JP4459426B2 - 立毛皮革様シートおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、良好な風合いを有する立毛皮革様シートおよびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、天然皮革のスエードまたはヌバック様のヌメリ感のある滑らかな表面タッチと、腰の取れた適度な柔軟性を有し、風合いに優れる、高級感のある立毛皮革様シートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
立毛を有する皮革様シート(立毛皮革様シート)では、表面にタッチしたときの触感が皮革様シートの風合いを大きく左右する。立毛皮革様シートにおける表面タッチの改良に関しては、従来から多くの提案がなされている。そのような従来技術としては、例えば、▲1▼立毛皮革様シートに柔軟剤を付与するウエットタッチ化法、▲2▼立毛皮革様シートにシリコーン樹脂を付与するドライタッチ化法が挙げられる。これら▲1▼および▲2▼の方法は、いずれも、立毛皮革様シートの表面タッチの向上法として、工業的にも近年広く採用されている。
しかしながら、前記▲1▼および▲2▼の従来法では、表面タッチはある程度向上するが未だ十分ではない。かかる点から、天然皮革のスエードやヌバック様のヌメリ感のある滑らかな表面タッチを有し、しかも腰が取れていて柔軟性に優れる、高級感のある風合いを有する立毛皮革様シートは得られていない。
【0003】
また、皮革様シート以外の分野では、布帛に天然のシルクプロテイン等を付与して、シルク様のドライなタッチを有する布帛を製造することが提案されている(特開平5−78979号公報、特開平6−316871号公報等)。
そこで、本発明者らは、この方法を立毛皮革様シートに応用する実験を行った。しかしながら、シルクプロテインの付与量を多くすると立毛皮革様シートにシルク様の風合いは付与されたが、天然皮革のスエードまたはヌバック様のヌメリ感があり、しかも腰が取れていて柔軟性に優れる、高級感のある表面タッチを有する立毛皮革様シートを得ることはできなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、天然皮革のスエードまたはヌバック様の高級感のある風合い、すなわちヌメリ感のある滑らか表面タッチと、腰が取れていて柔軟性を有し、風合に優れる立毛皮革様シートおよびその製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ねてきた。その結果、極細繊維よりなる絡合不織布およびその内部に含有された弾性重合体からなり且つ表面に極細繊維よりなる立毛を形成してなる立毛皮革様シートに、シルクプロテイン系物質と柔軟剤を含有する液を含浸させて、立毛皮革様シートの立毛部および弾性重合体を含有する絡合不織布の厚み全体にわたって含浸付与すると、天然皮革のスエードまたはヌバック様のヌメリ感のある滑らかなタッチを有し、しかも腰が取れていて柔軟性に優れる高級感のある立毛皮革様シートが得られること、そして前記した特性が長期にわたって維持されることを見出した。
【0006】
そして、本発明者らは、立毛皮革様シートに含浸付与するシルクプロテイン系物質としては、水溶化したシルクプロテインおよび/またはシルクプロテインの水溶性部分加水分解物が好ましく用いられることを見出した。
さらに、本発明者らは、柔軟剤としては、布帛に対して固形分で5質量%を均一に付与したときに「こし」、「ぬめり」、「ふくらみ」からなる総合的に判断される布帛の「風合い」の評価において、テスター50人中30人以上が柔軟剤の付与前後の布帛について確認できる柔軟化効果を与える柔軟剤が好ましく用いられることを見出した。ここで、「こし」とは、「触って得られる可撓性、反撥力、弾性のある充実した感覚、例えば弾力性のある繊維や糸で構成されており、また適度に高い糸密度の布の持つ感覚」であり、「ぬめり」とは、「細くて柔らかい羊毛の繊維からもたらされる触っての滑らかさ、しなやかさ、柔らかさの混じった感覚、例えばカシミヤから得られる感覚で、専門語では、毛質の良さからくる柔らかさ」であり、「ふくらみ」とは、「嵩高でよくこなれたふくよかな布の感覚で、例えば圧縮に対して弾力性があり、暖かみを伴う厚み感」で定義される。
【0007】
また、本発明者らは、立毛皮革様シートに含浸付与するシルクプロテイン系物質と柔軟剤の量、および両者の質量比を特定の範囲にすることで、本発明の目的がより好適に達成できることを見出した。
さらに、本発明者らは、立毛皮革様シートとしては、極細繊維よりなる絡合不織布とその内部に含有された弾性重合体からなり且つ表面に極細繊維よりなる立毛を有する立毛皮革様シートであればいずれも使用できるが、特に混合紡糸法または複合紡糸法により得られる海島構造繊維から海成分を除去して得られた極細繊維製の絡合不織布からなり、且つ極細繊維と弾性重合体とが実質的に接着していない立毛皮革様シートが好適に用いられることを見出した。
【0008】
また、本発明者らは、上記した立毛皮革様シートは、立毛皮革様シートを、シルクプロテイン系物質および柔軟剤を含有する液中に浸漬することによって、円滑に製造されることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) 極細繊維よりなる絡合不織布およびその内部に含有された弾性重合体からなり且つ片面または両面に極細繊維よりなる立毛を形成してなる立毛皮革様シートであって、シルクプロテインおよびシルクプロテイン部分加水分解物から選ばれる少なくとも1種のシルクプロテイン系物質と柔軟剤を、立毛皮革様シートの立毛部および弾性重合体を含有する絡合不織布の厚み全体にわたって含浸付与してなることを特徴とする立毛皮革様シートである。
