図1は、本発明の第1の実施の形態に係る液体供給装置1の構成を示す図である。液体供給装置1は、液体が流れる流路11、流路11の上流側に接続されて液体が貯溜される液体供給源12、液体供給源12の下流側に配置されて液体供給源12からの液体を貯溜するとともに流路11の下流側に液体を送出するポンプ機構13、ポンプ機構13の下流側に配置されて流路11を流れる液体の単位時間当たりの流量を測定する差圧式の流量計14、および、これらの機構を制御する制御部15を備える。流路11上には、液体供給源12とポンプ機構13との間に第1フィルタ111および第1チェックバルブ112が設けられ、ポンプ機構13と流量計14との間に第2チェックバルブ113が設けられ、さらに、流量計14の下流側に圧力調整用チューブ147および第2フィルタ114が設けられる。なお、図1では、断面の平行斜線を省略している。
液体供給源12は、接液部がフッ素樹脂(例えば、PTFE(ポリテトラフロロエチレン))により被覆されたボトルであり、大気開放されている。液体供給源12には塩酸やフッ酸等の原液が貯溜されており、これらの原液は流路11を介してポンプ機構13に供給される。第1フィルタ111は、例えば、PTFEにより形成されており、第1フィルタ111によりポンプ機構13に供給される液体からパーティクル等の不純物が除去される。第2フィルタ114も同様に、PTFE等のフッ素樹脂により形成されており、例えば、0.05μmのメッシュを有する。液体供給装置1では、第2フィルタ114により、液体供給装置1から他の装置等に供給される液体から不純物が除去される。
第1チェックバルブ112および第2チェックバルブ113は、例えば、全体がPFA(パーフロロアルキルビニルエーテル)により形成されており、各チェックバルブの下流側から上流側へと液体が逆流することを防止する。第1チェックバルブ112および第2チェックバルブ113は、フッ素樹脂製の外筒部内にサファイアボールおよびサファイアバルブシートが設けられた構造を有するものとされてもよい。
液体供給源12の接液部、第1フィルタ111および第2フィルタ114、並びに、第1チェックバルブ112および第2チェックバルブ113は、フッ素樹脂等により形成されているため、様々な種類の液体に対して高い耐久性(主に、耐蝕性)を有する。圧力調整用チューブ147については、流量計14の詳細な説明と併せて後述する。
ポンプ機構13は、変形可能な樹脂製の可変容器131、略円筒状の可変容器131を内部に収容する略円筒状の耐圧容器132、並びに、耐圧容器132内にエアを供給または排出して耐圧容器132と可変容器131との間の圧力を調整する電空レギュレータ133およびエジェクタ134を備える。可変容器131は、第1チェックバルブ112および第2チェックバルブ113の間において流路11に接続される。また、電空レギュレータ133およびエジェクタ134はそれぞれ、エア弁1331,1341を介して耐圧容器132に接続される。
可変容器131は、ベローズ1311をその一部として備える。可変容器131の材料としては、PTFE、PFA、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PCTFE(ポリクロロトリフロロエチレン)、ETFE(エチレンテトラフロロエチレン)、FEP(フロリネイテッドエチレンプロピレン)等があり、取り扱う液体の種類等に基づいて可変容器131の材質が決定される。本実施の形態では、可変容器131はPFA等のフッ素樹脂により形成される。耐圧容器132は通常、可変容器131内に貯溜される液体と接することはないため、可変容器131よりも液体に対する耐久性がやや低い塩化ビニル等により形成されてよい。
電空レギュレータ133は、外部の圧縮空気供給源に接続される加圧のためのエアの流入口、圧力開放のための流出口、および、耐圧容器132の内部に接続されて耐圧容器132と可変容器131との間の圧力を調整するための出力口を備え、制御部15のフィードバックコントローラ151から与えられる電気信号に基づいて(例えば、入力電流等に比例して)、指示された圧力に一致するように耐圧容器132と可変容器131との間の圧力を無段階かつ連続的に制御する。電空レギュレータ133により耐圧容器132内の圧力が制御される際には、制御部15のシーケンスコントローラ152により駆動される電磁弁1332によりエア弁1331が開放される。
エジェクタ134は、レギュレータ1343およびエア弁1344を介して外部の圧縮空気供給源と接続されており、エジェクタ134により耐圧容器132内のエアが排出される際には、シーケンスコントローラ152により駆動される電磁弁1342,1345によりエア弁1341,1344が開放され、圧縮空気供給源からのエアがエジェクタ134から高速度にて流出することにより、耐圧容器132内のエアがエジェクタ134を介して排出される。なお、ポンプ機構13では、エア弁1331,1341,1344に代えて電磁弁が用いられてもよい。
図2および図3は、ポンプ機構13の可変容器131および耐圧容器132近傍を拡大して示す図である。図2および図3はそれぞれ、可変容器131が伸張および圧縮された状態示す。ポンプ機構13では、ベローズ1311を有する可変容器131の上端部1312が耐圧容器132に固定されており、下端部1313が自由端とされる。
ポンプ機構13では、電空レギュレータ133(図1参照)により、耐圧容器132の底部(すなわち、可変容器131の下端部1313と対向する側の部位)から耐圧容器132内にエアが供給されて可変容器131に圧力を加えられることにより、図2に示す状態(以下、「伸張状態」という。)から可変容器131が圧縮されて図3に示す状態(以下、「圧縮状態」という。)へと徐々に変形する。このように、可変容器131に圧力を加えて容積を減少させることにより、可変容器131内の液体が流路11に送出される。可変容器131から送出された液体は、チェックバルブ112により液体供給源12側(すなわち、上流側)に流れることが防止され、チェックバルブ113を介して流量計14側(すなわち、下流側)へと流れる。
また、ポンプ機構13では、エジェクタ134(図1参照)により、耐圧容器132の底部から耐圧容器132内のエアが排出されて耐圧容器132内が負圧へと減圧されることにより、可変容器131が図3に示す圧縮状態から図2に示す伸張状態へと徐々に変形する。このように、可変容器131を伸張して容積を増大させることにより、流路11およびチェックバルブ112を介して液体供給源12から液体が吸引されて可変容器131に流入し、可変容器131に貯溜される。このとき、チェックバルブ113により、ポンプ機構13よりも下流側から液体が吸引されることが防止される。
ポンプ機構13では、可変容器131と耐圧容器132との間の空間、すなわち、電空レギュレータ133による圧力制御の対象となる空間の体積が小さくされることにより、液体供給源12から可変容器131への液体の吸引、および、可変容器131からの液体の送出の応答性を高めることができる。
図2および図3に示すように、ポンプ機構13は、可変容器131の自由端である下端部1313の耐圧容器132に対する変位を検出する変位センサ135、および、万一可変容器131からの液体の漏出があった場合にこれを検出する漏液センサ136を備える。
