[実施形態1] 本発明の実施形態を図1〜図5を用いて説明する。ここでは表示領域の画素TFTと、表示領域の周辺に設けられる駆動回路のTFTを同一基板上に作製する方法について工程に従って詳細に説明する。但し、説明を簡単にするために、制御回路ではシフトレジスタ回路、バッファ回路などの基本回路であるCMOS回路と、サンプリング回路を形成するnチャネル型TFTとを図示することにする。
図1(A)において、基板101には低アルカリガラス基板や石英基板を用いることができる。本実施例では低アルカリガラス基板を用いた。この場合、ガラス歪み点よりも10〜20℃程度低い温度であらかじめ熱処理しておいても良い。この基板101のTFTを形成する表面には、基板101からの不純物拡散を防ぐために、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などの下地膜102を形成する。例えば、プラズマCVD法でSiH4、NH3、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜を100nm、同様にSiH4、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜を200nmの厚さに積層形成する。
次に、20〜150nm(好ましくは30〜80nm)の厚さで非晶質構造を有する半導体膜103aを、プラズマCVD法やスパッタ法などの公知の方法で形成する。本実施例では、プラズマCVD法で非晶質シリコン膜を55nmの厚さに形成した。非晶質構造を有する半導体膜としては、非晶質半導体膜や微結晶半導体膜があり、非晶質シリコンゲルマニウム膜などの非晶質構造を有する化合物半導体膜を適用しても良い。また、下地膜102と非晶質シリコン膜103aとは同じ成膜法で形成することが可能であるので、両者を連続形成しても良い。下地膜を形成した後、一旦大気雰囲気に晒さないことでその表面の汚染を防ぐことが可能となり、作製するTFTの特性バラツキやしきい値電圧の変動を低減させることができる。(図1(A))
そして、公知の結晶化技術を使用して非晶質シリコン膜103aから結晶質シリコン膜103bを形成する。例えば、レーザー結晶化法や熱結晶化法(固相成長法)を適用すれば良いが、ここでは、特開平7−130652号公報で開示された技術に従って、触媒元素を用いる結晶化法で結晶質シリコン膜103bを形成した。結晶化の工程に先立って、非晶質シリコン膜の含有水素量にもよるが、400〜500℃で1時間程度の熱処理を行い、含有水素量を5atom%以下にしてから結晶化させることが望ましい。非晶質シリコン膜を結晶化させると原子の再配列が起こり緻密化するので、作製される結晶質シリコン膜の厚さは当初の非晶質シリコン膜の厚さ(本実施例では55nm)よりも1〜15%程度減少した。(図1(B))
そして、結晶質シリコン膜103bを島状に分割して、島状半導体層104〜107を形成する。その後、プラズマCVD法またはスパッタ法により50〜100nmの厚さの酸化シリコン膜によるマスク層108を形成する。(図1(C))
そしてレジストマスク109を設け、nチャネル型TFTを形成する島状半導体層105〜107の全面にしきい値電圧を制御する目的で1×1016〜5×1017atoms/cm3程度の濃度でp型を付与する不純物元素としてボロン(B)を添加した。ボロン(B)の添加はイオンドープ法で実施しても良いし、非晶質シリコン膜を成膜するときに同時に添加しておくこともできる。ここでのボロン(B)添加は必ずしも必要でないが、ボロン(B)を添加した半導体層110〜112はnチャネル型TFTのしきい値電圧を所定の範囲内に収めるために形成することが好ましかった。(図1(D))
駆動回路のnチャネル型TFTのLDD領域を形成するために、n型を付与する不純物元素を島状半導体層110、111に選択的に添加する。そのため、あらかじめレジストマスク113〜116を形成した。n型を付与する不純物元素としては、リン(P)や砒素(As)を用いれば良く、ここではリン(P)を添加すべく、フォスフィン(PH3)を用いたイオンドープ法を適用した。形成された不純物領域117、118のリン(P)濃度は2×1016〜5×1019atoms/cm3の範囲とすれば良い。本明細書中では、ここで形成された不純物領域117〜119に含まれるn型を付与する不純物元素の濃度を(n-)と表す。また、不純物領域119は、画素マトリクス回路の保持容量を形成するための半導体層であり、この領域にも同じ濃度でリン(P)を添加した。(図2(A))
次に、マスク層108をフッ酸などにより除去して、図1(D)と図2(A)で添加した不純物元素を活性化させる工程を行う。活性化は、窒素雰囲気中で500〜600℃で1〜4時間の熱処理や、レーザー活性化の方法により行うことができる。また、両者を併用して行っても良い。本実施例では、レーザー活性化の方法を用い、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)を用い、線状ビームを形成して、発振周波数5〜50Hz、エネルギー密度100〜500mJ/cm2として線状ビームのオーバーラップ割合を80〜98%として走査して、島状半導体層が形成された基板全面を処理した。尚、レーザー光の照射条件には何ら限定される事項はなく、実施者が適宣決定すれば良い。
そして、ゲート絶縁膜120をプラズマCVD法またはスパッタ法を用いて10〜150nmの厚さでシリコンを含む絶縁膜で形成する。例えば、120nmの厚さで酸化窒化シリコン膜を形成する。ゲート絶縁膜には、他のシリコンを含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良い。(図2(B))
次に、ゲート電極を形成するために第1の導電層を成膜する。この第1の導電層は単層で形成しても良いが、必要に応じて二層あるいは三層といった積層構造としても良い。本実施例では、導電性の窒化物金属膜から成る導電層(A)121と金属膜から成る導電層(B)122とを積層させた。導電層(B)122はタンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)から選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金か、前記元素を組み合わせた合金膜(代表的にはMo−W合金膜、Mo−Ta合金膜)で形成すれば良く、導電層(A)121は窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)、窒化チタン(TiN)膜、窒化モリブデン(MoN)で形成する。また、導電層(A)121は代替材料として、タングステンシリサイド、チタンシリサイド、モリブデンシリサイドを適用しても良い。導電層(B)は低抵抗化を図るために含有する不純物濃度を低減させると良く、特に酸素濃度に関しては30ppm以下とすると良かった。例えば、タングステン(W)は酸素濃度を30ppm以下とすることで20μΩcm以下の比抵抗値を実現することができた。
