以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態および実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。実施形態や変形例等に亘り、同一の機能および形状等を有する部材や構成部品等の構成要素については、同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がないものは適宜断わりなく省略することがある。
まず、図1等を参照して、本発明の一実施形態を適用した両面印刷装置の一例としての両面孔版印刷装置200の全体構成について説明する。両面孔版印刷装置200は、図1に示すように、図1の左側上方に配置されロール状に巻かれたマスタ8を製版する製版部15と、図1における略中央部に配置され製版されたマスタ(以下、「製版済みマスタ」という)を外周面に巻装する版胴1、版胴1上の製版済みマスタにインキを供給する後述するインキ供給手段および版胴1の外周面に対して接離自在であり該版胴1上の製版済みマスタに用紙36(シート上記録媒体の一例)を押し付ける押圧手段としてのプレスローラ21等を有する印刷部16と、版胴1を挟んで製版部15に対向して配置され版胴1上の使用済みマスタを剥離・排版する排版部17と、この排版部17の下方に配置され給紙台としての給紙トレイ35上の用紙36を印刷部16に向けて給送する給紙部30と、この給紙部30に対向して製版部15の下方に配置され印刷された用紙36を版胴1から剥離して排紙台としての排紙トレイ172に排出する排紙部19と、図14に示すように、版胴1、製版部15および排版部17(図14では共に省略している)が配設された装置本体としての本体フレーム130の上部に配置され原稿受け台134上から移送される原稿133の画像または読取部としてのコンタクトガラス135上に載置された図示しない原稿等の画像を読み取る画像読取部18とを具備している。
さらに、両面孔版印刷装置200は、印刷部16で後述するようにその表面に印刷画像を形成された表面印刷済み用紙を一時的に保持した後、該表面印刷済み用紙をプレスローラ21に向けて送り出しプレスローラ21で反転させて印刷部16に向けて再給紙する再給紙部48と、印刷部16を通過した用紙(表面印刷済み用紙または両面印刷済み用紙)を再給紙部48または排紙部19に案内する切換手段としての切換ガイド46等とを具備している。
再給紙部48は、図1ないし図4に示すように印刷部16でその表面に印刷画像を形成された表面印刷済み用紙を一時的に保持し、その後に該表面印刷済み用紙をプレスローラ21に向けて送り出しプレスローラ21で反転させて印刷部16に向けて再給紙する再給紙手段45と、図1ないし図4、図8および図9に示すように印刷部16から送り出された表面印刷済み用紙の先端を印刷部16近傍の第1の位置としての移動位置P1付近で挟持し、移動位置P1よりも低い再給紙手段45の上流側近傍の第2の位置としての初期位置P2(もしくは待機位置P2)で表面印刷済み用紙の先端を開放する用紙挟持手段としての移動ガイド81と、図8に示すように移動位置P1と初期位置P2との間で移動ガイド81を往復動させる移動手段87と、図9に示すように移動ガイド81が移動位置P1を占めた時、移動ガイド81をして一旦開放させた後、表面印刷済み用紙の先端を挟持するように作動させ、移動ガイド81が初期位置P2を占めた時、移動ガイド81をして表面印刷済み用紙の先端を開放するように作動させる作動時機制御手段を構成する解除カム98および解除ピン99等とを具備している。
両面孔版印刷装置200は、上述したように、単一のインキ供給手段、単一の版胴1および単一のプレスローラ21を有して構成されており、後述するとおり版胴1の1回転で用紙の両面に印刷が可能な1版胴1押圧手段両面印刷方式を採用している。上述した製版部15、印刷部16、排版部17、給紙部30、排紙部19、画像読取部18、再給紙手段45、移動ガイド81、移動手段87、上記作動時機制御手段および切換ガイド46は、それぞれ後述するように装置としての構成を具備している。
製版部15は、マスタ8に製版を行い、図10に示すように、版胴1の回転方向(用紙搬送方向X、マスタ搬送方向X1でもある)に沿って表面印刷用の第1の製版画像8A(以下、「表面製版画像8A」と言い替える)と裏面印刷用の第2の製版画像8B(以下、「裏面製版画像8B」と言い替える)とを有する分割製版済みマスタ8X、あるいは同図に示すように、版胴1の回転方向に沿って表面製版画像8Aと裏面製版画像8Bとの2面分の画像量域を有する第3の製版画像8YA(以下、「片面製版画像8YA」と言い替える)を有する製版済みマスタ8Yを作製する機能・構成を有する。表面製版画像8Aは、分割製版済みマスタ8Xが版胴1の外周面上に巻装されたときに図1に示す表面領域1Aと対応する位置に形成され、裏面製版画像8Bは同裏面領域1Bと対応する位置に形成される。
図1および図10等において、製版済みマスタ8Yには括弧を付して示すことにより、分割製版済みマスタ8Xと区別する。図10において、製版済みマスタ8Yに形成された片面製版画像8YAの領域範囲を二点鎖線で示し、マスタ搬送方向X1の同領域範囲の境界線が表面製版画像8Aおよび裏面製版画像8Bの実線と重なるため、その領域範囲を少し大きめに図示しているが、片面製版画像8YAの領域範囲は、表面製版画像8A、裏面製版画像8Bおよびこれらの中間に位置する未製版の空白領域である中間未製版領域8Cを合わせた全範囲である。なお、図10においては、表面製版画像8A、裏面製版画像8B、中間未製版領域8C、片面製版画像8YAは、スケールアウトして描かれており、特に中間未製版領域8Cはマスタ搬送方向X1に誇張拡大して描いてある。
製版部15は、マスタ8をマスタ搬送方向X1に繰り出し可能に支持するマスタ支持手段としてのマスタ支持部材8cと、繰り出されたマスタ8を画像情報に応じて加熱製版するサーマルヘッド11と、サーマルヘッド11にマスタ8を押圧しながらマスタ搬送方向X1下流側にマスタ8を回転しながら搬送するマスタ搬送手段としてのプラテンローラ9と、プラテンローラ9により搬送されて来たマスタ8を適度の張力を付与しながらさらにマスタ搬送方向X1下流側に搬送するマスタ搬送手段としての搬送ローラ対13と、プラテンローラ9と搬送ローラ対13との間に配設され製版済みのマスタ8または未製版のマスタ8を所定の長さに切断するカッタ12と、プラテンローラ9および搬送ローラ対13により搬送されてきたマスタ8の先端を後述するように版胴1上の拡開したクランパ7に案内するマスタガイド板14等とを具備する。
マスタ8は、連続シート状をなし、合成樹脂製のロール芯8bに巻き付けられてマスタロール8aが形成される。ロール芯8bは、マスタロール8aの両端面から突出していてマスタ8の幅よりも長く形成されている。マスタロール8aは、両端側のロール芯8bがマスタ支持部材8cにより反時計回りに回転自在に支持されていて、マスタ支持部材8cに対して着脱自在となっている。両端側のマスタ支持部材8cは、製版部15におけるマスタ搬送方向X1に沿ってその左右両側に配設されている図示しない製版側板対に取り付け固定されている。したがって、マスタ8は、マスタ支持部材8cによって、マスタロール8aからマスタ搬送方向X1に繰り出し可能に支持されている。
マスタ8は、例えば厚さが1〜5μmの熱可塑性樹脂フィルムと、合成繊維等からなる多孔質支持体とを貼り合わせたラミネート構造をなす。なお、マスタは、これに限らず、例えば和紙繊維、あるいは和紙繊維および合成繊維を混抄したもの等からなる多孔質支持体と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせたものや、いわゆる実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ等も用いられる。
サーマルヘッド11は、プラテンローラ9のプラテンローラ軸と図1の紙面の手前側および奥側に平行に延在して設けられていて、図示しないカムおよびバネ部材等を備えた接離機構により、マスタ8を介してプラテンローラ9に接離自在となっている。サーマルヘッド11は、上記バネ部材によりプラテンローラ9に接触する向きに付勢されている。サーマルヘッド11の主走査方向には、プラテンローラ9にマスタ8を介して当接する部位に多数の発熱素子(図示せず)が配設されている。サーマルヘッド11は、共に図示しないA/D変換部および画像信号処理部等を経て、製版制御装置およびサーマルヘッド駆動回路(共に図示せず)で処理されて送出されるデジタル画像信号に基づき上記発熱素子を選択的に加熱することにより、マスタ8を選択的に加熱溶融穿孔・製版する製版手段としての周知の機能を有する。
プラテンローラ9は、金属製の芯金を介してプラテンローラ軸と一体的に形成されている。プラテンローラ9は、プラテンローラ軸の両端部が上記製版側板対に回転可能に支持されていることにより、時計回りに回転自在となっている。プラテンローラ9は、タイミングベルトやギヤ等の回転伝達部材(図示せず)を介してマスタ搬送駆動手段としてのマスタ搬送モータ10に連結され、これにより時計回りに回転駆動される。マスタ搬送モータ10は、例えばステッピングモータからなる。上記構成のとおり、プラテンローラ9がマスタ搬送モータ10により時計回りに回転駆動されることにより、マスタ8はマスタロール8aから引き出されることとなる。
搬送ローラ対13は、バネ等の付勢手段により適度な押圧力を与えられて互いに圧接して設けられていて、各ローラ軸の両端部が上記製版側板対に回転自在に支持されていることにより互いに反対方向に回転自在となっている。搬送ローラ対13は、マスタ搬送モータ10を含む上記回転伝達部材によって、プラテンローラ9の周速度(搬送速度)よりもわずかに速い周速度(搬送速度)で回転するように設定されていて、マスタ8との間で滑りながら適度のフロントテンションをマスタ8に付与するようになっている。
カッタ12は、固定刃12bおよび可動刃12aを備えたギロチンタイプの公知のものである。カッタ12は、上記ギロチンタイプに限らず、可動刃がマスタ搬送方向X1と直行するマスタ幅方向に回転しながら移動する回転刃移動タイプのものを用いてもよい。
マスタ搬送モータ10を介してのプラテンローラ9および搬送ローラ対13周りの駆動系は、例えば本願出願人が提案した特開平11−77949号公報の図2に示されている回転伝達機構と略同様の機構を採用している。製版部15は、製版済みのマスタ8を版胴1に搬送して巻装することが可能な給版手段を構成する構成要素を含んでいる。給版手段としては、製版部15のプラテンローラ9、搬送ローラ対13、マスタガイド板14、後述する版胴1のクランパ7、このクランパ7を開閉駆動する図示しない開閉装置および版胴1を回転駆動するメインモータ20等が含まれる。
製版部15は、未製版のマスタ8を版胴1に搬送して巻装することが可能な無製版給版手段も兼用して構成されている。無製版給版手段としては、製版部15のサーマルヘッド11は必須の構成要素ではない。無製版給版手段としては、後述する版胴1のクランパ7、上記開閉装置およびメインモータ20等が含まれる。
図16に示すように、製版部15において、サーマルヘッド駆動回路(図示せず)によって駆動されるサーマルヘッド11、マスタ搬送モータ10を含む製版部15の制御対象駆動手段を総括的に製版駆動手段124とする。
版胴1は、多孔性で円筒状の支持円筒体と、その支持円筒体の外周を覆うように複数層巻き付けられた樹脂あるいは金属網体製のメッシュスクリーン(図示せず)との2層構造からなる。版胴1は、インキ通過性の多数の開孔が開けられた印刷可能な開孔部1a(以下、「画像形成領域」というときがある)と、クランパ7等が設けられていて非印刷可能な非開孔部(以下、「非画像形成領域」というときがある)とが、図1中矢印で示す版胴1の回転方向に沿って形成されている。上記画像形成領域は、図1中の版胴1における第1の画像領域1A(以下、「表面領域1A」という)と、中間領域1Cと、第2の画像領域1B(以下、「裏面領域1B」という)とを少なくとも含む領域である。
版胴1は、図示しない端板フランジの外周部に巻着・固設されていて、後述するインキパイプ5を兼ねる支軸5の周りに回転自在に支持されている。版胴1の大きさは、実施例的に言えば、例えば片面印刷時において最大でA3サイズの用紙36に印刷を行ってA3サイズの印刷物を得ることが可能な大きさ、すなわちA3サイズの1版のマスタ8を巻装可能な大きさを有しており、その外周直径が180mm(版胴1の外周長としては約565mm)に、その幅方向(回転中心軸線方向)の寸法が350mmに設定されている。
版胴1は、図示しないギヤやベルト等の駆動伝達手段を介して版胴駆動手段としてのメインモータ20に連結されていて、メインモータ20により図1中矢印方向(時計回り)に回転駆動される。メインモータ20としては、例えば制御用のDCモータが使用されている。メインモータ20の出力軸には、光学式のロータリエンコーダ(図示せず)とこれを挟み付けて該ロータリエンコーダとの協働作用によりパルスを発生する版胴センサ(図示せず)が設けられている。この版胴センサは、発光部および受光部を具備する透過型の光学センサ(以下、単に「透過型の光学センサ」という)からなり、版胴1の回転速度(印刷速度)の制御や回転位置の割り出し等のために用いられる。
版胴1の内部には、図示しない側板に回転自在に支持されていて、図示しないギヤ等の駆動伝達手段によりメインモータ20の回転駆動力が伝達されて版胴1と同期して図中矢印方向(時計回り)に回転駆動され、版胴1の内周面に接触してインキを供給するインキローラ2と、インキローラ2とわずかな間隙を置いて平行に配置されインキローラ2との間に断面楔状のインキ溜まり4を形成するドクタローラ3と、インキ溜まり4へインキを供給するインキパイプ5とが配置されている。インキローラ2、ドクタローラ3およびインキパイプ5が版胴1上の分割製版済みマスタ8Xや製版済みマスタ8Yにインキを供給するインキ供給手段を構成しており、本実施形態では該インキ供給手段は単一のものとなっている。
インキ溜まり4のインキは、版胴1の外部に設けられた図示しないインキパック等より図示しないインキポンプで吸引され、インキパイプ5の供給孔より供給されて混練される。インキ溜まり4のインキは、ドクタローラ3により計量されながらインキローラ2の外周面上に薄膜状に供給され、さらにインキローラ2の外周面が版胴1の上記支持円筒体内周面に接触することにより版胴1の開孔部1a部分に供給される。
版胴1の上記非開孔部外周面上の一部分には、版胴1の一つの母線に沿って設けられた強磁性体製のステージ6と、このステージ6の両側端に設けられたクランパ軸に回動自在に取り付けられ、ステージ6の平面部に対して開閉自在なゴム磁石を有するクランパ7とがそれぞれ設けられている。クランパ7は、本体フレーム側に設けられた開閉装置(図示せず)により所定位置において開閉される。版胴1は、クランパ7が図1に示す略真上に位置する状態、すなわち給版待機位置において停止されるようになっている。版胴1は、上記インキパックや上記インキポンプ等と一体的になされた版胴ユニットとして構成されており、両面孔版印刷装置200の本体フレームに対してインキパイプ5の軸線方向に挿脱(着脱)自在になっている。
図1において紙面奥側の版胴1の端板フランジおよびこの端板フランジ近傍の本体フレーム側には、図11に示すように、版胴1の回転位置を検出することにより給紙部30の図1および図12に示す給紙モータ37およびレジストモータ41への起動(スタート)・トリガ情報を与える構成要素が配設されている。すなわち、図11に示すように、版胴1における奥側の上記端板フランジの外側壁には、給紙開始用遮光板121とレジスト開始用遮光板122とが版胴1の同円周上に所定の間隔をおいてそれぞれ所定の位置に取り付けられている。
一方、各遮光板121,122近傍の本体フレーム側には、給紙開始用遮光板121とレジスト開始用遮光板122とが取り付けられている版胴1の同円周上に対向してこれらを挟む態様で、給紙レジストセンサ120が取り付けられている。給紙レジストセンサ120は、透過型の光学センサである。
本実施形態では、版胴1のホームポジション(初期位置)は、そのクランパ7が略真上に位置して製版部15から搬送されてくる分割製版済みマスタ8Xや製版済みマスタ8Yの先端部を受け取り保持する位置である給版待機位置と同様の位置に設定されている。版胴1における奥側の上記端板フランジ外側壁の所定位置には、版胴1のホームポジションを検出するための図示しないホームポジション用遮光板が取り付けられている。該ホームポジション用遮光板近傍の本体フレーム側には、版胴1の上記ホームポジション用遮光板に対向してこれを挟む態様で、ホームポジションセンサ(図示せず)が取り付けられている。該ホームポジションセンサは、透過型の光学センサである。
図16において、上記版胴センサ、給紙レジストセンサ120および上記ホームポジションセンサを、版胴1の回転位置を検出する版胴位置検知手段としての版胴位置検知センサ29と総称する。
インキローラ2に対向する版胴1の外周面の下方近傍には、単一のプレスローラ21が配設されている。プレスローラ21は、金属製のプレスローラ軸21aに弾性体を一体的に固着して構成されており、版胴1の軸方向に延在して設けられている。プレスローラ21は、その横幅が版胴1の横幅と略同じ長さとなるように形成されている。プレスローラ21は、図2ないし図4に示すように、プレスローラ軸21aの両端部を介して、紙面の手前側および奥側に配設された押圧手段支持部材としての一対の印圧アーム22,22(紙面の手前側は省略されていて、以下、「一対の印圧アーム22」と記載する)によって回転自在に支持されている。
各印圧アーム22は、紙面の手前側および奥側において略同様の形状および同一の位相をもって配設されている。各印圧アーム22は、その曲折部近傍の部位に取り付け固定されたアーム軸22aおよび図示しない連結補強部材によってそれぞれ一体化されている。図に表されている印圧アーム22の下端部には、後述する係止部材60の係止爪60aと選択的に係合する切欠22bが形成されている。アーム軸22aは、本体フレーム側に固設された図示しない一対の筐体側板(図8の筐体側板対130a,130b参照)の間に軸受(図示せず)を介して所定角度回動自在に支持されている。
プレスローラ21は、耐油性を有する弾性体である例えばニトリルゴム(NBR)またはシリコーンゴム(Q)で形成されていて、少なくとも該ゴムの外周表面には、微細な凹凸状の表面処理を施されたフィルムとしての、例えばオフセット印刷機などで印刷物の汚れ防止等に用いられていると同様の例えばガラス質微粒子としてのガラスビーズが均一に被覆または接着されている。ガラス質微粒子に限らず、セラミック質微粒子であってもよい。これにより、版胴1の外周表面または該版胴1上の分割製版済みマスタ8Xや製版済みマスタ8Yと接触したときや、図4を参照して後述するように表面印刷済み用紙36aの印刷画像面側のインキと接触することによる膨潤およびインキ汚れが最小となるように構成されている。例えば図17や図18に示したようなクリーニングローラ226(クリーニング手段)を配設したような場合であってガラス質微粒子やセラミック質微粒子による上述した程の顕著な印刷物の汚れ防止を望まなくてもよいのであれば、上記耐油性を有する弾性体で形成されたプレスローラ21の外周表面は、例えばフッ素ゴム(FKM)やポリテトラフルオロエチレン樹脂等の撥インキ性かつ耐油性を有する被膜を平滑にコーティングしたものであってもよい。
プレスローラ21は、後で詳述する図2ないし図4に示す印圧範囲可変手段28、係止手段64および各印圧アーム22を介して、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xまたは製版済みマスタ8Yに未印刷の用紙36や表面印刷済み用紙36aを押し付ける図3および図4に示す印刷位置とこの印刷位置から離れた図1および図2に示す非印刷位置(初期位置でもある)との間で変位自在に構成されている。上記のとおり、押圧手段支持部材としての一対の印圧アーム22は、押圧手段としてのプレスローラ21を回転自在に支持し、かつ、プレスローラ21を版胴1に対して接離自在とすべく変位可能に構成されている。印圧範囲可変手段28は、押圧手段接離手段としてのプレスローラ接離機構とも呼ばれることがある。
図2において、符号54は、プレスローラ21を回転駆動する押圧手段駆動手段としてのプレスローラ回転駆動手段を示す。プレスローラ回転駆動手段54は、プレスローラ21を、版胴1の周速度と略同じ周速度で版胴1の回転方向と反対方向(反時計回り)に回転駆動する駆動手段としてのプレスローラ駆動モータ55と、プレスローラ駆動モータ55の回転駆動力をプレスローラ21に伝達する駆動力伝達手段とから主に構成される。プレスローラ駆動モータ55は、図2における紙面奥側の印圧アーム22の外側壁に取り付け固定されている。
上記駆動力伝達手段は、図2に示すように、プレスローラ駆動モータ55の出力軸55aに固着された歯付きの駆動プーリ56と、印圧アーム22のさらに紙面の奥側に突き出たプレスローラ軸21aに固着された歯付きの従動プーリ57と、駆動プーリ56と従動プーリ57との間に掛け渡された歯付きの無端ベルト58とを具備している。
