JP4441040B2 - 衛星放送システム用ギャップフィラー装置及び衛星放送システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工衛星を使用して地上のサービスエリアへ情報を送信する衛星放送システムに係わり、特に、建造物や山などの陰になるエリアでも受信端末が衛星からの情報を受信できるようにするためのギャップフィラー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、人工衛星(放送衛星や通信衛星)を利用した衛星放送システムの構築が進められており、こうした衛星放送システムでは、地上放送局から衛星に向けて送信された放送信号(電波)を、その衛星(詳しくは、衛星に設けられている中継器)が中継して地上のサービスエリアへ送信する。そして、こうした衛星放送システムによれば、地上に大がかりなインフラを整備しなくても、広範囲のサービスエリアに存在している各受信端末(移動局及び固定局)に対して情報を提供することができる。
【0003】
しかし、衛星放送システムで使用される電波は、非常に高い周波数であるため、直進性が強く、遠くへ飛ぶものの、障害物があると、すぐに反射してしまう性質がある。よって特に、受信端末が移動体の受信端末(携帯型や車両搭載型の移動局としての受信装置)である場合、その受信端末は、衛星からの直接波が届かないビル陰などに入ると、放送情報を得ることができなくなってしまう。
【0004】
このため、従来より、例えば特開平10−308695号公報に開示されているように、高層ビルなどに地上用の中継器たるギャップフィラー装置を設けることが考えられている。
つまり、ギャップフィラー装置は、衛星からの放送信号を受信可能な位置(ビルの屋上など)に設置される受信アンテナを主要部とした受信地点設備と、衛星からの放送信号が直接受信できない受信不能エリアへ電波を無線送信可能な位置に設置される送信アンテナを主要部とした送信地点設備とを備え、衛星からの放送信号を受信地点設備により受信して、その受信した放送信号と同じ内容の信号(中継放送信号)を送信地点設備により上記受信不能エリアへ送信するものである。そして、衛星放送システムの構成要素として、こうしたギャップフィラー装置を加えることにより、地上の様々な場所に存在する受信端末に対して情報を確実に提供することができるようになる。
【0005】
ところで、この種のギャップフィラー装置においては、衛星から受信する放送信号と本装置が送信する中継放送信号との周波数が同一であると、送信波(送信アンテナから送信した電波)が受信波(受信アンテナで受信する電波)に回り込んで、発振が起きる可能性がある。
【0006】
そこで、こうした送信波の受信波への回り込みを防止するための技術として、上記公報には、ギャップフィラー装置の設置を前提とした衛星放送システムを、下記の▲1▼及び▲2▼の如く構成することが提案されている。
▲1▼:まず、衛星は、地上放送局から送信された放送信号を、Sバンド(2.6〜4GHzであり、例えば2.6GHz)の第1放送信号と、それよりも周波数が高いKuバンド(12〜18GHz)又はKaバンド(27〜40GHz)の第2放送信号とに変換して、その第1放送信号と第2放送信号とを夫々地上のサービスエリアへ送信する。
【0007】
▲2▼:一方、ギャップフィラー装置は、衛星から送信される第1放送信号及び第2放送信号のうちで、周波数が高い方の第2放送信号を受信すると共に、その受信した第2放送信号を、第1放送信号と同一周波数の放送信号(Sバンドの放送信号)に周波数変換して、その周波数変換後の放送信号を、サービスエリア内で衛星からの第1放送信号が直接受信できない受信不能エリアへ、中継放送信号として無線送信する。
【0008】
そして、上記▲1▼及び▲2▼のようにすることにより、ギャップフィラー装置では、衛星から受信する第2放送信号と本装置が送信する中継放送信号との周波数が異なることとなるため、前述した送信波の受信波への回り込みを確実に防止できるようになり、また、地上の各受信端末では、KuバンドやKaバンドよりも減衰し難いSバンドの放送信号を受信すれば良いため、パラボラアンテナ等の大型のアンテナを使用することなく、簡易な設備で放送を受信することができるようになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載のギャップフィラー装置では、送信波の受信波への回り込みを防止できるものの、以下の問題がある。
まず、一般に、この種のギャップフィラー装置においては、衛星からの電波を受信する受信地点(即ち、受信地点設備の設置位置)と、上記受信不能エリアに向けて中継放送信号を送信する送信地点(即ち、送信地点設備を設置する位置)とを、同一にすることができない場合が多い。
【0010】
このため、上記公報に記載のギャップフィラー装置を実用化する場合には、受信地点設備と送信地点設備とを、信号伝送用の伝送路によって接続すると共に、受信地点設備側が、衛星から受信したKuバンド又はKaバンドの第2放送信号を第1放送信号と同一周波数のSバンドの放送信号に周波数変換して上記伝送路上に出力し、送信地点設備側では、受信地点設備から上記伝送路を介して伝送されてくるSバンドの放送信号を上記受信不能エリアへ無線送信する、といった構成を採ることとなる。
【0011】
ここで、受信地点設備と送信地点設備とを結ぶ伝送路としては、導波管を用いることも考えられるが、ギャップフィラー装置の設置工事が非常に困難となるため、現実的ではない。
そこで、一般に、受信地点設備と送信地点設備とを結ぶ伝送路としては、同軸ケーブルを用いることとなるが、受信地点設備から送信地点設備へSバンドの信号を低損失で伝送するためには、例えばφ10mm(10D)やφ12mm(12D)といった径の非常に大きい同軸ケーブルを用いる必要が生じる。そして、この問題は、受信地点設備と送信地点設備との離間距離が大きい場合ほど、顕著になる。
【0012】
