以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態による内燃機関の排ガス浄化装置について説明する。図1は、本発明を適用した排ガス浄化装置1を内燃機関3とともに示している。この内燃機関(以下「エンジン」という)3は、車両(図示せず)に搭載された、例えば4気筒(1つのみ図示)のディーゼルエンジンである。
エンジン3のピストン3aとシリンダヘッド3bの間には、燃焼室3cが形成されている。シリンダヘッド3bには、吸気管4および排気管5(排気系)が接続されるとともに、燃料噴射弁(以下「インジェクタ」という)6(NOx還元手段)が、燃焼室3cに臨むように取り付けられている。
インジェクタ6は、燃焼室3cの天壁中央部に配置されており、コモンレールを介して、高圧ポンプおよび燃料タンク(いずれも図示せず)に順に接続されている。インジェクタ6の開弁時間である燃料噴射量TOUT(燃料供給量)は、ECU2からの駆動信号によって制御される(図2参照)。
また、エンジン3のクランクシャフト3dには、マグネットロータ30aが取り付けられており、このマグネットロータ30aとMREピックアップ30bによって、クランク角センサ30が構成されている。クランク角センサ30は、クランクシャフト3dの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。
CRK信号は、所定のクランク角(例えば30゜)ごとに出力される。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを求める。TDC信号は、各気筒のピストン3aが吸気行程開始時のTDC(上死点)付近の所定のクランク角度位置にあることを表す信号であり、4気筒タイプの本例では、クランク角180゜ごとに出力される。
吸気管4には、過給装置7が設けられており、過給装置7は、ターボチャージャで構成された過給機8と、これに連結されたアクチュエータ9と、ベーン開度制御弁10を備えている。
過給機8は、吸気管4に設けられた回転自在のコンプレッサブレード8aと、排気管5に設けられた回転自在のタービンブレード8bおよび複数の回動自在の可変ベーン8c(2つのみ図示)と、これらのブレード8a,8bを一体に連結するシャフト8dとを有している。過給機8は、排気管5内の排ガスによりタービンブレード8bが回転駆動されるのに伴い、これと一体のコンプレッサブレード8aが回転駆動されることによって、吸気管4内の吸入空気を加圧する過給動作を行う。
アクチュエータ9は、負圧によって作動するダイアフラム式のものであり、各可変ベーン8cに機械的に連結されている。アクチュエータ9には、負圧ポンプから負圧供給通路(いずれも図示せず)を介して負圧が供給され、この負圧供給通路の途中にベーン開度制御弁10が設けられている。ベーン開度制御弁10は、電磁弁で構成されており、その開度がECU2からの駆動信号で制御されることにより、アクチュエータ9への供給負圧が変化し、それに伴い、可変ベーン8cの開度が変化することにより、過給圧が制御される。
吸気管4の過給機8よりも下流側には、上流側から順に、水冷式のインタークーラ11およびスロットル弁12(NOx還元手段)が設けられている。インタークーラ11は、過給装置7の過給動作により吸入空気の温度が上昇したときなどに、吸入空気を冷却するものである。スロットル弁12には、例えば直流モータで構成されたアクチュエータ12aが接続されている。スロットル弁12の開度(以下「スロットル弁開度」という)THは、アクチュエータ12aに供給される電流のデューティ比をECU2で制御することによって、制御される。
また、吸気管4には、過給機8よりも上流側にエアフローセンサ31が、インタークーラ11とスロットル弁12の間に過給圧センサ32が、それぞれ設けられている。エアフローセンサ31は吸入空気量QAを検出し、過給圧センサ32は吸気管4内の過給圧PACTを検出し、それらの検出信号はECU2に出力される。
さらに、吸気管4の吸気マニホールド4aは、その集合部から分岐部にわたって、スワール通路4bとバイパス通路4cに仕切られており、これらの通路4b,4cはそれぞれ、吸気ポートを介して各燃焼室3cに連通している。
バイパス通路4cには、燃焼室3c内にスワールを発生させるためのスワール装置13が設けられている。スワール装置13は、スワール弁13aと、これを開閉するアクチュエータ13bと、スワール制御弁13cを備えている。アクチュエータ13bおよびスワール制御弁13cはそれぞれ、過給装置7のアクチュエータ9およびベーン開度制御弁10と同様に構成されており、スワール制御弁13cは、前記負圧ポンプに接続されている。以上の構成により、スワール制御弁13cの開度がECU2からの駆動信号で制御されることにより、アクチュエータ13bに供給される負圧が変化し、スワール弁13aの開度が変化することによって、スワールの強さが制御される。
