JP4508380B2 - 多層プリント配線板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層プリント配線板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多層プリント配線板は、例えば、特公平4−3676号公報等に開示されているようなコンフォーマルマスクを用いる方法により製造することができる。
このコンフォーマルマスクを用いる製造方法について、図17を参照しながら以下に説明する。
【0003】
図17(a)〜(g)は、従来のコンフォーマルマスクを用いた多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
この製造方法では、まず、基材101の片側に銅箔104がラミネートされた片側銅張積層板を出発材料とし、この片側銅張積層板の2枚を銅箔104が上側になるように積層し、張り合わせる(図17(a)参照)。
次に、銅箔104上に、感光性樹脂を均一に塗布し、露光現像処理を行うことにより、バイアホール用の開口形成部分に開口部103aを有するエッチングレジスト103を形成する(図17(b)参照)。その後、エッチングにより開口部103a下の銅箔を除去することにより開口104aを形成し、エッチングレジスト103を剥離する(図17(c)参照)。
【0004】
さらに、銅箔に形成した開口104aにレーザ光を照射し、銅箔104をコンフォーマルマスクとして用いて基材101にバイアホール用開口106を形成する(図17(d)参照)。そして、基板表面に触媒核を付与してから無電解銅めっきを行い、バイアホール用開口106の壁面を含む基板表面に無電解銅めっき膜112を析出させる(図17(e)参照)。
次に、導体回路非形成部にめっきレジスト113を形成し、電解めっきを行うことにより、電解めっき膜116をめっきレジスト113非形成部に形成する(図17(f)参照)。さらに、めっきレジスト113を剥離した後、めっきレジスト113下の無電解めっき膜112および銅箔104をエッチングにて除去し、バイアホール107および導体回路105を形成する(図17(g)参照)。このような工程を複数回繰り返すことにより、多層プリント配線板を製造することができる。
【0005】
また、多層プリント配線板の製造においては、導体回路の形成するための無電解めっき液としてEDTAを錯化剤としたものを用いることが主流であり、例えば、特開昭63−158156号公報および特開平2−188992号公報(米国特許第5055321号明細書、米国特許第5519177号明細書) の実施例中に、このような無電解めっき液を使用して導体回路を形成した例が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このようなEDTAを錯化剤とした無電解めっき液では、析出しためっき膜に圧縮応力(拡がろうとする力)が発生し、めっき膜がバイアホール用開口の壁面や金属箔から剥離してしまうという問題が見られた。
これは、めっき膜を形成する際に、該めっき膜中に水素を取り込んでしまい、この水素が応力発生源となって圧縮応力が発生するからである。
また、直径80μm以下の微細なバイアホール用開口内には、めっきが析出しないという問題も見られた。
【0007】
そこで、本発明者らは、錯化剤として酒石酸を用いた場合には、めっき膜への水素の取り込みが抑制され、圧縮応力の発生しにくいめっき膜を形成することができることを見出し、先に、アルカリ性化合物、還元剤、銅イオン、ならびに、酒石酸またはその塩を含む水溶液からなる無電解めっき液を提案した。
【0008】
しかしながら、この無電解めっき液を用いて基板表面やバイアホール用開口内に無電解めっき膜を形成した場合、めっき膜の析出が不充分である部分や未析出の部分を生じることがあり、このような現象は、スルーホール用貫通孔付近やバイアホール用開口付近で多く見られた。
これは、無電解めっき膜を形成する際に付与した触媒の活性化が不充分であったり、触媒を付与した後、無電解めっき処理を施すまでの間に触媒が不活性化されるためではないかと考えられる。
【0009】
また、均一で、密着性に優れる無電解めっき膜を形成するために、通常、無電解めっき処理前に、被めっき物に前処理を施すことが行われている。
このような前処理を行う技術については、例えば、WO96/20294号公報、特開平7−278823号公報、特開平6−299360号公報等に開示されている。
【0010】
WO96/20294号公報には、pH調整剤、還元剤および錯化剤からなる無電解めっき用前処理液が開示されている。この無電解めっき用前処理液は、金属膜の表面電位を調整することによりめっき膜の析出性を安定化させるものである。
従って、金属膜上に無電解めっき膜を形成する場合には、均一で、密着性に優れる無電解めっき膜を形成することができるが、スルーホール用貫通孔やバイアホール用開口の壁面のようなその材質が樹脂である被めっき物の表面に無電解めっき膜を形成した場合には、均一な無電解めっき膜が形成されず、上記問題を解決することができなかった。
【0011】
また、特開平7−278823号公報には、金属の被めっき物表面をアルカリ性水溶液で処理する方法が開示されている。上記方法によれば、被めっき物表面に水酸化物の薄い被膜が形成され、これにより、めっき膜の密着性が向上するという効果が記載されている。
しかしながら、ここで開示されている前処理液を用いて、バイアホール用開口内等を処理した後、上述したアルカリ性化合物、還元剤、銅イオン、ならびに、酒石酸またはその塩を含む水溶液からなる無電解めっき液を用いて、バイアホール用開口内に無電解めっき膜を形成したが、やはり均一なめっき膜が形成されず、上記問題は解決することができなかった。
【0012】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その目的は、スルーホール用貫通孔の壁面やバイアホール用開口の壁面等にも、均一で、密着性に優れた無電解めっき膜を形成することができ、その結果、接続信頼性、電気特性に優れた多層プリント配線板を製造することができる多層プリント配線板の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意検討した結果、多層プリント配線板の製造において、無電解めっき処理を施す前に、0.01〜0.25mol/lのアルカリ性化合物、および、0.1〜0.3mol/lの還元剤を含む水溶液からなる無電解めっき用前処理液を用いた前処理を行うことにより、その後、無電解めっき処理を行った際に、スルーホール用貫通孔やバイアホール用開口、金属層等の被めっき物表面に均一にめっき膜が析出し、また、形成されためっき膜は、被めっき物との密着性に優れることを見い出し、以下に示す内容を要旨構成とする発明に到達した。
【0020】
すなわち、の本発明の多層プリント配線板の製造方法は、下層導体回路が形成された基板上に、層間樹脂絶縁層と上層導体回路とが順次積層され、これらの導体回路がバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板の製造方法であって、
上記上層導体回路を形成する工程は、少なくとも
(A)下層導体回路上または上層導体回路上に、樹脂層と金属層とからなる樹脂・金属層を形成する工程、
(B)上記樹脂・金属層を構成する樹脂層および金属層に、順次、開口形成処理を施し、該開口形成処理によりバイアホール用開口を形成し、更にPd触媒を付与する工程、
(C)上記樹脂・金属層に、0.025〜0.1mol/lのアルカリ性化合物、および、0.1〜0.3mol/lの還元剤を含む水溶液からなる無電解めっき用前処理液を用いた前処理を施す工程、
(D)上記前処理施された樹脂・金属層の表面に、無電解めっき膜を形成する工程、
(E)上記無電解めっき膜の一部にめっきレジストを形成する工程、
(F)上記めっきレジスト非形成部に電解めっき膜を形成する工程、および、
(G)上記めっきレジストを剥離した後、上記めっきレジスト下の無電解めっき膜と金属層とを除去する工程、を含み、
上記(B)の工程において、バイアホール用開口の直径は80μm以下であり、
上記(C)の工程において、前処理の温度は、20〜50℃であって、前処理時間は、0.5〜5分であり、
上記(D)の工程で用いる無電解めっき液は、アルカリ性化合物、還元剤、銅イオン、および、酒石酸もしくはその塩を含む水溶液からなり、さらに、ニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含み、
上記アルカリ性化合物の濃度は、0.025〜0.25mol/lであり、
上記還元剤の濃度は、0.03〜0.15mol/lであり、
上記銅イオンの濃度は、0.02〜0.06mol/lであり、
上記酒石酸もしくはその塩の濃度は、0.05〜0.3mol/lである。
【0021】
また、第の本発明の多層プリント配線板の製造方法は、下層導体回路が形成された基板上に、層間樹脂絶縁層と上層導体回路とが順次積層され、これらの導体回路がバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板の製造方法であって、
上記上層導体回路を形成する工程は、少なくとも
(A)下層導体回路上または上層導体回路上に、樹脂層と金属層とからなる樹脂・金属層を形成する工程、
(B)上記樹脂・金属層を構成する樹脂層および金属層に、順次、開口形成処理を施し、該開口形成処理によりバイアホール用開口を形成し、更にPd触媒を付与する工程、
(C)上記樹脂・金属層に、0.025〜0.1mol/lのアルカリ性化合物、および、0.1〜0.3mol/lの還元剤を含む水溶液からなる無電解めっき用前処理液を用いた前処理を施す工程、
(D)上記前処理施された樹脂・金属層の表面に、無電解めっき膜を形成する工程、
(E)上記無電解めっき膜上に電解めっき膜を形成する工程、
(F)上記電解めっき膜上の一部に、エッチングレジストを形成する工程、および、
(G)上記エッチングレジスト非形成部下の電解めっき膜と無電解めっき膜と金属層とをエッチング処理により除去する工程、を含み、
上記(B)の工程において、バイアホール用開口の直径は80μm以下であり、
上記(C)の工程において、前処理の温度は、20〜50℃であって、前処理時間は、0.5〜5分であり、
上記(D)の工程で用いる無電解めっき液は、アルカリ性化合物、還元剤、銅イオン、および、酒石酸もしくはその塩を含む水溶液からなり、さらに、ニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含み、
上記アルカリ性化合物の濃度は、0.025〜0.25mol/lであり、
上記還元剤の濃度は、0.03〜0.15mol/lであり、
上記銅イオンの濃度は、0.02〜0.06mol/lであり、
上記酒石酸もしくはその塩の濃度は、0.05〜0.3mol/lである。
【0026】
【発明の実施の形態】
第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法は、下層導体回路が形成された基板上に、層間樹脂絶縁層と上層導体回路とが順次積層され、これらの導体回路がバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板の製造方法であって、少なくとも下記(a)〜(g)の下層導体回路を形成する工程を含むことを特徴とする。
(a)上記基板上に金属層を形成する工程、
(b)上記金属層および上記基板に、順次、開口形成処理を施し、該開口形成処理により上記金属層が形成された基板に貫通孔を形成する工程、
(c)上記貫通孔の形成された基板に、0.01〜0.25mol/lのアルカリ性化合物、および、0.1〜0.3mol/lの還元剤を含む水溶液からなる無電解めっき用前処理液を用いた前処理を施す工程、
(d)上記前処理が施された基板の表面に無電解めっき膜を形成する工程、
(e)上記無電解めっき膜の一部にめっきレジストを形成する工程、
(f)上記めっきレジスト非形成部に電解めっき膜を形成する工程、および、
(g)上記めっきレジストを剥離した後、上記めっきレジスト下の無電解めっき膜と金属層とを除去する工程。
【0027】
第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、基板上に下層導体回路(スルーホールを含む)を形成するための無電解めっき処理を施す前に、0.01〜0.25mol/lのアルカリ性化合物と0.1〜0.3mol/lの還元剤とを含む水溶液からなる無電解めっき用前処理液を用いて、貫通孔の形成された基板に前処理を施すため、無電解めっき処理により基板との密着性に優れた、均一な無電解めっき膜を形成することができ、その結果、接続信頼性、電気特性に優れる多層プリント配線板を製造することができる。
【0028】
通常、無電解めっき処理を施す際には、予め、被めっき物表面に触媒を付与しておく必要があり、例えば、パラジウム金属等を触媒として被めっき物表面に析出させた後、無電解めっき処理を行うのであるが、このようにして被めっき物表面に析出させたパラジウムは、空気中または水中に放置しておくと酸化され、触媒としての活性を失ってしまう。
しかしながら、第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法では、貫通孔の壁面を含む基板の表面に触媒を付与した後、上記無電解めっき用前処理液を用いて前処理を施すことにより、酸化されて活性を失っていた触媒を再び還元し、触媒としての活性を取り戻させることができる。
【0029】
以下に、第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法について詳細に説明する。
なお、第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法(以下、単に第一の製造方法ともいう)は、基板上に下層導体回路(スルーホールを含む)を形成する工程、即ち、上記(a)〜(g)の工程に特徴を有するものであるため、まず、この(a)〜(g)の工程について説明し、多層プリント配線板を製造する全製造工程については、後に詳述することとする。
【0030】
第一の製造方法においては、(a)〜(g)の工程を行うことにより、基板上にスルーホールを含む下層導体回路を形成する。
まず、基板上に金属層を形成する(工程(a))。
具体的には、例えば、基板上に金属箔を張り付けたり、スパッタリングや真空蒸着法等の物理的蒸着法や化学蒸着法を行うことにより形成する。
また、金属層の形成は無電解めっき処理により行ってもよい。この場合には、後に詳述する無電解めっき用前処理液を用いて基板に前処理を施した後、無電解めっき処理を施すことが望ましい。
上記基板としては、樹脂基板が望ましく、具体例としては、例えば、ガラスエポキシ基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂基板、熱硬化性ポリフェニレンエーテル基板、FR−4基板、FR−5基板、フッ素樹脂基板等が挙げられる。
【0031】
また、上記金属層の材質としては、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、貴金属(金、銀、パラジウム、白金)等が挙げられる。
また、金属層の形成された基板として、市販の銅張積層板、RCC基板等を用いてもよい。
【0032】
次に、上記金属層および上記基板に、順次、開口形成処理を施し、該開口形成処理により、上記金属層が形成された基板に貫通孔を形成する(工程(b))。なお、本明細書においては、貫通孔を形成する処理も非貫通孔を形成する処理も開口形成処理ということとする。
この工程においては、まず、基板上に形成された金属層に開口を形成し、その後、上記金属層に形成された開口部下の基板に貫通孔を形成する。
【0033】
上記金属層に開口を形成する方法としては、例えば、以下の方法等を用いることができる。
即ち、金属層上の一部(開口非形成部分に相当する部分)にエッチングレジストを形成した後、エッチングを行うことにより開口を形成することができる。
上記エッチングレジストは、例えば、感光性ドライフィルムを張り付けたり、液状レジストを塗布した後、露光現像処理を施すことにより形成することができる。
また、上記エッチングで用いるエッチング液としては、例えば、硫酸−過酸化水素水溶液、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩水溶液、塩化第二鉄、塩化第二銅等の水溶液、塩酸、硝酸、熱希硫酸等が挙げられる。
また、第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液を用いることもできる。
【0034】
また、この工程においては、金属層に開口を形成する前に、該金属層の厚さを0.5〜5μm程度にしておくことが望ましい。金属層の厚さが0.5μm未満では、後工程で基板に貫通孔を形成する際に、該金属層がコンフォーマルマスクとしての役割を果たすことができなくなることがあり、一方、金属層の厚さが5μmを超えると、レーザ処理により貫通孔を形成する際に、該貫通孔の形状が所望の形状にならないことがある。
【0035】
次に、上記エッチングレジストを除去し、開口を形成した金属層をコンフォーマルマスクとして、基板に貫通孔を形成する。
上記貫通孔の形成は、例えば、レーザ処理等により行うことができる。
このとき、使用するレーザとしては、例えば、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、UVレーザ、YAGレーザ等が挙げられる。
これらのレーザは、形成する貫通孔の形状等を考慮して使い分けてもよい。
また、レーザ処理を行う際のビーム径は、形成する貫通孔の開口径の1.3倍以上であることが望ましい。所望の形状の貫通孔を形成することができるからである。
