準点Pを蛇行させずに直線Px方向(目標軌道Lの伸びる方向)へ移動させることができる。
このことは換言すれば、作業補助装置10は、操作力FIと操作抵抗力(FRxおよびFRy)の合力に基づいて基準点Pを移動させることに相当する。
移動機構11には、支持される塗布器具30と、操作子18と、作業者が操作子18に加えた力を検出する力センサ20と、移動機構11の各リンク群12を可動させるアクチュエータ群16と、塗布器具30の先端に設定された基準点Pの位置を検出する位置センサ群15が含まれる。なお、以下では「仮想案内面」を単に「案内面」と称する。
ここで案内面は、例えば目標軌道がカーブを描く場合にはカーブが形成する面に設定される。そして第1側方42は、案内面内で目標軌道のカーブの外側に設定される。ここでいう「カーブ」には目標軌道が屈曲する場合を含む。第2側方44は目標軌道に対して第1側方42と反対側に設定される。
また、案内面の第1側方42は塗布器具30などの作業ツールに対する定規の役割をすることから、作業者が作業をしやすいように設定することもできる。例えば第1側方42を目標軌道に対して作業者の位置とは反対側に設定する、などである。
案内面設定部54で設定された上記の案内面に関するデータは案内面データ記憶部56に記憶される。
基準点移動位置計算部66にはまた、力センサ20によって検出される操作子18に加えられた操作力FIが入力される。
基準点移動位置計算部66では、操作力FIによって基準点Pが次に位置すべき移動位置を計算する。その際の計算式は次式のインピーダンス制御則に基づく。
FI=[Mp]・ddp+[Cp]・dp+FR ・・・(第1式)
ここでddpは基準点Pの加速度を表す。dpは基準点Pの速度を表す。また[Mp]は基準点Pの仮想質量を表す。但し[Mp]は対角要素が仮想質量の大きさであるスカラー量であり、それ以外の要素はゼロである3×3のマトリクスである。[Cp]は基準点Pの速度に対する仮想粘性係数を表す。同様に「Cp」も対角要素が仮想粘性係数の大きさであるスカラー量であり、それ以外の要素はゼロである3×3のマトリクスである。FRは基準点Pの速度、位置および操作力FIのうちの少なくともひとつの値により決定される仮想摩擦力を表す。
また第1式は3次元空間での仮想的な運動方程式であり、FI、ddp、dp、FRは所定の座標系における3軸方向夫々の要素を有するベクトル量である。[Mp]、[Cp]、FRは基準点移動位置計算部66内で予め設定されている。なお、仮想摩擦力FRは基準点Pの速度、位置および操作力FIのうちの少なくともひとつの値に応じて変化する可変量である。
第1式は変形して次の第2式のようにも表すことができる。
FI−FR=[Mp]・ddp+[Cp]・dp ・・・(第2式)
ここで第2式の左辺(FI−FR)について説明を加える。第1式において仮想摩擦力FRの正負はFIの正負と同じ向きに設定した。これは第1式の右辺の仮想摩擦力FRは、第1式の左辺の操作力FIのうちに仮想摩擦力FRに抗する力を含むことを意味させるためである。「仮想摩擦力FRに抗する力」は実際に操作子に付与する仮想摩擦力FRと逆向きの力である。従って実際に操作子に付与する仮想摩擦力FR自体の各軸成分の向きは、操作力FIの各軸成分の向きとは反対となる。仮想摩擦力FRの正負を実際の各軸成分の向きと同じ方向と定義すれば第2式の左辺は(FI+FR)と表される。ここで仮想粘性係数の項[Cp]・dpが十分小さいとすると、基準点Pは操作力FIと仮想摩擦力FRの合力に応じた加速度ddpを生じるように計算されることになる。以下では、第1式に表される仮想摩擦力FRの定義を用いて、第2式の左辺に表される(FI−FR)を操作力FIと仮想摩擦力FRの合力と称することにする。