また、エンジン3には、EGR管14aおよびEGR制御弁14bを有するEGR装置14が設けられている。EGR管14aは、吸気管4と排気管5の間に、具体的には、吸気マニホールド4aの集合部のスワール通路4bと排気管5の過給機8よりも上流側とをつなぐように接続されている。このEGR管14aを介して、エンジン3の排ガスの一部が吸気管4にEGRガスとして還流し、それにより、燃焼室3c内の燃焼温度が低下することによって、排ガス中のNOxが低減される。
EGR制御弁14bは、EGR管14aに取り付けられたリニア電磁弁で構成されており、そのバルブリフト量VLACTが、ECU2からのデューティ制御された駆動信号によってリニアに制御されることによって、EGRガス量が制御される。
また、EGR装置14にはEGRガスを冷却するためのEGR冷却装置15が設けられており、EGR冷却装置15は、バイパス通路15a、EGR通路切替弁15bおよびEGRクーラ15cを有している。バイパス通路15aは、EGR管14aのEGR制御弁14bよりも下流側に、EGR管14aをバイパスするように設けられており、EGR通路切替弁15bはバイパス通路15aの分岐部に取り付けられ、EGRクーラ15cはバイパス通路15aの途中に設けられている。EGR通路切替弁15bは、ECU2による制御によって、EGR管14aのEGR通路切替弁15bよりも下流側の部分を、EGR管14a側とバイパス通路15a側に選択的に切り替える。
以上により、EGR通路切替弁15bがバイパス通路15a側に切り替えられた場合には、EGRガスは、バイパス通路15aに通され、EGRクーラ15cで冷却された後、吸気管4に還流する。一方、逆側に切り替えられた場合には、EGRガスは、EGR管14aのみを介して吸気管4に還流する。
また、排気管5の過給機8よりも下流側には、上流側から順に、三元触媒16およびNOx触媒17(NOx捕捉材)が設けられている。三元触媒16は、ストイキ雰囲気下において、排ガス中のHCおよびCOを酸化するとともに、NOxを還元することによって、排ガスを浄化する。NOx触媒17は、排ガス中の酸素濃度が高い場合(酸化雰囲気)において、排ガス中のNOxを捕捉(吸収)するとともに、排ガス中の還元剤により、捕捉したNOxを還元することによって、排ガスを浄化する。NOx触媒17には、その温度(以下「NOx触媒温度」という)TLNCを検出するNOx触媒温度センサ36が設けられており、その検出信号はECU2に出力される。
さらに、排気管5の三元触媒16のすぐ上流側および下流側には、第1LAFセンサ33および第2のLAFセンサ34がそれぞれ設けられている。第1および第2のLAFセンサ33,34はそれぞれ、リッチ領域からリーン領域までの広範囲な空燃比の領域において排ガス中の酸素濃度VLAF1,VLAF2をリニアに検出する。ECU2は、第1LAFセンサ33で検出された酸素濃度VLAF1に基づいて、燃焼室3cで燃焼した実際のガスの空燃比を表す実空燃比A/FACTを算出する。ECU2にはさらに、アクセル開度センサ35(運転条件判定手段)から、アクセルペダル(図示せず)の操作量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が出力される。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。前述した各種センサ30〜36からの検出信号はそれぞれ、I/OインターフェースでA/D変換や整形がなされた後、CPUに入力される。
CPUは、これらの入力信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムなどに従って、エンジン3の運転状態を判別するとともに、判別した運転状態に応じて、燃料噴射量TOUTや吸入空気量QAの制御を含むエンジン3の制御を実行する。また、NOx触媒17に捕捉されたNOxの還元動作として、リッチスパイクの実行条件が成立しているか否かを判定し、その判定結果に応じてリッチスパイクを実行する。なお、リッチスパイクは、後述するように、燃料噴射量TOUTを増大させるとともに、吸入空気量QAを減少させることによって、実空燃比A/FACTを理論空燃比よりもリッチ化することにより行われる。また、本実施形態では、ECU2によって、NOx捕捉量算出手段、運転条件判定手段、NOx還元手段、NOx還元中断手段、負荷検出手段、および負荷判別手段が構成されている。