導電層(A)121は10〜50nm(好ましくは20〜30nm)とし、導電層(B)122は200〜400nm(好ましくは250〜350nm)とすれば良い。本実施例では、導電層(A)121に30nmの厚さの窒化タンタル膜を、導電層(B)122には350nmのTa膜を用い、いずれもスパッタ法で形成した。このスパッタ法による成膜では、スパッタ用のガスのArに適量のXeやKrを加えておくと、形成する膜の内部応力を緩和して膜の剥離を防止することができる。尚、図示しないが、導電層(A)121の下に2〜20nm程度の厚さでリン(P)をドープしたシリコン膜を形成しておくことは有効である。これにより、その上に形成される導電膜の密着性向上と酸化防止を図ると同時に、導電層(A)または導電層(B)が微量に含有するアルカリ金属元素がゲート絶縁膜120に拡散するのを防ぐことができる。(図2(C))
次に、レジストマスク123〜127を形成し、導電層(A)121と導電層(B)122とを一括でエッチングしてゲート電極128〜131と容量配線132を形成する。ゲート電極128〜131と容量配線132は、導電層(A)から成る128a〜132aと、導電層(B)から成る128b〜132bとが一体として形成されている。この時、駆動回路に形成するゲート電極129、130は不純物領域117、118の一部と、ゲート絶縁膜120を介して重なるように形成する。(図2(D))
次いで、駆動回路のpチャネル型TFTのソース領域およびドレイン領域を形成するために、p型を付与する不純物元素を添加する工程を行う。ここでは、ゲート電極128をマスクとして、自己整合的に不純物領域を形成する。このとき、nチャネル型TFTが形成される領域はレジストマスク133で被覆しておく。そして、ジボラン(B2H6)を用いたイオンドープ法で不純物領域134を形成した。この領域のボロン(B)濃度は3×1020〜3×1021atoms/cm3となるようにする。本明細書中では、ここで形成された不純物領域134に含まれるp型を付与する不純物元素の濃度を(p+)と表す。(図3(A))
次に、nチャネル型TFTにおいて、ソース領域またはドレイン領域として機能する不純物領域の形成を行った。レジストのマスク135〜137を形成し、n型を付与する不純物元素が添加して不純物領域138〜142を形成した。これは、フォスフィン(PH3)を用いたイオンドープ法で行い、この領域のリン(P)濃度を1×1020〜1×1021atoms/cm3とした。本明細書中では、ここで形成された不純物領域138〜142に含まれるn型を付与する不純物元素の濃度を(n+)と表す。(図3(B))
不純物領域138〜142には、既に前工程で添加されたリン(P)またはボロン(B)が含まれているが、それに比して十分に高い濃度でリン(P)が添加されるので、前工程で添加されたリン(P)またはボロン(B)の影響は考えなくても良い。また、不純物領域138に添加されたリン(P)濃度は図3(A)で添加されたボロン(B)濃度の1/2〜1/3なのでp型の導電性が確保され、TFTの特性に何ら影響を与えることはなかった。
そして、画素マトリクス回路のnチャネル型TFTのLDD領域を形成するためのn型を付与する不純物添加の工程を行った。ここではゲート電極131をマスクとして自己整合的にn型を付与する不純物元素をイオンドープ法で添加した。添加するリン(P)の濃度は1×1016〜5×1018atoms/cm3であり、図2(A)および図3(A)と図3(B)で添加する不純物元素の濃度よりも低濃度で添加することで、実質的には不純物領域143、144のみが形成される。本明細書中では、この不純物領域143、144に含まれるn型を付与する不純物元素の濃度を(n--)と表す。(図3(C))
その後、それぞれの濃度で添加されたn型またはp型を付与する不純物元素を活性化するために熱処理工程を行う。この工程はファーネスアニール法、レーザーアニール法、またはラピッドサーマルアニール法(RTA法)で行うことができる。ここではファーネスアニール法で活性化工程を行った。熱処理は酸素濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下の窒素雰囲気中で400〜800℃、代表的には500〜600℃で行うものであり、本実施例では550℃で4時間の熱処理を行った。また、基板101に石英基板のような耐熱性を有するものを使用した場合には、800℃で1時間の熱処理としても良く、不純物元素の活性化と、該不純物元素が添加された不純物領域とチャネル形成領域との接合を良好に形成することができた。
この熱処理において、ゲート電極128〜131と容量配線132形成する金属膜128b〜132bは、表面から5〜80nmの厚さで導電層(C)128c〜132cが形成される。例えば、導電層(B)128b〜132bがタングステン(W)の場合には窒化タングステン(WN)が形成され、タンタル(Ta)の場合には窒化タンタル(TaN)を形成することができる。また、導電層(C)128c〜132cは、窒素またはアンモニアなどを用いた窒素を含むプラズマ雰囲気にゲート電極128〜131を晒しても同様に形成すりことができる。さらに、3〜100%の水素を含む雰囲気中で、300〜450℃で1〜12時間の熱処理を行い、島状半導体層を水素化する工程を行った。この工程は熱的に励起された水素により半導体層のダングリングボンドを終端する工程である。水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)を行っても良い。
島状半導体層が、非晶質シリコン膜から触媒元素を用いる結晶化の方法で作製された場合、島状半導体層中には微量の触媒元素が残留した。勿論、そのような状態でもTFTを完成させることが可能であるが、残留する触媒元素を少なくともチャネル形成領域から除去する方がより好ましかった。この触媒元素を除去する手段の一つにリン(P)によるゲッタリング作用を利用する手段があった。ゲッタリングに必要なリン(P)の濃度は図3(B)で形成した不純物領域(n+)と同程度であり、ここで実施される活性化工程の熱処理により、nチャネル型TFTおよびpチャネル型TFTのチャネル形成領域から触媒元素をゲッタリングをすることができた。(図3(D))
