JP4550985B2 - 歯付ベルト伝動装置並びに事務用機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯付ベルト伝動装置及び事務用機器に関し、特に、ベルトの速度むら(速度変動)を低減させるための技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の歯付ベルトとしては、ベルト歯部の形状が台形状であるものが一般的に用いられていたが、より一層の高負荷を伝達したり、騒音をより一層低減したりするという目的で、凸形状の側面を有する歯部形状のベルトが提案され、現在では主流となっている。その歯形の1つが特開昭50―42252号公報に示されるいわゆるSTPD歯形と呼ばれるものであり、他の1つが特開昭59―89852号公報に示されたいわゆるHTD−II歯形と呼ばれるものである。前者のSTPD歯形は、例えばバンドー化学(株)の商品名「スーパートルクシンクロベルト」として、また後者のHTD−II歯形は、ユニッタ(株)の商品名「パワーグリップGTベルト」としてそれぞれ実用化されている。
【0003】
また、この他、事務用機器における可動部の精密な位置決め駆動を目的として、特開昭64―74341号公報に示される歯付ベルトも提案されている。このものでは、図15に示すように、ベルト8′における本体9′のランドラインLL上に複数のベルト歯部11′,11′,…(1つのみ示す)を一定ピッチで設け、この各ベルト歯部11′は、歯幅方向中心線C2に対し対称に配置された円弧面からなる歯元部12′,12′と、この歯元部12′,12′に連続してかつ上記歯幅方向中心線C2に対し対称に設けられた凸形状の円弧面からなる歯側面部13′,13′と、この歯側面部13′,13′に連続してかつ上記歯幅方向中心線C2に対し対称に設けられた円弧面からなる円弧面部14′,14′とを備え、これら円弧面部14′,14′同士が1つの平面からなる平面部15′により接続されている。そして、この歯付ベルト8′の歯付プーリ1′との静的噛合い状態において、各ベルト歯部11′の歯元部12′がプーリ歯溝部3′の歯頂円弧部4′と略接触し、ベルト歯部11′のプーリ歯溝部3′でのバックラッシュがベルト歯部11′の歯元から歯先にかけて漸次増大し、プーリ歯溝部3′の深さがベルト歯部11′の高さ以上になるように構成されている。
【0004】
このものでは、プーリ歯溝部3′とのバックラッシュをベルト歯部11′の歯元部12′でなくす一方、そのプーリ歯溝部3′とのバックラッシュをベルト歯部11′の歯元から歯先にかけて漸増させてベルト歯部11′を歯先に向かって細くし、このことでベルト歯部11′とプーリ歯溝部3′の歯頂円弧部4′との噛合い干渉を抑制して、この噛合い干渉に起因するベルトピッチラインの変動を低減するようにしている。尚、図15中、5′はプーリ歯溝部3′における凹形状の歯溝側面部、6′は歯溝底部、PLはベルト8′のピッチラインで、プーリ1′のピッチ円と一致している。また、理解を容易にするために、図15ではプーリ1′の外周部をベルト8′と共に展開して示している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、プリンタや複写機に代表される事務用機器においては、歯付ベルト伝動装置を利用した印字装置(画像印刷も含む)が一般的に用いられている。この印字装置では、インクやハンマ等の印字機構を装着したキャリッジを歯付ベルトに取り付けて、この歯付ベルトを歯付プーリ間に掛け渡し、プーリを正逆転させてキャリッジを往復動作させるようになっている。
【0006】
そして、上記キャリッジによる印字精度や画像品質を高めるために、歯付ベルトの走行時の速度むら(速度変動)を可能な限り低減することが要求される。特に、プリンタにおいては、近年、カラー印刷やその高速化・高画質化が急速に進んでおり、歯付ベルトの噛合振動(噛合いによる速度むら)が印字むらや画像むらを引き起こすことがあるので、歯付ベルトの噛合速度むらの低減が強く要求されている。
【0007】
これらプリンタ等の事務用機器には、上記STPD歯形やHTD−II歯形で歯部ピッチが3mm以下(例えば3mm、2mm、1.5mm等)の歯付ベルトが一般的に用いられており、その歯部の形状は8mmピッチや5mmピッチ等、比較的大きい歯部ピッチの歯形をそのまま略相似的に縮小した形状が採用される。
【0008】
しかしながら、これらの歯形は本来、高負荷伝達の用途を目的として開発されたものであり、このため、上記速度むらを低減する要求については何等考慮されていない。
【0009】
尚、上記した特開昭64―74341号公報に示される歯付ベルトは、速度むらの低減をある程度考慮して提案されたものではあるが、その速度むらの低減に最適な歯形とはなり得ておらず、速度むらを可及的に低減するのに不十分であった。