変位センサ135は、耐圧容器132の側面(すなわち、ベローズ1311の伸張および圧縮方向に平行な面)において、図2に示す伸張状態の可変容器131を挟んで互いに対向する光出射部1351および受光部1352を2組備える。ベローズ1311の伸張および圧縮方向における光出射部1351および受光部1352の取付位置は、1組は、伸張状態の可変容器131の下端部1313とほぼ同じであり、もう1組は、図3に示す圧縮状態の可変容器131の下端部1313よりも僅かに耐圧容器132の底部側とされる。
ポンプ機構13では、図2に示すように可変容器131が伸張状態である場合、2つの光出射部1351からの光が可変容器131に遮られ、変位センサ135により可変容器131が伸張状態であると判断される。また、図3に示すように可変容器131が圧縮状態である場合、2つの光出射部1351からの光が耐圧容器132の内部を通過して受光部1352に受け付けられ、変位センサ135により可変容器131が圧縮状態であると判断される。耐圧容器132の底部側の光出射部1351からの光が対向する受光部1352により受け付けられ、もう1つの光出射部1351からの光が受光部1352に届かない場合は、変位センサ135により可変容器131の状態が図2および図3に示す状態の中間であると判断される。
漏液センサ136は1対の電極1361を備え、1対の電極1361は、耐圧容器132の内側の底部に設けられた溝1321の底部に配置される。ポンプ機構13では、可変容器131から液体が漏出した場合、漏出した液体が耐圧容器132の底部において溝1321に溜まり、1対の電極1361が溝1321内の液体(電解液)を介して互いに電気的に接続される。そして、漏液センサ136により1対の電極1361間の導通が検出されることにより、可変容器131からの液体の漏出が検知される。
図4および図5は、流量計14の構成を示す正面図および平面図である。図4および図5に示すように、流量計14は、流路11(図1参照)の一部として設けられた圧損部である円管状の圧損チューブ143、圧損チューブ143が取り付けられるチューブベース144、ポンプ機構13(図1参照)と圧損チューブ143との間(図4および図5中の左側)に配置されて圧損チューブ143に流入する液体の圧力を計測する第1圧力計141、圧損チューブ143の下流側に配置されて圧損チューブ143から流出する液体の圧力を計測する第2圧力計142を備え、さらに、図4に示すように、情報を記憶する記憶部145、および、種々の演算を行う演算部146を備える。
圧損チューブ143は樹脂製であり、様々な種類の液体に対して高い耐久性(主に、耐蝕性)を有する。また、圧損チューブ143は可撓性を有し、図4に示すように、チューブベース144の上側でコイル状に整形されている。圧損チューブ143の材料としては、PEEK、PTFE、PCTFE、PFA、ETFE、FEP等があり、測定対象の液体の種類や圧損チューブ143の内径等に基づいて圧損チューブ143の材質が決定される。本実施の形態では、圧損チューブ143はPFA製とされる。
圧損チューブ143の内径は、流量計14の測定流量の上限値に基づき、圧損チューブ143内の液体の流れのレイノルズ数が2000以下となるように決定される。レイノルズ数とは流れの性質(すなわち、流れが層流であるか乱流であるか)を表す無次元数であり、レイノルズ数が臨界レイノルズ数(約2000〜2300)より小さい場合に流れが層流となる。円管状の圧損チューブ143のレイノルズ数Reは、圧損チューブ143の内径をD(m)として数1のように表される。
ここで、ρおよびμは圧損チューブ143内を流れる液体の密度(kg/m3)および粘性係数(N・s/m2)を示し、Uは圧損チューブ143の長手方向に垂直な断面における液体の平均流速(m/s)、Qは液体の流量(m3/s)を示す。
流量計14では、測定範囲内におけるレイノルズ数の最大値(すなわち、測定流量の上限におけるレイノルズ数)が2000以下とされて圧損チューブ143内において層流が形成される。このため、液体の流れが十分に発達する(すなわち、圧損チューブ143の断面内における流れの速度分布が静定する)までに要する助走距離X(m)は、レイノルズ数Reおよび圧損チューブ143の内径D(m)を用いて、ブジネスク(Boussinesq)の理論式として数2のように表される。
圧損チューブ143の長さは、レイノルズ数が2000である場合であっても助走距離よりも長くなるように、内径の130倍以上とされることが好ましい。圧損チューブ143の長さは、圧損チューブ143において要求される圧力損失の大きさ(すなわち、圧損チューブ143の両端における差圧)により決定され、また、圧損チューブ143の外径は、樹脂製の圧損チューブ143の機械的強度を確保するために、内径の1.5倍以上とされる。
チューブベース144は樹脂製(例えば、フッ素樹脂であるPTFE製)のブロックであり、内部にL字状および逆L字状の流路を有する。図4に示すように、チューブベース144の上面には、圧損チューブ143の両端が樹脂製のチューブフィッティングを介して着脱可能に取り付けられる。チューブフィッティングとしては、液体クロマトグラフィ等に利用される種々の小径フィッティングが利用可能である。チューブベース144の内部の流路、圧損チューブ143、並びに、後述する第1圧力計141および第2圧力計142の内部の流路および受圧室1411,1421は、液体供給装置1の流路11の一部でもある。
図4および図5に示すように、第1圧力計141および第2圧力計142は、高さが低いため液体注入時のエア抜きが容易な(いわゆる、エア抜け性が良好な)略円筒状の受圧室1411,1421を備え、図4に示すように、受圧室1411,1421に設けられる接液部1412,1422は樹脂製(例えば、フッ素樹脂であるPTFE製)とされる。第1圧力計141および第2圧力計142では、内部の流路および受圧室1411,1421が枝分かれすることなく接続されているため、液体の滞留が防止される。また、第1圧力計141および第2圧力計142の内部の流路の両端部は、接続が容易な継ぎ手構造とされる。本実施の形態では、第1圧力計141および第2圧力計142の計測範囲は、0〜0.2MPa(メガパスカル)とされる。
流量計14では、上流側から第1圧力計141に継続的に流入する液体が、第1圧力計141、チューブベース144および圧損チューブ143、並びに、第2圧力計142を順次通過して下流側へと流出する。そして、流量計14内を液体が流れ続けている間、継続的に液体の流量が測定される。以下、流量計14による液体の流量測定の流れについて説明する。
流量計14では、液体が流れ続けている間、第1圧力計141により圧損チューブ143に流入する液体の圧力が計測され、第2圧力計142により圧損チューブ143から流出する液体の圧力が計測される。そして、第1圧力計141および第2圧力計142からの出力(例えば、両圧力計にて4〜20mA(ミリアンペア)の電気信号として取り込まれた圧力計測値)が演算部146の減算器1461に送られ、減算器1461において第1圧力計141の出力から第2圧力計142の出力が引かれて圧損チューブ143の両端における差圧が求められる。
図6は、圧損チューブ143の両端における差圧と圧損チューブ143を流れる液体の流量との関係(以下、「流量情報」という。)を示す図である。図6に示すように、流量計14では、差圧と流量とはほぼ比例関係にある。なお、圧損チューブ143内の流れはレイノルズ数2000以下の層流であるため、理論上は差圧と流量とは正比例するはずであるが、完全には比例しない理由は、圧損チューブ143の両端近傍における流れの影響、および、圧損チューブ143内面の表面状態等によるものと考えられる。