図6(A)および図7(A)はここまでの工程におけるTFTの上面図であり、A−A'断面およびC−C'断面は図3(D)のA−A'およびC−C'に対応している。また、B−B'断面およびD−D'断面は図8(A)および図9(A)の断面図に対応している。図6および図7の上面図はゲート絶縁膜を省略しているが、ここまでの工程で少なくとも島状半導体層104〜107上にゲート電極128〜131と容量配線132が図に示すように形成されている。
活性化および水素化の工程が終了したら、ゲート配線とする第2の導電膜を形成する。この第2の導電膜は低抵抗材料であるアルミニウム(Al)や銅(Cu)を主成分とする導電層(D)と、チタン(Ti)やタンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)から成る導電層(E)とで形成すると良い。本実施例では、チタン(Ti)を0.1〜2重量%含むアルミニウム(Al)膜を導電層(D)145とし、チタン(Ti)膜を導電層(E)146として形成した。導電層(D)145は200〜400nm(好ましくは250〜350nm)とすれば良く、導電層(E)146は50〜200(好ましくは100〜150nm)で形成すれば良い。(図4(A))
そして、ゲート電極に接続するゲート配線を形成するために導電層(E)146と導電層(D)145とをエッチング処理して、ゲート配線147、148と容量配線149を形成た。エッチング処理は最初にSiCl4とCl2とBCl3との混合ガスを用いたドライエッチング法で導電層(E)の表面から導電層(D)の途中まで除去し、その後リン酸系のエッチング溶液によるウエットエッチングで導電層(D)を除去することにより、下地との選択加工性を保ってゲート配線を形成することができた。
図6(B)および図7(B)はこの状態の上面図を示し、A−A'断面およびC−C'断面は図4(B)のA−A'およびC−C'に対応している。また、B−B'断面およびD−D'断面は図8(B)および図9(B)のB−B'およびD−D'に対応している。図6(B)および図7(B)において、ゲート配線147、148の一部は、ゲート電極128、129、131の一部と重なり電気的に接触している。この様子はB−B'断面およびD−D'断面に対応した図8(B)および図9(B)の断面構造図からも明らかで、第1の導電層を形成する導電層(C)と第2の導電層を形成する導電層(D)とが電気的に接触している。
第1の層間絶縁膜150は500〜1500nmの厚さで酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜で形成され、その後、それぞれの島状半導体層に形成されたソース領域またはドレイン領域に達するコンタクトホールを形成し、ソース配線151〜154と、ドレイン配線155〜158を形成する。図示していないが、本実施例ではこの電極を、Ti膜を100nm、Tiを含むアルミニウム膜300nm、Ti膜150nmをスパッタ法で連続して形成した3層構造の積層膜とした。
次に、パッシベーション膜159として、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、または窒化酸化シリコン膜を50〜500nm(代表的には100〜300nm)の厚さで形成する。この状態で水素化処理を行うとTFTの特性向上に対して好ましい結果が得られた。例えば、3〜100%の水素を含む雰囲気中で、300〜450℃で1〜12時間の熱処理を行うと良く、あるいはプラズマ水素化法を用いても同様の効果が得られた。なお、ここで後に画素電極とドレイン配線を接続するためのコンタクトホールを形成する位置において、パッシベーション膜159に開口部を形成しておいても良い。(図4(C))
図6(C)および図7(C)のはこの状態の上面図を示し、A−A'断面およびC−C'断面は図4(C)のA−A'およびC−C'に対応している。また、B−B'断面およびD−D'断面は図8(C)および図9(C)のB−B'およびD−D'に対応している。図6(C)と図7(C)では第1の層間絶縁膜を省略して示すが、島状半導体層104、105、107の図示されていないソースおよびドレイン領域にソース配線151、152、154とドレイン配線155、156、158が第1の層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介して接続している。
その後、有機樹脂からなる第2の層間絶縁膜160を1.0〜1.5μmの厚さに形成する。有機樹脂としては、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)等を使用することができる。ここでは、基板に塗布後、熱重合するタイプのポリイミドを用い、300℃で焼成して形成した。そして、第2の層間絶縁膜160にドレイン配線158に達するコンタクトホールを形成し、画素電極161、162を形成する。画素電極は、透過型液晶表示装置とする場合には透明導電膜を用いれば良く、反射型の液晶表示装置とする場合には金属膜を用いれば良い。本実施例では透過型の液晶表示装置とするために、酸化インジウム・スズ(ITO)膜を100nmの厚さにスパッタ法で形成した。(図5)
こうして同一基板上に、駆動回路のTFTと表示領域の画素TFTとを有した基板を完成させることができた。駆動回路にはpチャネル型TFT201、第1のnチャネル型TFT202、第2のnチャネル型TFT203、表示領域には画素TFT204、保持容量205が形成した。本明細書では便宜上このような基板をアクティブマトリクス基板と呼ぶ。
駆動回路のpチャネル型TFT201には、島状半導体層104にチャネル形成領域206、ソース領域207a、207b、ドレイン領域208a,208bを有している。第1のnチャネル型TFT202には、島状半導体層105にチャネル形成領域209、ゲート電極129と重なるLDD領域210(以降、このようなLDD領域をLovと記す)、ソース領域211、ドレイン領域212を有している。このLov領域のチャネル長方向の長さは0.5〜3.0μm、好ましくは1.0〜1.5μmとした。第2のnチャネル型TFT203には、島状半導体層106にチャネル形成領域213、LDD領域214,215、ソース領域216、ドレイン領域217を有している。このLDD領域はLov領域とゲート電極130と重ならないLDD領域(以降、このようなLDD領域をLoffと記す)とが形成され、このLoff領域のチャネル長方向の長さは0.3〜2.0μm、好ましくは0.5〜1.5μmである。画素TFT204には、島状半導体層107にチャネル形成領域218、219、Loff領域220〜223、ソースまたはドレイン領域224〜226を有している。Loff領域のチャネル長方向の長さは0.5〜3.0μm、好ましくは1.5〜2.5μmである。さらに、容量配線132、149と、ゲート絶縁膜と同じ材料から成る絶縁膜と、画素TFT204のドレイン領域226に接続し、n型を付与する不純物元素が添加された半導体層227とから保持容量205が形成されている。図5では画素TFT204をダブルゲート構造としたが、シングルゲート構造でも良いし、複数のゲート電極を設けたマルチゲート構造としても差し支えない。