【0010】
そして、本発明は、
(2) シルクプロテイン系物質が、水溶化した絹フィブロインおよび絹フィブロインの水溶性部分加水分解物から選ばれる少なくとも1種である前記(1)の立毛皮革様シート;
(3) 立毛皮革様シートへのシルクプロテイン系物質:柔軟剤の含浸付与量の質量比が、20:80〜70:30である前記(1)または(2)の立毛皮革様シート;
(4) シルクプロテイン系物質および柔軟剤を含浸付与する前の立毛皮革様シートの目付け(A)(g/m2)に基づいて、シルクプロテイン系物質の含浸付与量が0.0005A〜0.025A(g/m2)で、柔軟剤の含浸付与量が0.001A〜0.1A(g/m2)である前記(1)〜(3)のいずれかの立毛皮革様シート;および、
(5) 極細繊維が、混合紡糸法または複合紡糸法により得られる海島構造繊維から海成分を除去して得られた極細繊維であり、立毛皮革様シート内で極細繊維と弾性重合体とが実質的に接着していない前記(1)〜(4)のいずれかの立毛皮革様シート;
を好ましい態様として包含する。
【0011】
さらに、本発明は、
(6) 極細繊維よりなる絡合不織布およびその内部に含有された弾性重合体からなり且つ片面または両面に極細繊維よりなる立毛を形成してなる立毛皮革様シートに、シルクプロテインおよびシルクプロテイン部分加水分解物から選ばれる少なくとも1種のシルクプロテイン系物質と柔軟剤を含有する液をその内部にまで含浸させることを特徴とする、表面および内部にシルクプロテイン系物質および柔軟剤を含浸付与してなる立毛皮革様シートの製造方法である。
そして、本発明は、
(7) 立毛皮革様シートをシルクプロテイン系物質と柔軟剤を含有する液中に浸漬することからなる前記(6)の製造方法を好ましい態様として包含する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の立毛皮革様シートは、極細繊維よりなる絡合不織布およびその内部に含有された弾性重合体からなり且つ片面または両面に極細繊維よりなる立毛を形成してなる立毛皮革様シートをベースとする。
【0013】
本発明の立毛皮革様シートでは、立毛皮革様シートを構成している極細繊維の太さは特に限定されないが、一般的には、地組織部(絡合不織布部分)および立毛部の両方が、0.0001〜0.5デシテックス、特に0.0001〜0.1デシテックスの極細繊維から形成されていることが好ましい。極細繊維の太さ、特に立毛部を形成している極細繊維の太さが、0.5デシテックスを超えると、表面タッチが天然皮革のスエードまたはヌバック様のものになりにくくなる。一方、極細繊維の太さが0.0001デシテックス未満であると、染着性が低下して、色調が劣ったものになり易い。
【0014】
極細繊維を形成するポリマーは、繊維形成性のポリマーであればいずれでもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香環を有するポリエステル類;ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12、ナイロン−610、またはそれらの共重合体などのポリアミド類;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類などを挙げることができる。そのうちでも、極細繊維は、ポリエステル類および/またはポリアミド類、特にポリアミド類から形成されていることが、強度、風合い、染色性どの点から好ましい。
【0015】
立毛皮革様シートでは、前記した極細繊維が互いに絡み合って絡合不織布を形成しており、その絡合不織布の繊維空隙内に弾性重合体が含有されている。
絡合不織布内に含有させる弾性重合体としては、公知の高分子弾性体であればいずれも使用でき、例えば、天然ゴム、SBR、NBR、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、クロルスルホン化ポリエチレン、ポリイソブチレン、イソブチレンイソプレンゴム、アクリルゴム、ポリウレタンエラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、塩素系熱可塑性エラストマーなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、立毛皮革様シートの風合い、染色性、耐摩耗性、引張強度などの力学的特性などの点から、弾性重合体としてはポリウレタンエラストマー(弾性ポリウレタン樹脂)が、好ましく用いられる。
【0016】
ポリウレタンエラストマーとしては、弾性を有するポリウレタン樹脂のいずれもが使用できるが、特に数平均分子量が500〜5000の高分子ジオールをソフトセグメント成分とし、有機ジイソシアネートをハードセグメント成分とし、それらの成分と共に低分子鎖伸長剤を反応させて得られるセグメント化ポリウレタンが好ましく用いられる。
【0017】