流量情報は、流量計14が液体供給装置1に取り付けられる前に、以下の方法により予め求められる。まず、第1圧力計141の上流側にシリンジポンプが取り付けられ、一定の吐出量にて液体(好ましくは、純水)が注入される。注入された液体は、第1圧力計141、チューブベース144および圧損チューブ143、並びに、第2圧力計142を通過して流出し、第1圧力計141および第2圧力計142では、液体の通過時における圧力が計測されて差圧が求められる。そして、所定時間の経過後、流量計14から流出した液体の重量が計測され、差圧に対応する流量が求められる。その後、シリンジポンプの吐出量を変更して差圧および流量の計測を繰り返すことにより、図6に示す流量情報が求められる。このようにして求められた流量情報は、流量計14が実際に使用される前に、記憶部145に記憶される。
図4に示す流量計14では、減算器1461により求められた圧損チューブ143の両端における差圧が、例えば、0〜5Vの電気信号としてリニアライザ1462に送られ、また、記憶部145に予め記憶された流量情報がリニアライザ1462により読み出される。リニアライザ1462では、差圧および流量情報に基づいて圧損チューブ143を流れる液体の単位時間当たりの流量が自動的に求められる。なお、記憶部145に記憶される流量情報は、例えば、表形式であってもよく、近似式であってもよい。
図1に示すように、流量計14と第2フィルタ114との間には、既述の圧力調整用チューブ147が設けられている。圧力調整用チューブ147は、圧損チューブ143と同様に、様々な種類の液体に対して高い耐久性を有する樹脂製であり、また、可撓性を有し、コイル状に整形されている。
液体供給装置1では、流量計14から流出した液体が第2フィルタ114を介して他の装置等に供給される前に、圧力調整用チューブ147を通過させることにより液体の圧力を相対的に低下させている。このため、液体供給装置1から供給される液体に要求される供給時の圧力が大気圧にほぼ等しい(すなわち、大気開放に近い)場合であっても、流量計14の第2圧力計142における計測圧力(すなわち、大気圧との差圧)が、計測精度が低くなるゼロ近傍となることを避けることができる。その結果、流量計14における流量の測定精度を向上することができる。流量の測定精度向上の観点からは、圧力調整用チューブ147の長さは、例えば、第2圧力計142により計測される圧力の最低値が、第2圧力計142の計測範囲の下限側から10%以上の範囲(本実施の形態では、20kPa以上)となるよう決定されることが好ましい。
次に、液体供給装置1による液体の供給の流れについて図7を参照して説明する。液体供給装置1により液体が供給される際には、まず、準備作業として、ポンプ機構13および流路11への液体の充填作業が、作業者の操作により行われる。充填作業に際しては、流路11の下流側の端部がドレンに接続される。
そして、図1に示す制御部15のシーケンスコントローラ152により、ポンプ機構13のエア弁1331が閉じられ、エア弁1341,1344が開放されることにより、可変容器131と耐圧容器132との間のエアがエジェクタ134により排出されて耐圧容器132内の減圧が開始される。これにより、予め圧縮状態(図3参照)とされていた可変容器131が伸張され、液体供給源12から液体が吸引されて可変容器131へと供給され、可変容器131に貯溜される。そして、変位センサ135(図2参照)により可変容器131が伸張状態(図2参照)となったことが検出されると、エア弁1341,1344が閉じられて可変容器131への液体の供給が停止される(ステップS11)。本実施の形態では、1回の伸張により可変容器131に供給される液体の量は30mlであり、伸張状態における可変容器131の容積は100mlである。
続いて、可変容器131および流路11にエアが残存しているか否かが作業者により確認され(ステップS12)、エアが残存している場合には、シーケンスコントローラ152によりエア弁1331が開放され、電空レギュレータ133による可変容器131と耐圧容器132との間へのエアの供給が開始されて耐圧容器132内の圧力(すなわち、可変容器131の周囲の圧力)が増大する。これにより、可変容器131が圧縮されて可変容器131および流路11内のエアが、流路11の下流側から液体供給装置1の外部へと排出される。
そして、変位センサ135により可変容器131が圧縮状態となったことが検出されると、エア弁1331が閉じられて可変容器131および流路11からのエアの排出が停止され(ステップS121)、ステップS11に戻って可変容器131への液体の供給が再度行われる。液体供給装置1では、可変容器131および流路11からエアが完全に排出されて液体が充填されるまで、可変容器131への液体の供給、並びに、可変容器131および流路11からのエアの排出(ステップS11〜S121)が繰り返される。
可変容器131および流路11からエアが完全に排出されると(ステップS12)、流路11の下流側の端部が供給対象の装置等に接続され、ステップS121と同様に、電空レギュレータ133により耐圧容器132の内部にエアが供給されて可変容器131に圧力が加えられ、伸張状態の可変容器131が圧縮されることにより、可変容器131内に貯溜されている液体が流路11に送出されて他の装置等に供給される(ステップS13)。液体供給装置1では、ポンプ機構13による可変容器131からの液体の送出が行われている間、図8に示す流量制御が継続して行われる。次に、液体供給装置1による流量制御の流れについて説明する。
液体供給装置1では、ポンプ機構13から流路11への液体の送出が開始されると、ポンプ機構13の下流側に配置される流量計14により、流路11を流れる液体の単位時間当たりの流量が測定され、制御部15のフィードバックコントローラ151に送られる(ステップS131)。続いて、フィードバックコントローラ151により、流量計14により求められた測定流量が予め外部から入力されて設定された設定流量に等しいか否かが判断される(ステップS132)。
測定流量が設定流量と異なる場合には、流路11を流れる液体の単位時間当たりの流量が設定流量となるように、測定流量に基づいてフィードバックコントローラ151からポンプ機構13の電空レギュレータ133へと圧力指令値が電気信号として与えられ、可変容器131に加えられる圧力が制御される(ステップS133)。また、測定流量が設定流量と同じ場合には、可変容器131に加えられる圧力はそのまま維持される。本実施の形態では、フィードバックコントローラ151による制御方法として、PID制御が用いられる。また、フィードバックコントローラ151から電空レギュレータ133へと送られる電気信号は、4〜20mAの電流とされる。
ポンプ機構13では、可変容器131が圧縮されるにしたがい、可変容器131のベローズ1311による反発力(すなわち、圧縮を押し返そうとする力)が徐々に大きくなるため、通常、可変容器131と耐圧容器132との間の圧力を徐々に増大させるように電空レギュレータ133の制御が行われて測定流量が設定流量に等しくされる。
液体供給装置1では、ポンプ機構13からの液体の送出が終了したか否かが判断され(ステップS134)、可変容器131からの液体の送出が行われている間、流量を測定して可変容器131に加えられる圧力を制御する工程(ステップS131〜S133)が繰り返される。このように、液体供給装置1では、流路11を流れる液体の流量が設定流量となるように流量制御が行われつつ他の装置等への液体の供給が行われる。そして、変位センサ135により可変容器131が圧縮状態となったことが検出されると、エア弁1331が閉じられて可変容器131から流路11への液体の送出が終了し(ステップS134)、流量計14による流量測定および制御部15による電空レギュレータ133の制御も終了して他の装置等への液体の供給が終了する。本実施の形態では、可変容器131の1回の圧縮による液体の供給量は30mlである。