以上の様に本発明は、画素TFTおよび駆動回路が要求する仕様に応じて各回路を構成するTFTの構造を最適化し、半導体装置の動作性能と信頼性を向上させることを可能とすることができる。さらにゲート電極を耐熱性を有する導電性材料で形成することによりLDD領域やソース領域およびドレイン領域の活性化を容易とし、ゲート配線低抵抗材料で形成することにより、配線抵抗を十分低減できる。従って、表示領域(画面サイズ)が4インチクラス以上の表示装置に適用することができる。
[実施形態2] 図16はゲート電極とゲート配線の他の実施形態を示す図である。図16のゲート電極とゲート配線は実施形態1で示す工程と同様にして形成されるものであり、島状半導体層901とゲート絶縁膜902の上方に形成さている。
図16(A)において、ゲート電極とする第1の導電層には、導電層(A)903は窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)、窒化チタン(TiN)膜、窒化モリブデン(MoN)で形成する。導電層(B)904はタンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)から選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金か、前記元素を組み合わせた合金膜で形成し、その表面に実施形態1と同様にして導電層(C)905を形成する。導電層(A)903は10〜50nm(好ましくは20〜30nm)とし、導電層(B)904は200〜400nm(好ましくは250〜350nm)とすれば良い。ゲート配線とする第2の導電層は低抵抗材料であるアルミニウム(Al)や銅(Cu)を主成分とする導電層(D)と、その上にチタン(Ti)やタンタル(Ta)などで形成する導電層(E)とを積層形成する。アルミニウム(Al)や銅(Cu)はストレスマイグレーションやエレクトロマイグレーションで容易に拡散するため、第2の導電層を被覆するように窒化シリコン膜908を50〜150nmの厚さで形成することが必要である。
図16(B)は実施形態1と同様に作製されるゲート電極とゲート配線であり、ゲート電極の下にリン(P)をドープしたシリコン膜909を形成してある。リン(P)をドープしたシリコン膜909はゲート電極中に含まれる微量のアルカリ金属元素がゲート絶縁膜へ拡散することを防ぐ効果があり、TFTの信頼性を確保する目的で有用である。
図16(C)は、ゲート電極を形成する第1の導電層にリン(P)をドープしたシリコン膜910で形成した例である。リン(P)をドープしたシリコン膜は他の導電性金属材料と比較して高抵抗材料であるが、ゲート配線を形成する第2の導電層をアルミニウム(Al)や銅(Cu)で形成することにより、大面積の液晶表示装置にも適用することができる。ここでは、ゲート配線を、Ti膜911を100nm、Tiを含むアルミニウム(Al)膜912を300nm、Ti膜913を150nmで形成した3層構造とし、アルミニウム(Al)膜とリン(P)をドープしたシリコン膜とを直接接触しないようにすることにより、耐熱性を持たせることができる。
[実施形態3] 図15は本発明のTFTの構造を説明するための図であり、半導体層のチャネル形成領域と、LDD領域と、半導体層上のゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上のゲート電極とを有するTFTにおいて、ゲート電極とLDD領域の位置関係を説明している。
図15(A)において、チャネル形成領域209、LDD領域210、ドレイン領域212を有する半導体層と、その上のゲート絶縁膜120とゲート電極129が設けられた構成を示している。LDD領域210はゲート絶縁膜120を介してゲート電極129と重なるように設けられてたLovとなっている。Lovはドレイン近傍で発生する高電界を緩和する作用があり、ホットキャリアによる劣化を防ぐことができ、制御回路のシフトレジスタ回路、レベルシフタ回路、バッファ回路などのnチャネル型TFTに用いるのに適している。
図15(B)において、チャネル形成領域213、LDD領域215a、215b、ドレイン領域217を有する半導体層と、半導体層の上にゲート絶縁膜120とゲート電極130が設けられた構成を示している。LDD領域215aはゲート絶縁膜120を介してゲート電極130と重なるように設けられている。また、LDD領域215bはゲート電極130と重ならないように設けられたLoffとなっている。Loffはオフ電流値を低減させる作用があり、LovとLoffとを設けた構成にすることで、ホットキャリアによる劣化を防ぐと同時にオフ電流値を低減させることができ、制御回路のサンプリング回路のnチャネル型TFTに用いるのに適している。
図15(C)は、半導体層に、チャネル形成領域219、LDD領域223、ドレイン領域226が設けられている。LDD領域223は、ゲート電極131と重ならないように設けられたLoffであり、オフ電流値を効果的に低減させることが可能となり、画素TFTに用いるのに適している。画素TFTのLDD領域223におけるn型を付与する不純物元素の濃度は、駆動回路のLDD領域210、215の濃度よりも1/2から1/10にすることが望ましい。
[実施形態4] 本実施形態では、アクティブマトリクス基板から、アクティブマトリクス型液晶表示装置を作製する工程を説明する。図11に示すように、実施形態1で作製した図5の状態のアクティブマトリクス基板に対し、配向膜601を形成する。通常液晶表示素子の配向膜にはポリイミド樹脂が多く用いられている。対向側の対向基板602には、遮光膜603、透明導電膜604および配向膜605を形成した。配向膜を形成した後、ラビング処理を施して液晶分子がある一定のプレチルト角を持って配向するようにした。そして、画素マトリクス回路と、CMOS回路が形成されたアクティブマトリクス基板と対向基板とを、公知のセル組み工程によってシール材やスペーサ(共に図示せず)などを介して貼りあわせる。その後、両基板の間に液晶材料606を注入し、封止剤(図示せず)によって完全に封止した。液晶材料には公知の液晶材料を用いれば良い。このようにして図11に示すアクティブマトリクス型液晶表示装置が完成した。