プレスローラ21は、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xまたは製版済みマスタ8Yに未印刷の用紙36または表面印刷済み用紙36aあるいは片面印刷済み用紙36cを圧接するタイミングに合わせて、プレスローラ駆動モータ55により回転駆動されるようになっている。プレスローラ駆動モータ55の作動は、図16に示す制御装置100によって制御される。上記駆動力伝達手段を介してのプレスローラ駆動モータ55の回転速度の制御は、上述したようにプレスローラ21の周速度が版胴1の周速度と略同じになるようになされる。本実施形態の例によれば、プレスローラ21がプレスローラ駆動モータ55によって版胴1の周速度と略同じ周速度で回転駆動されるので、印刷画像位置ずれのない良好な印刷物を得ることができる。
各印圧アーム22間には、再給紙手段45を構成する上記プレスローラ21の他、再給紙ローラ部材としての再給紙ローラ51、再給紙案内部材としてのローラガイド板50等が配設されている。すなわち、再給紙手段45は、印刷部16でその表面に印刷画像を形成された表面印刷済み用紙36aを一時的に保持し、その後に表面印刷済み用紙36aをプレスローラ21と再給紙ローラ51との間に向けて所定のタイミングを取って送り出す再給紙搬送装置104と、再給紙搬送装置104により送り出されてきた表面印刷済み用紙36aをその外周表面に保持して版胴1に回転搬送するプレスローラ21と、プレスローラ21の下側において該プレスローラ21の外周面に当接して設けられた再給紙ローラ51と、プレスローラ21の右側においてプレスローラ21外周面に近接して設けられた湾曲したローラガイド板50とから主に構成されている。
再給紙搬送装置104は、図1ないし図4に示すように、移動ガイド81の往復動する軌跡下方であって再給紙ローラ51の左側近傍に延在して配置されている。再給紙搬送装置104は、図2ないし図4に詳しく示すように、後述する駆動軸107aおよび従動軸106aを回転自在に支持する再給紙筐体110と、駆動軸107aに一体的に設けられた駆動ローラとしての搬送ローラ後107と、駆動軸107aよりも用紙搬送方向Xの上流側であって再給紙ローラ51の近傍に配置された従動軸106aに一体的に設けられた従動ローラとしての搬送ローラ前106と、搬送ローラ後107と搬送ローラ前106との間に巻き掛け・張設され、移動ガイド81より受け渡される表面印刷済み用紙36aを保持して搬送する無端ベルトとしての空気吸引用の複数の孔(図示せず)が形成された搬送ベルト108と、駆動軸107aにギヤやベルト等の駆動力伝達手段を介して連結され搬送ローラ後107の回転駆動を介して搬送ベルト108を回転駆動するベルト駆動手段としてのベルト駆動モータ105と、移動ガイド81より受け渡される表面印刷済み用紙36aを上記複数の孔から空気を吸引することにより搬送ベルト108の上面側に吸着・保持させるための吸引ファン109とから主に構成されている。
再給紙筐体110は、その上面が開放され、その幅が各印圧アーム22間の間隔よりも若干小さくなるように形成されていて、側断面で概略コ字形状をなす。再給紙筐体110の下面壁は、吸引ファン109による空気流を下方に逃がすための図示しない多数の孔あるいはスリットが形成されている。再給紙筐体110は、その用紙搬送方向上流側および下流側の両側面に図示しない軸受を有しており、これらの軸受は、駆動軸107aおよび従動軸106aをそれぞれ回転自在に支持している。駆動軸107aは、その両端部が再給紙筐体110の両側面を貫通しており、この貫通した駆動軸107aの両端部は、上記本体フレームに設けられた図示しない軸受部材によって回転自在に支持されている。
駆動軸107aの一端(例えば図2ないし図4の紙面の奥側)には、図示しない駆動ギヤが取り付けられており、駆動軸107aは、その駆動ギヤを介して連結されたベルト駆動モータ105によって回転駆動される。搬送ベルト108は、図16に示す制御装置100からの指令信号に基づくベルト駆動モータ105の作動によって、後述するように所定のタイミングで断続的に時計回りに回転駆動される。ベルト駆動モータ105は、上記本体フレーム側に固定して設けられている。従動軸37aは、その両端部が再給紙筐体110の両側面を貫通しないようになされている。
再給紙筐体110における用紙搬送方向Xの上流側端部の両側面外側には、ボス111がそれぞれ一体的に設けられており、各ボス111は各印圧アーム22に形成された図示しない長孔形状の逃げ孔にそれぞれ緩く嵌合されている。この構成により、再給紙筐体110は、後述する印圧範囲可変手段28によりプレスローラ21が版胴1に対して接離される際に、各印圧アーム22の揺動に伴って駆動軸107aを中心とした揺動が可能となっている。
再給紙筐体110における用紙搬送方向Xの上流端部には、図2ないし図4に示すように、搬送ベルト108によって表面印刷済み用紙36aがプレスローラ21の外周面と再給紙ローラ51との間に搬送されるとき、表面印刷済み用紙36aの後端がプレスローラ21近傍の所定位置で一時保持されるように検知するための表面印刷済み用紙検知手段としての再給紙センサ52が配設されている。再給紙センサ52は、反射型の光学センサからなり、表面印刷済み用紙36aの後端(図4に示す表面印刷済み用紙36aの右端)および前端(図4に示す表面印刷済み用紙36aの左端)を検知する機能も有する。
搬送ローラ後107および搬送ローラ前106は、串刺し状に分割されていて例えば歯付きのローラからなり、高摩擦材料で形成されている。ちなみに、搬送ローラ後107および搬送ローラ前106は、例えばニトリルゴム(NBR)や適宜の樹脂等の耐油性(耐インキ腐食性)を有する高摩擦材料で形成することが望ましい。搬送ベルト108は、例えば歯付きベルトからなり、複数本のものが串刺し状に分割された搬送ローラ後107と搬送ローラ前106との間にそれぞれ巻き掛けられ張設されている。ちなみに、搬送ベルト108は、耐油性(耐インキ腐食性)を有する弾性体である例えばニトリルゴム(NBR)またはシリコーンゴム(Q)で形成することが望ましい。
吸引ファン109には、移動ガイド81より受け渡される表面印刷済み用紙36aを搬送ベルト108に開けられた上記複数の孔から空気を吸引することにより搬送ベルト108の上面側に吸着させるように吸引ファン109を回転駆動するファン駆動手段としてのファン駆動モータが内蔵されている。以下、上記ファン駆動モータのことを単に「吸引ファン109」という。
再給紙ローラ51は、図4に示すように、表面印刷済み用紙36aが再給紙搬送装置105の搬送ベルト108に一時的に吸着・保持された後、搬送ベルト108によって搬送される表面印刷済み用紙36aをプレスローラ21の外周面の間に押し付けて従動回転・搬送する機能を有する。再給紙ローラ51は、串刺し状に分割された複数のローラからなり、軸51aと一体的に形成されている。再給紙ローラ51は、プレスローラ21の下側においてその外周面がプレスローラ21の外周面に圧接した状態で配置されており、軸51aの両端部が各印圧アーム22間に回転自在に支持されていることにより、プレスローラ21の回転力を受けてプレスローラ21の回転方向(反時計回り)と反対方向(時計回り)に従動回転する。
ローラガイド板50は、プレスローラ21の回転力によって搬送される表面印刷済み用紙36aをプレスローラ21の外周面に当接させて版胴1に向けて案内する機能を有する。ローラガイド板50は、表面印刷済み用紙36aをプレスローラ21の外周面に沿わせて案内するためにプレスローラ軸21aを中心とした湾曲した部分円筒形状をなし、プレスローラ21の外周面と所定の隙間を開けて各印圧アーム22間に固着されている。ローラガイド板50における表面印刷済み用紙36aの案内面側は、表面印刷済み用紙36aに対して摩擦係数が低く、かつ、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の撥インキ性かつ耐油性を有する被膜が平滑にコーティングされている。
図16において、再給紙手段45の制御対象駆動手段としては、プレスローラ駆動モータ55、ベルト駆動モータ105、吸引ファン109等が含まれる。再給紙手段45の諸検知手段としては、再給紙センサ52等が含まれる。
次に、プレスローラ21の印圧範囲を決定している印圧範囲可変手段28周りの構成について詳述する。本実施形態では、図1および図10に示すように、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aに対応した表面領域1Aのみに印圧を付与する第1の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIと、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応した裏面領域1Bのみに印圧を付与する第2の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIIと、版胴1上の製版済みマスタ8Yにおける片面製版画像8YAに対応して表面領域1Aから続けて裏面領域1Bに亘って印圧を付与する第3の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIIIとの少なくとも3つの印圧範囲パターンのうちの一つを選択的に切り換え可能になっている。これら3つの印圧範囲パターンのうちの一つを選択的に切り換える印圧範囲可変手段28に係る機構が、図2ないし図7に示されている。印圧範囲可変手段28は、プレスローラ21を印刷位置と非印刷位置との間に変位させるための構成・機能も有する。
印圧範囲可変手段28は、上記したアーム軸22a、上記した印圧アーム対22、一対のカムフォロア24,24(以下、「一対のカムフォロア24」と記載する)、一対の印圧バネ25,25(以下、「一対の印圧バネ25」と記載する)、印圧カム軸26、一対の印圧カム27,27(以下、「一対の印圧カム27」と記載する)、一対の間欠カムギヤ65,65(以下、「一対の間欠カムギヤ65」と記載する)、一対の間欠カム駆動ギヤ66,66(以下、「一対の間欠カム駆動ギヤ66」と記載する)、一対の間欠カム67,67(以下、「一対の間欠カム67」と記載する)、間欠カム軸68、クラッチギヤ70、クラッチ胴71、スリーブ72、スプリングクラッチ73、カム駆動軸74、カム駆動ギヤ75、ストッパ76、第2ソレノイド77、スプリング78から主に構成される。
印圧範囲可変手段28を構成している上記構成要素は、図2ないし図4に示すように、プレスローラ21の均一な押圧力を版胴1の外周面に付与すべく、基本的にプレスローラ21における図1より見て紙面の手前側および奥側にそれぞれ配設されている(紙面の手前側は省略している)ので、紙面の奥側の構成要素を代表して説明することにより紙面の手前側の説明を省略する。なお、印圧範囲可変手段28は、上述したような利点をそれ程望まなくてもよいのであれば、印圧範囲可変手段28を構成する上記構成要素は、例えば図1ないし図4の紙面の奥側のみに配設しても勿論構わない。
図2ないし図4に示すように、プレスローラ21が支持されている印圧アーム22の内側と対向する印圧アーム22の略中央の奥側外壁には、カムフォロア24が回動自在に軸を持って保持されている。カムフォロア24は、後述するように2枚の例えば板カムからなる印圧カム27および間欠カム67と当接することができるように紙面の奥側に長い転がり軸受で構成されている。印圧アーム22の他端部側には、プレスローラ21を常に版胴1の外周面に圧接する向きに付勢する印圧バネ25(引張バネ)の一端が係止され、印圧バネ25の他端は上記筐体側板側に係止されている。この印圧バネ25により、印圧アーム22の他端側は、アーム軸22aを中心として時計回りに揺動する向きに付勢されている。印圧アーム22の他端部には、後述する係止部材60の係止爪60aと係合可能な切欠22bが一体的に形成されていて、係止部材60と係脱可能となっている。
一方、図2ないし図5に示すように、各カムフォロア24近傍の上記各筐体側板側には、版胴1の回転と同期して回転する一対の印圧カム27,27(以下、「一対の印圧カム27」と記載し、紙面に表されるべき上記筐体側板の奥側の印圧カム27を代表して説明する)を固着した印圧カム軸26が回転自在に支持されている。印圧カム27は、小径部(凹部部分)と大径部(凸部部分)とが形成された例えば板カムからなる。
印圧カム軸26には、図示しないベルトプーリまたはギヤ等が固設されていて、図示しないベルトやギヤ等の駆動伝達手段を介してメインモータ20に連結されており、これにより印圧カム27が版胴1の回転と同期して回転するようになっている。上記した印圧バネ25により、カムフォロア24は印圧カム27に常に当接する向きに付勢されている。したがって、印圧カム27を回転駆動するカム駆動手段は、主としてメインモータ20で構成されている。
図2ないし図7において、符号64は、通紙時以外はプレスローラ21を図1および図2に示す非印刷位置(厳密には非印刷位置よりもさらに僅かに離間した初期位置である)で保持するための係止手段を示す。係止手段64は、印圧解除手段とも呼ばれることがあり、係止部材60、支軸61、第1ソレノイド62および引張バネ63から主に構成される。係止手段64は、紙面奥側に配設されている。
係止部材60は、紙面奥側の上記筐体側板に植設された支軸61の周りに揺動自在に支持されていて、その一端部には上記した印圧アーム22の切欠22bと選択的に係合する係合爪60aが形成されている。係止部材60の他端部には、係合爪60aを印圧アーム22の切欠22bに常に係合する向きに付勢する引張バネ63の一端が係止されている。引張バネ63の他端は、紙面奥側の上記筐体側板側に係止されている。また、係止部材60の他端部における引張バネ63の配置部と対向する側には、紙面奥側の上記筐体側板に図示しないブラケットを介して固着された第1ソレノイド62のプランジャ62aがピンを介して連結されている。第1ソレノイド62は、プル型を用いている。
上述した構成のとおり、第1ソレノイド62に通電されて第1ソレノイド62がオンされることにより、印圧範囲可変手段28を作動させることとなり、後述する詳細動作を介してプレスローラ21が印刷位置を占める。これによって、プレスローラ21は用紙36を版胴1上の分割製版済みマスタ8Xや製版済みマスタ8Yに回転させながら連続的に押し付ける。第1ソレノイド62への通電が遮断され第1ソレノイド62がオフされることにより、印圧範囲可変手段28を非作動にさせることとなり、後述する詳細動作を介してプレスローラ21が印刷位置から離れた図1および図2に示す非印刷位置(初期位置)を占める。
第1ソレノイド62は、後述する制御装置100によりオン/オフ制御される。制御装置100による第1ソレノイド62のオン/オフの切り換え制御によって、印圧アーム22を保持する状態とこの保持を解除する状態とに選択的に切り換えられる。第1ソレノイド62は、後述するように、カムフォロア24が印圧カム27の大径部や間欠カム67の大径部と当接した状態でオン作動される(図2参照)。
図5に示すように、間欠カム67は、間欠カムギヤ65と一体的に固着されており、印圧カム軸26に回転自在に支持されている。間欠カム67は、印圧カム27と別体的に設けられていて、小径部(凹部部分)と大径部(凸部部分)とが形成された例えば板カムからなり、印圧カム27と同様の形状を有している。間欠カム軸68は、上記各筐体側板に回転自在に支持されている。間欠カムギヤ65は、間欠カム軸68の一端側に固設された間欠カム駆動ギヤ66と常時噛み合っている。印圧カム軸26と間欠カム軸68とは、互いに反対方向に回転駆動されるようになっている。本実施形態の例では図2ないし図4に示すように、印圧カム27および印圧カム軸26は時計回りに、間欠カム駆動ギヤ66は反時計回りに回転し、間欠カム駆動ギヤ66で駆動される間欠カム67は印圧カム27と同じ時計回りに回転される。
間欠カム軸68の他端側には、クラッチ胴71が固設されている。クラッチギヤ70は、間欠カム軸68の他端側に回転自在に支持されている。クラッチギヤ70とクラッチ胴71との間には、スプリング73aを巻き付けて構成されたスプリングクラッチ73が介装されている。後述するように、クラッチギヤ70からスプリングクラッチ73を介してクラッチ胴71に回転力が伝達されるようになっている。
スプリングクラッチ73には、その外周部に扇形の凸部72aを有するスリーブ72が設けられている。スプリングクラッチ73におけるスプリング73aの一端は、クラッチギヤ70の右側突出部外周に巻かれていると共にスリーブ72に固定され、スプリングクラッチ73におけるスプリング73aの他端は、クラッチ胴71に固定されている。それ故に、クラッチ胴71、スリーブ72およびスプリングクラッチ73は、一体的に回転するように構成されている。
スプリングクラッチ73は、回転駆動の方向に合わせてスプリング73aの巻き方向が設定されており、回転力伝達時にスプリング73aが巻き込まれてスプリング内径が小さくなるように上記巻き方向が決められ、いわゆる一方向性クラッチ(ワンウェイクラッチ)として使用されるものである。
クラッチギヤ70の近傍には、上記筐体側板に回転自在に支持され、メインモータ20の回転力が伝達されて駆動されるカム駆動軸74が設けられている。カム駆動軸74の端部にはカム駆動ギヤ75が固設されていて、このカム駆動ギヤ75は、クラッチギヤ70と常時噛み合っていてクラッチギヤ70を反時計回りに回転駆動する。本実施形態ではカム駆動軸74を駆動する駆動手段は、メインモータ20の回転力が図示しない回転伝達手段を介して伝達される構成による駆動手段を採用しているが、これに限定されず、メインモータ20と別個に設けられ少なくとも印刷時に回転駆動される、あるいは常時回転駆動される電動モータ等であってもよい。
図6および図7に示すように、クラッチ胴71およびスリーブ72の近傍の上記筐体側板には、ストッパ支軸76Aに軸支された略U字形のストッパ76が配設されている。ストッパ76は、例えば板金等でできていて、ストッパ76の両端部には、スリーブ72の凸部72aと選択的に係合する第1係合部76aおよび第2係合部76bが形成されている。
第1係合部76a形成側のストッパ76の端部には、第2ソレノイド77のプランジャ77aがピンを介して連結されており、第2ソレノイド77は後述する制御装置100によりオン/オフ制御される。第2ソレノイド77は、プル型を用いており、上記筐体側板側に固定されている。ストッパ76と第2ソレノイド77本体との間には、圧縮バネからなるスプリング78がプランジャ77aに巻着される態様で介装されている。それ故に、スプリング78の付勢力によって、ストッパ76はストッパ支軸76Aを中心として常に図において時計回りに揺動する習性を与えられている。上記のとおり、第2ソレノイド77および上記駆動手段(主としてメインモータ20)は、間欠カム67を駆動する間欠カム駆動手段としての機能を有する。
図6および図7に示されている何れの状態においても、スリーブ72の凸部72aは、ストッパ76の第1係合部76a、第2係合部76bに突き当て・係合していて、その回転を阻止・停止させられており、カム駆動軸74の回転は間欠カム軸68に伝達されない。これらの状態では、ストッパ76によるスリーブ72の回転阻止力の方が、クラッチギヤ70の右側突出部外周面とこれに巻かれているスプリング73aとの間の摩擦力より大きいためクラッチギヤ70は空転しているだけである。したがって、カム駆動軸74の回転は間欠カム軸68に伝達されず、間欠カム67はその位置に停止したままである。
図6に示すように、ストッパ76の第1係合部76aがスリーブ72の凸部72aと係合していてスリーブ72の回転が阻止されている状態では、クラッチギヤ70とクラッチ胴71との連結は断たれていて、図2に示すように間欠カム67の大径部はカムフォロア24の略反対側で保持されるようになっている。この時、印圧カム27の大径部は、同図2に示すようにカムフォロア24に乗り上げた状態で保持されるようになっている。
図6に示す状態から図7に示すように、第2ソレノイド77に通電されて第2ソレノイド77がオンされることにより、プランジャ77aがスプリング78の付勢力に抗して図7中矢印上向きに引き上げられることによって、ストッパ76の第1係合部76aとスリーブ72の凸部72aとの係合が解除されると、図5においてスプリングクラッチ73が接続された状態となる。
これにより、カム駆動軸74の回転がスプリングクラッチ73を介してクラッチ胴71に伝達される。すなわち、クラッチ胴71、スリーブ72、スプリングクラッチ73およびクラッチギヤ70が一体で矢印で示す反時計回り方向に回転し、上記駆動手段の回転力が間欠カム軸68、間欠カム駆動ギヤ66と噛合する間欠カムギヤ65を介して間欠カム67に伝達されて、間欠カム67の大径部が図2において略右真横位置まで回転してカムフォロア24に押し付けることとなる。
そして、クラッチ胴71が矢印で示す反時計回り方向に所定角度回転して、図7に示すように、ストッパ76の第2係合部76bがスリーブ72の凸部72aに係合することによりスリーブ72の回転を阻止されると、スプリングクラッチ73の接続が再び断たれて、間欠カム67の大径部が図2において略反対位置まで回転した後にその位置で保持される。これにより、カムフォロア24が間欠カム67の大径部に乗り上げた状態で保持されて、プレスローラ21が版胴1との押圧状態から離間して非印刷位置を占めた状態で保持される。
