JP4438155B2 - 印刷機のローラー調整方法とローラー調整装置、およびオフセット印刷機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はオフセット印刷機のローラーを調整する技術に関わり、特には、インキローラーや湿し水ローラーのニップ圧調整に好適な技術を提供する。
【0002】
【従来の技術】
オフセット印刷機では、インキの供給源であるインキ壷から印刷版面までの間に多数のインキローラーが存在し、インキを練る役割とインキを伝達する役割、さらに急激なインキ量の変化を防ぐバッファーの役割を果たしている。
【0003】
これらのインキローラー群は、ローラーの軸方向でムラ無く均一に、適切なニップ圧で接触していることが望ましい。ニップ圧とはローラーの接触面にかかる圧力のことであるが、これに左右ムラがあると、インキの伝達量にもムラが生じ、印刷紙面上のインキ量調節が困難になる。またローラーの片減りにより、ローラーの磨耗が早まったり、機械故障を引き起こす原因となる。
【0004】
ローラー間のニップ圧の調整方法としては、ローラーにインキを巻いた状態で一組ずつ着脱を行い、ローラー上にできた帯状のマークの幅を測定する方法が取られている。なお、この帯状のマークの幅をニップ幅と呼び、印刷現場では一般的に使用されている言葉である。
【0005】
また、隙間ゲージと呼ばれる数種類の厚さの表示されている金属板を使う方法もある。これは、標準ニップ圧の厚さを持つ金属板をローラー間にさし込み、それを引き抜くときの強さ加減から、だいたいのローラー間の隙間を判断する方法である。
【0006】
しかし、これらの方法は測定誤差が大きく、個人のスキルにも大きく影響されるため、高い精度を要求され、且つ工業手段として標準化や安定化が望まれる印刷機のインキの伝達量調節の目的には、必ずしも適当ではない。
【0007】
一方湿し水の伝達も、湿し水の供給源である水舟から印刷版面まで3本から4本のローラーを介して供給される。そしてこれらのローラー間のニップ圧の調整も、インキローラーとほぼ同様の手順で行われる。
【0008】
ただし、印刷機の電源をオフにする時には、ローラーの劣化を防ぐために、水舟の湿し水を空にする。この場合には、ローラーの変形やへたりを防止するために、ローラーを逃がした状態にするので、次に印刷機を使用する時には、必ずローラー間のニップ圧調整が必要となる。
【0009】
この時のニップ圧調整は、実際に湿し水を伝達している状態で、ローラー表面の湿し水膜からの反射光を目視で確認しながら、左右方向のムラがないようにローラー両端の調節ネジを手で回すことにより行われる。
【0010】
この方法は、調整結果が印刷オペレータのスキルに大きく依存しており、個人差による精度のバラツキが大きい。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、オフセット印刷機のローラーの調整を、特にはインキローラーのニップ圧調整や湿し水ローラーのニップ圧調整を、印刷オペレータのスキルに頼る必要が無く、容易に且つ精度良く調整することを可能とする印刷機のローラー調整方法とローラー調整装置、およびオフセット印刷機を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために提供する請求項1に示す発明は、オフセット印刷機の印刷ユニット内の、印刷版に最も近い金属製インキローラー上の各点において、該インキローラー上のインクと湿し水の混合物に赤外線照射を行い、その反射光を受光して、照射した赤外線と反射光とから赤外線の吸収量を測定し、該吸収量を信号変換して膜厚を特定することにより、インキ量と湿し水量との両方を測定し、該測定の結果に基づいて、該インキローラーの中心部のインキ量及び湿し水量を基準として、予め登録されたしきい値と、該測定点でのインキ量及び湿し水量と基準値との偏差と、を比較した結果、許容範囲内であるか否かを判断して、インキローラーのニップ圧調整と湿し水ローラーのニップ圧調整のうちのいずれか片方か又は両方を行うこと、を特徴とする印刷機のローラー調整方法である。
【0013】
