JP4527023B2 - 加工デンプン及びその製造方法、並びにミックス粉、バッター液、フライ食品 - Google Patents
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Description
打ち粉には、一般に、小麦粉(薄力粉)を用いる。バッター液には、小麦粉(薄力粉)をベースとし、それに、水と、卵・牛乳・バターなどを適宜加えたものを用いる。
例えば、出来合いのフライ食品は、衣が具材から剥がれると、見栄えが悪くなり、また、風味も低下するため、商品価値が低下する。そこで、打ち粉又はバッター液に、加工デンプンを加えることなどにより、衣と具材の結着性を高め、衣が具材から剥がれにくくする。
上述の通り、加工デンプン製造工程において、高温条件で加熱処理を行うと、加工デンプンに着色が生じ、白度が低下する。
そこで、加工デンプンの白度と、その加工デンプンを用いてフライ食品を調理した場合の衣と具材の結着性及び衣のサクサク感と、の相関性について、検討した。
その結果、大豆粉の含有量が、デンプンの含有量の0.7〜2.0重量%であり、白度が83.5〜67.5の範囲内である、加工デンプンには、衣と具材の結着性、及び、衣のサクサク感を向上させる作用があることを、新規に見出した。
従来の加工デンプン(140℃以下の加熱処理条件で作製したもの)を用いてバッター液を作製した場合、卵白や小麦粉を加えると、バッター液の粘度が低下し、調理の際に、具材にバッター液が絡み難くなるという課題があった。
それに対し、本発明に係る加工デンプンを添加することにより、卵白や小麦粉を加えてバッター液を作製する場合でも、バッター液の粘度低下を抑制できる。
本発明に係る加工デンプンの製造方法の一例について、以下、説明する。
以下、順に説明する。
この工程は、大豆粉を調製する工程であり、任意の工程である。
製造する加工デンプンの大豆臭をより低減したい場合、例えば、蒸し器で30秒〜2分間程度、加熱・蒸煮してから大豆粉を粉砕した後、水などに混合・撹拌し、加工デンプンの製造に用いる。これにより、大豆に含まれる酵素を失活させることができるため、大豆特有の青臭さを低減できる。
この工程では、大豆粉の含有量が、デンプンの含有量の0.7〜2.0重量%になるように、デンプンなどに大豆粉を混合する。デンプンと大豆粉の混合は、例えば、次のように行う。
まず、適量の水に大豆粉を添加して分散させ、分散溶液を作製する。次に、ミキサーなどにデンプンを入れ、そのデンプンに分散溶液を添加しながら、両者が均一になるように混合する。分散溶液の最終的な添加量は、デンプンの含有量の18〜24重量%になるようにする。
油脂は、高温状態において、デンプン粒表面で一部酸化して、デンプンと大豆タンパク質との結合を保護・増強する。そのため、高温処理時におけるデンプンの糊化を抑制し、衣のサクサク感を、より向上させる。
その場合、油脂の添加量は、大豆粉の含有量に対して5〜40重量%(より好ましくは10〜20重量%)程度が好ましい。
なお、油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、豚脂・牛脂及びそれらのエステル交換油、水素添加油、並びにそれらの油脂の混合油、などが挙げられる。
この工程は、前記混合工程における混合物を、高温短時間で加熱処理する工程である。
120〜150℃の間における好適な昇温速度は、0.1〜3.0℃/分、より好適には、0.5〜1.5℃/分である。
加工デンプン製造工程において、151〜165℃の高温条件を付加することにより、一時的に、絶対的な乾燥状態になる。この絶対的な乾燥状態により、デンプン結晶構造配列の一部が揃い、デンプン粒表面と大豆タンパク質との結合が進行する。それにより、フライ時において、水存在下で加熱された場合でも、デンプン粒子の膨潤が抑制されるため、衣と具材の結着性が向上する。
加えて、デンプン粒表面と大豆タンパク質との結合が進行することにより、小麦粉やデンプン単独のみの場合よりも疎水性に傾く。それにより、打ち粉又はバッター液と具材との親和性が高まるため、衣と具材の結着性が向上する。