次いで、所定時間後、第2ソレノイド77への通電が遮断されて第2ソレノイド77がオフされると、スプリング78の付勢力によってストッパ76が上記したとは反対の時計回りに回転することにより、ストッパ76の第2係合部76bとスリーブ72の凸部72aとの係合が解除されることで、スプリングクラッチ73が再度接続された状態となり、これにより上記したと同様にクラッチ胴71等とクラッチギヤ70が一体で回転し、上記駆動手段の回転力が間欠カム軸68、間欠カム駆動ギヤ66と噛合する間欠カムギヤ65を介して間欠カム67に伝達されて、間欠カム67の大径部が図2に示す位置近傍に回転され、次いでストッパ76が所定角度回転して図6に示すようにストッパ76の第1係合部76aがスリーブ72の凸部72aと係合することによって、スプリングクラッチ73の接続が再度断たれて、間欠カム67の大径部が図2に示す初期位置まで回転した後その位置で保持される。なお、間欠カム67が動作するときには、係止手段64の第1ソレノイド62がオフ制御されることにより、プレスローラ21が非印刷位置に保持されるようになっている。
プレスローラ21が版胴1の外周面から離間する点(押圧領域の後端)は、インキ付着によるプレスローラ21の汚れを防止するために、分割製版済みマスタ8Xや製版済みマスタ8Yの版胴1への巻装長さよりもやや短めになるように、印圧カム27の小径部の範囲が設定されている。通常の片面印刷動作に用いられる印圧カム27に加えて、図16に示す制御装置100による第2ソレノイド77のオン/オフの切り換え制御を利用することによって、図10に示すようなプレスローラ21による印圧範囲を変えることが上述したような簡易な構成で容易にできる。
本実施形態の例では、印圧カム27や間欠カム67の山の部分、すなわち各カム27,67の何れか一方の大径部が印圧バネ25の付勢力に抗してカムフォロア24と圧接することにより、プレスローラ21による印圧をオフ・解除するようになっていて、プレスローラ21は図2に示す非印刷位置を占める。各カム27,67の何れか一方の大径部がカムフォロア24との圧接を解除され、かつ、各印圧バネ25の付勢力によってプレスローラ21の外周面が版胴1の外周面に圧接すると、プレスローラ21は図3や図4に示す印刷位置を占める。
図2ないし図4および図10において、印圧カム27は、基準となる通常印刷時用(片面印刷時用でもある)として使用される。印圧カム27は、図2ないし図4に示すように、その大径部の部分が版胴1外周部のクランパ7突出部分を逃げるための印圧オフの部分であり、その小径部の部分が表面印刷時および裏面印刷時を含む印圧オンの部分である。間欠カム67は、印圧カム27との共通部品化を図るために印圧カム27と同じ物を用いているが、機能から見ればその大径部や小径部の形成範囲は印圧カム27と同様でなくても勿論構わない。
図10は、プレスローラ21の印圧範囲を分かりやすくこれを展開して図示したものである。図10において、同図に図示しない版胴1上の開孔部1aに巻装された分割製版済みマスタ8Xには、表面製版画像8Aの領域部分と裏面製版画像8Bの領域部分とが形成されていて、それらの間には未製版空白の中間未製版領域8Cを設けてある。ここで、同図10に図示しない版胴1のクランパ7に挟持・固定される先端余白部とも呼ばれる分割製版済みマスタ8Xの先頭側は左端側である。
片面印刷を含む通常印刷時用の印圧範囲パターンは、IIIのようになっている。すなわち、印圧範囲パターンIIIは、表面製版画像8Aの領域部分から中間未製版領域8Cを経て続けて裏面製版画像8Bの領域部分に亘って印圧を付与することにより、製版済みマスタ8Yの片面製版画像8YAに用紙36を連続して押し付けて印刷されるように、印圧カム27の小径部がカムフォロア24に対向するように印圧カム27が回転駆動される。
表面印刷時には、印圧範囲パターンIのようになっていて、表面製版画像8Aの領域部分に対応して印刷されるように、印圧カム27の小径部がカムフォロア24に対向するように印圧カム27が回転駆動され、次いで、中間未製版領域8C部分では印圧が解除されるように、間欠カム67の大径部がカムフォロア24に当接するように第2ソレノイド77がオン/オフ駆動制御される。
裏面印刷時には、印圧範囲パターンIIのようになっていて、始めの表面製版画像8Aの領域部分では印圧が解除されるように間欠カム67の大径部がカムフォロア24に当接するように第2ソレノイド77がオン/オフ駆動制御され、次いで、印圧カム27の小径部がカムフォロア24に対向するように印圧カム27が回転駆動される。
上述したことを図2ないし図4および図10を参照してまとめると、次のようになる。すなわち、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aに対応した表面領域1Aのみに印圧を付与する第1の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIと、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応した裏面領域1Bのみに印圧を付与する第2の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIIと、表面領域1Aから続けて裏面領域1Bに亘って印圧を付与する第3の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIIIとの少なくとも3つの印圧範囲パターンのうちの一つを選択的に切り換え可能になっている。これら3つの印圧範囲パターンのうちの一つを選択的に切り換える機構が、上述した印圧範囲可変手段28である。
本実施形態によれば、印圧範囲可変手段28を具備しているので、印圧オン範囲が最適に設定されることになり、用紙が存在しないのに印圧がオンされてプレスローラ21の外周表面に印刷画像が転写されてインキで汚れてしまうという不具合を未然に防止することができる。また、印圧範囲可変手段28が図5ないし図7に示したような特有の構成要素、すなわち一対の印圧カム27,27(以下、「一対の印圧カム27」と記載する)、一対の間欠カムギヤ65,65(以下、「一対の間欠カムギヤ65」と記載する)、一対の間欠カム駆動ギヤ66,66(以下、「一対の間欠カム駆動ギヤ66」と記載する)、一対の間欠カム67,67(以下、「一対の間欠カム67」と記載する)、間欠カム軸68、クラッチギヤ70、クラッチ胴71、スリーブ72、スプリングクラッチ73、カム駆動軸74、カム駆動ギヤ75、ストッパ76、第2ソレノイド77、スプリング78等を具備しているので、比較的簡単な構成で上記不具合を防止できるものである。さらに、例えば外来ノイズなどが原因で第2ソレノイド77を介して間欠カム67の動作が不安定になっても、版胴1の回転と同期して回転する印圧カム27を有することにより、この印圧カム27によって、プレスローラ21が版胴1の後端側で確実に版胴1から離間させられるので、プレスローラ21が版胴1のクランパ7突出部に乗り上げてしまうことで、プレスローラ21やクランパ7がダメージ(損傷)を受けたりしてしまうことを防止できる。
上述したように、見方を変えて表現するならば、第2ソレノイド77のオン/オフ動作を適宜・制御調整することにより、間欠カム67の大径部を任意の回転位置でカムフォロア24に当接させたり、間欠カム67の小径部を非接触状態で対向させたりすることができるものであるから、上記利点をそれ程望まなくてもよいのであれば、印圧範囲可変手段28から印圧カム27および印圧カム軸26を駆動する回転伝達手段のみを除去して、間欠カム67を用いて、上述した第1の印圧範囲パターンI、第2の印圧範囲パターンII、第3の印圧範囲パターンIIIに適合するように第2ソレノイド77のオン/オフ動作を制御することも可能である。
本実施形態では印圧範囲可変手段28の構成部品としてスプリングクラッチ73を用いて間欠カム67を回転・保持させているが、これに代えて、電磁クラッチと電磁ブレーキ装置を用いて間欠カム67を後述する第1の印圧範囲パターンや第2の印圧範囲パターンに適合するように回転・断続保持するような方式でもよい。あるいは、スプリングクラッチ73および上記駆動手段(主としてメインモータ20)に代えて、電磁クラッチ、電磁ブレーキ装置およびステッピングモータを用いて間欠カム67を後述する第1の印圧範囲パターンや第2の印圧範囲パターンに適合するように回転・断続保持するような方式でもよい。
印圧範囲可変手段は、上記印圧範囲可変手段28の利点をそれ程望まなくてもよいのであればこれに限らず、例えば、特開2003−200645号公報(上記特許文献7)の図2および図4等に示されている多段カム(43)、段差カム(49)およびプレスローラー接離機構(55)から構成されるものや、例えば実公平5−45500号公報に開示されている技術を応用することにより、例えば特開昭64−18683号公報の第7図および第8図等に開示されているようなねじ軸によって移動可能な複数のカムからなるカム板セットおよび前記ねじ軸を回転駆動する印圧カム切換用モータ等を応用することにより、また例えば特開平10−193767号公報の図7および図8等に開示されているような押圧部材の揺動機構および多段カムを選択できる押圧範囲可変機構を応用すること等でも構わない。
排紙部19は、図1に示すように、版胴1の外周面に近接自在に設けられ、片面印刷済み用紙36cを版胴1上の製版済みマスタ8Yから剥離する剥離爪170と、剥離爪170で剥離された片面印刷済み用紙36cの先端部と版胴1との間に送風して剥離爪170による剥離作用を助勢するための剥離ファン171と、剥離爪170および剥離ファン171で剥離された片面印刷済み用紙36cおよび両面印刷済み用紙36bの何れか一方を吸引しつつ搬送する排紙搬送装置152と、上記した排紙トレイ172とから主に構成されている。
剥離爪170は、版胴1の外周面にプレスローラ21が圧接することにより形成される印刷ニップ部における下流近傍に設けられている。剥離爪170は、版胴1の回転と同期して回転駆動されるカムおよびバネ等を具備した剥離爪変位手段(図示せず)により、版胴1の外周面に近接して版胴1上の製版済みマスタ8Yから片面印刷済み用紙36cを強制的に剥離する剥離位置と、この剥離位置から離間して版胴1の外周面から突出したクランパ7配置部との接触を避ける非剥離位置との間で変位自在に構成されている。剥離ファン171は、該剥離ファンを回転駆動するファン駆動モータを内蔵している。
排紙搬送装置152は、図1ないし図4に示すように、剥離爪170の下方であって切換ガイド46の左方に配設されており、駆動ローラとしての排紙ローラ後154、従動ローラとしての排紙ローラ前156、無端ベルトである排紙ベルト158、吸引ファン159等を具備している。排紙ローラ後154は、ころ状をなし、上記筐体側板対に回転自在に支持された駆動軸154aに所定の間隔で複数取り付けられている。排紙ローラ前156も、上記筐体側板対に回転自在に支持された従動軸156aに各排紙ローラ後154と等間隔で複数設けられている。各排紙ローラ後154およびこれと対応する各排紙ローラ前156には、排紙ベルト158がそれぞれ掛け渡され張設されている。駆動軸154a(例えば図1ないし図4の紙面の奥側)には、図示しない駆動ギヤまたは駆動プーリが取り付けられており、該駆動ギヤに噛み合う図示しないモータギヤまたは上記駆動プーリと図示しないプーリ間に張設されたベルト等の駆動力伝達手段を介して排紙ベルト駆動モータ153に連結されている。これにより、排紙ベルト158は、排紙ベルト駆動モータ153によって図1に示す矢印方向(反時計回り)に回転駆動される。
排紙ローラ後154、排紙ローラ前156、排紙ベルト158の下方には、吸引ファン159が配設されている。吸引ファン159は、該吸引ファンを回転駆動するファン駆動モータを内蔵している。排紙搬送装置152は、吸引ファン159の吸引力によって各排紙ベルト158上に片面印刷済み用紙36cおよび両面印刷済み用紙36bの何れか一方を吸引し、各排紙ローラ後154の回転によって図1の矢印方向に搬送する。
図16において、排紙部19における剥離ファン171の上記ファン駆動モータ、排紙ベルト駆動モータ153、吸引ファン159の上記ファン駆動モータを含む排紙部19の制御対象駆動手段を総括的に排紙駆動手段127とする。
切換ガイド46は、図1ないし図4に示すように、版胴1に対してプレスローラ21が押圧されることにより形成される印刷部16における印刷画像形成部としての印刷ニップ部16aと排紙搬送装置152との間の用紙搬送経路上に配設されている。切換ガイド46は、版胴1およびプレスローラ21と略同じ幅を有する板材からなり、その基端部(用紙搬送方向Xの下流側端部)を上記筐体側板に所定角度回動自在に支持された軸46aに固着されていて、その自由端部(用紙搬送方向Xの上流側端部)が軸46aを中心として揺動自在になっている。切換ガイド46の外周表面は、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂等の撥インキ性かつ耐油性を有する被膜で平滑にコーティングしてもよい。
切換ガイド46は、図2および図16に示す切換駆動手段としてのソレノイド47が図示しない付勢手段としての引張バネの付勢力に抗して作動することによって断面鋭角状に形成された自由端部を図1に実線で示す第1の変位位置と二点鎖線で示す第2の変位位置とに選択的に位置決めされる。切換ガイド46は、通常、図1に示す初期位置でもある第1の変位位置に上記引張バネの付勢力によって揺動する向きの習性を付与されている。切換ガイド46は、第1の変位位置を占めたときにその先端がプレスローラ21の外周面に近接すると共に版胴1上のクランパ7と干渉しない位置に置かれ、第2の変位位置を占めたときにその先端が版胴1の周面に近接する位置に置かれる。版胴1とプレスローラ21との間を通過した両面印刷済み用紙36bまたは片面印刷済み用紙36cは、切換ガイド46が第1の変位位置を占めたときに排紙部6へと案内され、表面印刷済み用紙36aは切換ガイド46が第2の変位位置を占めたときに切換ガイド46に案内されつつ移動ガイド81へ受け渡される。なお、切換ガイド46を第1の変位位置と第2の変位位置とに変位させる切換駆動手段は、上記ソレノイド47と引張バネとの組み合わせに限らず、例えばステッピングモータやロータリソレノイド等で駆動するようにしてもよい。
移動ガイド81は、図1ないし図4、図7および図8に示すように、排紙搬送装置152および切換ガイド46の下方と再給紙搬送装置104の上方との間に配設されている。移動ガイド81は、表面印刷済み用紙36aの先端を印刷部16近傍の第1の位置としての移動位置P1で挟持し、移動位置P1よりも低い再給紙手段45の上流側近傍の第2の位置としての初期位置P2で表面印刷済み用紙36aの先端を開放する用紙挟持手段としての機能・構成を有する。
移動ガイド81は、表面印刷済み用紙36aの先端部を挟持・載置する挟持台81fと、印刷ニップ部16aから送り出された表面印刷済み用紙36aの進行方向(搬送方向)下流側の挟持台81fに一体的に形成され表面印刷済み用紙36aの先端が当接する受け止め部としてのエンドフェンス81dと、挟持台81fにおける紙面の手前側および奥側の両側端に一対ならびに往復移動方向に一体的に形成された被案内部としての4箇所の突起81cと、表面印刷済み用紙36aの先端を含む先端部を把持・挟持する挟持台81fに対して開閉自在な挟持部材としてのクランプ爪81bと、クランプ爪81bの基端部を取付け・固定する揺動自在(所定角度回動自在)なクランプ軸81aと、クランプ軸81aを揺動自在(所定角度回動自在)に支持するための、挟持台81fの両側端に一体的に取り付けられた図8にのみ示す一対の軸受ブラケット81eと、クランプ爪81bの自由端を挟持台81fの上面に押し付ける図4に矢印で示す向きに付勢する付勢手段としての図示しないねじりコイルバネと、クランプ軸81aの紙面の奥側に取付け・固定された上下一対の解除レバー82上、解除レバー下83とから主に構成されている。
移動ガイド81は、挟持台81fおよびエンドフェンス81dにより、断面略L字形状に形成されている。4箇所の突起81cは、図8に示す筐体側板対130a,130bにそれぞれ形成された案内溝88に緩く嵌合されている。クランプ爪81bは、印刷ニップ部16aから送り出された表面印刷済み用紙36aの進行方向(搬送方向)に対して鋭角の立ち上がり角度をもって傾斜してその基端部がクランプ軸81aに複数取付け・固定されており、その自由端部が鋭角状に形成されている。クランプ爪81bは、例えば表面印刷済み用紙36aの幅方向中央部付近に2〜3個程度配設されていて、同幅方向に所定の幅を有する金属製または樹脂製の薄板状部材からなる。挟持台81fの紙面奥側の下部には、図8に示す取付部84が一体的に設けられており、この取付部84は移動手段87を構成するタイミングベルト89に固定されている。解除レバー82上、解除レバー下83は、板状部材で形成されている。なお、突起81cは、挟持台81fと一体的に形成したものに限らず、案内溝88の内壁上を摩擦抵抗少なく転動可能なコロで構成してもよい。
本実施形態によれば、印刷ニップ部16aから送り出された表面印刷済み用紙36aの進行方向に対して鋭角の立ち上がり角度をもって傾斜したクランプ爪81bを備えていることにより、表面印刷済み用紙36aの搬送時などにおいて表面印刷済み用紙36aが抜ける方向に負荷等が作用した場合に、その挟持力(押圧力)を増加させる方向、すなわちクランプ爪81bを反時計回りに回転させるモーメントが働くので、挟持力(押圧力)が増加してその用紙36aの抜けが防止できると共に、図示しないねじりコイルバネの付勢力としての挟持力を小さく設定でき、かつ、強固に作る必要もなく安価に構成できるという利点を有する。
移動手段87は、図8に示すように、紙面奥側の筐体側板130bの外側に配設されており、移動位置P1と初期位置P2との間で移動ガイド81を往復動させる機能・構成を有する。移動手段87は、表面印刷済み用紙36aの搬送落下経路とほぼ同じとなるように左下がりに傾斜して筐体側板対130a,130bに貫通して形成された円弧状の案内溝88と、案内溝88における表面印刷済み用紙36aの進行方向(搬送方向)の下流端近傍の筐体側板130bに軸90aを持って回動自在に支持された歯付きの駆動プーリ90と、案内溝88における表面印刷済み用紙36aの進行方向(搬送方向)の上流端近傍の筐体側板130bに軸91aを持って回動自在に支持された歯付きの従動プーリ91と、駆動プーリ90と従動プーリ91との間に掛け渡され張設されたタイミングベルト89と、タイミングベルト89に当接してこれに張力を付与するように筐体側板130bに図示しない軸を持って回動自在に支持された複数のテンションローラ95と、駆動プーリ90の軸90aに取付け・固定された駆動ギヤ92と、駆動プーリ90の軸90a近傍の筐体側板130bに取付け・固定された正逆転可能な駆動手段としての駆動モータ94と、駆動モータ94の出力軸94aに取付け・固定され駆動ギヤ92と噛み合うモータギヤ93とから主に構成されている。
タイミングベルト89は、移動ガイド81の挟持台81f下部に一体的に形成された取付部84を介して移動ガイド81に連結・固定されている。駆動モータ94は、例えばステッピングモータからなる。上述したとおり、駆動モータ94は移動手段87の駆動手段を、案内溝88は移動手段87の案内手段を、タイミングベルト89、駆動プーリ90、従動プーリ91、駆動ギヤ92およびモータギヤ93は駆動モータ94の駆動力を移動ガイド81に伝達する駆動力伝達手段を、それぞれ構成している。
上述の構成のとおり、駆動モータ94の正逆転駆動により駆動力伝達手段を介して、移動ガイド81が、表面印刷済み用紙36aの先端を挟持する図3、図8および図9に実線で示す、印刷部16の近傍である移動位置P1(第1の位置)と、移動位置P1よりも低い再給紙手段45の上流側近傍(再給紙搬送装置104の搬送ローラ107の後部上方近傍)であって表面印刷済み用紙36aの先端を開放する図1および図2に実線で、図8および図9に二点鎖線で示す初期位置または待機位置(第2の位置)とを選択的に占めるべく往復動する。駆動プーリ90の近傍には、移動ガイド81がホームポジション(初期位置)である第2の位置を占めたときにこれを検知するホームポジションセンサ85が配設されている。
解除カム98および上記ねじりコイルバネは、図9に示すように、移動ガイド81が実線で示す移動位置P1を占めた時、移動ガイド81の解除レバー下83と当接することにより、上記ねじりコイルバネの付勢力に抗して解除レバー下83およびクランプ軸81aを介してクランプ爪81bを時計回りに揺動(所定角度回動)させて一旦開放させた後、移動ガイド81が移動位置P1から二点鎖線で示す初期位置P2に向けて移動開始する時、解除レバー下83との当接状態が解除されることにより上記ねじりコイルバネの付勢力によってクランプ爪81bを反時計回りに揺動されることで、表面印刷済み用紙36aの先端を挟持するように作動させる作動時機制御手段としての機能を有する。解除ピン99は、図9に示すように、移動ガイド81が初期位置P2を占めた時、移動ガイド81の解除レバー上82と当接することにより、図示しないねじりコイルバネの付勢力に抗して解除レバー上82およびクランプ軸81aを介してクランプ爪81bを時計回りに揺動させて表面印刷済み用紙36aの先端を開放するように作動させる作動時機制御手段としての機能を有する。
