JP4510045B2 - 共役リノール酸異性体の精製方法およびその用途 - Google Patents

共役リノール酸異性体の精製方法およびその用途 Download PDF

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Description

本発明は、共役リノール酸異性体の精製方法、更に具体的には共役リノール酸異性体の遊離体およびグリセリドエステル体の精製方法およびその用途に関するものであり、特に、この精製方法で得られた共役リノール酸異性体は食品として適用できるものである。
従来の技術
近年、共役リノール酸は抗ガン作用、体脂肪低減作用、抗アレルギー作用等の多彩な生理作用を有し、注目されている。共役リノール酸はプロピレングリコールに代表される有機溶媒を使用するアルカリ共役化法(特許第3017108号公報)が知られている。この方法では、c9,t11-共役リノール酸(9cis,11trans-共役リノール酸)およびt10,cl2-共役リノール酸(10trans,12cis-共役リノール酸)が等量生成した混合物となる。
従来、これら共役リノール酸の異性体混合物を精製する方法として、クロマトグラフィーによる方法が知られている。しかしこの方法では、溶剤およびカラムの使用等でコストがかかりすぎる問題がある。
特表平11-514887号の公報には、リパーゼ存在下で共役リノール酸異性体混合物とオクタノールとを反応させ、オクタノールエステル画分における共役リノール酸異性体組成比を変えることが報告されている。しかし、この公報には、アルコールとしてメントール、ステロールの記載がなく、個々の異性体を精製する方法までも記載されていない。また、この公報には、リパーゼ存在下で加水分解し、t10,c12-共役リノール酸を多く含むグリセリドを製造しているが、あくまでもそのグリセド内の共役リノール酸異性体の組成を変えることが主目的であり、個々の異性体を精製する方法までも記載されていない。
特開2001-169794号の公報は、リパーゼ存在下で直鎖高級アルコールと選択的エステル化反応させることによって、c9,tll-共役リノール酸含有脂肪酸を得る方法を記載しているが、tlO,c12-共役リノール酸異性体含有脂肪酸を得る方法は記載していない。
更に、酵素を利用した共役ノール酸のエステルの製造方法について、特開2000-247965号公報、特開2002-60372号公報に記載がある。
前者の公報では、共役リノール酸とエステル化またはエステル交換するために用いられる水酸基またはエステル結合を1個以上有する有機化合物として、リン脂質、コレステロール、β-シトステロール等のステロール、ショ糖、乳糖等の糖類、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられているが、このエステルを使用して共役リノール酸異性体を精製する方法に関しては記載がない。
また、後者の公報には、食品として許容可能なテルペンアルコール又はセスキテルペンアルコールとの共役リノール酸エステルの製造方法を記載しているが、その中にはtlO,c12-共役リノール酸異性体が多く含有された未反応の遊離脂肪酸を粗反応混合物から単離する方法だけを記載しており、c9,t1l-共役リノール酸含有脂肪酸を得る方法は記載していない。
特許第3017108号公報 特表平11−514887号公報 特開2000−247965号公報 特開2002−60372号公報
本発明は、共役リノール酸異性体(遊離体およびグリセリドエステル体)を製造する技術、さらに具体的には、高純度、高収率で精製でき、食品用途で使用可能な共役リノール酸異性体、特にc9,tl1-共役リノール酸およびt10,cl2-共役リノール酸の精製方法およびそれぞれの高純度異性体を高割合で含むグリセリドの精製・製造技術を提供することを目的とするものである。
上述の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、共役リノール酸異性体混合物とリパーゼを用いること、およびその反応条件(酵素の種類、加水分解率、エステル化率等)を適宜調節することによって上記の目的を達成でき、高純度、高収率で精製でき、食品用途で使用可能な共役リノール酸異性体、特にc9,tll-共役リノール酸およびt10,c12-共役リノール酸の精製方法およびそれぞれの異性体を高割合で含むグリセリドの精製・製造に成功し、この知見をもとに本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、リパーゼの存在下、共役リノール酸の異性体混合物を構成成分とする脂肪酸混合物またはそのグリセリドエステル混合物を、有機溶媒を含まない反応系で共役リノール酸異性体に対する選択反応に付すことを特徴とする共役リノール酸異性体の精製方法(1)に関するものであり、この精製方法の具体的な態様において、食品分野で使用可能な方法として、選択的加水分解反応を利用する第1の方法、および選択的エステル化反応を利用する第2の方法がある。
精製方法(1)における第1の方法としては、下記の方法が含まれる。
(2)リパーゼの存在下、共役リノール酸の異性体混合物を構成成分とするグリセリドを、有機溶媒を含まない反応系で加水分解することを特徴とする、上記(1)の精製方法。
(3)リパーゼの存在下、共役リノール酸の異性体混合物を構成成分とするグリセリドを、有機溶媒を含まない反応系で加水分解し、得られたグリセリドを、前記リパーゼの存在下で更に1回以上、加水分解することを特徴とする、上記(2)の精製方法。
(4)c9,tll-共役リノール酸を遊離脂肪酸画分中に濃縮し、t10,c12-共役リノール酸をグリセリド画分中に濃縮することを特微とする、上記(2)または(3)の精製方法。
(5)上記(4)の方法より得た遊離脂肪酸画分をグリセリンとエステル化することにより、c9,t11-共役リノール酸高含有グリセリドを得ることを特徴とする、上記(2)〜(4)のいずれかの精製方法。
(6)上記(4)の方法より得たグリセリド画分を加水分解することによって、t10,c12-共役リノール酸高含有脂肪酸を得ることを特徴とする、上記(2)〜(4)のいずれかの精製方法。
精製方法(1)における第2の方法としては、下記の方法が含まれる。
(7)リパーゼの存在下、共役リノール酸の異性体混合物を、有機溶媒を含まない反応系で、食品加工に利用できるアルコールと選択的エステル化することを特徴とする、上記(1)の精製方法。
(8)リパーゼの存在下、共役リノール酸の異性体混合物を、有機溶媒を含まない反応系で、食品加工に利用できるアルコールと選択的エステル化し、得られた遊離脂肪酸を、前記リパーゼの存在下で更に1回以上、食品加工に利用できるアルコールと選択的エステル化反応し、t10,c12-共役リノール酸を遊離脂肪酸画分中に濃縮することを特徴とする、上記(7)の精製方法。
(9)c9,tll-共役リノール酸を濃縮させたアルコールエステル画分を非選択的または選択的加水分解することによって、c9,t11-共役リノール酸高含有脂肪酸を得ることを特徴とする、上記(7)または(8)の精製方法。
(10)上記(8)または(9)の方法より得た遊離脂肪酸をグリセリンとエステル化することにより、t10,c12-共役リノール酸高含有グリセリドまたはc9,tll-共役リノール酸高含有グリセリドを得ることを特徴とする、共役リノール酸異性体の精製方法。
本発明はまた、上記(4)、(5)または(10)の方法より得られるグリセリド中のc9,tl1-共役リノール酸またはt10,c12-共役リノール酸が、両異性体の合計含量に対して70重量%以上含まれるグリセリドにも関する。
本発明はまた、上記の共役リノール酸異性体またはグリセリドを健康成分として含む脂肪含有食品にも関する。
上述してきたように、本発明によれば、高純度、高収率で精製でき、食品用途で使用可能な共役リノール酸異性体、特にc9,tl1-共役リノール酸及びt10,cl2-共役リノール酸の精製方法及びそれぞれの異性体を高割合で含むグリセリドを提供することことができる。
また、共役リノール酸異性体(遊離体またはグリセリド)の製造において、反応条件を適宜変えることにより、特にc9,t11-共役リノール酸とt10,c12-共役リノール酸の含有割合を所望に調節することができる。
本発明による共役リノール酸異性体の精製方法(上記精製方法(1))は、具体的な態様において、基本的に、加水分解反応を利用する第1の方法、および選択的エステル化反応を利用する第2の方法があり得ることは前記したところである。
すなわち、本発明は、好ましい態様において下記の二つの方法を提供するものである。
第1の方法は、共役リノール酸の異性体混合物を構成成分とするグリセリド(通常トリグリセリドを主成分とし、ジグリセリド、モノグリセリドも含む)をリパーゼの存在下、有機溶媒を含まない反応系で選択的に加水分解し、c9,tll-共役リノール酸を遊離脂肪酸として、またt10,c12-共役リノール酸を未分解グリセリド画分に回収する精製方法に関するものである。更に、c9,t11-共役リノール酸を含有する遊離脂肪酸はグリセリンとエステル化することによってグリセリドとしても提供できる。また、t10,cl2-共役リノール酸を含有する未分解グリセリド画分は、更に加水分解(選択的または非選択的)することによってt10,cl2異性体含有率の高い遊離脂肪酸として供給することもできる。