本発明はこうした問題に鑑みなされたものであり、衛星放送システム用ギャップフィラー装置において、受信地点設備と送信地点設備とが離れていても、その両設備を径の細い同軸ケーブルで接続可能にすることと、そのようなギャップフィラー装置を用いることで、衛星からの放送情報を受信不能なエリアが無い衛星放送システムを、安価に構築できるようにすることとを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の本発明の衛星放送システム用ギャップフィラー装置は、前述した従来装置と同様に、衛星から地上のサービスエリアへ送信される互いに異なった周波数で且つ同一内容の第1放送信号及び第2放送信号のうち、周波数が高い方の第2放送信号を受信し、その受信した第2放送信号を、第1放送信号と同一周波数の中継放送信号に周波数変換して、前記サービスエリア内で衛星からの第1放送信号が直接受信できない受信不能エリアへ無線送信するものである。
【0014】
ここで特に、本発明のギャップフィラー装置では、受信変換手段が、衛星からの第2放送信号を受信すると共に、その受信した第2放送信号を前記第1放送信号よりも周波数が低い所定周波数帯のケーブル伝送用信号に周波数変換して出力端子から同軸ケーブル上に出力する。そして、受信変換手段に前記同軸ケーブルを介して接続される送信手段が、その同軸ケーブルを介して伝送されてくる前記ケーブル伝送用信号を、衛星からの第1放送信号と同一周波数の中継放送信号に周波数変換して前記受信不能エリアへ無線送信する。
【0015】
つまり、本発明のギャップフィラー装置では、受信地点設備としての受信変換手段が、衛星から受信した第2放送信号を、第1放送信号よりも低い周波数の信号(ケーブル伝送用信号)に変換して、同軸ケーブルを介し送信地点設備としての送信手段側へ伝送し、その送信地点設備としての送信手段は、受信変換手段側から同軸ケーブルを介して伝送されてくる信号を、第1放送信号と同じ周波数の信号に変換して、衛星からの直接波が届かない受信不能エリアへ無線送信するようにしている。
更に、本発明のギャップフィラー装置において、受信変換手段と送信手段の各々は、周波数変換をする対象信号と所定周波数の周波数変換用信号とをミキサにより混合することで、その対象信号の周波数変換を行うようになっていると共に、前記周波数変換用信号を、同じ1つの発振回路によって発生される一定周波数の基準信号を用いて生成するようになっている。そして、発振回路は、GPS衛星からの電波に含まれているクロック信号を用いて前記基準信号の周波数を前記一定周波数となるように補正する。尚、受信変換手段での周波数変換の対象信号は、衛星から受信した第2放送信号であり、送信手段での周波数変換の対象信号は、受信変換手段側から同軸ケーブルを介して伝送されてくるケーブル伝送用信号である。
【0016】
このような本発明のギャップフィラー装置によれば、受信地点設備としての受信変換手段から送信地点設備としての送信手段へと同軸ケーブルを介して伝送される信号(ケーブル伝送用信号)が、衛星からの第1放送信号よりも低い周波数の信号となるため、受信地点設備と送信地点設備とを結ぶ同軸ケーブル上での信号伝送損失を小さくすることができる。よって、受信地点設備と送信地点設備とが離れていても、その両設備を、より細い径の同軸ケーブルで接続することができるようになる。
【0017】
そして、このことから、以下の効果が得られる。
(1)当該ギャップフィラー装置の設置工事が容易になる。
(2)当該ギャップフィラー装置をビルなどの建造物に設置した場合、その建造物の外観への影響が小さくなる。
【0018】
(3)信号の伝送損失が小さくなるため、装置全体での消費電力が小さくなる。
(4)受信地点設備と送信地点設備との離間距離が大きくなることに伴うコストアップを、最小限に抑えることができる。
【0019】
また、本発明のギャップフィラー装置によれば、受信変換手段と送信手段とを同軸ケーブルで接続しているため、その各手段に電源供給用の別配線を夫々設ける必要がなくなる。つまり、一方の手段から他方の手段へ同軸ケーブルを介して電源を供給するようにしたり、同軸ケーブル上の任意の箇所に電源電圧(直流電圧又は交流電圧)を挿入する電源挿入器を設けて、各手段が同軸ケーブルから電源を受けるように構成することができるからである。
【0020】
次に、請求項2に記載の衛星放送システム用ギャップフィラー装置では、受信変換手段が、第1手段と第2手段からなっている。そして、第1手段が、衛星からの第2放送信号を受信すると共に、その受信した第2放送信号を前記第1放送信号よりも周波数が低く且つ前記ケーブル伝送用信号よりは周波数が高い信号に周波数変換する。そして更に、第2手段が、第1手段にて周波数変換された後の信号を前記ケーブル伝送用信号に周波数変換して、該周波数変換後のケーブル伝送用信号を前記出力端子から同軸ケーブル上に出力する。また、第1手段と第2手段の各々は、周波数変換をする対象信号と所定周波数の周波数変換用信号とをミキサにより混合することで、その対象信号の周波数変換を行うようになっていると共に、前記周波数変換用信号を前記基準信号を用いて生成するようになっている。尚、第1手段での周波数変換の対象信号は、衛星から受信した第2放送信号であり、第2手段での周波数変換の対象信号は、第1手段にて周波数変換された後の信号である。
【0021】
つまり、請求項2に記載のギャップフィラー装置では、衛星から受信した第2放送信号を、同軸ケーブルで伝送されるケーブル伝送用信号へと1回で変換するのではなく、2段階の周波数変換を行うようにしている。そして、このようにすれば、衛星から受信した第2放送信号を、第1放送信号よりも周波数が低いケーブル伝送用信号へと確実に変換し易くなる。
【0022】
この理由について説明すると、まず、一般に、ある周波数f1の周波数変換対象信号を、それよりも低い周波数Ifの信号に変換する場合には、その周波数変換対象信号と周波数が「f1−If」或いは「f1+If」の周波数変換用信号とをミキサにより混合して、そのミキサの出力からバンドパスフィルタにより周波数がIfの信号を抽出することとなる。
【0023】
ここで、例えば、衛星から送信される第1放送信号と第2放送信号との各周波数が、夫々、2.6GHzと12GHzであり、受信変換手段が、衛星からの12GHzの第2放送信号と、11.6GHz(12GHz−400MHz)の周波数変換用信号とを、ミキサにて混合することにより、その第2放送信号を400MHzのケーブル伝送用信号に1回で周波数変換するものとする。
【0024】
この場合、ミキサにて周波数変換用信号と混合される信号に、その周波数変換用信号よりも400MHzだけ低い成分(即ち、11.2GHzであり、希望波である周波数変換対象信号のイメージ)が含まれていると、そのイメージも400MHzのケーブル伝送用信号に変換されてしまい、それが余分なノイズとなる。よって、受信変換手段では、衛星からの受信信号をミキサへ入力させる前に、バンドパスフィルタにより、受信信号から上記11.2GHzのイメージを除去して、希望波のみをミキサへ入力させることとなる。