加工デンプン製造工程において、151〜165℃の高温条件を付加することにより、急速に水分が分離し、一時的に、絶対的な乾燥状態になる。この絶対的な乾燥状態により、デンプン粒表面と大豆タンパク質との結合が進行し、デンプン粒子は大豆タンパク質によりコートされる。加えて、大豆油脂がその外側を覆い、デンプン粒子を保護する。そのため、フライ時において、高温によるデンプンの糊化が抑制され、衣のサクサク感が向上する。
この工程は、加熱処理後に、強制的に冷却する工程であり、任意である。なお、強制的に冷却しない場合は、例えば、室温条件に放置し、自然に冷却する方法などを採用してもよい。
強制的に冷却することにより、強制冷却を行わない場合よりも、加工デンプンの白度を高くでき、着色をある程度抑制できる。
この工程は、加熱した混合物を冷却後、水分含量を12〜18重量%に調整する工程である。
加水する場合、加水時の発熱温度を60℃以下に抑えながら、水分含量が、デンプン種に応じた平衡水分量を越えないようにする。
140℃以下で行う従来の加工デンプン製造方法は、乾燥時間に3〜6時間、熟成期間に2日〜1ヶ月が必要であった。それに対し、本発明に係る製造方法は、加熱処理を短時間で行うことができ、また、熟成期間を特に必要としないため、生産時間を大幅に短縮できる。従って、生産効率を高くできる。
本発明に係る加工デンプンは、水分とデンプンと大豆粉を少なくとも含有する。
デンプン種により、好適な水分含量は異なるが、デンプンの平衡水分になるように調製する。例えば、コーンスターチなどの穀類デンプンは12〜14%、馬鈴薯デンプンは16〜18%が好適である。
なお、加工デンプンの製造段階では、加熱処理を終了した後も、ある程度、白度が低下する。従って、加熱処理は、白度が、設定よりも2〜5高い状態のときに終了するほうがよい。
上述の加工デンプンは、例えば、フライ用又は打ち粉用のミックス粉、若しくはフライ用バッター液に含有させることができる。
また、フライ用バッター液の粘度を調整し又は安定させるために、増粘剤を単独で又は組み合わせて混合してもよい。増粘剤としては、例えば、α化デンプン、グアガム、キサンタンガムなどが適用可能である。
本発明に係るフライ食品は、上述の加工デンプンを含有するミックス粉又はバッター液を用いて調理した食品を全て包含し、具材や揚げ方などにより、狭く限定されない。
40℃の温水2.9Lにクエン酸三ナトリウム350gを溶解させた後、その溶液に大豆粉375gを加え、撹拌して分散させた。
次に、大豆粉を分散させた溶液を、コーンスターチ(水分含量13重量%、敷島スターチ株式会社製、以下の実施例において同じ)25kgにスプレーで吹き付けた後、リボンミキサーで30分間混合した。
次に、その混合物を、パドルドライヤー(株式会社奈良製作所製)に投入し、混合しながら、各設定温度、設定時間で、高温短時間の加熱処理を行った。
次に、加熱処理した混合物の水分含量が13重量%程度になるように調湿した。調湿の際には、スプレーで水分を加え、製品温度が60℃を超えないようにした。そして、調湿後、その混合物を粉砕し、加工デンプンを得た。
まず、作製した加工デンプン100gに、5:1の割合のグアガムとキサンタンガムを加えて混合した後、冷水200mlを加えて5分間撹拌し、バッター液を調製した。その際、グアガムとキサンタンガムの添加量を調節し、バッター液の最終粘度がB型粘度計で2,800〜3,300cps(センチポアズ、以下同じ)になるようにした。
次に、1cm厚の豚肉を、バッター液にくぐらせ、パン粉付けを行った後、170℃の油で約4分間フライした。
各表中、「衣のサクサク感」の評価は、調理したトンカツの試作品について、次の基準で行った。「×」衣がべとつきサクサク感がない、「△」衣がややべとつきサクサク感がほとんどない、「○」衣のべとつきが少なくサクサク感も少しある、「◎」衣のべとつきがなくサクサク感がある。
表中、「焦げ臭」の評価は、作製した加工でんぷんの焦げ臭について、「弱」、「中」、「強」の三段階で行った。