第2の方法は、共役リノール酸の異性体混合物を、リパーゼの存在下、有機溶媒を含まない反応系で食品加工に利用できるアルコール(好ましくはメントール、ステロ一ル、グリセリン等)で選択的エステル化し、t10,c12-共役リノール酸を未反応の遊離脂肪酸として、またc9,tl1-共役リノール酸をエステル体として回収し、得られたエステル体は更に加水分解して、c9,tll-共役リノール酸高含有遊離脂肪酸として回収する精製方法に関するものである。更に、得られたc9,t11-共役リノール酸またはt10,c12-共役リノール酸を高含有する脂肪酸は、グリセリンとエステル化することによってグリセリドとしても提供できる。
以上のことから、本発明によれば、c9,t11-共役リノール酸またはtlO,c12-共役リノール酸のいずれかを高含有する食品用の脂肪酸およびグリセリドを製造することができる。
本発明において、共役リノール酸異性体の精製方法とは、共役リノール酸異性体の遊離体またはグリセリドエステル体の精製方法を意味する。
本発明で用いる共役リノール酸異性体混合物とは、遊離脂肪酸もしくはグリセリド(通常トリグリセリドを主成分とし、ジグリセリド、モノグリセリドも含む)の形態で、c9,tll-共役リノール酸およびt10,c12-共役リノール酸を主体的に含むものであればいずれの起源のものでも使用できるが、好ましくは共役リノール酸(またはグリセリド中の共役リノール酸)を脂肪酸混合物(またはグリセリド混合物中の脂肪酸)の全量に対して50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上含むものである。
なお、本明細書において、%表示は特に断りのない限り、あるいは%表示のみで明確な場合(加水分解率、エステル化率など)を除き重量%を意味する。
上記のような遊離脂肪酸の実用的な好ましい例としては、リノール酸を含む食用油(サフラワー油、ヒマワリ油等)をプロピレングリコールなどの溶媒の存在下でアルカリ共役化(例えば特開平10−130199号公報)して製造したc9,t11-およびt10,cl2-共役リノール酸異性体をそれぞれ30%以上含む遊離脂肪酸の混合物(例えばCLA-80:リノール油脂社製)、あるいはJ.Am.Oil Chem.Soc.,36,631,(1959)、第34回油化学討論会講演要旨集、p171(1995)に記載されたアルカリ共役化による共役リノール酸異性体混合物等があげられ、アルカリ共役化反応の原料としてリノール酸を用いた場合は、共役リノール酸含有量を更に増加させることができる。また、微生物等(例えば乳酸菌)によって生産される共役リノール酸含有油脂から得られた脂肪酸の混合物を用いてもよい(例えば、乳酸菌を用いた米国特許第6,060,304号公報参照)。また、リノール酸を高割合(例えば95%程度)で含むリノール酸高含有脂肪酸を原料として使用することにより、共役リノール酸高含有脂肪酸混合物を得ることができる。
上述のようにして得られる脂肪酸混合物中の共役リノール酸異性体含量は、一般的に10〜95%、好ましくは50〜95%、より好ましくは60〜95%、さらに好ましくは70〜95%程度であり、より実用的には50〜85%程度であり(両異性体の相互含量はほぼ等量)、残りの成分は他の脂肪酸(オレイン酸等)、未転化(非共役)リノール酸等である。
本発明において「有機溶媒を含まない反応系」とは、n−ヘキサン、アセトン、ジエチルエーテル、トルエン等の有機溶媒(食品用途に使用できるアルコール(エタノールなど)を除く)を含まず、脂肪酸もしくはグリセリド、水、および酵素等で構成されている反応用混液をいう。
本発明に用いられるリパーゼは、その起源に特に制限されるものではなく、本発明における酵素反応性(加水分解およびエステル化反応)を有する限り各種微生物、動物、植物起源のいずれでもよい。本発明において、選択反応を行うときには共役リノール酸異性体特異性を有する酵素の使用が必須である。また、非選択反応では異性体特異性のない(もしくは小さい)酵素の使用が好ましいが、過剰量の使用あるいは反応時間を延長する等により反応率を高めることができれば、異性体特異性を有する酵素を用いることもできる。微生物起源のリパーゼとしては、Staphylococcus属、Pseudomonas属、Burkholderia属、Alcaligenes属、Rhizopus属、Rhizomucor属、Thermomyces属、Penicillium属、Aspergillus属、Candida属、Geotrichum属等に属する微生物に由来するものがあげられる。共役リノール酸異性体の選択性の観点からは、特にCandida rugosa(例えばLipase-OF、名糖産業(株)、Lipase-AY、天野エンザイム(株))、Geotrichum candidum等に由来するリパーゼ(c9,t11-共役リノール酸を基質として認識しやすい)が好ましく、特定の異性体含量が相対的に高い脂肪酸またはグリセリドを製造するのに適している。また、非選択反応には基本的にいずれの酵素も使用できるが、特にRhizomucor mieheiRhizopus niveusThermomyces lanuginosaRhizopus oryzaeAspergillus nigerAlcaligenes sp.由来のリパーゼなどが好ましく、Candida rugosaGeotrichum candidumのリパーゼを過剰量用いた反応も有効である。動物起源のリパーゼとしては、例えば膵リパーゼ、消化管リパーゼ等が挙げられ、また、植物起源のリパーゼとしては、例えば、米ぬか、なたね種子、パーム果肉、ヒマ種子のリパーゼ等が挙げられる。これらの酵素は市販されたものをそのまま用いてもよいが、特に精製された市販品を用いる必要もなく、目的とする酵素の生産能を有する微生物菌体そのもの、その培養液、該培養液を処理して得られる粗酵素液や酵素を含む組成物等を
使用することもできる。
リパーゼの使用形態は遊離型のままでもよいが、固定化剤(イオン交換樹脂、多孔性樹脂、セラミックス、炭酸カルシウムなど)に固定して使用すればリパーゼが安定化され、繰り返し反応や長時問の連続使用を行っても再現性よく酵素活性が維持できる。遊離型酵素を使用するときは、一旦酵素を水に溶解し、酵素水溶液を所定の酵素量になるように反応液中に添加するのが好ましい。また、固定化酵素を使用するときには反応系に水を加える必要はなく酵素および基質を含む反応混合液を用いればよい。しかし、リパーゼの使用形態については特に制限されるものではない。
また、使用する酵素としてのリパーゼの量は、反応時間や反応温度などの反応条件により決定されるため特に規定されないが、一般的には反応混液lg当たり1単位(U)〜50,000U、好ましくは1U〜10,000U添加すればよく、適宜設定することができる。ここで、1Uとは、オリーブ油の加水分解反応において1分間に1μmo1の脂肪酸を遊離する酵素量である。
第1の精製方法: 共役リノール酸異性体(CLA)混合物を構成成分としたグリセリドの選択的加水分解反応を利用する方法
<選択的加水分解反応を利用したc9,tll-CLAとtlO,c12-CLAの精製>
選択的加水分解に用いるリパーゼは、2つの異性体(c9,t11-CLAとt10,c12-CLA)に対する活性に大きな差を有する酵素であれぱ、微生物、動物、植物いずれの起源であっても良い。好ましくはCandida rugosaのリパーゼ(リパーゼOF,名糖産業;リパーゼAY,天野エンザイムなど)、Geotrichum candidumのリパーゼ、Pseudomonas属やBurkholderia属のリパーゼなどが好ましい。リパーゼの使用形態等は遊離型のままでもよいが、固定化剤(イオン交換樹脂、多孔性樹脂、セラミックス、炭酸カルシウムなど)に固定したものを用いてもよい。なお遊離型酵素を使用するときは、一旦酵素を水に溶かし、酵素水溶液を所定の酵素量になるように反応液中に添加するのが好ましい。
使用するリパーゼ量は、反応時間や反応温度などの反応条件により決定されるため特に規定されないが、好ましくは反応混液1g当たり0.1単位(U)〜10,000U、より好ましくは1U〜1,000U添加すればよく、適宜設定することができる(lU=前記に定義の通り)。また、通常グリセリド量に対して1〜1000重量%(好ましくは20〜800重量%)の水分量、5〜70℃(好ましくは20〜50℃)の温度条件で30分〜150時間(好ましくは2〜72時間)、振とうまたは攪拌することにより加水分解反応が進行する。
リパーゼによるグリセリドの加水分解率は、次式によって算出することができる。加水分解率(%)=(B/A)×100
(A:基質として用いたグリセリドを構成している脂肪酸のモル量
B:反応によって遊離してきた遊離脂肪酸のモル量)
加水分解に用いる基質としてのグリセリドは、共役リノール酸の各異性体を含むものであれば特に制限はなく、共役リノール酸異性体の遊離体混合物をエステル化して得られたグリセリドを使用するのが実用的である。具体的には例えば、共役リノール酸としてc9,t11およびt1O,c12-CLA異性体をそれぞれ等量(例えば各30%以上)含む遊離脂肪酸の混合物をグリセリンでエステル化して得たグリセリドを使用することができる。エステル化は一般的な方法を使用できるが、後述するグリセリドの調製法および第2の精製方法におけるエステル化反応に準じて行うことができる。なお、このエステル反応において、トリグリセリドを主成分とするグリセリドを合成しやすい酵素、例えばRhizomucor mieheiRhizopus oryzaeRhizopus niveusThermomyces lanuginosaCandida antarcticaのリパーゼ等の使用が好ましい。