【0025】
しかし、この場合、希望波(12GHz)とそれのイメージ(11.2GHz)との差が800MHz(=400MHz×2:希望波周波数の7%程度)しかなく、このような十数GHzの高周波域で希望波のみを抽出するには、より高性能なバンドパスフィルタが必要となる。
【0026】
これに対して、例えば、12GHzの第2放送信号を、一旦、1GHzに周波数変換し、その1GHzの信号を、400MHzのケーブル伝送用信号に周波数変換する、といった具合に2段階の周波数変換を行うようにすれば、より高周波を扱う1回目の周波数変換において、希望波(12GHz)とそれのイメージとの差を2GHz(=1GHz×2:希望波周波数の約17%)にまで拡大することができ、極めて高性能なバンドパスフィルタを用いなくても、受信信号から希望波のみを抽出してミキサへ入力することができるようになる。
【0027】
このため、請求項2に記載の如く、受信変換手段を第1手段と第2手段とにより構成して、2段階の周波数変換を行うようにすれば、衛星から受信した第2放送信号を、第1放送信号よりも周波数が低いケーブル伝送用信号へと確実に周波数変換し易くなるのである。
【0028】
次に、請求項3に記載の本発明は、
地上のサービスエリアへ互いに異なった周波数で且つ同一内容の第1放送信号及び第2放送信号を送信する衛星と、
該衛星から送信される前記第1及び第2放送信号のうち、周波数が高い方の第2放送信号を受信し、その受信した第2放送信号を、前記第1放送信号と同一周波数の中継放送信号に周波数変換して、前記サービスエリア内で前記衛星からの第1放送信号が直接受信できない受信不能エリアへ無線送信するギャップフィラー装置と、
を備えた衛星放送システムにおいて、
前記ギャップフィラー装置は、請求項1又は請求項2に記載の衛星放送システム用ギャップフィラー装置であることを特徴としている。
【0029】
つまり、この請求項3の衛星放送システムでは、衛星からの直接波が届かない受信不能エリアをカバーするために、請求項1又は請求項2のギャップフィラー装置を用いている。よって、この衛星放送システムによれば、特に前述した(1),(4)の効果により、衛星からの放送情報を受信できないエリアを無くすためのコストを、抑制することができ、延いては、衛星からの放送情報を受信不能なエリアが無い衛星放送システムを、安価に構築できるようになる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
まず図1は、本発明が適用された第1実施例のギャップフィラー装置の構成を表す構成図であり、図2は、そのギャップフィラー装置の設置状態を例示する斜視図である。
【0031】
本第1実施例のギャップフィラー装置は、地上放送局から衛星に向けて送信された放送信号を、その衛星が、Sバンドの第1放送信号(本実施例では、周波数が2.64GHzの放送信号)Saと、それよりも周波数が高いKuバンドの第2放送信号(本実施例では、周波数が12.45GHzの放送信号)Sbとに変換して、その両放送信号Sa,Sbを地上のサービスエリアへ送信する衛星放送システムに用いられるものである。
【0032】
そして、本第1実施例のギャップフィラー装置は、衛星から送信される同一内容の上記第1放送信号Sa及び第2放送信号Sbのうち、Kuバンドの第2放送信号Sbを受信すると共に、その受信した第2放送信号Sbを、第1放送信号Saと同一周波数(2.64GHz)の中継放送信号Sgに周波数変換して、その中継放送信号Sgを、サービスエリア内で衛星からの第1放送信号Saが直接受信できない受信不能エリアへ無線送信する。
【0033】
尚、この衛星放送システムにおいて、地上のサービスエリアに存在する各受信端末(移動局及び固定局)は、Sバンドの放送信号(即ち、衛星から直接送信されてくる第1放送信号Saか、本実施例のギャップフィラー装置から送信される中継放送信号Sg)を受信するようになっている。
【0034】
図1及び図2に示す如く、本第1実施例のギャップフィラー装置は、衛星からの第2放送信号Sbを受信するためにビルBLの屋上等に設置される受信地点設備としての衛星受信アンテナ2と、衛星からの第1放送信号Saが直接受信できない受信不能エリアへ中継放送信号Sgを送信するためにビルBLの壁面等に設置される送信地点設備としての送信機4及び2つの送信アンテナ6a,6bとを備えており、衛星受信アンテナ2と送信機4は、同軸ケーブル8を介して接続されている。
【0035】
衛星受信アンテナ2は、本発明の受信変換手段に相当するものであり、反射鏡10と、支持腕12を介して反射鏡10の焦点位置に配置された受信部14とからなる、オフセット型のパラボラアンテナである。
そして、受信部14は、送信機4側から同軸ケーブル8を介して出力端子T1に入力される電源供給用の電圧信号(本実施例では直流30V)によって動作し、反射鏡10にて集波された衛星からの電波をプローブ16によって受信すると共に、その受信した電波からバンドパスフィルタ(以下、BPFと記す)18によって希望波である12.45GHzの第2放送信号Sbを受信信号として抽出し、その抽出した第2放送信号Sbを、第1放送信号Saよりも周波数が低い所定周波数帯(本実施例では400MHz)のケーブル伝送用信号Sdに周波数変換して出力端子T1から同軸ケーブル8上に出力する。
【0036】
具体的に説明すると、受信部14において、BPF18により受信信号として抽出された衛星からの第2放送信号Sbは、増幅回路20により所定レベルまで増幅された後、周波数変換用のミキサ22に入力される。
ミキサ22は、PLL回路24により発振周波数が一定(本実施例では12.05GHz)に制御された周波数可変型の局部発振回路26からの信号(周波数変換用信号)と、増幅回路20からの第2放送信号Sbとを混合して、その第2放送信号Sbを400MHzのケーブル伝送用信号Sdに周波数変換するものである。
【0037】
そして、このミキサ22にて周波数変換されたケーブル伝送用信号Sdは、増幅回路28により所定レベルまで増幅された後、BPF30,分岐回路としての方向性結合器32,直流及び低周波信号遮断・高周波信号通過用のコンデンサC1,及び出力端子T1を介して、その出力端子T1に接続された同軸ケーブル8に出力される。尚、BPF30は、周波数変換後のケーブル伝送用信号Sd(周波数:400MHz)のみを通過させるものである。また、方向性結合器32は、BPF30とコンデンサC1との間の信号経路上に設けられ、その信号経路上の信号の一部を分岐させるものである。