【0010】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、歯付ベルトのベルト歯部の形状に工夫を凝らすことで、ベルト歯部と歯付プーリとの噛合状態を改善して、ベルト速度むらを可及的に低減させ、さらにベルトの伝動負荷性を向上させることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、歯付ベルトと歯付プーリとを組合せてなる歯付ベルト伝動装置であって、上記歯付ベルトは、ピッチライン上に抗張体が埋設されたベルト本体と、上記ベルト本体のランドライン上に一定ピッチで設けられた複数のベルト歯部とを備え、上記各ベルト歯部は、歯幅方向中心線に対し対称に配置された円弧面からなる歯元部と、上記歯元部に連続して歯部側面に位置しかつ上記歯幅方向中心線に対し対称に設けられた凸形状の円弧面からなる歯側面部と、上記歯側面部に連続するように設けられた歯先部とで構成されており、上記歯先部がベルト歯部の先端近傍に位置していて、ベルト歯部が略三角形状とされており、上記歯付プーリは、プーリ外径ライン上に一定ピッチで設けられた複数のプーリ歯溝部を備え、上記各プーリ歯溝部は、歯溝幅方向中心線に対し対称に配置された円弧面からなる歯頂円弧部と、上記歯頂円弧部に連続して歯溝幅方向中心線に対し対称に設けられた凹形状の円弧面からなる歯溝側面部と、上記両歯溝側面部同士を連続するように設けられた歯溝底部とで構成されており、上記歯付ベルトに上記歯付プーリが巻き付いて該ベルトに張力が付与された伝動状態において、上記ベルト歯部の歯側面部と上記プーリ歯溝部の歯溝側面部との間には、上記ベルト歯部の歯先側においてバックラッシュが形成されない一方、上記ベルト歯部の歯元側においてバックラッシュが形成されており、上記バックラッシュが形成されている領域において、歯高さ方向の各位置における上記歯付プーリの圧力角は歯付ベルトの圧力角よりも大きく構成されていることを特徴とする。
【0012】
上記の構成により、従来のSTPD歯形やHTD−II歯形を有する歯付ベルトでは、ベルト歯部の歯高さを大きくするのには限度があったが、本発明のような歯形状とすることにより、歯高さを大きくして、ベルトとプーリとが高負荷条件下で噛み合う場合でも、その噛み合いに伴うベルト歯部の歯飛び(ジャンピング)を抑制することができる。
【0013】
歯付ベルトの歯部が駆動側の歯付プーリの歯溝部に噛み込むとき、与えられる負荷トルクの影響によりベルト歯部はプーリ歯溝部の位置に対し若干遅れた位置で噛み込むので、まず、ベルト歯部の走行方向後側の歯部側面がプーリ歯溝部の側面に接触する。このとき、ベルトのスパン(プーリに巻き付いていない部分)でベルトピッチラインがベルトスパンと直交する方向に上下動することにより、噛合い速度むらが発生する。従来技術のように、プーリ圧力角がベルト圧力角と等しい、又はプーリ圧力角がベルト圧力角よりも小さい場合には、ベルト歯部がプーリ歯溝部に完全に噛み合った状態で、ベルト歯部側面の歯元部がプーリ歯溝側面に接触している。つまり、プーリ歯溝部の幅方向中心線に対してベルト歯部の幅方向中心線が大きくずれているため、次に噛み合うベルト歯部はそのベルト歯部側面がプーリ歯溝部側面に干渉しやすい状態で噛み込むことになる。
【0014】
これに対して本発明のように、プーリの圧力角をベルトの圧力角よりも大きく構成すれば、ベルト歯部のプーリ歯溝部への噛み込みの過程でベルト歯部の幅方向中心線がプーリ歯溝部の幅方向中心線に近づいていく効果(歯のセンタリング効果)が生じるので、次に噛み込むベルト歯部は、ベルト歯部側面がプーリ歯溝部側面に干渉しにくくなり、噛み合い時の干渉を最小限に抑えることができる。
【0015】
また、上記ピッチラインが上下動する要因の1つとして、ベルト歯部の走行方向後側の歯部側面がプーリ歯溝部の側面に接触する際に発生する衝撃力がベルトのピッチライン上の抗張体に伝達するということがある。
【0016】
そのとき、衝撃力は接触位置から抗張体へ伝わるときに弾性体からなるベルト歯部及びベルト本体を介するために、この衝撃力は接触位置から抗張体へ向かうに従って減衰される。
【0017】
すなわち、接触位置が抗張体に近くなるほど上記弾性体による衝撃力の減衰量が小さくなるので、抗張体への衝撃力の伝達量は大きくなり、この衝撃力によるピッチラインの押上げ量は大きくなる。換言すれば、ベルト歯部のプーリ歯溝部への接触がピッチラインに近づいてなされるほど速度むらが大きくなるのである。
【0018】
したがって、上記の如く構成することにより、ベルト歯部のプーリ歯溝部への接触がピッチラインから離れたベルト歯部の先端においてなされるので、速度むらを小さくすることができる。
【0019】
請求項2の発明では、請求項1の歯付ベルト伝動装置において、歯付ベルトが歯付プーリに巻き付いて該ベルトに張力が付与された伝動状態で、ベルト歯部間のランド部がプーリ外径部に接触しないように構成されていることを特徴とする。
【0020】
こうすると、ベルトのランド部がプーリ外径部に円弧状に巻き付いた後にベルト歯部がプーリ歯溝部へ噛み込む際、ベルト歯部はベルト本体のピッチライン上の点を回動中心として回動しながらプーリ歯溝部に噛み込むが、そのピッチライン上の点の回動中心は、ベルトランド部とプーリ外径部とが接触状態にある場合のように、噛み込もうとする対象のプーリ歯溝部のベルト走行方向前側の歯元付近における歯頂円弧部に対応する点ではなくて、ベルトランド部とプーリ外径部とが非接触状態であるが故に、上記対象のプーリ歯溝部よりもベルト走行方向前側に位置するプーリ歯溝部の後側歯元付近における歯頂円弧部に対応する点にずれ、ベルト歯部はこの点を回動中心として回動しながら対象のプーリ歯溝部に噛み込むようになる。このことで、上記ベルトランド部とプーリ外径部とが接触状態である場合に比べて、ベルト歯部の回動半径が大きくなり、その歯側面部の歯先側の回動軌跡の突出量が小さくなってプーリ歯溝部の歯溝側面部と干渉し難くなり、ベルト歯部はプーリ歯溝部に滑らかに滑り込んで、ベルト歯部のプーリ歯溝部との噛合い干渉に起因するベルトの速度むらをさらに小さくすることができる。