次にこのアクティブマトリクス型液晶表示装置の構成を、図12の斜視図および図13の上面図を用いて説明する。尚、図12と図13は、図1〜図5と図11の断面構造図と対応付けるため、共通の符号を用いている。また、図13で示すE―E’に沿った断面構造は、図5に示す画素マトリクス回路の断面図に対応している。
図12においてアクティブマトリクス基板は、ガラス基板101上に形成された、表示領域306と、走査信号駆動回路304と、画像信号駆動回路305で構成される。表示領域には画素TFT204が設けられ、周辺に設けられる駆動回路はCMOS回路を基本として構成されている。走査信号駆動回路304と、画像信号駆動回路305はそれぞれゲート配線148とソース配線154で画素TFT204に接続している。また、FPC731が外部入出力端子734に接続され、入力配線302、303でそれぞれの駆動回路に接続している。
図13は表示領域306のほぼ一画素分を示す上面図である。ゲート配線148は、図示されていないゲート絶縁膜を介してその下の半導体層107と交差している。図示はしていないが、半導体層には、ソース領域、ドレイン領域、n--領域でなるLoff領域が形成されている。また、163はソース配線154とソース領域224とのコンタクト部、164はドレイン配線158とドレイン領域226とのコンタクト部、165はドレイン配線158と画素電極161のコンタクト部である。保持容量205は、画素TFT204のドレイン領域226から延在する半導体層227とゲート絶縁膜を介して容量配線132、149が重なる領域で形成されている。
なお、本実施例のアクティブマトリクス型液晶表示装置は、実施形態1で説明した構造と照らし合わせて説明したが、実施形態2の構成とも自由に組み合わせてアクティブマトリクス型液晶表示装置を作製することができる。
[実施形態5] 図10は液晶表示装置の入出力端子、表示領域、駆動回路の配置の一例を示す図である。表示領域306にはm本のゲート配線とn本のソース配線がマトリクス状に交差している。例えば、画素密度がVGAの場合、480本のゲート配線と640本のソース配線が形成され、XGAの場合には768本のゲート配線と1024本のソース配線が形成される。表示領域の画面サイズは、13インチクラスの場合対角線の長さは340mmとなり、18インチクラスの場合には460mmとなる。このような液晶表示装置を実現するには、ゲート配線を実施形態1および実施形態2で示したような低抵抗材料で形成する必要がある。
表示領域306の周辺には走査信号駆動回路304と画像信号駆動回路305が設けられている。これらの駆動回路のゲート配線の長さも表示領域の画面サイズの大型化と共に必然的に長くなるので、大画面を実現するためには実施形態1および実施形態2で示したような低抵抗材料で形成することが好ましい。
また、本発明は入力端子301から各駆動回路までを接続する入力配線302、303をゲート配線と同じ材料で形成することができ、配線抵抗の低抵抗化に寄与することができる。
[実施形態6] 図14は実施形態1または実施形態2で示したアクティブマトリクス基板の回路構成の一例であり、直視型の表示装置の回路構成を示す図である。本実施例のアクティブマトリクス基板は、画像信号駆動回路1001、走査信号駆動回路(A)1007、走査信号駆動回路(B)1011、プリチャージ回路1012、表示領域1006を有している。尚、本明細書中において記した駆動回路とは、画像信号駆動回路1001、走査信号駆動回路(A)1007を含めた総称である。
画像信号駆動回路1001は、シフトレジスタ回路1002、レベルシフタ回路1003、バッファ回路1004、サンプリング回路1005を備えている。また、走査信号駆動回路(A)1007は、シフトレジスタ回路1008、レベルシフタ回路1009、バッファ回路1010を備えている。走査信号駆動回路(B)1011も同様な構成である。
シフトレジスタ回路1002、1008は駆動電圧が5〜16V(代表的には10V)であり、この回路を形成するCMOS回路のnチャネル型TFTは図5の202で示される構造が適している。また、レベルシフタ回路1003、1009やバッファ回路1004、1010は駆動電圧が14〜16Vと高くなるが、シフトレジスタ回路と同様に、図5のnチャネル型TFT202を含むCMOS回路が適している。これらの回路において、ゲートをマルチゲート構造で形成すると耐圧が高まり、回路の信頼性を向上させる上で有効である。
サンプリング回路1005は駆動電圧が14〜16Vであるが、極性が交互に反転して駆動される上、オフ電流値を低減させる必要があるため、図5のnチャネル型TFT203を含むCMOS回路が適している。図5では、nチャネル型TFTしか表示はされていないが、実際のサンプリング回路においてはpチャネル型TFTも組み合わせて形成される。この時、pチャネル型TFTは同図の201で示される構造で十分である。
また、画素TFT204は駆動電圧が14〜16Vであり、低消費電力化の観点からサンプリング回路よりもさらにオフ電流値を低減することが要求され、画素TFT204のようにゲート電極に対して重ならないように設けられたLDD(Loff)領域を有した構造とするのが望ましい。
尚、本実施形態の構成は、実施形態1に示した工程に従ってTFTを作製することによって容易に実現することができる。本実施形態では、表示領域と駆動回路の構成のみを示しているが、実施形態1の工程に従えば、その他にも信号分割回路、分周波回路、D/Aコンバータ、γ補正回路、オペアンプ回路、さらにメモリ回路や演算処理回路などの信号処理回路、あるいは論理回路を同一基板上に形成することが可能である。このように、本発明は同一基板上に表示領域とその駆動回路とを含む半導体装置、例えば信号駆動回路および表示領域を具備した半導体装置を実現することができる。
[実施形態7] 本発明を実施して作製されたアクティブマトリクス基板および液晶表示装置は様々な電気光学装置に用いることができる。そして、そのような電気光学装置を表示媒体として組み込んだ電子機器全てに本発明を適用することがでできる。電子機器としては、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、電子書籍など)、ナビゲーションシステムなどが上げられる。それらの一例を図17に示す。
図17(A)はパーソナルコンピュータであり、マイクロプロセッサやメモリーなどを備えた本体2001、画像入力部2002、表示装置2003、キーボード2004で構成される。本発明は表示装置2003やその他の信号処理回路を形成することができる。
図17(B)はビデオカメラであり、本体2101、表示装置2102、音声入力部2103、操作スイッチ2104、バッテリー2105、受像部2106で構成される。本発明は表示装置2102やその他の信号制御回路に適用することができる。