【0036】
上記レーザ処理により貫通孔を形成した後には、デスミア処理を行うことが望ましい。得られる多層プリント配線板の接続信頼性、電気特性をさらに向上させることができるからである。
上記デスミア処理は、例えば、クロム酸、過マンガン酸塩の水溶液からなる酸化剤を使用して行うことができる。また、酸素プラズマ、CF4 と酸素の混合プラズマやコロナ放電等で処理してもよい。また、低圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することにより処理してもよい。
【0037】
次に、上記貫通孔の形成された基板に、0.01〜0.25mol/lのアルカリ性化合物、および、0.1〜0.3mol/lの還元剤を含む水溶液からなる無電解めっき用前処理液を用いた前処理を施す(工程(c))。
また、この前処理を施す前に、上記貫通孔の形成された基板の表面には、予めパラジウム金属等の触媒を付与しておくことが望ましい。
【0038】
上記触媒としてパラジウム金属を用いる場合には、例えば、下記の方法を用いて、触媒を付与することができる。
即ち、上記貫通孔の形成された基板を、塩化パラジウム(PbCl2 )と塩化第一スズ(SnCl2 )とを混合した触媒液中に浸漬し、第一スズイオンの還元力により、パラジウムイオンをパラジウム金属として、貫通孔の壁面や基板上に形成された金属層の表面に析出させることにより、触媒を付与することができる。
【0039】
上記無電解めっき用前処理液におけるアルカリ性化合物としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
また、これらのアルカリ性化合物の濃度が、0.01mol/l未満では、無電解めっき用前処理液のpHが低く、還元剤による還元作用が不充分な場合があり、一方、アルカリ性化合物の濃度が、0.25mol/lを超えると、還元剤が分解してしまうことがあるため、アルカリ性化合物の濃度は上記範囲に限定される。
【0040】
また、上記還元剤としては、例えば、次亜リン酸ナトリウム、アルデヒド、水素化ホウ素、ヒドラジン等が挙げられる。
また、これらの還元剤の濃度が、0.1mol/l未満では、還元作用がほとんどなく、一方、還元剤の濃度が、0.3mol/lを超えても、その還元作用はほとんど変わらず、経済的に不利になるだけであるため、還元剤の濃度は上記範囲に限定される。
【0041】
上記無電解めっき用前処理液は、その水溶液中に、金属イオンや錯化剤を含まないことが望ましい。
金属イオンや錯化剤が含まれている場合には、上記無電解めっき用前処理液を用いて上記基板に前処理を施した際に、上記貫通孔の壁面等に存在する活性化された触媒が金属イオン等と反応し、活性化が不充分な触媒が増加する。この場合、無電解めっき処理時の初期反応性が抑制され、めっき膜が均一に析出しないこととなる。
【0042】
この理由を、触媒としてパラジウムを用いた場合を例にとって説明する。
即ち、上記貫通孔の形成された基板を、例えば、塩化パラジウムを含む溶液中に浸漬した際には、パラジウムイオンが他の金属イオンにより還元され、貫通孔の壁面等にパラジウム金属として析出し、このパラジウム金属が触媒としての活性を有することとなる。
ここで、パラジウム金属が酸化されると、触媒としての活性が失われてしまう。その結果、触媒としての活性を有するパラジウム金属の割合が減少し、これが、めっき時の初期反応性の低下につながるため、上記貫通孔の壁面や基板上に形成された金属層の表面にめっき膜が均一に析出しないこととなる。
【0043】
第一の製造方法では、触媒を付与した後、上記無電解めっき用前処理液を用いて前処理を施すので、この前処理により触媒を充分に活性化することができ、その結果、無電解めっき処理を施すことにより、均一で、密着性に優れる無電解めっき膜を形成することができる。このように、上記無電解めっき用前処理液を用いた場合には、被めっき物が、基板のような樹脂を材質とするものであっても、金属層のような金属を材質とするものであっても、無電解めっき処理により、被めっき物表面に均一な無電解めっき膜を形成することができる。
【0044】
上記前処理は、貫通孔の形成された基板を、上記無電解めっき用前処理液に浸漬することにより行う。
このとき、上記無電解めっき用前処理液の温度は、20〜50℃であることが望ましい。
【0045】
上記無電解めっき用前処理液の温度が20℃未満では、触媒を充分に還元することができず、未還元の触媒の割合が増えるため、反応性、即ち、めっき膜の析出性が不充分な場合があり、一方、上記液温度が50℃を超えると、還元剤が劣化しやすく、また、めっき時の反応性もほとんど向上しないため、経済的に不利である。
より望ましい液温度は、25〜40℃である。
【0046】
また、無電解めっき用前処理液中への浸漬時間、即ち、前処理時間は、0.5〜5分間であることが望ましい。
上記前処理時間が0.5分未満では、前工程で付与した触媒を充分に還元することができないことがあり、一方、前処理時間が5分を超えても、めっき時の反応性はほとんど向上しないからである。
【0047】
次に、上記前処理が施された基板の表面、即ち、貫通孔の壁面および基板上の金属層の表面に、無電解めっき膜を形成する(工程(d))。
上記無電解めっき膜の形成は、貫通孔が形成された基板を無電解めっき液中に浸漬することにより行う。
【0048】
上記無電解めっき液としては特に限定されないが、アルカリ性化合物、還元剤、銅イオン、および、酒石酸もしくはその塩を含む水溶液からなるものが好ましい。
これは、上記無電解めっき液が、樹脂や金属からなる被めっき物の表面に、均一で、密着性に優れた無電解めっき膜を形成する際に用いる処理液として適しているからであり、その理由は、上記無電解めっき液により形成されるめっき膜は、水素の取り込み量が少なく、適度な引っ張り強度を有するものだからである。
【0049】
上記無電解めっき液において、上記アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられる。
また、その濃度は、0.025〜0.25mol/lであることが望ましい。
アルカリ性化合物の濃度を上記範囲に調整することにより、めっき析出速度を1〜2μm/時間に低減させることができるため、貫通孔の壁面等に均一な無電解めっき膜を形成することができる。特に、貫通孔の開口径の小さい場合であっても、その壁面にも均一で、密着性に優れる無電解めっき膜を形成することができる。
【0050】
上記還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウム、NaBH4 、ヒドラジン等が挙げられる。
また、その濃度は、0.03〜0.15mol/lであることが望ましい。
還元剤の濃度を上記範囲に調整することより、めっき析出速度を1〜2μm/時間に低減させることができるからである。
【0051】
上記銅イオンを形成するための化合物としては、例えば、硫酸銅、塩化銅等が挙げられる。
また、その濃度は、銅イオンの濃度で0.02〜0.06mol/lであることが望ましい。
銅イオンの濃度を上記範囲に調整することにより、無電解めっきを施す貫通孔の開口径の小さい場合であっても、該貫通孔の壁面に均一で、密着性に優れる無電解めっき膜を形成することができる。
【0052】
上記酒石酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、これらの塩は、2個のカルボキシル基のうち、1個のみが上記金属により置換された塩であってもよく、2個とも上記金属により置換された塩であってもよい。
また、その濃度は、0.05〜0.3mol/lであることが望ましい。
酒石酸またはその塩の濃度を上記範囲に調整することにより、密着性により優れる無電解めっき膜を形成することができる。
【0053】
また、上記無電解めっき液は、さらに、ニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含んでいることが望ましい。
これは、水素の発生を抑制し、その結果、めっき膜に適度の引っ張り応力が発生して基材に密着するため、めっき膜の剥離が発生しにくいからである。
【0054】
上記ニッケルイオンを形成するための化合物としては、例えば、塩化ニッケル、硫酸ニッケル等が挙げられ、上記コバルトイオンを形成するための化合物としては、例えば、塩化コバルト等が挙げられ、上記鉄イオンを形成するための化合物としては、例えば、塩化鉄等が挙げられる。
【0055】
この工程において、無電解めっきを行う際の無電解めっき液の液温度は、25〜35℃が望ましく、また,無電解めっき液中への浸漬時間は、10〜20分間であることが望ましい。
【0056】
次に、上記工程(d)で形成した無電解めっき膜の一部、即ち、下層導体回路非形成部に相当する部分に、めっきレジストを形成する(工程(e))。
上記めっきレジストは、例えば、感光性ドライフィルムを張り付けたり、液状レジストを塗布した後、露光現像処理を施すことにより形成することができる。
【0057】
次に、上記めっきレジスト非形成部に電解めっき膜を形成する(工程(f))。上記電解めっき膜を形成は、既に形成した無電解めっき膜をめっきリードとして行うことができる。
具体的には、例えば、硫酸、硫酸銅および添加剤を含む電解めっき液を用いることにより電解銅めっき膜を形成することができる。
【0058】
次に、上記めっきレジストを剥離し、その後、めっきレジスト下の無電解めっき膜と金属層とをエッチング処理により除去する(工程(g))。
ここで、無電解めっき膜および金属層の除去に用いるエッチング液としては、例えば、硫酸−過酸化水素水溶液、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩水溶液、塩化第二鉄、塩化第二銅等の水溶液、塩酸、硝酸、熱希硫酸、第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液等が挙げられる。
また、イオンビームエッチング等による物理エッチングを用いてもよい。
なお、無電解めっき膜および金属層の材質等を考慮して、それぞれの除去に使用するエッチング液を使い分けてもよい。
【0059】
このような(a)〜(g)の工程を経ることにより、基板上に下層導体回路(スルーホールを含む)を形成することができる。
また、第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法では、無電解めっき膜を形成する前に、上記組成を有する無電解めっき用前処理液を用いて、基板に形成された貫通孔の壁面等に前処理を施しているため、基板との密着性に優れた下層導体回路を有する多層プリント配線板を製造することができる。
なお、本明細書においては、基板の表面に形成された導体回路を下層導体回路といい、層間樹脂絶縁層上に形成された導体回路を上層導体回路ということにより、両者を区別することとする。また、両者を含む場合には、単に導体回路ということとする。
【0060】
次に、第一の製造方法の全製造工程について、工程順に説明する。
(1)第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法においては、まず、上記(a)〜(g)の方法を用いて、下層導体回路およびスルーホールが形成された基板を作成する。
【0061】
(2)次に、必要に応じて、スルーホールの内壁および下層導体回路の表面の粗化処理を行う。粗化処理方法としては、例えば、黒化(酸化)−還元処理、エッチング処理、Cu−Ni−P針状合金めっきによる処理などが挙げられる。
【0062】
上記黒化(酸化)−還元処理の具体的な方法としては、NaOH(10〜20g/l)、NaClO2 (40〜50g/l)、Na3 PO4 (6〜15g/l)を含む水溶液を黒化浴(酸化浴)とする黒化処理、および、NaOH(2.7〜10g/l)、NaBH4 (1.0〜6.0g/l)を含む水溶液を還元浴とする還元処理を行う方法等が挙げられる。
【0063】
上記エッチング処理に用いるエッチング液としては、有機酸と第二銅錯体との混合溶液が望ましい。上記有機酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、スルファミン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。上記エッチング液において、上記有機酸の含有量は、0.1〜30重量%が望ましい。酸化された銅の溶解性を維持し、かつ、触媒安定性を確保することができるからである。
【0064】
上記第二銅錯体としては、アゾール類の第二銅錯体が望ましい。このアゾール類の第二銅錯体は、金属銅等を酸化する酸化剤として作用する。アゾール類としては、例えば、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾール等が挙げられる。これらのなかでも、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾールが望ましい。上記エッチング液において、上記第二銅錯体の含有量は、1〜15重量%が望ましい。溶解性および安定性に優れるからである。
【0065】
上記めっき処理としては、例えば、硫酸銅(1〜40g/l)、硫酸ニッケル(0.1〜6.0g/l)、クエン酸(10〜20g/l)、次亜リン酸ナトリウム(10〜100g/l)、ホウ酸(10〜40g/l)および界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール465)(0.01〜10g/l)を含むpH=9の無電解めっき浴にて無電解めっきを施し、Cu−Ni−P合金からなる粗化層を形成する方法等が挙げられる。
この範囲で析出するめっき被膜の結晶構造は、針状構造となるため、アンカー効果に優れるからである。上記無電解めっき浴には、上記化合物に加えて錯化剤や添加剤を加えてもよい。
【0066】
(3)次に、樹脂充填材をスルーホールに充填する。また、必要に応じて、基板上の下層導体回路が形成されていない凹部に樹脂充填材を充填し、その後、研磨等を行って絶縁性基板表面を平坦化してもよい。
この後、上記樹脂充填材を、例えば、100℃/20分の条件で乾燥させた後、硬化させる。
【0067】
上記樹脂充填材の硬化は、温度50〜250℃の間で行うのが望ましい。その硬化条件の一例としては、100℃で1時間加熱した後、150℃で1時間加熱する方法が挙げられる。必要に応じて、順次低い温度から高い温度と温度を変化させて硬化させるステップ硬化を行ってもよい。
【0068】
また、研磨を行って導体層の表面を平坦化した場合には、必要に応じて、もう一度、下層導体回路の粗化処理を行ってもよい。粗化処理方法としては、例えば、黒化(酸化)−還元処理、エッチング処理、Cu−Ni−P合金めっきによる処理等が挙げられる。
【0069】
(4)次に、下層導体回路上に熱硬化性樹脂や樹脂複合体からなる未硬化の樹脂絶縁層を形成するか、または、熱可塑性樹脂からなる樹脂層を形成する。
上記未硬化の樹脂絶縁層は、未硬化の樹脂をロールコーター、カーテンコーター等により塗布して成形してもよく、また、未硬化(半硬化)の樹脂フィルムを熱圧着して形成してもよい。さらに、未硬化の樹脂フィルムの片面に銅箔等の金属層が形成された樹脂フィルムを貼付してもよい。
また、熱可塑性樹脂からなる樹脂層は、フィルム状に成形した樹脂成形体を熱圧着することにより形成することが望ましい。
【0070】
上記未硬化の樹脂を塗布する場合には、樹脂を塗布した後、加熱処理を施す。
上記加熱処理を施すことにより、未硬化の樹脂を熱硬化させることができる。
なお、上記熱硬化は、後述するバイアホール用開口および貫通孔を形成した後に行ってもよい。
【0071】
また、上記樹脂フィルムを張り付けることにより層間樹脂絶縁層を形成する場合、該層間樹脂絶縁層の形成は、真空ラミネーター等の装置を用い、減圧下または真空下で樹脂フィルムを圧着し、その後、樹脂フィルムを熱硬化することにより行う。
なお、上記熱硬化は、後述するバイアホール用開口および貫通孔を形成した後に行ってもよい。
【0072】
また、フィルム状に成形した熱可塑性樹脂を熱圧着して下層導体回路上に張り付ける場合も、真空ラミネーター等の装置を用い、減圧下または真空下でフィルム状に成形した熱可塑性樹脂を圧着することが望ましい。
【0073】
上記熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。
【0074】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
【0075】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
【0076】
また、上記ポリオレフィン系樹脂の市販品としては、例えば、住友スリーエム社製の商品名:1592等が挙げられる。また、融点が200℃以上の熱可塑型ポリオレフィン系樹脂の市販品としては、例えば、三井石油化学工業社製の商品名:TPX(融点240℃)、出光石油化学社製の商品名:SPS(融点270℃)等が挙げられる。
これらのなかでは、誘電率および誘電正接が低く、GHz帯域の高周波信号を用いた場合でも信号遅延や信号エラーが発生しにくく、さらには、剛性等の機械的特性にも優れている点からシクロオレフィン系樹脂が望ましい。
【0077】
上記シクロオレフィン系樹脂としては、2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンまたはこれらの誘導体からなる単量体の単独重合体または共重合体等が望ましい。上記誘導体としては、上記2−ノルボルネン等のシクロオレフィンに、架橋を形成するためのアミノ基や無水マレイン酸残基あるいはマレイン酸変性したもの等が結合したもの等が挙げられる。
上記共重合体を合成する場合の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