【0021】
また、一般に、歯付ベルト伝動装置におけるプーリと歯付ベルトとの間の負荷の伝動は、プーリ歯溝部及びベルト歯部間の噛合い伝動に加え、プーリ外径部及びベルトランド部の間の摩擦伝動によってもなされ、プーリの回転速度の変動がこれら2つの伝動態様によって歯付ベルトへ伝えられて、歯付ベルトの速度むらが発生するが、ベルトランド部とプーリ外径部とが非接触状態であると、上記プーリ及びベルト間の負荷伝動の態様のうち、後者のプーリ外径部とベルトランド部との摩擦伝動が取り除かれるので、このベルトランド部の摩擦伝動によるプーリの回転速度変動のベルトへの伝達が防止され、ベルト歯部のうち、ベルトのランドラインとプーリの外径ラインとの間の部分がその弾性によりプーリの回転速度変動を吸収するようになり、このプーリの回転速度変動が上記噛合い伝動によってベルトへ伝達されるのを抑制して、ベルトの速度むらをさらに小さくすることができる。
【0022】
請求項3の発明では、事務用機器として、上記歯付ベルト伝動装置が装備されていて、その歯付ベルトにキャリッジが取り付けられているものとする。このことで、歯付ベルト伝動装置の作動時に、キャリッジを移動させて印字等をするとき、ベルトの速度むらによるキャリッジの速度変動が小さくなるので、キャリッジによる印字精度や画像品質を高めることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図3は本発明の実施形態に係る歯付ベルト伝動装置Aの全体構成を示し、この伝動装置Aは、プリンタや複写機に代表される事務用機器に装備されるものである。図3において、1は歯付プーリからなる駆動プーリ、2は同様の従動プーリで、これらプーリ1,2は例えば水平方向に対向して配置されている。両プーリ1,2間には歯付ベルト8が噛合い状態で巻き掛けられ、この歯付ベルト8の下側スパンにはインクやハンマ等の印字機構(図示せず)を装着したキャリッジ19が取付部19aにて移動一体に取付固定されており、駆動プーリ1,2を正転又は逆転させて歯付ベルト8を走行移動させることにより、キャリッジ19をプーリ1,2間で往復動作させるようにしている。
【0024】
図2に拡大して示すように、上記歯付プーリからなる駆動又は従動プーリ1,2は、外周のプーリ外径ライン上に一定ピッチで設けられた複数のプーリ歯溝部3,3,…(1つのみ図示する)を備えている。この各プーリ歯溝部3は、その歯溝幅方向中心線C1に対し対称に配置された円弧半径r1Pの円弧面からなる1対の歯頂円弧部4,4と、これら両歯頂円弧部4,4に連続して上記歯溝幅方向中心線C1に対し対称に設けられ、ピッチ円PCの近傍(後述のプーリ1,2に噛み合うベルト8の歯部11における歯側面部13の円弧面中心点O1Bよりもベルト8背面側の位置)に中心点O1Pを有しかつベルト8の歯幅Wよりも大きい円弧半径RPの凹形状の円弧面からなる1対の歯溝側面部5,5と、これら両歯溝側面部5,5同士を連続するように設けられた歯溝底部6とで構成されている(尚、図2においては、理解を容易にするためにプーリ1,2の外周をベルト8と共に展開した状態で示している)。
【0025】
一方、上記歯付ベルト8は、図1に拡大して示すように、弾性材からなるベルト本体9を備えている。このベルト本体9はゴム製又はポリウレタン製であるのが好ましく、その他、例えば合成樹脂系等の材料でもよい。ゴム製の場合、クロロプレンゴムが用いられる他、NBR、SBR、EPDM等でもよく、そのゴムの硬度はJIS−Aで65〜85°程度のものがよい。ベルト本体9をポリウレタン製とする場合、そのポリウレタンは熱硬化性でかつエーテル系のものが用いられるが、熱可塑性やエステル系のものでもよい。
【0026】
また、上記ベルト本体9のピッチラインPL上に抗張体としての心線(図示せず)が埋設されている。この心線は、ベルト本体9がゴム製又はポリウレタン製のいずれであっても、主としてガラス繊維、アラミド繊維が用いられ、カーボンやPBO等の繊維でもよい。また、事務用機器の消費電力を低減するために、ロストルクが小さくなるように細径の心線が望ましい。
【0027】
また、ベルト8の速度むらを低減する狙いからみて、ベルト8のピッチラインPLを安定して維持するために、ベルト8の曲げ剛性を低くする点、また、負荷がかけられたときの歯ピッチの維持により噛合干渉を低減し、事務用機器の起動時の速度変動を素早く減衰させるために、ベルト8の引張弾性率を高くする点を考慮すると、高弾性率の心線を用いるのがよい。
【0028】
上記ベルト本体9のランドラインLL上には、歯元幅W(ベルト歯部11の後述する両方の歯側面部13,13の歯元方向の円弧延長線とランドラインLLとの交差位置間の寸法)を有する複数の歯部11,11,…(1つのみ図示する)がベルト長さ方向に一定の歯ピッチPBで形成され、この歯部11,11間にあるベルト本体9の底面に、ランドラインLL上に位置するランド部12が設けられている。上記ベルト歯部11のピッチPBは、上記歯元幅Wに対し、PB=1.37W〜1.47Wとされている。