なお、図7では図示を省略しているが、液体供給装置1による液体の供給を繰り返す場合には、ステップS13の後にステップS11に戻り、再び可変容器131を伸張して液体供給源12から液体を吸引する。この場合、可変容器131が伸張状態となったときに、可変容器131および流路11にはエアが残存しておらず液体が充填されているため、可変容器131および流路11からエアを排出する行程(ステップS12,S121)が省略されて、ステップS11,S13が繰り返される。
以上に説明したように、液体供給装置1では、ポンプ機構13の可変容器131に圧力が加えられて可変容器131内の液体が流路11に送出されている間、流量計14により流路11を流れる液体の単位時間当たりの流量が測定され、測定流量が設定流量となるように、可変容器131に加えられる圧力がフィードバックコントローラ151により制御される。液体供給装置1では、可変容器131に加えられる圧力を高精度に制御することにより、流量を精度良く制御しつつ微小流量の液体を供給することができる。
また、液体供給装置1では、ポンプ機構13の可変容器131、および、流量計14の圧損チューブ143が、様々な液体に対する高い耐久性を有する樹脂製であり、その他の液体に接触する種々の構成もフッ素樹脂等の高耐久性材料により形成されているため、様々な種類の液体の供給を行うことができる。
ポンプ機構13では、可変容器131がベローズ1311を備えているため、可変容器131の容積を容易に、すなわち、小さい力で変更することができる。また、可変容器131を圧縮する際にベローズ1311が全体として縮み、圧縮時の可変容器131の屈曲が一部分に集中することが防止されるため、ポンプ機構13の使用時における可変容器131の圧縮と伸張の繰り返しによる劣化を抑制することができる。
また、ポンプ機構13では、可変容器131が収容された耐圧容器132内の圧力を電空レギュレータ133により調整することにより、耐圧容器132と可変容器131との間の圧力を応答性良く高精度に制御することができる。
ポンプ機構13では、図2に示すように可変容器131の下端部1313が自由端とされる。図9は、可変容器の下端部が自由端ではないポンプ機構93の一部を比較例として示す図である。比較例のポンプ機構93では、耐圧容器932の下部に円筒状のシリンダ部9322が設けられ、シリンダ部9322の内側には、耐圧容器932の底部を貫通して可変容器931の下端部9313に接続されるピストン9323が設けられる。ピストン9323は、シリンダ部9322の内側に配置される円板状の底部9324、および、底部9324から上向きに突出して耐圧容器932の底部の貫通孔9326に挿入される円柱状の軸部9325を備える。底部9324の側面とシリンダ部9322の内側面との間、および、軸部9325の外側面と貫通孔9326の内側面との間はエアが漏れないようにシールされている。
ポンプ機構93では、耐圧容器932と可変容器931との間にエアが供給されて可変容器931が圧縮されることにより、可変容器931内の液体が送出される。また、耐圧容器932の底部、シリンダ部9322、および、ピストン9323の底部9324に囲まれる空間にエアが供給され、ピストン9323の底部9324が耐圧容器932の底部から相対的に離れることにより、可変容器931が伸張されて可変容器931に液体が供給される。
ポンプ機構93では、可変容器931からの液体の送出および供給のいずれの際にも、可変容器931の下端部9313と共にピストン9323が上下に移動する。ピストン9323の移動時には、底部9324がシリンダ部9322の内側面に擦れ、軸部9325が貫通孔9326の内側面に擦れて摺動抵抗が生じるため、ピストン9323を低速にて移動する場合、可変容器931の下端部9313の上下動にいわゆるビビリやシャクリが発生してしまい、可変容器931の圧縮および伸張が不安定になってしまう。
これに対して、上記実施の結果に係るポンプ機構13では、図2に示すように可変容器131の下端部1313が自由端とされるため、可変容器131の耐圧容器132に対する摺動を防止することにより、あるいは、摺動が発生した場合であっても摺動抵抗を非常に小さいものとすることにより、可変容器131を安定して(すなわち、ビビリやシャクリの発生を防止しつつ)圧縮することができる。その結果、液体供給装置1では、供給する液体の流量をより高精度に制御することができる。
ポンプ機構13では、可変容器131の下端部1313の変位を検出する変位センサ135が設けられることにより、耐圧容器132内部の可変容器131の動作を監視することができるため、液体供給装置1の動作の信頼性を向上することができる。また、耐圧容器132の底部に漏液センサ136が設けられることにより、万一可変容器131から液体が漏出した場合であっても、速やかに漏出を検知することができるため、液体供給装置1の動作の信頼性をさらに向上することができる。
流量計14では、液体の流れが層流とされることにより圧損チューブ143の両端における差圧と流量との関係がほぼ比例関係となるため、差圧および流量の分解能が大きく変化してしまうことが防止され、差圧の大きさにかかわらず流量の測定精度をほぼ一定とすることができる。また、流量が差圧の平方根にほぼ比例する乱流域を利用する他の測定に比べて、差圧の変化量に対する流量の変化量が大きくなるため、測定精度を向上することができるだけでなく、測定できる流量の範囲を拡大することもできる。流量計14では、圧損チューブ143内の流れのレイノルズ数を2000以下として流れの状態が不安定になる遷移域を避け、流れを確実に層流とした上で差圧を求めることにより、液体の流量が微小である場合であっても、高い精度にて安定して流量の測定を行うことができる。その結果、液体供給装置1では、流量をより高精度に制御しつつ微小流量の液体を供給することができる。
流量計14では、圧損部として長い圧損チューブ143を利用して液体の圧力を徐々に減少させることにより、微小流量の液体の流量測定であっても、圧損チューブ143の内径を極端に小さくすることなく有意な差圧を得ることができる。したがって、圧損チューブ143の内径を比較的大きくすることができ、圧損チューブ143を流れる液体の流速も極端に大きくする必要がない。その結果、圧損チューブ143に異物が詰まることが防止され、また、圧損チューブ143の下流側の端部近傍等におけるキャビテーションの発生も防止することができる。このように、流量計14は、微小流量の液体の高精度な流量測定が必要とされる液体供給装置1に特に適している。
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る液体供給装置1aの構成を示す図である。図10に示すように、液体供給装置1aは、図1に示す液体供給装置1と同様の構造を有し、ポンプ機構13と同構造のもう1つのポンプ機構13aをさらに備える。以下の説明では、ポンプ機構13とポンプ機構13aとを区別するために、それぞれ、「第1ポンプ機構13」および「第2ポンプ機構13a」という。その他の構成は図1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。なお、図10では、断面の平行斜線を省略している。