加水分解の基質として用いるグリセリドは、例えば後記調製例1のグリセリド標品(両異性体の割合は遊離脂肪酸混合物中の割合とほぼ同じ)を使用することができる。上述のようにして得られるグリセリド中の共役リノール酸グリセリド含量は、グリセリド中の全脂肪酸含量に対する共役リノール酸含量換算で、一般的に10〜95%、好ましくは50〜95%、より好ましくは60〜95%、さらに好ましくは70〜95%程度であり、より実用的には50〜85%程度であり(グリセリド中のc9,t11-およびt10,c12-両異性体の相互含量はほぼ等量)、残りの成分は共役リノール酸以外の脂肪酸(オレイン酸等の他の脂肪酸、非共役リノール酸)のグリセリドおよび遊離脂肪酸である。このようなグリセリドを加水分解の基質として用いるとき、c9,t11-CLAを基質として認識し易いリパーゼ、好ましくはCandida rugosaGeotrichum candidumなどのリパーゼの使用が有効である。上記第1の精製方法に記載した条件下で加水分解率を通常50%以下、好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下の低分解率に抑えることにより(例えばCLAグリセリドと水の等量混合物に混液1g当たり0.5〜5.0UのCandida rugosaのリパーゼを加え、30〜45℃で10〜48時間撹拌しながら、反応を行うことにより)、遊離脂肪酸画分のc9,tll-CLAの純度(c9,tll-CLA含量とt1O,c12-CLA含量の合計に対するc9,t11-CLAの含量であり、以下特に断らない限り単にc9,t11-CLAの純度という)を70%以上に高めることができる。なおこの際、加水分解率の下限は好ましくは5〜10%程度である。一方、tlO,cl2-CLAはこの選択的加水分解により未反応のグリセリド画分に濃縮することができる。加水分解率を60〜80%に制御すると、未分解グリセリド中のtlO,c12-CLA純度(c9,11-CLA含量とt10,c12-CLA含量の合計に対するtlO,c12-CLAの含量であり、以下特に断らない限り単にtlO,cl2-CLAの純度という)を70%以上に高めることができる。ここで、上記2種の異性体以外の共役リノール酸異性体の含量は、通常共役リノール酸含有脂肪酸中1%程度である。
c9,t11-CLAおよびt10,c12-CLAの分画は反応速度に依存する。すなわち加水分解率を低く抑える程、遊離脂肪酸画分のc9,tll-CLA純度を高めることができる。効率よくc9,t11-CLAをグリセリドから遊離させることができれば、t10,c12-CLAをより高濃度にグリセリド画分に濃縮することができる。すなわち、選択的加水分解を低分解率で繰り返すことにより、未分解グリセリド中のtlO,c12-CLA純度を高めることができる。一例として、まず1回目の加水分解率を30%に制御し、反応液を遊離脂肪酸とグリセリドに分画する。次いで得られたグリセリドを基質として2回目の加水分解を行い、この加水分解率を40〜50%に制御すると、未分解グリセリド中のt10,cl2-CLA純度を80%以上に高めることも可能となる。なお、反応液中に含まれている遊離脂肪酸とグリセリドの分画には、通常の分子蒸留、ヘキサン分画、クロマトグラフィーなどの方法を単独または組合せて採用することができる。
<t10,c12-CLAを高含有する遊離脂肪酸の調製>
上述した方法で得たt10,c12-CLAを高含有するグリセリドを加水分解することによりt10,c12-CLAを高含有する遊離脂肪酸を製造することができる。加水分解は、エタノールの存在下での通常のケン化分解を採用してもよいし、リパーゼを触媒とした加水分解法を採用してもよい。リパーゼを使用するときには、c9,tll-CLAよりt10,c12-CLAに対して高い活性を示す酵素(例えばPseudomonas属、Burkholderia属など)、あるいはc9,tll-CLAとt1O,c12-CLAに対して選択性を示さない酵素(例えばRhizomucor属、Rhizopus属、Thermomyces属など)の使用が好ましいが、高い加水分解率(80%以上、好ましくは90%以上)が得られる反応系を構築する場合には(例えば大過剰の酵素を使用したり、反応時間を延長する等の条件で反応を行う)、酵素の脂肪酸異性体特異性にこだわる必要はなく非選択的に加水分解を行うことができる。従って、リパーゼは微生物、動物、植物起源のいずれの産業用酵素でもこの反応に使用することができ、遊離型酵素でもよいし、固定化した酵素を使用してもよい。また、この加水分解反応の条件は、基本的に前述した選択的加水分解反応と同様の条件を用いることができる。
<c9,t11-CLAを高含有するグリセリドの調製>
前述した方法で得たc9,t11-CLAを高含有する遊離脂肪酸とグリセリンをエステル化することによりc9,t11-CLA高含有のグリセリドを製造することができる。エステル化は、一般的に採用されているアルカリ触媒を用いた化学法を採用することもできるが、CLAの不安定性を考慮すると、温和な条件下、窒素気流下でも反応が効率よく進行する酵素法が好ましい。このエステル化反応には微生物、動物、植物起源のいずれの産業用酵素も利用することができるが、高いエステル化率が得られ、かつc9,t11-CLAを基質としてよく認識するRhizopus oryzaeRhizopus niveusRhizomucor mieheiThermomyces 1anuginosaCandida antarcticaAlcaligenes sp.由来のリパーゼなどが好ましい。また、反応系中の水を除去するとエステル化は効率よく進行するため、窒素の吹き込み、あるいは減圧下(通常0.1〜100mmHg程度)で脱水しながら行う反応が有効である。従って、このエステル化反応には遊離型酵素、固定化酔素のいずれも使用できるが、固定化酵素を用いた方がより好ましい。
基質として用いるグリセリン量は遊離脂肪酸量に対して通常1/3〜10モル量、好ましくは1/3〜5モル量である。酵素量は反応液1g当たり1〜10000U、好ましくは10〜5000U添加すればよく、適宜設定することができる。反応温度は5〜70℃(好ましくは25〜60℃)で反応時間は30分〜150時間(好ましくは30分〜72時間)が望ましい。反応形態は攪拌しながら行ってもよいし、固定層型リアクターを用いた連続反応を行ってもよい。上記のような条件下で、エステル化率は90%以上に達成し得る。
なお本発明において、エステル化率は次式によって算出することができる。
エステル化率(%)=[(A−B)/A]×100
(A:反応前の反応混液中に存在する遊離脂肪酸のモル量
B:反応後の反応混液中に存在する遊離脂肪酸のモル量)
反応液からグリセリドを精製するための脱酸は、油脂の精製に一般的に利用されている蒸留法やアルカリ脱酸法、あるいはこれらを組み合わせた方法を利用することができる。上記のような方法により、c9,tll-CLAを70%以上(c9,tll-およびt10,cl2-異性体の全量に対して)含有するグリセリドを得ることができる。
第2の精製方法: 共役リノール酸異性体混合物と食品加工に利用できるアルコールとの選択的エステル化を利用する方法
アルコールは食品に使用可能なものであれば制限されるものではないが、メントール、ステロール、グリセリンなどが好ましい例としてあげられる。
<c9,tll-CLAとt10,cl2-CLAの分画>
エステル合成反応(基質が遊離脂肪酸)またはエステル交換反応(基質がグリセリド)を行うための反応混液中のアルコール(好ましくはL-メントールまたはステロール)と共役リノール酸混合物のモル比は、通常1:10〜10:1、好ましくは1:5〜5:1であるが、原料の種類や反応性の程度に応じて上記以外のモル比も使用し得る。
触媒として用いる酵素は、選択的加水分解に用いた酵素と同様、c9,t11-CLAとt10,cl2-CLAに対する活性に大きな差を有する酵素であれば、微生物、動物、植物いずれの起源であっても良い。好ましくはCandida rugosaのリパーゼ(リパーゼOF,名糖産業;リパーゼAY, 天野エンザイム等)、Geotrichum candidumのリパーゼ、Pseudomonas属やBurkholderia属のリパーゼ、さらに好ましくはc9,t11-CLAをよく認識し、t10,c12-CLAを認識しにくいCandida rugosaGeotrichum candidum由来のリパーゼなどの使用が望ましい。これらの酵素は遊離型酵素を用いてもよいし、固定化したものを用いてもよい。
上記リパーゼを反応液1g当たり1〜10000U、好ましくは10〜5000U、より好ましくは20〜2000U程度用い、基質量に対して好ましくは1〜500重量%の水分量、より好ましくは5〜100重量%の水分量下、5〜70℃(好ましくは25〜50℃)の温度条件で30分〜150時間(好ましくは5〜72時間)、振とうまたは攪拌することによりエステル化またはエステル交換反応を行うことができる。なお、反応系中の水を除去するとエステル化は効率よく進行することもあるため、窒素の吹き込み、あるいは減圧下で脱水しながら行ってもよい。また、固定化酵素による固定層型リアクターを用いた連続反応を行てもよく、固定化酵素を用いる場合には反応系に水分は含まれる必要がない。