【0029】
上記の如くベルト本体9がゴム製である場合、その歯部11の表面に合成繊維製の織布(図示せず)が貼り付けられる。その織布はポリアミド繊維が望ましいが、ポリエステル繊維でもよい。織布は通常、RF処理、エポキシ処理、RFL処理等の接着処理が施され、糊ゴムにより処理される。この糊ゴム処理は、織布の表裏両面に行われることもあるが、特に事務用機器の用途ではベルト8表面からのゴム粉の飛散を嫌い、しかもベルト8の速度むらの低減という目的からみてベルト8表面の摩擦係数を低くしておく必要があるために、歯部11の表面となる側にゴム処理を行わないのが好ましい。
【0030】
一方、ベルト本体9がポリウレタン製である場合、歯部11の表面に織布は設けられておらず、ベルト本体9に心線のみが埋め込まれたものとなる。
【0031】
本発明の特徴は、上記各ベルト歯部11の形状にある。すなわち、図1に示すように、各ベルト歯部11は、そのベルト長さ方向両側に、ベルト歯部11の歯幅方向中心線C2(ベルト長さ方向の中心線)に対し対称に位置しかつランド部10に連続する所定半径r1Bの円弧面からなる1対の歯元部12,12と、これらの歯元部12,12に連続して歯部11の側面に位置しかつ上記歯幅方向中心線C2に対し対称に設けられ、円弧半径RBの凸形状の円弧面からなる1対の歯側面部13,13と、これら両歯側面部13,13の円弧面の円弧状の歯先側延長線13aよりも歯元側(内側)に位置し、両歯側面部13,13同士を連続するように設けられ、歯先部17がベルト歯部11の先端近傍に位置していて、歯先部17の円弧半径の大きさが、歯側面部13の円弧半径の大きさの0.30倍以下であるようになされており、ベルト歯部11が略三角形状とされている。尚、歯先部17の円弧半径の大きさが歯側面部13の円弧半径の大きさの0.15倍以下であるとさらに好ましい。また、歯先部17の形状は上記の構成に限らず、歯側面部13に連続するように設けられていればよい。
【0032】
上記各歯側面部13の円弧面の中心点O1Bは、上記ベルト8のピッチラインPL上又はその近傍、具体的には歯幅W(歯部11の幅)に対し、ランドラインLLからa=0.13〜0.42Wでベルト歯部11の歯幅方向中心線C2からb=0.25〜0.81Wの範囲に位置するのが望ましい。また、この各歯側面部13の円弧面の円弧半径RBは、RB=0.7〜1.5Wに設定する。
【0033】
そして、上記歯付ベルト8のベルト歯部11側面の歯側面部13においてランドラインLLから歯高さ方向に0.3W離れた基準位置Dでの0.3W圧力角θBはθB=26〜39°とされ、最適値はθB=31°(図示例のもの)である。
【0034】
そして、図2に示すように、ベルトにプーリが巻き付いてベルトに張力が付与された伝動状態において、ベルト歯部11の歯側面部13及びプーリ歯溝部3の歯溝側面部5の歯高さ方向の各位置における歯付プーリ1,2の圧力角が歯付ベルト8の圧力角よりも大きく構成されている。
【0035】
言い換えると、ベルトにプーリが巻き付いてベルトに張力が付与された伝動状態において、ベルト歯部11の歯側面部13及びプーリ歯溝部3の歯溝側面部5の歯高さ方向の各位置における歯付プーリ1,2の圧力角は、歯付ベルト8の歯先側においてこのベルトの圧力角と同じ大きさである一方、歯元側においてそのベルトの圧力角よりも大きく構成されている。
【0036】
さらに換言すれば、上記ベルト歯部11の側面(歯幅方向の側面)とプーリ歯溝部3の側面(歯溝幅方向の側面)との間のバックラッシュがベルト歯部11の歯元部12,12から歯先部17に向かって小さくなるように構成されている。
【0037】
このようにすることで、歯付ベルト8の歯部11が歯付プーリ1の溝部3に噛み込むとき、ベルト8のピッチラインPLから離れたベルト歯部11の先端側で、ベルト歯部11の走行方向後側の歯部側面とプーリ歯溝部3の側面とが接触するようになる。
【0038】
さらに、図2に示すように、ベルト歯部とプーリ歯溝部との噛み合い時に、そのベルト歯部の側面とプーリ歯溝部の側面との間のバックラッシュがベルト歯部の歯先部において無いように構成されている。
【0039】
そのとき、図7に示すように、従来のSTPD歯形やHTD−II歯形を有する歯付ベルト8′では、ベルト歯部の歯高さH′(同図に破線で示すベルト歯部のランドラインLLから歯先部までの高さ)を大きくするのには限度があったが、本発明のような歯形状とすることにより、歯高さH(同図に実線で示すベルト歯部11のランドラインLLから歯先部17までの高さ)を従来のものの歯高さH′よりも大きくすることができ、ベルトとプーリとが高負荷条件下で噛み合う場合でも、その噛み合いに伴うベルト歯部の歯飛び(ジャンピング)を抑制することができる。
【0040】
そして、この実施形態においては、図4に示すように、歯付ベルト8の歯部11が駆動側の歯付プーリ1の歯溝部3に噛み込むとき、与えられる負荷トルクの影響によりベルト歯部11はプーリ歯溝部3の位置に対し若干遅れた位置で噛み込むので、まず、ベルト歯部11の走行方向後側の歯部11側面がプーリ歯溝部3の側面に接触位置Sにおいて接触する(尚、図4及び後述の図5及び6においては、理解を容易にするために、プーリ1,2及びベルト8が共に展開した状態を示し、さらにベルト歯部11側面とプーリ歯溝部3の側面との接触状態を概略的に示している。)。