セグメント化ポリウレタンの製造に用いる前記した高分子ジオールとしては、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分との反応により得られるポリエステルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオールなどを挙げることができ、これらの高分子ジオールの1種または2種以上を用いることができる。セグメント化ポリウレタンの製造に用いる高分子ジオールの数平均分子量が500未満であると、ソフトセグメントが短すぎて、ポリウレタンが柔軟性に欠けたものとなり、天然皮革様の立毛皮革様シートが得られにくくなることがある。一方、該高分子ジオールの数平均分子量が5000を超えると、ポリウレタン中におけるウレタン結合の割合が相対的に減少することによって、耐久性、耐熱性および耐加水分解性などが低下し、実用的な物性を有する立毛皮革様シートが得られにくくなる。
【0018】
セグメント化ポリウレタンの製造に用いる有機ジイソシアネートとしては、ポリウレタンの製造に従来から用いられている有機ジイソシアネートのいずれもが使用でき、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートなどを挙げることができる。前記した有機ジイソシアネートの1種または2種以上を用いることができる。
【0019】
セグメント化ポリウレタンの製造に用いる低分子鎖伸長剤としては、ポリウレタンの製造に従来から用いられている低分子鎖伸長剤、特に分子量が400以下の低分子鎖伸長剤のいずれもが使用でき、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、N−メチルジエタノールアミン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルメタン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミンなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0020】
セグメント化ポリウレタンの製造に当たっては、[全イソシアネート基]/[水酸基、アミノ基などのイソシアネート基と反応する全官能基]の当量比が、0.9〜1.1の範囲になるようにして、上記した高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび低分子鎖伸長剤を反応させることが、引裂き強力の高い立毛皮革様シートが得られる点から好ましい。
また、ポリウレタンの耐溶剤性、耐熱性、耐熱水性などを向上させる目的で、必要に応じて、トリメチロールプロパンなどの三官能以上のポリオールや三官能以上のアミン等を反応させてポリウレタン中に架橋構造を持たせてもよい。
【0021】
本発明の立毛皮革様シートにおいては、天然皮革様の柔軟な風合いが得られる点から、絡合不織布等を構成する繊維成分:弾性重合体の質量比が、30:70〜95:5の範囲内であることが好ましく、40:60〜85:15の範囲内であることがより好ましい。繊維成分の割合が立毛皮革様シートの質量に基づいて30質量%未満であると、ゴムライクな風合いとなり易い。一方、繊維成分の割合が立毛皮革様シートの質量に基づいて95質量%を超えると、極細繊維の脱落、耐ピリング性の低下などを生じ易くなる。
【0022】
立毛皮革様シートの片面または両面における立毛は、立毛皮革様シートの片方または両方の表面を、サンドペーパーなどによるバフィングや針布起毛などにより起毛処理して、絡合不織布を構成している極細繊維の一部を立毛として起毛させることによって形成される。
立毛部の立毛長や立毛密度は制限されず、立毛皮革様シートの用途などに応じて調節することができるが、一般的には、立毛長が0.05〜2mm、立毛密度は10000本/cm2以上であることが好ましい。
【0023】
本発明の立毛皮革様シートでは、極細繊維と弾性重合体とが実質的に接着していないことが好ましい。極細繊維と弾性重合体とが接着していないことにより、極細繊維が弾性重合体によって拘束されずに動きの自由度が増して、天然皮革様の柔軟な風合いを得ることができる。
【0024】
ベースをなす立毛皮革様シートの製造方法は特に制限されず、従来から既知の方法を使用して製造することができ、例えば、以下の(i)〜(iii)の方法を挙げることができる。
(i)溶解性または分解性の異なる2種類以上の繊維形成性のポリマーを混合紡糸法、海島型複合紡糸法、分割型複合紡糸法などにより紡糸して得られる極細繊維発生型繊維を用いて絡合不織布を製造し、それに弾性重合体を含浸して凝固した後に、極細繊維発生型繊維中の少なくとも1つのポリマー成分を除去して極細繊維化するか、または極細繊維発生型繊維を分割して極細繊維化し、次いで起毛処理するする方法。
(ii)前記極細繊維発生型繊維を用いて絡合不織布を製造したのち、該極細繊維発生型繊維の少なくとも1つのポリマー成分を除去するか又は該極細繊維発生型繊維を分割して極細繊維とし、さらに弾性重合体を含浸・凝固し、次いで起毛処理する方法。
(iii)メルトブロー法などによって直接得られた極細繊維を用いて絡合不織布を製造した後に弾性重合体を含浸・凝固し、次いで起毛処理する方法。
【0025】
