JP4435757B2 - チェーンテンショナの取付け装置 - Google Patents

Description

この発明は、主として、カム軸駆動用のタイミングチェーンの張力を一定に保持するチェーンテンショナの取付け装置に関するものである。

タイミングチェーンの張力調整に用いられるチェーンテンショナとして、特許文献１に記載されたものが従来から知られている。

上記チェーンテンショナにおいては、ハウジングに形成されたシリンダ室内に、先端が閉塞する筒状のチェーン押圧用のプランジャと、そのプランジャを外方に向けて押圧するリターンスプリングとを組込み、前記プランジャの後端部内周には鋸歯状の雌ねじを設け、その雌ねじにスクリュロッドの外周に形成された鋸歯状の雄ねじをねじ係合し、そのスクリュロッドとプランジャをスプリングにより伸張する方向に付勢し、前記ハウジングにはプランジャの背部に形成された圧力室に連通する給油通路を設け、その給油通路の油出口部にチェックバルブを組込み、上記給油通路からチェックバルブを通って圧力室に供給される作動油によりプランジャに負荷される押し込み力を緩衝するようにしている。

上記の構成からなるチェーンテンショナには、ハウジングの外周に形成された取付け片をエンジンブロックにボルト止めする内装タイプのものと、エンジンカバーに取付けられる外装タイプのものとが存在し、その外装タイプのチェーテンショナにおいては、ハウジングの端部外周にフランジを設け、エンジンカバーの外部からそのエンジンカバーに形成されたテンショナ取付け孔にハウジングを挿入し、エンジンカバーの外表面に衝合されたフランジをボルトの締付けにより固定するようにしている。

上記のような外装タイプのチェーンテンショナには、チェーンが過張力になるのを防止するため、リリーフバルブを組込み、圧力室内の作動油の圧力がリリーフバルブの設定圧力を超えた際に、そのリリーフバルブを開放させて、圧力室内の圧力を外部に逃がすようにしたものが存在する。

特開平１０−１３２０３９号公報

ところで、リリーフバルブを有する外装タイプのチェーンテンショナにおいては、フランジにリリーフバルブを組込むと、そのリリーフバルブの開放時に圧力室内の作動油がエンジンの外部に漏洩するため、上記リリーフバルブはフランジよりエンジンルーム側に片寄った位置に組込むようにしている。

このため、従来のリリーフバルブを有する外装タイプのチェーンテンショナにおいては、ハウジングの外径が大きくなり、重量も重く、大型化するという不都合があった。

この発明の課題は、リリーフバルブを有する外装タイプのチェーンテンショナの小型、軽量化を図ることができると共に、リリーフバルブの開放によって漏洩する作動油をエンジンルーム内に戻すことができるようにしたチェーンテンショナの取付け装置を提供することである。

上記の課題を解決するために、この発明においては、エンジンカバーのテンショナ取付け孔に挿入されるハウジングの外周に、エンジンカバーの外表面に衝合されてボルト止めされるフランジを設け、ハウジングにはエンジンカバー内に位置する端面で開口するシリンダ室を形成し、そのシリンダ室内に、先端が閉塞し、後端が開口する筒状のチェーン押圧用のプランジャと、そのプランジャを外方に向けて押圧するリターンスプリングとを組込み、前記プランジャの後端部内周には鋸歯状の雌ねじを設け、その雌ねじにスクリュロッドの外周に形成された鋸歯状の雄ねじをねじ係合し、そのスクリュロッドとプランジャをスプリングにより伸張する方向に付勢し、前記ハウジングにはプランジャの背部に形成された圧力室に連通する給油通路を設け、その給油通路の油出口部にチェックバルブを組込み、そのチェックバルブから圧力室に供給される作動油によってプランジャに負荷される押し込み力を緩衝するようにしたチェーンテンショナの取付け装置において、前記フランジに、その外周から前記圧力室に連通するバルブ取付け孔と、エンジンカバーに対する衝合面からそのバルブ取付け孔に連通する圧力逃がし孔とを設け、前記バルブ取付け孔内に、圧力室内の圧力が設定圧力を超えた際に開放してバルブ取付け孔の圧力室側の入口と圧力逃がし孔とを連通させるリリーフバルブを組込み、そのリリーフバルブをフランジの外周からバルブ取付け孔内にねじ係合される締付けねじの締付けにより固定し、前記フランジのエンジンカバーに対する衝合面およびハウジングの外周面に圧力逃がし孔に漏洩した作動油をエンジンカバー内に導く油路を形成した構成を採用したのである。

ここで、前記締付けねじの外周にシール接着材を塗布しておくことにより、バルブ取付け孔と締付けねじのねじ係合部間のねじ隙間を密閉することができるため、上記ねじ隙間から外部に作動油が漏洩するのを防止することができる。

また、フランジとエンジンカバーの衝合面間にガスケットを組込むことによって、フランジとエンジンカバーの衝合面間から外部に作動油が漏洩するのを防止することができる。

上記のように、フランジにバルブ取付け孔を形成し、そのバルブ取付け孔内にリリーフバルブを組込むことによって、ハウジングの外径が大径化するようなことがなく、小型、軽量のリリーフバルブ付きチェーンテンショナを得ることができる。