なお、表中の「加熱時間」は、所定温度に達した後の加熱時間を表し、所定温度に達する前の加熱時間は含まない(以下の実施例でも同じ)。
なお、本実験では、加熱処理の好適な条件は、151〜155℃で60〜150分間、155〜160℃で30〜120分間、若しくは160〜165℃で30〜105分間、のいずれかであり、より好適な条件は、155〜160℃で60〜90分間、であった。
まず、次の組成で、天ぷら粉の配合を行った。薄力小麦粉77重量部、作製した加工デンプン20重量部、粉末全卵2重量部、膨張剤1重量部。
次に、配合した天ぷら粉(計100部)に水170部を加え、衣液を作製した。
次に、短冊状に加工された冷凍ムラサキイカを、解凍後、衣付けし、170℃のサラダ油に入れ、2分間、油揚げした。
そして、出来上がった天ぷらを室温で5時間放置した後、衣と具材の結着性、及び、衣のサクサク感の評価を行った。
まず、次の組成で、唐揚げ粉の配合を行った。加熱した薄力小麦粉(商品名「KN−1」、昭和産業株式会社製)40重量部、馬鈴薯デンプン25重量部、作製した加工デンプン20重量部、食塩10重量部、調味料4重量部、香辛料1重量部。
次に、配合した唐揚げ粉(計100部)に水100部を加え、衣液を作製した。
次に、鶏もも肉(約25g)に衣付けし、175℃のサラダ油に入れ、4分間、油揚げした。
そして、出来上がった唐揚げを室温で5時間放置した後、衣と具材の結着性、及び、衣のサクサク感の評価を行った。
なお、加工デンプン作製の際の加熱温度は155〜165℃に設定した。
また、表4の結果は、加工デンプン作製時の加熱時間が30分〜60分の場合、大豆粉の添加量を、デンプン(コーンスターチ)添加量の1.5〜2.0重量%にして加工デンプンを作製し、その加工デンプンを用いてフライ食品を調理することにより、そのフライ食品における、衣と具材の結着性、及び、衣のサクサク感を向上させることができることを示す。
なお、加熱時間が150分以上の場合、作製した加工デンプンの焦げ臭が生じる場合があった。
40℃の温水に大豆粉500gとサフラワー油75gを加え、撹拌して分散させた。
次に、大豆粉を分散させた溶液を、架橋タピオカデンプン(水分含量13重量%、敷島スターチ株式会社製)25kgにスプレーで吹き付けた後、リボンミキサーで30分間混合した。
次に、その混合物を、パドルドライヤー(株式会社奈良製作所製)に投入し、混合しながら、それぞれの加熱温度及び加熱時間で、加熱処理を行った。
次に、加熱処理した混合物に、スプレーで水分を加え、水分含量が13重量%程度になるように調湿した。そして、調湿後、その混合物を粉砕し、加工デンプンを得た。
また、本実験では、加工デンプン中に、タピオカデンプンとともに油脂を含有させることにより、衣のサクサク感を、より向上させることができた。
本実験では、加熱処理条件を、それぞれ、145〜150℃、151〜155℃、160〜165℃で、60分間又は90分間(各温度に達してからの時間)、とした。また、タピオカデンプンを用いて加工デンプンを作製した場合、加工デンプンの作製は、実施例5と同様の方法により行った。
なお、対照では、薄力粉の「色相」及び「臭い」を評価し、また、豚肉に薄力粉で打ち粉をし、溶き卵に潜らせ、パン粉付けを行った後、同様にフライしたトンカツについて、「衣と具材の結着性」及び「衣のサクサク感」を評価した。
「色の度合」は、作製した加工デンプンの色を観察した結果である。
「白度」は、作製した加工デンプンの白い度合を示す数値であり、白度の値が100の場合、完全な白色であることを示す。
本実験では、白度は、ケットC−100−型光電管白度計(株式会社ケット科学研究所製)を用いて測定した。具体的には、計測器本体の試料ケースに標準板を挿入し、感度を調整した後、試料皿にサンプルを入れ、試料ケースを設置し、その分析値を読み取った。
表6は、デンプンとしてコーンスターチを用いて145〜150℃の加熱処理を行うことにより加工デンプンを作製した場合の結果を、表7は、同じくコーンスターチを用いて151〜155℃の加熱処理を行った場合の結果を、表8は、同じくコーンスターチを用いて160〜165℃の加熱処理を行った場合の結果を、表9は、タピオカデンプンを用いて151〜155℃の加熱処理を行った場合の結果を、それぞれ示す。
