JP4518527B2 - 浸炭処理方法および浸炭処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯車やシャフト,カムなどの鋼製機械部品の表面硬化処理に用いられ、当該機械部品の耐摩耗性や疲労強度を向上させるのに利用される浸炭処理方法と、このような浸炭処理に用いられる浸炭処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
真空浸炭法は、真空に減圧された加熱室内においてワークを浸炭温度に加熱、昇温したのち、加熱室内に浸炭ガスを連続的に導入して、熱分解させ、発生する活性炭素をワークの表面に侵入させるものであり、このような真空浸炭法において浸炭むらを少なくする方法としては、加熱室への浸炭ガスの供給口(ガスインレット)を放射状、あるいは対角位置に多数設けることによって浸炭ガスを加熱室内に均等に導入することや、浸炭ガスの導入と排気とを周期的に行う方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したいずれの方法においても、浸炭ガスの流量が毎分3〜30L程度の少量であり、しかも加熱室内のガス流れに一定の方向性が生じるために、浸炭むらを完全に防止することは難しく、特に炉内におけるワークの装入密度が高い場合には、加熱室の中央部と外周部に位置するワークの間に、表面炭素濃度の差が大きくなるという問題点があり、浸炭むらに係わるこのような問題点を解消することが従来の真空浸炭処理法における課題となっていた。
【0004】
【発明の目的】
本発明は、従来の真空浸炭処理法における上記課題に着目してなされたものであって、被処理物(ワーク)表面の炭素濃度むらを少なくすることができる浸炭処理方法と、このような浸炭処理方法に用いる浸炭処理装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係わる浸炭処理方法は、 加熱室内に収納したワークを窒素雰囲気中で所定の浸炭温度まで加熱したのち、加熱室内の減圧と鎖状炭化水素ガスの供給とを交互に繰り返し、加熱室内の圧力を変動させながら浸炭させる浸炭処理方法において、0.01MPa以上の圧力の鎖状炭化水素ガスを所定容量を備えたチャージタンク内に一旦導入したのち、加熱室内に放出する構成としたことを特徴としており、浸炭処理方法におけるこのような構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0006】
本発明に係わる浸炭処理方法の実施形態として請求項2に係わる浸炭処理方法においては、加熱室内を130Pa以下に減圧したのち、前記チャージタンクから0.01MPa以上の圧力を有する鎖状炭化水素ガスを供給して加熱室内の圧力を1kPaを超える圧力に所定時間保持し、再度130Pa以下に減圧する操作を繰り返す構成とし、同じく実施の形態として請求項3に係わる浸炭処理方法においては、加熱室内に供給する鎖状炭化水素ガスの量を前記チャージタンクの圧力設定値によって定量化する構成としたことを特徴としている。
【0007】
また、本発明の請求項4に係わる浸炭処理方法においては、加熱室内の複数箇所に設けたガス供給口を介して複数のチャージタンクから鎖状炭化水素ガスを供給する構成とし、請求項5に係わる浸炭処理方法においては、各ガス供給口ごとに鎖状炭化水素ガスの供給量を設定する構成とし、請求項6に係わる浸炭処理方法においては、鎖状炭化水素ガスがアセチレン,プロピレン,プロパン,ブタン,メタンから選ばれる少なくとも1種である構成としたことを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項7に係わる浸炭処理装置は、ワークを収納し、減圧可能な加熱室に、第1のバルブを介して鎖状炭化水素ガスの供給源に接続されたチャージタンクと、第2のバルブを介してチャージタンクに接続されると共に前記加熱室内に開口するガス供給口と、前記ガスの供給源からチャージタンク内に導入される鎖状炭化水素ガスの圧力を設定する圧力設定器からなる浸炭ガス供給手段が設けてある構成とし、本発明に係わる浸炭処理装置の実施形態として請求項8に係わる浸炭処理装置においては、複数組の浸炭ガス供給手段を備えている構成としたことを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係わる浸炭処理方法においては、加熱室内のワーク(被処理物)を窒素雰囲気中で所定の浸炭温度まで加熱したのち、加熱室内の減圧と浸炭性ガスとしての鎖状炭化水素ガスの供給とを繰り返すことによって、加熱室内の圧力を比較的短いサイクルで変動させて、浸炭処理するに際して、上記浸炭性ガスを加熱室内に供給するのに所定容量を備えたチャージタンクを使用するようにしており、当該タンク内に一旦導入した鎖状炭化水素ガスを加熱室内に放出するようにしている。