また請求項2に示す発明は、オフセット印刷機の印刷ユニット内の、印刷版に最も近い金属製インキローラー上の各点において、該インキローラー上のインクと湿し水の混合物に赤外線照射を行い、その反射光を受光して、照射した赤外線と反射光とから赤外線の吸収量を測定し、該吸収量を信号変換して膜厚を特定することにより、インキ量と湿し水量との両方を測定可能なインキ量湿し水量測定手段と、該測定の結果に基づいて、該インキローラーの中心部のインキ量及び湿し水量を基準として、予め登録されたしきい値と、該測定点でのインキ量及び湿し水量と基準値との偏差と、を比較した結果、許容範囲内であるか否かを判断して、インキローラーのニップ圧調整と湿し水ローラーのニップ圧調整のうちのいずれか片方か又は両方を行うべきか否かを示すことが可能なローラーのニップ圧調整判断手段、これらを全て具備することを特徴とする印刷機のローラー調整装置である。
【0014】
そして、請求項3に示す発明は、請求項2に記載の印刷機のローラー調整装置を備えていることを特徴とするオフセット印刷機である。
【0015】
尚、本発明でいう「印刷版に近い金属製インキローラー」の意味は次のとおり。すなわち、インクと湿し水との混合物は、一般に複数用意されてあるインキローラー(すなわちインキローラー群)を介して印刷版に送られていく。そして、そのインクと湿し水との混合物が印刷版に送られていく経路上にあり、材質が特に金属製であるインキローラーであって、その経路上でより印刷版に近いインキローラーという事である。
【0016】
ここで、そのインキローラーとして金属製のものを好適とする理由は、インク量と湿し水量とを測定しようとする際に、インキローラー上にあるインクと湿し水との混合物に赤外線照射を行いその反射光を受光して測定解析する方式が便利であるが、その際にはインキローラーが金属製(鏡面)であることがこの測定方式にとって測定が非常に好都合になるからである。また印刷版に近いほど、インクと湿し水との混合物の状態が、実際に印刷される際の状態に近いので、前記経路上でなるだけ印刷版に近いインキローラーが好適となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
オフセット印刷機の各インキキーの開度を一定にする。この場合、普段のメンテナンスにより、実際のインキキーの開き幅も一定になっている必要がある。
この状態で、オフセット印刷機の印刷ユニット内の、インキローラー上のインキ量および湿し水量両方を、赤外光の吸収を利用したセンサーで測定する。
【0018】
測定の対象となるインキローラーは、赤外光の吸収を利用したセンサーを使用するため、金属性のローラーに限定される。印刷ユニットには、10から20のインキローラーがあるが、その中で金属性のものは6個程度である。この中から、印刷版に最も近い金属性のインキローラーを、測定対象とする。
【0019】
測定結果は信号変換部を経て、制御装置に送られる。制御装置では変換された信号から、ローラー中心部のインキ量、湿し水量を基準として、各測定点での偏差を計算する。計算された偏差は、あらかじめ登録してあったしきい値と比較され、許容範囲内であれば表示部では緑、範囲を越えていれば赤で表示される。
【0020】
表示部は延長コードにより、1色目の印刷ユニットから4色目のユニットまで移動でき、オペレータは調節したい印刷ユニットへ表示部を運び、それを見ながら、ニップ圧の調節を行うことができる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0022】
図1に本実施例で使用した印刷機の印刷ユニット内のローラー配列の一部と、本発明のシステム構成を示す。
本実施例では、印刷版3に最も近い往復ローラー(金属製ローラー)を、本発明でいう印刷版に近い金属製ローラーに該当する測定対象ローラー8とした。
【0023】
オフセット印刷機の各インキキーの開度を一定にする。あらかじめメンテナンスをおこなっておいたので、実際のインキキーの開き幅もほぼ一定にっていることを、インキツボローラー上で確認した。
【0024】
測定対象ローラー8を、赤外光の吸収を利用したセンサー17で測定した。測定結果は、信号変換部を経て、制御部18に送られる。
【0025】