表中、「衣と具材の結着性」及び「衣のサクサク感」の評価は、実施例1と同様の基準で行った。
各表中、「臭い」の評価は、作製した加工デンプンについて、次の基準で行った。「×」焦げ臭又は大豆臭が強い、「△」焦げ臭又は大豆臭がある、「○」焦げ臭又は大豆臭が少ない、「◎」焦げ臭又は大豆臭がない。
なお、「衣と具材の結着性」、「衣のサクサク感」、「臭い」の各評価は、加熱処理を60分間行った場合と90分間行った場合とで、違いがなかった。
それに対し、表7〜表9に示す通り、加熱処理を151〜155℃又は160〜165℃で行った場合、大豆粉の添加量をデンプンの0.7〜2.0重量%にすると、「衣と具材の結着性」及び「衣のサクサク感」の評価が高く、加工デンプンの臭いに関する評価も高かった。
次に、加熱処理した混合物を冷却した。冷却は、次の三種類の方法により行った。(1)加熱処理した混合物を袋に入れ、放置し、冷却する(強制冷却なし、自然に調湿される)、(2)加熱処理した混合物を冷却空送設備(ホソカワミクロン株式会社製)に移し、5℃の冷風で、15分間冷却し(気流式冷却)、冷却後加水して調湿する、(3)混合撹拌機(製品名「リボコーン」、株式会社大川原製作所製)に移し、内面の温度を5℃に設定し、30分間冷却し(接触式冷却)、冷却後加水して調湿する。
そして、冷却後、出来上がった各加工デンプンの白度を、実施例1と同様の方法により測定した。
これは、打ち粉をすることにより、本発明に係る加工デンプンが具材中の水分を吸湿し、フライ時に具材から蒸発する水分の量を少なくできたためであると推測する。
まず、実施例1などと同様の方法により、加工デンプンを作製した。
次に、作製した加工デンプン100gに、5:1の割合のグアガムとキサンタンガムを加えて混合した後、冷水200mlを加えて5分間撹拌し、バッター液を予備調製した。その際、実施例1と同様、グアガムとキサンタンガムの添加量を調節し、バッター液の最終粘度がB型粘度計で2,800〜3,300cpsになるようにした。
次に、予備調製したバッター液に、小麦粉10重量%又は卵白粉0.1重量%を添加してバッター液を調製し、その直後及び3時間後に、粘度を測定した。
そして、予備調製した際のバッター粘度を基準として、小麦粉又は卵白粉を添加後における、バッター粘度の低下の割合を取得した。
「比較例1」及び「比較例2」は、従来の加工デンプン(140℃以下の加熱処理条件で作製したもの)と、小麦粉又は卵白粉とを用いて調製した、バッター液を用いた場合の結果を示す。
加工デンプン製造工程において、高温条件を付加することにより、デンプン粒表面と大豆タンパク質との結合が進行する。デンプン粒表面と大豆タンパク質との結合が進行することにより、小麦粉やデンプン単独のみの場合よりも疎水性に傾く。そして、加工デンプンの疎水的な性質が、バッター液の粘度低下を抑制する。
Claims (6)
- デンプンと大豆粉を混合する混合工程と、
その混合物を、151〜165℃で30〜150分間、混合しながら加熱処理を行う加熱処理工程と、
前記加熱処理工程の後に、加熱した混合物を強制的に冷却する冷却工程と、
水分含量を調整する調湿工程とを、少なくとも含む、
白度が83.5〜67.5の範囲内である加工デンプンの製造方法。 - 前記混合工程の前に、生大豆を蒸煮後、粉砕して大豆粉を調製する大豆粉調製工程を含むことを特徴とする請求項1記載の加工デンプン製造方法。
- 請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の製造方法で製造された白度83.5〜67.5の加工デンプン。
- 請求項3記載の加工デンプンを少なくとも含有し、フライ用と打ち粉用のいずれか一方又は両方に用いられるミックス粉。
- 請求項3記載の加工デンプンを少なくとも含有するフライ用バッター液。
- 請求項3記載の加工デンプンを少なくとも含有するフライ食品。
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