液体供給装置1aでは、液体供給源12と第1ポンプ機構13および第2ポンプ機構13aとの間において流路11が2つに分割され、第1ポンプ機構13および第2ポンプ機構13aと流量計14との間において分割された流路11が合流している。流路11の2つに分割された部位では、一方の分割流路上に設けられた第1チェックバルブ112および第2チェックバルブ113の間に第1ポンプ機構13が接続され、他方の分割流路上に設けられた第3チェックバルブ112aおよび第4チェックバルブ113aの間に第2ポンプ機構13aが接続される。また、流路11に流れる液体の単位時間当たりの流量を測定する流量計14は、上記分割流路の合流点よりも下流側に設けられる。
第2ポンプ機構13aは、第1ポンプ機構13と同様に、変形可能な樹脂製の可変容器131a(以下、「第2可変容器131a」という。また、これと区別するために、第1ポンプ機構13の可変容器131を、「第1可変容器131」という。)、第2可変容器131aを内部に収容する耐圧容器132a、および、耐圧容器132aと第2可変容器131aとの間の圧力を調整する電空レギュレータ133aを備える。
第2可変容器131aは、第1可変容器131と同様にベローズ1311aを備え、ベローズ1311aの下端部は自由端とされる。また、耐圧容器132aには、図2に示す耐圧容器132と同様に、ベローズ1311aの下端部の耐圧容器132aに対する変位を検出する変位センサ、および、万一第2可変容器131aからの液体の漏出があった場合にこれを検出する漏液センサが設けられる。第2ポンプ機構13aにおいても、第2可変容器131aが圧縮状態であるか、伸張状態であるか、あるいは、その中間の状態であるかが変位センサにより検出される。
耐圧容器132aは、エア弁1331aを介して電空レギュレータ133aと接続されており、また、エア弁1341aを介して第1ポンプ機構13のエジェクタ134と接続される。すなわち、第1ポンプ機構13および第2ポンプ機構13aは、エジェクタ134を共用している。エア弁1331a,1341aは、電磁弁1332a,1342aにより駆動される。第2ポンプ機構13aでは、これらの弁、電空レギュレータ133aおよびエジェクタ134が制御部15により制御されることにより、第2可変容器131aが圧縮および伸張し、液体供給源12から液体を吸引して貯溜し、また、流路11に液体を送出する。
液体供給装置1aでは、制御部15の制御により、第1ポンプ機構13の第1可変容器131、および、第2ポンプ機構13aの第2可変容器131aのうちの一方の圧縮、並びに、これと並行する他方の伸張が、第1可変容器131および第2可変容器131aに対して交互に行われることにより、液体の連続的な供給が行われる。
図11および図12は、液体供給装置1aによる液体の供給の流れを示す図である。図13は、後述するステップS23以降の各ステップにおける第1ポンプ機構13および第2ポンプ機構13aの動作の切り替えの様子を示す図であり、各ステップに対応する位置にそのステップの符号を付している。以下、図11〜図13を参照しつつ液体供給装置1aの動作の流れを説明する。
液体供給装置1aにより液体が供給される際には、第1の実施の形態と同様に、第1ポンプ機構13、第2ポンプ機構13aおよび流路11に対する液体の充填作業が作業者により最初に行われる。まず、第1可変容器131と耐圧容器132との間のエアがエジェクタ134により排出されて耐圧容器132内が減圧され、第1可変容器131が圧縮状態(図3参照)から伸張状態(図2参照)へと伸張されることにより、液体供給源12から液体が吸引されて第1可変容器131に貯溜される。また、これと並行して、第2可変容器131aと耐圧容器132aとの間のエアがエジェクタ134により排出されて耐圧容器132a内が減圧され、第2可変容器131aが圧縮状態から伸張状態へと伸張されることにより、液体供給源12から液体が吸引されて第2可変容器131aに供給され、伸張状態となった第2可変容器131aに貯溜される(ステップS21)。
第1可変容器131および第2可変容器131aが伸張状態になると、第1可変容器131、第2可変容器131aおよび流路11にエアが残存しているか否かが判断され(ステップS22)、エアが残存していると判断された場合には、電空レギュレータ133,133aにより第1可変容器131と耐圧容器132との間、および、第2可変容器131aと耐圧容器132aとの間にエアが供給されて耐圧容器132,132a内が加圧され、第1可変容器131および第2可変容器131aが伸張状態から圧縮状態へと圧縮されて第1可変容器131、第2可変容器131aおよび流路11内のエアが流路11の下流側から液体供給装置1aの外部へと排出される(ステップS221)。
第1可変容器131および第2可変容器131aが圧縮状態とされると、ステップS21に戻って第1可変容器131および第2可変容器131aへの液体の供給が再度行われる。液体供給装置1aでは、第1可変容器131、第2可変容器131aおよび流路11からエアが完全に排出されて液体が充填されるまで、第1可変容器131および第2可変容器131aへの液体の供給、並びに、第1可変容器131、第2可変容器131aおよび流路11からのエアの排出(ステップS21〜S221)が繰り返される。
第1可変容器131、第2可変容器131aおよび流路11からエアが完全に排出されると(ステップS22)、第1ポンプ機構13の電空レギュレータ133により耐圧容器132の内部にエアが供給されて第1可変容器131に圧力が加えられ、伸張状態の第1可変容器131の圧縮が開始される。これにより、第1可変容器131内に貯溜されている液体の流路11への送出が開始され、他の装置等に液体が供給される(ステップS23)。
第2ポンプ機構13aでは、第1可変容器131の圧縮が停止されて第1ポンプ機構13からの液体の送出が停止されるよりも少し前に、電空レギュレータ133aによる耐圧容器132a内へのエアの供給が開始され、伸張状態の第2可変容器131aの圧縮が開始される。これにより、第2可変容器131a内に貯溜されている液体が第1可変容器131からの液体と並行して流路11に送出される(ステップS24)。
続いて、第1ポンプ機構13において第1可変容器131の圧縮が停止される(ステップS25)。液体供給装置1aでは、第1可変容器131の圧縮が停止された後も、第2ポンプ機構13aにおいて第2可変容器131aの圧縮が継続されるため、液体が途切れることなく流路11へ送出される。第1ポンプ機構13では、第1可変容器131の圧縮が停止されるとすぐに、エジェクタ134により耐圧容器132からのエアの排出が開始され、圧縮状態の第1可変容器131が伸張されることにより、液体供給源12から第1可変容器131へと液体が吸引されて第1可変容器131に貯溜される(ステップS26)。
第1ポンプ機構13では、第2可変容器131aの圧縮が停止されて第2ポンプ機構13aからの液体の送出が停止される前に、エジェクタ134による耐圧容器132からのエアの排出が停止されて第1可変容器131の伸張が停止される(ステップS27)。その後、第2可変容器131aの圧縮が停止されるよりも少し前に、電空レギュレータ133による耐圧容器132内へのエアの供給が開始され、伸張状態の第1可変容器131の圧縮が開始されることにより、第1可変容器131内に貯溜されている液体が第2可変容器131aからの液体と並行して流路11に送出される(ステップS31)。