【0078】
上記シクロオレフィン系樹脂は、上記した樹脂の2種以上の混合物であってもよく、シクロオレフィン系樹脂以外の樹脂を含むものであってもよい。
また、上記シクロオレフィン系樹脂が共重合体である場合には、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0079】
また、上記シクロオレフィン系樹脂は、熱硬化性シクロオレフィン系樹脂であることが望ましい。加熱を行って架橋を形成させることにより、より剛性が高くなり、機械的特性が向上するからである。
上記シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、130〜200℃であることが望ましい。
【0080】
上記シクロオレフィン系樹脂は、既に樹脂シート(フィルム)として成形されたものを使用してもよく、単量体もしくは一定の分子量を有する低分子量の重合体が、キシレン、シクロヘキサン等の溶剤に分散した未硬化溶液の状態であってもよい。
また、樹脂シートの場合には、いわゆるRCC(RESIN COATED COPPER:樹脂付銅箔)を用いてもよい。
上記シクロオレフィン系樹脂は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸エステル等の難燃剤を含むものであってもよい。
【0081】
また、上記ポリオレフィン樹脂は、有機フィラーを含むものであってもよい。
上記有機フィラーを含むことにより、例えば、層間樹脂絶縁層にレーザ光を照射してバイアホール用開口を形成する際に、所望の形状のバイアホール用開口を良好に形成することができる。
【0082】
即ち、炭酸ガスレーザ等の赤外線レーザを照射してバイアホール用開口等を形成する場合には、上記有機フィラーは、熱に対する緩衝剤の役割を果たし、発生した熱や導体回路より反射した熱を一部吸収する。また、上記有機フィラーは、樹脂組成物が所定の形状を維持するための機械的な強化剤の役割を果たし、その結果、周囲の樹脂の形状を維持することができ、目的の形状のバイアホール用開口等を形成することができる。
【0083】
また、紫外線レーザを照射してバイアホール用開口等を形成する場合、有機フィラーが紫外線を吸収し、このため、紫外線レーザが照射された部分の層間樹脂絶縁層が分解、消失し、目的とする形状のバイアホール用開口等を形成することができる。
【0084】
従って、上記レーザの照射によりバイアホール用開口を形成し、この開口に金属層を形成することによりバイアホールを形成すると、該金属層は下層導体回路に密着して剥がれにくくなり、得られる多層プリント配線板の接続性、信頼性が向上する。
【0085】
上記有機フィラーとしては特に限定されるものではないが、例えば、メラミン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、PPO、PPE等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0086】
上記有機フィラーの含有量は、5〜60重量%が好ましい。上記有機フィラーの含有量が5重量%未満であると、有機フィラーの含有量が少なすぎるため、レーザ光を照射した際に上記した役割を果たすことができず、目的とする形状のバイアホール用開口等を形成することができない場合がある。一方、有機フィラーの含有量が60重量%を超えると、ポリオレフィン系樹脂の特性が失われ、例えば、誘電率が高くなりすぎること等があるため好ましくない。より好ましい有機フィラーの含有量は、14〜60重量%である。
【0087】
上記有機フィラーの形状は特に限定されず、例えば、球状、多面形状等が挙げられるが、これらのなかでは、クラックが発生しにくく、熱や熱衝撃によって層間樹脂絶縁層に応力が発生しても、その応力が緩和されやすい点から、球状が好ましい。
【0088】
また、上記有機フィラーの粒径は、0.05〜0.2μmが好ましい。上記有機フィラーの粒径が0.05μm未満であると、粒径が小さすぎるため、均一に有機フィラーを配合することが困難となる場合があり、一方、上記有機フィラーの粒径が0.2μmを超えると、有機フィラーの粒径が大きすぎるため、レーザ光を照射した際に完全に分解除去されない場合が発生する。
【0089】
上記有機フィラーを配合する場合、その粒径が異なる2種以上の有機フィラーを配合してもよいが、余り多種類の粒径の異なる有機フィラーを配合すると、有機フィラーが凝集しやすくなり、凝集物の径が0.2μmを超え、0.2μmを超えるものを使用した場合と同様の不都合が発生する場合があるので、径が異なる有機フィラーを配合する場合には、2種類の配合に留めることが望ましい。
【0090】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、下記化学式(1)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性ポリフェニレンエーテル樹脂や下記化学式(2)で表される繰り返し単位を有する熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。
【0091】
【化1】
Figure 0004508380
【0092】
(式中、nは、2以上の整数を表す。)
【0093】
【化2】
Figure 0004508380
【0094】
(式中、mは、2以上の整数を表す。また、R1 、R2 は、メチレン基、エチレン基または−CH2 −O−CH2 −を表し、両者は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0095】
また、上記化学式(2)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性ポリフェニレンエーテル樹脂は、ベンゼン環にメチル基が結合した構造を有しているが、本発明で用いることのできるポリフェニレンエーテル樹脂としては、上記メチル基が、エチル基等の他のアルキル基等で置換された誘導体や、メチル基の水素がフッ素で置換された誘導体等であってもよい。
【0096】
また、上記熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン等が挙げられる。
また、これらの複合体(樹脂複合体)としては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含むものであれば特に限定されず、その具体例としては、例えば、粗化面形成用樹脂組成物等が挙げられる。
【0097】
上記粗化面形成用樹脂組成物としては、例えば、酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に対して難溶性の未硬化の耐熱性樹脂マトリックス中に、酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に対して可溶性の物質が分散されたもの等が挙げられる。
なお、上記「難溶性」および「可溶性」という語は、同一の粗化液に同一時間浸漬した場合に、相対的に溶解速度の早いものを便宜上「可溶性」といい、相対的に溶解速度の遅いものを便宜上「難溶性」と呼ぶ。
【0098】
上記耐熱性樹脂マトリックスとしては、層間樹脂絶縁層に上記粗化液を用いて粗化面を形成する際に、粗化面の形状を保持できるものが好ましく、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、これらの複合体等が挙げられる。また、感光性樹脂を用いることにより、層間樹脂絶縁層に露光、現像処理を用いてバイアホール用開口を形成してもよい。
【0099】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、上記熱硬化性樹脂を感光化する場合は、メタクリル酸やアクリル酸等を用い、熱硬化基を(メタ)アクリル化反応させる。特にエポキシ樹脂の(メタ)アクリレートが望ましい。さらに、1分子中に、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂がより望ましい。上述の粗化面を形成することができるばかりでなく、耐熱性等にも優れているため、ヒートサイクル条件下においても、導体回路に応力の集中が発生せず、導体回路と層間樹脂絶縁層との間で剥離が発生しにくい。
【0100】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0101】
上記酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に対して可溶性の物質は、無機粒子、樹脂粒子、金属粒子、ゴム粒子、液相樹脂および液相ゴムから選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0102】
上記無機粒子としては、例えば、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物、ケイ素化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0103】
上記アルミニウム化合物としては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム等が挙げられ、上記カルシウム化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、上記カリウム化合物としては、例えば、炭酸カリウム等が挙げられ、上記マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシア、ドロマイト、塩基性炭酸マグネシウム、タルク等が挙げられ、上記ケイ素化合物としては、例えば、シリカ、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0104】
上記アルミナ粒子は、ふっ酸で溶解除去することができ、炭酸カルシウムは塩酸で溶解除去することができる。また、ナトリウム含有シリカやドロマイトはアルカリ水溶液で溶解除去することができる。
【0105】
上記樹脂粒子としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等からなるものが挙げられ、酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に浸漬した場合に、上記耐熱性樹脂マトリックスよりも溶解速度の早いものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、アミノ樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂等)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂等挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0106】
なお、上記エポキシ樹脂は、酸や酸化剤に溶解するものや、これらに難溶性のものを、オリゴマーの種類や硬化剤を選択することにより任意に製造することができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂をアミン系硬化剤で硬化させた樹脂はクロム酸に非常によく溶けるが、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をイミダゾール硬化剤で硬化させた樹脂は、クロム酸には溶解しにくい。
【0107】
上記樹脂粒子は予め硬化処理されていることが必要である。硬化させておかないと上記樹脂粒子が樹脂マトリックスを溶解させる溶剤に溶解してしまうため、均一に混合されてしまい、酸や酸化剤で樹脂粒子のみを選択的に溶解除去することができないからである。
【0108】
上記金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、スズ、亜鉛、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、鉛等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
また、上記金属粒子は、絶縁性を確保するために、表層が樹脂等により被覆されていてもよい。
【0109】
上記ゴム粒子としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、多硫系剛性ゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ABS樹脂等が挙げられる。
【0110】
また、上記ゴム粒子として、例えば、ポリブタジエンゴム、エポキシ変性、ウレタン変性、(メタ)アクリロニトリル変性等の各種変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基を含有した(メタ)アクリロニトリル・ブタジエンゴム等を使用することもできる。これらのゴム粒子を使用することにより、該ゴム粒子が酸あるいは酸化剤に溶解しやすくなる。つまり、酸を用いてゴム粒子を溶解する際には、強酸以外の酸でも溶解することができ、酸化剤を用いてゴム粒子を溶解する際には、比較的酸化力の弱い過マンガン酸でも溶解することができる。また、クロム酸を用いた場合でも、低濃度で溶解することができる。そのため、酸や酸化剤が層間樹脂絶縁層表面に残留することがなく、後述するように、粗化面形成後、塩化パラジウム等の触媒を付与する際に、触媒が付与されなかったり、触媒が酸化されたりすることがない。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0111】
上記可溶性の物質を、2種以上混合して用いる場合、混合する2種の可溶性の物質の組み合わせとしては、樹脂粒子と無機粒子との組み合わせが望ましい。両者とも導電性が低くいため、層間樹脂絶縁層の絶縁性を確保することができるとともに、難溶性樹脂との間で熱膨張の調整が図りやすく、粗化面形成用樹脂組成物からなる層間樹脂絶縁層にクラックが発生せず、層間樹脂絶縁層と上層導体回路との間で剥離が発生しないからである。
【0112】
上記液相樹脂としては、上記熱硬化性樹脂の未硬化溶液を使用することができ、このような液相樹脂の具体例としては、例えば、未硬化のエポキシオリゴマーとアミン系硬化剤の混合液等が挙げられる。
上記液相ゴムとしては、例えば、上記したポリブタジエンゴム、エポキシ変性、ウレタン変性、(メタ)アクリロニトリル変性等の各種変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基を含有した(メタ)アクリロニトリル・ブタジエンゴム等の未硬化溶液等を使用することができる。
【0113】
上記液相樹脂や液相ゴムを用いて上記感光性樹脂組成物を調製する場合には、耐熱性樹脂マトリックスと可溶性の物質とが均一に相溶しない(つまり相分離するように)ように、これらの物質を選択する必要がある。
上記基準により選択された耐熱性樹脂マトリックスと可溶性の物質とを混合することにより、上記耐熱性樹脂マトリックスの「海」の中に液相樹脂または液相ゴムの「島」が分散している状態、または、液相樹脂または液相ゴムの「海」の中に、耐熱性樹脂マトリックスの「島」が分散している状態の感光性樹脂組成物を調製することができる。
【0114】
そして、このような状態の感光性樹脂組成物を硬化させた後、「海」または「島」の液相樹脂または液相ゴムを除去することにより粗化面を形成することができる。
【0115】
上記粗化液として用いる酸としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸や、蟻酸、酢酸等の有機酸等が挙げられるが、これらのなかでは有機酸を用いることが望ましい。粗化処理した場合に、バイアホールから露出する金属導体層を腐食させにくいからである。
上記酸化剤としては、例えば、クロム酸、クロム硫酸、アルカリ性過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム等)の水溶液等を用いることが望ましい。
また、上記アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液が望ましい。
【0116】
上記可溶性の物質の平均粒径は、10μm以下が望ましい。
また、平均粒径が2μm以下の平均粒径の相対的に大きな粗粒子と平均粒径が相対的に小さな微粒子とを組み合わせて使用してもよい。即ち、平均粒径が0.1〜0.5μmの可溶性の物質と平均粒径が1〜2μmの可溶性の物質とを組み合わせる等である。
【0117】
このように、平均粒子と相対的に大きな粗粒子と平均粒径が相対的に小さな微粒子とを組み合わせることにより、無電解めっき膜の溶解残渣をなくし、めっきレジスト下のパラジウム触媒量を少なくし、さらに、浅くて複雑な粗化面を形成することができる。
さらに、複雑な粗化面を形成することにより、粗化面の凹凸が小さくても実用的なピール強度を維持することができる。
上記粗粒子は平均粒径が0.8μmを超え2.0μm未満であり、微粒子は平均粒径が0.1〜0.8μmであることが望ましい。
【0118】
上記粗粒子と微粒子とを組み合わせることにより、浅くて複雑な粗化面を形成することができるのは、使用する粒子径が粗粒子で平均粒径2μm未満であると、これらの粒子が溶解除去されても形成されるアンカーは浅くなり、また、除去される粒子は、相対的に粒子径の大きな粗粒子と相対的に粒子径の小さな微粒子の混合粒子であるから、形成される粗化面が複雑になるのである。このような複雑な粗化面を形成することにより、浅い粗化面でも実用的なピール強度を維持することができる。
【0119】
また、この場合、使用する粒子径が、粗粒子で平均粒径2μm未満であると、粗化が進行しすぎて空隙を発生させることはなく、形成した層間樹脂絶縁層は層間絶縁性に優れている。