このとき、タンク内の鎖状炭化水素ガスは、加熱室内の圧力よりも十分に高く、具体的には0.01MPa以上の圧力に設定されているので、浸炭性ガスが加熱室内に瞬時に供給され、加熱室内の圧力変動が大きくなって浸炭むらが防止されることになる。また、請求項3に記載しているように、チャージタンク内の鎖状炭化水素ガスを所定の圧力値に設定することにより、浸炭性ガスの供給量を一定の値に定量化することができる。
【0010】
このとき浸炭性ガスとして使用する鎖状炭化水素ガスとしては、アセチレン,エチレン,プロピレン,プロパン,ブタン,メタンなどを用いることができる。また、これらのガスは必ずしも1種類のみに限定されることはなく、2種類以上の混合ガスを使用することも可能である。なお、上記の鎖状炭化水素ガスのうち、入手が容易であることに加えて、3重結合を有し、より活性で分解しやすいことから、アセチレンを使用することが望ましい。また、後述するように窒素ガスと混合した状態で使用することも可能である。
【0011】
図1は、本発明に係わる浸炭処理方法におけるヒートパターンの一例を示すものであって、まず、ワークを加熱室内に装入した状態で、加熱室内の空気を窒素に置換したのち、浸炭処理温度T1 への昇温が開始される。このときワークの加熱は大気圧(0.10MPa)の窒素雰囲気中で行われるので、雰囲気の対流や炉内ファンによる強制撹拌の効果を十分に得ることができ、加熱室内のワーク装入量が多くても速やかな昇温が可能になり、装入位置による温度むらも解消される。
【0012】
浸炭処理温度T1 については、これを高く設定することにより浸炭時間を短くすることができるが、一般に830℃から1030℃の範囲に設定される。
【0013】
炉内雰囲気温度およびワークの温度が所定の浸炭処理温度T1 に到達すると、加熱室内の窒素を真空排気して圧力P1 、例えば請求項2に記載しているように、130Pa以下の圧力P1 まで減圧させる。
【0014】
そして、チャージタンク内にあらかじめ導入された圧力Px、すなわち0.01MPa以上の圧力Pxの浸炭用鎖状炭化水素ガス、例えばアセチレンガスが加熱室内に瞬時(1〜3秒)に放出される。
【0015】
チャージタンク内の圧力がPzまで低下すると、鎖状炭化水素ガスの供給が停止され、これによって加熱室内の圧力がP2 、例えば同じく請求項2に記載しているように1kPaを超える圧力P2 に上昇する。
【0016】
当該圧力P2 に所定時間t1 、例えば零秒から10秒程保持したのち、所定時間t2 だけ再度真空排気を行い、圧力P1 まで減圧する。この間に、次の浸炭用ガスの供給に備えて、前記チャージタンク内に圧力Pxの浸炭用鎖状炭化水素ガスが導入される。
【0017】
このような操作を10回ないし数十回繰り返し、加熱室内の圧力をP1 とP2 の間で変動させることによって、浸炭用ガスを迅速に、しかも充分に加熱室内の隅々にまで行き渡らせることができ、ワークの炉内装入密度が高い場合においてもむらのない浸炭処理が可能になる。
【0018】
このとき、減圧時の圧力P1 を130Pa以下とするのは、圧力P1 が130Paを超えた場合には、加熱室内の雰囲気ガス(窒素)あるいは反応生成ガス(水素)が充分に排除されておらず、浸炭用ガスを供給したときに浸炭用ガスを炉内に装入されたロットの内部にまで充分に浸透させることができなくなる傾向があることによる。
【0019】
浸炭用ガス供給後の圧力P2 は、チャージタンクを介して加熱室内に供給される鎖状炭化水素ガスの量によって定まるものであるが、1kPaを超え、4kPa程度以下の値とすることが望ましい。これは、浸炭期の圧力P2 が1kPa以下の場合には、加熱室内の浸炭性ガスが不足すると共に、加熱室内の圧力変動幅が小さくなって、浸炭にばらつきが生じやすくなる傾向があることに基づく。
【0020】