次に、図3を参照しながら、上記リッチスパイクの実行条件の判定処理について説明する。本処理は所定時間(例えば10msec)ごとに実行される。まず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、リッチタイマのタイマ値TMRICHが0であるか否かを判別する。このリッチタイマは、リッチスパイクの実行時間を計時するものであり、このタイマ値TMRICHは、エンジン3の始動時に0にリセットされるものである。
上記ステップ1の答がYESで、TMRICH=0のときには、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、マップ(図示せず)を検索することによって、NOx排出量QNOxを算出する(ステップ2)。要求トルクPMCMDは、エンジン3に要求されるトルクであり、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じ、マップ(図示せず)を検索することによって算出される。また、NOx排出量QNOxは、そのときにおける排ガス中のNOx量を推定したものであり、このマップでは、エンジン回転数NEが大きいほど、および要求トルクPMCMDが大きいほど、排ガスボリュームが大きいため、より大きな値に設定されている。
次いで、算出したNOx排出量QNOxをそのときのNOx排出量積算値S_QNOxに加算した値を、今回のNOx排出量積算値S_QNOx(NOx捕捉量)として更新する(ステップ3)。このNOx排出量積算値S_QNOxは、NOx触媒17に捕捉されたNOxの量(以下「NOx捕捉量」という)に相当する。
次に、アクセル開度APがほぼ0、すなわちアクセルペダルが全閉状態にあるか否かを判別する(ステップ4)。この答がYESのとき、すなわち、減速中またはアイドル中のときには、リッチスパイクの実行条件が成立していないと判定し、そのことを表すために、リッチスパイクフラグF_RICHを「0」にセットした(ステップ5)後、本処理を終了する。これに伴い、リッチスパイクは実行されずに、後述する通常用のエンジン制御が実行される。
一方、上記ステップ4の答がNOで、減速中およびアイドル中のいずれでもないときには、上記ステップ3で求めたNOx排出量積算値S_QNOxが、判定値S_QNOxREF(所定値)以上であるか否かを判別する(ステップ6)。
この判定値S_QNOxREFは、NOx触媒温度TLNCに応じ、図4に示すテーブルを検索することによって算出される。同テーブルでは、判定値S_QNOxREFは、TLNC≦第1所定値T1(例えば200℃)では第1判定値SQ1に設定され、T1<TLNC<第2所定値T2(例えば300℃)では、NOx触媒温度TLNCが高いほど、より大きな値にリニアに設定され、TLNC≧T2では第1判定値SQ1よりも大きな第2判定値SQ2に設定されている。これは、NOx触媒温度TLNCが低いほど、また、NOx捕捉量が多いほど、NOxの還元率が低下するので、これに対応させるためである。
上記ステップ6の答がNOで、S_QNOx<S_QNOxREFのときには、NOx捕捉量が比較的小さいため、リッチスパイクの実行条件が成立していないと判定し、前記ステップ5を実行する。
一方、前記ステップ6の答がYESで、S_QNOx≧S_QNOxREFのときには、リッチスパイクの実行条件が成立していると判定し、次のステップ7以降を実行する。
このステップ7では、NOx排出量積算値S_QNOxを0にリセットする。次いで、リッチタイマのタイマ値TMRICHを所定の実行時間TRO(例えば5sec)にセットし(ステップ8)、リッチスパイクの実行条件が成立していることを表すために、リッチスパイクフラグF_RICHを「1」にセットする(ステップ9)。これに伴い、後述するリッチスパイク用のエンジン制御が行われ、それにより、リッチスパイクが実行される。なお、上記の実行時間TROは、リッチスパイクによりNOxを還元するのに十分な時間に設定されている。
次に、リッチタイマのタイマ値TMRICHをダウンカウントし(ステップ10)、本処理を終了する。タイマ値TMRICHは、このステップ10によってのみ、ダウンカウントされる。
上記ステップ8の実行により前記ステップ1の答がNOとなり、その場合には、アクセル開度のなまし値APAVEを次式(1)によって算出する(ステップ11)。
APAVE←α・AP+(1−α)APAVE ……(1)
ここで、αは1.0未満の所定のなまし係数である。この式(1)から明らかなように、アクセル開度APとそのときのなまし値APAVEとの加重平均値を、今回のなまし値APAVEとして算出する。