なお、上記粗化面形成用樹脂組成物において、可溶性の物質の粒径とは、可溶性の物質の一番長い部分の長さである。
【0120】
また、粗粒子は平均粒径が0.8μmを超え2.0μm未満であり、微粒子は平均粒径が0.1〜0.8μmであると、粗化面の深さは概ねRmax=3μm程度となり、セミアディテイブ法では、無電解めっき膜をエッチング除去しやすいだけではなく、無電解めっき膜下のパラジウム触媒をも簡単に除去することができ、また、実用的なピール強度1.0〜1.3kg/cmを維持することができる。
【0121】
上記可溶性の物質の形状は特に限定されず、球状、破砕状等が挙げられる。また、上記可溶性の物質の形状は、一様な形状であることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができるからである。
【0122】
上記粗化面形成用樹脂組成物は基板上等に塗布することができるように有機溶剤を含有するものであってもよいし、基板上等に圧着することができるようにフィルム状に成形されたもの(以下、粗化面形成用樹脂フィルムともいう)でもよい。
上記粗化面形成用樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、その含有量は、10重量%以下であることが望ましい。
【0123】
上記粗化面形成用樹脂フィルムにおいて、上記可溶性の物質は、上記耐熱性樹脂マトリックス中にほぼ均一に分散されていることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができ、樹脂フィルムにバイアホールやスルーホールを形成しても、その上に形成する上層導体回路との密着性を確保することができるからである。また、上記粗化面形成用樹脂フィルムは、粗化面を形成する表層部だけに可溶性の物質を含有するよう形成されていてもよい。それによって、粗化面形成用樹脂フィルムの表層部以外は酸または酸化剤にさらされることがないため、層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の絶縁性が確実に保たれる。
【0124】
上記粗化面形成用樹脂フィルムにおいて、難溶性樹脂中に分散している可溶性の物質の配合量は、粗化面形成用樹脂フィルムに対して、3〜40重量%が望ましい。可溶性の物質の配合量が3重量%未満では、所望の凹凸を有する粗化面を形成することができない場合があり、40重量%を超えると、酸または酸化剤を用いて可溶性の物質を溶解した際に、樹脂フィルムの深部まで溶解してしまい、樹脂フィルムからなる層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の絶縁性を維持できず、短絡の原因となる場合がある。
【0125】
上記粗化面形成用樹脂フィルムは、上記可溶性の物質、上記耐熱性樹脂マトリックス以外に、硬化剤、その他の成分等を含有していることが望ましい。
上記硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、これらの硬化剤のエポキシアダクトやこれらの硬化剤をマイクロカプセル化したもの、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物等が挙げられる。
【0126】
上記硬化剤の含有量は、粗化面形成用樹脂フィルムに対して0.05〜10重量%であることが望ましい。0.05重量%未満では、粗化面形成用樹脂フィルムの硬化が不充分であるため、酸や酸化剤が粗化面形成用樹脂フィルムに侵入する度合いが大きくなり、粗化面形成用樹脂フィルムの絶縁性が損なわれることがある。一方、10重量%を超えると、過剰な硬化剤成分が樹脂の組成を変性させることがあり、信頼性の低下を招いたりしてしまうことがある。
【0127】
上記その他の成分としては、例えば、粗化面の形成に影響しない無機化合物あるいは樹脂等のフィラーが挙げられる。上記無機化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、ドロマイト等が挙げられ、上記樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、メラニン樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。これらのフィラーを含有させることによって、熱膨脹係数の整合や耐熱性、耐薬品性の向上等を図りプリント配線板の性能を向上させることができる。
【0128】
また、上記粗化面形成用樹脂フィルムは、溶剤を含有していてもよい。上記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートやトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0129】
(5)次に、その材料として熱硬化性樹脂や樹脂複合体を用いた層間樹脂絶縁層を形成する場合には、未硬化の樹脂絶縁層に硬化処理を施すとともに、バイアホール用開口を形成し、層間樹脂絶縁層とする。また、この工程では、必要に応じて、貫通孔を形成してもよい。
上記バイアホール用開口は、レーザ処理により形成することが望ましい。上記レーザ処理は、上記硬化処理前に行ってもよいし、硬化処理後に行ってもよい。
また、感光性樹脂からなる層間樹脂絶縁層を形成した場合には、露光、現像処理を行うことにより、バイアホール用開口を設けてもよい。なお、この場合、露光、現像処理は、上記硬化処理前に行う。
【0130】
また、その材料として熱可塑性樹脂を用いた層間樹脂絶縁層を形成する場合には、熱可塑性樹脂からなる樹脂層にレーザ処理によりバイアホール用開口を形成し、層間樹脂絶縁層とすることができる。
【0131】
このとき、使用するレーザとしては、例えば、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、UVレーザ、YAGレーザ等が挙げられる。
これらのレーザは、形成するバイアホール用開口や貫通孔の形状等を考慮して使い分けてもよい。
【0132】
上記バイアホール用開口を形成する場合、マスクを介して、ホログラム方式のエキシマレーザによるレーザ光照射することにより、一度に多数のバイアホール用開口を形成することができる。
また、短パルスの炭酸ガスレーザを用いて、バイアホール用開口を形成すると、開口内の樹脂残りが少なく、開口周縁の樹脂に対するダメージが小さい。
【0133】
また、光学系レンズとマスクとを介してレーザ光を照射することにより、一度に多数のバイアホール用開口を形成することができる。
光学系レンズとマスクとを介することにより、同一強度で、かつ、照射角度が同一のレーザ光を複数の部分に同時に照射することができるからである。
【0134】
上記マスクに形成された貫通孔は、レーザ光のスポット形状を真円にするために、真円であることが望ましく、上記貫通孔の径は、0.1〜2mm程度が望ましい。
また、上記炭酸ガスレーザを用いる場合、そのパルス間隔は、10-4〜10-8秒であることが望ましい。また、開口を形成するためのレーザを照射する時間は、10〜500μ秒であることが望ましい。
【0135】
レーザ光にてバイアホール用開口を形成した場合、特に炭酸ガスレーザを用いた場合には、デスミア処理を行うことが望ましい。上記デスミア処理は、クロム酸、過マンガン酸塩等の水溶液からなる酸化剤を使用して行うことができる。また、酸素プラズマ、CF4 と酸素の混合プラズマやコロナ放電等で処理してもよい。また、低圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することにより、表面改質することもできる。
【0136】
上記層間樹脂絶縁層の厚さは特に限定されないが、5〜50μmが望ましい。
上記厚さが5μm未満であると、上下に隣合う導体回路間の絶縁性が維持できない場合があり、一方、50μmを超えると、バイアホール用開口等を形成した際に、その底部に樹脂残りが発生したり、そのバイアホール用開口等の形状が底部に向かって先細り形状になることがある。
また、上記バイアホール用開口の開口径は特に限定されないが、通常、40〜200μmが望ましい。
【0137】
また、層間樹脂絶縁層を形成した基板に、貫通孔を形成する場合には、直径50〜300μmのドリル、レーザ光等を用いて貫通孔を形成する。
上記貫通孔を形成した場合、後述する工程において、貫通孔の内壁面に導体層を形成することにより、スルーホールとすることができ、該スルーホールを形成することにより、上記基板および上記層間樹脂絶縁層を介した導体回路間を電気的に接続することができる。
【0138】
(6)次に、バイアホール用開口の内壁を含む層間樹脂絶縁層の表面と上記工程で貫通孔を形成した場合には貫通孔の内壁とに、必要に応じて、酸または酸化剤を用いて粗化面を形成する。
上記酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、蟻酸等が挙げられ、上記酸化剤としては、クロム酸、クロム硫酸、過マンガン酸ナトリウム等の過マンガン酸塩等が挙げられる。
また、上記粗化面の形成は、プラズマ処理等を用いて行ってもよい。
【0139】
具体的には、層間樹脂絶縁層を粗化面形成用樹脂組成物等を用いて形成した場合には、酸や酸化剤を用いて粗化面を形成することが望ましく、ポリオレフィン系樹脂等を用いて形成した場合には、プラズマ処理等を用いて粗化面を形成することが望ましい。
【0140】
この粗化面は、層間樹脂絶縁層とその上に形成する無電解めっき膜との密着性を高めるために形成するものであり、上記層間樹脂絶縁層と上記無電解めっき膜との間に充分な密着性がある場合には形成しなくてもよい。
【0141】
その後、酸を用いて粗化面を形成した場合はアルカリ等の水溶液を用い、酸化剤を用いて粗化面を形成した場合は中和液を用いて、バイアホール用開口内や貫通孔内を中和する。この操作により酸や酸化剤を除去し、次工程に影響を与えないようにする。
【0142】
(7)次に、形成された粗化面に、必要により、触媒を付与する。該触媒としては、上述したパラジウム等が挙げられる。
このとき、触媒を確実に付与するために、酸素、窒素等のプラズマ処理やコロナ処理等のドライ処理を施すことにより、酸または酸化剤の残渣を除去するとともに層間樹脂絶縁層の表面を改質することにより、触媒を確実に付与し、無電解めっき時の金属の析出、および、無電解めっき層の層間樹脂絶縁層への密着性を向上させることができ、特に、バイアホール用開口の底面において、大きな効果が得られる。
【0143】
(8)次に、バイアホール用開口の内壁面を含む層間樹脂絶縁層の表面に、薄膜導体層を形成する。
上記薄膜導体層は、無電解めっき、スパッタリング、蒸着等の方法を用いて形成することができる。
また、上記層間樹脂絶縁層に粗化面を形成しなかった場合は、上記薄膜導体層をスパッタリングにより形成することが望ましい。
【0144】
上記薄膜導体層の形成方法は、層間樹脂絶縁層の材質に応じて選択することが望ましい。
具体的には、粗化面形成用樹脂組成物からなる層間樹脂絶縁層に薄膜導体層を形成する場合は、無電解めっきにより形成することが望ましく、その厚さは0.6〜1.2μmが望ましい。
なお、この場合には、上述した無電解めっき用前処理液を用いて、層間樹脂絶縁層に前処理を施しておくことが望ましい。
また、ポリオレフィン系樹脂等の低誘電樹脂フィルムからなる層間樹脂絶縁層に薄膜導体層を形成する場合は、スパッタリングや蒸着により形成することが望ましく、その厚さは0.1〜1.0μmが望ましい。また、このとき形成する薄膜導体層は、ニッケルと銅との二層からなるものが望ましい。また、スパッタリング等により形成した薄膜導体層の上に無電解めっきからなる層を形成してもよい。
【0145】
また、上記(5)の工程で貫通孔を形成した場合は、この工程で貫通孔の内壁面にも金属からなる薄膜導体層を形成することにより、スルーホールとしてもよい。
上記(8)の工程で、スルーホールを形成した場合には、以下のような処理工程を行うことが望ましい。即ち、無電解めっき層表面とスルーホール内壁とを黒化(酸化)−還元処理、エッチング処理、Cu−Ni−P針状合金めっきによる処理等を用いて粗化形成処理を行う。この後、さらに、樹脂充填材等を用いてスルーホール内を充填し、ついで、樹脂充填材の表層部と無電解めっき膜表面とをバフ研磨等の研磨処理方法を用いて、平坦化する。
さらに、無電解めっきを行い、既に形成した無電解めっき膜と樹脂充填材の表層部とに無電解めっき層を形成することにより、スルーホールの上に蓋めっき層を形成する。なお、この場合にも、上述した無電解めっき用前処理液を用いて、樹脂充填材の表層部等の被めっき物に前処理を施しておくことが望ましい。
【0146】
(9)次に、上記薄膜導体層の形成された層間樹脂絶縁層上の一部にドライフィルムを用いてめっきレジストを形成し、その後、上記薄膜導体層をめっきリードとして電気めっきを行い、上記めっきレジスト非形成部に電解めっき層を形成する。
このとき、バイアホール用開口を電解めっきで充填してフィールドビア構造としてもよく、バイアホール用開口に導電性ペースト等を充填した後、その上に蓋めっき層を形成してフィールドビア構造としてもよい。フィールドビア構造を形成することにより、バイアホールの直上にバイアホールを形成することができる。
【0147】
(10)上記電解めっき層を形成した後、めっきレジストを剥離し、めっきレジストの下に存在していた金属からなる薄膜導体層をエッチングにより除去し、独立パターンの上層導体回路とする。
上記エッチング液としては、例えば、硫酸/過酸化水素水、塩化第二鉄、塩化第二銅、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩の水溶液、塩酸、硝酸、熱希硫酸等を用いることができる。また、第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液を用いて、無電解めっき膜を除去するとともに、上層導体回路の表面に粗化面を形成してもよい。
さらに、必要により、酸または酸化剤を用いて層間樹脂絶縁層上の触媒を除去してもよい。触媒を除去することにより、触媒に用いたパラジウム等の金属がなくなるため、電気特性の低下を防止することができる。
【0148】
(11)次に、必要により、(2)に記載した方法と同様の方法で上層導体回路の粗化処理を行った後、(4)〜(10)の工程を繰り返すことにより、下層導体回路が形成された基板上に、層間樹脂絶縁層と上層導体回路とが順次積層された基板を製造することができる。
【0149】
(12)次に、最上層の上層導体回路を含む基板面にソルダーレジスト層を形成し、さらに、該ソルダーレジスト層を開口して半田パッドを形成した後、上記半田パッドに半田ペーストを充填し、リフローすることにより半田バンプを形成する。その後、外部基板接続面に、ピンを配設したり、半田ボールを形成したりすることにより、PGA(Pin Grid Array)やBGA(Ball Grid Array) とする。
【0150】
上記ソルダーレジスト層は、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等からなるソルダーレジスト組成物を用いて形成することができ、これらの樹脂の具体例としては、例えば、層間樹脂絶縁層に用いた樹脂と同様の樹脂等が挙げられる。
【0151】
また、上記以外のソルダーレジスト組成物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート、イミダゾール硬化剤、2官能性(メタ)アクリル酸エステルモノマー、分子量500〜5000程度の(メタ)アクリル酸エステルの重合体、ビスフェノール型エポキシ樹脂等からなる熱硬化性樹脂、多価アクリル系モノマー等の感光性モノマー、グリコールエーテル系溶剤などを含むペースト状の流動体が挙げられ、その粘度は25℃で1〜10Pa・sに調整されていることが望ましい。
上記ノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェノールノボラックやクレゾールノボラックのグリシジルエーテルをアクリル酸やメタクリル酸等と反応させたエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0152】
上記2官能性(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては特に限定されず、例えば、各種ジオール類のアクリル酸やメタクリル酸のエステル等が挙げられ、その市販品としては、日本化薬社製のR−604、PM2、PM21等が挙げられる。
【0153】
また、上記ソルダーレジスト組成物は、エラストマーや無機フィラーが配合されていてもよい。
エラストマーが配合されていることにより、形成されるソルダーレジスト層は、エラストマーの有する柔軟性および反発弾性により、ソルダーレジスト層に応力が作用した場合でも、該応力を吸収したり、緩和したりすることができ、その結果、多層プリント配線板の製造工程や製造した多層プリント配線板にICチップ等の電子部品を搭載した後のソルダーレジスト層にクラックや剥離が発生することを抑制でき、さらに、クラックが発生した場合でも該クラックが大きく成長することができない。
上記ソルダーレジスト層を開口する方法としては、例えば、バイアホール用開口を形成する方法と同様に、レーザ光を照射する方法等が挙げられる。
【0154】
また、ソルダーレジスト組成物として、感光性のソルダーレジスト組成物を使用した場合には、ソルダーレジスト層を形成した後、該ソルダーレジスト層上にフォトレジストを載置し、露光現像処理を施すことにより、ソルダーレジスト層を開口することができる。
【0155】