本実施形態によれば、解除カム98を備えていることにより、解除カム98を備えていない場合と比較して次の利点を有する。すなわち、例えば移動ガイド81が移動位置P1を占める時に、表面印刷済み用紙36aの先端が印刷ニップ部16aで付与される搬送力により図示しないねじりコイルバネの付勢力に打ち勝ってクランプ爪81bを時計回りに揺動させてその開放部分(クランプ爪81bの先端と挟持台81fの上面との間の開放部分)に挿入されるように解除カム98を除去して構成されている場合には、たとえ上記ねじりコイルバネの付勢力を腰の弱い用紙に合わせて設定したとしても、その用紙の先端部を変形させたり、その用紙挟持力が不安定になったりすることが想定される。これに対して、本実施形態によれば、移動ガイド81が移動位置P1を占めた時に、上記した解除カム98の作用によって、表面印刷済み用紙36aの先端が印刷ニップ部16aで付与される搬送力によりその開放部分(クランプ爪81bの先端と挟持台81fの上面との間の開放部分)にスムーズに挿入されるから、その用紙の腰の強さに左右されることなく、表面印刷済み用紙36aの先端をクランプ爪81bの先端と挟持台81fの上面との間で確実に挟持・クランプすることができ、これによって表面印刷済み用紙36aが蛇行したり、スキューしたりすること無く安定した状態で良好に搬送できると共に、その裏面への印刷時に印刷画像が傾いたり、傾きなどが元でレジストが悪化してしまうことを未然に防止できるという利点が得られる。また、表面印刷済み用紙36aの先端を挟持する際の開放時間等も、解除カムの形状を工夫・調整することによってある程度長く設定することができるため、腰の弱い用紙等でも用紙先端の挿入が抵抗無く行えて表面印刷済み用紙36aの先端の挟持が良好に行えるものである。
解除ピン99の働き・作用により、移動ガイド81が初期位置P2を占めた時に、クランプ爪81bの先端と挟持台81fの上面との間で挟持された表面印刷済み用紙36aの先端部が開放され、表面印刷済み用紙36aはその後端より再給紙搬送装置104の搬送ベルト108上に落下し、この時に作動している吸引ファン109による吸引力によって搬送ベルト108上に一時的に吸着・保持された後、搬送ベルト108の回転駆動によって搬送される。なお、搬送ベルト108の長さおよび移動ガイド81の初期位置P2等は、両面印刷に使用される用紙36の用紙搬送方向Xの長さによって最適な長さをもって設定されることはいうまでもない。
排版部17は、上排版部材160、下排版部材161、排版ボックス162、圧縮板163等を具備している。上排版部材160は、駆動ローラ164、従動ローラ165、無端ベルト166等を有している。駆動ローラ164は、図示しない排版モータを含む排版駆動手段126(図16参照)によって図1の時計回り方向に回転駆動されることにより無端ベルト166が図1中矢印方向に移動する。下排版部材161は、駆動ローラ167、従動ローラ168、無端ベルト169等を有している。駆動ローラ167は、駆動ローラ164を回転駆動する上記排版モータの駆動力をギヤやベルト等の図示しない駆動力伝達手段によって伝達されることにより、図1の時計回り方向に回転駆動されることにより、無端ベルト169が図1の矢印方向に移動する。また、下排版部材161は、排版駆動手段126に含まれる図示しない移動手段によって移動自在に設けられており、図に示す位置と従動ローラ168の外周面上に位置する無端ベルト169が版胴1の外周面に当接する位置とを選択的に占める。
排版ボックス162は、その内部に使用済みマスタを貯容するものであり、本体フレーム130に対して着脱自在に設けられている。圧縮板163は、上排版部材160と下排版部材161とによって運ばれた使用済みマスタを排版ボックス162の内部に押し込むように本体フレーム130に上下動自在に支持されており、排版駆動手段126に含まれる昇降モータを含む図示しない昇降手段によって上下動される。
図16において、排版部17の上記排版モータ、上記移動手段、上記昇降モータを含む排版部17の制御対象駆動手段を総括的に排版駆動手段126とする。
給紙部30は、図1、図11および図12に示すように、用紙36を繰り出し可能に積載して昇降自在な上記した給紙トレイ35と、給紙トレイ35上の用紙36に接触してレジストローラ対31a,31b(以下、「レジストローラ対31」と略称する)のニップ部に向けて用紙36を1枚ずつ分離して搬送する給紙手段としての給紙ローラ33および分離部材34と、用紙36の用紙サイズを検出する用紙サイズ検出手段112と、版胴1の外周面とプレスローラ21との間に後述するタイミングを取って用紙36を給送するレジスト手段としてのレジストローラ対31等とを具備している。
給紙トレイ35は、給紙トレイ35を上下動させる図示しない昇降手段としての給紙トレイ昇降モータおよびワイヤ式昇降機構等を備えた駆動装置(図示せず)により、積載された用紙36の最上位が常に給紙ローラ33に所定の押圧力(用紙36が搬送可能な押圧力)をもって接触するように、すなわち用紙36の増減に連動して用紙36が搬送可能な範囲の押圧力で接触する状態を保持しつつ昇降される。給紙トレイ35は、多くの用紙種類および用紙サイズを使用できる構造を有すると共に、その用紙積載容量を例えば用紙サイズA3(縦)やA4の用紙36で500枚以上を積載可能とする孔版印刷装置に適した構造を有する。
給紙トレイ35には、図13に示すように、用紙サイズに応じて用紙36の両側端を位置決め揃えるための一対のサイドフェンス113a,113bが用紙幅方向Yに移動自在に配設されている。図13に、用紙サイズ検出手段112を示す。この用紙サイズ検出手段112は、サイドフェンス対113a,113bの用紙幅方向Yの移動に連動して用紙36の用紙サイズを決定するものである。
用紙サイズ検出手段112は、移動自在なサイドフェンス対113a,113bと、給紙トレイ35の下部に配設されている不動部材に回動自在に取り付け支持されたピニオン116と、サイドフェンス113aの下部端縁部に形成されピニオン116と噛み合うラック部115と、サイドフェンス113bの下部端縁部に形成されラック部115に対向してピニオン116と噛み合うラック部114と、サイドフェンス113bのラック部114に対向する下部端縁部において下方に突出して折り曲げられ適宜の間隔をもって切り欠かれた複数の切欠きを備えた遮閉部114aと、給紙トレイ35の上記不動部材に適宜の間隔をもって固設され遮閉部114aとそれぞれ選択的に係合する複数(ここでは2つ)の横サイズ検知センサ118a,118bと、給紙トレイ35の上記不動部材における給紙方向Xに適宜の間隔をあけて固設された複数(ここでは3つ)縦サイズ検知センサ119a,119b,119cとから主に構成されている。
各横サイズ検知センサ118a,118bは、透過型の光学センサであり、遮閉部114aとそれぞれ選択的に係合することにより用紙36における用紙幅方向Yの長さ・サイズを検出する。縦サイズ検知センサ119a,119b,119cは、反射型の光学センサである。縦サイズ検知センサ119a,119b,119cは、用紙36における給紙方向Xの長さ・サイズを検知する。各横サイズ検知センサ118a,118bおよび各縦サイズ検知センサ119a,119b,119cを総称して、用紙サイズ検知センサ117という。用紙サイズ検知センサ117は後述する制御装置100に電気的に接続されており、これらの用紙サイズ検知センサ117で検出されたサイズ信号データを組み合わせて制御装置100のCPU101が判断することにより、用紙36の用紙サイズを決定するものである。用紙サイズ検知センサ117は、用紙36の用紙サイズを検知する用紙サイズ検知手段としての機能を有する他、縦サイズ検知センサ119aは用紙36の有無を検知する用紙有無検知手段としての機能も有する。
用紙36における用紙幅方向Yの長さ・サイズを検出する横サイズ検知センサおよび用紙36における給紙方向Xのサイズを検知する縦サイズ検知センサとしては、説明の簡明化のためにそれぞれ2つおよび3つとしたが、これ以上配設してより多くのサイズを検知できるようにしてもよい。このような用紙サイズ検知方式の詳細としては、例えば特開平9−30714号公報等に開示されている技術を挙げることができる。用紙サイズ検知方式としては、上述したような方式に限定されず、他の方式、例えば給紙側板(サイドフェンス)に連動して摺動子がスライドして、用紙サイズに応じて配置されている紙サイズ検知板の各端子と接触・接続して検知するもの等であってもよい。
給紙ローラ33は、図1および図12に示すように、金属製の給紙ローラ軸33aと一体的に形成されていて、給紙ローラ軸33aの一端部が上記筐体側板に回転自在に支持されている。給紙ローラ33の表面は、少なくともゴム等の高摩擦抵抗部材で形成されている。給紙ローラ軸33aの一端部には、歯付きの給紙ローラプーリ39が取り付けられている。給紙ローラ軸33aと給紙ローラプーリ39との間には、用紙搬送方向Xにのみ用紙36を搬送するように給紙ローラ33を回転させる、つまり時計回りにのみ回転させるためのワンウェイクラッチ(図示せず)が配設されている。分離部材34は、用紙36に対する摩擦係数の高いゴムや樹脂で形成され給紙ローラ33に当接可能となっている分離パッドと呼ばれる部材を有している。この分離パッドは、付勢手段としての図示しない圧縮バネにより給紙ローラ33に押し付けられる向きに付勢されている。
図12に示すように、給紙ローラプーリ39の下方には、給紙ローラ33を回転駆動する給紙駆動手段としての給紙モータ37が上記筐体側板に固定して設けられている。給紙モータ37は、パルス入力で駆動するモータとしての例えばステッピングモータからなり、その出力軸には歯付きの給紙モータプーリ38が固設されている。給紙ローラプーリ39と給紙モータプーリ38との間には、歯付きの給紙モータベルト40が掛け渡されている。これにより、給紙ローラ33と給紙モータ37とは給紙モータベルト40およびを上記ワンウェイクラッチを介して回転駆動力伝達関係にある。
図1および図12に示すように、レジストローラ上31aは金属製のレジストローラ軸と、レジストローラ下31bは金属製のレジストローラ軸31cとそれぞれ一体的に形成されていて、各レジストローラ軸31cの両端部が上記筐体側板に回転自在に支持されている。下側のレジストローラ軸31cの一端部には、歯付きのレジストローラプーリ43が取り付けられている。レジストローラ下31bは、レジストローラ軸31cを介して、上記筐体側板に移動不能にかつ回転自在に支持されている。レジストローラ上31aは、レジストローラ下31bに対して所定のタイミングで当接するように図示しないレジストローラ接離手段を介して接離自在に設けられている。
図1および図12に示すように、レジストローラ下31bの下方には、レジストローラ対31を回転駆動するレジスト駆動手段としてのレジストモータ41が上記筐体側板に固定して設けられている。レジストモータ41は、パルス入力で駆動するモータとしての例えばステッピングモータからなり、その出力軸には歯付きのレジストモータプーリ42が固設されている。レジストローラプーリ43とレジストモータプーリ42との間には、歯付きのレジストモータベルト44が掛け渡されている。これにより、レジストローラ下31bとレジストモータ41とはレジストモータベルト44を介して回転駆動力伝達関係にある。
図1において、版胴1とプレスローラ21との間からレジストローラ対31のニップ部までの用紙搬送経路XAには、レジストローラ対31から送り出された用紙36の先端および後端を検知する用紙検知手段としての用紙検知センサ32が配設されている。用紙検知センサ32は、該用紙検知センサ32の配置位置(用紙36の先端を検知できる位置)よりも上流側の用紙搬送経路XAに用紙36が留まっていること(ジャム等を生じていること)を検知する機能も有する。用紙検知センサ32は、反射型の光学センサである。
図16において、給紙部30の上記給紙トレイ昇降モータ、給紙モータ37、レジストモータ41を含む給紙部30の制御対象駆動手段を総括的に給紙駆動手段125とする。
なお、給紙ローラ33を回転駆動する給紙駆動手段は、給紙モータ37等に限らず、メインモータ20からの回転駆動力をギヤやカム等の図示しない駆動力伝達手段によって給紙ローラ33に伝達されることで、版胴1と同期した所定のタイミングで回転駆動されるように構成してもよい。同様に、レジストローラ対31を回転駆動するレジスト駆動手段は、レジストモータ41等に限らず、メインモータ20からの回転駆動力をギヤやカム等の図示しない駆動力伝達手段によって伝達されることで、駆動ローラとしてのレジストローラ下31bが版胴1と同期した所定のタイミングで回転し、レジストローラ下31bに圧接された従動ローラとしてのレジストローラ上31aとによって、印刷部16における版胴1の外周面とプレスローラ21の外周面とが圧接して形成される印刷ニップ部16aに向けて用紙36や表面印刷済み用紙36aを所定のタイミングで給送するように構成してもよい。
画像読取部18は、図14に示すように、複数枚の原稿133を積載する上記した原稿受け台134と、原稿133を載置する読取部としてのコンタクトガラス135と、原稿133を搬送する原稿搬送ローラ対136および原稿搬送ローラ137と、搬送される原稿133をガイドするガイド板138,139と、原稿133をコンタクトガラス135に沿って搬送する複数の原稿搬送ベルト140と、読み取られた原稿133を積載する原稿トレイ141と、コンタクトガラス135を除く上記各部材を支持しコンタクトガラス135に対して接離・開閉自在に設けられた圧板142と、原稿133の画像を照明しつつ走査して読み取るための反射ミラー143,144および蛍光灯145と、走査して読み取られた画像の反射光を集束するレンズ146と、集束された画像の反射光を処理するCCD(電荷結合素子)等を備えた画像センサ147等とを具備している。
上記構成中、原稿受け台134、原稿搬送ローラ対136、原稿搬送ローラ137、各ガイド板138,139、原稿搬送ベルト140および原稿トレイ141によって、コンタクトガラス135(読取部)上に原稿133を1枚ずつ給送する自動原稿給送手段としての自動原稿搬送装置(以下、「ADF」という)148が構成されている。また、コンタクトガラス135、各反射ミラー143,144、蛍光灯145、レンズ146および画像センサ147によって、原稿133の画像をコンタクトガラス135(読取部)上で読み取る原稿読取手段としてのスキャナ装置132が、各反射ミラー143,144、蛍光灯145およびレンズ146によって原稿走査光学系が、それぞれ構成されている。
原稿搬送ローラ対136、原稿搬送ローラ137および原稿搬送ベルト140は、図示しない原稿搬送モータによって駆動される。スキャナ装置132には、スキャナ装置132を駆動するスキャナモータ(図示せず)が配設されている。画像センサ147は受光した反射光に対応して光電変換をし、これにより得られた画像信号を上記A/D変換部に入力する。
コンタクトガラス135の下方近傍には、搬送される原稿133またはコンタクトガラス135上に載置された図示しない原稿の図において搬送方向(左右方向)の原稿の長さを検知する原稿縦サイズ検知センサ149a,149bおよび搬送される原稿133またはコンタクトガラス135上に載置された図示しない原稿の図において紙面の手前側および奥側の長さを検知する図示しない原稿横サイズ検知センサが配設されている。原稿縦サイズ検知センサ149a,149bおよび上記原稿横サイズ検知センサによって、搬送される原稿133またはコンタクトガラス135上に載置された図示しない原稿のサイズが検知され、以下、これらを原稿サイズ検知センサ149と総称する。
原稿サイズ検知センサ149の原稿縦サイズ検知センサ149a,149bおよび上記原稿横サイズ検知センサは、共に反射型の光学センサであり、コンタクトガラス135上における反射量の違いにより原稿133の輪郭・サイズおよび原稿133の有無を検知する。原稿サイズ検知センサ149からの信号は、後述する制御装置100に入力される。原稿サイズ検知センサ149からの信号に基づいて、制御装置100は原稿サイズ(等倍のときには、マスタ8に製版・形成されるべき製版画像のサイズでもある)を判定し認識する。原稿受け台134の下方には、原稿受け台134上に残存している原稿133を検知する原稿検知センサ131が配設されている。原稿検知センサ131は、原稿受け台134上の原稿133が無くなったときに制御装置100に信号を出力する。
図16において、画像読取部18の上記スキャナモータ、上記原稿搬送モータを含む排紙部19の制御対象駆動手段を総括的に読取駆動手段128とする。
次に、図15を参照して操作パネル173の細部構成を説明する。操作パネル173は、両面孔版印刷装置200に所定の動作等をさせるべく指示等をするためのものであり、図14に示した画像読取部18の近傍に配設されている。操作パネル173は、その上面に製版スタートキー174、印刷スタートキー175、試し刷りキー176、連続キー177、クリア/ストップキー178、テンキー179、エンターキー180、プログラムキー181、モードクリアキー182、印刷速度設定キー183、4方向キー184、用紙サイズ設定キー185、クリーニングキー186、無製版クリーニングキー186A、両面印刷キー187、片面印刷キー188、7セグメントLED(発光ダイオード)からなる表示装置189、LCD(液晶表示装置)からなる表示装置190等を有している。
製版スタートキー174は、両面孔版印刷装置200に製版動作を行わせる際に押下され、製版スタートキー174が押下されると排版動作および原稿読取動作が行われた後に製版動作が行われ、その後、版付け動作が行われて両面孔版印刷装置200は印刷待機状態となる。印刷スタートキー175は、両面孔版印刷装置200に印刷動作を行わせる際に押下され、両面孔版印刷装置200が印刷待機状態となり各種印刷条件が設定された後に印刷スタートキー175が押下されることにより印刷動作が行われる。試し刷りキー176は、両面孔版印刷装置200に試し刷りを行わせる際に押下され、各種条件が設定された後に試し刷りキー176が押下されることにより1枚だけ印刷が行われる。連続キー177は、製版動作と印刷動作とを連続して行う際に製版スタートキー174の押下前に押下され、連続キー177の押下後、印刷条件が入力された後に製版スタートキー174が押下されると、排版動作、原稿読取動作、製版動作に引き続いて印刷動作が行われる。
クリア/ストップキー178は、両面孔版印刷装置200の動作を停止させる際あるいは置数のクリア時に押下される。テンキー179は、数値入力等に用いられる。エンターキー180は、各種設定時に数値等を設定する際に、プログラムキー181はよく行う操作を登録したりそれを呼び出したりする際にそれぞれ押下され、モードクリアキー182は、各種のモードをクリアして初期状態に戻す際に押下される。印刷速度設定キー183は、印刷動作に先立って印刷速度を設定する際に押下され、濃いめの画像を得たい場合あるいは雰囲気温度が低い場合等には印刷速度を遅く、薄めの画像を得たい場合あるいは雰囲気温度が高い場合等には印刷速度を速く設定する。4方向キー184は、上キー184a、下キー184b、左キー184c、右キー184dを有しており、画像編集時に画像位置を調整する場合あるいは各種設定時に数値や項目等を選択する場合等に押下される。用紙サイズ設定キー185は、用紙サイズを任意で入力する際に押下され、用紙サイズ設定キー185で入力された用紙サイズは用紙サイズ検知センサ73によって検知された用紙サイズに優先される。
クリーニングキー186は、版胴1が分割製版済みマスタ8Xを巻装した状態で、表面印刷済み用紙36aと同一の用紙または印刷部16の印刷ニップ部16aでその裏面に印刷画像を形成された両面印刷済み用紙36bと同一の用紙を本体フレーム130内で繰り返し再給紙しながら版胴1とプレスローラ21との間で所定の回数押圧した後に排紙部19に排出するように、印刷部16、再給紙手段45、切換ガイド46および移動手段87の図16に示す各制御対象駆動手段を作動させる再給紙クリーニングモードを設定する再給紙クリーニングモード設定手段としての機能を有する。
無製版クリーニングキー186Aは、版胴1が未製版のマスタ8を巻装した状態で、すなわち未製版のマスタ8を版胴1に給版(未製版のマスタ8を搬送し版胴1の外周面に巻装)するように、製版部15および印刷部16の図16に示す各制御対象駆動手段を作動させた後、給紙部30から給紙された同一の用紙36表面印刷済み用紙36aと同一の用紙または印刷部16の印刷ニップ部16aでその裏面に印刷画像を形成された両面印刷済み用紙36bと同一の用紙を本体フレーム130内で繰り返し再給紙しながら版胴1とプレスローラ21との間で所定の回数押圧した後に排紙部19に排出するように、印刷部16、再給紙手段45、切換ガイド46および移動手段87の図16に示す各制御対象駆動手段を作動させる無製版再給紙クリーニングモードを設定する無製版再給紙クリーニングモード設定手段としての機能を有する。