図17(C)は携帯情報端末であり、本体2201、画像入力部2202、受像部2203、操作スイッチ2204、表示装置2205で構成される。本発明は表示装置2205やその他の信号制御回路に適用することができる。
図17(D)はプログラムを記録した記録媒体(以下、記録媒体と呼ぶ)を用いるプレーヤーであり、本体2401、表示装置2402、スピーカー部2403、記録媒体2404、操作スイッチ2405で構成される。尚、記録媒体にはDVD(Digital Versatile Disc)やコンパクトディスク(CD)などを用い、音楽プログラムの再生や映像表示、ビデオゲーム(またはテレビゲーム)やインターネットを介した情報表示などを行うことができる。本発明は表示装置2402やその他の信号制御回路に好適に利用することができる。
図17(E)はデジタルカメラであり、本体2501、表示装置2502、接眼部2503、操作スイッチ2504、受像部(図示しない)で構成される。本発明は表示装置2502やその他の信号制御回路に適用することができる。
このように、本願発明の適用範囲はきわめて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。また、本実施例の電子機器は実施例1〜6のどのような組み合わせから成る構成を用いても実現することができる。
[実施形態8] 本実施形態では、実施形態1と同様なアクティブマトリクス基板で、エレクトロルミネッセンス(EL:Electro Luminescence)材料を用いた自発光型の表示パネル(以下、EL表示装置と記す)を作製する例について説明する。図18(A)はそのEL表示パネルの上面図を示す。図18(A)において、10は基板、11は画素部、12はソース側駆動回路、13はゲート側駆動回路であり、それぞれの駆動回路は配線14〜16を経てFPC17に至り、外部機器へと接続される。
図18(A)のA−A'線に対応する断面図を図18(B)に示す。このとき少なくとも画素部の上方、好ましくは駆動回路及び画素部の上方に対向板80を設ける。対向板80はシール材19でTFTとEL材料を用いた自発光層が形成されているアクティブマトリクス基板と貼り合わされている。シール剤19にはフィラー(図示せず)が混入されていて、このフィラーによりほぼ均一な間隔を持って2枚の基板が貼り合わせられている。さらに、シール材19の外側とFPC17の上面及び周辺は封止剤81で密封する構造とする。封止剤81はシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ブチルゴムなどの材料を用いる。
このように、シール剤19によりアクティブマトリクス基板10と対向基板80とが貼り合わされると、その間には空間が形成される。その空間には充填剤83が充填される。この充填剤83は対向板80を接着する効果も合わせ持つ。充填剤83はPVC(ポリビニルクロライド)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)などを用いることができる。また、自発光層は水分をはじめ湿気に弱く劣化しやすいので、この充填剤83の内部に酸化バリウムなどの乾燥剤を混入させておくと吸湿効果を保持できるので望ましい。また、自発光層上に窒化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などで形成するパッシベーション膜82を形成し、充填剤83に含まれるアルカリ元素などによる腐蝕を防ぐ構造としている。
対向板80にはガラス板、アルミニウム板、ステンレス板、FRP(Fiberglass-Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、マイラーフィルム(デュポン社の商品名)、ポリエステルフィルム、アクリルフィルムまたはアクリル板などを用いることができる。また、数十μmのアルミニウム箔をPVFフィルムやマイラーフィルムで挟んだ構造のシートを用い、耐湿性を高めることもできる。このようにして、EL素子は密閉された状態となり外気から遮断されている。
また、図18(B)において基板10、下地膜21の上に駆動回路用TFT(但し、ここではnチャネル型TFTとpチャネル型TFTを組み合わせたCMOS回路を図示している。)22及び画素部用TFT23(但し、ここではEL素子への電流を制御するTFTだけ図示している。)が形成されている。これらのTFTの内、特にnチャネル型TFTにははホットキャリア効果によるオン電流の低下や、Vthシフトやバイアスストレスによる特性低下を防ぐため、本実施形態で示す構成のLDD領域が設けられている。
例えば、駆動回路用TFT22として、図5に示すpチャネル型TFT201とnチャネル型TFT202を用いれば良い。また、画素部のTFTには、駆動電圧にもよるが、10V以上であれば図5に示す第1のnチャネル型TFT204またはそれと同様な構造を有するpチャネル型TFTを用いれば良い。第1のnチャネル型TFT202はドレイン側にゲート電極とオーバーラップするLDDが設けられた構造であるが、駆動電圧が10V以下であれば、ホットキャリア効果によるTFTの劣化は殆ど無視できるので、あえて設ける必要はない。
図1の状態のアクティブマトリクス基板からEL表示装置を作製するには、ソース配線、ドレイン配線上に樹脂材料でなる層間絶縁膜(平坦化膜)26を形成し、その上に画素部用TFT23のドレインと電気的に接続する透明導電膜でなる画素電極27を形成する。透明導電膜には酸化インジウムと酸化スズとの化合物(ITOと呼ばれる)または酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物を用いることができる。そして、画素電極27を形成したら、絶縁膜28を形成し、画素電極27上に開口部を形成する。
次に、自発光層29を形成する。自発光層29は公知のEL材料(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層または電子注入層)を自由に組み合わせて積層構造または単層構造とすれば良い。どのような構造とするかは公知の技術を用いれば良い。また、EL材料には低分子系材料と高分子系(ポリマー系)材料がある。低分子系材料を用いる場合は蒸着法を用いるが、高分子系材料を用いる場合には、スピンコート法、印刷法またはインクジェット法等の簡易な方法を用いることが可能である。