また、仮想摩擦力FRを大きく設定することで、基準点Pを小さく移動させることができる。本実施例では、仮想摩擦力FRが操作子に加えられる操作抵抗力FRに相当する。そこで以下では仮想摩擦力FRを操作抵抗力FRと称する場合もある。
今、力センサの中心を原点とし、塗布器具30に固定されたローカル座標系xyを仮定する。ローカル座標系xyのx軸を目標軌道Lの伸びる方向に設定し、y軸を図1に示す案内面40の第1側方42の方向に設定する。第1式もこのローカル座標系xyを基準としたベクトルで表されているとする。但し2次元に限定しているので各ベクトルはx要素とy要素の2要素のベクトルとなる。
図3は2次元に限定しているので基準点Pの位置がそのまま基準点Pを案内面40に投影した位置となる。図3は塗布器具30に固定された基準点Pが目標軌道Lに一致している状態を示している。即ち作業者は基準点Pをy軸方向へは蛇行させずにx軸の方向(目標軌道Lの方向)へ移動させたい。そこで作業者は操作力FIを図3に示すように操作子18に加える。操作力FIは基準点Pを移動させたい方向(x軸の正方向)の成分と目標軌道Lの第1側方42の方向(y軸の正方向)の成分を有するように操作子18に加えられる。操作力FIのx軸方向成分をFIxと表し、y軸方向成分をFIyと表す。
図3の状態では基準点Pは目標軌道Lに一致している。このとき第1式(又は第2式)の仮想摩擦力FRは、目標軌道Lの第1側方42から第2側方44へ向う方向(y軸の負の方向)に大きな値となるように設定される。この仮想摩擦力は図3においてFRyで示されている。また、操作力FIxに対しては小さな仮想摩擦力FRxが設定される。第1式をx方向成分とy方向成分とに分解して記述すると次式となる。
FIx=Mp・ddpx+Cp・dpx+FRx ・・・(第3式)
FIy=Mp・ddpy+Cp・dpy+FRy ・・・(第4式)
ここでddpxは基準点Pのx軸方向の加速度を表しdpxはx軸方向の速度を表す。同様にddpyは基準点Pのy軸方向の加速度を表しdpyはy軸方向の速度を表す。
このことは、一般的な力学の観点からいえば、作業者が静止摩擦係数を超えない範囲で物体に力を加えてもその物体は移動せず、物体に加えた力と同じ大きさの反力を物体から受ける、ということになる。このときの反力が本実施例でいう操作抵抗力に相当する。第3式から、基準点Pの加速度ddpyと速度dpyがゼロであるときには操作反力は仮想摩擦力FRyとなる。
ddpx=(FIx−FRx−Cp・dpx)/Mp ・・・(第5式)
第5式より、仮想粘性係数の項Cp・dpxが十分小さいとすると、基準点Pには操作力FIxと仮想摩擦力FRxの合力(FIx−FRx)に応じた加速度ddpxが計算される。なお前述したように仮想摩擦力FRxの正負は、実際に操作子に付与する摩擦力FRxの正負とは反対に操作力FIxと同じ向きに設定されるので(FIx−FRx)は操作力FIxと仮想摩擦力FRxの合力を表すこととなる。
こうして作業者は操作抵抗力(FRx+Cp・dpx)を操作子18から感じつつ、基準点Pをx軸方向へ移動させることができる。なお、基準点Pの速度dpxが無視できるくらいに小さい場合には操作抵抗力は摩擦力FRxとほぼ等しくなる。
結果として、作業者は第1側方42側で目標軌道Lに沿った仮想的な定規に基準点Pを押し付けながら基準点Pを目標軌道Lに沿って移動させることができる。目標軌道Lに沿った仮想的な定規に基準点Pを押し付ける状態を実現することで、基準点Pを蛇行させることなく目標軌道Lに沿った移動を補助することができる。