【0038】
一方、PLL回路24は、局部発振回路26から出力される信号と、所定周波数の基準信号との位相が一致するように局部発振回路26の発振周波数を制御するものであるが、当該受信部14では、このPLL回路24が局部発振回路26の発振周波数を制御するのに用いる基準信号(つまり、周波数変換用の基準信号)が、送信機4側から同軸ケーブル8を介して供給される。
【0039】
即ち、後述するように、送信機4は、同軸ケーブル8へ10MHzの基準信号Frefと、電源供給用の直流30Vの電圧信号とを出力するようになっており、受信部14において、送信機4側から同軸ケーブル8を介して出力端子T1まで伝送されてくる基準信号Frefは、コンデンサC1を介して方向性結合器32にまで到達し、その方向性結合器32により分岐されて、10MHzの信号を通過させるBPF34に入力される。そして、BPF34を通過した10MHzの基準信号Frefが、PLL回路24へ周波数変換用の基準信号として入力される。
【0040】
そして更に、PLL回路24は、この基準信号Frefと局部発振回路26からの出力とを、予め設定された分周比で夫々分周し、これら分周後の各信号の位相を一致させるための制御信号を生成して局部発振回路26に出力することにより、局部発振回路26からの出力を、衛星からの第2放送信号Sbを400MHzのケーブル伝送用信号Sdに変換するための一定周波数(12.05GHz)に制御する。
【0041】
また、受信部14において、送信機4側から同軸ケーブル8を介して出力端子T1まで伝送されてくる電源供給用の電圧信号は、出力端子T1に接続された直流及び低周波信号通過・高周波信号遮断用のチョークコイルL1を介して電源部36に入力される。そして、電源部36は、チョークコイルL1を介して入力された電圧信号を、例えば直流12VにDC/DC変換して、当該受信部14内の各部に動作電源として供給する。
【0042】
尚、本第1実施例の受信部14においては、ミキサ22、PLL回路24、及び局部発振回路26が、衛星から受信した第2放送信号Sbを基準信号Frefを用いてケーブル伝送用信号Sdに周波数変換するための手段として機能している。
【0043】
次に、送信機4は、同軸ケーブル8に接続される端子T2を備えており、同軸ケーブル8を介して端子T2に入力される衛星受信アンテナ2からのケーブル伝送用信号Sdを、衛星からの第1放送信号Saと同一周波数の中継放送信号Sgに周波数変換して、2つの各アンテナ6a,6bから受信不能エリアへ無線送信する。また、送信機4は、端子T2から同軸ケーブル8へ、前述した10MHzの基準信号Frefと、衛星受信アンテナ2の受信部14を動作させるための直流30Vの電圧信号とを出力する。
【0044】
具体的に説明すると、まず、送信機4において、端子T2に入力されたケーブル伝送用信号Sdは、直流及び低周波信号遮断・高周波信号通過用のコンデンサC2,混合回路としての方向性結合器40,及びBPF42を介して、増幅回路44に入力され、この増幅回路44により所定レベルまで増幅された後、周波数変換用のミキサ46に入力される。尚、BPF42は、ケーブル伝送用信号Sd(周波数:400MHz)のみを通過させるものである。
【0045】
ここで、ミキサ46は、PLL回路48により発振周波数が一定(本実施例では2.24GHz)に制御された周波数可変型の局部発振回路50からの信号(周波数変換用信号)と、増幅回路44からのケーブル伝送用信号Sdとを混合して、そのケーブル伝送用信号Sdを第1放送信号Saと同一周波数の中継放送信号Sg(周波数:2.64GHz)に周波数変換するものである。
【0046】
そして、PLL回路48は、局部発振回路50から出力される信号と、当該送信機4の内部に設けられた発振回路52から出力される10MHzの基準信号Frefとを、予め設定された分周比で夫々分周し、これら分周後の各信号の位相を一致させるための制御信号を生成して局部発振回路50に出力することにより、局部発振回路50からの出力を、ケーブル伝送用信号Sdを中継放送信号Sgに変換するための一定周波数(2.24GHz)に制御する。
【0047】
また、送信機4において、発振回路52から出力される10MHzの基準信号Frefは、10MHzの信号のみ通過させるBPF54,方向性結合器40,及びコンデンサC2を介して、端子T2から同軸ケーブル8へと出力される。そして、このように送信機4から同軸ケーブル8へ出力される基準信号Frefが、前述したように、衛星受信アンテナ2の受信部14において、PLL回路24へ周波数変換用の基準信号として入力される。
【0048】
一方、送信機4において、ミキサ22にて周波数変換された後の中継放送信号Sgは、増幅回路56により所定レベルまで増幅された後、信号減衰用のアッテネータ58,信号増幅用の増幅回路60,中継放送信号Sg通過用のBPF62,及び分配回路としての方向性結合器64を通って分配器66に入力され、その分配器66により2系統に分配される。そして、分配器66により2系統に分配された中継放送信号Sgは、2つの送信アンテナ6a,6bの各々に供給され、その各送信アンテナ6a,6bにより、衛星からの第1放送信号Saが直接受信できない受信不能エリアへと無線送信される。
【0049】
また、BPF62から出力される中継放送信号Sgの一部は、方向性結合器64により分岐されて、ダイオードからなる検波回路68に入力される。そして、この送信機4においては、自動レベル制御回路(ALC)70が、検波回路68の出力レベルが一定となるようにアッテネータ58の減衰量を制御することにより、送信アンテナ6a,6bから無線送信される中継放送信号Sgの送信レベルを一定に保つようになっている。
【0050】
また更に、送信機4には、ACプラグPGを介して入力される商用電源からの交流電圧(例えば交流100V)を、例えば30Vの直流電圧に変換して出力する電源回路72と、この電源回路72から出力される直流電圧を、例えば直流12VにDC/DC変換して、当該送信機4内の各部に動作電源として供給する電源部73とが設けられている。そして、電源回路72から出力される直流電圧は、端子T2に接続された直流及び低周波信号通過・高周波信号遮断用のチョークコイルL2を介して、その端子T2から同軸ケーブル8へ、前述した電源供給用の電圧信号として出力される。