また、フランジのエンジンカバーに対する衝合面にバルブ取付け孔に連通する圧力逃がし孔を形成し、その圧力逃がし孔とエンジンカバー内とをフランジのエンジンカバーに対する衝合面およびハウジングの外周面に形成した油路で連通したことによって、リリーフバルブの開放により、圧力室から圧力逃がし孔に漏洩した作動油をエンジンルーム内に戻すことができ、作動油のエンジンルーム外部への漏洩を防止することができる。

以下、この発明の実施の形態を図面に基いて説明する。図１は、この発明に係るチェーンテンショナを用いたチェーンの張力調整装置を示す。図示のように、クランクシャフト１の端部に取付けたスプロケット２とカムシャフト３の端部に取付けたスプロケット４間にはチェーン５がかけ渡され、そのチェーン５の弛み側チェーン５ａにチェーンガイド６が接触している。

チェーンガイド６は、その下端部に設けられた軸７を中心として揺動自在に支持されている。チェーンガイド６の一側方には、そのチェーンガイド６をチェーン５に押付けて押圧して、チェーン５の張力を一定に保持するチェーンテンショナ１０が設けられている。

チェーンテンショナ１０は、エンジンカバーＡの外部から、そのエンジンカバーＡに形成されたテンショナ取付け孔ａに挿入される円筒状のハウジング１１を有し、そのハウジング１１の端部外周にエンジンカバーＡの外表面に衝合されるフランジ１２が形成されている。フランジ１２は、ボルト１３の締付けによりエンジンカバーＡに固定されている。

図２に示すように、ハウジング１１には、エンジンカバーＡの内部に位置する端面において開口するシリンダ室１４が形成され、そのシリンダ室１４内にプランジャ１５と、そのプランジャ１５に外方向への突出性を付与するリターンスプリング１６とが組込まれている。

プランジャ１５は、シリンダ室１４の外部に位置する先端が閉塞し、後端が開口する筒状をなし、その開口端部の内周に形成された雌ねじ１７にスクリュロッド１８の外周に設けられた雄ねじ１９がねじ係合されている。

スクリュロッド１８には、軸方向に延びる貫通孔２０が形成されている。貫通孔２０は後端部を小径とする段付き孔からなり、その貫通孔２０の内周の段部２０ａとプランジャ１５の閉塞端間に、先端が球面とされたスプリングシート２１と、スプリング２２とが組込まれ、上記スプリング２２によって、プランジャ１５とスクリュロッド１８は伸張する方向に付勢されている。

プランジャ１５の内周の雌ねじ１７とスクリュロッド１８の外周の雄ねじ１９は、プランジャ１５に負荷される軸方向の押込み力を受ける圧力側フランク２３のフランク角が遊び側フランク２４のフランク角より大きい鋸歯状とされ、その鋸歯状ねじにスプリング２２の押圧によってプランジャ１５とスクリュロッド１８が相対的に回転しつつ伸張する方向に移動するリード角が設けられている。

ハウジング１１には、プランジャ１５の背部に形成された圧力室２５に連通する給油通路２６が形成され、その給油通路２６の圧力室２５側の油出口部にチェックバルブ２７が設けられている。

チェックバルブ２７は、シリンダ室１４の閉塞端部に設けられた段付き孔２８に圧入されたバルブシート２９と、そのバルブシート２９に形成された弁孔３０を開閉する弁体３１と、その弁体３１の開閉量を規制するリテナ３２とからなり、上記圧力室２５内の圧力が給油通路２６に供給される作動油の供給圧力より高くなると、弁体３１が弁孔３０を閉じるようになっている。

ここで、バルブシート２９はスクリュロッド１８の後端を受けるロッドシートとしての機能をも有し、そのバルブシート２９とスクリュロッド１８の当接面はテーパ面２９ａとされている。

ハウジング１１の開口端部の内周にはリング溝３３と、そのリング溝３３の前側に小径溝３４とが形成されている。小径溝３４には弾性変形可能なセットリング３５が縮径された状態で組込まれ、そのセットリング３５の内周部はプランジャ１５の先端部外周に形成されたセット溝３６に係合し、その係合によってプランジャ１５は押込み状態に保持されている。

チェーンテンショナは、プランジャ１５が押込み状態に保持された初期セット状態でエンジンカバーＡのテンショナ取付け孔ａ内にハウジング１１の先端部が挿入され、フランジ１２がエンジンカバーＡにボルト止めされる。

上記のようなチェーンテンショナの取付け状態でエンジンを駆動すると、弛み側チェーン５ａが緊張し、チェーンガイド６を介してプランジャ１５に押込み力が負荷される。この押込み力の負荷によりプランジャ１５が後退し、セットリング３５がリング溝３３に臨むと、セットリング３５が拡径してセット溝３６との係合が解除し、その係合解除によりプランジャ１５はリターンスプリング１６の押圧により前進して、図４に示すように、チェーンガイド６を押圧し、チェーン５に張力を負荷するようになっている。