上記説明は2次元に限定したが3次元に拡張しても同様である。この場合には上記説明の中で「基準点P」を「投影位置」と置き換えることなる。この場合、作業者は目標軌道Lを含み、案内面40に対して直交する面内が仮想的な壁の役割を果たす。作業者はこの仮想的な壁に基準点Pを第1側方42側に押し付けるように操作子を操作することで、仮想的な壁に沿って基準点Pを移動させることができる。仮想的な壁に沿って基準点Pを目標軌道Lまで移動させた後に目標軌道Lの伸びる方向に基準点Pを移動させるように操作子を操作すればよい。作業者は仮想的な壁を基準点Pをふらつかせないためのよりどころとしつつ、目標軌道Lに沿って基準点Pを移動させることができる。
また、第1式乃至第4式を計算する基準点移動位置計算部60が、請求項の「計算手段」の一態様に相当する。そして、図3に示すように基準点Pが目標軌道Lに一致するときに、案内面40において目標軌道Lの第1側方42(目標軌道の一方の側方)から第2側方44(目標軌道の他方の側方)に向う方向への仮想摩擦力FRyを目標軌道Lに沿った方向(x軸方向)の仮想摩擦力FRxより大きな値に設定する処理(基準点移動位置計算部60にて処理が実行される)が、請求項の「計算手段が計算する計算式には少なくとも仮想物体の運動を妨げる仮想摩擦力の項が含まれ、投影位置が案内面内における目標軌道の一方の側方にあるときには仮想摩擦力を大きな値に設定し、目標軌道の他方の側方にあるときには仮想摩擦力を小さな値に設定して仮想物体に生じる運動を計算すること」の一例に相当する。
これにより作業者は、投影位置を目標軌道Lの第2側方44の側から第1側方42の側へ移動させる際、あたかも目標軌道Lを境にして第1側方42の側では大きなクーロン摩擦力(静止摩擦力)を受けるかのように操作子18から操作抵抗力FRyを感じることができる。静止摩擦力を下回る操作力FIyでは、基準点P(3次元空間においては投影位置)は目標軌道Lに一致したところでそれ以上は目標軌道Lの第1側方42の側へは移動しない。
その一方で作業者は上限値を超える作業力FIyを目標軌道Lの第2側方44の側から第1側方42の側へ向う方向へ加えると、その操作力FIyは静止摩擦力を上回り、基準点Pを目標軌道Lの第1側方の側へ移動させることができる。このことについては図4を元に後述する。
図4でも図3と同様に案内面40は図4の紙面と同一の平面に設定されている。目標軌道Lの第1側方42は目標軌道Lの図4の紙面下側に設定され、第2側方44は図4の紙面上側に設定してある。
今、目標軌道データ記憶部50に記憶された目標軌道のデータによると図4に示した目標軌道Lとなるが、現実に望ましい目標軌道は図4に示す目標軌道L2である場合を例とする。なお、現実に望ましい目標軌道L2とは作業者が現場で実際の塗布ラインLを目視で見ることで認識される。従って作業者はできるだけ実際の塗布ラインL2(望ましい目標軌道L2)に基準点Pを近づける必要がある。作業者が操作子18に対して目標軌道Lと直交する方向に加える力FIyが操作抵抗力FRyの上限値frmaxより小さい場合には図3と同様に基準点Pは図5に破線で示すPaの位置となる。このとき塗布器具は破線30aに示す位置となる。なお図5に示すfrmaxがFRyに相当する。
作業者はy軸の正の方向に操作抵抗力FRyの上限値frmaxを超える力を操作子18に加える。このときの操作力をFI+dFIとする。「FI+dFI」のy軸方向の成分をFIy+dFIyとする。ここでFIyは操作抵抗力の上限値frmaxと同じ大きさの力であり、dFIyがfrmaxを超える分の力である。このとき、第4式は
FIy+dFIy=Mp・ddpy+Cp・dpy+frmax ・・・(第6式)
となる。FIyとfrmaxは等しいので、基準点Pには次の式で表されるy軸方向の加速度を生じさせることができる。
ddpy=(dFIy−Cp・dpy)/Mp ・・・(第7式)
従って、操作抵抗力FRyに上限値を設けることによって、作業者はその上限値を上回る操作力を加えれば、基準点Pを目標軌道データ記憶部に記憶された目標軌道Lから第1側方42側に基準点Pを移動させることができる。作業者はその上限値を上回る操作力を加減することで、実際の目標軌道L2に基準点Pを一致させることができる。図4では作業者が加える操作力FI+dFIによって、基準点Pが実際の目標軌道L2上の点Pbに一致した状態での塗布器具30bを実線で描いてある。