【0041】
そして、ベルト8のスパン(プーリに巻き付いていない部分)でベルトピッチラインPLがベルトスパンと直交する方向に上下動することにより、噛合い速度むらが発生する。従来技術のように、プーリ圧力角がベルト圧力角と等しい、又はプーリ圧力角がベルト圧力角よりも小さい場合には、ベルト歯部11がプーリ歯溝部3に完全に噛み合った状態で、ベルト歯部11側面の歯元部がプーリ歯溝3側面に接触している。つまり、プーリ歯溝部3の幅方向中心線C1に対してベルト歯部11の幅方向中心線C2が大きくずれているため、次に噛み合うベルト歯部11はそのベルト歯部11側面がプーリ歯溝部3側面に干渉しやすい状態で噛み込むことになる。
【0042】
これに対して本発明のように、プーリ1,2の圧力角をベルト8の圧力角よりも大きく構成すれば、ベルト歯部11のプーリ歯溝部3への噛み込みの過程でベルト歯部11の幅方向中心線C2がプーリ歯溝部3の幅方向中心線C1に近づいていく効果(歯のセンタリング効果)が生じるので、次に噛み込むベルト歯部11は、ベルト歯部11側面がプーリ歯溝部3側面に干渉しにくくなり、噛み合い時の干渉を最小限に抑えることができる。
【0043】
また、上記ピッチラインPLが上下動する要因の1つとして、ベルト歯部11の走行方向後側の歯部11側面がプーリ歯溝部3の側面に接触する際に発生する衝撃力がベルト8のピッチラインPL上の心線に伝達するということがある。
【0044】
このとき、衝撃力は接触位置Sから心線へ伝わるときに弾性体からなるベルト歯部11及びベルト本体9を介するために、この衝撃力は接触位置Sから心線へ向かうに従って減衰される。
【0045】
すなわち、接触位置が心線に近くなるほど上記弾性体による衝撃力の減衰量が小さくなるので、心線への衝撃力の伝達量は大きくなり、この衝撃力によるピッチラインPLの押上げ量は大きくなる。換言すれば、ベルト歯部11のプーリ歯溝部3への接触がピッチラインPLに近づいてなされるほど速度むらが大きくなるのである。
【0046】
ここで、ベルト歯部及びプーリ歯溝部の形状について、従来のものを図5及び図6に示し、これら従来のものと図4に示す本発明のものとを比較して説明する。まず、図5には図15に示した上述の特開昭64―74341号公報に開示された歯付ベルト(以降ST歯形と呼ぶ)に関して、ベルト歯部11′の走行方向後側の歯部側面とプーリ歯溝部3′の側面との接触位置Sにおける接触状態を概略的に示している。
【0047】
また、図6には、ベルト8″における本体9″のランドライン上に複数のベルト歯部11″,11″,…を一定ピッチで設け、この各ベルト歯部11″は、歯幅方向中心線に対し対称に配置された円弧面からなる歯元部12″,12″と、この歯元部12″,12″に連続してかつ上記歯幅方向中心線に対し対称に設けられた凸形状の円弧面からなる歯側面部13″,13″と、この歯側面部13″,13″に連続してかつ上記歯幅方向中心線に対し対称に設けられた円弧面からなる歯先部14″,14″とを備え、これら歯先部14″,14″同士が1つの平面からなる歯先面15″により接続されてなる歯付ベルト8″であって、この歯付ベルト8″の歯付プーリ1″との静的噛合い状態においてベルト歯部11″側面とプーリ歯溝部3″との間のバックラッシュがこのベルト歯部11″側面に沿って略平行となる歯付ベルト(以降STS歯形と呼ぶ)に関して、ベルト歯部11″の走行方向後側の歯部側面とプーリ歯溝部3″の側面との接触位置Sにおける接触状態を概略的に示している。
【0048】
図5に示すST歯形のものでは、バックラッシュはベルト歯部11″の歯元側から歯先側へ向かって漸増しているので、接触位置Sはベルト歯部11″の歯元側となる。一方、図4に示す本発明のものでは、図5に示すものとは逆に、バックラッシュはベルト歯部の歯元側から歯先側へ向かって漸減しているので、接触位置Sはベルト歯部11の歯先側となる。
【0049】
すなわち、本発明の図4における接触位置Sとベルト8のピッチラインPLまでの距離h1は、従来の図5における接触位置Sとベルト8′のピッチラインPLまでの距離h2よりも長くとることができるので、ベルト歯部とプーリ歯溝部側面との接触による衝撃力の伝達を緩和する効果が大きくなる。
【0050】
また、図6に示すSTS歯形のものでは、バックラッシュはベルト歯部11″の歯元側から歯先側へ亘って略平行となっているため、この歯元側から歯先側へ亘る部分が接触部分となり、接触位置Sはこの接触部分の略中心にある。
【0051】
すなわち、上記のST歯形のものと同様に、本発明の図4における接触位置Sとベルト8′のピッチラインPLまでの距離h1は、従来の図6における接触位置Sとベルト8″のピッチラインPLまでの距離h3よりも長くとることができるので、ベルト歯部とプーリ歯溝部側面との接触による衝撃力の伝達を緩和する効果が大きくなる。
【0052】
したがって、上記の如く構成することにより、従来の歯付伝動装置よりも、ベルト歯部11のプーリ歯溝部3への接触がピッチラインPLから離れたベルト歯部11の先端側においてなされるので、速度むらを小さくすることができる。
【0053】