上記(i)または(ii)の方法で用いる極細繊維発生型繊維において、極細繊維として残留させる繊維形成性ポリマー成分の例としては、上記のように、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香環を有するポリエステル類;ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12、ナイロン−610、またはそれらの共重合体などのポリアミド類;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類などを挙げることができる。また、上記極細繊維発生型繊維において、溶解除去または分解除去されるポリマー成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリル系モノマー共重合体、スチレン−エチレン共重合体などを挙げることができる。
また、上記(iii)の方法で用いる極細繊維は、上記したようなポリエステル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類などを用いて製造することができる。
【0026】
上記(i)の方法によって立毛を有する立毛皮革様シートを製造する場合は、より具体的には例えば、以下の方法で製造することができる。
(a) 極細繊維発生型繊維に延伸、捲縮、カットなどの処理を施して綿様の形態にする。それをカードで開繊した後、ランダムウェバーまたはクロスラップウェバーによりウェブとし、必要に応じて所望の目付けになるように該ウェブを積層する。ウェブの目付けは立毛皮革様シートの用途などにより異なるが、一般的には100〜3000g/m2であることが好ましい。
(b) 次いで、例えば、ニードルパンチング法、高圧水流法などの公知の手段を用いて絡合処理を行って絡合不織布を製造する。ニードルパンチング時のパンチ数は、ニードルの形状やウェブの厚さなどにより異なり得るが、一般的には200〜2500パンチ/cm2であることが好ましい。また、立毛皮革様シートの伸び強力の調整、目付けや厚みの調整、その他の目的により、ウェブ形成後から絡合処理完了までのいずれかの段階で、織編物、異なる繊維の不織布、フィルムなどのシート状物を、絡合不織布に積層して一体化してもよい。
【0027】
(c) 続いて、上記(b)で得られた絡合不織布に弾性重合体を含有させる。弾性重合体の付与方法は特に制限されないが、風合いのバランスの点から弾性重合体の溶液または分散液を絡合不織布に含浸した後、湿式法または乾式法により凝固(固化)する方法が好ましく採用される。弾性重合体の溶液または分散液には、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤、凝固性調節剤、燃焼性調節剤などを添加することができる。
(d) 次に、弾性重合体を含有させた絡合不織布を、極細繊維発生型繊維の1成分または複数成分に対して選択的に溶解剤または分解剤として作用する液体で処理して、極細繊維発生型繊維を極細繊維束に変性して、極細繊維束よりなる絡合不織布内に弾性重合体が含有されたシート状物とする。
(e) 次いで、上記(d)で得られたシート状物を、必要に応じて厚み方向に複数枚に切断(スライス)した後、その片方または両方の表面を、サンドペーパー等によるバッフィング、針布起毛などにより起毛処理して立毛を形成させる。
【0028】
上記(a)〜(e)の一連の工程からなる上記(i)の方法による場合、特に極細繊維発生型繊維として海島構造繊維を用いて島成分を極細繊維として残留させる場合は、極細繊維(束)と弾性重合体とが実質的に接着していない構造となり、極細繊維束が弾性重合体に拘束されていないことにより構造内での動きの自由度が増すことから、天然皮革様の柔軟性に優れる立毛皮革様シートを得ることができる。
【0029】
既に極細化された繊維を用いて絡合不織布を製造し、それに弾性重合体を含有させる上記(iii)の方法による場合も、絡合不織布の製造、絡合不織布への弾性重合体の含浸、起毛処理を、上記(i)の方法におけるのと同様にして行うことができる。上記(ii)または(iii)の方法において、極細繊維製の絡合不織布に弾性重合体を含浸して凝固させる前に水溶性樹脂を絡合不織布に予め付与しておき、弾性重合体の含浸・凝固後に水溶性樹脂を水で溶解除去するようにすると、極細繊維と弾性重合体との接着が防止または低減されて極細繊維の動きの自由度が増して、柔軟性の向上した立毛皮革様シートを得ることができる。
また、上記(i)の方法においても、絡合不織布に弾性重合体を含浸して凝固させる前に水溶性樹脂を絡合不織布に付与しておき、弾性重合体の含浸・凝固後に該水溶性樹脂を水で溶解除去する方法を用いてもよく、これにより得られる立毛皮革様シートの柔軟性が一層向上する。
【0030】
立毛皮革様シートの厚さは、用途などに応じて任意に選択できるが、一般的には、立毛部をも含めて0.2〜4mm程度であることが風合い、強度などの点から好ましく、0.3〜2mm程度であることがより好ましい。
【0031】
また、立毛皮革様シートの目付けは、柔軟な風合い、適度な腰感と反発性を得るために、50〜1000g/m2であることが好ましく、100〜800g/m2であることがより好ましい。
【0032】
立毛皮革様シートは、必要に応じて染色される。染料や染色機器の種類、染色条件などは特に限定されず、極細繊維の種類、弾性重合体の種類、立毛皮革様シートの用途などに応じて公知の技術より適宜選択することができる。例えば、絡合不織布を構成する極細繊維がナイロン繊維を主体とするものでは、酸性染料を用いて、サーキュラー染色機中で、水温90℃以上で1〜2時間染色処理を行うことにより染色できる。
また、立毛を有する立毛皮革様シートに対して一般的に行われている立毛状態を整えるための整毛処理などの処理を必要に応じて組み合わせて行うことができる。