続いて、第2ポンプ機構13aにおいて第2可変容器131aの圧縮が停止される(ステップS32)。液体供給装置1aでは、第2可変容器131aの圧縮が停止された後も、第1ポンプ機構13において第1可変容器131の圧縮が継続されるため、液体が途切れることなく流路11へ送出される。第2ポンプ機構13aでは、第2可変容器131aの圧縮が停止されるとすぐに、エジェクタ134により耐圧容器132aからのエアの排出が開始され、圧縮状態の第2可変容器131aが伸張されて容積が増大することにより、液体供給源12から第2可変容器131aへと液体が吸引されて第2可変容器131aに貯溜される(ステップS33)。
第2ポンプ機構13aでは、第1可変容器131の圧縮が停止されて第1ポンプ機構13からの液体の送出が停止される前に、エジェクタ134による耐圧容器132aからのエアの排出が停止されて第2可変容器131aの伸張が停止される(ステップS34)。そして、ステップS24に戻って、第1可変容器131の圧縮が停止されるよりも少し前に、電空レギュレータ133aによる耐圧容器132a内へのエアの供給が開始され、伸張状態の第2可変容器131aに圧力が加えられて圧縮が開始される。そして、第2可変容器131aの容積が減少することにより、第2可変容器131a内に貯溜されている液体が第1可変容器131からの液体と並行して流路11に送出される(ステップS24)。
続いて、第1可変容器131の圧縮が停止され(ステップS25)、第2可変容器131aの圧縮が停止されるよりも前に、第1可変容器131が伸張されて液体が吸引され(ステップS26,S27)、さらに、第1可変容器131が圧縮されて液体の送出が開始された後、第2可変容器131aの圧縮が停止される(ステップS31,S32)。その後、第1可変容器131の圧縮が停止されるよりも前に、第2可変容器131aが伸張されて液体が吸引され(ステップS33,S34)、再度ステップS24に戻る。
このように、液体供給装置1aでは、液体の供給が終了したと判断されるまで、ステップS24〜S34が繰り返される。換言すれば、ほぼ並行して行われる第2可変容器131aから流路への液体の送出および第1可変容器131への液体の貯溜、並びに、ほぼ並行して行われる第1可変容器131から流路への液体の送出および第2可変容器131aへの液体の貯溜が、交互に繰り返し行われる。その結果、液体供給装置1aでは、第1ポンプ機構13および/または第2ポンプ機構13aからの液体の送出が継続的に行われる。なお、液体供給装置1aでは、最初に第2可変容器131aが圧縮され、次に第1可変容器131が圧縮されてもよい。また、液体の供給に際して最初に行われる液体の充填作業は、第1可変容器131および第2可変容器131aの一方の圧縮、および、これと並行する他方の伸張を、両可変容器に対して交互に繰り返すことにより行われてもよい。
液体供給装置1aでは、第1ポンプ機構13および第2ポンプ機構13aによる液体の送出が行われている間、すなわち、図11および図12に示すステップS23、並びに、繰り返されるステップS24〜S34の間、図14に示す流量制御が継続して行われる。次に、液体供給装置1aによる流量制御の流れについて説明する。
液体供給装置1aでは、ステップS23(図11,図13参照)において、第1ポンプ機構13から流路11への液体の送出が開始されると、第1の実施の形態と同様に、流量計14により流路11を流れる液体の流量が測定され、制御部15のフィードバックコントローラ151に送られる(ステップS41)。続いて、流量計14により求められた測定流量が設定流量に等しいか否かが判断される(ステップS42)。
測定流量が設定流量と異なる場合には、フィードバックコントローラ151により第1ポンプ機構13の電空レギュレータ133が制御され、測定流量が設定流量となるように、可変容器131に加えられる圧力が制御される(ステップS43)。第2の実施の形態でも、フィードバックコントローラ151による制御方法として、PID制御が用いられる。
液体供給装置1aでは、第1ポンプ機構13および第2ポンプ機構13aからの液体の送出が終了したか否かが判断され(ステップS44)、終了していない場合はステップS41に戻って、流量を測定して第1可変容器131および/または第2可変容器131aに加えられる圧力を制御する工程(ステップS41〜S43)が繰り返される。
液体供給装置1aでは、図13に示すステップS23〜S24の間、並びに、ステップS32〜S24の間、第1ポンプ機構13が制御されて測定流量が設定流量に等しくされる。また、ステップS25〜S31の間は、第2ポンプ機構13aよりも下流側に設けられた流量計14により流量が測定され、測定流量に基づいて、測定流量が設定流量となるように第2ポンプ機構13aの電空レギュレータ133aが制御され、第2可変容器131aに加えられる圧力が制御される。
また、ステップS24〜S25の間、並びに、ステップS31〜S32の間は、流量計14による測定流量に基づいて、第1ポンプ機構13および第2ポンプ機構13aの電空レギュレータ133,133aが制御され、第1可変容器131および第2可変容器131aに加えられる圧力が並列に制御される。換言すれば、液体供給装置1aでは、第1可変容器131からの液体の送出開始後の一定時間および送出終了前の一定時間は、第2可変容器131aからの液体の送出終了前の一定時間および送出開始後の一定時間とそれぞれ重なっており、これらの互いに重なる一定時間においては、流量計14による測定流量が設定流量と等しくなるように、第1可変容器131および第2可変容器131aに互いに等しい圧力が加えられて制御される。
図15は、液体供給装置1aにおいて流路11を流れる液体の単位時間当たりの流量の変化を示す図である。液体供給装置1aでは、第1可変容器131および第2可変容器131aのうちの一方の圧縮が継続されている状態で他方の圧縮が開始される場合(すなわち、ステップS24,S31)、圧縮が開始される側の可変容器に加えるように電空レギュレータに与えられる圧力指令値は、上述のように、圧縮途上の一方の可変容器に加えられている圧力と同じとされる。このとき、圧縮が開始される側の可変容器は、圧縮途上の可変容器に比べて伸張状態となっており、圧縮する際のベローズによる反発力も小さいため、流路11に送出される液体の流量が、図14に示すようにステップS24〜S25の間、並びに、ステップS31〜S32の間において設定流量よりも僅かに大きくなる。
しかしながら、液体供給装置1aでは、上述のように流量計14による測定流量に基づいて流量制御が行われており、このような流量の僅かな乱れも速やかに抑えられるため、液体供給において問題となるような大きな流量変動が生じることが防止される。このように、液体供給装置1aでは、常にほぼ一定の流量を維持することができる。
以上に説明したように、液体供給装置1aでは、第1ポンプ機構13の第1可変容器131、および、第2ポンプ機構13aの第2可変容器131aのうちの一方の圧縮、並びに、これと並行する他方の伸張が交互に行われ、流量計14により流路11を流れる液体の流量が測定され、さらに、測定流量に基づいて、第1可変容器131および第2可変容器131aに加えられる圧力がフィードバックコントローラ151により制御される。液体供給装置1aでは、第1可変容器131および第2可変容器131aに加えられる圧力を高精度に制御して、流量を精度良く制御しつつ微小流量の液体を長時間に亘って連続的に供給することができる。
また、液体供給装置1aでは、第1可変容器131および第2可変容器131aのうちの一方の圧縮が停止される前に他方の伸張が停止されて圧縮が開始される。このように、第1ポンプ機構13および第2ポンプ機構13aによる液体の送出動作の始期と終期とをオーバーラップさせることにより、圧力制御により、第1可変容器131および第2可変容器131aの圧縮の切り替え時に生じる流量変動を容易に抑制することができる。その結果、微小流量の液体の連続供給を安定して行うことができる。