クリーニングキー186および無製版クリーニングキー186Aは、共に内部に図示しないLEDを内蔵している。各キー186,186Aはそれぞれが押下されることにより、各LEDが点灯して再給紙クリーニングモード、無製版再給紙クリーニングモード設定状態であることが表示される。なお、上記各LEDは各キー186,186Aのそれぞれ近傍に別個に配設しても勿論構わない。
両面印刷キー187は、両面孔版印刷装置200に両面印刷動作を行わせる際に製版スタートキー174の押下前に押下され、両面印刷キー187が押下されるとその近傍に配置されたLED187aが点灯して両面印刷モード設定状態であることが表示される。片面印刷キー188も、両面印刷キー187と同様に両面孔版印刷装置200に片面印刷動作を行わせる際に製版スタートキー184の押下前に押下され、片面印刷キー188が押下されるとその近傍に配置されたLED188aが点灯して片面印刷モード設定状態であることが表示される。両面孔版印刷装置200では、図示しない電源スイッチオン後の初期状態時においてLED188aが点灯しており、片面印刷モード設定状態となっている。
表示装置189は、主に印刷枚数等の数字を表示する。表示装置190は、階層表示構造となっており、その下方に設けられた選択設定キー190a,190b,190c,190dを選択して押下することにより、変倍や位置調整等の様々なモードへの変更および各モードでの設定が可能に構成されている。また、表示装置190には、図示したように「製版・プリントできます」のような両面孔版印刷装置200の状態が表示される他、製版あるいは排版ジャム、給紙あるいは排紙ジャム等の警告、用紙、マスタ、インキ等のサプライの供給指示等も表示される。
次に、図16を参照して、両面孔版印刷装置200の主たる制御構成を説明する。図16において、制御装置100は、両面孔版印刷装置200の主として原稿読取動作、製版・給版動作、給紙動作および印刷動作を制御する制御手段としての機能・構成を有する。制御装置100は、CPU101(中央演算処理装置)、図示しないI/O(入出力)ポート、ROM102(読み出し専用記憶装置)、RAM103(読み書き可能な記憶装置)および図示しない電池付きのタイマ等を備え、それらが図示しない信号バスによって接続された構成を有するマイクロコンピュータを具備している。
制御装置100は、図1に示すように、本体フレーム130内の制御基板配置部に設けられている。制御装置100のCPU101(以下、説明の簡明化を図るため、単に「制御装置100」というときがある)は、操作パネル173からの各種信号および本体フレーム130に設けられた上記した各種センサからの検知信号およびROM102から呼び出された動作プログラムに基づいて、印刷部16のメインモータ20、第1ソレノイド62、第2ソレノイド77、製版部15、給紙部30、排版部17、排紙部19、画像読取部18に設けられた各制御対象駆動手段、再給紙手段45に設けられたプレスローラ駆動モータ55、再給紙搬送装置104の吸引ファン109、ベルト駆動モータ105、切換ガイド46のソレノイド47、移動手段78に設けられた駆動モータ94の各作動等を制御し、両面孔版印刷装置200全体の動作を制御する。また制御装置100は、図16に総括的に示した版胴位置検知センサ29からの各種の版胴位置信号に基づいて、版胴1の回転位置の割り出し等の把握も行っている。
制御装置100は、クリーニングキー186からの再給紙クリーニングモード設定信号に基づいて、上述した再給紙クリーニングモードを実行するように印刷部16、再給紙手段45、切換ガイド46および移動手段87の各制御対象駆動手段を制御する制御手段としての機能を有する。
制御装置100は、無製版クリーニングキー186Aからの無製版再給紙クリーニングモード設定信号に基づいて、上述した無製版再給紙クリーニングモードを実行するように製版部15、印刷部16、再給紙手段45、切換ガイド46、移動手段87および後述する無製版給版手段の各制御対象駆動手段を制御する制御手段としての機能を有する。また、制御装置100は、未製版のマスタ8を版胴1に自動的に給版するように上記無製版給版手段を制御する機能も有する。
ROM102には、両面孔版印刷装置200全体の動作プログラムや必要なデータ等が記憶されており、この動作プログラムはCPU101によって適宜呼び出される。RAM103は、CPU101の計算結果を一時的に記憶する機能、操作パネル173上の各種キーおよび各種センサから設定および入力されたデータ信号およびオン/オフ信号を随時記憶する機能等を有している。
上述の構成に基づき、本実施形態における両面孔版印刷装置200の操作手順を含む動作について、図1ないし図16を参照しながら詳細に説明する。この動作は、制御装置100による制御の下になされるため、各種モータや各種ソレノイド等のアクチュエータ(制御対象駆動手段)の起動、作動、停止等の詳細動作を説明する際において、制御装置100からの指令あるいは指令信号に基づきというような表現をできるだけ省略する。
(動作例1)
まず、片面印刷モードを設定して片面印刷を行う動作例1について説明する。動作例1は、従来の孔版印刷装置により片面印刷を行う動作と略同様であり、印圧範囲パターンIIIが使用される。そのため、印圧範囲可変手段28の構成要素のうち通常印刷用の印圧カム軸26および印圧カム27が使用され、これらを除く図5ないし図7に示されている各構成要素は使用されない。動作例1では各動作を理解しやすくするために、マスタサイズとしてA3のものが、原稿サイズおよび用紙サイズとしてそれぞれA3サイズのものが用いられるものとする。
ユーザは給紙トレイ35上に印刷に使用される用紙サイズとしてA3サイズの用紙36を積載し、圧板142を開放してコンタクトガラス135上に印刷すべきA3サイズの原稿を載置した後、再び圧板142を閉じる。その後、操作パネル173上の各種キーによって製版条件を設定した後、片面印刷キー188を押下して片面印刷モードを設定して製版スタートキー174を押下する。
ユーザは片面印刷モードであることをLED188aの点灯によって確認した後、製版スタートキー174を押下する。製版スタートキー174が押下されると、用紙サイズ検知センサ117から用紙サイズ検知信号が、また原稿サイズ検知センサ149から原稿サイズ検知信号がそれぞれ制御装置100に送られ、信号を受けた制御装置100は各信号を比較する。このとき、用紙サイズと原稿サイズとが同じ場合は直ちに画像読取動作が行われ、用紙サイズと原稿サイズとが異なる場合には、制御装置100はその旨を表示装置190に表示してユーザに注意を促す。用紙サイズと原稿サイズとが異なる場合に、制御装置100からの指令で自動的に拡大または縮小の変倍を行い、原稿サイズと画像サイズとを整合させるように構成してもよい。
上述したように、片面印刷モード設定状態においては、切換ガイド46は自身のホームポジションである図1等に示す第1の変位位置(初期位置)に停止保持されている。製版スタートキー174が押下されてスタート信号が生成され、これが制御装置100に入力されると、排版から排紙に亘る一連の動作が自動的に行われる。これに先後して、上記給紙トレイ昇降モータがオンすることにより給紙トレイ35が上昇して、最上の用紙36が給紙ローラ33に当接することにより、図示しない給紙位置検知センサのオン検知によって最上の用紙36が給紙可能な状態になったことが制御装置100により判断されると、給紙装置30では給紙待機状態となる。
先ず、排版部17において、版胴1の外周面から使用済みマスタを剥離する排版動作が行われる。製版スタートキー174が押下されると版胴1が回転を開始し、版胴1はクランパ7が略真上となる上記ホームポジションに達すると、上記ホームポジションセンサから制御装置100にホームポジション信号が送られる。ホームポジション信号を受けた制御装置100は、このホームポジションを基点として図示しない上記エンコーダが発するパルス数を計測し、版胴1の外周面上に巻装された使用済みマスタの先端が従動ローラ168の外周面上に位置する無端ベルト169と対応する所定の排版位置に達したと判断すると、メインモータ20の作動を停止させる。
メインモータ20が停止されて版胴1が所定の排版位置で停止すると、排版駆動手段126が作動して各駆動ローラ164,167が回転駆動されると共に、下排版部材161が版胴1側に移動し、従動ローラ168の外周面上に位置する無端ベルト169が使用済みマスタと当接する。排版駆動手段126の作動に続いてメインモータ20が起動されることにより、版胴1の回転および無端ベルト169の移動によって版胴1の外周面上よりすくい上げられた使用済みマスタは、下排版部材161と上排版部材160とで挟持搬送されて版胴1の外周面より剥離される。剥離された使用済みマスタは排版ボックス162内に廃棄された後、圧縮板163によって圧縮される。
外周面上より使用済みマスタが全て剥離された後も版胴1は、回転を継続し、クランパ7が略真上に位置する所定の給版待機位置まで回転して停止する。版胴1が給版待機位置で停止すると、図示しない開閉装置が作動してクランパ7が開放され、両面孔版印刷装置200は給版待機状態となる。
上記排版動作と並行して、画像読取部18での原稿画像の読取動作が行われる。原稿画像の読み取りは、蛍光灯145によって照明された反射光を各反射ミラー143,144によって反射することにより行われ、読み取られた原稿画像に係る反射光はレンズ146で集束された後に画像センサ147に入射されて光電変換される。光電変換された電気信号は本体フレーム130内の図示しない上記A/D変換部に入力された後、図示しない製版制御装置(制御装置100の中に配設されていてもよい)を経由して図示しないサーマルヘッド駆動回路に送信される。
排版動作および画像読取動作と一部並行して、製版部15では製版動作が行われる。すなわち、サーマルヘッド11の上記発熱素子を発熱駆動制御するためのデジタル画像信号が、上記した図示しない製版制御装置等およびサーマルヘッド駆動回路を介してサーマルヘッド11へ送信される。これにより、サーマルヘッド11の上記多数の発熱素子が主走査方向にパルス状に通電されて選択的に発熱されると共に、マスタ搬送モータ10が回転駆動されることにより、プラテンローラ9、搬送ローラ対13が回転を開始して、マスタロール8aからマスタ8が引き出されつつマスタ搬送方向X1に搬送されながら、マスタ8の上記熱可塑性樹脂フィルム部分が画像情報に応じて選択的に加熱穿孔される。
そして、製版済みマスタ8Yの先端部がマスタガイド板14に案内されてステージ6に対して拡開しているクランパ7の間に挿入され、マスタ搬送モータ10のステップ数がある設定値に達し、製版済みマスタ8Yの先端部がステージ6とクランパ7との間に届いたと判断されると、上記開閉装置によりクランパ7が閉じられ、製版済みマスタ8Yの先端部がステージ6とクランパ7との間に吸着・挟持される。
製版済みマスタ8Yの先端部のクランプ後、メインモータ20の回転駆動により版胴1がマスタ搬送速度と略同じ周速度で回転を再開して、製版済みマスタ8Yがプラテンローラ9および搬送ローラ対13により搬送されて版胴1の外周面へ巻装されるべく給版される。マスタ搬送モータ10の所定ステップ数の回転駆動により、マスタ8への製版および設定量の製版済みマスタ8Yの搬送が終了したと判断されると、カッタ12が作動して製版済みマスタ8Yが切断されると共に、マスタ搬送モータ10の回転駆動が停止されることによりプラテンローラ9および搬送ローラ対13の回転が停止する。切断された製版済みマスタ8Yの後端が、版胴1の回転によって製版部15内から引き出され、版胴1の外周面に完全に巻き取られた段階で版胴1への製版済みマスタ8Yの巻装が終了することにより、給版動作が終了する。
版胴1への製版済みマスタ8Yの巻装が完了すると、版胴1が所定の周速度で図1に示す矢印方向に回転し始めることにより、版付けのための給紙・印刷工程が開始される。なお、用紙36の先端が用紙検知センサ32を横切り・通過するまでは、換言すれば用紙検知センサ32により用紙36の先端がオン検知されるまでは、制御装置100によって係止手段64の第1ソレノイド62がオフされたままに制御されているため印圧範囲可変手段28は非作動状態にあり、これによりプレスローラ21は非印刷位置、すなわち版胴1の外周面から離間した初期位置で保持されている。
版胴1が矢印方向に低速で回転して、先ず、図11に示した給紙開始用遮光板121が給紙レジストセンサ120と係合することにより、給紙レジストセンサ120がオンして給紙スタート信号が生成され、この信号がトリガとなって給紙モータ37が起動(回転駆動開始)する。給紙モータ37が図12において時計回りに回転駆動されることにより、給紙モータプーリ38、給紙モータベルト40、給紙ローラプーリ39および上記ワンウェイクラッチを介して、給紙ローラ軸33aおよび給紙ローラ33が時計回りに回転することで、給紙ローラ33と接触している給紙トレイ35上の最上の用紙36が、搬送されながら分離部材34との協働作用によって1枚に分離されて用紙搬送方向Xの下流側であるレジストローラ対31のニップ部に向けて給送される。
次いで、版胴1が図1における矢印方向にさらに回転して、レジスト開始用遮光板122が給紙レジストセンサ120と係合することにより、給紙レジストセンサ120がオンしてレジストスタート信号が生成され、この信号がトリガとなってレジストモータ41が起動(回転駆動開始)する。このレジストモータ41が起動するタイミング、換言すればレジストローラ下31bが回転駆動されるタイミングは、版胴1上に巻装された製版済みマスタ8Yの版胴回転方向における片面製版画像8YAの画像領域先端部がプレスローラ21と対応する位置に到達する所定のタイミングになるように設定されている。
レジストモータ41が図12において反時計回りに回転駆動され、レジストモータプーリ42、レジストモータベルト44およびレジストローラプーリ43を介して、レジスト下軸32aおよびレジストローラ下31bが反時計回りに回転することで、レジストローラ対31のニップ部で当接して待機している用紙36の先端が、レジストローラ上31aとで押圧されながら給送され、版胴1とプレスローラ21との間に向けて送り出される。
次いで、レジストローラ対31により給送された用紙36先端の進入が正常に行われ、すなわち用紙36の先端が、上記タイマで計時される所定の時間内(あるいはレジストモータ41に供給される所定のパルス数内)に用紙検知センサ32によってオン検知されることによって、この信号が制御装置100に入力される。この用紙検知センサ32からの用紙36先端の検知信号および版胴位置検知センサ29からの版胴1の回転位置情報に基づいて、制御装置100は係止手段64の第1ソレノイド62に通電をさせる指令信号を第1ソレノイド62に係るソレノイド駆動回路(図示せず)に送信し、これにより第1ソレノイド62がオンすることで印圧範囲可変手段28を作動させる。
第1ソレノイド62がオンすることで、プランジャ62aが吸引され、これにより係止部材60が引張バネ63の付勢力に抗して支軸61を中心に反時計回りに揺動し、係止部材60の係止爪60aに切欠22bを係止させている印圧アーム22の他端部側は、その係止を解除されて印圧バネ25の付勢力によってアーム軸22aを中心に時計回りに揺動する。印圧アーム22の他端部側の揺動により、カムフォロア24の外周面が版胴1と同期して回転している印圧カム27の大径部周面と当接し、カムフォロア24の外周面が印圧カム27の小径部周面と対向し非当接状態となる印圧カム27の回転位置(例えば図4を借りて示す回転位置)で、印圧アーム対22はアーム軸22aを中心に印圧バネ25の付勢力によって時計回りに揺動し上昇することとなる。
これにより、プレスローラ21は、図10に示すように、その外周面が図1に示す版胴1の表面領域1Aないしは裏面領域1B上に巻装されている製版済みマスタ8Yの片面製版画像8YAよりも少し左寄りの先端余白部分に用紙36を押し付けて印圧を付与する印刷位置に変位することとなって、印刷ニップ部16a(例えば図4参照)が形成される。これと同時に、プレスローラ駆動モータ55がプレスローラ21を版胴1の周速度と略同じ周速度で回転させることにより、プレスローラ21は版胴1の回転方向と反対方向に回転しながら版胴1上の製版済みマスタ8Yに用紙36を連続的に押し付けることで、製版済みマスタ8Yを版胴1の外周面に密着させそれにインキを充填させるためのいわゆる版付けが行われる。この版付けでは、版胴1の開孔部1aの開孔部分から製版済みマスタ8Yの穿孔部分へとインキが滲み出てきて用紙36の表面に転移されることで孔版印刷が行われる。
この時、インキローラ2も版胴1の回転方向と同一方向に回転する。インキ溜まり4のインキは、インキローラ2の回転によりインキローラ2の表面に付着され、インキローラ2とドクターローラ3との間隙を通過する際にその量を規制され、版胴1の内周面に供給される。一方、プレスローラ21の昇降動作に連動して、再給紙搬送装置104は再給紙筐体110を介して駆動軸107aを中心として揺動する。片面印刷モードでは、再給紙搬送装置104のベルト駆動モータ105および吸引ファン109は非作動状態のままであると共に、移動手段87の駆動モータ94も非作動状態のままであり、移動ガイド81は初期位置P2を占めたままの状態にある。
こうして版胴1上の製版済みマスタ8Yにおける片面製版画像8YAに対応した版付け印刷が行われ、版胴1がさらに回転して片面製版画像8YAの後端より少し右寄りの後端余白部分において、版胴1と同期して回転している印圧カム27の大径部周面がカムフォロア24の外周面と当接することとなる。これにより、印圧アーム対22はアーム軸22aを中心に印圧バネ25の付勢力に抗して反時計回りに揺動変位すると共に、プレスローラ21は非印刷位置を占めるべく下降変位することとなって、プレスローラ21による印圧付与状態が解除される。
なお、版胴1が図1中矢印方向に回転して、クランパ7が版胴1に圧接しているプレスローラ21の近傍に至ると、版胴1の回転と同期して回転駆動されていた印圧カム27が、その大径部周面をカムフォロア24の外周面に当接する位置に回転させているので、プレスローラ21は版胴1の外周面から外側へ突出しているクランパ7から離間することとなり、プレスローラ21とクランパ7部位との干渉が避けられる。
こうして版付け印刷された片面印刷済み用紙36cはプレスローラ21で押圧された状態で版胴1の図1中矢印方向の回転によってさらに搬送され、片面印刷済み用紙36cの先端部は、版胴1の外周面に接近する剥離爪170および剥離ファン171からの送風により版胴1上の製版済みマスタ8Yから確実に剥離され、剥離された片面印刷済み用紙36cは下方へと落下して排紙搬送装置152の排紙ベルト158へ送られ、図1中矢印(反時計回り)方向に回転している排紙ベルト158の上面に吸引ファン159による吸引力によって引きつけられ保持されながら用紙搬送方向Xの下流側に搬送されて、一対の排紙サイドフェンス172a,172bによってその両側端を揃えられつつ排紙トレイ172に排出される。
一方、プレスローラ21が版胴1の外周面に当接した時点より版胴1が略4分の3周し、印圧カム27の大径部周面とカムフォロア24とが接する時点、つまり、係止部材60の係止爪60aと印圧アーム22の切欠22bとが係止可能な時点において、制御装置100からの指令により第1ソレノイド62への通電が遮断(オフ)される。すると、係止部材60は、引張バネ63の付勢力により支軸61を中心として時計回りに揺動され、その係止爪60aに印圧アーム22の切欠22bが係止される。これにより、プレスローラ21は、版胴1の外周面から離れた非印刷位置に復帰して保持されると共に、版胴1は再びホームポジションまで回転して停止し、版付け動作を終えて両面孔版印刷装置200は印刷待機状態となる。
また、給紙ないしは版付け中において、プラテンローラ9および搬送ローラ対13が回転を再開して、切断されたマスタ8の先端が搬送ローラ対13のニップ部に向けて送り込まれる。マスタ搬送モータ10のパルス数から、切断されたマスタ8の先端が搬送ローラ対13のニップ部に届き挟持されたと判断されると、プラテンローラ9および搬送ローラ対13の回転が停止し、次の製版に備えた製版待機状態になる。
両面孔版印刷装置200が印刷待機状態となった後、印刷速度設定キー183および操作パネル173上の各種キーによって印刷条件を入力した後に試し刷りキー176が押下されると試し刷りが行われる。試し刷りキー176が押下されると、設定された印刷速度で版胴1が回転駆動されると共に、給紙部30から用紙36が1枚給送される。給送された用紙36はレジストローラ対31で一時停留された後に版付け時と同じタイミングで給送され、プレスローラ21によって版胴1外周面上の製版済みマスタ8Yに圧接される。印刷画像を形成された片面印刷済み用紙36cは剥離爪170および剥離ファン171により上記したと同様に版胴1上の製版済みマスタ8Yから確実に剥離され、剥離された片面印刷済み用紙36cは排紙搬送装置152によって上述したと同様の動作で搬送されて排紙トレイ172上に排出される。