【0033】
本発明の立毛皮革様シートは、上記したような立毛皮革様シートにおいて、シルクプロテイン系物質および柔軟剤を、立毛皮革様シートの立毛部および弾性重合体を含有する絡合不織布の厚み全体にわたって含浸付与したものである。
それによって、本発明の立毛皮革様シートは、天然皮革のスエードまたはヌバック様のヌメリ感があり、しかも腰が取れていて柔軟性のある、良好な表面タッチを有する、高級感のある風合いを有している。そして、シルクプロテイン系物質と柔軟剤が、立毛部だけでなく、弾性重合体を含有する絡合不織布の厚み全体にわたって含浸付与されていることにより、シルクプロテイン系物質および柔軟剤が立毛皮革様シートから脱落などにより失われにくく、上記した高級感のある風合が長期間維持される。
【0034】
シルクプロテイン系物質および柔軟剤を、立毛皮革様シートに含浸付与する方法は特に制限されず、シルクプロテイン系物質および柔軟剤を立毛皮革様シートの立毛部および絡合不織布全体に含浸付与し得る方法であればいずれも採用でき、例えば、立毛皮革様シートをシルクプロテイン系物質および柔軟剤を含有する液中に浸漬する方法、シルクプロテイン系物質および柔軟剤を含有する液などの立毛皮革様シートに上面から施した後に圧縮してその内部にまで浸透させて付与する方法などを挙げることができる。そのうちでも、シルクプロテイン系物質および柔軟剤を含有する液中に浸漬する方法が、操作が簡単であり、しかも立毛皮革様シート全体に確実に含浸付与し得る点から好ましく採用される。
【0035】
立毛皮革様シートに含浸付与するシルクプロテイン系物質としては、絹に由来する水溶性または非水溶性のプロテインまたはその部分加水分解物のいずれも使用できる。具体例としては、水溶化した絹フィブロイン、絹フィブロインの水溶性部分加水分解物、絹の繊維を機械的に微粉化した非水溶性のシルクパウダーなどを挙げることができる。しかし、シルクパウダーの場合は、含浸付与量を多くすると、シルクの白い微粉が立毛皮革様シートに含浸・付着した状態が目立つようになって、立毛皮革様シートが白化して見える傾向がある。そのため、シルクプロテイン系物質としては、水溶化した絹フィブロインおよび/または絹フィブロインの水溶性部分加水分解物が好ましく用いられ、絹フィブロインの水溶性部分加水分解物がより好ましく用いられる。
水溶化した絹フィブロインとしては、例えば、絹フィブロインを塩化カルシウム、硝酸カルシウム、臭化リチウム、ジクロル酢酸などの水溶液に溶解したものを挙げることができる。また、絹フィブロインの水溶性部分加水分解物としては、例えば、上記の絹フィブロインを酵素(プロテアーゼ)で部分的に加水分解したものや、水酸化ナトリウムなどのアルカリまたは硫酸などの酸を用いて部分的に加水分解した後、中和したものを挙げることができる。特に、絹フィブロインの水溶性部分加水分解物としては、平均分子量が100〜10,000、好ましくは平均分子量が500〜3,000の範囲のものがタッチや作業性の点から好適に用いられる。
【0036】
立毛皮革様シートに含浸付与する柔軟剤としては、立毛皮革様シートを構成する極細繊維や弾性重合体との親和性、柔軟化効果などを考慮して、一般に繊維関連分野で用いられている種々の柔軟剤のうちから適当なものを選択して使用することができる。本発明で用い得る柔軟剤としては、例えば、アルキルシリコーン系、アミノ変性シリコーン系、アミド変性シリコーン系、エポキシ変性シリコーン系などの各種シリコーン系柔軟剤や、ポリアミド系、脂肪酸アミド系などのアミド系柔軟剤、多価アルコール系柔軟剤などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、本発明では、シリコーン系柔軟剤および/またはポリアミド系柔軟剤、特にポリアミド系柔軟剤が、付与量に対する柔軟化効果や作業性などの点から好ましく用いられる。そのような柔軟剤の好ましい具体例としては、大日本インキ化学工業社製「ディックシリコーンソフナー120」などのアルキルシリコーン系柔軟剤、日華化学社製「ニッカシリコンAM−204」などのアミノ変性シリコーン系柔軟剤、洛東化成社製「ラクセットK−150」などのポリアミド系柔軟剤を挙げることができる。
【0037】
立毛皮革様シートへのシルクプロテイン系物質:柔軟剤の含浸付与量の質量比は、風合いや表面タッチなどのバランスの点から、20:80〜70:30の範囲内であることが好ましく、30:70〜60:40の範囲内であることがより好ましい。シルクプロテイン系物質と柔軟剤の合計の含浸付与量に基づいてシルクプロテイン系物質の含浸付与量が10質量%未満であると、天然皮革のスエードやヌバック様のヌメリ感や滑らかさのある風合いが得られにくくなり、柔軟剤処理特有のべたつきの強い触感になり易い。一方、シルクプロテイン系物質と柔軟剤の合計の含浸付与量に基づいてシルクプロテイン系物質の含浸付与量が50質量%を超えると、ドライなタッチとなり、天然皮革のスエードやヌバック様のヌメリ感や滑らかさのある風合いが得られにくくなる。
【0038】
また、立毛皮革様シートへのシルクプロテイン系物質および柔軟剤の含浸付与量は、シルクプロテイン系物質や柔軟剤の種類、立毛皮革様シートの用途などに応じて調整することができる。一般的には、効果のバランス、生産性、立毛皮革様シートの力学的特性などの点から、シルクプロテイン系物質および柔軟剤を含浸付与する前の立毛皮革様シートの目付け(A)(g/m2)に基づいて、シルクプロテイン系物質の含浸付与量が0.05〜2.5%[0.0005A〜0.025A(g/m2)]で、柔軟剤の含浸付与量が0.1〜10%[0.001A〜0.10A(g/m2)]であることが好ましく、シルクプロテイン系物質の含浸付与量が0.08〜1.5%[0.0008A〜0.015A(g/m2)]で、柔軟剤の含浸付与量が0.13〜8%[0.0013A〜0.08A(g/m2)]であることがより好ましい。