自発光層はシャドーマスクを用いて蒸着法、またはインクジェット法、ディスペンサー法などで形成する。いずれにしても、画素毎に波長の異なる発光が可能な発光層(赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層)を形成することで、カラー表示が可能となる。その他にも、色変換層(CCM)とカラーフィルターを組み合わせた方式、白色発光層とカラーフィルターを組み合わせた方式があるがいずれの方法を用いても良い。勿論、単色発光のEL表示装置とすることもできる。
自発光層29を形成したら、その上に陰極30を形成する。陰極30と自発光層29の界面に存在する水分や酸素は極力排除しておくことが望ましい。従って、真空中で自発光層29と陰極30を連続して形成するか、自発光層29を不活性雰囲気で形成し、大気解放しないで真空中で陰極30を形成するといった工夫が必要である。本実施例ではマルチチャンバー方式(クラスターツール方式)の成膜装置を用いることで上述のような成膜を可能とする。
なお、本実施例では陰極30として、LiF(フッ化リチウム)膜とAl(アルミニウム)膜の積層構造を用いる。具体的には自発光層29上に蒸着法で1nm厚のLiF(フッ化リチウム)膜を形成し、その上に300nm厚のアルミニウム膜を形成する。勿論、公知の陰極材料であるMgAg電極を用いても良い。そして陰極30は31で示される領域において配線16に接続される。配線16は陰極30に所定の電圧を与えるための電源供給線であり、異方性導電性ペースト材料32を介してFPC17に接続される。FPC17上にはさらに樹脂層80が形成され、この部分の接着強度を高めている。
31に示された領域において陰極30と配線16とを電気的に接続するために、層間絶縁膜26及び絶縁膜28にコンタクトホールを形成する必要がある。これらは層間絶縁膜26のエッチング時(画素電極用コンタクトホールの形成時)や絶縁膜28のエッチング時(自発光層形成前の開口部の形成時)に形成しておけば良い。また、絶縁膜28をエッチングする際に、層間絶縁膜26まで一括でエッチングしても良い。この場合、層間絶縁膜26と絶縁膜28が同じ樹脂材料であれば、コンタクトホールの形状を良好なものとすることができる。
また、配線16はシール材19と基板10との間を隙間(但し封止剤81で塞がれている。)を通ってFPC17に電気的に接続される。なお、ここでは配線16について説明したが、他の配線14、15も同様にしてシーリング材18の下を通ってFPC17に電気的に接続される。
ここで画素部のさらに詳細な断面構造を図19に、上面構造を図20(A)に、回路図を図20(B)に示す。図19(A)において、基板2401上に設けられたスイッチング用TFT2402は実施形態1の図5の画素TFT204と同じ構造で形成する。ダブルゲート構造とすることで実質的に二つのTFTが直列された構造となり、ゲート電極と重ならないオフセット領域が設けられたLDDを形成することでオフ電流値を低減することができるという利点がある。尚、本実施例ではダブルゲート構造としているがトリプルゲート構造やそれ以上のゲート本数を持つマルチゲート構造でも良い。
また、電流制御用TFT2403は図5で示す第1のnチャネル型TFT202を用いて形成する。このTFT構造は、ドレイン側にのみゲート電極とオーバーラップするLDDが設けられた構造であり、ゲートとドレイン間の寄生容量や直列抵抗を低減させて電流駆動能力を高める構造となっている。別な観点からも、構造であることは非常に重要な意味を持つ。電流制御用TFTはEL素子を流れる電流量を制御するための素子であるため、多くの電流が流れ、熱による劣化やホットキャリアによる劣化の危険性が高い素子でもある。そのため、電流制御用TFTにゲート電極と一部が重なるLDD領域を設けることでTFTの劣化を防ぎ、動作の安定性を高めることができる。このとき、スイッチング用TFT2402のドレイン線35は配線36によって電流制御用TFTのゲート電極37に電気的に接続されている。また、38で示される配線は、スイッチング用TFT2402のゲート電極39a、39bを電気的に接続するゲート線である。
また、本実施例では電流制御用TFT2403をシングルゲート構造で図示しているが、複数のTFTを直列につなげたマルチゲート構造としても良い。さらに、複数のTFTを並列につなげて実質的にチャネル形成領域を複数に分割し、熱の放射を高い効率で行えるようにした構造としても良い。このような構造は熱による劣化対策として有効である。
また、図20(A)に示すように、電流制御用TFT2403のゲート電極37となる配線は2404で示される領域で、電流制御用TFT2403のドレイン線40と絶縁膜を介して重なる。このとき、2404で示される領域ではコンデンサが形成される。このコンデンサ2404は電流制御用TFT2403のゲートにかかる電圧を保持するためのコンデンサとして機能する。なお、ドレイン線40は電流供給線(電源線)2501に接続され、常に一定の電圧が加えられている。
スイッチング用TFT2402及び電流制御用TFT2403の上には第1パッシベーション膜41が設けられ、その上に樹脂絶縁膜でなる平坦化膜42が形成される。平坦化膜42を用いてTFTによる段差を平坦化することは非常に重要である。後に形成される自発光層は非常に薄いため、段差が存在することによって発光不良を起こす場合がある。従って、自発光層をできるだけ平坦面に形成しうるように画素電極を形成する前に平坦化しておくことが望ましい。
また、43は反射性の高い導電膜でなる画素電極(EL素子の陰極)であり、電流制御用TFT2403のドレインに電気的に接続される。画素電極43としてはアルミニウム合金膜、銅合金膜または銀合金膜など低抵抗な導電膜またはそれらの積層膜を用いることが好ましい。勿論、他の導電膜との積層構造としても良い。また、絶縁膜(好ましくは樹脂)で形成されたバンク44a、44bにより形成された溝(画素に相当する)の中に発光層44が形成される。なお、ここでは一画素しか図示していないが、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応した発光層を作り分けても良い。発光層とする有機EL材料としてはπ共役ポリマー系材料を用いる。代表的なポリマー系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)系、ポリビニルカルバゾール(PVK)系、ポリフルオレン系などが挙げられる。尚、PPV系有機EL材料としては様々な型のものがあるが、例えば「H. Shenk,H.Becker,O.Gelsen,E.Kluge,W.Kreuder,and H.Spreitzer,“Polymers for Light Emitting Diodes”,Euro Display,Proceedings,1999,p.33-37」や特開平10−92576号公報に記載されたような材料を用いれば良い。