チャージタンク内に導入する鎖状炭化水素ガスの圧力Pxについては、浸炭用ガスを加熱室内に一気に放出して、短時間のうちに大きな圧力変動を得るるために、加熱室内の圧力P1よりも十分に高い圧力とすることが必要であり、具体的には前述のように、0.01MPa以上とする。すなわち、チャージタンク内のガス圧力Pxが0.01MPaに満たない場合には、浸炭用ガスの流速が低下してガスの流れに方向性が生じるばかりでなく、ロットの内部まで浸炭用ガスが十分に行き渡らず、浸炭にばらつきが生じる傾向がある。
【0021】
また、チャージタンクは一定の容量を備えたものであるから、この圧力Pxによって、加熱室内への一回当たりの鎖状炭化水素ガス量が定まり、浸炭期の加熱室内圧力P2 が決定される。したがって、チャージタンク容量と加熱室の容量とを勘案して、加熱室内が所望の圧力P2 となるようにチャージタンク内の浸炭用ガスの圧力Pxを設定することになる。このとき、加熱室内の鎖状炭化水素ガス濃度をさほど高くすることなく、加熱室内圧力P2 を高くすることが必要な場合には、窒素ガスをあらかじめ混合した鎖状炭化水素ガスを使用するようにしてもよい。
【0022】
浸炭用ガスの供給停止時の圧力Pzについては、6kPa以上として、加熱室雰囲気のチャージタンク内への流入を防止するようになすことが望ましい。
【0023】
また、本発明に係わる浸炭処理方法においては、加熱室内に浸炭用ガスを供給するに際して、加熱室内の隅々にまでガスを均等に行き渡らせ、装入されたワークのすべてに均一な浸炭処理を施すためには、浸炭性ガスを1か所から集中的に供給するよりも、請求項4に記載しているように、それぞれに接続された複数のチャージタンクを介して複数のガス供給口から数箇所に分けて供給することが望ましい。さらには、加熱室内のワークの装入密度が高い部位に向けて多量のガスを供給することも浸炭むらを少なくする観点から望ましい。これには、請求項5に記載しているように、複数のガス供給口ごとに浸炭用ガスの供給量を設定すること、すなわちガス供給口のそれぞれに設けたチャージタンクの圧力値を個々に設定するようになすことが好ましい。
【0024】
なお、ガス供給口は、ワークの投影面積が400mm×400mm当たりに1か所以上設けることが望ましい。
【0025】
浸炭時間t3 については、目的とする浸炭層深さに応じて適宜選択されるが、一般に0.5時間〜3時間、とくに大きな浸炭層深さが必要な場合には5時間以上の処理時間が設定されることもある。
【0026】
浸炭が終了すると、拡散工程、焼入温度への降温および当該温度での温度保持工程に移行するが、拡散工程における圧力P3 は、例えば、浸炭工程に引き続いて圧力P1 (130Pa以下)と同程度の圧力下で行われる。拡散時間t4 については、通常浸炭時間t3 と同程度の時間に設定されるが、目的とする浸炭深さが浅い場合には、拡散工程を経ることなく焼入温度に降温させることもある。
【0027】
焼入温度T2 としては、ワーク素材の焼入性を考慮して、通常800〜900℃の温度に設定される。
【0028】
浸炭、拡散が終了したのち、焼入温度への降温、温度保持工程においては、昇温工程と同様、大気圧の窒素雰囲気下で行われる。なお、拡散工程から大気圧の窒素雰囲気に復圧することもある。
【0029】
焼入温度に保持されることによって、温度が均一化されたワークは油中に焼入れられる。この焼入時の雰囲気圧力P4 については、通常は大気圧で行われるが、大気圧より低い適当な圧力で焼入(減圧焼入)することもある。
【0030】
このような浸炭処理には、請求項7に記載しているように、ワークを収納する減圧可能な加熱室に、浸炭ガス供給手段、すなわち第1のバルブを介して鎖状炭化水素ガスの供給源に接続されたチャージタンクと、第2のバルブを介してチャージタンクに接続されて、加熱室内に開口するガス供給口と、チャージタンク内に導入される鎖状炭化水素ガスの圧力を設定する圧力設定器からなる浸炭ガス供給手段を設けた処理装置を使用することができる。このとき、圧力設定器によって、チャージタンク内のガス圧力がPxに達した時に第1のバルブが閉じ、チャージタンク内のガス圧力がPzに低下した時に第2のバルブが閉じるように設定されることになる。
【0031】