c9,tll-CLAをよく認識し、t10,c12-CLAを認識しにくいリパーゼ、例えばCandida rugosaGeotrichum candidum由来のリパーゼを触媒とするCLA異性体混合物の選択的エステル化反応において、一般的に、エステル化率を低く制御するとエステル画分のc9,t11-CLAの含量を高めることができ、未反応の遊離脂肪酸画分に濃縮されるt10,c12-CLA含量は30〜70%のエステル化率のときに最大値に達する。例えば、Candida rugosaリパーゼを触媒としたCLA異性体混合物とL-メントールとの選択的エステル化反応では、エステル化率を35%以下に制御すると、エステル画分におけるc9,tl1-CLAの純度を90%以上に高めることができ、エステル化率を40〜50%に制御すると、未反応の脂肪酸画分のt10,c12-CLA純度は最大値(84%程度)を示す。エステル化率を上記のように制御するためには、例えばL-メントールとCLA異性体混合物(1:1、モル比)、10〜30%水、および反応液1gあたり10〜500Uのリパーゼからなる反応液を25〜40℃で5〜72hr撹拌しながら反応を行えばよい。
なお、上記の反応液中に存在するメントール、遊離脂肪酸、メンチルエステルは、通常行われている蒸留、n-ヘキサン抽出(ヘキサン−アルカリ分配法など)、各種のクロマトグラブィー、尿素付加などを単独でまたは組み合わせた方法により分画することができる。
<c9,tll-CLAとtlO,c12-CLAの高純度化>
遊離脂肪酸画分中のt10,c12-CLA純度をさらに高めたいときには、エステル化の反応液から回収した遊離脂肪酸を原料としてもう一度選択的エステル化反応を繰り返せばよい。
アルコール(L-メントールあるいはステロールなど)に結合した脂肪酸はメタノールあるいはエタノール存在下でのケン化分解、あるいはリパーゼを触媒とした加水分解により遊離脂肪酸に戻すことができる。特に、ステロールに結合した脂肪酸はリパーゼで容易に加水分解される。なお、t10,c12-CLAよりc9,t11-CLAに対して強い加水分解活性を有するリパーゼ(Candida rugosaGeotrichum candidumのリパーゼなど)を選択すると、加水分解前のエステル(メンチル、ステリルエステルなど)中のc9,t11-CLA含量より高い純度の遊離脂肪酸(c9,tll-CLA)を調製することもできる。この酵素法による加水分解の条件は、基本的に前記第1の方法(加水分解)で述べた条件を採用することができる。
エステル化反応とエステル(メンチルまたはステリルエステルなど)の加水分解によって得られた遊離脂肪酸を原料として、選択的エステル化反応を1回以上繰り返すことにより、c9,tll-CLAの純度をさらに高めることも可能である。
この様にして得られた各CLA異性体を高濃度含有する脂肪酸は食品に応用することができる。
<c9,tll-CLAとt10,c12-CLAの高純度異性体を含有するグリセリドの製造>
上述の方法で精製した高純度CLA異性体とグリセリンをエステル化すると、各異性体を高濃度に含有するグリセリド、すなわち、c9,t11-CLAまたはt10,c12-CLAのいずれかの含量が相対的に高い食品用のグリセリドを製造することができる。なお、グリセリドの製造は、基本的に[0027]、[0031]〜[0033]のグリセリドの調製およびエステル化の方法に準じて行うことができる。
以上のように、本発明は共役リノール酸異性体(遊離体およびグリセリドエステル体)の精製方法に関し、代表的な態様において、第1の方法(加水分解反応)および第2の方法(エステル化反応)の単回あるいはくり返しにより、c9,t11-およびt10,c12-の各共役リノール酸異性体を高純度(両異性体全量に対して通常70%以上、例えば70〜95%;脂肪酸混合生成物全量に対して通常30〜95%、好ましくは50〜95%、より好ましくは60〜95%、さらに好ましくは70〜95%程度であり、より実用的には45〜85%程度)で含む遊離脂肪酸およびそれらのグリセリド(グリセリドにおける脂肪酸全量中の両共役リノール酸異性体含量(通常30〜95%、好ましくは50〜95%、より好ましくは60〜95%、さらに好ましくは70〜95%程度であり、実用的には45〜85%程度)および両異性体全量に対する各異性体の割合(通常70%以上、例えば70〜95%程度)は上記遊離脂肪酸の場合とほぼ同じ。グリセリド生成物中の共役リノール酸グリセリド含量は通常30〜95%、好ましくは50〜95%程度であり、より実用的には45〜85%程度であり、残りの成分は遊離脂肪酸等である。)を高収率(一般に35〜60%またはそれ以上)で得ることができる。ここで、収率とは、基質としての共役リノール酸異性体混合物(遊離体またはグリセリドエステル体)の全量に対する目的の生成共役リノール酸各異性体またはその各グリセリド体の割合をいう。なお、本発明で得られた上記共役リノール酸異性体含有脂肪酸およびグリセリドの含量割合に関し、共役リノール酸異性体含有脂肪酸の場合は、共役リノール酸以外の成分は他の脂肪酸(パルミチン酸等)および未転化リノール酸等であり、エステル体の場合は、共役リノール酸エステル以外の成分は上記他の脂肪酸および未転化リノール酸のエステルおよび遊離脂肪酸等である。
上記のようにして得られる共役リノール酸異性体(遊離脂肪酸またはグリセリド)は食品に応用することができる。従って、本発明は、脂肪および健康成分を含む食品であって、健康成分が上記の共役リノール酸異性体から選択される1種以上である食品にも関する。脂肪を含む食品は、脂肪が配合された食品であれば特に限定されないが、例えばスプレッド、マーガリン、クリーム、ドレッシング、マヨネーズ、チーズ、アイスクリーム、べ一カリー食品、乳幼児食、育児粉乳、チョコレート、菓子、ソース、コーティング、スープ等があげられる。本発明において、上記のような食品中に配合される共役リノール酸異性体(遊離脂肪酸またはグリセリド)の配合量は通常、食品全体に対して好ましくは、共役リノール酸異性体含有脂肪酸またはグリセリド(他の脂肪酸を含む)として0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%、共役リノール酸として0.1〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%程度である。
以下は、本発明を実施例により更に具体的に説明するものであり、本発明を限定するものではない。
以下の実施例において、グリセリド組成の分析・測定は、n-ヘキサン:酢酸エチル:酢酸(=90:10:1,容量比)で展開した後、イヤトロスキャンMK-5(ヤトロン)で分析した。脂肪酸組成はDB-23キャピラリーカラム(0.25mm×30m;J&W Scientific)を用いたガスクロマトグラフィーにより分析した。
[1] 共役リノール酸トリグリセリドを選択的加水分解して異性体を分画する方法
[調製例1] 共役リノール酸の異性体を構成成分とするトリグリセリドの調製
c9,t11-およびt10,c12-共役リノール酸の混合物(c9,t11-CLA含量,33.1%;t10,cl2-CLA含量,33.9%;(残りは他の脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸)、未転化リノール酸)等)CLA-80;リノール油脂)1352g、グリセリン148g、および固定化Rhizomucor mieheiリパーゼ(Novozyme 435;ノボザイムズ)75gを3L容量の4つロフラスコに入れ、5mmHgの減圧下、50℃で48時間撹伴しながらインキュベートした(エステル化率,92.3%)。得られた反応液を200℃、0.02mmHgで分子蒸留(Wiprene Type 2-03;神鋼パンテック)し未反応脂肪酸を留分として除去した。残渣画分になお残存していた脂肪酸を除去するために、この残渣を250℃、0.001mmHgで再度分子蒸留して1209gの蒸留残渣を得た。この残渣画分中には86.8 wt%のトリグリセリドと13.2wt%のジグリセリドが含まれ、モノグリセリドと遊離脂肪酸の含量は検出できなかった(O.2wt%以下)。得られたグリセリド標品(以下Gly-CLAと略す)は33.5 wt%のc9,t11-CLAと34.4wt%のt10,c12-CLAを含んでいた。
[実施例1] Candida rugosaリパーゼによるGly-CLAの加水分解
Gly-CLA3g、水3g、および種々の量のCandida rugosaリパーゼ(リパーゼOF;名糖産業)からなる反応液を30℃で16時間攪拌しながらインキュベートした。反応後、アルカリ条件下でヘキサン抽出し、未分解グリセリドをヘキサン層に回収した。また水層画分に存在した脂肪酸石鹸は塩酸で酸性に戻して遊離体とし、これをヘキサンで抽出した。グリセリドおよび遊離脂肪酸画分の脂肪酸組成を表1に示す。Gly-CLAの加水分解率が低いほど、遊離脂肪酸画分中のc9,t11-CLAの純度は高くなり、また加水分解率が約60%に達したときにグリセリド画分のt10,cl2-CLAの純度は最大値を示した。
表1
酵素量a 加水分解率 画分 CLA含量(wt%) 異性体純度 b (%)
(U/g) (%) c9,tll tlO,c12 c9,tll tlO,c12
0.8 10.1 遊離脂肪酸 51.8 14.2 75.7
グリセリド 30.9 36.7 54.3
1.5 31.5 遊離脂肪酸 50.5 17.2 74.6
グリセリド 24.3 43.6 64.2
3 41.0 遊離脂肪酸 45.3 21.2 68.1
グリセリド 23.8 44.9 65.3
6 61.5 遊離脂肪酸 40.6 24.1 62.7
グリセリド 19.2 52.5 73.2
10 67.7 遊離脂肪酸 36.5 28.2 56.4
グリセリド 19.6 52.6 72.9
30 82.5 遊離脂肪酸 34.0 32.1 51.5
グリセリド 26.1 44.5 63.1