【0051】
尚、本第1実施例の送信機4においては、ミキサ46、PLL回路48、及び局部発振回路50が、同軸ケーブル8を介して伝送されてくるケーブル伝送用信号Sdを基準信号Frefを用いて中継放送信号Sgに周波数変換するための手段として機能している。そして、本第1実施例のギャップフィラー装置においては、この送信機4と送信アンテナ6a,6bとが、送信手段に相当している。
【0052】
以上説明したように、本第1実施例の衛星放送システム用ギャップフィラー装置では、受信地点設備としての衛星受信アンテナ2(詳しくは、その受信部14)が、衛星から受信した第2放送信号Sbを、第1放送信号Saよりも低い周波数のケーブル伝送用信号Sdに周波数変換して、同軸ケーブル8を介し送信地点設備の一部を成す送信機4側へ伝送するようにしている。そして、送信機4は、衛星受信アンテナ2側から同軸ケーブル8を介して伝送されてくるケーブル伝送用信号Sdを、第1放送信号Saと同じ周波数の中継放送信号Sgに変換して、送信アンテナ6a,6bから、衛星からの直接波が届かない受信不能エリアへ無線送信するようにしている。
【0053】
このような本第1実施例のギャップフィラー装置によれば、衛星受信アンテナ2から送信機4へと同軸ケーブル8を介して伝送される信号(ケーブル伝送用信号Sd)が、衛星からの第1放送信号Saよりも低い周波数の信号となるため、受信地点設備と送信地点設備とを結ぶ同軸ケーブル8上での信号伝送損失を小さくすることができ、その結果、受信地点設備(衛星受信アンテナ2)と送信地点設備(送信機4)とが離れていても、その両設備を、より細い径の同軸ケーブル8(具体的には、例えば「5CFB」といった75ΩのCATV用の同軸ケーブル)で接続することができるようになる。
【0054】
そして、このことから、当該ギャップフィラー装置の設置工事が容易になると共に、当該ギャップフィラー装置をビルなどの建造物に設置した場合に、その建造物の外観への影響を抑制することができる。そして更に、信号の伝送損失が小さくなるため、装置全体での消費電力が小さくなり、また、受信地点設備と送信地点設備との離間距離が大きくなることに伴うコストアップを、最小限に抑えることができるようになる。
【0055】
よって、このようなギャップフィラー装置を用いた衛星放送システムによれば、衛星からの放送情報を受信できないエリアを無くすためのコストを、抑制することができる。
また更に、本第1実施例のギャップフィラー装置では、周波数変換用の基準信号Frefを発生する発振回路52を、送信機4内だけに設け、受信変換手段としての衛星受信アンテナ2の受信部14と、送信手段としての送信機4とが、その1つの発振回路52からの基準信号Frefを、同軸ケーブル8を介し共有して周波数変換に用いるようにしているため、発振回路を複数設ける必要がない。
【0056】
特に、衛星からの第2放送信号Sbを第1放送信号Saよりも低周波のケーブル伝送用信号Sdに周波数変換し、そのケーブル伝送用信号Sdを第1放送信号Saと同一周波数の中継放送信号Sgへと正確に周波数変換するためには、高精度な発振回路が必要となるが、このような発振回路が1つで済み、非常に有利である。
【0057】
尚、発振回路52は、送信機4内ではなく、衛星受信アンテナ2の受信部14内に設けるようにしても良い。つまり、この場合には、受信部14において、発振回路52からの基準信号Frefが、PLL回路24とBPF34との間の信号経路に直接供給されるようにすれば、その基準信号Frefは、BPF34,方向性結合器32,コンデンサC1,及び出力端子T1を介して、同軸ケーブル8上に出力され、送信機4においては、端子T2,コンデンサC2,方向性結合器40,及びBPF54を介して、PLL回路48へ周波数変換用の基準信号として入力されることとなる。
【0058】
また例えば、発振回路52は、送信機4及び衛星受信アンテナ2の受信部14とは別に設け、その発振回路52からの基準信号Frefを、同軸ケーブル8上の任意の箇所に信号挿入器によって挿入するようにしても良い。そして、このようにしても、発振回路52からの基準信号Frefが、受信部14においては、出力端子T1,コンデンサC1,方向性結合器32,及びBPF34を介して、PLL回路24へ周波数変換用の基準信号として入力され、送信機4においては、端子T2,コンデンサC2,方向性結合器40,及びBPF54を介して、PLL回路48へ周波数変換用の基準信号として入力されることとなる。
【0059】
一方更に、本第1実施例のギャップフィラー装置によれば、送信機4側から同軸ケーブル8を介して衛星受信アンテナ2の受信部14へ、電源(本実施例では直流30V)を供給するようにしているため、受信部14と送信機4との各々に電源供給用の別配線を設ける必要がない。尚、同軸ケーブル8上の任意の箇所に電源電圧を挿入する電源挿入器を設けて、受信部14と送信機4との両方が、同軸ケーブル8から電源を受けるように構成しても良い。
【0060】
次に、第2実施例のギャップフィラー装置について、図3を用いて説明する。尚、図3において、図1に示した第1実施例のものと同じ機能を有する構成要素については、同一の符号を付しているため、詳細な説明は省略する。
図3に示すように、本第2実施例のギャップフィラー装置は、図1に示した第1実施例のギャップフィラー装置と比較して、下記の(A)〜(C)の点が異なっている。
【0061】
(A)まず、衛星受信アンテナ2の受信部14は、衛星から受信してBPF18により抽出した第2放送信号Sbを、第1放送信号Saよりも周波数が低く且つ前述のケーブル伝送用信号Sdよりは周波数が高い所定周波数帯(本実施例では1GHz)の中間周波信号Scに周波数変換して、出力端子T1から出力する。
【0062】
具体的に説明すると、本第2実施例の受信部14において、PLL回路24は、出力端子T1,コンデンサC1,方向性結合器32,及びBPF34を介して入力される10MHzの基準信号Frefに基づき、局部発振回路26の出力を、衛星からの第2放送信号Sb(周波数:12.45GHz)を1GHzの中間周波信号Scに変換するための一定周波数(本実施例では11.45GHz)に制御する。そして、増幅回路20からの第2放送信号Sbは、ミキサ22にて局部発振回路26の出力と混合されることにより、1GHzの中間周波信号Scに周波数変換され、その周波数変換された中間周波信号Scが、増幅回路28,BPF30,方向性結合器32,及びコンデンサC1を介して、出力端子T1から出力される。尚、本第2実施例において、BPF30は、周波数変換後の中間周波信号Scのみを通過させるようになっている。