液体供給装置1aでは、第2ポンプ機構13aが第1ポンプ機構13と同構造とされており、第2可変容器131aが様々な液体に対する高い耐久性を有する樹脂により形成されるため、様々な種類の液体の供給を行うことができる。また、ベローズ1311aを備える第2可変容器131aは、第1可変容器131と同様に、容積を容易に変更することができ、さらに、圧縮と伸張の繰り返しによる劣化を抑制することもできる。
第2ポンプ機構13aでは、第2可変容器131aの圧縮に電空レギュレータ133aが利用されるため、耐圧容器132aと第2可変容器131aとの間の圧力を応答性良く高精度に制御することができる。また、第2可変容器131aの下端部が自由端とされることにより、第2可変容器131aを安定して圧縮することができるため、供給する液体の流量をより高精度に制御することもできる。さらには、耐圧容器132aに変位センサおよび漏液センサが設けられることにより、液体供給装置1の動作の信頼性を向上することができる。
液体供給装置1aでは、第1の実施の形態と同様に、流量計14により、液体の流量が微小である場合であっても、高い精度にて安定して流量の測定を行うことができる。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る液体供給装置について説明する。第3の実施の形態に係る液体供給装置では、図1に示す液体供給装置1のポンプ機構13に代えて、図16に示すポンプ機構13bが設けられる。その他の構成は図1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
第3の実施の形態に係る液体供給装置のポンプ機構13bでは、図1に示す液体供給装置1のポンプ機構13とは異なる駆動源であるモータにより可変容器131bの圧縮および伸張が行われる。図16に示すように、ポンプ機構13bでは、図1に示すポンプ機構13の耐圧容器132、電空レギュレータ133、エジェクタ134、並びに、各種エア弁および電磁弁に代えて、可変容器131bの下端部を上下方向に移動させることにより可変容器131bを圧縮または伸張する移動機構137、および、移動機構137を駆動するモータ138が設けられる。
移動機構137は、可変容器131bの下端部に接続される移動板1371、上下方向に伸びるボールねじ1372、移動板1371に固定されるとともにボールねじ1372が挿入されるナット1373、移動板1371を上下方向に案内するガイド1374、および、ボールねじ1372をモータ138に接続するタイミングベルト1375を備える。モータ138は出力トルクが制御可能であり、モータ138にはトルク制御アンプ1381が接続される。
移動機構137では、モータ138によりボールねじ1372が回転することにより、移動板1371がガイド1374に沿って上下方向に滑らかに移動する。モータ138により移動板1371が上向きに移動すると、可変容器131bの下端部も上向きに(すなわち、可変容器131bの上端部に近づく方向に)移動し、可変容器131bに圧力が加えられて可変容器131b内の液体が流路11に送出される。換言すれば、移動機構137は、モータ138から出力されるトルクにより可変容器131bに圧力を加える加圧機構の役割を果たす。
また、モータ138により移動板1371が下向きに移動すると、可変容器131bの下端部が上端部から離れて可変容器131b(の内部)が減圧される。これにより、液体供給源12(図1参照)から液体が吸引されて可変容器131bに供給され、可変容器131bに貯溜される。
第3の実施の形態に係る液体供給装置では、ポンプ機構13bにおいて可変容器131bが圧縮されることにより、可変容器131b内の液体が流路11に送出され、流路11に液体が流れている間、ポンプ機構13bの下流側に配置された流量計14(図1参照)により、流路11を流れる液体の単位時間当たりの流量が測定される。そして、測定流量に基づいて、制御部15のフィードバックコントローラ151(図1参照)により、トルク制御アンプ1381を介してモータ138の出力トルクが制御され、測定流量が設定流量になるように可変容器131bに加えられる圧力が制御される。
このように、第3の実施の形態に係る液体供給装置では、圧縮空気供給源や真空源等を利用することなくポンプ機構13bを駆動することができるため、液体供給装置の構成を簡素化することができる。
次に、本発明の第4の実施の形態として、図1に示す液体供給装置1を備える基板処理装置2について図17を参照して説明する。基板処理装置2は、1つの半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)に対してエッチングを行ういわゆる枚葉式の処理装置である。
図17に示すように、基板処理装置2は、純水が流れる第1流路21、および、フッ酸が流れる第2流路22を備え、第1流路21および第2流路22は、両流路の下流側にて合流する。第1流路21および第2流路22の合流点にはミキシングバルブ241が設けられ、第1流路21からの純水と第2流路22からのフッ酸とが混合されて処理液が生成される。
第1流路21は、上流側においてバルブ211およびレギュレータ212を介して外部の純水供給装置に接続される。第2流路22の上流側には、フッ酸を供給する第1の実施の形態に係る液体供給装置1が設けられる。以下、液体供給装置1の各構成については、図1中の符号を参照して説明する。
基板処理装置2では、純水とフッ酸との混合液である処理液が流れる第3流路24が、ミキシングバルブ241の下流側に設けられ、第3流路24の下流側(すなわち、第1流路21と第2流路22との合流点よりも下流側)には、基板9を保持する基板保持部26が配置される。また、基板保持部26の上方には、第3流路24の下流側に接続されるとともに基板9上に処理液を供給する処理液供給部であるノズル27が設けられる。
基板保持部26は、略円板状の基板9を下側および外周側から保持するチャック261、基板9を回転する回転機構262、および、チャック261の外周を覆う処理カップ263を備える。回転機構262はチャック261の下側に接続されるシャフト2621、および、シャフト2621を回転するモータ2622を備え、モータ2622が駆動されることにより、シャフト2621およびチャック261と共に基板9が回転する。処理カップ263は、チャック261の外周に配置されて基板9上に供給された処理液の周囲への飛散を防止する側壁2631、および、処理カップ263の下部に設けられて基板9上に供給された処理液を排出する排出口2632を備える。
基板処理装置2では、バルブ211が開放されることにより、純水供給装置から第1流路21へと純水が供給される。同時に、液体供給装置1のポンプ機構13(図1参照)が駆動され、予めフッ酸が貯溜されている可変容器131に圧力が加えられることにより、可変容器131内から流路11へとフッ酸が送出されて第2流路22へと供給される。第2流路22に供給されたフッ酸は、ミキシングバルブ241において第1流路21に供給された純水と混合され、希薄なフッ酸である処理液が生成される。
ミキシングバルブ241において生成された処理液は、第3流路24を介してノズル27に供給され、ノズル27から基板9の中央に向けて必要量だけ吐出される。基板9は、基板保持部26により保持されて回転しており、ノズル27から供給された処理液は遠心力により基板9の上面を外周側へと移動しつつ基板9の上面全体に広がって基板9のエッチングが行われる。基板9の外縁まで移動した処理液は、基板9から離れて処理カップ263の側壁2631により受けられ、あるいは、処理カップ263の底部へと直接落下して排出口2632から排出される。