【0039】
立毛皮革様シートに付与する際のシルクプロテイン系物質および柔軟剤の形態および立毛皮革様シートへの付与方法としては、シルクプロテイン系物質および柔軟剤の両方を含有する混合物を塗布する方法、或いはシルクプロテイン系物質を含有する液と柔軟剤を含有する液をそれぞれ調製しておき、これらの液を同時または逐次に塗布する方法が挙げられる。そのうちでも、シルクプロテイン系物質と柔軟剤の両方を含有する混合物を付与する方法が工程の簡略化などの点から好ましい。その際の混合物の形態は、溶液、分散液、ペースト状物などのいずれでもよいが、溶液または分散液状であることが好ましい。
【0040】
上記により得られる本発明の立毛皮革様シートは、表面タッチと柔軟性に優れる、高級感のある風合いを活かして、例えば、衣料、手袋、クッションシート、鞄、履物、車両用内装材などのような人肌が触れる各種の用途に好適に用いることができる。
【0041】
【実施例】
以下に本発明について実施例などにより具体的に説明するが、本発明は以下の例に何ら限定されるものではない。なお、以下の例中の「部」および「%」は特に断らない限り質量部および質量%を意味する。
また、以下の例で得られた立毛皮革様シートの引裂強力の測定、並びに表面タッチおよび柔軟性の評価は次のようにして行った。
【0042】
(1)立毛皮革様シートの引裂強力:
JIS L−1096に準拠して測定した。
【0043】
(2)立毛皮革様シートの表面タッチ:
立毛皮革様シートの表面に手で触れてみて、下記の評価基準により評価した。
[表面タッチの評価基準]
○:天然皮革スエード様のヌメリ感のある滑らかなタッチである。
△:天然皮革スエード様の滑らかさが多少あるが、未だ十分ではない。
×:天然皮革スエード様の滑らかさが無い。
【0044】
(3)立毛皮革様シートの柔軟性:
立毛皮革様シートを手に持ってみて、下記の評価基準により評価した。
[柔軟性の評価基準]
○:適度に腰が取れていて衣料用などの用途に適した柔軟性を有する。
△:衣料用などの用途に使用するためには柔軟性が不足する。
×:腰があり衣料用などの用途に使用するための柔軟性を有していない。
【0045】
《例1》[立毛皮革様シートの製造例](従来例)
(1) ナイロン−6(乾燥時の相対粘度3.2)のチップと低密度ポリエチレンのチップを50:50の質量比で混合して280℃で溶融混合紡糸を行って、ナイロン−6を島成分およびポリエチレンを海成分とする海島型混合紡糸繊維(島数約300個)を製造した後、湿熱延伸、機械捲縮、油剤付与およびカットして、単繊維繊度が4デシテックスで繊維長51mmの綿状短繊維を製造した。
(2) 上記(1)で得られた綿状短繊維をカードで開繊し、クロスラップウェバーでウェブとし、さらにフェルト針によるニードルパンチング機を用いて1500パンチ/cm2の三次元絡合処理を施して、絡合不織布を製造した。
【0046】
(3) 上記(2)で得られた絡合不織布に、ポリウレタン[ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンアジペート)とポリエチレングリコールからなる数平均分子量2,000の高分子ジオール、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,4−ブタンジオールを用いて形成したポリウレタン]のジメチルホルムアミド(DMF)溶液を含浸した。次いで、それをDMF/水の混合浴中にて多孔質状態で湿式凝固させて、シート中のDMFを水で置換した後、さらに90℃のトルエン浴中にて海島型混合紡糸繊維中のポリエチレンを抽出除去して、ナイロン−6の極細繊維を形成させた。続いて、シート中のトルエンを水で置換し、ピンテンター乾燥機中で乾燥して、目付けが420g/m2、厚みが1.2mm、繊維:ポリウレタンの質量比が65:35であるシート状基材を製造した。これにより得られたシート状基材においては、ナイロン−6製の極細繊維束とポリウレタンとの接着が実質的に生じておらず、極細繊維束の動きの自由度が高いものであった。
(4) 上記(3)で得られたシート状基材を厚み方向に2分割した後、両面を400番のサンドペーパーにてバフィングして、シートの厚みを0.5mmに調節すると共に、両面にナイロン−6の極細繊維よりなる立毛を形成することで、絡合不織布部分および立毛部を形成する極細繊維の単繊維繊度が0.006デシテックスである立毛シートを製造した。
【0047】
(5) 上記(4)で得られた立毛シートに、下記に示す染色条件で、ウインス染色機にて染色処理を施した後、ピンテンター乾燥機中で乾燥し、さらに揉み処理および整毛処理を施して、平均立毛長が0.25mmである、スエード調の極めて良好な外観を有する茶色の立毛皮革様シートを製造した。
[染色条件]
住友化学工業(株)製「ラニール ブラウンGR」(染料) 4% owf
丸菱油化(株)製「レベラン NKD」(染色助剤) 2g/リットル
染色温度 90℃
浴比 1:20