設定された印刷速度に伴い、印圧範囲可変手段28、給紙部30、排紙搬送装置152等の各種モータや各種ソレノイド等の制御対象駆動手段が印刷速度に適合した速度やタイミングでそれぞれ駆動制御される。試し刷りにより画像の位置あるいは濃度等が確認され、テンキー179によって印刷枚数が入力された後に印刷スタートキー175が押下されると、給紙部30から用紙36が連続的に給送され、試し刷りと同条件で印刷動作が行われる。そして、設定された印刷枚数(所定枚数)が消化されると版胴1がホームポジションで停止し、両面孔版印刷装置200は再び印刷待機状態となる。通常の印刷動作は、版付け時の印刷動作と比較して、上記したように版付け印刷に用いられた用紙36の枚数が正規の通常の印刷枚数としてカウントされないこと、およびユーザが所望する設定印刷速度に応じた速度での給紙、印刷および排紙の各動作が行われることが主に相違するだけである。
なお、用紙36の先端が用紙検知センサ32により、制御装置100の上記タイマで計時される所定の時間内に検知されないとき、制御装置100はレジストローラ対31またはこれよりも用紙搬送方向Xの上流側で用紙36がジャム等によって滞留状態にあると判断して、係止手段64の第1ソレノイド62をオフ状態として図2に示したようにプレスローラ21を非印刷位置で保持したままとする。これにより、用紙36がないのにも拘わらず、プレスローラ21が印刷位置を占めてしまうことにより、版胴1上の製版済みマスタ8Yにおける片面製版画像8YAに接触して、プレスローラ21の外周表面をインキで汚してしまうことが防止される。このような制御動作は、後述する両面印刷モード時の連続的な給紙動作等でも同様であり、以下一々の説明を省略する。
上記したような用紙検知センサ32に相当する用紙検知手段を、プレスローラ21の外周面に保持されて印刷ニップ部16aに搬送されていく表面印刷済み用紙36aの先端および後端を検知すべく搬送路上に配設してもよい。画像読取部18での読取り動作は、上述した以外に、ADF148を使用する場合もある。この場合の動作例1との相違点は、次のようである。すなわち、ユーザによってADF148の原稿受け台134にA3サイズの原稿133がセットされると、上記排版動作と並行して、画像読取部18のADF148が作動することにより1枚の原稿133が読取部であるコンタクトガラス135上に送出されることのみ相違するだけである。その後、上述したと同様に、スキャナ装置132の作動によってその原稿133の画像が光学情報として読み取られる。
(動作例2)
次に、両面印刷モードを設定して両面印刷を行う動作例2について説明する。この動作例2は、本発明に特有の動作を多く含んでいて、図10に示した印圧範囲パターンI、印圧範囲パターンIIおよび印圧範囲パターンIIIの全てが使用される。そのため、印圧範囲可変手段28の構成要素のうち図5ないし図7に示されている全構成要素が使用される。動作例2では、各動作を理解しやすくするために、マスタサイズとしてA3のものが、原稿サイズおよび用紙サイズとしてそれぞれA4サイズのものが用いられるものとする。以下、動作例1と相違する点を中心に説明する。
ユーザは給紙トレイ35上に印刷に使用される用紙サイズとしてA4サイズの用紙36を積載し、圧板142を開放してコンタクトガラス135上に表面印刷用の1枚目のA4サイズの原稿を載置した後、再び圧板142を閉じる。その後、操作パネル173上の各種キーによって製版条件を設定した後、両面印刷キー187を押下して両面印刷モードを設定し、その後、両面印刷モードであることをLED187aの点灯によって確認する。次いで、製版スタートキー174を押下すると、片面印刷モード時と同様にスタート信号が生成されて、これが制御装置100に入力される。
動作例1と同様に、用紙サイズ検知センサ117から用紙サイズ検知信号が、また原稿サイズ検知センサ149から原稿サイズ検知信号がそれぞれ制御装置100に送られ、これらの信号を受けた制御装置100は各信号を比較する。本実施形態では、片面印刷時において版胴1で印刷可能な最大用紙サイズがA3サイズであるため、両面印刷時において使用可能な用紙サイズはA4横置きまでである。
原稿サイズと用紙サイズとを比較した結果、両サイズが同じ場合には直ちに画像読取動作が行われ、両サイズが異なる場合には、制御装置100はその旨を表示装置190に警告として表示してユーザに注意を促す。用紙サイズと原稿サイズとが異なる場合に、制御装置100からの指令で自動的に拡大または縮小の変倍を行って原稿サイズと画像サイズとを整合させる構成、表示装置190に縮小や画像データの回転等の手順を表示してユーザの操作の手助けを行う構成としてもよい。また、用紙サイズがA4横置きを超える大きさの場合には、制御装置100は両面印刷動作を禁止して片面印刷を促す旨の表示を表示装置190にさせる。
製版スタートキー174が押下されると、動作例1と同様に排版から排紙に亘る一連の動作が自動的に行われる。動作例1と同様にして、給紙トレイ35の最上の用紙36が給紙可能な状態になったことが制御装置100により判断されると、給紙部30では給紙待機状態となる。動作例1と同様の排版動作が行われた後、外周面上より使用済みマスタを全て剥離された版胴1は、動作例1のときと同様に給版待機位置で停止し、図示しない開閉装置によってクランパ7が開放される。
この排版動作と一部並行して画像読取部18では表面印刷用の1枚目の原稿画像の読取動作が動作例1と同様に行われ、その画像データ信号が上記製版制御装置等を経由して上記サーマルヘッド駆動回路に送信される。排版動作および画像読取動作と一部並行して、製版部15では動作例1と同様にサーマルヘッド11による製版が行われ、プラテンローラ9、搬送ローラ対13の回転によって、マスタロール8aからマスタ8が引き出されつつマスタ搬送方向X1に搬送されながら、マスタ8の上記熱可塑性樹脂フィルム部分が画像情報に応じて選択的に加熱穿孔されて、マスタ8の前半部分に表面印刷用の表面製版画像8Aが形成される(図10に示す分割製版済みマスタ8X参照)。
そして、分割製版済みマスタ8Xの先端部がマスタガイド板14に案内されてステージ6に対して拡開しているクランパ7の間に挿入され、マスタ搬送モータ10のステップ数がある設定値に達し、分割製版済みマスタ8Xの先端部がステージ6とクランパ7との間に届いたと判断されると、上記開閉装置によりクランパ7が閉じられ、分割製版済みマスタ8Xの先端部がステージ6とクランパ7との間に吸着・挟持される。
分割製版済みマスタ8Xの先端部のクランプ後、メインモータ20の起動(回転駆動開始)により版胴1がマスタ搬送速度と略同じ周速度で回転を再開して、分割製版済みマスタ8Xがプラテンローラ9および搬送ローラ対13により搬送されて版胴1の外周面へ巻装されるべく給版される。マスタ搬送モータ10のステップ数により、図10に示す分割製版済みマスタ8Xのうちの表面製版画像8Aの製版が完了したと制御装置100によって判断されると、プラテンローラ9および搬送ローラ対13ならびに版胴1の回転が停止し、次の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面印刷用の裏面製版画像8Bの製版のための製版待機状態となる。
次いで、ユーザは再び圧板142を開放してコンタクトガラス135上に裏面印刷用のA4サイズの2枚目の原稿を載置した後、再び圧板142を閉じる。その後、再度、製版スタートキー174を押下すると、スタート信号が生成されてこれが制御装置100に入力される。この時、1枚目の原稿の場合と同様に、制御装置100による原稿サイズと用紙サイズとの比較および上記したと同様の処理動作が行われる。画像読取部18では裏面印刷用の2枚目の原稿画像の読取動作が上記1枚目の原稿のときと同様に行われ、その画像データ信号が上記した図示しない製版制御装置等を経由して上記サーマルヘッド駆動回路に送信される。製版部15では1枚目の原稿のときと同様にサーマルヘッド11による製版が行われ、マスタ搬送モータ10が再び回転駆動されることにより、プラテンローラ9、搬送ローラ対13が回転されることで、マスタロール8aからマスタ8が引き出されつつマスタ搬送方向X1に搬送されながら、マスタ8の上記熱可塑性樹脂フィルム部分が画像情報に応じて選択的に加熱穿孔されて、マスタ8の後半部分に裏面印刷用の裏面製版画像8Bが形成される(図10参照)。
この時、版胴1がマスタ搬送速度と略同じ周速度で回転を再開することにより、分割製版済みマスタ8Xの後半部分が製版部15内から引き出されつつ版胴1の外周面へ巻装されていく。そして、マスタ搬送モータ10のステップ数により、分割製版済みマスタ8Xのうちの最後の裏面製版画像8Bの製版が完了したと制御装置100によって判断されると、カッタ12が作動して分割製版済みマスタ8Xの後端部分が切断されると共に、プラテンローラ9および搬送ローラ対13の回転が停止し、版胴1の回転によって切断された1版分の分割製版済みマスタ8Xの後端が製版部15内から完全に引き出され、版胴1への分割製版済みマスタ8Xの巻装・給版動作が完了する。
なお、原稿画像の読取動作および画像データの入力動作は、上述した例に限らず、例えばADF148を使用して原稿133をコンタクトガラス135上に自動的に搬送する構成、あるいは図示しない外部装置から画像データを取り込む構成としてもよい。また、両面印刷モード時において1枚の原稿を反転させて搬送し、その表面および裏面から2枚分の画像データを取得する構成としてもよい。また、両面印刷モード時において表裏面印刷用の1枚の原稿を反転させて搬送し、その表面および裏面から2枚分の画像データを取得する構成としてもよい。
本実施形態では、分割製版済みマスタ8Xのうちの表面製版画像8Aの製版が完了した時、次の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面印刷用の裏面製版画像8Bの製版のための製版待機状態とすべく製版部15におけるプラテンローラ9および搬送ローラ対13ならびに版胴1の回転を一時的に停止しているが、次のようにすることが望ましい。すなわち、ADF148による原稿133の自動搬送動作に加えて、2枚目の原稿を予めスキャンして、読み取られた原稿画像に係る画像データを記憶・格納する例えばビットマップメモリ等からなる図示しない画像メモリを設け、この画像メモリ内に1枚目および2枚目の画像データを格納・記憶しておき、その画像データを順次呼び出しながら連続的に製版を行うように構成する方が、製版時間の短縮やファーストプリントタイム(FPT)を短縮する上からは望ましい。
上記した版胴1への分割製版済みマスタ8Xの巻装が完了すると、版胴1が所定の周速度(通常、版付け用の低速度)で図3に示す矢印方向に回転し始めることにより、版付けのための給紙・印刷工程が開始される。動作例1と同様に、用紙検知センサ32により用紙36の先端がオン検知されるまでは、係止手段64の第1ソレノイド62がオフされたままに制御されているため印圧範囲可変手段28は非作動状態にあり、これによりプレスローラ21は非印刷位置で保持されている。
版胴1が矢印方向に回転して、先ず、図11に示した給紙開始用遮光板121が給紙レジストセンサ120と係合することにより、動作例1と同様にして給紙モータ37が起動する。給紙モータ37が図12において時計回りに回転駆動されることにより、動作例1と同様の動作を介して、給紙ローラ33と接触している給紙トレイ35上の最上の1枚目の用紙36が、搬送されながら分離部材34との協働作用によって1枚に分離されてレジストローラ対31のニップ部に向けて送り出される。
こうして送り出された用紙36の先端がレジストローラ対31のニップ部で当接した後、用紙36の先端部に所定の湾曲した撓みが形成された状態で保持される。次いで、版胴1が図1における矢印方向にさらに回転して、レジスト開始用遮光板122が給紙レジストセンサ120と係合することにより、動作例1と同様にしてレジストモータ41が起動する。レジストモータ41が図12において反時計回りに回転駆動され、動作例1と同様の動作を介して、レジストローラ対31のニップ部で当接して待機していた用紙36の先端が動作例1と同様の所定のタイミングを取られたレジストローラ対31の回転によって、版胴1とプレスローラ21との間に向けて送り出される。この時、動作例1と同様に、レジストローラ対31により給送された用紙36先端の進入が用紙検知センサ32によって正常に検知される。
次いで、用紙検知センサ32からの用紙36先端の検知信号および版胴位置検知センサ29からの版胴1の回転位置情報に基づいて、制御装置100は動作例1と同様に第1ソレノイド62をオンさせることにより、印圧範囲可変手段28を作動させる。第1ソレノイド62がオンすることで、動作例1と同様の詳細動作を介して、カムフォロア24の外周面が印圧カム27の輪郭周面と当接し、カムフォロア24の外周面が印圧カム27の小径部周面と対向し非当接状態となる印圧カム27の回転位置で、印圧アーム対22はアーム軸22aを中心に印圧バネ25の付勢力によって時計回りに揺動し上昇することとなる。以下、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aに対応した版付けや後述する正規の両面印刷動作における表面印刷を行うときには、図10に示した印圧範囲パターンIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミングが選択されるように印圧範囲可変手段28が制御される。
これにより、プレスローラ21は、図10に示すように、その外周面が図1に示す版胴1の表面領域1A上に巻装されている分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8Aよりも少し左寄りの先端余白部分に用紙36を押し付けて印圧を付与する印刷位置に変位することとなって、印刷ニップ部16aが形成される(図10に示す印圧範囲パターンIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミング参照)。これと同時に、プレスローラ駆動モータ55がプレスローラ21を版胴1の周速度と略同じ周速度で回転させることにより、プレスローラ21は版胴1の回転方向と反対方向に回転しながら版胴1上の分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8A部分に用紙36を連続的に押し付けることで、分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8Aを版胴1の外周面に密着させそれにインキを充填させるためのいわゆる版付けが行われる。この版付けでは、版胴1の開孔部1aの開孔部分から分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aの穿孔部分へとインキが滲み出てきて用紙36の表面に転移されることで孔版印刷が行われる。
この時、インキローラ2も動作例1と同様に版胴1の回転方向と同一方向に回転する。インキ溜まり4のインキは、インキローラ2の回転によりインキローラ2の表面に付着され、インキローラ2とドクターローラ3との間隙を通過する際にその量を規制され、版胴1の内周面に供給される。こうして版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aに対応した版付け印刷が行われ、版胴1がさらに回転してその表面製版画像8Aの後端近傍部分が印刷ニップ部16aに対応した回転位置に至ると、制御装置100は版胴位置検知センサ29からの版胴1の回転位置情報に基づいて、第2ソレノイド77をオンさせることにより、プランジャ77aがスプリング78の付勢力に抗して図7中矢印上向きに引き上げられることで、ストッパ76の第1係合部76aとスリーブ72の凸部72aとの係合が解除されると、図5においてスプリングクラッチ73が接続された状態となる。
これにより、クラッチ胴71、スリーブ72、スプリングクラッチ73およびクラッチギヤ70が一体で回転し、上記駆動手段(メインモータ20)の回転力が間欠カム軸68、間欠カム駆動ギヤ66と噛合する間欠カムギヤ65を介して間欠カム67に伝達されて、間欠カム67の大径部が図3において略右真横位置となるまで時計回りに回転してカムフォロア24に押し付けることとなり、印圧アーム22がアーム軸22aを中心として反時計回りに回転する。
一方、ストッパ76の第2係合部76bとスリーブ72の凸部72aとが係合することにより、スプリングクラッチ73の接続が再び断たれて、間欠カム67の大径部が印圧バネ25の付勢力に抗して図3において略反対位置まで回転した後にその位置で保持される。これにより、カムフォロア24が間欠カム67の大径部に乗り上げた状態で保持されて、プレスローラ21が印刷位置から離間して略非印刷位置を占めた状態で保持される。この時には既に、制御装置100からの指令により係止手段64の第1ソレノイド62がオフされていることにより、プレスローラ21が非印刷位置を占めた初期位置状態に復帰・保持される。
上記版付け動作と並行して、版胴1のクランパ7が非印刷位置を占めているプレスローラ21上を通り過ぎた頃に、ソレノイド47がオンされることで、切換ガイド46が図3に示すように軸47aを中心として反時計回りに揺動されて第2の変位位置を占めて停止する。これと同時に、移動手段87の駆動モータ94が起動(例えば正転駆動開始)されることにより、図3に示すように移動ガイド81も初期位置(待機位置)P2から版付けによって印刷された表面印刷済み用紙36aの先端位置を挟持すべく、4箇所の突起81cが案内溝88に沿って案内・移動されつつ移動位置P1を占めるように図において右斜め上方に移動する。駆動モータ94のステップ数がある設定値に達することにより、移動ガイド81が移動位置P1を占める際には、図9に実線で示したように解除レバー下83が解除カム98の輪郭周面に摺接し乗り上げることによって、クランプ爪81bは時計回りに揺動して挟持台81f上面との当接状態から開放された状態で待機して停止する。
移動ガイド81が移動位置P1を占めて停止する頃に、図3に示すように、表面印刷済み用紙36aの先端部は第2の変位位置を占めて停止している切換ガイド46と剥離ファン171(図1参照)の作動によって、版胴1上の分割製版済みマスタ8X(図10参照)から確実に剥離される。剥離された表面印刷済み用紙36aの先端部は、排紙搬送装置152の排紙ローラ前156の下方近傍および切換ガイド46とプレスローラ21外周面との間に適宜配置される図示しない複数の用紙案内部材により、表面印刷済み用紙36aの先端が移動ガイド81の下面に案内されて挟持台81fと開放されているクランプ爪81bとの隙間部分に挿入されて、次いでエンドフェンス81dに当接することでその先端が突き当て揃えられる。表面印刷済み用紙36aの先端が挟持台81fとクランプ爪81bとの上記隙間部分に挿入された頃に、駆動モータ94が表面印刷済み用紙36aの搬送速度(版胴1とプレスローラ21との回転による周速度と略同じ)と略同じ速度となるように起動(例えば逆転駆動開始)されることにより、移動ガイド81は初期位置P2に向けて図において左斜め下方に移動開始する。
この際、図9において、解除レバー下83が解除カム98の輪郭周面から外れることによって、上記ねじりコイルバネの付勢力によりクランプ爪81bが反時計回りに揺動してクランプ爪81bの自由端と挟持台81f上面との間に表面印刷済み用紙36aの先端が挟持・クランプされる。移動ガイド81は上記したように表面印刷済み用紙36aの先端を固定した状態で表面印刷済み用紙36aの搬送速度と略同じ移動速度で初期位置P2に向けて図において左斜め下方に移動する。
説明が前後するが所定時間後、換言すれば版胴1と同期して回転している印圧カム27の大径部がカムフォロア24と当接するようになったとき、制御装置100からの指令により第2ソレノイド77がオフされることにより、スプリング78の付勢力によってストッパ76が図7に示したとは反対の時計回りに回転することによって、ストッパ76の第2係合部76bとスリーブ72の凸部72aとの係合が解除されることで、スプリングクラッチ73が再度接続された状態となる。これにより、上記したと同様にクラッチ胴71等とクラッチギヤ70が一体で回転し、上記駆動手段の回転力が間欠カム軸68、間欠カム駆動ギヤ66と噛合する間欠カムギヤ65を介して間欠カム67に伝達されて、間欠カム67の大径部が図3に示す位置近傍に回転され、次いでストッパ76が所定角度回転して図6に示すようにストッパ76の第1係合部76aがスリーブ72の凸部72aと係合することによって、スプリングクラッチ73の接続が再度断たれて、間欠カム67の大径部が図2に示す初期位置まで回転した後その位置で保持されることとなる。この時、第1ソレノイド62がオフ制御されていることにより、プレスローラ21が非印刷位置に保持されている。そして、次の給紙に備えた給紙待機状態となる。
一方、図4を借りて示すように、表面印刷済み用紙36aは移動手段87の作動によって移動ガイド81のクランプ爪81bと挟持台81fとの間に挟持・固定された状態で初期位置P2に向けて搬送され、移動ガイド81が初期位置P2を占めて停止した時に、今度は図9に二点鎖線で示したように解除レバー上82が解除ピン99と当接することによって、クランプ爪81bが時計回りに揺動されることで、表面印刷済み用紙36aの先端を含む先端部は挟持・固定状態から開放されることとなる。表面印刷済み用紙36aの後端が切換ガイド46を通り過ぎた頃にソレノイド47がオフされることで、上記引張バネの付勢力によって切換ガイド46が図1に実線で示すように軸47aを中心として時計回りに揺動されて第1の変位位置(初期位置)に復帰して停止するように制御される。