このような浸炭処理装置においては、請求項8に記載しているように、上記の浸炭ガス供給手段を複数組設置することにより、請求項4あるいは請求項5に記載の浸炭処理に適用することができるようになり、さらにばらつきの少ない浸炭処理が行われる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
【0033】
実施例1
図2は、本発明に係わる浸炭処理方法の実施例に用いた炉の構造を示すものであって、図に示す浸炭処理装置1は、炉本体となる加熱室2と、焼入用の油槽4を備えた前室3から主に構成されており、前室3にはトレーに載置したワークを前室3と加熱室2の間で移動させるための炉内搬送装置5と、浸炭を終えたワークを油槽4中の焼入油に浸漬するための昇降装置6を備えている。さらに、前室3には、油槽4中の焼入油を加熱するためのチューブヒータ7と、焼入油を循環させるための撹拌ファン8が設けてあると共に、図外には焼入油を冷却するための水冷装置と、焼入油の温度を検出する熱電対などを備えている。
【0034】
一方、加熱室2は、この実施例では5m3 の容量を有し、耐火物9によって内張された加熱室2の内部に加熱源としてのラジアントチューブヒータ10と、炉内温度を検出するための熱電対11と、炉内の雰囲気(窒素)を強制撹拌するためのファン12を備えており、炉内の温度を均一にしてワークの昇温を速やかなものとすることができるようになっている。
【0035】
また、加熱室2の外部には、所定量の鎖状炭化水素ガス、この実施例ではアセチレンガスを一時的に蓄えるためのチャージタンク21が設置してあり、ガス供給バルブ22(第2のバルブ:電磁弁)を介して加熱室2内に開口するガス供給口23に配管によってガス供給バルブ22に接続されている。このチャージタンク21は、元バルブ25(第1のバルブ:電磁弁)を介して図外のアセチレン源(アセチレンガスボンベ)に連結され、ガス供給バルブ22の開放によって、圧力設定器25によって設定された圧力を有するチャージタンク21内のアセチレンガスを加熱室2内に瞬時に供給できるようになっており、これらチャージタンク21、ガス供給口22、バルブ23,24、および圧力設定器25によって浸炭ガス供給手段20が構成されている。
【0036】
なお、この実施例においては、加熱室2に対して上記の浸炭ガス供給手段20が都合3基配設されており、ガス供給口23を加熱室2内にバランスよく開口させることによってアセチレンガスが加熱室2の隅々まで均等に行き渡るようにしてある。また、チャージタンク21は、それぞれ約25Lの容量を備えていると共に、圧力設定器25によってチャージタンク21内のアセチレンガス圧力がゲージ圧力で0.10MPa(Px:絶対圧力では0.20MPa)となった時に元バルブ24が閉じ、同じくゲージ圧力で0.0MPa(Pz:絶対圧力では0.10MPa)となった時にガス供給バルブ22が閉じるように設定されている。
【0037】
さらに、加熱室2および前室3は、図外にそれぞれ真空排気装置を備え、それぞれ独立して気圧制御ができるようになっていると共に、図示しないガス制御装置を介して図外の窒素源(窒素ボンベ)に連結されている。
【0038】
このような構造を備えた浸炭処理装置1を用いて、JIS G 4105に規定されるクロムモリブデン鋼SCM415からなる径16mm,高さ30mmの円柱形試験片に浸炭処理を施し、その浸炭状態を調査した。
【0039】
まず、前室3の入口側真空扉3aを開放し、前記鋼製ワークをトレーに載置した状態で前室3内に入れ、真空扉3aを閉じ、真空排気装置を作動させて前室3および加熱室2内の空気をパージしたのち、図外のガス制御装置を介して窒素ガスを導入して大気圧(101kPa)に復圧し、前室3および加熱室2内を窒素ガスに置換した。
【0040】
次に、入口側真空扉3aを閉じた状態で、前室3の内側真空扉3bおよび加熱室2の耐熱扉2aを開放すると共に、炉内搬送装置5を作動させて前記ワークをトレーと共に押し出し、加熱室2内に装入したのち、真空扉3bおよび耐熱扉2aを閉じ、撹拌用のファン12を回転させながら、加熱室2のラジアントチューブヒータ10に通電して昇温を開始した。
【0041】
加熱室2内の温度が、この実施例における浸炭温度920℃(T1 )に到達し、所定時間均熱された時点で、加熱室2内の窒素雰囲気を真空排気し、この実施例では65Pa(P1 )まで減圧したのち、各浸炭ガス供給手段20のガス供給バルブ22を同時に開くことによって、チャージタンク21内にあらかじめ導入しておいたアセチレンガス(Px=0.20MPa)をそれぞれの供給口23から加熱室2内に導入した。