次いで、算出されたなまし値APAVEがほぼ0であるか否かを判別する(ステップ12)。この答がNOのときには、前記ステップ9以降を実行し、リッチスパイクを継続するとともに、タイマ値TMRICHをダウンカウントする。
一方、このステップ12の答がYESで、上記のようにして算出されたなまし値APAVEがほぼ0のとき、すなわちリッチスパイクの実行中、アクセル開度APが全閉状態になるとともに、その状態が継続しているときには、エンジン3の減速またはアイドル運転が行われたとして、リッチスパイクの実行条件が成立していないと判定する。そして、リッチスパイクフラグF_RICHを「0」にセットした(ステップ13)後、本処理を終了する。
以上のように、AP≠0(ステップ4:NO)で減速中およびアイドル中でなく、かつS_QNOx≧S_QNOxREF(ステップ6:YES)のときに、リッチスパイクの実行条件が成立していると判定し、その実行が開始される(ステップ9)。また、このリッチスパイクの開始に伴って、リッチタイマのタイマ値TMRICHに実行時間TROがセットされる(ステップ8)。そして、この開始後、リッチスパイクの実行ごとにタイマ値TMRICHがダウンカウントされ(ステップ10)、これが0になったとき(ステップ1:YES)に、リッチスパイクが終了する(ステップ6:NO,ステップ5)。
一方、リッチスパイクの実行中に、アクセル開度APの全閉状態が継続し、エンジン3の減速またはアイドル運転が行われたと判定されたとき(ステップ12:YES)には、リッチスパイクが中断される(ステップ13)。そして、その後、アクセル開度APが増加し、減速中およびアイドル中でないと判定されると(ステップ12:NO)、リッチスパイクが再開される(ステップ9)。また、リッチスパイクの中断中、ステップ10は実行されないため、タイマ値TMRICHが中断開始時の値に保持される。これにより、リッチスパイクは、中断されても、その開始時からの実行時間のトータルが実行時間TROに達するまで実行される。
さらに、リッチスパイクの実行中に、シフト操作に伴ってアクセル開度APが一時的に全閉状態になった場合には、前記ステップ12の答がNOに維持されるので、リッチスパイクは中断されずに継続される。
次に、エンジン制御に含まれる燃料噴射量制御処理および吸入空気量制御処理についてそれぞれ説明する。これらの処理は、図3の処理で判定されたリッチスパイクの実行条件の成否に応じて行われる。
図5は、燃料噴射量制御処理を示しており、本処理はTDC信号の入力に同期して実行される。まず、ステップ21では、リッチスパイクフラグF_RICHが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、リッチスパイクの実行条件が成立していないときには、通常用の燃料噴射量TOUTNを、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、マップ(図示せず)を検索することによって算出する(ステップ22)。このマップでは、燃料噴射量TOUTNは、エンジン回転数NEが大きいほど、および要求トルクPMCMDが大きいほど、より大きな値に設定されている。次いで、算出した燃料噴射量TOUTNを燃料噴射量TOUTとして設定し(ステップ23)、本処理を終了する。
一方、上記ステップ21の答がYES(F_RICH=1)で、リッチスパイクの実行条件が成立しているときには、リッチスパイク用の燃料噴射量TOUTRICHを、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、マップ(図示せず)を検索することによって算出する(ステップ24)。このマップでは、燃料噴射量TOUTRICHは、エンジン回転数NEが大きいほど、および要求トルクPMCMDが大きいほど、より大きな値に設定されており、全体として、通常用の燃料噴射量TOUTNよりも大きな値に設定されている。
次いで、算出したリッチスパイク用の燃料噴射量TOUTRICHを燃料噴射量TOUTとして設定し(ステップ25)、本処理を終了する。これにより、燃料噴射量TOUTが通常時よりも増加させられる。
次に、図6を参照しながら、吸入空気量制御処理について説明する。本処理は、リッチスパイクの実行条件の成否に応じ、スロットル開度THを制御することによって吸入空気量QAを制御するものであり、所定時間(例えば10msec)ごとに実行される。