(6) 上記(5)で得られた立毛皮革様シートの引裂強力を上記した方法で測定すると共に、その表面タッチおよび柔軟性を上記した方法で評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0048】
《例2》[立毛皮革様シートの製造例](従来例)
(1) ナイロン−6(乾燥時の相対粘度2.4)のチップと低密度ポリエチレンのチップを別々に溶融し、紡糸口金部分で両者を65:35の質量比で合流させ、270℃で溶融複合紡糸を行って、ナイロン−6を島成分およびポリエチレンを海成分とする海島型複合紡糸繊維(島数約50個)を製造した後、湿熱延伸、機械捲縮、油剤付与およびカットして、単繊維繊度が4デシテックスで繊維長51mmの綿状短繊維を製造した。
(2) 上記(1)で得られた綿状短繊維を用いて、例1の(2)におけるのと同様にして絡合不織布を製造した。
【0049】
(3) 上記(2)で得られた絡合不織布を、ポリビニルアルコールの20%水溶液中に浸漬してポリビニルアルコールを繊維表面に付着させた後、パークレンにてポリエチレンを抽出除去して、ナイロン−6の極細繊維を形成させた。
(4) 上記(3)で得られた極細繊維化した絡合不織布に、例1で用いたのと同じポリウレタンのDMF溶液を含浸し、それをDMF/水の混合浴中にて多孔質状態で湿式凝固させてた後、シート中のDMFを水で置換すると共に繊維表面に付着しているポリビニルアルコールを水で溶解除去し、次いでそれをピンテンター乾燥機中で乾燥して、目付けが460g/m2、厚みが1.25mm、繊維:ポリウレタンの質量比が70:30であるシート状基材を製造した。これにより得られたシート状基材においては、ナイロン−6製の極細繊維束とポリウレタンとの接着が殆ど生じておらず、極細繊維束の動きの自由度が高かった。
【0050】
(5) 上記(4)で得られたシート状基材を厚み方向に2分割した後、両面を400番のサンドペーパーにてバフィングして、シートの厚みを0.5mmに調節すると共に、両面にナイロン−6の極細繊維よりなる立毛を形成することで、絡合不織布部分および立毛部を形成する極細繊維の単繊維繊度が0.05デシテックスである立毛シートを製造した。
(6) 上記(5)で得られた立毛シートに、例1におけるのと同じ染色条件で、ウインス染色機にて染色処理を施した後、ピンテンター乾燥機中で乾燥し、さらに揉み処理および整毛処理を施して、平均立毛長が0.5mmである、スエード調の極めて良好な外観を有する茶色の立毛皮革様シートを製造した。
(7) 上記(6)で得られた立毛皮革様シートの引裂強力を上記した方法で測定すると共に、その表面タッチおよび柔軟性を上記した方法で評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0051】
《例3》[実施例]
(1) 絹フィブロインの水溶性部分加水分解物(鐘紡社製「シルクペプタイド」)5部、ポリアミド系柔軟剤(洛東化成社製「ラクセットK−150」)20部および水75部を混合して、立毛皮革様シート用の処理液を予め調製した。
(2) 上記(1)で調製したシルクプロテイン系物質と柔軟剤を含有する処理液15gを水で希釈して100gにして希釈液を調製した。
(3) 上記(2)で調製した処理液(希釈液)中に、例1で製造した立毛皮革様シートを浸漬して液を十分に浸透させた後、マングルで絞って、立毛皮革様シートの質量に対して60質量%の処理液を含浸付与した。これを60℃の温風乾燥機中で10分間乾燥させて、シルクプロテイン系物質と柔軟剤が含浸付与された目付け約187g/m2の立毛皮革様シートを製造した(立毛皮革様シートへのシルクプロテイン系物質の含浸付与量=約0.8g/m2、柔軟剤の含浸付与量=約1.4g/m2)。これにより得られた立毛皮革様シートの引裂強力を上記した方法で測定すると共に、その表面タッチおよび柔軟性を上記した方法で評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(4) また、上記(3)で使用した処理液(希釈液)100g中に赤色染料5gを溶かして、上記(3)と同様にして例1で製造した立毛皮革様シート中に浸透させ、60℃で温風乾燥した。そして、これにより得られた立毛皮革様シートを厚さ方向に切断して、その断面を光学顕微鏡にて観察したところ、立毛皮革様シートの両方の表面から中央部にわたって、全体が赤く着色されていた。
【0052】
《例4》[実施例]
(1) 例3の(1)で調製したのと同じ処理液15gを水で希釈して100gにして、シルクプロテイン系物質と柔軟剤を含有する希釈された処理液(希釈液)を調製した。
(2) 上記(1)で調製した処理液(希釈液)中に、例2で製造した立毛皮革様シートを浸漬して液を十分に浸透させた後、マングルで絞って、立毛皮革様シートの質量に対して60質量%の処理液を含浸付与した。これを60℃の温風乾燥機中で10分間乾燥させて、シルクプロテイン系物質と柔軟剤が含浸付与された目付け約188g/m2の立毛皮革様シートを製造した(立毛皮革様シートへのシルクプロテイン系物質の含浸付与量=約0.8g/m2、柔軟剤の含浸付与量=約1.5g/m2)。これにより得られた立毛皮革様シートの引裂強力を上記した方法で測定すると共に、その表面タッチおよび柔軟性を上記した方法で評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3) また、上記(2)で使用した処理液(希釈液)100g中に赤色染料5gを溶かして、上記(2)と同様にして例1で製造した立毛皮革様シート中に浸透させ、60℃で温風乾燥した。そして、これにより得られた立毛皮革様シートを厚さ方向に切断して、その断面を光学顕微鏡にて観察したところ、立毛皮革様シートの両方の表面から中央部にわたって、全体が赤く着色されていた。