制御部18では変換された信号から、測定対象ローラー8の中心部のインキ量、湿し水量を基準として、各測定点での偏差を計算し、あらかじめ記憶部19に登録してあったしきい値と比較され、許容範囲内であれば表示部20では緑、範囲を越えていれば赤で表示される。本実施例では、インキ量のしきい値を0.1μm、湿し水量のしきい値を0.05μmとした。
【0026】
表示部20を印刷ユニットのインキローラー調節部分から見える位置に移動し、測定点毎の緑・赤の表示を見ながら、インキローラーニップ圧の調節を行い、全ての測定部の信号が緑になったのを確認した。
【0027】
次に、表示部20を印刷ユニットの湿し水ローラー調節部分から見える位置に移動し、測定点毎の緑・赤の表示をみながら、湿し水ローラーニップ圧の調節を行い、全ての測定部の信号が緑になったのを確認した。
【0028】
その後、実際の印刷をおこなったところ、インキキー開度の調節がスムースにでき、面内の濃度ムラの少ない高品質な印刷物を作成することができた。また、印刷版を交換し、異なった絵柄を印刷する際に、印刷版上の絵柄面積率を測定し、インキキー開度の設定値をあらかじめセットする、インキプリセットシステムを使用したところ、見当の調節だけでインキキーをあまり調節すること無しに、刷り始めから本紙に近い印刷物を得ることができた。
【0029】
【発明の効果】
本発明による印刷機のローラー調整方法により、ローラー間のニップ圧調節を印刷オペレータのスキルによらず簡単に、しかも精度良く行うことができ、面内ムラの少ない高品質な印刷物を安定して製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の印刷機のローラー調節方法の一実施例における、印刷機の印刷ユニット内のローラー配列および本発明のシステム構成の概要を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
1・・・印刷用紙
2・・・ブランケット胴
3・・・印刷版
4・・・水舟
5・・・水元ローラー
6・・・水練ローラー
7・・・水着ローラー
8・・・測定対象ローラー(印刷版に近い金属製ローラー)
9〜11・・・インキ着ローラー
12〜16・・・インキ練りローラー
17・・・センサー
18・・・制御部
19・・・記憶部
20・・・表示部
Claims (3)
- オフセット印刷機の印刷ユニット内の、印刷版に最も近い金属製インキローラー上の各点において、該インキローラー上のインクと湿し水の混合物に赤外線照射を行い、その反射光を受光して、照射した赤外線と反射光とから赤外線の吸収量を測定し、該吸収量を信号変換して膜厚を特定することにより、インキ量と湿し水量との両方を測定し、
該測定の結果に基づいて、該インキローラーの中心部のインキ量及び湿し水量を基準として、予め登録されたしきい値と、該測定点でのインキ量及び湿し水量と基準値との偏差と、を比較した結果、許容範囲内であるか否かを判断して、インキローラーのニップ圧調整と湿し水ローラーのニップ圧調整のうちのいずれか片方か又は両方を行うこと、
を特徴とする印刷機のローラー調整方法。 - オフセット印刷機の印刷ユニット内の、印刷版に最も近い金属製インキローラー上の各点において、該インキローラー上のインクと湿し水の混合物に赤外線照射を行い、その反射光を受光して、照射した赤外線と反射光とから赤外線の吸収量を測定し、該吸収量を信号変換して膜厚を特定することにより、インキ量と湿し水量との両方を測定可能なインキ量湿し水量測定手段と、
該測定の結果に基づいて、該インキローラーの中心部のインキ量及び湿し水量を基準として、予め登録されたしきい値と、該測定点でのインキ量及び湿し水量と基準値との偏差と、を比較した結果、許容範囲内であるか否かを判断して、インキローラーのニップ圧調整と湿し水ローラーのニップ圧調整のうちのいずれか片方か又は両方を行うべきか否かを示すことが可能なローラーのニップ圧調整判断手段、
これらを全て具備することを特徴とする印刷機のローラー調整装置。 - 請求項2に記載の印刷機のローラー調整装置を備えていることを特徴とするオフセット印刷機。
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