a: リパーゼ1単位(U)とはオリーブ油を基質として用いた30℃での加水分解反応において1分間に1μmolの脂肪酸を遊離する活性である。
b: c9,t11-CLAとtlO,c12-CLAの合計含量に対するc9,t11-CLAあるいはtlO,cl2-CLAの含量をパーセントで表示した。
[実施例2] CLA異性体の大量分画
Candida rugosaリパーゼを触媒とし、酵素量を制限した反応系を用いた選択的加水分解反応および過剰量の酵素を用いた非選択的加水分解を利用したCLA異性体分画の概略を図1に示し、操作の各段階における物質収支を表2に示す。
調製例1に記載した反応を繰り返して調製したGly-CLAを原料として使用した。第1工程の選択的加水分解はc9,t11-CLA含量の高い遊離脂肪酸を調製する工程である。Gly-CLAを2000g、水を2000g、およびCandida rugosaリパーゼ1.5U/gをリアクター(MDL1OO1;丸菱バイオエンジ)に入れ、30℃、200rpmで16時間攪拌しながらインキュベートした(加水分解率,31.9%)。反応後、静置して得た油層を160℃、0.2mmHgで分子蒸留(Wiprene Type 2-03;神鋼パンテック)し、原料由来のパルミチン酸を多く含む留分1-1(83g)を除去した。次いで残渣画分を190℃、0.05mmHgで分子蒸留し、炭素数18の脂肪酸を多く含む留分1-2(423g)を回収した。留分2-1の酸価は200mgKOH/gでグリセリドの混在は検出できなかった。また、この画分中のc9,tll-CLAおよびt10,c12-CLAの含量はそれぞれ49.3%と18.3%であった(c9,tl1-CLAの純度,73.0%)。
上記の蒸留によって得られた残渣画分には、10.5%の遊離脂肪酸が含まれていたため、これを除去するために210℃、0.01mmHgで再度分子蒸留して1145gの残渣1-3を得た。第2工程はこの残渣を原料として選択的加水分解を行い、t10,c12-CLAをグリセリド画分に濃縮する工程である。残渣1-3に等量の水と反応混液1g当たり15UのCandida rugosaのリパーゼを加え、30℃で24時間加水分解を行った(加水分解率,62.0%)。反応後、油層を190℃、0.02mmHgの分子蒸留で遊離脂肪酸を留分2-1として回収した。得られた残渣中には、まだ12.2%の遊離脂肪酸が含まれていたので、210℃、0.01mmHgでもう一度分子蒸留し52gの留分2-2と343gの残渣2-2に分画した。選択的加水分解を2回繰り返して得られたグリセリド画分(残渣2-2)には14.0%のc9,tll-CLAと57.3%のtl0,cl2-CLAが含まれていた(tl0,c12-CLAの純度,80.4%;トリグリセリド:ジグリセリド:モノグリセリド:遊離脂肪酸=83.0:15.0:1.l:0.9,重量比)。
第3工程はグリセリド画分に濃縮されたt10,c12-CLAを加水分解により遊離させる工程である。残渣2-2に等量の水と反応混液1g当たり200UのCandida rugosaのリパーゼを加え、30℃で24時間加水分解を行った(加水分解率,88.8%)。反応後、油層に大豆油200gを加え、200℃、0.02mmHgの分子蒸留で遊離脂肪酸を留分3-1として回収した。この留分の酸価は199.3mg KOH/gで遊離脂肪酸の含量は99.6%であり、13.2%のc9,tll-CLAと58.3%のt10,cl2-CLAを含んでいた(t10,cl2-CLAの純度,81.5%)。
以上の3工程によりc9,tl1-CLAとt10,c12-CLAを多く含む遊離脂肪酸を効率よく製造することができた。なお、調製例1に示した方法に準ずると、第1工程のc9,t11-CLA高含有遊離脂肪酸をグリセリンでエステル化することができ、c9,t11-CLA高含有グリセリドを製造することもできる。第2工程の産物はt10,c12-CLA高含有グリセリドであることから、両異性体をグリセリド体として製造することも可能である。
表2
工程 重量 CLA含量(wt%) 異性体純度(%)
(g) c9,tll tlO,c12 c9,tll tlO,c12
原料(Gly-CLA) 2000 33.7 34.5 49.5 50.6
留分1-1 83 39.7 14.5 73.2 −
留分1-2 423 49.3 18.3 73.0 −
留分1-3 141 − − − −
残渣1-3 1145 23.4 43.5 35.0 65.0
留分2-1 544 28.2 34.4 45.1 54.9
留分2-2 52 − − − −
残渣2-2 343 14.0 57.3 − 80.4
留分3-1 220 13.2 58.3 − 81.5
留分3-2 40 − − − −
残渣3-2 221 − − − −
[2] 共役リノール酸の異性体混合物をメントールでエステル化して異性体を分画する方法
[実施例3] Candida rugosaリパーゼによるCLA異性体混合物のエステル化
CLA異性体混合物とL-メントールを等モルになるように調製した基質4g、水1mL、および種々の量のCandida rugosaリパーゼからなる反応混液を30℃で、16、40、70時間攪拌しながら反応させた。反応後、アルカリ条件下でヘキサン抽出し、メントールとメンチルエステルをヘキサン層に回収した。また水層画分に存在した脂肪酸石鹸は塩酸で酸性に戻して遊離体とし、これをヘキサンで抽出した。エステルを含む画分と遊離脂肪酸画分の脂肪酸組成を表3に示す。Candida rugosaのリパーゼはt10,cl2-CLAよりc9,t11-CLAをよく認識し、c9,t11-CLAはエステル化率が低いほどエステル画分に効率よく濃縮された。一方、t10,c12-CLAは、約45%のエステル化率で最も効率よく未反応遊離脂肪酸画分に濃縮することができた。
この濃縮効果は、既に報告されている同じ酵素を触媒としラウリルアルコールを基質とした選択的エステル化反応(2文献(McNailら(J.Am.Oil Chem.Soc.,76,1265-1268(1999))および本発明者らの論文(J.Am.Oil Chem.Soc.,79,303-308(2002))とほぼ同じであった。L-メントールは食品として利用されていることを考慮すると、食品として利用できるCLA異性体を分画する目的にL-メントールを活用することは非常に有効であることが分かった。
表3
酵素量 反応時間 エステル化率 画分 CLA含量(wt%) 異性体純度(%)
(U/g) (h) (%) c9,tll tlO,c12 c9,tll tlO,c12
25 16 8.3 遊離脂肪酸 26.4 37.6 58.8
エステル 75.5 5.9 92.8
40 19.1 遊離脂肪酸 19.4 42.3 68.5
エステル 74.7 6.1 92.5
70 28.7 遊離脂肪酸 14.2 48.3 77.3
エステル 71.9 6.4 91.9
50 16 18.1 遊離脂肪酸 22.9 40.8 64.0
エステル 74.9 6.1 92.5
40 32.8 遊離脂肪酸 12.3 49.5 80.1
エステル 69.8 6.2 91.8
70 38.3 遊離脂肪酸 11.0 52.9 82.8
エステル 63.7 7.1 90.0
100 40 40.2 遊離脂肪酸 10.9 54.2 83.3
エステル 62.0 7.4 89.4
70 45.6 遊離脂肪酸 11.1 58.3 84.0
エステル 55.9 9.7 85.2
200 40 46.0 遊離脂肪酸 11.2 58.6 84.0
エステル 55.0 10.4 84.1
70 53.0 遊離脂肪酸 13.5 60.2 81.7
エステル 49.2 13.8 78.1
[実施例4] Candida rugosaリパーゼによるCLA異性体混合物のエステル化の工程と、合成されたメンチルエステルから脂肪酸を遊離させる工程を組み合わせた方法による異性体の分画方法の概略を図2に示し、操作の各段階における物質収支を表4に示す。
第1工程は、c9,tl1-およびt10,cl2-共役リノール酸の混合物をL-メントールで選択的エステル化しtlO,cl2-CLAが濃縮された遊離脂肪酸とc9,tll-CLAが濃縮されたメンチルエステルの調製である。c9,tll-およびt10,c12-共役リノール酸の混合物514g、L-メントール286g(脂肪酸量に対して等モル量)、および反応液lg当たり200UのCandida rugosaリパーゼを2L容量のリアクター(MDS-U;丸菱バイオエンジ)に入れ、30℃、200rpmで48時間攪拌しながらインキュベートした(エステル化率,45.1%)。反応後、静置して得た油層を120℃、3mmHgの単蒸留によりメントールを留出除去し、538gの蒸留残渣を回収した。得られた蒸留残渣に5Lのn-ヘキサンと2Lの0.5N KOH(20%エタノール溶液)を加え、10分間攪拌した後ヘキサン層(エステル画分)と水層を回収した。水層画分には150mLの濃塩酸と5Lのn-ヘキサンを加えて攪拌した後ヘキサン層(遊離脂肪酸画分)を回収した。エステルおよび遊離脂肪酸を含んだへキサン溶液からヘキサンをエバポレーターで除去し、296gのメンチルエステルと224gの遊離脂肪酸を得た。メンチルエステルの構成脂肪酸中には59.4%のc9,t11-CLAと9.6%のt10,c12-CLA(c9,tll-CLAの純度,86.1%)が含まれており、遊離脂肪酸画分には60.0%のt1O,cl2-CLAと11.8%のc9,t11-CLA(t10,cl2-CLAの純度,83,6%)が含まれていた。
第2工程はメンチルエステル画分からc9,t11-CLAを遊離させる工程である。合成したメンチルエステル(224g)に、水を86mL、NaOHを57g、およぴエタノールを1L加え、沸騰させながら30分間ケン化分解した。反応液に3Lの水とlLのヘキサンを加え、10分間攪拌した後水層を回収した。得られた水層に220mLの濃塩酸を加えて酸性に戻し、さらに3Lのヘキサンを加えて攪拌した後ヘキサン層を回収した(遊離脂肪酸画分)。このヘキサン溶液からヘキサンをエバポレーターで除去し、178gの遊離脂肪酸を得た。遊離脂肪酸中には58.9%のc9,t11-CLAと9.6%のtlO,c12-CLA(c9,tll-CLAの純度,86.0%)が含まれていた(酸価196mg KOH/g)。
表4
工程 重量 CLA含量(wt%) 異性体純度(%)
(g) c9,tll tlO,c12 c9,tll tlO,c12
原料(Gly-CLA) 800 33.7 34.5 49.5 50.6
第1工程のエステル
化反応液の分画
蒸留留分 66 39.7 14.5 73.2 −
へキサン抽出
遊離脂肪酸画分 224 11.8 60.0 − 83.6
エステル画分 296 59.4 9.6 86.1 −
第2工程のケン化
分解物の分画
へキサン抽出
遊離脂肪酸画分 178 58.9 9.6 86.1 −
[実施例5]c9,t11-CLA含量の高いメンチルエステルの加水分解物を再度選択的エステル化することにより、c9,t11-CLAの純度を高める方法
実施例4の第2工程で得られた遊離脂肪酸画分(メンチルエステルの加水分解により得られたc9,t11-CLA含量の高い画分)とメントールを合わせて2.4 g(脂肪酸とメントールのモル比=1:1)、水0.6 g、および反応混液1 gに対して100 U のCandida rugosaリパーゼからなる反応混液を30℃で攪拌しながら40時間反応させた。反応後の油層の酸価から、エステル化率は61.2%であった。また油層のヘキサン抽出によりメンチルエステル画分を回収し、その脂肪酸組成を調べたところ、c9,t11-CLA含量は76.7%、t10,c12-CLA含量は2.3%であり、c9,t11-CLAの純度は97%であった。このようにCandida rugosaリパーゼによる選択的エステル化を2回繰り返すことにより、c9,t11-CLAの純度を上げることができる。
[実施例6]t10,c12-CLA含量の高い遊離脂肪酸画分を再度選択的エステル化することにより、t10,c12-CLAの純度を高める方法
実施例4の第1工程で得られた遊離脂肪酸画分(t10,c12-CLA含量の高い画分)とメントールを合わせて2.4 g(脂肪酸とメントールのモル比=1:1)、水0.6 g、および反応混液1 gに対して100 U のCandida rugosaリパーゼからなる反応混液を30℃で攪拌しながら40時間反応させた。反応後の油層の酸価から、エステル化率は18.6%であった。また油層のヘキサン抽出により未反応の遊離脂肪酸画分を回収し、その脂肪酸組成を調べたところ、c9,t11-CLA含量は7.9%、t10,c12-CLA含量は68.3%であり、t10,c12-CLAの純度は90%であった。このようにCandida rugosaリパーゼによる選択的エステル化を2回繰り返すことにより、t10,c12-CLAの純度を上げることができる。
[3] 共役リノール酸の異性体混合物をステロールでエステル化して異性体を分画する方法
[実施例7]
ステロールを基質とした選択的エステル化と合成されたステリルエステルの選択的加水分解を組み合わせたCLA異性体分画プロセスの概略を図3に示し、操作の各段階における物質収支とCLA異性体の組成を表5に示す。
<1回目のエステル化反応>
ステロール16.2gと共役リノール酸の異性体混合物55.8gを混合し(ステロールに対して5倍モル量の遊離脂肪酸)、さらに水48mLと反応液lg当たり500UのCandida rugosaリパーゼを加えて40℃で24時間攪拌しながらインキュベートした(ステロールに対するエステル化率,70.3%;脂肪酸に対するエステル化率,14.1%)。反応後、ヘキサン分画によりFFAとステリルエステルをそれぞれ43.2gと20.3g回収した。エステル画分には61.3%のc9,tll-CLAと9.4%のt10,cl2-CLAが含まれており、c9,t11-CLAの純度は1回のエステル化反応で49.5%から86.7%まで上昇した。一方遊離脂肪酸画分には27.0%のc9,t11-CLAと37.2%のt10,c12-CLAが含まれており、tlO,c12-CLAの純度は57.9%まで高めることができた。
<繰り返しエステル化反応によるt10,cl2-CLAの濃縮>
遊離脂肪酸画分のtlO,cl2-CLAの純度を高めるために1回反応によって得られた遊離脂肪酸(43.2g)に等モル量のステロール(63.3g)を加え、さらに11.8 mlの水(10%)と反応液1g当たりIOOOUのCandida rugosaリパーゼを含む反応液を調製し、40℃で12時間攪拌しながらインキュベートした(エステル化率,17.5%)。エステル化率を高めるために5mm Hgで脱水しながらさらに24時間反応を続けた結果、エステル化率は46.3%まで上昇した。反応後、ヘキサン分画によりFFAとステリルエステルをそれぞれ14.3gと29.5g回収した。遊離脂肪酸画分は11.2%のc9,t11-CLAと58.3%のtl0,c12-CLAを含んでいた(tl0,c12-CLAの純度,83.9%)。
<ステリルエステルから遊離脂肪酸の回収>
1回目のエステル化反応によって得られたステリルエステル(20.3g)に等量の水と反応液lgに対して200UのCandida rugosaリパーゼを加え、30℃で40時間攪拌しながらインキュベートした(加水分解率,65.6%)。反応後、ヘキサン分画により4.39gの遊離脂肪酸が回収でき、c9,t11-CLAとtlO,cl2-CLAの含量はそれぞれ71.2%と5.9%であった(c9,tll-CLAの純度,92.3%)。Candida rugosaリパーゼはt10,cl2-CLAよりc9,t11-CLAを基質として認識しやすい性質を持っている。この加水分解においても脂肪酸に対する選択性を引き出すことができc9,t11-CLAの純度を86.7%から92.3%まで高めることができた。
表5
操作 画分 重量 CLA含量(wt%) 異性体純度(%)
(g) c9,tll tlO,c12 c9,tll tlO,c12
原料CLA − 55.8 33.7 34.5 49.5 50.6
エステル化 FFA 43.2 27.0 37.2 57.9
(1回目) エステル 20.3 61.3 9.4 86.7
エステル化
(2回目) FFA 14.3 11.2 58.3 83.9
1回目のエステル
化で得たステリル
エステルの加水分解 FFA 5.0 71.2 5.9 92.3
[実施例8]Candida rugosaリパーゼを用いたCLA異性体混合物とステロールのエステル化に及ぼす減圧の影響
(1) CLA異性体混合物(CLA-80)とステロール(純度97%、タマセ生化学株式会社)の混合物3.0 g(CLAとステロールのモル比=2:1)、水0.2 ml、および反応混液1 gに対して150 または1000 UのCandida rugosaリパーゼからなる反応混液を40℃、20 mm Hgで攪拌しながら20時間反応させた。(2) CLA異性体混合物(CLA-80)とステロール、水を合計3.0 g(CLAとステロールのモル比=2:1、水分1, 10, 30, 50 wt%)、および反応混液1 gに対して150 または1000 UのC. rugosaリパーゼからなる反応混液を40℃、760 mm Hgで攪拌しながら20時間反応させた。反応後、油層の酸価およびガスクロマトグラフィー分析によりエステル化率を求めた(表6)。