【0063】
(B)衛星受信アンテナ2の受信部14と送信機4との間の信号伝送路上に、上記受信部14にて周波数変換された後の中間周波信号Scを400MHzのケーブル伝送用信号Sdに周波数変換して送信機4側へ出力するための、ダウンコンバータ74が設けられている。
【0064】
このダウンコンバータ74は、第1端子T3と第2端子T4とを備えており、第2端子T4が前述の同軸ケーブル8を介して送信機4の端子T2に接続され、第1端子T3が上記同軸ケーブル8と同じ種類の同軸ケーブル8’を介して衛星受信アンテナ2の受信部14の出力端子T1に接続される。そして、ダウンコンバータ74は、同軸ケーブル8’を介して第1端子T3に入力される衛星受信アンテナ2からの中間周波信号Scを、400MHzのケーブル伝送用信号Sdに周波数変換して、出力端子としての第2端子T4から同軸ケーブル8上に出力する。
【0065】
尚、ダウンコンバータ74は、衛星受信アンテナ2の直下に設置されており、同軸ケーブル8’の長さは、同軸ケーブル8よりも非常短いものとなっている。そして、本第2実施例のギャップフィラー装置では、このダウンコンバータ74と衛星受信アンテナ2とが、受信変換手段及び受信地点設備に相当しており、そのうちで、衛星受信アンテナ2が第1手段に相当し、ダウンコンバータ74が第2手段に相当している。
【0066】
また、ダウンコンバータ74は、送信機4側から同軸ケーブル8を介して第2端子T4に入力される電源供給用の電圧信号(直流30V)によって動作すると共に、その送信機4側からの電圧信号を、第1端子T3から同軸ケーブル8’を介して衛星受信アンテナ2の受信部14側へ出力する機能も有している。
【0067】
また更に、ダウンコンバータ74は、図1に示した発振回路52と同じ発振回路52’を備えており、その発振回路52’から出力される10MHzの基準信号Frefを、第1端子T3から同軸ケーブル8’を介して衛星受信アンテナ2の受信部14側へと出力すると共に、第2端子T4から同軸ケーブル8を介して送信機4側へと出力する。
【0068】
(C)このため、送信機4には発振回路52が設けられておらず、送信機4においては、ダウンコンバータ74側から同軸ケーブル8を介して端子T2まで伝送されてくる基準信号Frefが、コンデンサC2,方向性結合器40,及びBPF54を介して、PLL回路48へ周波数変換用の基準信号として入力される。そして、送信機4は、同軸ケーブル8を介して端子T2に入力されるダウンコンバータ74からのケーブル伝送用信号Sdを、第1実施例のものと全く同様に、衛星からの第1放送信号Saと同一周波数の中継放送信号Sgに周波数変換して、その中継放送信号Sgを2つの各アンテナ6a,6bから受信不能エリアへ無線送信する。
【0069】
次に、ダウンコンバータ74について具体的に説明する。
ダウンコンバータ74において、第1端子T3に入力された中間周波信号Scは、混合回路としての方向性結合器76及びBPF78を介して、増幅回路80に入力され、この増幅回路80により所定レベルまで増幅された後、周波数変換用のミキサ82に入力される。尚、BPF78は、中間周波信号Sc(周波数:1GHz)のみを通過させるものである。
【0070】
ここで、ミキサ82は、PLL回路84により発振周波数が一定(本実施例では600MHz)に制御された周波数可変型の局部発振回路86からの信号(周波数変換用信号)と、増幅回路80からの中間周波信号Scとを混合して、その中間周波信号Scを400MHzのケーブル伝送用信号Sdに周波数変換するものである。
【0071】
また、PLL回路84は、局部発振回路86から出力される信号と、当該ダウンコンバータ74の内部に設けられた発振回路52’から出力される10MHzの基準信号Frefとを、予め設定された分周比で夫々分周し、これら分周後の各信号の位相を一致させるための制御信号を生成して局部発振回路86に出力することにより、局部発振回路86からの出力を、中間周波信号Scをケーブル伝送用信号Sdに変換するための一定周波数(600MHz)に制御する。
【0072】
そして、このミキサ82にて周波数変換されたケーブル伝送用信号Sdは、増幅回路88により所定レベルまで増幅された後、BPF90,混合回路としての方向性結合器92,直流及び低周波信号遮断・高周波信号通過用のコンデンサC3,及び第2端子T4を介して、その第2端子T4に接続された同軸ケーブル8に出力される。尚、BPF90は、周波数変換後のケーブル伝送用信号Sd(周波数:400MHz)のみを通過させるものである。
【0073】
また、このダウンコンバータ74において、発振回路52’から出力される10MHzの基準信号Frefは、10MHzの信号のみ通過させるBPF94及び方向性結合器76を介して、第1端子T3から同軸ケーブル8’へと出力される。そして、このように同軸ケーブル8’へ出力される基準信号Frefが、前述したように、衛星受信アンテナ2の受信部14において、PLL回路24へ周波数変換用の基準信号として入力される。また更に、発振回路52’から出力される10MHzの基準信号Frefは、10MHzの信号のみ通過させるBPF96,方向性結合器92及びコンデンサC3を介して、第2端子T4から同軸ケーブル8へと出力される。そして、このように同軸ケーブル8へ出力される基準信号Frefが、前述したように、送信機4において、PLL回路48へ周波数変換用の基準信号として入力される。
【0074】
一方更に、ダウンコンバータ74において、送信機4側から同軸ケーブル8を介して第2端子T4まで伝送されてくる電源供給用の電圧信号は、その第2端子T4に接続された直流及び低周波信号通過・高周波信号遮断用のチョークコイルL3を介して電源部98に入力される。そして、電源部98は、チョークコイルL3を介して入力された電圧信号を、例えば直流12VにDC/DC変換して、当該ダウンコンバータ74内の各部に動作電源として供給する。
【0075】