まず、ステップ31では、リッチスパイクフラグF_RICHが「1」であるか否かを判別する。この答がYESで、リッチスパイクの実行条件が成立しているときには、リッチスパイク用の目標開度THCMDを、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、マップ(図示せず)を検索することによって算出し(ステップ32)、本処理を終了する。
このマップでは、目標開度THCMDは、エンジン回転数NEが大きいほど、および要求トルクPMCMDが大きいほど、より大きな値に設定されるとともに、全開値THWOTよりも小さな値に設定されている。また、この目標開度THCMDの算出に伴い、スロットル弁開度THが、リッチスパイク用の目標開度THCMDになるように制御され、それにより、全開よりも閉弁側に制御される。
一方、上記ステップ31の答がNO(F_RICH=0)で、リッチスパイクの実行条件が成立していないときには、図3の処理で用いたリッチタイマのタイマ値TMRICHが0であるか否かを判別する(ステップ33)。この答がNOで、リッチスパイクが終了していないときには、そのまま本処理を終了する。一方、ステップ33の答がYES(TMRICH=0)で、リッチスパイクが終了しているときには、通常用の目標開度THCMDを全開値THWOTに設定し(ステップ34)、本処理を終了する。これにより、スロットル弁開度THが全開状態に制御される。
以上のように、本処理によれば、通常時には、基本的に、スロットル弁開度THが全開値THWOTに制御される(ステップ34)。また、リッチスパイク時には、スロットル弁開度THが全開値THWOTよりも小さなリッチスパイク用の値に制御され(ステップ32)、それにより、吸入空気量QAが通常時よりも低減される。さらに、リッチスパイクの中断中では、タイマ値TMRICHがタイムアップしていないため、ステップ33の答がNOとなり、スロットル弁開度THが、全開値THWOTに制御されず、それ以前のリッチスパイク用の値に保持される。
以上のような燃料噴射量制御および吸入空気量制御によって、通常時には、理論空燃比よりもリーンな空燃比で燃焼が行われる。一方、リッチスパイク時には、理論空燃比よりもリッチな空燃比で燃焼が行われる。これにより、排ガスが還元状態に制御され、NOx触媒17に捕捉されたNOxが還元される。なお、過給機8の過給圧、スワール装置13のスワールの強さ、およびEGR装置14のEGRガス量の制御についてもそれぞれ、通常用とリッチスパイク用に分けて実行される。なお、その説明については省略する。
以上のように、本実施形態によれば、NOxをNOx触媒17で捕捉するとともに、NOx排出量積算値S_QNOxが判定値S_QNOxREF以上になり、かつアクセル開度APが全閉状態にないとき、すなわち、エンジン3の減速中およびアイドル中でないときに、燃料噴射量TOUTの増加および吸入空気量QAの低減によってリッチスパイクを実行し、それにより、捕捉されたNOxが還元され、浄化される。また、これにより、減速中およびアイドル中でのリッチスパイクの実行を回避でき、したがって、エンジン3の出力などの変動が発生しやすい状態およびNOxの還元反応の効率が低い状態でのリッチスパイクの実行を回避することができる。
さらに、リッチスパイクの実行中にアクセル開度APの全閉状態が継続したとき、すなわち、エンジン3の減速またはアイドル運転が行われたときに、リッチスパイクが中断される。そして、アクセル開度APが全閉状態から増加し、減速およびアイドル以外のエンジン3の運転が行われるのと同時に、リッチスパイクが再開される。また、このリッチスパイクの中断を、アクセル開度APの全閉状態が継続したことを条件として行うので、アクセル開度APが一時的に全閉状態になり、短時間で開→全閉→開に変化する場合でも、リッチスパイクを中断せずに、タイマ値TMRICHにセットされた実行時間TRO、継続することができる。以上により、NOxを十分に還元でき、したがって、排ガス特性を向上させることができる。さらに、このようにアクセル開度APが一時的に全閉状態になった場合でも、その間、燃料噴射量TOUTおよび吸入空気量QAがリッチスパイク用に増減された状態に保持されるので、これらの短時間における増減に伴ってエンジン3のトルクが変動したりNOxを十分に還元できなくなったりするのを回避でき、したがって、良好なドライバビリティーの確保および排ガス特性のさらなる向上を達成することができる。
また、リッチスパイクの中断中、吸入空気量QAを中断前の値に保持するので、この中断後の再開時に、エンジン3のトルクの急激な増化を防止でき、したがって、さらに良好なドライバビリティーを確保することができる。さらに、同じ理由により、この再開時に、NOx還元剤として用いられる燃料量を十分に確保できるので、NOxをさらに十分に還元でき、したがって、排ガス特性をより一層向上させることができる。