表6
ステロールに対するエステル化率(%)
反応系 150U/g 1000U/g
20mmHgで反応 74.2 96.3
760mmHgで反応,水分量 1wt% 16.5 30.7
760mmHgで反応,水分量10wt% 23.9 35.2
760mmHgで反応,水分量30wt% 37.9 51.1
760mmHgで反応,水分量50wt% 35.7 52.4

常圧下(760 mm Hg)ではステロールに対するエステル化率は最大で50%程度であったが、減圧下で反応させることによりエステル化率を96%にまで高めることができた。エステル化反応の初期には水が必要であるが、エステル化の進行と共に初めから存在していた水、およびエステル化に伴って生成する水を取り除くことによってエステル化率が向上する。
[実施例9]Candida rugosaリパーゼを用いた減圧下でのCLA異性体混合物とステロールのエステル化――モル比の影響
CLA異性体混合物(CLA-80)とステロールの混合物3.0 g(CLAとステロールのモル比=5:1, 3:1, 2:1, 1.5:1, 1:1)、水0.2 ml、および反応混液1 gに対して1000 UのCandida rugosaリパーゼからなる反応混液を40℃、20 mm Hgで攪拌しながら20時間反応させた。反応後、油層の酸価およびガスクロマトグラフィー分析によりエステル化率を求めた(表7)。