【0042】
バルブ22の開放によってアセチレンガスの供給が開始された後、圧力設定器25によって、チャージタンク21内のガス圧力がゲージ圧力で0.0MPa(Pz=0.10MPa)に低下した時点で供給バルブ22が閉じ、ガス供給が停止されたのち、次回のアセチレンガス供給に備えて、元バルブ24が開かれ、チャージタンク21内の圧力がゲージ圧で0.10MPa(Px=0.20MPa)となるまで、ボンベ内のアセチレンガスがチャージタンク21内に導入される。このとき、加熱室2内とチャージタンク21内には極めて大きな圧力差があるので、チャージタンク21からのアセチレンガスの供給は、瞬時(3秒)に終了する。
【0043】
ガス供給バルブ22の開放によって、3基のチャージタンク21から、それぞれ0.20MPaのアセチレンガスが25L(合計75L、標準状態で150L)が供給されることになり、加熱室2内の圧力P2 が約1.7kPaに上昇する。
【0044】
この圧力に10秒間(t1 )保持したのち、真空排気を4分間(t2 )行い、加熱室2内を65Pa(P1 )まで減圧し、ガス供給バルブ22を開くことによって、再度チャージタンク21からアセチレンガスを供給するという操作を都合20回繰り返した(浸炭時間t3 =約84分)。
【0045】
次いで、さらに真空排気を行って、加熱室2内の圧力P3 を65MPaとすると共に、加熱室内を前記温度920℃(T1 )に90分間(t4 )保持して、炭素を拡散させたのち、加熱室2内に窒素ガスを導入して雰囲気圧力を大気圧に復圧し、焼き入れ温度850℃(T2 )に降温し、この温度に20分間(t5 )保持してワークの温度が均一になるのを待った。
【0046】
そして、内側真空扉3bおよび耐熱扉2aを開放した状態で、炉内搬送装置5を作動させて前記鋼製ワークをトレーと共に加熱室2から引き出し、昇降装置6の下降作動によって当該ワークを油槽4内に焼入れた。
【0047】
このような処理が施された鋼製ワークについて、マイクロビッカース硬度計を用いて0.3kg荷重で硬度分布を測定した結果、0.9mmの有効硬化層深さ(Hv550以上)を備えた浸炭層が形成されていることが確認された。
【0048】
また、加熱室2内における装入位置が異なる数個のワークについて同様に硬度分布を測定したところ、各ワークの浸炭層深さの差は0.1mm以下であり、むらのない均一な浸炭処理が可能であることが確められた。
【0049】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の請求項1に係わる浸炭処理方法においては、昇温後、加熱室内を減圧したのち、浸炭用ガスとして鎖状炭化水素ガスを断続的に供給して、加熱室内の圧力を変動させるに際して、チャージタンクを使用し、加熱室内の圧力よりも十分に高い0.01MPa以上の圧力の鎖状炭化水素ガスを当該タンク内に一旦導入したのち、加熱室内に放出するようにしていることから、浸炭用ガスが加熱室内に瞬時に供給され、加熱室内の圧力変動を大きくすることができ、ワークの炉内装入密度が高い場合(例えば、ワークの表面積が30m を超える量)でも、ワーク表面に浸炭用の鎖状炭化水素ガスを充分に供給することができ、浸炭むらの防止が可能になるという極めて優れた効果がもたらされる。
【0050】
本発明に係わる浸炭処理方法の一実施形態として請求項2に係わる浸炭処理方法においては、好適な処理条件として、加熱室内を130Pa以下に減圧したのち、チャージタンクから0.01MPa以上の圧力を有する鎖状炭化水素ガスを供給して加熱室内の圧力を1kPaを超える圧力に所定時間保持し、再度130Pa以下に減圧する操作を繰り返すようにしているので、加熱室内の圧力変動を大きなものとして、浸炭むらを確実に防止することができ、請求項3に係わる浸炭処理方法においては、チャージタンクの圧力を所定の値に設定することによって加熱室内に供給する鎖状炭化水素ガスの量を定量化するようにしているので、理論的に必要な浸炭用ガスを過不足なく供給することができ、過剰ガスの熱分解による炉内のスーティング発生や、ガス不足による浸炭むらを確実に防止することができる。
【0051】