上記ソルダーレジスト層を開口することにより露出した上層導体回路部分は、通常、ニッケル、パラジウム、金、銀、白金等の耐食性金属により被覆することが望ましい。具体的には、ニッケル−金、ニッケル−銀、ニッケル−パラジウム、ニッケル−パラジウム−金等の金属により被覆層を形成することが望ましい。
上記被覆層は、例えば、めっき、蒸着、電着等により形成することができるが、これらのなかでは、被覆層の均一性に優れるという点からめっきが望ましい。
なお、製品認識文字などを形成するための文字印刷工程やソルダーレジスト層の改質のために、酸素や四塩化炭素などのプラズマ処理を適時行ってもよい。
【0156】
次に、第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法について説明する。
第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法は、下層導体回路の形成された基板上に、層間樹脂絶縁層と上層導体回路とが順次積層され、これらの導体回路がバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板の製造方法であって、少なくとも下記(a)〜(g)の下層導体回路を形成する工程を含むことを特徴とする。
(a)上記基板上に金属層を形成する工程、
(b)上記金属層および上記基板に、順次、開口形成処理を施し、該開口形成処理により、上記金属層が形成された基板に貫通孔を形成する工程、
(c)上記貫通孔の形成された基板に、0.01〜0.25mol/lのアルカリ性化合物、および、0.1〜0.3mol/lの還元剤を含む水溶液からなる無電解めっき用前処理液を用いた前処理を施す工程、
(d)上記前処理が施された基板の表面に無電解めっき膜を形成する工程、
(e)上記無電解めっき膜上に電解めっき膜を形成する工程、
(f)上記電解めっき膜上の一部に、エッチングレジストを形成する工程、および、
(g)上記エッチングレジストを非形成部下の電解めっき膜と無電解めっき膜と金属層とをエッチング処理により除去する工程。
【0157】
第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、スルーホールを含む基板上の下層導体回路を形成するための無電解めっき処理を施す前に、第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法で用いる無電解めっき用前処理液と同様の前処理液を用いて、貫通孔の形成された基板に前処理を施すため、無電解めっき処理により基板との密着性に優れた、均一な無電解めっき膜を形成することができ、その結果、接続信頼性、電気特性に優れる多層プリント配線板を製造することができる。
【0158】
第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法(以下、単に第二の製造方法ともいう)は、第一の製造方法と比べて、(d)〜(g)の工程、即ち、前処理が施された基板の表面に無電解めっき膜を形成した後、電解めっき処理等を経て基板上に下層導体回路を形成する工程のみが異なる。従って、第二の製造方法については、この(d)〜(g)の工程についてのみ詳細に説明することとし、これ以外の製造工程については、簡単に説明することとする。
【0159】
まず、第二の製造方法における(a)〜(g)の工程について説明する。
第二の製造方法においては、第一の製造方法における(a)〜(d)の工程と同様して、前処理が施された基板の表面、即ち、貫通孔の壁面および基板上の金属層の表面に、無電解めっき膜を形成する(工程(a)〜(d))。
【0160】
次に、上記(a)〜(d)工程で形成した無電解めっき膜上に電解めっき膜を形成する(工程(e))。
上記電解めっき膜の形成は、既に形成した無電解めっき膜をめっきリードとして行うことができる。
具体的には、例えば、硫酸、硫酸銅および添加剤を含む電解めっき液を用いることにより電解銅めっき膜を形成することができる。
【0161】
次に、電解めっき膜の一部、即ち、下層導体回路形成部分に相当する部分にエッチングレジストを形成する(工程(f))。
上記エッチングレジストは、例えば、感光性ドライフィルムを張り付けたり、液状レジストを塗布した後、露光現像処理を施すことにより形成することができる。
【0162】
次に、エッチング処理を施すことにより、上記エッチングレジスト非形成部下の電解めっき膜と無電解めっき膜と金属層とを除去する(工程(g))。その後、上記エッチングレジストを強アルカリ水溶液等を用いて除去する。
ここで、無電解めっき膜および金属層の除去に用いるエッチング液としては、例えば、硫酸−過酸化水素水溶液、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩水溶液、塩化第二鉄、塩化第二銅等の水溶液、塩酸、硝酸、熱希硫酸、第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液等が挙げられる。
また、イオンビームエッチング等による物理エッチングを用いてもよい。
なお、電解めっき膜、無電解めっき膜および金属層の材質等を考慮して、それぞれの除去に使用するエッチング液を使い分けてもよい。
【0163】
このような(a)〜(g)の工程を経ることにより、基板上に下層導体回路(スルーホールを含む)を形成することができる。
また、第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法では、無電解めっき膜を形成する前に、上記組成を有する無電解めっき用前処理液を用いて、基板に形成されたスルーホール用貫通孔の壁面等に前処理を施しているため、基板との密着性に優れた下層導体回路を形成することができる。
【0164】
また、第二の製造方法では、まず、上述した(a)〜(g)の工程を経ることにより下層導体回路およびスルーホールが形成された基板を作成し、その後、第一の製造方法の(2)〜(12)の工程と同様の方法を用いることにより、多層プリント配線板を製造することができる。
【0165】
次に、第三の本発明の多層プリント配線板の製造方法について説明する。
第三の本発明の多層プリント配線板の製造方法は、下層導体回路が形成された基板上に、層間樹脂絶縁層と上層導体回路とが順次積層され、これらの導体回路がバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板の製造方法であって、少なくとも下記(A)〜(G)の上層導体回路を形成する工程を含むことを特徴とする。
(A)下層導体回路上または上層導体回路上に、樹脂層と金属層とからなる樹脂・金属層を形成する工程、
(B)上記樹脂・金属層を構成する樹脂層および金属層に、順次、開口形成処理を施し、バイアホール用開口を形成する工程、
(C)上記樹脂・金属層に、0.01〜0.25mol/lのアルカリ性化合物、および、0.1〜0.3mol/lの還元剤を含む水溶液からなる無電解めっき用前処理液を用いた前処理を施す工程、
(D)上記前処理が施された樹脂・金属層の表面に、無電解めっき膜を形成する工程、
(E)上記無電解めっき膜の一部にめっきレジストを形成する工程、
(F)上記めっきレジスト非形成部に電解めっき膜を形成する工程、および、
(G)上記めっきレジストを剥離した後、上記めっきレジスト下の無電解めっき膜と金属層とを除去する工程。
【0166】
第三の本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、層間樹脂絶縁層上に、バイアホールを含む上層導体回路を形成するための無電解めっき処理を施す前に、第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法で用いる無電解めっき用前処理液と同様の前処理液を用いて、バイアホール用開口の壁面等に前処理を施すため、無電解めっき処理により層間樹脂絶縁層との密着性に優れた、均一な無電解めっき膜を形成することができ、その結果、接続信頼性、電気特性に優れる多層プリント配線板を製造することができる。
【0167】
第三の本発明の多層プリント配線板の製造方法(以下、単に第三の製造方法ともいう)は、第一の製造方法と比べて、(A)〜(G)の工程が異なる。即ち、第一の製造方法は、基板上に下層導体回路を形成する工程に特徴を有するものであるのに対し、第三の製造方法は、層間樹脂絶縁層上に上層導体回路を形成する工程に特徴を有するものである。しかしながら、これら両者の製造方法においては、好適な形状、特性を有する導体回路を形成するにあたっての技術思想に大きな相違点はなく、特徴を有する製造工程が異なるのみである。
従って、以下の第三の製造方法の説明においては、製造工程については詳細に説明し、本製造方法における作用、効果等については簡単に説明することとする。
【0168】
第三の製造方法は、上記したように、(A)〜(G)の工程、即ち、層間樹脂絶縁層上に上層導体回路を形成する工程に特徴を有するものであるため、まず、この(A)〜(G)の工程について説明し、多層プリント配線板を製造する全製造工程については、後に説明することとする。
【0169】
第三の製造方法においては、(A)〜(G)の工程を行うことにより、層間樹脂絶縁層上にスルーホールを含む上層導体回路を形成する。なお、層間樹脂絶縁層上に形成された上層導体回路上に、(A)〜(G)の工程を行う場合には、複数の層間樹脂絶縁層と上層導体回路とが形成されることとなる。
第三の製造方法では、基板上に形成された下層導体回路上や層間樹脂絶縁層上に形成された上層導体回路上に樹脂層と金属層とからなる樹脂・金属層を形成する(工程(A))。
上記樹脂・金属層の形成は、導体回路(下層導体回路または上層導体回路)上に樹脂を積層し、その後、金属を積層することにより行ってもよいし、樹脂と金属とを張り合わせた、いわゆる樹脂付き金属箔を形成した後、これを積層してもよい。
【0170】
導体回路上に樹脂を積層し、その後、金属を積層する場合には、まず、導体回路上に熱硬化性樹脂や樹脂複合体からなる未硬化の樹脂層を形成するか、または、熱可塑性樹脂からなる樹脂層を形成する。具体的には、第一の製造方法において説明した工程(4)と同様の方法を用いることができる。
また、熱硬化性樹脂や樹脂複合体、熱可塑性樹脂としては、第一の製造方法で用いたものと同様のものを用いることができる。
なお、上記熱硬化性樹脂や樹脂複合体からなる未硬化の樹脂層は、積層後、すぐに硬化させてもよいし、後述する工程で、金属層を形成した後に硬化させてもよい。
【0171】
次に、上記樹脂層上に金属層を形成する。
上記金属層の形成は、スパッタリングや真空蒸着法等の物理的蒸着法や、化学的蒸着法を用いて行うことができる。
また、上記金属層の材質としては、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、貴金属(金、銀、パラジウム、白金)等が挙げられ、その厚さは、0.1〜2.0μmが望ましい。
なお、上記金属層は、一層からなるものであってもよいし、二層以上からなるものであってもよい。
また、無電解めっき処理により金属層を形成する場合には、無電解めっき処理を施す前に、後述する工程Cで用いる無電解めっき用前処理液を用いて、上記樹脂層に前処理を施してもよい。
【0172】
また、導体回路上に樹脂付き金属箔を積層する場合には、例えば、該樹脂付き金属箔を真空プレスすることにより、導体回路上に積層することができる。
このとき、真空プレスの条件としては特に限定されず、樹脂付き金属箔の材質、形状等を考慮して適宜選択すればよく、例えば、温度150〜180℃、圧力2〜4MPa、時間30〜90分、真空度10kPa以下で行うことができる。
なお、上記樹脂付き金属箔の形成は、従来公知の方法により行うことができ、また、市販の樹脂付き金属箔を用いることもできる。
【0173】
次に、上記樹脂・金属層を構成する樹脂層および金属層に、順次、開口形成処理を施し、該開口形成処理により、バイアホール用開口を形成する(工程(B))。
即ち、まず、金属層に形成された金属層に開口を形成し、その後、上記金属層に形成された開口下の樹脂層に開口を形成し、バイアホール用開口とする。
【0174】
上記金属層に開口を形成する方法としては、例えば、以下の方法等を用いることができる。
即ち、金属層上の一部にエッチングレジストを形成した後、エッチングを行うことにより開口を形成することができる。
なお、エッチングレジストの形成やエッチング処理は、第一の製造方法における(b)の工程で用いた方法と同様の方法を用いて行うことができる。
【0175】
また、この工程においては、金属層に開口を形成する前に、該金属層の厚さを0.5〜5μm程度に調整しておくことが望ましい。金属層の厚さが0.5μm未満では、後工程で基板に貫通孔を形成する際に、該金属層がコンフォーマルマスクとしての役割を果たすことができなくなることがあり、一方、金属層の厚さが5μmを超えると、レーザ処理によりバイアホール用開口を形成する際に、該バイアホール用開口の形状が所望の形状にならないことがある。
なお、上記金属層の厚さの調整は、例えば、エッチング処理等により行うことができる。
【0176】
次に、上記エッチングレジストを除去し、開口を形成した金属層をコンフォーマルマスクとして、樹脂層に開口を形成し、バイアホール用開口とする。
上記開口の形成は、例えば、レーザ処理等により行うことができる。
このとき、使用するレーザとしては、例えば、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、UVレーザ、YAGレーザ等が挙げられる。
これらのレーザは、形成する開口の形状等を考慮して使い分けてもよい。
また、レーザ処理を行う際のビーム径は、形成する開口の径の1.3倍以上であることが望ましい。所望の形状の開口を形成することができるからである。
【0177】
上記レーザ処理後には、バイアホール用開口内の樹脂残渣を除去してもよい。
上記樹脂残渣の除去は、例えば、バイアホール用開口が形成された基板をクロム酸、過マンガン酸、カリウムの水溶液等に浸漬したり、O2 プラズマ、CF4 プラズマ、O2 とCF4 との混合ガスのプラズマ等によるプラズマ処理により行うことができる。
【0178】
次に、上記樹脂・金属層に、0.01〜0.25mol/lのアルカリ性化合物、および、0.1〜0.3mol/lの還元剤を含む水溶液からなる無電解めっき用前処理液を用いた前処理を施す(工程(C))。
また、この前処理を施す前に、上記バイアホール用開口の形成された樹脂・金属層の表面には、予めパラジウム金属等の触媒を付与しておくことが望ましい。
なお、触媒の付与は、第一の製造方法と同様の方法等により行うことができる。
【0179】
この工程では、無電解めっき用前処理液として、第一の製造方法の(c)の工程で用いた無電解めっき用前処理液と同様のものを用いる。
このような無電解めっき用前処理液を用いて、前処理を施すことにより、触媒を充分に活性化することができ、その結果、後工程で無電解めっき処理を施す際に、均一で、密着性に優れる無電解めっき膜を形成することができる。この理由は、第一の製造方法の説明で述べた通りである。
【0180】
上記前処理は、樹脂・金属層にバイアホール用開口が形成された基板を、上記無電解めっき用前処理液に浸漬することにより行う。
このときの前処理条件は、第一の製造方法で前処理を行う際の条件と同様の条件、即ち、上記無電解めっき用前処理液の温度が20〜50℃、前処理時間が0.5〜5分間であることが望ましい。
【0181】
次に、前処理が施された樹脂・金属層の表面、即ち、バイアホール用開口の壁面および基板上の金属層の表面に、無電解めっき膜を形成する(工程(D))。
上記無電解めっき膜の形成は、バイアホール用開口が形成された基板を無電解めっき液中に浸漬することにより行う。
【0182】
上記無電解めっき液としては特に限定されないが、第一の製造方法と同様のアルカリ性化合物、還元剤、銅イオン、および、酒石酸もしくはその塩を含む水溶液からなるものが好ましい。この理由は、第一の製造方法の説明で述べた通りである。
また、無電解めっきを行う条件も、第一の製造方法と同様の条件、即ち、上記無電解めっき液の温度が25〜35℃、浸漬時間が10〜20分間であることが望ましい。
【0183】
次に、上記工程(D)で形成した無電解めっき膜の一部、即ち、上層導体回路非形成部に相当する部分に、めっきレジストを形成する(工程(E))。
上記めっきレジストは、例えば、感光性ドライフィルムを張り付けたり、液状レジストを塗布した後、露光現像処理を施すことにより形成することができる。
【0184】
次に、上記めっきレジスト非形成部に電解めっき膜を形成する(工程(F))。
上記電解めっき膜を形成は、既に形成した無電解めっき膜をめっきリードとして行うことができる。
具体的には、例えば、硫酸、硫酸銅および添加剤を含む電解めっき液を用いることにより電解銅めっき膜を形成することができる。
【0185】
次に、上記めっきレジストを剥離し、その後、めっきレジスト下の無電解めっき膜と金属層とをエッチング処理により除去する(工程(G))。
上記エッチング処理は、第一の製造方法の(g)の工程で用いるエッチング液と同様のものを用いて行うことができる。
【0186】
このような(A)〜(G)の工程を経ることにより、下層導体回路または上層導体回路上に、層間樹脂絶縁層と上層導体回路(バイアホールを含む)とを積層形成することができる。
また、第三の本発明の多層プリント配線板の製造方法では、無電解めっき膜を形成する前に、上記組成を有する無電解めっき用前処理液を用いて、バイアホール用開口の壁面や金属層の表面等に前処理を施しているため、層間樹脂絶縁層との密着性に優れた上層導体回路(バイアホールを含む)を形成することができる。
【0187】
次に、第三の製造方法の全製造工程について、工程順に説明する。
(1)第三の製造方法においては、まず、絶縁性基板の表面に下層導体回路が形成された基板を作製する。