次に、図7を参照しながら、本発明の第2実施形態によるリッチスパイクの実行条件の判定処理について説明する。同図において、第1実施形態による図3の処理と同じ実行内容の部分については、同じステップ番号を付している。また、同図から明らかように、前記ステップ11および12に代えて、ステップ41〜43の処理を行う点のみが異なっているので、以下、この点を中心として説明する。
このステップ41では、前記ステップ1の答がNOでタイマ値TMRICHが0でないときに、アクセル開度APがほぼ0で、全閉状態であるか否かを判別する。この答がNOのとき、すなわち、減速中およびアイドル中でないときには、ダウンカウント式の全閉タイマのタイマ値TMDLYを所定時間TDO(例えば0.5sec)にセットし(ステップ42)、前記ステップ9以降を実行する。
一方、上記ステップ41の答がYESで、アクセル開度APが全閉状態にあるときには、上記タイマ値TMDLYが0であるか否かを判別する(ステップ43)。この答がNOのときには、前記ステップ9以降を実行する。一方、このステップ43の答がYESのとき、すなわち、アクセル開度APの全閉状態が所定時間TDO、継続したときには、エンジン3の減速またはアイドル運転が行われたと判定する。次いで、前記ステップ13を実行する。
以上のように、本実施形態によれば、リッチスパイクの実行中にアクセル開度APの全閉状態が所定時間TDO、継続したことを条件として、リッチスパイクを中断するので、アクセル開度APが一時的に全閉状態になっても、リッチスパイクを中断せずに継続することができる。したがって、第1実施形態の効果を同様に得ることができる。
次に、図8および図9を参照しながら、本発明の第3実施形態によるリッチスパイクの実行条件の判定処理および吸入空気量制御処理について、それぞれ説明する。図8および図9において、第1実施形態による図3および図6の処理とそれぞれ同じ実行内容の部分については、同じステップ番号を付している。以下、第1実施形態と異なる実行内容の部分を中心として説明する。
図8に示す実行条件の判定処理では、前記ステップ1〜3を実行した後、ステップ51において、エンジン3の負荷が所定の高負荷領域にあるか否かを判別する。この判別は、エンジン回転数NEおよび燃料噴射量TOUTに応じ、図10に示す負荷領域マップに基づいて行われる。この負荷領域マップでは、高負荷領域は、エンジン回転数NEが低〜高で、かつ燃料噴射量TOUTが高い領域に設定されている。
上記ステップ51の答がYESで、エンジン3の負荷が高負荷領域にあるときには、リッチスパイクの実行条件が成立していないと判定し、前記ステップ5を実行する。一方、ステップ51の答がNOで、エンジン3の負荷が高負荷領域にないときには、前記ステップ4以降を実行する。
また、前記ステップ1の答がNOで、リッチスパイクの開始時からの中断時間を除く実行時間のトータルが実行時間TROに達していないときには、前記ステップ51と同様、エンジン回転数NEおよび燃料噴射量TOUTに応じ、図10に示す負荷領域マップに基づいて、エンジン3の負荷が所定の高負荷領域にあるか否かを判別する(ステップ52)。この答がNOで、エンジン3の負荷が高負荷領域にないときには、前記ステップ11以降を実行する一方、YESで、高負荷領域にあるときには、リッチスパイクの実行条件が成立していないと判定し、前記ステップ13を実行する。
以上のように、AP≠0(ステップ4:NO)、S_QNOx≧S_QNOxREF(ステップ6:YES)、かつ、エンジン3の負荷が高負荷領域になく、高負荷運転が行われていないとき(ステップ51:NO)には、リッチスパイクの実行条件が成立していると判定し、その実行が開始される(ステップ9)。このように、高負荷運転のときにリッチスパイクを禁止するので、高負荷運転中のリッチスパイクの実行によりエンジン3の温度が非常に高くなったり振動および騒音が増大したりするのを、回避することができる。
また、このリッチスパイクの実行中に、高負荷運転に移行したとき(ステップ52:YES)には、リッチスパイクが中断される(ステップ13)。そして、その後、高負荷運転が終了すると(ステップ52:NO)、リッチスパイクが再開される(ステップ9)。また、この場合の中断中にも、タイマ値TMRICHが中断開始時の値に保持されるので、リッチスパイクは、その開始時からの実行時間のトータルが実行時間TROに達するまで実行される。