また、上記ピッチラインPLの上下動量は、ベルト歯部11がプーリ歯溝部3に滑り込む際に発生する反力と、その反力によってベルト8が上側に押し上げられたときに発生するベルト張力の分力とによって決まるため、接触位置がベルト歯部11とプーリ歯溝部3との完全噛合位置から離れるほどベルト張力の分力が小さくなってピッチラインPLの押上げ量が大きくなり、ベルト歯部11のプーリ歯溝部3への接触が早期であると速度むらが大きくなる。
【0054】
したがって、従来の歯付ベルト8では、図8(b)に示すように、上記したベルト歯部11側面の0.3W圧力角θBが小さい(θB=20.8〜25.3°)ので、ベルト歯部11の側面がプーリ歯溝部3の側面に早く接触するのに対し、この実施形態では、図8(a)に示す如く、上記0.3W圧力角θBがθB≧26°と従来よりも大きいので、ベルト歯部11のプーリ歯溝部3側面との接触は遅くなり、このことによってベルト8の速度むらを低減することができる。
【0055】
一方、このように、ベルト歯部11の側面はプーリ歯溝部3の側面と接触した後に滑り込む反力とベルト張力の分力とによってベルトスパンの移動量が決まり、そのときに、0.3W圧力角θBが大き過ぎると、ベルト歯部11がプーリ歯溝部3に滑り込む際に発生する反力の垂直方向(ベルトスパンと直交する方向)の成分が大きくなり過ぎ、容易に滑り込めなくなってベルトピッチラインPLが押し上げられ、却ってベルト8の速度むらが増大するが、この実施形態では、上記0.3W圧力角θBはθB≦39°であるので、ベルト歯部11がプーリ歯溝部3にスムーズに滑り込むようになり、ベルト8の速度むらの増大を抑えることができる。つまり、0.3W圧力角θBの最適範囲をθB=26〜39°とすることで、ベルト8の速度むらを可及的に低減することができる。
【0056】
また、上記ベルト歯部11の歯側面に位置する歯側面部13の円弧半径RBは、ランドラインLL上での歯元幅Wに対し、RB=0.7W〜1.5Wとされているので、次の作用効果が得られる。すなわち、上記のように、0.3W圧力角θBを大きくすることによって、ベルト歯部11のプーリ歯溝部3への噛込み時にベルト歯部11のプーリ歯溝部3への接触が遅くなり、これにより速度むらを小さくすることができるが、同じ0.3W圧力角θBを有する歯形であっても、その歯形の歯側面部13の円弧半径RBによってベルト歯部11のプーリ歯溝部3への滑込み易さが異なるため、速度むらに影響する。つまり、ベルト8のプーリ1,2への噛込みにおいて、ベルト8のランド部10がプーリ1,2の歯頂部に巻き付くときには、ベルト8はプーリ1,2に円弧状に巻き付くが、ランド部10が巻き付いた後にベルト歯部11がプーリ歯溝部3へ噛み込むときには、ベルト歯部11は歯の走行方向前側の歯元付近におけるピッチラインPL上の点を支点(回転中心)として、プーリ歯溝部3に噛み込む。このとき、歯側面部13の円弧半径RBが大き過ぎると(例えばRB=1.6W)、図9(b)に示すように、ベルト歯部11の歯先部20付近がプーリ歯溝部3の側面に干渉しながら滑り込む一方、逆に歯側面部13の円弧半径RBが小さ過ぎる場合(例えばRB=0.65W)は、図9(c))に示す如く、ベルト歯部11の側面がプーリ歯溝部3の歯頂円弧部4付近に干渉しながら滑り込むこととなり、こうしてベルト歯部11の歯先部20付近又は側面が干渉しながら滑り込むことによって、噛込み時に発生するプーリ1,2からの反力が大きくなり、ピッチラインPLが押し上げられて速度むらが大きくなる。
【0057】
しかし、この実施形態のように、ベルト歯部11の歯側面部13の円弧半径RBがベルト歯元幅Wと略等しければ(RB=0.7W〜1.5W)、図9(a)に例示するように、上記の如き干渉は殆ど発生せず、滑らかに滑り込むことができて速度むらが小さくなる。よって、歯側面部13の円弧半径RBが歯元幅Wに対し、RB=0.7W〜1.5Wの範囲であれば、ベルト8の速度むらの低減に有効である。
【0058】
また、歯付ベルト8の歯ピッチPBは、歯元幅Wに対し、PB=1.37W〜1.47Wとされているので、以下の作用効果を奏する。すなわち、ベルト8の速度むらを低減させるためには、ベルト8の歯ピッチPBができるだけ小さくてプーリ歯数が多い方が、多角形効果が小さく(より一層円に近く)なるので、有利であり、PB=1.47W以下であれば、従来のものに比べて、速度むらが小さくなる。一方、PB=1.37W未満では、プーリ歯頂部が狭くなり過ぎ、プーリ1,2の強度や加工性に問題がある。このため、この実施形態のように、PB=1.37W〜1.47Wとすることで、プーリ1,2の強度や加工性の問題を招くことなく、ベルト8の速度むらを低減することができる。
【0059】
−変形例−
図8は、本実施形態の変形例を示し(尚、図2と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)、歯付ベルトが歯付プーリに巻き付いてそのベルトに張力が付与された伝動状態で、ベルト歯部11,11間のランド部10とプーリ外径部30とが非接触状態となるように構成したものである。
【0060】