このように操作抵抗力に上限値を設けることによって、目標軌道データ記憶部50に記憶された目標軌道Lより実際の目標軌道L2が第1側方42側にずれていた場合であっても作業者は基準点Pを実際の目標軌道L2に一致させることができる。
操作力FI+dFIの大きさを加減する必要があるとはいえ、従来技術のように目標軌道Lに交差する方向になんら基準点Pを安定させるための力のよりどころがない場合と比較するとはるかに目標軌道Lに沿って基準点Pを移動させることが容易となる。上記のケースは弾力性のある定規を用いてペンで線をなぞることに喩えることができる。なぞるべき線が定規の内側に隠れてしまった場合には定規にペンを当てる力を増すことで、定規を撓ませることができる。同様の理由で本変形例においても、データ上での目標軌道と望ましい目標軌道Lにずれが生じている場合でも基準点Pを容易に望ましい目標軌道に沿って移動させることができる。
このとき、作業者は望ましい目標軌道L2の方向へ操作抵抗力より大きな操作力を加える。ある程度の大きさ(本例ではfrmax)操作抵抗力を感じつつ基準点Pを望ましい目標軌道L2に沿って進めることができる。操作者は望ましい目標軌道L2に交差する方向である程度の大きさ(本例ではfrmax)の操作抵抗力を感じることができる。この操作抵抗力を操作力のよりどころとすることで、目標軌道に交差する方向に対して基準点Pを安定させることができる。これによって基準点Pを望ましい目標軌道L2に沿って移動させる際に基準点Pを蛇行させることがない。望ましい目標軌道L2に沿って蛇行することなく基準点Pを進める作業を補助する装置を実現することができる。
望ましい目標軌道L2がデータ上の目標軌道Laの第1側方42aの側にずれている場合には作業者は基準点Pをデータ上の目標軌道Laの第1側方42aの方向に「frmax」以上の操作力FIを操作子18に加える。そうすれば「frmax」を超えた分の操作力によって基準点Pをデータ上の目標軌道Laの第1側方42aの側へ移動させることができる。逆に望ましい目標軌道L2がデータ上の目標軌道Lbの第1側方42bの側にずれている場合には作業者は基準点Pを目標軌道Lbの第1側方42bの方向に「frmax」以上の操作力FIを操作子18に加える。そうすれば「frmax」を超えた分の操作力によって基準点Pをデータ上の目標軌道Lbの第1側方42bの側へ移動させることができる。
図6では、紙面と同一の面に案内面40が設定されている。
屈曲部Rの付近では目標軌道Lの第1側方42cを、目標軌道Lの屈曲部Sの角度の大きい側(図6に目標軌道Lに対して斜線が引いてある側)に設定している。「屈曲部」は曲線部の極端な態様であるので、「屈曲部Sの角度の大きい側」とは「曲線部のカーブの外側」に設定することと同義である。目標軌道Lの第2側方44cを目標軌道Lのカーブの内側に設定する。
図6に示すように、また上記したように本変形例では、案内面40における目標軌道Lの第1側方と第2側方の設定を目標軌道L上の点Sの前後で変えている。
紙に描かれた屈曲線に対してその屈曲線と同じ形状の定規を当ててその屈曲線をペンでなぞる場合には屈曲線の外側(角度の大きい側)に定規を当てる方がなぞりやすい。同様に紙に描かれた曲線(カーブ)に対してその曲線と同じ形状の定規を当ててその曲線をペンでなぞる場合には曲線の外側に定規を当てる方がなぞりやすい。作業者はペンを定規に押し当てつつ定規に沿って移動させる。このとき逆に屈曲線に対して屈曲線の内側(角度の小さい側)に定規を当てて屈曲した線をなぞると、屈曲部では定規が鋭角に屈曲することになるので、それまで定規に当てるように加えていた力がよりどころを失ってペンが定規から大きく外れてしまう可能性がある。屈曲部の角度の大きい側に定規を当てると屈曲部では定規は鋭角に屈曲する。ペンは定規の鋭角に屈曲した部分で一旦停止させられる。そして改めて屈曲した先の方向にペンを移動させることができる。このときペンを定規に押し当てる力が勢い余ってペンが定規から大きく外れることはない。