図9に示す吸入空気量制御処理では、まず、前記ステップ31〜33を実行し、ステップ33の答がNOで、リッチスパイクが終了していないときには、前記ステップ51と同様にして、エンジン3の負荷が高負荷領域にあるか否かを判別する(ステップ61)。この答がNOのときには、そのまま本処理を終了する一方、YESで、エンジン3の負荷が高負荷領域にあるときには、前記ステップ34を実行し、スロットル弁開度THを全開値THWOTに制御する。
以上のように、高負荷運転への移行に伴って、リッチスパイクが中断されたとき(ステップ61:YES)には、その中断中、スロットル弁開度THは、第1実施形態と異なり、それ以前のリッチスパイク用の値に保持されず、全開値THWOTに制御される(ステップ34)。
以上のように、本実施形態によれば、リッチスパイクの実行中にエンジン3の負荷が高負荷領域に入ったときに、リッチスパイクを中断するので、高負荷運転時にリッチスパイクを行うことによりエンジン3の温度が非常に高くなったり騒音および振動が増大したりするのを、回避することができる。また、そのような高負荷運転への移行に伴うリッチスパイクの中断中、吸入空気量QAの低減を中断するので、高負荷運転用の燃料噴射量TOUTに見合った吸入空気量QAを確保できる。したがって、内燃機関の適正なトルクを確保できるとともに、PMの量の増大が防止されることによって、良好な排ガス特性を確保することができる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、前述した実行時間TROを固定値に設定したが、これを可変にしてもよい。実施形態では、判定値S_QNOxREFがNOx触媒温度TLNCに応じて設定されるので、実行時間TROを判定値S_QNOxREFに応じて設定することによって、そのときのNOx捕捉量などに応じてリッチスパイクを過不足なく実行でき、したがって、捕捉されたNOxをさらに十分に還元することができるとともに、より良好な燃費を得ることができる。
また、実施形態では、リッチスパイクの終了を、実行時間TROによって規定したが、これに代えて、次のようにして規定してもよい。すなわち、リッチスパイク中にNOx触媒17に還元剤として供給される未燃燃料の量(以下「還元剤供給量」という)REDQを、次式(2)によって算出する。
REDQ=Σ{(14.7−A/FACT)・SV} ……(2)
ここで、SVは排ガスボリュームである。この(14.7−A/FACT)・SVは、NOx触媒17に今回時に供給された還元剤の量に相当するので、これをリッチスパイクの開始時から積算することによって、今回時までにNOx触媒17に供給された還元剤の量を算出することができる。
そして、算出した還元剤供給量REDQを判定値REDQREFと比較し、REDQ≧REDQREFが成立したときに、リッチスパイクを終了するようにしてもよい。これにより、還元剤がNOx触媒17に過不足なく供給された時点でリッチスパイクを終了させることによって、捕捉されたNOxをさらに十分に還元することができるとともに、より良好な燃費を得ることができる。
さらに、実施形態では、エンジン3が所定の運転条件、すなわち減速中およびアイドル中であるか否かを、アクセル開度APによって判定したが、この判定するためのパラメータとして、アクセル開度APに加えて、エンジン回転数NEなどを用いてもよいことは勿論である。また、第3実施形態では、エンジン3の負荷を表すパラメータとして、燃料噴射量TOUTを用いているが、これに代えて、またはこれとともに、アクセル開度APなどを用いてもよいことは勿論である。
さらに、第3実施形態では、エンジン3の負荷が高負荷領域にあるか否かを判別するためのマップとして、リッチスパイク中および通常運転中のいずれの場合にも、図10の負荷領域マップを共通に用いているが、これを次のように別個に用意してもよい。すなわち、前述したように、リッチスパイク用の燃料噴射量TOUTRICHは、通常用の燃料噴射量TOUTNよりも大きな値に設定されているため、このような設定に合うように、負荷領域マップとして、リッチスパイク用のものと、通常用のものを別個に用意してもよい。この場合、リッチスパイクの実行禁止および中断を、通常用およびリッチスパイク用の燃料噴射量TOUTN,TOUTRICHに応じて、きめ細かく適切に行うことができる。
また、本発明は、ディーゼルエンジンに限らず、リーンバーンエンジンなどのガソリンエンジンにも適用することができる。さらに、本発明は、クランク軸が鉛直方向に配置された船外機などのような船舶推進機用エンジンを含む、様々な産業用の内燃機関に適用できることはもちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。