したがって、この変形例の場合、歯付ベルト8のランド部10がプーリ外径部30に円弧状に巻き付いた後にベルト歯部11がプーリ歯溝部3へ噛み込む際、ベルト歯部11はベルト本体9のピッチラインPL上の点Oを回動中心として回動しながらプーリ歯溝部3に噛み込むが、そのピッチラインPL上の回動中心Oは、ベルトランド部10とプーリ外径部30とが接触状態にある場合のように、噛み込もうとする対象のプーリ歯溝部3のベルト走行方向前側の歯元付近における歯頂円弧部4に対応する点ではなくて、上記対象のプーリ歯溝部3よりもベルト走行方向前側に位置するプーリ歯溝部3の歯元付近における歯頂円弧部4に対応する点O′にずれ、ベルト歯部11はこの点O′を回動中心として回動しながらプーリ歯溝部3に噛み込むようになる。このことで、上記ベルトランド部10とプーリ外径部30とが接触状態である場合に比べて、ベルト歯部11の回動半径が大きくなり、その歯側面部13の歯先側の回動軌跡の突出量が小さくなってプーリ歯溝部3の歯溝側面部5と干渉し難くなり、ベルト歯部11はプーリ歯溝部3に滑らかに滑り込むことができ、両者の噛合い干渉に起因するベルト8の速度むらをさらに小さくすることができる。
【0061】
また、一般に、プーリ1,2と歯付ベルト8との間の負荷の伝動は、プーリ歯溝部3及びベルト歯部11間の噛合い伝動に加え、プーリ外径部30及びベルトランド部10の間の摩擦伝動によってもなされ、プーリ1,2の回転速度の変動がこれら2つの伝動態様によって歯付ベルト8へ伝えられて、その歯付ベルト8の速度むらが発生するが、ベルトランド部10とプーリ外径部30とが非接触状態であると、上記プーリ1,2及びベルト8間の負荷伝動の態様のうち、後者のプーリ外径部30とベルトランド部10との摩擦伝動が取り除かれるので、このベルトランド部10の摩擦伝動によるプーリ1,2の回転速度変動のベルト8への伝達が防止され、ベルト歯部11のうちベルト8のランドラインLLとプーリ1,2の外径ラインとの間の部分の弾性によりプーリ1,2の回転速度変動が吸収されるようになり、このプーリ1,2の回転速度変動が上記噛合い伝動によってベルト8へ伝達されるのを抑制して、ベルト8の速度むらをさらに小さくすることができる。
【0062】
尚、上記実施形態及び変形例では、ベルト歯部11の側面とプーリ歯溝部3の側面との間のバックラッシュがベルト歯部11の歯元部12から歯先部17に向かって小さくなっている構成としたが、ベルト歯部11の歯先側の所定部分においてバックラッシュが歯元側から歯先側に向かって小さくなるようにし、その所定部分から歯元側では、歯高さ方向の各位置におけるバックラッシュが等しくなるようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態及び変形例では、プリンタや複写機等の事務用機器に装備された歯付ベルト8及び伝動装置Aについて説明しているが、本発明は、事務用機器以外の歯付ベルト及び伝動装置に対しても適用できるのはいうまでもない。
【0064】
【実施例】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。歯付ベルト及び歯付プーリからなる伝動装置を製作してそのベルトの速度むらを測定装置で実測する台上試験を実施した。すなわち、本発明例として、図1及び2に示す実施形態の構成で、ベルトの歯先を尖った状態とするために小さい円弧面で構成し、ベルト8の0.3W圧力角が29.2°で、プーリの0.3W圧力角を31.1°とし、プーリと噛み合った状態でプーリ歯溝部側面とベルト歯部側面との間のバックラッシュがベルトの歯先部において無い歯付ベルト及び歯付プーリを製作する一方(本発明例)、従来例として、ベルトの0.3W圧力角が25.3°で、プーリの0.3W圧力角が同じ25.3°で、ベルトの歯先部が平面で構成された歯付ベルト及び歯付プーリを製作した。
【0065】
その各々の寸法は下記の表1の通りである。尚、寸法値はベルト歯部のピッチ(2.117mm)を「1.0」とする指数で表している。
【0066】
【表1】
【0067】
具体的には、歯付ベルトは歯ピッチ2.117mmの円弧歯形状の歯部を持つゴム製のもので、そのゴムは硬度70°のクロロプレンゴムで、心線は径0.3mmのガラス繊維からなる。織布はポリアミドウーリー加工糸からなり、RF処理と、裏面のみのゴム糊処理とを施した。
【0068】
そして、これらの歯付ベルトについて、実際の走行時の速度むらを図11に示すベルト速度むら測定装置により測定した。この測定装置は、試験用の歯付ベルト8を巻き掛ける歯付プーリからなる駆動及び従動プーリ1,2を備えており、その従動プーリ2への静荷重DWによりベルト張力を付与しかつ従動プーリ2を無負荷にした状態で駆動プーリ1を図で矢印の方向に回転させ、そのときのベルト8の緩み側スパンにおいて駆動プーリ1の軸心からd1=10mm離れた部位に対し、その部位からベルト側方にd2=100±2mm離れた位置のプローブ43からレーザ光43aを当て、そのプローブ43の出力信号に基づいて速度むら測定器44によりベルト40の速度むらを測定し、この速度むらの周波数をFFT45により解析してパソコン46に取り込み、そのデータをプリンタ47によりプリントするようにしたものである。この速度むら測定装置の測定データを図12に、またベルト8の速度むらの周波数を分析したデータを図13及び14にそれぞれ示す(図13は本発明例を、図14は従来例をそれぞれ示している)。また、それぞれの噛み合い周波数での速度変動は、発明例が0.03%、従来例が0.13%であり、本発明の構成により、ベルトの速度変動が著しく低減されることが裏付けられた。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1によると、ベルト歯部のプーリ歯溝部へのセンタリング効果が生まれ、噛み込み時の干渉を最小限に抑えることができることに加えて、ピッチラインから離れたベルト歯部の先端においてベルト歯部とプーリ歯溝部とを接触させることができ、速度むらを小さくすることができる。