図6に示した第1側方42c、42dの設定は、上記の紙に描かれた曲線をペンでなぞる作業の際の定規の役割を果たす。紙に描かれた曲線をペンでなぞる作業の際の定規と同じ理由で図6に示した第1側方42c、42dの設定によって、目標軌道Lに交差する方向に蛇行させることなく(ふらつかせることなく)基準点Pを目標軌道Lに沿って移動させやすくすることができる。
基準位置Pが図6にPcで示す位置にあるところから、作業者は操作力FIを目標軌道Lの第1側方42cの側に押し付けつつx軸の方向に向けるように操作子18を動かす。操作力FIのうちy軸方向の成分FIyに対しては操作抵抗力FRyが作用して均衡する。操作力FIのうち目標軌道Lに沿った方向の成分FIxにより基準点Pはx軸の方向に目標軌道Lに沿って移動する。(なお前述したように操作抵抗力FRのうちx軸成分FRxは図示を省略してある)。
第1側方42cは目標軌道Lの屈曲部Rで角度の大きい方に設定されているので、基準点Pが目標軌道Lの屈曲部Rに到達すると、基準点Pをそれまで移動させるように作用していた操作力FIの成分FIxに対しても大きな操作抵抗力が発生することになる。その結果、それまでの操作力FIでは基準点Pは目標軌道Lの屈曲部Rで一旦停止する。そこで作業者は改めて目標軌道Lに沿った方向に操作力の成分が生じるように操作力FIの方向を調整する。調整の結果、屈曲した後の目標軌道Lに沿った方向の操作力の成分が生じれば、基準点Pは屈曲後の目標軌道Lに沿って移動を再開する。このように目標軌道Lが屈曲する部分Rを含む場合には、第1側方42cを目標軌道Lの屈曲部Rの角度の大きい側に設定する(第2側方44cを目標軌道Lの屈曲部Rの角度の小さい方に設定する)ことで、屈曲部Rにおいても基準点Pを目標軌道Lから大きくずらすことなくスムーズに目標軌道Lに沿って移動させることができる。
次に基準点Pが図6に示すPdの位置のように目標軌道LのカーブTに達する場合について説明する。カーブTの付近では目標軌道Lの第1側方42dは、目標軌道Lに対するカーブTの外側に設定されている。従って基準点PがカーブTを進むにつれて、基準点Pを進めるように作用していた操作力FIのFIx成分に対しても大きな操作抵抗力FRが発生してくる。基準点Pdは、カーブTの外側から内側に向う操作抵抗力FRによって強制的にカーブTに沿ってカーブさせられる。作業者は操作力FIの方向を概ねカーブTの基準点Pに先行する目標軌道の方向に向けるだけで、基準点Pを容易に目標軌道Lに沿って進めることができる。
目標軌道Lは図7のX軸に一致している。一方の案内面40eはXZ平面に設定されている。案内面40eの第1側方側42eは案内面40e上でz軸の負の側に設定されている。他方の案内面40fはXY平面に設定されている。案内面40fの第1側方側42fは案内面40f上でy軸の正の側に設定されている。目標軌道Lがx軸に一致しており、案内面40eがXZ平面に設定されているので、案内面40eは目標軌道Lを含む面である。同様に案内面40fはXY平面に設定されているので、案内面40fも目標軌道Lを含む面である。
FIzに対しては図7(A)に示すように案内面40eの第1側方42eから第2側方44eへ向う方向の操作抵抗力FRzが作用する。大きな操作抵抗力FRzによって、作業者は基準点Pをz軸の負の方向へは移動させ難くなる。