基板処理装置2の液体供給装置1では、流量計14(図1参照)により微小流量にて流れるフッ酸の流量が高い精度にて安定して測定され、制御部15(図1参照)により測定流量と予め設定されている設定流量とに基づいてポンプ機構13の可変容器131に加えられる圧力が制御されることにより、微小流量のフッ酸を精度良く流量制御しつつ第2流路22に供給することができる。このように、基板処理装置2では、ミキシングバルブ241へのフッ酸の微小な供給量が高精度に制御され、フッ酸が所望の濃度にて精度良く混合された処理液が生成される。その結果、基板処理装置2では、フッ酸が所望の濃度にて精度良く混合された処理液により基板9に対するエッチングを行うことができる。そして、高精度に濃度が制御された希薄なフッ酸によりエッチングが行われることにより、高精度にエッチングレートを制御し、より好ましい処理結果を得ることができる。また、エッチングレートを低くして基板9の中央と外縁側とにおける処理時間のばらつきを抑制し、基板9全体におけるエッチングの質の均一性を向上することができる。
次に、本発明の第5の実施の形態として、図10に示す液体供給装置1aを備える基板処理装置2aについて図18を参照して説明する。基板処理装置2aは、複数の基板9に対して同時にエッチングを行ういわゆるバッチ式の処理装置である。図18に示すように、基板処理装置2aでは、図17に示す基板処理装置2の液体供給装置1に代えて、図10に示す液体供給装置1aが設けられ、また、基板保持部26およびノズル27に代えて、第3流路24の下流側(すなわち、第1流路21と第2流路22との合流点よりも下流側)において処理液を貯溜するとともに略円板状の基板9が起立姿勢で複数浸漬される処理槽25が設けられる。その他の構成は図17と同様であり、以下の説明において同符号を付す。また、液体供給装置1aの各構成については、図10中の符号を参照して説明する。
図18に示すように、基板処理装置2aは、第4の実施の形態と同様に、純水が流れる第1流路21、フッ酸が流れるとともにミキシングバルブ241において第1流路21と合流する第2流路22、第2流路22の上流側に設けられて第2流路22にフッ酸を供給する第2の実施の形態に係る液体供給装置1a、および、ミキシングバルブ241の下流に設けられて純水とフッ酸との混合液である処理液が流れる第3流路24を備える。
基板処理装置2aでは、第4の実施の形態と同様に、第1流路21に供給された純水、および、第2流路22に供給されたフッ酸が、ミキシングバルブ241において混合されて希薄なフッ酸である処理液が生成される。このとき、液体供給装置1aでは、流量計14(図10参照)により微小流量にて流れるフッ酸の流量が高い精度にて安定して測定され、制御部15(図10参照)により測定流量と設定流量とに基づいて第1可変容器131および第2可変容器131a(図10参照)に加えられる圧力が制御されることにより、微小流量のフッ酸が精度良く流量制御されつつ第2流路22を介してミキシングバルブ241に供給される。その結果、フッ酸が所望の濃度にて精度良く混合された処理液が生成される。
ミキシングバルブ241において生成された処理液は、第3流路24を介して処理槽25に底部から供給される。処理槽25では、処理槽25内に保持された複数の基板9が処理槽25に供給されて貯溜される処理液に下側から徐々に浸漬されることにより、基板9に対するエッチングが行われる。
基板処理装置2aにおいても、第4の実施の形態と同様に、フッ酸が所望の濃度にて精度良く混合された処理液により基板9に対するエッチングを行うことができる。そして、高精度に濃度が制御された希薄なフッ酸によりエッチングが行われることにより、高精度にエッチングレートを制御し、より好ましい処理結果を得ることができる。また、エッチングレートを低くして基板9の中央と外縁側とにおける処理時間のばらつきを抑制し、基板9全体におけるエッチングの質の均一性を向上することができる。
基板処理装置2aでは、液体供給装置1aにより流量を精度良く制御しつつ微小流量のフッ酸を長時間に亘って連続的に供給することができるため、1回の処理に大量の処理液を必要とするバッチ式のエッチング(および、その他の基板処理)に特に適しているといえる。また、液体供給装置1aでは、第1ポンプ機構13および第2ポンプ機構13aによる液体の送出動作の始期と終期とをオーバーラップさせることにより、第1可変容器131および第2可変容器131aの圧縮の切り替え時に生じる流量変動を容易に抑制することができるため、基板9のエッチングに利用される処理液を容易に所望の濃度に維持することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態に係る液体供給装置の各ポンプ機構に設けられる可変容器は、樹脂以外の様々な材料により形成されていてもよい。また、各可変容器には、必ずしもベローズが設けられる必要はなく、例えば、可変容器の全体が略球状とされてもよい。この場合も、第1および第2の実施の形態に係る液体供給装置では、耐圧容器内において圧力を加えられた略球状の可変容器が圧縮されて流路11に液体が送出される。
第1および第2の実施の形態に係る液体供給装置では、可変容器を伸張して液体供給源12から液体を吸引する際に、必ずしも耐圧容器内が負圧になるまで減圧される必要はない。例えば、可変容器の周囲をある程度減圧して圧縮されたベローズの反発力によりベローズが伸張することにより、液体供給源12から液体が吸引されてもよい。また、液体供給源12が密閉された上で加圧機構が設けられ、液体供給源12内の液体が加圧されてポンプ機構に送出されることにより、可変容器に液体が供給されてもよい。
第2の実施の形態に係る液体供給装置1aでは、第1ポンプ機構13および第2ポンプ機構13aに代えて、第3の実施の形態に係る液体供給装置のポンプ機構13bが2つ設けられてもよい。
ポンプ機構13に設けられる変位センサ135および漏液センサ136は、上記実施の形態にて説明した構造には限定されず、様々な構造とされてよい。例えば、フロート式の漏液センサ136が利用されてもよく、また、可変容器内の液体の導電性が低い場合等、液体の検出に電気が使えない場合には、耐圧容器の底面に向けて出射された光の反射光を受光し、反射光の光特性の変化によって漏液を検知する構造とされてよい。
流量計14の圧損チューブ143は、必ずしも樹脂製である必要はなく、他の材料により形成されてもよい。この場合、圧損チューブ143は、様々な種類の液体に対する高い耐久性を有する材料により形成されることが好ましい。また、流量計14の記憶部145および演算部146は、制御部15のフィードバックコントローラ151に一体的に組み込まれてもよい。
第4の実施の形態に係る基板処理装置2では、1つの可変容器131を有する液体供給装置1に代えて、2つの可変容器を有する液体供給装置1a、あるいは、モータ138を駆動源とする第3の実施の形態に係る液体供給装置が設けられてもよく、第5の実施の形態に係る基板処理装置2aでは、液体供給装置1aの代わりに液体供給装置1や第3の実施の形態に係る液体供給装置が設けられてもよい。
第4および第5の実施の形態に係る基板処理装置では、純水およびフッ酸以外の液体が混合されて処理液が生成されてもよく、また、基板9に対してエッチング以外の他の処理(例えば、洗浄処理)が行われてもよい。