表7
モル比(CLA:ステロール) ステロールに対するエステル化率(%)
5 : 1 96.4
3 : 1 96.8
2 : 1 96.3
1.5 : 1 90.9
1 : 1 37.9

ステロールに対して2倍モル以上のCLAを加えることにより、ステロールに対するエステル化率が96%以上になった。
[実施例10]Candida rugosaリパーゼを用いた減圧下でのCLA異性体混合物とステロールのエステル化――酵素量の影響
CLA異性体混合物(CLA-80)とステロールの混合物3.0 g(CLAとステロールのモル比=2:1)、水0.2 ml、および反応混液1 gに対して50〜400 UのCandida rugosaリパーゼからなる反応混液を40℃、20 mm Hgで攪拌しながら20時間反応させた。反応後、油層の酸価およびガスクロマトグラフィー分析によりエステル化率を求めた。また反応液をアルカリ条件下でヘキサン抽出し、ステロールとステリルエステルをヘキサン層に回収した。水層画分に存在した脂肪酸石鹸は塩酸で酸性に戻して遊離脂肪酸とし、これをヘキサンで抽出した。反応後のエステル化率、エステルを含む画分と遊離脂肪酸画分の脂肪酸組成を表8に示す。

表8
酵素量 脂肪酸に ステロール 画分 CLA含量(wt%) 異性体純度(%)
対するエス に対する
テル化率 エステル化率

(U/g) (%) (%) c9,t11 t10,c12 c9,t11 t10,c12
50 14.7 29.4 遊離脂肪酸 28.7 39.4 57.8
エステル 64.7 14.9 81.2
100 21.4 42.8 遊離脂肪酸 25.4 42.4 62.6
エステル 62.5 15.4 80.2
150 32.1 64.1 遊離脂肪酸 20.7 46.3 69.1
エステル 59.7 17.0 77.9
200 43.3 86.6 遊離脂肪酸 16.8 50.6 75.0
エステル 55.5 19.1 74.4
300 45.5 91.0 遊離脂肪酸 16.3 51.8 76.0
エステル 55.1 19.8 73.6
400 48.3 96.5 遊離脂肪酸 17.5 51.3 74.5
エステル 51.9 22.0 74.4

c9,t11-CLAはエステル化率が低いほどエステル画分に効率よく濃縮された。一方、t10,c12-CLAは脂肪酸に対するエステル化率45.5%の時に最も効率よく未反応遊離脂肪酸画分に濃縮することができた。
エステル画分におけるc9,t11-CLAの純度は本発明の実施例7(1回目のエステル化反応)に比べて低かったが、未反応の遊離脂肪酸画分のt10,c12-CLAの純度は高かった。実施例7では常圧下で水を含む反応であり、エステル化が進行しにくいので脂肪酸を過剰量添加している。そのため、脂肪酸に対するエステル化率が非常に低いところで反応を停止させなければならないので、c9,t11-CLAの純度が高く、t10,c12-CLAの純度が低くなるのである。一方、本実施例のように減圧下で反応させるとエステル化が進行しやすくなるため、反応系に添加する脂肪酸量を実施例7よりも減らすことができる。その結果、脂肪酸に対するエステル化率が上昇し、t10,c12-CLAの純度を高めることができた。
ステロールの選択的エステル化反応を利用したときのCLA異性体の分画効率は、ラウリルアルコールを基質とした選択的エステル化反応(J. Am. Oil Chem. Soc., 79, 303-308(2002))およびメントールを基質とした選択的エステル化反応(本発明の実施例3)よりも悪いが、CLAトリグリセリドを基質とした選択的加水分解反応(本発明の実施例1,2)よりも良い。
[実施例11]Candida rugosaリパーゼを用いた減圧下でのCLA異性体混合物とステロールのエステル化――大量分画
CLA異性体混合物(CLA-HG)とステロールの混合物2000 g(CLAとステロールのモル比=2:1)、水50 ml、および反応混液1 gに対して300 U/gのCandida rugosaリパーゼからなる反応混液を40℃、20 mm Hgで攪拌しながら26時間反応させた。このときの脂肪酸に対するエステル化率は40.3%であった。反応後の油層のセライト濾過と脱水を行った後、190℃, 0.2 mm Hgで分子蒸留し、脂肪酸を含む留分1を除去した。次いで残渣を230℃, 0.03 mm Hgで分子蒸留し、留分2と残渣2を得た。これらの工程における物質収支を表9に、脂肪酸組成を表10に示す。