【0053】
《例5》[比較例]
(1) 絹フィブロインの水溶性部分加水分解物(鐘紡社製「シルクペプタイド」)2gを水で希釈して100gにして希釈液を調製した。
(2) 上記(1)で調製した希釈液中に、上記の例1で得られた立毛皮革様シートを浸漬して、例3におけるのと同様に処理して、立毛皮革様シートの立毛部および弾性重合体を含有する絡合不織布の厚み全体にシルクプロテイン系物質が含浸付与された目付け約187g/m2の立毛皮革様シートを製造した(シルクプロテイン系物質の含浸付与量=約2.2g/m2)。
これにより得られた立毛皮革様シートの引裂強力を上記した方法で測定すると共に、その表面タッチおよび柔軟性を上記した方法で評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0054】
【表1】
Figure 0004459426
【0055】
上記の表1における例1および2の結果から、シルクプロテイン系物質および柔軟剤を何ら付与していない例1および2の立毛皮革様シート(従来の立毛皮革様シート)は、スエード様の良好な外観を有するものの、天然皮革のスエード様のヌメリ感のある滑らかな表面タッチと衣料用に適する柔軟性を有しておらず、高級感に不足していることがわかる。
それに対して、表1の例3および4(実施例)の結果から、シルクプロテイン系物質および柔軟剤を、立毛皮革様シートの立毛部および弾性重合体を含有する絡合不織布の厚み全体に含有付与してなる例3および4の本発明の立毛皮革様シートは、スエード様の良好な外観を有すると共に、天然皮革のスエード様のヌメリ感のある滑らかな表面タッチと、適度に腰の取れた衣料用などとして適する柔軟性を有していて高級感のある風合いを有していることがわかる。
また、表1の例5(比較例)の結果から、シルクプロテイン系物質のみを含有付与した例5の立毛皮革様シートは、表面タッチには優れているものの、衣料用などとして適する柔軟性を有していないことがわかる。
【0056】
【発明の効果】
本発明により、天然皮革のスエード様の良好な外観を有すると共に、天然皮革のスエードやヌバック様のヌメリ感のある滑らかな表面タッチと、適度に腰の取れた柔軟性のある、高級感のある、優れた風合いを有する立毛皮革様シートが提供される。
本発明では、シルクプロテイン系物質および柔軟剤が立毛皮革様シートの立毛部および弾性重合体を含有する絡合不織布の厚み全体にわたって含有付与されているので、シルクプロテイン系物質および柔軟剤が脱落などによって立毛皮革様シートから失われにくく、前記した高級感のある優れた風合いを長期にわたって維持することができる。
本発明の立毛皮革様シートは、前記した優れた特性を活かして、衣類、手袋、シート類、鞄、履物、車両用内装材などのような人肌に触れるような各種用途に好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 極細繊維よりなる絡合不織布およびその内部に含有された弾性重合体からなり且つ片面または両面に極細繊維よりなる立毛を形成してなる立毛皮革様シートであって、シルクプロテインおよびシルクプロテイン部分加水分解物から選ばれる少なくとも1種のシルクプロテイン系物質と柔軟剤を、立毛皮革様シートの立毛部および弾性重合体を含有する絡合不織布の厚み全体にわたって含浸付与してなることを特徴とする立毛皮革様シート。
  2. シルクプロテイン系物質が、水溶化した絹フィブロインおよび絹フィブロインの水溶性部分加水分解物から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の立毛皮革様シート。
  3. 立毛皮革様シートへのシルクプロテイン系物質:柔軟剤の含浸付与量の質量比が、20:80〜70:30である請求項1または2に記載の立毛皮革様シート。
  4. シルクプロテイン系物質および柔軟剤を含浸付与する前の立毛皮革様シートの目付け(A)(g/m2)に基づいて、シルクプロテイン系物質の含浸付与量が0.0005A〜0.025A(g/m2)で、柔軟剤の含浸付与量が0.001A〜0.1A(g/m2)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の立毛皮革様シート。
  5. 極細繊維が、混合紡糸法または複合紡糸法により得られる海島構造繊維から海成分を除去して得られた極細繊維であり、立毛皮革様シート内で極細繊維と弾性重合体とが実質的に接着していない請求項1〜4のいずれか1項に記載の立毛皮革様シート。
  6. 極細繊維よりなる絡合不織布およびその内部に含有された弾性重合体からなり且つ片面または両面に極細繊維よりなる立毛を形成してなる立毛皮革様シートに、シルクプロテインおよびシルクプロテイン部分加水分解物から選ばれる少なくとも1種のシルクプロテイン系物質と柔軟剤を含有する液をその内部にまで含浸させることを特徴とする、表面および内部にシルクプロテイン系物質および柔軟剤を含浸付与してなる立毛皮革様シートの製造方法。
  7. 立毛皮革様シートをシルクプロテイン系物質と柔軟剤を含有する液中に浸漬することからなる請求項6に記載の製造方法。
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