具体的な発光層としては、赤色に発光する発光層にはシアノポリフェニレンビニレン、緑色に発光する発光層にはポリフェニレンビニレン、青色に発光する発光層にはポリフェニレンビニレン若しくはポリアルキルフェニレンを用いれば良い。膜厚は30〜150nm(好ましくは40〜100nm)とすれば良い。但し、以上の例は発光層として用いることのできる有機EL材料の一例であって、これに限定する必要はまったくない。発光層、電荷輸送層または電荷注入層を自由に組み合わせて自発光層(発光及びそのためのキャリアの移動を行わせるための層)を形成すれば良い。例えば、本実施例ではポリマー系材料を発光層として用いる例を示したが、低分子系有機EL材料を用いても良い。また、電荷輸送層や電荷注入層として炭化珪素等の無機材料を用いることも可能である。これらの有機EL材料や無機材料は公知の材料を用いることができる。
本実施例では発光層45の上にPEDOT(ポリチオフェン)またはPAni(ポリアニリン)でなる正孔注入層46を設けた積層構造の自発光層としている。そして、正孔注入層46の上には透明導電膜でなる陽極47が設けられる。本実施例の場合、発光層45で生成された光は上面側に向かって(TFTの上方に向かって)放射されるため、陽極は透光性でなければならない。透明導電膜としては酸化インジウムと酸化スズとの化合物や酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物を用いることができるが、耐熱性の低い発光層や正孔注入層を形成した後で形成するため、可能な限り低温で成膜できるものが好ましい。
陽極47まで形成された時点で自発光素子2405が完成する。なお、ここでいうEL素子2405は、画素電極(陰極)43、発光層45、正孔注入層46及び陽極47で形成されたコンデンサを指す。図20(A)に示すように画素電極43は画素の面積にほぼ一致するため、画素全体がEL素子として機能する。従って、発光の利用効率が非常に高く、明るい画像表示が可能となる。
ところで、本実施例では、陽極47の上にさらに第2パッシベーション膜48を設けている。第2パッシベーション膜48としては窒化珪素膜または窒化酸化珪素膜が好ましい。この目的は、外部とEL素子とを遮断することであり、有機EL材料の酸化による劣化を防ぐ意味と、有機EL材料からの脱ガスを抑える意味との両方を併せ持つ。これによりEL表示装置の信頼性が高められる。
以上のように本願発明のEL表示パネルは図20のような構造の画素からなる画素部を有し、オフ電流値の十分に低いスイッチング用TFTと、ホットキャリア注入に強い電流制御用TFTとを有する。従って、高い信頼性を有し、且つ、良好な画像表示が可能なEL表示パネルが得られる。
図19(B)は自発光層の構造を反転させた例を示す。電流制御用TFT2601は図5のpチャネル型TFT201と同じ構造て形成する。作製プロセスは実施形態1を参照すれば良い。本実施例では、画素電極(陽極)50として透明導電膜を用いる。具体的には酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物でなる導電膜を用いる。勿論、酸化インジウムと酸化スズとの化合物でなる導電膜を用いても良い。
そして、絶縁膜でなるバンク51a、51bが形成された後、溶液塗布によりポリビニルカルバゾールでなる発光層52が形成される。その上にはカリウムアセチルアセトネート(acacKと表記される)でなる電子注入層53、アルミニウム合金でなる陰極54が形成される。この場合、陰極54がパッシベーション膜としても機能する。こうしてEL素子2602が形成される。本実施例の場合、発光層53で発生した光は、矢印で示されるようにTFTが形成された基板の方に向かって放射される。本実施例のような構造とする場合、電流制御用TFT2601はpチャネル型TFTで形成することが好ましい。
以上のような、本実施例で示すEL表示装置は、実施形態7の電子機器の表示部として用いることができる。
[実施形態9] 本実施形態では、図20(B)に示した回路図とは異なる構造の画素とした場合の例について図21に示す。なお、本実施例において、2701はスイッチング用TFT2702のソース配線、2703はスイッチング用TFT2702のゲート配線、2704は電流制御用TFT、2705はコンデンサ、2706、2708は電流供給線、2707はEL素子とする。
図21(A)は、二つの画素間で電流供給線2706を共通とした場合の例である。即ち、二つの画素が電流供給線2706を中心に線対称となるように形成されている点に特徴がある。この場合、電源供給線の本数を減らすことができるため、画素部をさらに高精細化することができる。
また、図21(B)は、電流供給線2708をゲート配線2703と平行に設けた場合の例である。尚、図21(B)では電流供給線2708とゲート配線2703とが重ならないように設けた構造となっているが、両者が異なる層に形成される配線であれば、絶縁膜を介して重なるように設けることもできる。この場合、電源供給線2708とゲート配線2703とで専有面積を共有させることができるため、画素部をさらに高精細化することができる。
また、図21(C)は、図21(B)の構造と同様に電流供給線2708をゲート配線2703と平行に設け、さらに、二つの画素を電流供給線2708を中心に線対称となるように形成する点に特徴がある。また、電流供給線2708をゲート配線2703のいずれか一方と重なるように設けることも有効である。この場合、電源供給線の本数を減らすことができるため、画素部をさらに高精細化することができる。図21(A)、図21(B)では電流制御用TFT2704のゲートにかかる電圧を保持するためにコンデンサ2705を設ける構造としているが、コンデンサ2705を省略することも可能である。
電流制御用TFT2403として図19(A)に示すような本願発明のnチャネル型TFTを用いているため、ゲート絶縁膜を介してゲート電極(と重なるように設けられたLDD領域を有している。この重なり合った領域には一般的にゲート容量と呼ばれる寄生容量が形成されるが、本実施例ではこの寄生容量をコンデンサ2404の代わりとして積極的に用いる点に特徴がある。この寄生容量のキャパシタンスは上記ゲート電極とLDD領域とが重なり合った面積で変化するため、その重なり合った領域に含まれるLDD領域の長さによって決まる。また、図21(A)、(B)、(C)の構造においても同様にコンデンサ2705を省略することは可能である。
尚、本実施形態で示すEL表示装置の回路構成は、実施形態1で示すTFTの構成から選択して図21に示す回路を形成すれば良い。また、実施形態7の電子機器の表示部として本実施例のEL表示パネルを用いることが可能である。