表9
酸価 全重量 遊離脂肪酸 ステロール エステル
(mgKOH/g) (g) (g) (g) (g)
反応前 115.4 2100 1212 888 0
反応後 65.5 2004 690 155 1159
脱水後 65.7 1919 654 145 1120
蒸留
留分1 202.1 346 342 4 0
留分2 144.0 368 276 88 4
残渣2 1.5 1147 9 50 1088

表10
CLA含量(wt%) 異性体純度(%)
c9,t11 t10,c12 c9,t11 t10,c12
反応前 37.0 38.7 48.9 51.1
反応後 遊離脂肪酸画分 21.5 52.2 70.8
エステル画分 61.0 21.9 73.6
蒸留
留分1 21.1 49.4 70.8
留分2 21.8 53.5 71.0
残渣2 60.9 23.5 72.1

選択的エステル化反応と蒸留を組み合わせることにより、c9,t11-CLA含量の高いステリルエステル(残渣2)、およびt10,c12-CLA含量の高い遊離脂肪酸(留分1と2)が得られた。なお、未反応のステロールは留分2と残渣2の両方に移行した。
[実施例12]c9,t11-CLA含量の高いエステル画分のCandida rugosaリパーゼによる加水分解
実施例11で得た残渣2(c9,t11-CLA含量の高いエステル画分) 2.4 g、水0.6 g、および反応混液1 gに対して25から1600U のCandida rugosaリパーゼからなる反応混液を760 mm Hg、40℃で攪拌しながら20時間反応させた。反応後、油層の酸価およびガスクロマトグラフィー分析により加水分解率を推定した。また油層のヘキサン抽出により遊離脂肪酸画分を回収した。表11に結果を示す。

表11
遊離脂肪酸画分における
酵素量 加水分解率 c9,t11含量 t10,c12含量 c9,t11純度 c9,t11収率
(U/g) (%) (wt%) (wt%) (%) (%)
反応前(残渣2) − 60.9 23.5 72.1 −
25 8.1 82.5 6.5 92.7 11.0
50 17.8 82.8 6.5 92.7 24.3
75 29.0 80.8 6.2 92.9 38.5
100 39.6 75.7 7.4 91.1 49.2
150 44.4 73.0 8.7 89.4 53.3
200 46.6 70.5 9.8 87.8 54.0
400 50.9 66.5 12.3 84.4 55.6
800 54.6 63.8 16.3 79.7 57.2
1600 56.6 62.2 16.8 78.8 57.8

c9,t11-CLAに作用性の高いCandida rugosaリパーゼ(Lipase-OF)を用いて、c9,t11-CLA含量の高いステリルエステルを加水分解すれば、ステリルエステルに結合しているCLAよりもさらにc9,t11-CLA含量の高い遊離脂肪酸を得ることができる。この時、加水分解率が低いほどc9,t11-CLAの純度は高い。
従来技術であるc9,t11-CLA含量の高いラウリルエステル、c9,t11-CLA含量の高いメントールエステル(本発明の実施例3,4)をそれぞれ遊離脂肪酸に変換するとき、効率の良い加水分解には化学法を採用しなければならい。化学法では反応容器が大きくなりCLAの変性の危険がある。またCLA異性体の選択性がないため、加水分解によりc9,t11-CLAの純度を上げることができない。しかし本方法では、穏和な条件下での酵素を用いたステリルエステルの選択的加水分解が可能であり、かつc9,t11-CLAの純度を上げることができる。
なお反応混液からの遊離脂肪酸の回収には、蒸留、溶媒分画(ヘキサン、メタノール、エタノールなど)、クロマトグラフィーなどの方法が使用できる。
[実施例13]t10,c12-CLA含量の高い遊離脂肪酸(留分1と2)のCandida rugosaリパーゼによる選択的エステル化
実施例11で得た留分1と2の混合物(t10,c12-CLA含量の高い遊離脂肪酸画分)とステロールをあわせて3.0 g(CLAとステロールのモル比=2:1)、水0.2 g、および反応混液1 gに対して25から1000U のCandida rugosaリパーゼからなる反応混液を20 mm Hg、40℃で攪拌しながら20時間反応させた。反応後、油層の酸価およびガスクロマトグラフィー分析によりエステル化率を推定した。また油層のヘキサン抽出により未反応の遊離脂肪酸画分を回収した。表12に結果を示す。

表12
脂肪酸に対する 遊離脂肪酸画分における
酵素量 エステル化率 c9,t11含量 t10,c12含量 t10,c12純度 t10,c12収率
(U/g) (%) (wt%) (wt%) (%) (%)
反応前(残渣2) − 21.5 51.4 70.5 −
50 12.3 17.7 54.6 75.5 13.1
100 28.9 10.7 62.7 85.4 35.3
200 34.6 10.0 63.9 86.5 43.0
300 43.3 8.6 65.3 88.4 55.0
400 47.1 6.9 65.2 90.4 59.8
500 48.3 11.1 65.8 85.6 61.8
1000 49.3 18.2 57.9 76.1 55.5

Candida rugosaリパーゼを用いてt10,c12-CLA含量の高い遊離脂肪酸画分(留分1と2の混合物)をステロールでエステル化し、反応混液から未反応の遊離脂肪酸を回収すれば、t10,c12-CLA含量をより高めた遊離脂肪酸画分を得ることができる。この時、脂肪酸に対するエステル化率が47%の時、t10,c12-CLAの純度が最大になった。
なお反応混液からの遊離脂肪酸の回収には、蒸留、溶媒分画(ヘキサン、メタノール、エタノールなど)、クロマトグラフィーなどの方法が使用できる。
[食品の配合例]
例1 (重量%)
脂肪食品(スプレッド) 100g
脂肪相
CLAグリセリド 10
サフラワー油 30
ハイモノ7804 0.3
着色料 0.02
水相
水 56.44
スキムミルクパウダー 1.5
ゼラチン 1.5
ソルビン酸カリウム 0.15%
クエン酸粉末 0.07%

例2 (重量%)
脂肪食品(ドレッシング) 100g
CLAグリセリド 15.0
サフラワー油 10.0
マルトデキストリン 20.0
乾燥卵黄 0.8
キサンタンガム 0.4
ビネガー 5.0
水 48.8

例3 (重量%)
脂肪食品(アイスクリーム) 100g
CLAグリセリド 10.0
脂肪粉乳 10.0
結晶砂糖 12.0
透明シロップ 4.0
無水デキストロース 2.0
水 62.0

例4 (重量%)
脂肪食品(マヨネーズ) 100g
CLAグリセリド 20
サフラワー油 60
卵黄 8.0
食酢 3.0
砂糖 1.5
食塩 1.0
香辛料 2.0
水 4.5
選択的加水分解反応および非選択的加水分解反応を利用した、Gly-CLA(調製例1で得られたグリセリド標品)を原料とするCLA異性体分画の一例の概略を示す説明図。 L-メントールを基質としたエステル化と、合成されたメンチルエステルのケン化分解を組合せたCLA異性体分画の一例の概略を示す説明図。 ステロールを基質としたエステル化反応と、合成されたステリルエステルの加水分解反応を組合せたCLA異性体分画プロセスの一例の概略を示す説明図。

Claims (1)

  1. Candida rugosa由来のリパーゼの存在下、共役リノール酸の異性体混合物を、有機溶媒を含まない反応系で、食品加工に利用できるステロールと選択的エステル化し、得られたc9,t11-共役リノール酸を濃縮させたステリルエステル画分を上記Candida rugosa由来のリパーゼにより選択的に加水分解することによって、c9,t11-共役リノール酸高含有脂肪酸を得ることを特徴とする、共役リノール酸異性体の精製方法。
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