また、送信機4側から同軸ケーブル8を介して第2端子T4まで伝送されてくる電源供給用の電圧信号は、第2端子T4と第1端子T3との間に設けられた直流及び低周波信号通過・高周波信号遮断用のチョークコイルL4を介して、第1端子T3から同軸ケーブル8’へと出力される。つまり、ダウンコンバータ74においては、チョークコイルL4により、送信機4側からの電源供給用の電圧信号を衛星受信アンテナ2側へと通過させる電流通過経路が形成されている。
【0076】
以上のような本第2実施例のギャップフィラー装置によっても、受信地点設備としての衛星受信アンテナ2及びダウンコンバータ74から送信地点設備としての送信機4へ同軸ケーブル8を介して伝送される信号(ケーブル伝送用信号Sd)が、衛星からの第1放送信号Saよりも低い周波数の信号となるため、受信地点設備と送信地点設備とを結ぶ同軸ケーブル8上での信号伝送損失を小さくすることができ、その結果、受信地点設備と送信地点設備とが離れていても、その両設備を、より細い径の同軸ケーブル8で接続することができるようになる。
【0077】
よって、このような本第2実施例のギャップフィラー装置を用いた衛星放送システムによっても、衛星からの放送情報を受信できないエリアを無くすためのコストを、抑制することができる。
また、本第2実施例のギャップフィラー装置においては、衛星受信アンテナ2からダウンコンバータ74へ伝送される中間周波信号Scも、第1放送信号Saより低い周波数であるため、衛星受信アンテナ2とダウンコンバータ74とを接続する同軸ケーブル8’も、同軸ケーブル8と同種のものを用いることができる。
【0078】
また更に、本第2実施例のギャップフィラー装置においても、周波数変換用の基準信号Frefを発生する発振回路52’を、ダウンコンバータ74内だけに設け、そのダウンコンバータ74と衛星受信アンテナ2の受信部14と送信機4とが、1つの発振回路52’からの基準信号Frefを、同軸ケーブル8,8’を介し共有して周波数変換に用いるようにしているため、発振回路を複数設ける必要がない。
【0079】
尚、発振回路52’は、ダウンコンバータ74内ではなく、例えば衛星受信アンテナ2の受信部14内に設けるようにしても良い。つまり、この場合には、受信部14において、発振回路52’からの基準信号Frefが、PLL回路24とBPF34との間の信号経路に直接供給されるようにすれば、その基準信号Frefは、BPF34,方向性結合器32,コンデンサC1,及び出力端子T1を介して、同軸ケーブル8’上に出力され、ダウンコンバータ74においては、第1端子T3,方向性結合器76,及びBPF94を介して、PLL回路84へ周波数変換用の基準信号として入力されることとなる。そして更に、その基準信号Frefは、ダウンコンバータ74のBPF96,方向性結合器92,コンデンサC3,及び第2端子T4を介して、同軸ケーブル8へと出力され、送信機4のPLL回路48へも周波数変換用の基準信号として入力されることとなる。
【0080】
また、発振回路52’は、第1実施例と同様に、送信機4内に設けるようにしても良い。つまり、この場合には、送信機4において、発振回路52’からの基準信号Frefが、PLL回路48とBPF54との間の信号経路に直接供給されるようにすれば(図1参照)、その基準信号Frefは、BPF54,方向性結合器40,コンデンサC2,及び端子T2を介して、同軸ケーブル8上に出力され、ダウンコンバータ74においては、第2端子T4,コンデンサC3,方向性結合器92,及びBPF96を介して、PLL回路84へ周波数変換用の基準信号として入力されることとなる。そして更に、その基準信号Frefは、ダウンコンバータ74のBPF94,方向性結合器76,及び第1端子T3を介して、同軸ケーブル8’へと出力され、衛星受信アンテナ2側のPLL回路24へも周波数変換用の基準信号として入力されることとなる。
【0081】
また例えば、発振回路52’は、上記各ユニット4,14,74とは別に設け、その発振回路52’からの基準信号Frefを、同軸ケーブル8あるいは同軸ケーブル8’上の任意の箇所に信号挿入器によって挿入するようにしても良い。一方更に、本第2実施例のギャップフィラー装置によっても、送信機4側から同軸ケーブル8を介してダウンコンバータ74と衛星受信アンテナ2の受信部14へ、電源を供給するようにしているため、受信部14,ダウンコンバータ74,及び送信機4の各々に電源供給用の別配線を設ける必要がない。尚、同軸ケーブル8あるいは同軸ケーブル8’上の任意の箇所に電源電圧を挿入する電源挿入器を設けて、受信部14,ダウンコンバータ74,及び送信機4の各々が、同軸ケーブル8,8’から電源を受けるように構成しても良い。
【0082】
そして特に、本第2実施例のギャップフィラー装置によれば、衛星から受信した第2放送信号Sbを、同軸ケーブル8で送信機4に伝送されるケーブル伝送用信号Sdへと1回で変換するのではなく、衛星受信アンテナ2が衛星からの第2放送信号Sbを1GHzの中間周波信号Scに変換し、その中間周波信号Scをダウンコンバータ74がケーブル伝送用信号Sdに変換する、というように2段階の周波数変換を行うようにしているため、衛星から受信した第2放送信号Sbを、周波数がより低いケーブル伝送用信号Sdへと確実且つ容易に変換することができる。
【0083】
つまり、図1に示した第1実施例のギャップフィラー装置の場合、衛星受信アンテナ2の受信部14において、ミキサ22により12.05GHzの周波数変換用信号と混合される信号に、その周波数変換用信号よりも400MHzだけ低い成分(即ち、希望波である第2放送信号Sbのイメージであって、11.65GHzの信号)が含まれていると、そのイメージも400MHzのケーブル伝送用信号Sdに変換されてしまうため、衛星からの受信信号をミキサ22へ入力させる前に、BPF18により、受信信号から上記11.65GHzのイメージを除去して、希望波のみをミキサ22へ入力させることとなる。
【0084】
しかし、この場合、希望波(12.45GHz)とそれのイメージ(11.65GHz)との差が800MHz(=400MHz×2)しかなく、このような十数GHzの高周波域で希望波のみを抽出するには、BPF18として高性能なものが必要となる。
【0085】
これに対して、本第2実施例では、12.45GHzの第2放送信号Sbを、一旦、1GHzの中間周波信号Scに周波数変換し、その中間周波信号Scを、400MHzのケーブル伝送用信号Sdに周波数変換する、といった2段階の周波数変換を行っているため、1回目の周波数変換を行う受信部14において、希望波とそれのイメージとの差を2GHz(=1GHz×2)にまで拡大することができ、BPF18として極めて高性能なものを用いなくても、受信信号から希望波のみを抽出してミキサ22へ入力することができるようになる。