FIyに対しては図7(B)に示すように案内面40fの第1側方42fから第2側方44fに向う方向の操作抵抗力FRyが作用する。大きな操作抵抗力FRyによって、作業者は基準点Pをy軸の正の方向へは移動させ難くなる。
操作抵抗力は案内面40eにより作用するFRzと案内面40fにより作用するFRyとの合力FRyzとなる。この合力FRyzが操作力FIのうち、yz平面内の合力FIyzに抗して作用する。作業者は案内面40eと40fのなす角度Kの範囲内となるようにyz平面内の操作力FIyzの方向をむけるだけで、基準点Pをyz平面内で目標軌道Lに一致させることができる。
目標軌道Lで交わる2つの案内面40e、40fのそれぞれにおいて操作抵抗力FRz、FRyを計算し、抵抗力付与機構が合力FRyzを操作子に付与する。これによって、作業者が操作子に加える操作力FIの、目標軌道Lに交差する方向の操作力成分の合力FIyzに抗する操作抵抗力を付与することができる。作業者は目標軌道Lに交差する方向の操作力成分の合力FIyzの向きを2つの案内面40e、40fがなす角度Kの範囲内となるように大まかに調整するだけで、作業補助装置は基準点Pを目標軌道Lにそって蛇行させずに進める作業を補助することができる。
これによると、投影位置が仮想案内面における目標軌道の一方の側方にある場合には、目標軌道の一方の側方から他方の側方へ向う操作抵抗力の上限値のみが大きく設定される。すなわち、投影位置が仮想案内面における目標軌道の一方の側にあるときに、投影位置をさらに目標軌道から離れる方向には大きな操作力が必要となる。一方それ以外の方向に投影位置を移動させようとする操作力に対しては小さな操作抵抗力が設定される。小さな操作抵抗力を超える操作力を加えることで、「投影位置が仮想案内面における目標軌道の一方の側にあるときに、投影位置をさらに目標軌道から離れる方向」へは小さな操作力で移動させることができる。
また操作力が操作抵抗力の上限値より小さい場合には操作抵抗力は操作力と同じ大きさに設定される。これによって操作力を弱めた場合でも操作力より操作抵抗力が大きくなることがなく、操作力の方向と反対の方向に投影位置が移動してしまうことを防止することができる。
FI+FA=Ma・ddpa+Ca・dp+FB ・・・(第8式)
ここで、FIは作業者が操作子に加える操作力を基準点Pの位置に変換した値であり、FAは移動機構のアクチュエータが基準点Pで出力すべき力である。またMaとCaとFBは移動機構11の基準点Pにおけるハードウエアの実際の質量、粘性、クーロン摩擦力である。ddpは基準点Pの加速度を表す。dpは基準点Pの速度を表す。そして基準点Pにおいて実現すべき望ましい動特性は前述した第1式で表される。
FI=Mp・ddp+Cp・dp+FR ・・・(第1式)
ここで、(第8式)−(Ma/Mp)・(第1式)より
FI+FA−(Ma/Mp)・FI=Ma・ddpa+Ca・dp+FB
−(Ma/Mp)・(Mp・ddp+Cp・dp+FR) ・・・(第9式)
が得られる。第9式より、望ましい動特性を得るためにアクチュエータが出力すべき力FAは、
FA={Ca−(Ma/Mp)・Cp}dp+FB
−{1−(Ma/Mp)}・FI−(Ma/Mp)・FR・・・(第10式)
となる。
基準点移動位置計算部66は、第10式において基準点Pの位置に応じた操作抵抗力FRを設定し、また力センサ20から操作力FIを検出して第10式を計算する。得られた力FA(移動機構11が基準点Pで発生すべき力)を実現するように、力FAを移動機構11の各アクチュエータが出力すべき力に変換して各アクチュエータへの力指令値を出力する。
以上のように作業補助装置10は、操作抵抗力FRを付与した上で基準点Pで発生すべき力FAを制御目標値とすることもできる。
また移動機構は対象物を位置決めする際の自由度と同じかそれ以上の自由度を有していればどのような構造であってもよい。図1に示すような多リンク構造でもよいし、ガントリクレーンのような構造であってもよい。