その先端が開放された表面印刷済み用紙36aは、再給紙搬送装置104の先ず吸引ファン109が駆動されることによりその裏面の非印刷画像面が搬送ベルト108上面に吸引されて一時的に吸着保持・固定され、次いでベルト駆動モータ105が起動されて所定時間だけ駆動されることによる搬送ローラ後107の時計回りの回転を介しての搬送ベルト108の回転搬送によって、表面印刷済み用紙36aの先端がプレスローラ21と再給紙ローラ51との間に向けて搬送される。これにより、表面印刷済み用紙36aの先端がプレスローラ21と再給紙ローラ51との間に形成されるべきニップ部に近接した位置、すなわち再給紙センサ52で検知される所定位置まで搬送された後、ベルト駆動モータ105が一時的に駆動停止されることによって搬送ベルト108の回転が一時停止される。
次いで、版胴位置検知センサ29からの版胴1の回転位置情報に基づいて、版胴1が所定位置、すなわち版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応して表面印刷済み用紙36aの裏面への印刷が可能となる版胴1の回転位置に達したと制御装置100により判断されると、ベルト駆動モータ105が版胴1の所定位置への回転に合わせた所定のタイミングで再度起動されることにより、搬送ローラ後107が再び時計回りに回転を開始することで、搬送ベルト108が表面印刷済み用紙36aの裏面を吸着保持した状態で版胴1の周速度と略同じ線速度で時計回りに回転される。これと同時的に、図2に示すプレスローラ駆動モータ55が回転駆動されることにより、プレスローラ21が反時計回りに回転されることで、プレスローラ21と再給紙ローラ51との間のニップ部に近接し再給紙センサ52の上面で一時的に保持・待機していた表面印刷済み用紙36aの先端が、反時計回りに回転するプレスローラ21とこれに従動して時計回りに回転する再給紙ローラ51との間に挟持されながら、版胴1の周速度と略同じ周速度で、かつ、ローラガイド板50によりプレスローラ21の外周面に沿って搬送されるように案内されて、版胴1とプレスローラ21とが圧接されることにより形成される印刷ニップ部16aに向けて表裏反転されながら搬送される。
この搬送と並行して版胴1の所定の回転位置、すなわち版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bの先端近傍部分が印刷ニップ部16aに対応した回転位置に至ると、換言すれば版胴1と同期して回転している印圧カム27の小径部がカムフォロア24に対向した非接触状態になっているとき、制御装置100は版胴位置検知センサ29からの版胴1の回転位置情報に基づいて、第2ソレノイド77をオフさせる。これにより、上記したと同様の詳細動作を介して、間欠カム67の大径部が図4に実線で示す初期位置まで回転した後その位置で保持されることとなる。この時には、同図4に示すように印圧カム27の小径部も間欠カム67の小径部もカムフォロア24に対向した非接触状態になっているので、図10に示すように、プレスローラ21はその外周面が図4に示す版胴1の裏面領域1B上に巻装されている分割製版済みマスタ8Xの裏面製版画像8Bよりも少し左寄りの先端部分に表面印刷済み用紙36aの裏面(図4では上面となっている)を押し付けて印圧を付与する印刷位置に変位することとなって、印圧バネ25の付勢力によって印刷ニップ部16aが形成されて版付け用の両面印刷が行われる(図10に示す印圧範囲パターンIIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミング参照)。
こうして、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応して表面印刷済み用紙36aの裏面に裏面印刷画像が形成される両面印刷が行われた版付け用の両面印刷済み用紙36bは、片面印刷済み用紙36cの排紙動作と同様に、その先端部が版胴1の外周面に接近する剥離爪170および剥離ファン171からの送風により版胴1上の分割製版済みマスタ8Xから確実に剥離され、剥離された両面印刷済み用紙36bは下方へと落下して排紙搬送装置152へ送られ、図4を借りて示すように反時計回りに回転している排紙ベルト158の上面に吸引ファン159による吸引力によって引きつけられ吸着保持されながら用紙搬送方向Xの下流側に搬送されて、排紙トレイ172に排出される。
一方、プレスローラ21が版胴1の外周面に当接した時点より版胴1が略4分の3周し、印圧カム27の大径部周面とカムフォロア24とが接する時点では、動作例1と同様の詳細動作を介して、プレスローラ21が版胴1の外周面から離れた非印刷位置に復帰して保持されると共に、版胴1は再びホームポジションまで回転して停止し、版付け動作を終えて両面孔版印刷装置200は次の正規の両面印刷のための印刷待機状態となる。
両面孔版印刷装置200が印刷待機状態となった後、印刷速度設定キー183および操作パネル173上の各種キーによって印刷条件を入力した後に、適宜試し刷りにより画像の位置あるいは濃度等が確認され、テンキー179によって印刷枚数が入力された後に印刷スタートキー175が押下されると、給紙部30から用紙36が連続的に給送され、テンキー179によって設定された設定枚数の両面印刷動作が行われる。
すなわち、設定枚数の両面印刷動作は、上述した版付け工程と同様に、最初の1枚目の表面印刷済み用紙36a(以下、単に「1枚目の表面印刷済み用紙36a」という)が再給紙搬送装置104の搬送ベルト108に吸着保持された後、再給紙センサ52によりその先端が検知される所定位置まで搬送して待機状態となるところまでは同じであるため、その説明を省略する。1枚目の表面印刷済み用紙36aが再給紙センサ52によりその先端が検知される所定位置まで搬送ベルト108で搬送されて待機状態に至るまでの動作と並行して、2枚目の用紙36が給紙部30の上述したと同様の詳細動作を介してレジストローラ対31から所定のタイミングで版胴1とプレスローラ21との間に向けて送り出される。
上述したと同様の詳細動作を介して図3に示すように移動ガイド81が初期位置P2から次の2枚目の表面印刷済み用紙36aの先端位置を挟持すべく移動位置P1を占めるように図において右斜め上方に移動し、これにより図9に実線で示したように解除レバー下83が解除カム98に乗り上げることによって、クランプ爪81bは時計回りに揺動して挟持台81f上面との当接状態から開放された状態で待機して停止する。一方、移動ガイド81の移動位置P1への移動動作と並行して、版胴1のクランパ7が非印刷位置を占めているプレスローラ21上を通り過ぎた頃に、ソレノイド47がオンされることで、切換ガイド46が図3を借りて示すように反時計回りに揺動されて第2の変位位置を占めて停止する。
移動ガイド81が移動位置P1を占めて開放状態で停止する頃に、次の2枚目の表面印刷済み用紙36aは第2の変位位置を占めて停止している切換ガイド46と剥離ファン171(図1参照)の作動によって、版胴1上の分割製版済みマスタ8X(図10参照)から確実に剥離され、剥離された表面印刷済み用紙36aの先端部は切換ガイド46および上記図示しない複数の用紙案内部材により移動ガイド81の下面に案内されて、挟持台81fと開放されているクランプ爪81bとの隙間部分に挿入され、次いでエンドフェンス81dに当接することでその先端が突き当て揃えられる。表面印刷済み用紙36aの先端が挟持台81fとクランプ爪81bとの上記隙間部分に挿入された頃に、上述したと同様の移動手段87の詳細動作を介して、移動ガイド81は2枚目の表面印刷済み用紙36aの搬送速度と略同じ速度で初期位置P2に向けて移動開始する。
この際、図9において、解除レバー下83が解除カム98の輪郭周面から外れることによって、上記ねじりコイルバネの付勢力によりクランプ爪81bが反時計回りに揺動してクランプ爪81bの自由端と挟持台81f上面との間に2枚目の表面印刷済み用紙36aの先端が挟持・クランプされる。移動ガイド81は2枚目の表面印刷済み用紙36aの先端を固定した状態でその表面印刷済み用紙36aの搬送速度と略同じ移動速度で初期位置P2に向けて図において左斜め下方に移動する。
図4および図10において、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aに対応して2枚目の用紙に印刷をするときおよびこれに引き続いて、再給紙手段45で反転搬送された1枚目の表面印刷済み用紙36aの裏面に版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応した印刷をするときには、通常の片面印刷モード(動作例1参照)時と同様に、図10に示した印圧範囲パターンIIIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミングが選択されるように印圧範囲可変手段28が制御される。このときの印圧範囲可変手段28の詳細動作は、動作例1と同様に行われるためその説明を省略する。
説明が前後するが、版胴位置検知センサ29からの版胴1の回転位置情報に基づいて、プレスローラ21の外周面と押圧状態で回転駆動されている版胴1が所定位置、すなわち版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応して1枚目の表面印刷済み用紙36aの裏面への印刷が可能となる版胴1の回転位置に達したと制御装置100により判断されると、ベルト駆動モータ105が再度起動されることにより、搬送ローラ後107が再び時計回りに回転を開始することで、搬送ベルト108が1枚目の表面印刷済み用紙36aの裏面を吸着保持した状態で版胴1の周速度と略同じ線速度で時計回りに回転される。この時には、図4に示すようにプレスローラ駆動モータ55が回転駆動されることにより、プレスローラ21が反時計回りに回転されることで、プレスローラ21と再給紙ローラ51との間のニップ部に当接して保持されていた表面印刷済み用紙36aの先端が、反時計回りに回転するプレスローラ21とこれに従動して時計回りに回転する再給紙ローラ51との間に挟持されながら、版胴1の周速度と略同じ周速度で、かつ、ローラガイド板50によりプレスローラ21の外周面に沿って搬送されるように案内されて、既に版胴1とプレスローラ21とが圧接されていることにより形成されている印刷ニップ部16aに向けて表裏反転されながら搬送される。
このときの印圧範囲可変手段28の詳細動作は、上述したように動作例1と同様に行われており、図4に示すように、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aに対して2枚目の用紙がプレスローラ21で押し付けられ、これに連続してプレスローラ21が印刷位置を占めたままの状態で、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対して再給紙手段45で反転搬送された1枚目の表面印刷済み用紙36aの裏面がプレスローラ21で押し付けられる。
一方、2枚目の表面印刷済み用紙36aは、図4に示すように、移動ガイド81のクランプ爪81bと挟持台81fとの間に挟持・固定された状態で移動手段87の上述した詳細動作を介して初期位置P2に向けて搬送され、移動ガイド81が初期位置P2を占めて停止した時に、図9に二点鎖線で示したように解除レバー上82が解除ピン99と当接することによって、クランプ爪81bが時計回りに揺動されることで、2枚目の表面印刷済み用紙36aの先端部は開放される。2枚目の表面印刷済み用紙36aの後端が切換ガイド46を通り過ぎた頃に、ソレノイド47がオフされ上記引張バネの付勢力によって切換ガイド46が図1に実線で示すように時計回りに揺動されて第1の変位位置(初期位置)に復帰して停止する。
その先端が開放された2枚目の表面印刷済み用紙36aは、再給紙搬送装置104の先ず吸引ファン109が駆動されることによりその裏面の非印刷画像面が搬送ベルト108上面に吸引されて一時的に吸着保持・固定され、次いでベルト駆動モータ105が起動されて所定時間だけ駆動されることによる搬送ベルト108の回転搬送によって、2枚目の表面印刷済み用紙36aの先端がプレスローラ21と再給紙ローラ51との間に向けて搬送される。これにより、表面印刷済み用紙36aの先端がプレスローラ21と再給紙ローラ51との間に形成されるべきニップ部に近接した位置、すなわち再給紙センサ52で検知される所定位置まで搬送された後、ベルト駆動モータ105が一時的に駆動停止されることによって搬送ベルト108の回転が一時停止される。
上述した2枚目の表面印刷済み用紙36aの搬送動作と並行して、図4に示すように、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応して1枚目の表面印刷済み用紙36aの裏面に裏面印刷画像が形成された1枚目の両面印刷済み用紙36bは、以下、動作例1および両面印刷モードにおける版付け時の排紙動作と同様に、その先端部が版胴1の外周面に接近する剥離爪170および剥離ファン171からの送風により版胴1上の分割製版済みマスタ8Xから確実に剥離され、剥離された両面印刷済み用紙36bは下方へと落下して排紙搬送装置152へ送られ、反時計回りに回転している排紙ベルト158の上面に吸引ファン159による吸引力によって引きつけられ吸着保持されながら用紙搬送方向Xの下流側に搬送されて、排紙トレイ172に排出される。
1枚目の両面印刷動作と並行して、その先端が再給紙センサ52で検知される所定位置である搬送ベルト108上で停止・待機していた2枚目の表面印刷済み用紙36aは、版胴位置検知センサ29からの版胴1の回転位置情報に基づいて、版胴1が所定位置、すなわち版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応して2枚目の表面印刷済み用紙36aの裏面への印刷が可能となる版胴1の回転位置に達したと制御装置100により判断されると、搬送ローラ後107が版胴1の所定位置への回転に合わせて所定のタイミングで再び時計回りに回転を開始することで、搬送ベルト108が2枚目の表面印刷済み用紙36aの裏面を吸着保持した状態で版胴1の周速度と略同じ線速度で時計回りに回転される。これと同時的に、プレスローラ21が反時計回りに回転されることで、2枚目の表面印刷済み用紙36aの先端は反時計回りに回転するプレスローラ21とこれに従動して時計回りに回転する再給紙ローラ51との間に挟持されながら、版胴1の周速度と略同じ周速度で、かつ、ローラガイド板50によりプレスローラ21の外周面に沿って搬送されるように案内されて、印刷ニップ部16aに向けて表裏反転されながら搬送される。
2枚目の表面印刷済み用紙36aは上述した1枚目の両面印刷と同様に版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応してその裏面に裏面印刷画像が形成された後、以下、その先端部が版胴1の外周面に接近する剥離爪170および剥離ファン171からの送風により版胴1上の分割製版済みマスタ8Xから確実に剥離される。剥離された2枚目の両面印刷済み用紙36bは下方へと落下して排紙搬送装置152へ送られ、反時計回りに回転している排紙ベルト158の上面に吸引ファン159による吸引力によって引きつけられ吸着保持されながら用紙搬送方向Xの下流側に搬送されて、排紙トレイ172に排出される。
以下、テンキー179で設定された設定枚数N枚に対して、(N−1)枚目までは上述したと同様の印刷動作が繰り返して行われる。そして、印刷動作終了直前時に再給紙搬送装置104に一時的に保持されるN枚目(最後の1枚目)の表面印刷済み用紙36aの裏面への両面印刷時には、図10に示した印圧範囲パターンIIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミングが選択されるように印圧範囲可変手段28が制御される。すなわち、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bにのみ、N枚目の表面印刷済み用紙36aの裏面がプレスローラ21によって押し付けられ、以下、上述したと同様の排紙動作を経て設定枚数N枚目の両面印刷動作が終了して、両面孔版印刷装置200は印刷待機状態となる。
通常の正規の両面印刷動作は、版付け時の両面印刷動作と比較して、上記したように版付け印刷に用いられた用紙36の枚数が正規の通常の印刷枚数としてカウントされないこと、およびユーザが所望する設定印刷速度に応じた速度での給紙、再給紙、表面印刷、裏面印刷および排紙等の各動作が行われることが主に相違するだけである。このように、通常の正規の両面印刷動作では、設定された印刷枚数の両面印刷が版胴1の1回転ごとに行われ、版胴1の略半回転では分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8Aに対応した表面印刷が、版胴1の残りの略半回転では分割製版済みマスタ8Xの裏面製版画像8Bに対応した裏面印刷がこの順に行われる。
(動作例3)
次に、再給紙クリーニングモードを設定して再給紙クリーニング動作を行う動作例3について説明する。例えば図4を借りて説明すると、2枚目の表面印刷済み用紙36aの他端が再給紙センサ52によって所定位置に位置したことが検知されたにも拘わらず、何らかの原因や不具合で2枚目の表面印刷済み用紙36aが版胴1とプレスローラ21との間に到達せずにジャムなどが発生した場合には、プレスローラ21は用紙が無いにも拘わらず版胴1上の分割製版済みのマスタ8X(図10参照)に押圧してしまうために、プレスローラ21の外周表面や版胴1上の分割製版済みのマスタ8X等がインキで汚れてしまう。このようなインキ汚れの清掃(クリーニング)を実行すべく、版胴1が分割製版済みのマスタ8Xを巻装した状態で同じ用紙を使用してこれを排紙部19に排出せずに連続的に再給紙し版胴1に対してプレスローラ21の押圧を繰り返す動作を実行する再給紙クリーニングモードの具体例を説明する。
動作例3は、本発明に特有の動作を多く含んでいて、図10に示した印圧範囲パターンIおよび印圧範囲パターンIIのうちの少なくとも一つのパターンが使用される。動作例3でも、各動作を理解しやすくするために、マスタサイズとしてA3のものが、原稿サイズおよび用紙サイズとしてそれぞれA4サイズのものが用いられるものとする。以下、動作例2と相違する点を中心に説明する。
図10に示す分割製版済みのマスタ8Xが版胴1に巻装された状態で上述した両面印刷動作中にジャムなどが発生した場合や、所定枚数(多数枚)の両面印刷動作終了後などにおいて、ユーザはクリーニングキー186を押下すると、再給紙クリーニングモード設定信号が生成されてこれが制御装置100に入力されることにより、内蔵された上記LEDが点灯して再給紙クリーニングモードの設定状態が視認される。次いで、製版スタートキー174を押下するとスタート信号が生成されて、これが制御装置100に入力されると、制御装置100からの指令の下に再給紙クリーニング動作(工程)が自動的に実行される。この場合の製版スタートキー174からのスタート信号は、排版動作に引き続いて製版動作を自動的に実行するための起動信号ではなく、同モードを立ち上げ・起動させるためのものである。
再給紙クリーニング動作は、図10に示す分割製版済みのマスタ8Xが版胴1に巻装された状態のままで、すなわち排版や製版工程を実行することなく行われる。上述した版付け工程までと同様に、印刷ニップ部16aにて版胴1上の分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8Aに対応して表面印刷された1枚の表面印刷済み用紙36aが再給紙搬送装置104の搬送ベルト108に吸着保持された後、再給紙センサ52によりその先端が検知される所定位置まで搬送して待機状態となるところまでは同じであるためその説明を省略する。また、プレスローラ21による印圧オンタイミングおよび押圧範囲も、この例では図10に示した印圧範囲パターンIが選択されるように印圧範囲可変手段28が上述したと同様に制御される。
移動ガイド81の移動位置P1への移動動作と並行して、版胴1のクランパ7が非印刷位置を占めているプレスローラ21上を通り過ぎた頃に、切換ガイド46が図3を借りて示すように第2の変位位置を占めて停止する。この状態は、分割製版済みのマスタ8Xが巻き付けれている版胴1に対して、上記と同じ1枚の表面印刷済み用紙36a(以下、「同一の表面印刷済み用紙36a」という)がプレスローラ21によって所定回数押圧終了されるまで継続される。
その先端が再給紙センサ52で検知される所定位置の搬送ベルト108上で停止・待機していた同一の表面印刷済み用紙36aは、版胴位置検知センサ29からの版胴1の回転位置情報に基づいて、版胴1が所定位置、すなわち版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aに対応して同一の表面印刷済み用紙36aの裏面への印刷が可能となる版胴1の回転位置に達したと制御装置100により判断されると、搬送ローラ後107が再び時計回りに所定のタイミングで回転を開始することで、搬送ベルト108が同一の表面印刷済み用紙36aの裏面を吸着保持した状態で版胴1の周速度と略同じ線速度で時計回りに回転される。これと同時的に、プレスローラ21が反時計回りに回転されることで、同一の表面印刷済み用紙36aの先端は反時計回りに回転するプレスローラ21と時計回りに回転する再給紙ローラ51との間に挟持されながら、版胴1の周速度と略同じ周速度で、かつ、ローラガイド板50によりプレスローラ21の外周面に沿って搬送されるように案内されて、印刷ニップ部16aに向けて表裏反転されながら搬送される。