【0086】
このため、衛星から受信した第2放送信号Sbを、より低周波のケーブル伝送用信号Sdへと、確実且つ容易に周波数変換することができるのである。
ここで、前述した各実施例及びその変形例に共通の事項について述べる。
【0087】
例えば、前述した各実施例及びその変形例のギャップフィラー装置において、発振回路52,52’を、それから出力される基準信号Frefの周波数が、GPS衛星からの電波に含まれているクロック信号(以下、GPSクロックという)によって補正されるように構成すれば、より正確な周波数変換が可能となる。
【0088】
具体的には、図4に例示するように、発振回路52,52’は、GPS衛星からの電波を受信してGPSクロックを抽出する受信回路100と、基準信号Frefを出力するための周波数可変型の局部発振回路102と、受信回路100からのGPSクロックと局部発振回路102からの出力とを、予め設定された分周比で夫々分周し、これら分周後の各信号の位相を一致させるための制御信号を生成して局部発振回路102に出力することにより、局部発振回路102から出力される基準信号Frefを一定周波数(前述した実施例との対応では10MHz)に制御するPLL回路104と、から構成することができる。
【0089】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、前述した第2実施例のギャップフィラー装置では、ダウンコンバータ74を、衛星受信アンテナ2の受信部14とは別体のユニットとしたが、受信部14にダウンコンバータ74の機能も持たせて、受信部14とダウンコンバータ74とを1つのユニットとしても良い。
【0090】
一方、前述した各実施例のギャップフィラー装置は、ビルに限らず、トンネルの出入口付近や高速道路の防音壁付近など、他の様々な場所にも設置可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例のギャップフィラー装置の構成を表す構成図である。
【図2】 第1実施例のギャップフィラー装置の設置状態を例示する斜視図である。
【図3】 第2実施例のギャップフィラー装置の構成を表す構成図である。
【図4】 発振回路の構成を表す構成図である。
【符号の説明】
2…衛星受信アンテナ、4…送信機、6a,6b…送信アンテナ、8,8’…同軸ケーブル、10…反射鏡、12…支持腕、14…受信部、16…プローブ、18,30,34,42,54,62,78,90,94,96…BPF(バンドパスフィルタ)、20,28,44,56,60,80,88…増幅回路、22,46,82…ミキサ、24,48,84,104…PLL回路、26,50,86,102…局部発振回路、32,40,64,76,92…方向性結合器、36,73,98…電源部、C1〜C3…コンデンサ、L1〜L4…チョークコイル、PG…ACプラグ、52,52’…発振回路、58…アッテネータ、66…分配器、68…検波回路、70…自動レベル制御回路、72…電源回路、74…ダウンコンバータ、100…受信回路
Claims (3)
- 衛星から地上のサービスエリアへ送信される互いに異なった周波数で且つ同一内容の第1放送信号及び第2放送信号のうち、周波数が高い方の第2放送信号を受信し、その受信した第2放送信号を、前記第1放送信号と同一周波数の中継放送信号に周波数変換して、前記サービスエリア内で前記衛星からの第1放送信号が直接受信できない受信不能エリアへ無線送信する衛星放送システム用ギャップフィラー装置であって、
前記衛星からの第2放送信号を受信し、その受信した第2放送信号を前記第1放送信号よりも周波数が低い所定周波数帯のケーブル伝送用信号に周波数変換して出力端子から同軸ケーブル上に出力する受信変換手段と、
該受信変換手段に前記同軸ケーブルを介して接続され、その同軸ケーブルを介して伝送されてくる前記ケーブル伝送用信号を、前記第1放送信号と同一周波数の前記中継放送信号に周波数変換して前記受信不能エリアへ無線送信する送信手段とを備え、
前記受信変換手段と前記送信手段の各々は、周波数変換をする対象信号と所定周波数の周波数変換用信号とをミキサにより混合することで、その対象信号の周波数変換を行うようになっていると共に、前記周波数変換用信号を、同じ1つの発振回路によって発生される一定周波数の基準信号を用いて生成するようになっており、
更に、前記発振回路は、GPS衛星からの電波に含まれているクロック信号を用いて前記基準信号の周波数を前記一定周波数となるように補正すること、
を特徴とする衛星放送システム用ギャップフィラー装置。 - 請求項1に記載の衛星放送システム用ギャップフィラー装置において、
前記受信変換手段は、
前記衛星からの第2放送信号を受信し、その受信した第2放送信号を前記第1放送信号よりも周波数が低く且つ前記ケーブル伝送用信号よりは周波数が高い信号に周波数変換する第1手段と、
該第1手段にて周波数変換された後の信号を前記ケーブル伝送用信号に周波数変換して、該周波数変換後のケーブル伝送用信号を前記出力端子から前記同軸ケーブル上に出力する第2手段とからなり、
前記第1手段と前記第2手段の各々は、周波数変換をする対象信号と所定周波数の周波数変換用信号とをミキサにより混合することで、その対象信号の周波数変換を行うようになっていると共に、前記周波数変換用信号を前記基準信号を用いて生成するようになっていること、
を特徴とする衛星放送システム用ギャップフィラー装置。 - 地上のサービスエリアへ互いに異なった周波数で且つ同一内容の第1放送信号及び第2放送信号を送信する衛星と、
該衛星から送信される前記第1及び第2放送信号のうち、周波数が高い方の第2放送信号を受信し、その受信した第2放送信号を、前記第1放送信号と同一周波数の中継放送信号に周波数変換して、前記サービスエリア内で前記衛星からの第1放送信号が直接受信できない受信不能エリアへ無線送信するギャップフィラー装置と、
を備えた衛星放送システムにおいて、
前記ギャップフィラー装置は、請求項1又は請求項2に記載の衛星放送システム用ギャップフィラー装置であること、
を特徴とする衛星放送システム。
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