11:移動機構
12a、12b、12c:リンク
13:移動機構基部
14a、14b、14c:関節
15a、15b、15c:位置センサ
16a、16b、16c:アクチュエータ
18:操作子
20:力センサ
22:コントローラ
24:ワーク支持装置
26:ワーク回転支持軸
30:塗布器具(対象物)
40、40e、40f:案内面
42、42a、42b、42c、42d、42e、42f:第1面
44、44a、44b、44c、44d、44e、44f:第2面
50:目標軌道データ記憶部
52:基準点データ記憶装部
54:案内面設定部
56:案内面データ記憶部
58:機構部データ記憶部
60:基準点位置計算部
62:基準点/案内面相対位置計算部
66:基準点移動力計算部
68:アクチュエータドライバ
W:フロントガラス
L:塗布ライン(目標軌道)
P:基準点
Claims (6)
- 作業者が対象物に固定されている基準点を目標軌道に沿って移動させる作業を補助する装置であり、
対象物を支持可能であり、動力を利用して対象物を移動させる移動機構と、
基準点の位置を検出する位置センサと、
目標軌道を記憶する目標軌道記憶手段と、
基準点の移動位置を指示するために作業者が操作する操作子と、
操作子に操作抵抗力を付与する抵抗力付与機構と、
抵抗力付与機構を制御する付与機構制御器と、
移動機構を制御する移動機構制御器を備えており、
付与機構制御器は、目標軌道を含む仮想案内面を設定し、位置センサで検出される基準点の位置を仮想案内面に投影した位置(投影位置と称する)と目標軌道が一致しているときには仮想案内面における目標軌道の一方の側方から他方の側方に向う第1の操作抵抗力を抵抗力付与機構によって操作子に付与させるとともに、投影位置が目標軌道の他方の側方にあるときには第1の操作抵抗力よりも小さい第2の操作抵抗力を付与させ、
抵抗力付与機構は、目標軌道がカーブを含む場合に、仮想案内面における目標軌道の前記一方の側方をカーブの外側に設定し、
移動機構制御器は、操作子が受ける操作力と操作抵抗力の合力に基づいて対象物を移動させることを特徴とする作業補助装置。 - 移動機構が抵抗力付与機構を兼ねており、
移動機構上のひとつの剛体に対象物と操作子が支持されており、
その剛体と操作子の間には力センサが介在していることを特徴とする請求項1に記載の作業補助装置。 - 移動機構制御器は、力センサで検出された力が仮想物体に加えられたときに生じる運動を計算する計算手段を有し、計算された運動を基準点に実現するように移動機構を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業補助装置。
- 計算手段が計算する計算式には少なくとも仮想物体の運動を妨げる仮想摩擦力の項が含まれ、投影位置が案内面内における目標軌道の一方の側方にあるときには仮想摩擦力を第1の値に設定し、目標軌道の他方の側方にあるときには仮想摩擦力を第1の値よりも小さい第2の値に設定して仮想物体に生じる運動を計算することを特徴とする請求項3に記載の作業補助装置。
- 仮想案内面における目標軌道の一方の側方から他方の側方に向う第1の操作抵抗力に上限値が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の作業補助装置。
- 付与機構制御器は、目標軌道で交わる2つの仮想案内面のそれぞれにおいて操作抵抗力を計算し、その合力を抵抗力付与機構によって操作子に付与させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の作業補助装置。
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