上記同一の表面印刷済み用紙36aの印刷ニップ部16aへの搬送動作と並行して、移動ガイド81が初期位置(待機位置)P2から同一の表面印刷済み用紙36aの先端位置を挟持すべく、4箇所の突起81cが案内溝88に沿って案内・移動されつつ図3を借りて示すように右斜め上方に移動する。駆動モータ94のステップ数がある設定値に達することにより、移動ガイド81が移動位置P1を占める際には、図9に実線で示したように解除レバー下83が解除カム98の輪郭周面に摺接し乗り上げることによって、クランプ爪81bは時計回りに揺動して挟持台81f上面との当接状態から開放された状態で待機して停止する。
移動ガイド81が移動位置P1を占めて停止する頃に、プレスローラ21はその外周面が図3を借りて示す版胴1の表面領域1A上に巻装されている分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8Aよりも少し左寄りの先端部分に同一の表面印刷済み用紙36aの裏面(上面)を押し付ける(図10に示す印圧範囲パターンIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミング参照)こととなって、同一の表面印刷済み用紙36aの裏面(上面)に分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8Aに対応した表面印刷画像が形成・印刷されると共に、分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8Aの周囲に付着したインキが同一の表面印刷済み用紙36aの裏面(図において上面でもある非印刷画像面)に吸収される。これと同時に、プレスローラ21の外周表面に付着したインキも同一の表面印刷済み用紙36aの表面(図において下面でもある表面印刷画像面)に吸収されることとなる。
こうして、表面印刷画像が形成されると共にインキが吸収された同一の表面印刷済み用紙36a先端部は第2の変位位置を占めて停止している切換ガイド46と剥離ファン171(図1参照)の作動によって、版胴1上の分割製版済みマスタ8X(図10参照)から確実に剥離される。剥離された同一の表面印刷済み用紙36aの先端部は、図示しない複数の用紙案内部材により移動ガイド81の下面に案内されて挟持台81fと開放されているクランプ爪81bとの隙間部分に挿入されて、次いでエンドフェンス81dに当接することでその先端が突き当て揃えられる。表面印刷済み用紙36aの先端が挟持台81fとクランプ爪81bとの上記隙間部分に挿入された頃に、駆動モータ94が表面印刷済み用紙36aの搬送速度(版胴1とプレスローラ21との回転による周速度と略同じ)と略同じ速度となるように起動(例えば逆転駆動開始)されることにより、移動ガイド81は初期位置P2に向けて図において左斜め下方に移動開始する。
この際、図9において、解除レバー下83が解除カム98の輪郭周面から外れることによって、上記ねじりコイルバネの付勢力によりクランプ爪81bが反時計回りに揺動してクランプ爪81bの自由端と挟持台81f上面との間に表面印刷済み用紙36aの先端が挟持・される。移動ガイド81は同一の表面印刷済み用紙36aの先端を固定した状態で同一の表面印刷済み用紙36aの搬送速度と略同じ移動速度で移動手段87の上述した詳細動作を介して初期位置P2に向けて図において左斜め下方に移動する。
移動ガイド81が初期位置P2を占めて停止した時に、図9に二点鎖線で示して説明したように解除レバー上82が解除ピン99と当接することによって、クランプ爪81bが時計回りに揺動されることで、同一の表面印刷済み用紙36aの先端部が開放される。次いで、再給紙搬送装置104の先ず吸引ファン109が駆動されることによりその裏面の非印刷画像面が搬送ベルト108上面に吸引されて一時的に吸着保持・固定され、次いでベルト駆動モータ105が起動されて搬送ベルト108の回転搬送によって、同一の表面印刷済み用紙36aの先端がプレスローラ21と再給紙ローラ51とのニップ部に近接する所定の位置まで搬送される。これにより、同一の表面印刷済み用紙36aの先端が所定位置、すなわち再給紙センサ52で検知される所定位置まで搬送された後、ベルト駆動モータ105が一時的に駆動停止されることによって搬送ベルト108の回転が一時停止されて、次の搬送工程の待機状態となる。
このような移動ガイド81による移動位置P1での同一の表面印刷済み用紙36aの先端の挟持、初期位置P2への移動、初期位置P2での同一の表面印刷済み用紙36aの先端の開放、再給紙手段45による再給紙、印刷部16における版胴1に対するプレスローラ21の押圧の一連の工程を所定の回数繰り返した後に、複数回(所定の回数)表面印刷画像が表裏面に印刷され清掃のためのインキを表裏面に吸収した同一の表面印刷済み用紙36aを排出することとなる。すなわち、所定の回数の最終回では、同一の表面印刷済み用紙36aの後端が切換ガイド46を通り過ぎた頃に、上述した詳細動作を経て切換ガイド46が図1に実線で示すように時計回りに揺動されて第1の変位位置(初期位置)に復帰して停止する。所定の回数表面印刷画像が表裏面に印刷され清掃のためのインキを表裏面に吸収した同一の表面印刷済み用紙36aは、以下、両面印刷モードにおける版付け時の排紙動作と同様に、その先端部が版胴1の外周面に接近する剥離爪170および剥離ファン171からの送風により版胴1上の分割製版済みマスタ8Xから確実に剥離され、剥離された上記同一の両面印刷済み用紙36bは下方へと落下して排紙搬送装置152へ送られ、反時計回りに回転している排紙ベルト158の上面に吸引ファン159による吸引力によって引きつけられ吸着保持されながら用紙搬送方向Xの下流側に搬送されて、排紙トレイ172に排出される。
動作例3では、図10に示した印圧範囲パターンIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミングが選択されるように印圧範囲可変手段28が制御されることにより、版胴1の表面領域1A上に巻装されている分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8Aにのみ同一の表面印刷済み用紙36aの裏面と表面とが交互に繰り返して押圧するように構成しているが、これに限らず、版胴1の裏面領域1B上に巻装されている分割製版済みマスタ8Xの裏面製版画像8Bにのみ、あるいは上記同表面製版画像8Aと上記同裏面製版画像8Bとに交互に繰り返して同一の両面印刷済み用紙36bをそれぞれ押圧するように印圧範囲可変手段28等を制御する構成でも構わない。
このように繰り返し押圧することによって、同一の表面印刷済み用紙36aの表裏面へのインキ転移量が増加するので、複数回の繰り返し押圧が終了した後、さらに次の用紙36を給紙部30から新たに給紙してその同一の用紙36(1回表面印刷画像が印刷されると同一の表面印刷済み用紙36aとなる)で、また複数回の繰り返し押圧するように構成しても構わない。そして、排紙部に適宜着脱自在に連結されたり装着されるソータ(用紙自動分配装置、用紙自動仕分け装置)とか排紙を複数の排紙台(排紙トレイ)に切換自在な構成を有する場合は、繰り返し押圧した同一の印刷済みの用紙36(同一の表面印刷済み用紙36aまたは同一の両面印刷済み用紙36b)を上記ソータ等に別に分けて排出した方が、正規の印刷済み用紙と区別する上からは望ましい。
また、動作例3では、上記所定の回数は予めROM102に記憶・格納されていて、制御装置100からの指令の下にROM102から上記所定の回数に係るデータを呼び出して再給紙クリーニングモードを実行するものであったが、これに限らず、例えばテンキー179等のキーを組み合わせ用いたいわゆるサービスマンプログラムによって上記所定の回数に代えて任意の設定回数を設定できるように構成したり、あるいはPROMによって上記所定の回数を書き換え可能に構成したりしてもよい。
(動作例4)
次に、無製版再給紙クリーニングモードを設定して無製版再給紙クリーニング動作を行う動作例4について説明する。例えば動作例3と同様に何らかの原因や不具合で表面印刷済み用紙36aが版胴1とプレスローラ21との間に到達せずにジャムなどが発生した場合には、プレスローラ21は用紙が無いにも拘わらず版胴1上の分割製版済みのマスタ8X(図10参照)に押圧してしまうために、プレスローラ21の外周表面や版胴1上の分割製版済みのマスタ8X等がインキで汚れてしまう。このようなインキ汚れの清掃(クリーニング)を実行すべく、版胴1が未製版のマスタ8Xを巻装した状態で同じ用紙を使用してこれを排紙部19に排出せずに連続的に再給紙し版胴1に対してプレスローラ21の押圧を繰り返す動作を実行する無製版再給紙クリーニングモードの具体例を説明する。
動作例4は、動作例3と同様に本発明に特有の動作を多く含んでいて、図10に示した印圧範囲パターンIおよび印圧範囲パターンIIのうちの少なくとも一つのパターンが使用される。動作例4でも、各動作を理解しやすくするために、マスタサイズとしてA3のものが、原稿サイズおよび用紙サイズとしてそれぞれA4サイズのものが用いられるものとする。動作例4は、版胴1が分割製版済みのマスタ8Xを巻装した状態で再給紙クリーニングモードを実行する動作例3と比較して、版胴1が未製版のマスタ8を巻装した状態で無製版再給紙クリーニングモードを実行する点が主に相違する。以下、動作例3と相違する点を中心に説明する。
図10に示す分割製版済みのマスタ8Xが版胴1に巻装された状態で上述した両面印刷動作中にジャムなどが発生した場合や、所定枚数(多数枚)の両面印刷動作終了後などにおいて、ユーザは無製版クリーニングキー186Aを押下すると、無製版再給紙クリーニングモード設定信号が生成されてこれが制御装置100に入力されることにより、内蔵された上記LEDが点灯して無製版再給紙クリーニングモードの設定されたことが視認される。次いで、製版スタートキー174を押下するとスタート信号が生成されて、これが制御装置100に入力されると、制御装置100からの指令の下に無製版再給紙クリーニング動作(工程)が自動的に実行される。この場合の製版スタートキー174からのスタート信号は、排版動作に引き続いて無製版動作を自動的に実行することを含む無製版再給紙クリーニングモードを実行するための起動信号であって、同モードを立ち上げ・起動させるためのものである。
先ず、用紙サイズ検知センサ117から用紙サイズ検知信号が制御装置100に送られ、制御装置100は同信号がA4サイズのものであることを認識する。このとき、用紙サイズがA4サイズでない場合には、制御装置100はその旨を表示装置190に表示してユーザに注意を促す。これと並行して、排版から無製版給版に亘る一連の動作が自動的に行われる。これに先後して、上記給紙トレイ昇降モータがオンすることにより給紙トレイ35が上昇して、最上の用紙36が給紙ローラ33に当接することにより、図示しない給紙位置検知センサのオン検知によって最上の用紙36が給紙可能な状態になったことが制御装置100により判断されると、給紙装置30では給紙待機状態となる。
上記動作と並行して、排版部17において動作例1と同様の詳細動作を経て、版胴1の外周面から使用済みマスタ(例えば分割製版済みマスタ8X)を剥離する排版動作が行われる。外周面上より使用済みマスタが全て剥離された後も版胴1は、回転を継続し、クランパ7が略真上に位置する所定の給版待機位置まで回転して停止する。版胴1が給版待機位置で停止すると、図示しない開閉装置が作動してクランパ7が開放され、両面孔版印刷装置200は給版待機状態となる。
上記排版動作と並行して、画像読取部18での原稿画像の読取動作が行われることなく、無製版給版動作が行われる。すなわち、マスタ搬送モータ10が回転駆動されることにより、プラテンローラ9、搬送ローラ対13が回転を開始して、マスタロール8aからマスタ8が引き出されつつマスタ搬送方向X1に搬送されながら、マスタガイド板14に案内されてステージ6に対して拡開しているクランパ7の間に挿入され、マスタ搬送モータ10のステップ数がある設定値に達し、未製版のマスタ8の先端部がステージ6とクランパ7との間に届いたと判断されると、上記開閉装置によりクランパ7が閉じられ、未製版のマスタ8の先端部がステージ6とクランパ7との間に吸着・挟持される。
未製版のマスタ8の先端部のクランプ後、メインモータ20の回転駆動により版胴1がマスタ搬送速度と略同じ周速度で回転を再開して、未製版のマスタ8がプラテンローラ9および搬送ローラ対13により搬送されて版胴1の外周面へ巻装されるべく給版される。マスタ搬送モータ10の所定ステップ数の回転駆動により、設定量の未製版のマスタ8の搬送が終了したと判断されると、カッタ12が作動して未製版のマスタ8が切断されると共に、マスタ搬送モータ10の回転駆動が停止されることによりプラテンローラ9および搬送ローラ対13の回転が停止する。切断された未製版のマスタ8の後端が、版胴1の回転によって製版部15内から引き出され、版胴1の外周面に完全に巻き取られた段階で版胴1への未製版のマスタ8の巻装が終了することにより、無製版給版動作が終了する。
無製版給版動作が終了すると、以下、動作例3と略同様の動作が自動的に実行される。すなわち、動作例3と相違する点は、動作例3において版胴1の表面領域1A上に巻装されている分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8Aまたは版胴1の裏面領域1B上に巻装されている分割製版済みマスタ8Xの裏面製版画像8Bに同一の表面印刷済み用紙36aの裏面または表面がプレスローラ21に押し付けられて表面印刷画像または裏面印刷画像が形成・印刷されるのに代えて、プレスローラ21の外周表面に付着したインキが版胴1上に巻装されている未製版のマスタ8の上記熱可塑性樹脂フィルム面に転移・吸着されてプレスローラ21の外周表面が動作例3よりも短時間のうちに清掃・クリーニングする点にある。以下の動作は、動作例3から容易に理解して実施できるからその説明を省略する。
動作例4では、図10に示した印圧範囲パターンIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミングが選択されるように印圧範囲可変手段28が制御されることにより、版胴1の表面領域1A上に巻装されている未製版のマスタ8にのみ同一の用紙36の裏面と表面とが交互に繰り返して押圧するように構成しているが、これに限らず、版胴1の裏面領域1B上に巻装されている未製版のマスタ8にのみ、あるいは上記同表面領域1A上と上記同裏面領域1B上の未製版のマスタ8とに交互に繰り返して同一の用紙36をそれぞれ押圧するように印圧範囲可変手段28等を制御する構成でも構わない。
このように繰り返し押圧することによって、同一の用紙36の表裏面へのインキ転移量が増加するので、複数回の繰り返し押圧が終了した後、さらに次の用紙36を給紙部30から新たに給紙してその同一の用紙36で、また複数回の繰り返し押圧するように構成しても構わない。そして、動作例3と同様に上記ソータとか排紙を複数の排紙台(排紙トレイ)に切換自在な構成を有する場合は、繰り返し押圧した同一の用紙36を上記ソータ等に別に分けて排出した方が、正規の印刷済み用紙と区別する上からは望ましい。また、動作例4でも、動作例3と同様に、例えばサービスマンプログラムによって無製版再給紙クリーニングモードを実行するときの上記所定の回数に代えて任意の設定回数を設定できるように構成したり、あるいはPROMによって上記所定の回数を書き換え可能に構成したりしてもよい。
本実施形態では、動作例3および4に示したような再給紙クリーニングモードや無製版無製版再給紙クリーニングモードを上記キー186,186Aを押すだけで自動的に実行できると共に、プレスローラ21の外周表面部の表面処理を上記のように施したから、例えば上記特開2003−200645号公報に示されているようなクリーニング手段としてのクリーニングローラ(26)等を配設しなくても済み、装置構成の簡素化を図れたが、このような利点を望まなくてもよいのであれば上記クリーニング手段としてのクリーニングローラ(26)等を付加しても勿論構わない。
本実施形態によれば、上述のとおりであるから、上述した効果や利点を奏することは元より、例えば特開2003−200645号公報で開示されている両面印刷装置(1)と比較して、用紙挟持手段としての移動ガイド81および移動手段87を新たに具備する構成とし、かつ、再給紙手段45における再給紙搬送装置104によって表面印刷済み用紙36aを一時的に保持し、その後に該表面印刷済み用紙36aを所定のタイミングを取って押圧手段としてのプレスローラ21に送り出し該プレスローラ21で反転させて印刷ニップ部16aに向けて再給紙するように構成したことにより、上記同公報に示されているような再給紙貯容手段としての補助トレイ(8)を必要とすることなくこれを除去することができ、これによってさらに構成要素を減らして簡素な両面印刷装置を実現することができるものである。しかも、上記同公報の両面印刷装置(1)と同様に、無駄なマスタを用いることなく片面印刷を行うことができると共に両面印刷時には印刷画像濃度ムラや印刷画像濃度差の無い画質良好な印刷物を安価かつ容易に得ることができ、さらに設置スペースの増大を抑制することができる新しい1ドラム1押圧手段両面印刷方式の1工程両面印刷装置を提供するものである。
上記実施形態のような直径の小さなプレスローラ21ではなく、プレスローラとしてその周面の円周方向長さが単に版胴1の外周面上における表面領域1Aまたは裏面領域1Bの円周方向長さよりも長いものや、この条件を満たすと共にその円周方向長さと版胴1の円周方向長さとが整数比となるもの、すなわちその直径と版胴1の直径とが整数比となるものを用いてもよい。このような構成とすることにより、プレスローラの周速度を版胴の周速度と同速度とすることが簡単になる。この場合、プレスローラとしてその円周方向長さが版胴の外周面上における表面領域1Aまたは裏面領域1Bの円周方向長さよりも長いものである必要があるため、プレスローラの直径と版胴の直径との比は1:2または1:3が望ましい。この比がこれよりも大きいと版胴の直径が大きくなりすぎ、装置の小型化の妨げとなる。このことからプレスローラの直径は版胴の直径の2分の1ないし3分の1の範囲内にあることが望ましい。
上記実施形態の動作例2における版付けに限らず、版付けの基本的な機能に着目したとき、すなわちインキの滲み出し性確保のために分割製版済みマスタ8Xにインキを充填して版胴1の外周面に密着させ印刷可能レベルにするという版付けの基本的な機能に着目したとき、例えば通常の片面印刷動作時の版付けと同様に、図10に示した印圧範囲パターンIIIを選択設定して版付け印刷動作を行っても構わない。
この場合、片面印刷モード時の最大通紙サイズがA3サイズであれば、A3サイズの用紙36を給紙して通常の片面印刷動作を行えるから、上述したように印刷ニップ部16aに2度通紙する必要がなくなり、その分時間を節約できる。この場合は、給紙トレイ35上にA3サイズの用紙36(両面印刷済みの損紙等のいわゆるヤレ紙でもよい)を載置した上で給紙して版付けを行ってもよい。この場合、複数の給紙部を有する両面印刷装置にあっては、その何れか一つに版付け専用のA3サイズの用紙36を積載して自動的に給紙・版付けすることが好ましい。また、両面印刷モード時の版付け印刷動作(工程)と上記通常の片面印刷動作時の版付け印刷動作(工程)とを、ユーザの所望するところにより適宜選択設定できるキー等を操作パネル173等に付加して、印圧範囲可変手段28を利用して適宜切り換えるようなことも勿論できる。
上記実施形態では、原稿サイズに係る製版画像領域および用紙サイズを制御装置100に認識させるために、原稿サイズ検知センサ149と用紙サイズ検知センサ117とを使用したが、これに限定されず、原稿サイズ検知センサ149および手動で原稿サイズを入力設定する原稿サイズ設定手段の何れか1つと、用紙サイズ検知センサ117およびおよび手動で用紙サイズを入力設定する用紙サイズ設定手段の何れか1つとの2つの組み合わせでもよい。これらの動作は、上記した構成および動作例から極めて容易に実施できるので、その説明を省略する。
上記実施形態の動作例2では、版胴1の回転方向に沿って第1の製版画像としての表面製版画像8Aと第2の製版画像としての裏面製版画像8Bとが2面並んで形成された分割製版済みマスタ8Xを版胴1に巻装した場合において、この順に両面印刷を行う動作について説明したが、逆順にして両面印刷を行うように構成してもよい。
上記実施形態では両面印刷装置の一例としてマスタを用いた孔版印刷方式の場合を例示したが、本発明はこれに限らず、孔版印刷方式以外の原理の印刷装置にも準用することができる。例えば、オフセット印刷機等で用いられる印刷用版としての平版(湿し水の有無を問わず)を使用して、直刷り式に構成するようなことは比較的容易に実施できる。