また、本発明の請求項4に係わる浸炭処理方法においては、加熱室内の複数箇所に設けたガス供給口を介して複数のチャージタンクから鎖状炭化水素ガスを供給するようにしているので、浸炭用ガスを加熱室内の隅々にまで均等に行き渡らせることができ、請求項5に係わる浸炭処理方法においては、各ガス供給口ごとに鎖状炭化水素ガスの供給量を設定するようにしているので、ワークの装入密度の高い部分に浸炭用ガスを重点的に供給することができ、装入位置や装入密度の差による浸炭のばらつきを解消することができ、請求項6に係わる浸炭処理方法においては、鎖状炭化水素ガスとしてアセチレン,エチレン,プロピレン,プロパン,ブタン,メタンを使用するようにしているので、浸炭用ガスの使用量を低減でき、入手の容易さと相俟って操業時のコスト改善に優れた効果がもたらされる。
【0052】
さらに、本発明の請求項7に係わる浸炭処理装置は、第1のバルブを介して鎖状炭化水素ガスの供給源に接続されたチャージタンクと、第2のバルブを介してチャージタンクに接続されると共に加熱室内に開口するガス供給口と、チャージタンク内に導入される鎖状炭化水素ガスの圧力を設定する圧力設定器からなる浸炭ガス供給手段を備えたものであるから、上記浸炭処理を容易かつ着実に実施することができ、請求項8に係わる浸炭処理装置においては、上記浸炭ガス供給手段が複数組配設されたものであるから、浸炭用ガスを加熱室内に均等に供給したり、ワーク装入密度の高い部分に浸炭用ガスを重点的に供給したりすることができ、装入位置や装入密度による浸炭のばらつきを解消することができるという極めて優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる浸炭処理方法におけるヒートパターンおよび浸炭用ガスの供給のタイミングの一例を示す説明図である。
【図2】(a)本発明に係わる浸炭処理方法の実施例に用いた炉の構造を示す正面図である。
(b)図2(a)に示した炉の側断面図である。
【符号の説明】
1 浸炭処理装置
2 加熱室
20 浸炭ガス供給手段
21 チャージタンク
22 ガス供給バルブ(第2のバルブ)
23 ガス供給口
24 元バルブ(第1のバルブ)
25 圧力設定器

Claims (8)

  1. 加熱室内に収納したワークを窒素雰囲気中で所定の浸炭温度まで加熱したのち、加熱室内の減圧と鎖状炭化水素ガスの供給とを交互に繰り返し、加熱室内の圧力を変動させながら浸炭させる浸炭処理方法において、0.01MPa以上の圧力の鎖状炭化水素ガスを所定容量を備えたチャージタンク内に一旦導入したのち、加熱室内に放出することを特徴とする浸炭処理方法。
  2. 加熱室内を130Pa以下に減圧したのち、前記チャージタンクから0.01MPa以上の圧力を有する鎖状炭化水素ガスを供給して加熱室内の圧力を1kPaを超える圧力に所定時間保持し、再度130Pa以下に減圧する操作を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の浸炭処理方法。
  3. 加熱室内に供給する鎖状炭化水素ガスの量を前記チャージタンクの圧力設定値によって定量化することを特徴とする請求項1または請求項2記載の浸炭処理方法。
  4. 加熱室内の複数箇所に設けたガス供給口を介して複数のチャージタンクから鎖状炭化水素ガスを供給することをを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の浸炭処理方法。
  5. 各ガス供給口ごとに鎖状炭化水素ガスの供給量を設定することを特徴とする請求項4記載の浸炭処理方法。
  6. 鎖状炭化水素ガスがアセチレン,プロピレン,プロパン,ブタン,メタンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の浸炭処理方法。
  7. ワークを収納し、減圧可能な加熱室に、第1のバルブを介して鎖状炭化水素ガスの供給源に接続されたチャージタンクと、第2のバルブを介してチャージタンクに接続されると共に前記加熱室内に開口するガス供給口と、前記ガスの供給源からチャージタンク内に導入される鎖状炭化水素ガスの圧力を設定する圧力設定器からなる浸炭ガス供給手段が設けてあることを特徴とする浸炭処理装置。
  8. 複数組の浸炭ガス供給手段を備えていることを特徴とする請求項7記載の浸炭処理装置。
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