上記絶縁性基板としては、樹脂基板が望ましく、具体的には、ガラスエポキシ基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂基板、熱硬化性ポリフェニレンエーテル基板、フッ素樹脂基板、銅張積層板、RCC基板等が挙げられる。
このとき、必要に応じて、絶縁性基板に貫通孔を設けてもよい。この場合、貫通孔は直径100〜300μmのドリル、レーザ光等を用いて形成することが望ましい。
【0188】
(2)次に、無電解めっきを施した後、基板上に下層導体回路形状のエッチングレジストを形成し、エッチングを行うことにより下層導体回路を形成する。無電解めっきとしては銅めっきが望ましい。また、絶縁性基板に貫通孔を設けた場合には、該貫通孔の壁面にも同時に無電解めっきを施してスルーホールを形成することにより、基板の両面の下層導体回路間を電気的に接続してもよい。
なお、絶縁性基板に無電解めっきを施す場合には、上述した無電解めっき用前処理液を用いて、絶縁性基板表面に前処理を施しておくことが望ましい。
また、第一または第二の製造方法の(a)〜(g)の工程を経ることにより製造された下層導体回路(スルーホールを含む)の形成された基板を用いてもよい。
【0189】
(3)次に、必要に応じて、スルーホールの内壁および下層導体回路の表面の粗化処理を行う。粗化処理方法としては、例えば、黒化(酸化)−還元処理、エッチング処理、Cu−Ni−P針状合金めっきによる処理などが挙げられる。
【0190】
上記黒化(酸化)−還元処理の具体的な方法としては、NaOH(10〜20g/l)、NaClO2 (40〜50g/l)、Na3 PO4 (6〜15g/l)を含む水溶液を黒化浴(酸化浴)とする黒化処理、および、NaOH(2.7〜10g/l)、NaBH4 (1.0〜6.0g/l)を含む水溶液を還元浴とする還元処理を行う方法等が挙げられる。
【0191】
上記エッチング処理に用いるエッチング液としては、有機酸と第二銅錯体との混合溶液が望ましい。上記有機酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、スルファミン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。上記エッチング液において、上記有機酸の含有量は、0.1〜30重量%が望ましい。酸化された銅の溶解性を維持し、かつ、触媒安定性を確保することができるからである。
【0192】
上記第二銅錯体としては、アゾール類の第二銅錯体が望ましい。このアゾール類の第二銅錯体は、金属銅等を酸化する酸化剤として作用する。アゾール類としては、例えば、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾール等が挙げられる。これらのなかでも、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾールが望ましい。上記エッチング液において、上記第二銅錯体の含有量は、1〜15重量%が望ましい。溶解性および安定性に優れ、また、触媒核を構成するパラジウム等の貴金属をも溶解させることができるからである。
【0193】
上記めっき処理としては、例えば、硫酸銅(1〜40g/l)、硫酸ニッケル(0.1〜6.0g/l)、クエン酸(10〜20g/l)、次亜リン酸ナトリウム(10〜100g/l)、ホウ酸(10〜40g/l)および界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール465)(0.01〜10g/l)を含むpH=9の無電解めっき浴にて無電解めっきを施し、Cu−Ni−P合金からなる粗化層を形成する方法等が挙げられる。
この範囲で析出するめっき被膜の結晶構造は、針状構造となるため、アンカー効果に優れるからである。上記無電解めっき浴には、上記化合物に加えて錯化剤や添加剤を加えてもよい。
【0194】
(4)次に、樹脂充填材をスルーホールに充填する。また、必要に応じて、絶縁性基板表面の下層導体回路が形成されていない凹部に樹脂充填材を充填し、その後、研磨等を行って絶縁性基板表面を平坦化してもよい。
この後、上記樹脂充填材を、例えば、100℃/20分の条件で乾燥させた後、硬化させる。
硬化は、温度50〜250℃の間で行うのが望ましい。その硬化条件の一例としては、100℃で1時間加熱した後、150℃で1時間加熱する方法が挙げられる。必要に応じて、順次低い温度から高い温度と温度を変化させて硬化させるステップ硬化を行ってもよい。
【0195】
また、研磨を行って下層導体回路表面を含む絶縁性基板表面を平坦化した場合には、必要に応じて、もう一度、下層導体回路の粗化処理を行ってもよい。粗化処理方法としては、例えば、黒化(酸化)−還元処理、エッチング処理、Cu−Ni−P合金めっきによる処理等が挙げられる。
【0196】
(5)次に、上記した(A)〜(G)の工程を行うことより、表面に下層導体回路が形成された基板上に層間樹脂絶縁層と上層導体回路とを形成する。
(6)次に、必要により、上記(3)に記載した方法と同様の方法で上層導体回路の粗化処理を行った後、上記(A)〜(G)の工程を繰り返すことにより、下層導体回路が形成された基板上に、上層導体回路と層間樹脂絶縁とが順次積層された基板を製造することができる。
【0197】
(7)次に、最上層の上層導体回路を含む基板面にソルダーレジスト層を形成し、さらに、該ソルダーレジスト層を開口して半田パッドを形成した後、上記半田パッドに半田ペーストを充填し、リフローすることにより半田バンプを形成する。その後、外部基板接続面に、ピンを配設したり、半田ボールを形成したりすることにより、PGA(Pin Grid Array)やBGA(Ball Grid Array) とする。
なお、ソルダーレジスト層や半田バンプの形成は、第一の製造方法で用いた方法と同様の方法により行うことができる。
【0198】
次に、第四の本発明の多層プリント配線板の製造方法について説明する。
第四の本発明の多層プリント配線板の製造方法は、下層導体回路が形成された基板上に、層間樹脂絶縁層と上層導体回路とが順次積層され、これらの導体回路がバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板の製造方法であって、少なくとも下記(A)〜(G)の上層導体回路を形成する工程を含むことを特徴とする。
(A)下層導体回路上または上層導体回路上に、樹脂層と金属層とからなる樹脂・金属層を形成する工程、
(B)上記樹脂・金属層を構成する樹脂層および金属層に、順次、開口形成処理を施し、該開口形成処理によりバイアホール用開口を形成する工程、
(C)上記樹脂・金属層に、0.01〜0.25mol/lのアルカリ性化合物、および、0.1〜0.3mol/lの還元剤を含む水溶液からなる無電解めっき用前処理液を用いた前処理を施す工程、
(D)上記前処理の施された樹脂・金属層の表面に、無電解めっき膜を形成する工程、
(E)上記無電解めっき膜上に電解めっき膜を形成する工程、
(F)上記電解めっき膜上の一部に、エッチングレジストを形成する工程、および、
(G)上記エッチングレジストを非形成部下の電解めっき膜と無電解めっき膜と金属層とをエッチング処理により除去する工程。
【0199】
第四の本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、層間樹脂絶縁層上に、バイアホールを含む上層導体回路を形成するための無電解めっき処理を施す前に、第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法で用いる無電解めっき用前処理液と同様の前処理液を用いて、バイアホール用開口の壁面等に前処理を施すため、無電解めっき処理により層間樹脂絶縁層との密着性に優れた、均一な無電解めっき膜を形成することができ、その結果、接続信頼性、電気特性に優れる多層プリント配線板を製造することができる。
【0200】
第四の本発明の多層プリント配線板の製造方法(以下、単に第四の製造方法ともいう)は、第三の製造方法と比べて、(D)〜(G)の工程、即ち、バイアホール用開口の内壁面を含む樹脂・金属層の表面に無電解めっき膜を形成した後、電解めっき処理等を経て層間樹脂絶縁層上に上層導体回路を形成する工程のみが異なる。従って、第四の製造方法については、この(D)〜(G)の工程についてのみ詳細に説明することとし、これ以外の製造工程については、簡単に説明することとする。
【0201】
まず、第四の製造方法における(A)〜(G)の工程について説明する。
第四の製造方法においては、第三の製造方法における(A)〜(D)の工程と同様して、バイアホール用開口の内壁面を含む樹脂・金属層の表面に、無電解めっき膜を形成する(工程(A)〜(D))。
【0202】
次に、上記(A)〜(D)工程で形成した無電解めっき膜上に電解めっき膜を形成する(工程(E))。
上記電解めっき膜の形成は、既に形成した無電解めっき膜をめっきリードとして行うことができる。
具体的には、例えば、硫酸、硫酸銅および添加剤を含む電解めっき液を用いることにより電解銅めっき膜を形成することができる。
【0203】
次に、電解めっき膜の一部、即ち、上層導体回路形成部分に相当する部分にエッチングレジストを形成する(工程(F))。
上記エッチングレジストは、例えば、感光性ドライフィルムを張り付けたり、液状レジストを塗布した後、露光現像処理を施すことにより形成することができる。
【0204】
次に、エッチング処理を施すことにより、上記エッチングレジスト非形成部下の電解めっき膜、無電解めっき膜および金属層を除去する(工程(G))。その後、上記エッチングレジストを強アルカリ水溶液等を用いて除去する。
上記エッチング処理は、第二の製造方法における(g)の工程で用いた方法と同様の方法を用いて行うことができる。
【0205】
このような(A)〜(G)の工程を経ることにより、下層導体回路または上層導体回路上に、層間樹脂絶縁層と上層導体回路(バイアホールを含む)とを積層形成することができる。
また、第四の本発明の多層プリント配線板の製造方法では、無電解めっき膜を形成する前に、上記組成を有する無電解めっき用前処理液を用いて、バイアホール用開口の壁面等に前処理を施しているため、層間樹脂絶縁層との密着性に優れた上層導体回路を形成することができる。
【0206】
このように、第一〜第四の本発明の多層プリント配線板の製造方法では、接続信頼性および電気特性に優れた多層プリント配線板を製造することができる。
ここで、第一および第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法は、基板上に下層導体回路を形成する工程に特徴を有するものであり、第三および第四の多層プリント配線板の製造方法は、層間樹脂絶縁層上に上層導体回路を形成する工程に特徴を有するものである。従って、第一および第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法のいずれかと、第三および第四の本発明の多層プリント配線板の製造方法のいずれかとを組み合わせることにより、より接続信頼性および電気特性に優れた多層プリント配線板を製造することができる。
【0207】
【実施例】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
A.樹脂充填材の調製
ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル社製、分子量:310、YL983U)100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径が1.6μmで、最大粒子の直径が15μm以下のSiO2 球状粒子(アドテック社製、CRS 1101−CE)170重量部およびレベリング剤(サンノプコ社製 ペレノールS4)1.5重量部を容器にとり、攪拌混合することにより、その粘度が23±1℃で45〜49Pa・sの樹脂充填材を調製した。なお、硬化剤として、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、2E4MZ−CN)6.5重量部を用いた。
【0208】
B.多層プリント配線板の製造
(1)厚さ0.8mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる絶縁性基板30の両面に18μmの銅箔32がラミネートされている銅張積層板30Aを出発材料とした(図1(a)参照)。まず、この銅張積層板30Aをドリル削孔し、無電解めっき処理を施し、パターン状にエッチングすることにより、基板30の両面に下層導体回路34とスルーホール36を形成した(図1(b)参照)。
【0209】
(2)スルーホール36および下層導体回路34を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、NaOH(10g/l)、NaClO2 (40g/l)、Na3 PO4 (6g/l)を含む水溶液を黒化浴(酸化浴)とする黒化処理、および、NaOH(10g/l)、NaBH4 (6g/l)を含む水溶液を還元浴とする還元処理を行い、そのスルーホール36を含む下層導体回路34の全表面に粗化面38を形成した(図1(c)参照)。
【0210】
(3)上記Aに記載した樹脂充填材を調製した後、下記の方法により調製後24時間以内に、スルーホール36内、および、基板30の片面の下層導体回路非形成部と下層導体回路34の外縁部とに樹脂充填材40の層を形成した。
すなわち、まず、スキージを用いてスルーホール内に樹脂充填材を押し込んだ後、100℃、20分の条件で乾燥させた。次に、下層導体回路非形成部に相当する部分が開口したマスクを基板上に載置し、スキージを用いて凹部となっている下層導体回路非形成部に樹脂充填材40の層を形成し、100℃、20分の条件で乾燥させた(図1(d)参照)。
【0211】
(4)上記(3)の処理を終えた基板の片面を、#600のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により、下層導体回路の34の表面やスルーホール36のランド36a表面に樹脂充填材40が残らないように研磨し、次いで、上記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。
このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。
次いで、100℃で1時間、150℃で1時間の加熱処理を行って樹脂充填材40を硬化した。
【0212】
このようにして、スルーホール36や下層導体回路非形成部に形成された樹脂充填材40の表層部および下層導体回路34の表面を平坦化し、樹脂充填材40と下層導体回路34の側面とが粗化面38を介して強固に密着し、またスルーホール36の内壁面と樹脂充填材40とが粗化面38を介して強固に密着した基板を得た(図2(a)参照)。即ち、この工程により、樹脂充填材40の表面と下層導体回路34の表面とが同一平面となる。
【0213】
(5)上記基板を水洗、アルカリ脱脂した後、ソフトエッチングし、次いで、エッチング液を基板の両面にスプレイで吹きつけて、下層導体回路34の表面とスルーホール36のランド表面36aとをエッチングすることにより、下層導体回路34の全表面に粗化面42を形成した(図2(b)参照)。
エッチング液としては、イミダゾール銅(II)錯体10重量部、グリコール酸7重量部、塩化カリウム5重量部からなるエッチング液(メック社製、メックエッチボンド)を使用した。
【0214】
(6)基板の両面に、樹脂付き銅箔(日立化成工業社製 MCF−6000E、樹脂20の厚さが60μm、銅箔22の厚さが12μm)20Aを、載置した後、真空プレスすることにより圧着した(図2(c)参照)。
ここで、真空プレスは、175℃、90min、圧力3MPa、真空度<6.5kPaの条件で行った。
【0215】
(7)次に、圧着した樹脂付き銅箔20Aの表面の銅箔22を、エッチング液(三菱瓦斯化学社製 SE−07)を用いて、その厚さが3μmとなるまで全面エッチングした(図2(d)参照)。
【0216】
(8)次に、銅箔22上に、ドライフィルムレジスト(日合モートン社製 NIT−215)を張り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2 で露光、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、バイアホール用開口形成部に開口43aを有するエッチングレジスト43を形成した(図3(a)参照)。
【0217】
(9)次に、開口43a下の銅箔22を塩化第二銅溶液からなるエッチング液にて除去し(図3(b)参照)、その後、エッチングレジスト43を水酸化ナトリウム水溶液で剥離し、開口22aを有し、コンフォーマルマスクとなる銅箔22を形成した(図3(c)参照)。
【0218】
(10)次に、炭酸ガスレーザ照射装置(三菱電気社製 605GTX)を用いて、銅箔の開口22a毎に2ショットの短パルスのレーザを照射し、樹脂付き銅箔20Aの樹脂20に直径60μmの開口を形成し、バイアホール用開口20aを設けた(図3(d)参照)。この後、酸素プラズマを用いてデスミア処理を行った。
【0219】
(9)次に、バイアホール用開口20aを形成した基板の表面に、パラジウム触媒を付与することにより、銅箔22の表面およびバイアホール用開口20aの内壁面に触媒核を付着させた(図示せず)。すなわち、上記基板を塩化パラジウム(PbCl2 )と塩化第一スズ(SnCl2 )とを含む触媒液中に浸漬し、パラジウム金属を析出させることにより触媒を付与した。
【0220】
(10)次に、以下の組成の無電解めっき用前処理液中に基板を浸漬することにより前処理を施した。
〔無電解めっき用前処理液〕
NaOH 0.10mol/l
HCHO 0.10mol/l
〔前処理条件〕
30℃の液温度で3分
【0221】