【0070】
請求項2の発明によると、歯付ベルトが歯付プーリに巻き付いてベルトに張力が付与された伝動状態で、ベルト歯部間のランド部がプーリ外径部に接触しないように構成することにより、このプーリの回転速度変動が噛み合い伝動によってベルトへ伝達されるのを抑制して、ベルトの速度むらを小さくすることができる。
【0071】
請求項3の発明によると、上記歯付ベルト伝動装置が装備されていて、その歯付ベルトにキャリッジが取り付けられている事務用機器としたことにより、その事務用機器のキャリッジの速度変動を小さくして印字精度や画像品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態における歯付ベルトの歯部を拡大して示す断面図である。
【図2】 実施形態における歯付ベルト伝動装置の歯付ベルトの歯部が歯付プーリに噛み合った状態を展開して示す拡大断面図である。
【図3】 歯付ベルト伝動装置の全体構成を概略的に示す正面図である。
【図4】 実施形態において歯付ベルトの歯部が歯付プーリの歯溝部に噛み合う状態を概略的に示す説明図である。
【図5】 従来の歯付ベルトの歯部が歯付プーリの歯溝部に噛み合う状態を概略的に示す図4相当図である。
【図6】 従来の歯付ベルトの歯部が歯付プーリの歯溝部に噛み合う状態を概略的に示す図4相当図である。
【図7】 本実施形態のベルト歯部を従来のベルト歯部と比較して示す説明図である。
【図8】 歯付ベルトの歯部が歯付プーリの歯溝部に噛み合う状態を概略的に示す説明図である。
【図9】 ベルト歯部の歯側面部の円弧半径の大きさに応じた噛合状態を示す説明図である。
【図10】 変形例を示す図2相当図である。
【図11】 ベルトの速度むら測定装置を示す図である。
【図12】 ベルトの速度むら測定装置の測定データを示す図である。
【図13】 本発明のベルトの速度むらの周波数を分析したデータを示す図である。
【図14】 従来のベルトの速度むらの周波数を分析したデータを示す図である。
【図15】 従来の歯付ベルトの歯部が歯付プーリに噛み合った状態を示す図2相当図である。
【符号の説明】
A 歯付ベルト伝動装置
1,2 プーリ(歯付プーリ)
3 プーリ歯溝部
4 歯頂円弧部
5 歯溝側面部
6 歯溝底部
C1 歯溝幅方向中心線
8 歯付ベルト
9 ベルト本体
10 ランド部
11 ベルト歯部
12 歯元部
13 歯側面部
17 歯先部
19 キャリッジ
20 歯先部
30 プーリ外径部
LL ランドライン
PL ピッチライン
PB ピッチ
C2 歯幅方向中心線
Claims (3)
- 歯付ベルトと歯付プーリとを組合せてなる歯付ベルト伝動装置であって、
上記歯付ベルトは、ピッチライン上に抗張体が埋設されたベルト本体と、上記ベルト本体のランドライン上に一定ピッチで設けられた複数のベルト歯部とを備え、
上記各ベルト歯部は、歯幅方向中心線に対し対称に配置された円弧面からなる歯元部と、
上記歯元部に連続して歯部側面に位置しかつ上記歯幅方向中心線に対し対称に設けられた凸形状の円弧面からなる歯側面部と、
上記歯側面部に連続するように設けられた歯先部とで構成されており、
上記歯先部がベルト歯部の先端近傍に位置していて、ベルト歯部が略三角形状とされており、
上記歯付プーリは、プーリ外径ライン上に一定ピッチで設けられた複数のプーリ歯溝部を備え、
上記各プーリ歯溝部は、歯溝幅方向中心線に対し対称に配置された円弧面からなる歯頂円弧部と、
上記歯頂円弧部に連続して歯溝幅方向中心線に対し対称に設けられた凹形状の円弧面からなる歯溝側面部と、
上記両歯溝側面部同士を連続するように設けられた歯溝底部とで構成されており、
上記歯付ベルトに上記歯付プーリが巻き付いて該ベルトに張力が付与された伝動状態において、上記ベルト歯部の歯側面部と上記プーリ歯溝部の歯溝側面部との間には、上記ベルト歯部の歯先側においてバックラッシュが形成されない一方、上記ベルト歯部の歯元側においてバックラッシュが形成されており、
上記バックラッシュが形成されている領域において、歯高さ方向の各位置における上記歯付プーリの圧力角は歯付ベルトの圧力角よりも大きく構成されていることを特徴とする歯付ベルト伝動装置。 - 請求項1に記載された歯付ベルト伝動装置において、
歯付ベルトが歯付プーリに巻き付いて該ベルトに張力が付与された伝動状態で、ベルト歯部間のランド部がプーリ外径部に接触しないように構成されていることを特徴とする歯付ベルト伝動装置。 - 請求項1又は2に記載された歯付ベルト伝動装置が装備されていて、
歯付ベルトにキャリッジが取り付けられていることを特徴とする事務用機器。
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