(11)次に、以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に、前処理を施した基板を浸漬して、バイアホール用開口20aの内壁面を含む基板表面全体に厚さ0.6〜3.0μmの無電解銅めっき膜52を形成した(図4(a)参照)。
〔無電解めっき水溶液〕
NiSO4 0.003 mol/l
酒石酸 0.200 mol/l
硫酸銅 0.030 mol/l
HCHO 0.050 mol/l
NaOH 0.100 mol/l
α、α′−ビピリジル 100 mg/l
ポリエチレングリコール(PEG) 0.10 g/l
〔無電解めっき条件〕
34℃の液温度で40分
【0222】
(12)無電解銅めっき膜52が形成された基板にドライフィルムレジスト(日合モートン社製 NIT−215)を張り付け、所定位置にパターンの形成されたマスク(図示せず)を載置して、100mJ/cm2 で露光した。その後、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、バイアホール形成部および上層導体回路形成部に開口54aを有するめっきレジスト54を設けた(図4(b)参照)。
【0223】
(13)ついで、基板を50℃の水で洗浄して脱脂し、25℃の水で水洗後、さらに硫酸で洗浄してから、以下の条件で電解めっきを施し、めっきレジスト非形成部54aに、厚さ20μmの電解銅めっき膜56を形成した(図4(c)参照)。
〔電解めっき液〕
硫酸 2.24 mol/l
硫酸銅 0.26 mol/l
添加剤 19.5 ml/l
(アトテックジャパン社製、カパラシドGL)
〔電解めっき条件〕
電流密度 1 A/dm2
時間 65 分
温度 22±2 ℃
【0224】
(14)さらに、めっきレジスト54を5%KOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト54下の無電解めっき膜52および銅箔22を硫酸と過酸化水素との混合液でエッチング処理して溶解除去し、厚さ18μmの独立した上層導体回路58(バイアホール60を含む)とした(図4(d)参照)。
【0225】
(15)ついで、上記(5)と同様の処理を行い、上層導体回路58(バイアホール60を含む)表面に粗化面62を形成した(図5(a)参照)。
(16)上記(6)〜(15)の工程を繰り返すことにより、さらに上層導体回路88(バイアホール90を含む)と層間樹脂絶縁層120とを形成し、多層配線板を得た(図5(b)参照)。
【0226】
(17)次に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に60重量%の濃度になるように溶解させた、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量:4000)46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル社製、商品名:エピコート1001)15.0重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、商品名:2E4MZ−CN)1.6重量部、感光性モノマーである2官能アクリルモノマー(日本化薬社製、商品名:R604)4.5重量部、同じく多価アクリルモノマー(共栄化学社製、商品名:DPE6A)1.5重量部、分散系消泡剤(サンノプコ社製、S−65)0.71重量部を容器にとり、攪拌、混合して混合組成物を調製し、この混合組成物に対して光重合開始剤としてベンゾフェノン(関東化学社製)2.0重量部、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学社製)0.2重量部、を加えることにより、粘度を25℃で2.0Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物を得た。
なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器社製、DVL−B型)で60rpmの場合はローターNo.4、6rpmの場合はローターNo.3によった。
【0227】
(18)次に、多層配線板の両面に、上記ソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布し、70℃で20分間、70℃で30分間の条件で乾燥処理を行った後、ソルダーレジスト開口部のパターンが描画された厚さ5mmのフォトマスクをソルダーレジスト層に密着させて1000mJ/cm2 の紫外線で露光し、DMTG溶液で現像処理し、200μmの直径の開口を形成した。
そして、さらに、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間の条件でそれぞれ加熱処理を行ってソルダーレジスト層を硬化させ、開口を有し、その厚さが20μmのソルダーレジストパターン層を形成した。上記ソルダーレジスト組成物としては、市販のソルダーレジスト組成物を使用することもできる。
【0228】
(19)次に、ソルダーレジスト層93を形成した基板を、塩化ニッケル(2.3×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(2.8×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.6×10-1mol/l)を含むpH=4.5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層95を形成した。さらに、その基板をシアン化金カリウム(7.6×10-3mol/l)、塩化アンモニウム(1.9×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.2×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(1.7×10-1mol/l)を含む無電解金めっき液に80℃の条件で7.5分間浸漬して、ニッケルめっき層95上に、厚さ0.03μmの金めっき層96を形成した。
【0229】
(20)この後、基板のICチップを載置する面のソルダーレジスト層の開口に、スズ−鉛を含有するはんだペーストを印刷し、さらに他方の面のソルダーレジスト層93の開口にスズ−アンチモンを含有するはんだペーストを印刷した後、200℃でリフローすることによりはんだバンプ(はんだ体)97を形成し、はんだバンプ97を有する多層プリント配線板を製造した(図6参照)。
【0230】
(実施例2)
実施例1における(12)〜(14)の工程に代えて、下記(1)〜(3)の工程を行うことにより多層プリント配線板を製造した以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0231】
(1)無電解めっき膜52が形成された基板(図7(a)参照)に、以下の条件で電解めっきを施し、厚さ20μmの電解銅めっき膜56を形成した(図7(b)参照)。
〔電解めっき液〕
硫酸 2.24 mol/l
硫酸銅 0.26 mol/l
添加剤 19.5 ml/l
(アトテックジャパン社製、カパラシドGL)
〔電解めっき条件〕
電流密度 1 A/dm2
時間 65 分
温度 22±2 ℃
【0232】
(2)次に、電解銅めっき膜56が形成された基板に、ドライフィルムレジスト(日合モートン社製 NIT−215)を張り付け、所定位置にパターンの形成されたマスク(図示せず)を載置して、100mJ/cm2 で露光した。その後、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、バイアホール形成部および上層導体回路形成部を覆うL/S:30μm/30μmのエッチングレジスト55を設けた(図7(c)参照)。
【0233】
(3)さらに、塩化第二銅溶液からなるエッチング液を用いてパターンエッチングを行うことにより、エッチングレジスト55非形成部下の電解銅めっき膜56、無電解銅めっき膜52および銅箔22を除去し、その後、2%水酸化ナトリウム水溶液によりエッチングレジスト55を剥離し、厚さ18μmの独立した上層導体回路58(バイアホール60を含む)とした(図7(d)参照)。
【0234】
(実施例3)
無電解めっき用前処理液におけるNaOHの濃度を、0.025mol/lにした以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0235】
(実施例4)
無電解めっき用前処理液におけるHCHOの濃度を、0.10mol/lにした以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0236】
(実施例5)
無電解めっき液において、NiSO4 の代わりに、CoSO4 (濃度:0.002mol/lを用いた以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0237】
(実施例6)
実施例1の(1)の工程に代えて、下記(1)〜(10)の工程を行うことにより、下層導体回路134とスルーホール136とが形成された基板130を作製した以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0238】
(1)厚さ0.8mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミド−トリアジン)樹脂からなる基板130の両面に18μmの銅箔132がラミネートされている銅張積層板130Aを出発材料とし、まず、銅張積層板130Aの表面の銅箔132を、エッチング液(三菱瓦斯化学社製 SE−07)を用いて、その厚さが3μmとなるまで全面エッチングした(図8(a)参照)。
【0239】
(2)次に、銅箔132上に、ドライフィルムレジスト(日合モートン社製 NIT−215)を張り付け、マスクを載置して100mJ/cm2 で露光、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、スルーホール用貫通孔形成部に開口133aを有するエッチングレジスト133を形成した(図8(b)参照)。
【0240】
(3)次に、開口133a下の銅箔132を塩化第二銅溶液からなるエッチング液にて除去し、その後、エッチングレジスト133を水酸化ナトリウム水溶液で剥離し、スルーホール用貫通孔形成部に開口132aを有し、コンフォーマルマスクとなる銅箔132を形成した(図8(c)参照)。
【0241】
(4)次に、炭酸ガスレーザ照射装置(三菱電気社製 605GTX)を用いて、銅箔の開口132a毎に5ショットの短パルスのレーザを照射し、基板130に開口130aを形成した(図8(d)参照)。この後、酸素プラズマを用いてデスミア処理を行った。
【0242】
(5)次に、スルーホール用貫通孔135を形成した基板の表面に、パラジウム触媒を付与することにより、銅箔132の表面およびスルーホール用貫通孔の内壁面に触媒核を付着させた(図示せず)。すなわち、スルーホール用貫通孔の形成された基板130Aを塩化パラジウム(PdCl2 )と塩化第一スズ(SnCl2 )とを含む触媒液中に浸漬し、パラジウム金属を析出させることにより触媒を付与した。
【0243】
(6)次に、以下の組成の無電解めっき用前処理液中に基板を浸漬することにより前処理を施した。
〔無電解めっき用前処理液〕
NaOH 0.10mol/l
HCHO 0.10mol/l
〔前処理条件〕
30℃の液温度で3分
【0244】
(7)次に、以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に、前処理を施した基板を浸漬して、スルーホール用貫通孔135の内壁面を含む基板表面全体に厚さ0.6〜3.0μmの無電解銅めっき膜142を形成した(図9(a)参照)。 〔無電解めっき水溶液〕
NiSO4 0.003 mol/l
酒石酸 0.200 mol/l
硫酸銅 0.030 mol/l
HCHO 0.050 mol/l
NaOH 0.100 mol/l
α、α′−ビピリジル 100 mg/l
PEG 0.10 g/l
〔無電解めっき条件〕
34℃の液温度で40分
【0245】
(8)無電解銅めっき膜142が形成された基板にドライフィルムレジスト(日合モートン社製 NIT−215社製)を張り付け、所定位置にパターンの形成されたマスク(図示せず)を載置して、100mJ/cm2 で露光した。その後、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、スルーホール形成部および下層導体回路形成部に開口を有するめっきレジスト144を形成した。
【0246】
(9)さらに、基板を50℃の水で洗浄して脱脂し、25℃の水で水洗後、さらに硫酸で洗浄してから、以下の条件で電解めっきを施し、めっきレジスト非形成部に、厚さ20μmの電解銅めっき膜146を形成した(図9(b)参照)。
〔電解めっき液〕
硫酸 2.24 mol/l
硫酸銅 0.26 mol/l
添加剤 19.5 ml/l
(アトテックジャパン社製、カパラシドGL)
〔電解めっき条件〕
電流密度 1 A/dm2
時間 65 分
温度 22±2 ℃
【0247】
(10)次に、めっきレジスト144を5%KOHで剥離除去した後、めっきレジスト144下の無電解めっき膜142および銅箔132を硫酸と過酸化水素との混合液でエッチング処理して溶解除去し、独立した下層導体回路134とスルーホール136とが形成された基板130を作製した(図9(c)参照)。
【0248】
(実施例7)
実施例1の(1)の工程に代えて、下記(1)〜(4)の工程を行うことにより、下層導体回路134とスルーホール136とが形成された基板130を作製した以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0249】
(1)まず、実施例6の(1)〜(7)と同様にしてスルーホール用貫通孔135の内壁面を含む表面全体に厚さ0.6〜3.0μmの無電解銅めっき膜142が形成された基板を製造した(図10(a)参照)。
【0250】
(2)無電解銅めっき膜142が形成された基板に、以下の条件で電解めっきを施し、厚さ20μmの電解銅めっき膜147を形成した(図10(b)参照)。〔電解めっき液〕
硫酸 2.24 mol/l
硫酸銅 0.26 mol/l
添加剤 19.5 ml/l
(アトテックジャパン社製 カパラシドGL)
〔電解めっき条件〕
電流密度 1 A/dm2
時間 65 分
温度 22±2 ℃
【0251】
(3)次に、電解銅めっき膜147が形成された基板にドライフィルムレジスト(日合モートン社製 NIT−215社製)を張り付け、所定位置にパターンの形成されたマスク(図示せず)を載置して、100mJ/cm2 で露光した。その後、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、スルーホール形成部および下層導体回路形成部を覆うエッチングレジスト149を形成した(図10(c)参照)。
【0252】
(4)さらに、塩化第二銅溶液からなるエッチング液を用いてパターンエッチングを行い、その後、2%水酸化ナトリウム水溶液によりエッチングレジスト149を剥離し、独立した下層導体回路134とスルーホール136とが形成された基板130を作製した(図10(d)参照)。
【0253】
(実施例8)
A.層間樹脂絶縁層用の樹脂フィルムの作製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量469、油化シェルエポキシ社製エピコート1001)30重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215、大日本インキ化学工業社製 エピクロンN−673)40重量部、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量120、大日本インキ化学工業社製 フェノライトKA−7052)30重量部をエチルジグリコールアセテート20重量部、ソルベントナフサ20重量部に攪拌しながら加熱溶解させ、そこへ末端エポキシ化ポリブタジエンゴム(ナガセ化成工業社製 デナレックスR−45EPT)15重量部と2−フェニル−4、5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール粉砕品1.5重量部、微粉砕シリカ2重量部、シリコン系消泡剤0.5重量部を添加しエポキシ樹脂組成物を調製した。
得られたエポキシ樹脂組成物を厚さ38μmのPETフィルム上に乾燥後の厚さが50μmとなるようにロールコーターを用いて塗布した後、80〜120℃で10分間乾燥させることにより、層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムを作製した。
【0254】
B.樹脂充填材の調製
実施例1と同様にして、樹脂充填材を調製した。
【0255】
C.多層プリント配線板の製造
(1)厚さ0.8mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる絶縁性基板30の両面に18μmの銅箔32がラミネートされている銅張積層板30Aを出発材料とした(図11(a)参照)。まず、この銅張積層板30Aをドリル削孔し、無電解めっき処理を施し、パターン状にエッチングすることにより、基板の両面に下層導体回路34とスルーホール36を形成した(図11(b)参照)。
【0256】
(2)下層導体回路34およびスルーホール36を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、NaOH(10g/l)、NaClO2 (40g/l)、Na3 PO4 (6g/l)を含む水溶液を黒化浴(酸化浴)とする黒化処理、および、NaOH(10g/l)、NaBH4 (6g/l)を含む水溶液を還元浴とする還元処理を行い、そのスルーホール36を含む下層導体回路34の全表面に粗化面38を形成した(図11(c)参照)。
【0257】
(3)上記Bに記載した樹脂充填材を調製した後、下記の方法により調製後24時間以内に、スルーホール36内、および、基板1の片面の下層導体回路非形成部と下層導体回路34の外縁部とに樹脂充填材40の層を形成した。
すなわち、まず、スキージを用いてスルーホール内に樹脂充填材を押し込んだ後、100℃、20分の条件で乾燥させた。次に、下層導体回路非形成部に相当する部分が開口したマスクを基板上に載置し、スキージを用いて凹部となっている下層導体回路非形成部に樹脂充填材40の層を形成し、100℃、20分の条件で乾燥させた(図11(d)参照)。
【0258】
(4)上記(3)の処理を終えた基板の片面を、#600のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により、内層銅パターン34の表面やスルーホール36のランド表面に樹脂充填材40が残らないように研磨し、次いで、上記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。
次いで、100℃で1時間、150℃で1時間の加熱処理を行って樹脂充填材40を硬化した。
【0259】
このようにして、スルーホール36や下層導体回路非形成部に形成された樹脂充填材40の表層部および下層導体回路34の表面を平坦化し、樹脂充填材40と下層導体回路34の側面とが粗化面38を介して強固に密着し、またスルーホール36の内壁面と樹脂充填材40とが粗化面38を介して強固に密着した基板を得た(図12(a)参照)。即ち、この工程により、樹脂充填材40の表面と下層導体回路34の表面とが同一平面となる。
【0260】
(5)上記基板を水洗、酸性脱脂した後、ソフトエッチングし、次いで、エッチング液を基板の両面にスプレイで吹きつけて、下層導体回路34の表面とスルーホール36のランド表面36aと内壁とをエッチングすることにより、下層導体回路34の全表面に粗化面42を形成した(図12(b)参照)。
エッチング液としては、イミダゾール銅(II)錯体10重量部、グリコール酸7重量部、塩化カリウム5重量部からなるエッチング液(メック社製、メックエッチボンド)を使用した。
【0261】
(6)次に、基板の両面に、Aで作製した基板より少し大きめの層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムを基板上に載置し、圧力4kgf/cm2 、温度80℃、圧着時間10秒の条件で仮圧着して裁断した後、さらに、以下の方法により真空ラミネーター装置を用いて貼り付けることにより層間樹脂絶縁層20を形成した(図12(c)参照)。すなわち、層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムを基板上に、真空度0.5Torr、圧力4kgf/cm2 、温度80℃、圧着時間60秒の条件で本圧着し、その後、170℃で30分間熱硬化させた。
【0262】
(7)次に、層間樹脂絶縁層20を形成した基板を、60g/lの過マンガン酸を含む80℃の溶液に10分間浸漬し、層間樹脂絶縁層20の表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去することにより、層間樹脂絶縁層20の表面を粗面とした。なお、形成した粗面については、図示していない。
【0263】
(8)次に、日本真空技術社製のSV−4540を用い、Cuをターゲットにしたスパッタリングを、ガス圧0.5Pa、温度120℃、電力600W、時間30分間の条件で行い、Cu金属層12を層間樹脂絶縁層20の表面に形成した(図12(d)参照)。なお、形成したCu金属層の厚さは、0.5μmである。
【0264】
(9)次に、Cu金属層上に、ドライフィルムレジスト(日合モートン社製 NIT−215)を張り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2 で露光、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、バイアホール用開口形成部に開口43aを有するエッチングレジスト43を形成した(図13(a)参照)。
【0265】
(10)次に、開口43a下のCu金属層を塩化第二銅溶液からなるエッチング液にて除去し(図13(b)参照)、その後、エッチンレジスト43を水酸化ナトリウム水溶液で剥離し、開口12aを有し、コンフォーマルマスクとなるCu金属層12を形成した(図13(c)参照)。
【0266】
(11)次に、炭酸ガスレーザ照射装置(三菱電気社製 605GTX)を用いて、Cu金属層の開口12a毎に5ショットの短パルスのレーザを照射し、層間樹脂絶縁層に直径60μmの開口を形成した(図13(d)参照)。この後、酸素プラズマを用いてデスミア処理を行った。
【0267】
(12)次に、バイアホール用開口を形成した基板の表面に、パラジウム触媒を付与することにより、Cu金属層12の表面およびバイアホール用開口20aの内壁面に触媒核を付着させた(図示せず)。すなわち、上記基板を塩化パラジウム(PbCl2 )と塩化第一スズ(SnCl2 )とを含む触媒液中に浸漬し、パラジウム金属を析出させることにより触媒を付与した。
【0268】
(13)次に、以下の組成の無電解めっき用前処理液中に基板を浸漬することにより前処理を施した。
〔無電解めっき用前処理液〕
NaOH 0.10 mol/l
HCHO 0.10 mol/l
〔前処理条件〕
30℃液温度で3分
【0269】
(14)次に、以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に、前処理を施した基板を浸漬して、バイアホール用開口の内壁面を含む基板表面全体に厚さ0.6〜3.0μmの無電解銅めっき膜52を形成した(図14(a)参照)。
〔無電解めっき水溶液〕
NiSO4 0.003 mol/l
酒石酸 0.200 mol/l
硫酸銅 0.030 mol/l
HCHO 0.050 mol/l
NaOH 0.100 mol/l
α、α′−ビピリジル 100 mg/l
ポリエチレングリコール(PEG) 0.10 g/l
〔無電解めっき条件〕
34℃の液温度で40分
【0270】
(15)無電解銅めっき膜52が形成された基板にドライフィルムレジスト(日合モートン社製 NIT−215)を張り付け、所定位置にパターンの形成されたマスク(図示せず)を載置して、100mJ/cm2 で露光した。その後、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、バイアホール形成部および導体回路形成部に開口54aを有するめっきレジスト54を設けた(図14(b)参照)。
【0271】
(16)ついで、基板を50℃の水で洗浄して脱脂し、25℃の水で水洗後、さらに硫酸で洗浄してから、以下の条件で電解めっきを施し、めっきレジスト非形成部54aに、厚さ20μmの電解銅めっき膜56を形成した(図14(c)参照)。
〔電解めっき液〕
硫酸 2.24 mol/l
硫酸銅 0.26 mol/l
添加剤 19.5 ml/l
(アトテックジャパン社製、カパラシドGL)
〔電解めっき条件〕
電流密度 1 A/dm2
時間 65 分
温度 22±2 ℃
【0272】
(17)さらに、めっきレジスト54を5%KOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト54下の無電解めっき膜52およびCu金属層12を硫酸と過酸化水素との混合液でエッチング処理して溶解除去し、独立の上層導体回路58(バイアホール60を含む)とした(図14(d)参照)。
【0273】
(18)ついで、上記(5)と同様の処理を行い、上層導体回路58(バイアホール60を含む)表面に粗化面62を形成した(図15(a)参照)。
(19)上記(6)〜(18)の工程を繰り返すことにより、さらに上層導体回路88(バイアホール90を含む)と層間樹脂絶縁層120を形成し、多層配線板を得た(図15(b)参照)。
【0274】
(20)さらに、実施例1の(17)〜(20)の工程と同様にして、ソルダーレジスト層および半田バンプを形成し、多層プリント配線板とした(図16参照)。
【0275】
(比較例1)
無電解めっき用前処理液として、以下の組成の無電解めっき用前処理液を用いた以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
〔無電解めっき用前処理液〕
NaOH 0.005mol/l
HCHO 0.10mol/l
【0276】
(比較例2)
無電解めっき用前処理液として、以下の組成の無電解めっき用前処理液を用いた以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
〔無電解めっき用前処理液〕
NaOH 0.30mol/l
HCHO 0.10mol/l
【0277】
(比較例3)
無電解めっき用前処理液として、以下の組成の無電解めっき用前処理液を用いた以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
〔無電解めっき用前処理液〕
NaOH 0.10mol/l
HCHO 0.05mol/l
【0278】
実施例1〜8および比較例1〜3で得られた多層プリント配線板において、無電解めっき膜の形状、および、無電解めっき膜のピール強度について評価を行った。結果を表1に示した。なお、無電解めっき膜の形状は、下記の評価方法により評価した。
また、上記多層プリント配線板について、導通試験を行い、断線の有無を評価した。結果を表1に示した。
【0279】
(1)無電解めっき膜の形状
多層プリント配線板をバイアホールを含むように縦に切断し、無電解めっき膜の形状を顕微鏡により観察し、以下の評価基準で評価した。
評価基準
○.無電解めっき膜の未析出部分がなく、厚さが均一である。
×.無電解めっき膜の未析出部分が存在したり、厚さにバラツキが生じたりしている。
【0280】
【表1】
Figure 0004508380
【0281】
表1に示したように、本発明の多層プリント配線板の製造方法を用いて得られた多層プリント配線板(実施例1〜8)では、層間樹脂絶縁層や基板の表面全体に、厚さの均一な無電解めっき膜が形成されており、この無電解めっき膜のピール強度は0.90kg/cm以上と充分に高く、また、得られた多層プリント配線板は、接続性も良好であった。
一方、比較例1〜3の多層プリント配線板は、層間樹脂絶縁層の表面全体に、厚さの均一な無電解めっき膜が形成されておらず、めっき膜の未析出部分や、厚さの不均一な部分が見られた。また、この無電解めっき膜のピール強度は0.70kg/cm以下と無電解めっき膜の密着性は充分でなく、また、得られた多層プリント配線板は一部に接続不良がみられ、その接続性は、実施例と比べて低かった。
【0282】
【発明の効果】
以上説明してきたように、第一〜第四の本発明の多層プリント配線板の製造方法は、上述の構成からなるため、基板や層間樹脂絶縁層と導体回路との密着性が優れ、信頼性、電気特性に優れた多層プリント配線板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図5】(a)、(b)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図6】本発明の多層プリント配線板の製造方法により得られる多層プリント配線板を示す断面図である。
【図7】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図8】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図10】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図11】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図12】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図13】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図14】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図15】(a)、(b)は、本発明の多層プリント配線板の製造方法の工程の一部を示す断面図である。
【図16】本発明の多層プリント配線板の製造方法により得られる多層プリント配線板を示す断面図である。
【図17】(a)〜(g)は、従来のコンフォーマルマスクを用いた多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【符号の説明】
20、120 層間樹脂絶縁層
30、130 絶縁性基板
32 銅箔
34、134 下層導体回路
36 スルーホール
38 粗化面
40 樹脂充填材
43 エッチングレジスト
52 無電解銅めっき膜
54 めっきレジスト
56 電解銅めっき膜
58、88 上層導体回路
60、90 バイアホール
93 ソルダーレジスト層
95 ニッケルめっき膜
96 金めっき膜
97 はんだバンプ

Claims (2)

  1. 下層導体回路が形成された基板上に、層間樹脂絶縁層と上層導体回路とが順次積層され、これらの導体回路がバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板の製造方法であって、
    前記上層導体回路を形成する工程は、少なくとも
    (A)下層導体回路上または上層導体回路上に、樹脂層と金属層とからなる樹脂・金属層を形成する工程、
    (B)前記樹脂・金属層を構成する樹脂層および金属層に、順次、開口形成処理を施し、該開口形成処理によりバイアホール用開口を形成し、更にPd触媒を付与する工程、
    (C)前記樹脂・金属層に、0.025〜0.1mol/lのアルカリ性化合物、および、0.1〜0.3mol/lの還元剤を含む水溶液からなる無電解めっき用前処理液を用いた前処理を施す工程、
    (D)前記前処理の施された樹脂・金属層の表面に、無電解めっき膜を形成する工程、
    (E)前記無電解めっき膜の一部にめっきレジストを形成する工程、
    (F)前記めっきレジスト非形成部に電解めっき膜を形成する工程、および、
    (G)前記めっきレジストを剥離した後、前記めっきレジスト下の無電解めっき膜と金属層とを除去する工程、を含み、
    前記(B)の工程において、バイアホール用開口の直径は80μm以下であり、
    前記(C)の工程において、前処理の温度は、20〜50℃であって、前処理時間は、0.5〜5分であり、
    前記(D)の工程で用いる無電解めっき液は、アルカリ性化合物、還元剤、銅イオン、および、酒石酸もしくはその塩を含む水溶液からなり、さらに、ニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含み、
    前記アルカリ性化合物の濃度は、0.025〜0.25mol/lであり、
    前記還元剤の濃度は、0.03〜0.15mol/lであり、
    前記銅イオンの濃度は、0.02〜0.06mol/lであり、
    前記酒石酸もしくはその塩の濃度は、0.05〜0.3mol/lである
    ことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
  2. 下層導体回路が形成された基板上に、層間樹脂絶縁層と上層導体回路とが順次積層され、これらの導体回路がバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板の製造方法であって、
    前記上層導体回路を形成する工程は、少なくとも
    (A)下層導体回路上または上層導体回路上に、樹脂層と金属層とからなる樹脂・金属層を形成する工程、
    (B)前記樹脂・金属層を構成する樹脂層および金属層に、順次、開口形成処理を施し、該開口形成処理によりバイアホール用開口を形成し、更にPd触媒を付与する工程、
    (C)前記樹脂・金属層に、0.025〜0.1mol/lのアルカリ性化合物、および、0.1〜0.3mol/lの還元剤を含む水溶液からなる無電解めっき用前処理液を用いた前処理を施す工程、
    (D)前記前処理の施された樹脂・金属層の表面に、無電解めっき膜を形成する工程、
    (E)前記無電解めっき膜上に電解めっき膜を形成する工程、
    (F)前記電解めっき膜上の一部に、エッチングレジストを形成する工程、および、
    (G)前記エッチングレジスト非形成部下の電解めっき膜と無電解めっき膜と金属層とをエッチング処理により除去する工程、を含み、
    前記(B)の工程において、バイアホール用開口の直径は80μm以下であり、
    前記(C)の工程において、前処理の温度は、20〜50℃であって、前処理時間は、0.5〜5分であり、
    前記(D)の工程で用いる無電解めっき液は、アルカリ性化合物、還元剤、銅イオン、および、酒石酸もしくはその塩を含む水溶液からなり、さらに、ニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含み、
    前記アルカリ性化合物の濃度は、0.025〜0.25mol/lであり、
    前記還元剤の濃度は、0.03〜0.15mol/lであり、
    前記銅イオンの濃度は、0.02〜0.06mol/lであり、
    前記酒石酸もしくはその塩の濃度は、0.05〜0.3mol/lである
    ことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
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