図４に示すように、フランジ１２には、外周上部から圧力室２５に連通するバルブ取付け孔３７と、エンジンカバーＡに対する衝合面からそのバルブ取付け孔３７に連通する圧力逃がし孔３８とが形成されている。

図５に示すように、バルブ取付け孔３７は圧力室２５側の端部が小径とされた段付き孔からなり、そのバルブ取付け孔３７の大径孔部内にリリーフバルブ４０が組込まれている。

リリーフバルブ４０は、下部閉塞端に弁孔４２が形成されたバルブスリーブ４１と、そのバルブスリーブ４１内に組込まれた球形の弁体４３と、その弁体４３を弁孔４２に向けて付勢するバルブスプリング４４と、バルブスリーブ４１の上端開口を閉塞する締付けねじ４５とからなり、上記締付けねじ４５はバルブ取付け孔３７の上端部内周に形成された雌ねじ３９にねじ係合し、その締付けねじ４５の締付けによりリリーフバルブ４０は固定されている。

ここで、バルブスリーブ４１には、その内部と圧力逃がし孔３８を連通する半径方向の貫通孔４６が形成されている。また、締付けねじ４５は下端にバルブスリーブ４１の上端開口部内に圧入される嵌合軸部４５ａを有し、その嵌合軸部４５ａの下端に弁体４３の開閉量を規制する制限軸部４５ｂが形成されている。

図４および図５に示すように、フランジ１２のエンジンカバーＡに対する衝合面には、圧力逃がし孔３８に漏洩した作動油をハウジング１１の外周に導く凹部４７が形成されている。一方、ハウジング１１の外周には平坦面４８が設けられ、その平坦面４８はテンショナ取付け孔ａの内径面との間で通路４９を形成し、その通路４９および凹部４７が圧力逃がし孔３８に漏洩した作動油をエンジンカバーＡ内に導く油路５０を形成している。

図６に示すように、締付けねじ４５と雌ねじ３９のねじ係合部間にはシール接着材５１が塗布され、そのシール接着材５１はねじ係合部から外部に作動油が漏洩するのを防止している。また、図５に示すように、フランジ１２とエンジンカバーＡの衝合面間には、その衝合面間から外部に作動油が漏洩するのを防止するガスケット５２が組込まれている。

実施の形態で示すチェーンの張力調整装置は上記の構造からなり、エンジンを駆動すると、チェーン５が図１の矢印で示す方向に移動してカムシャフト３が駆動される。また、図示省略したポンプの駆動によってチェーンテンショナ１０の圧力室２５にエンジンオイル(作動油)が送り込まれる。

カムシャフト３の駆動状態において、トルク変動によってチェーン５の弛み側チェーン５ａに弛みが生じると、給油通路２６から圧力室２５に供給される作動油の圧力によりプランジャ１５およびスクリュロッド１８が外方向に移動して、スクリュロッド１８がバルブシート２９から離れ、作動油が圧力室２５およびスクリュロッド１８の貫通孔２０内に流入する。

上記プランジャ１５の外方向の移動によって、そのプランジャ１５はチェーンガイド６を押圧するため、チェーン５の弛みが吸収されると共に、スプリング２２の押圧により、スクリュロッド１８は回転しつつチェックバルブ２７側に移動してバルブシート２９に当接し、プランジャ１５およびスクリュロッド１８の停止によってチェーン５は所定の張力に保持される。

一方、チェーン５が緊張すると、チェーン５およびチェーンガイド６を介してプランジャ１５に押込み力が負荷される。このとき、スクリュロッド１８の貫通孔２０とプランジャ１５の内部に流入している作動油の圧力および圧力室２５内の圧力が高くなるため、チェックバルブ２７は給油通路２６を閉鎖し、ハウジング１１内に封入された作動油および雌ねじ１７と雄ねじ１９の圧力側フランク２３によって上記押込み力が受けられ、プランジャ１５は後退しない。

プランジャ１５を押圧する押圧力がリターンスプリング１６の弾性力より強い場合、スクリュロッド１８が回転し、プランジャ１５は圧力室２５の容積が小さくなる方向に移動する。

このとき、圧力室２５内の作動油は、シリンダ室１４とプランジャ１５の摺動面間に形成された微小な隙間から外部にリークし、プランジャ１５は、リターンスプリング１６の弾性力と上記押込み力とが釣り合う位置までゆっくりと後退する。

また、チェーン５が振動すると、プランジャ１５は雌ねじ１７と雄ねじ１９のねじ係合部に形成されたねじ隙間の範囲で前進と後退とを繰り返し、圧力室２５に封入された作動油による油圧ダンパ作用によって振動が吸収される。

また、プランジャ１５が急激に押込まれると、圧力室２５内の圧力は急激に上昇し、その圧力が、リリーフバルブ４０の設定圧力を超えると、リリーフバルブ４０の弁体４３が弁孔４２を開放し、圧力室２５内の作動油は、図４、図５の矢印で示すように、弁孔４３からバルブスリーブ４１内に流れ、貫通孔４６および圧力逃がし孔３８から油路５０に流れてエンジンカバーＡ内に戻される。

したがって、圧力室２５内の圧力は異常に高くなるようなことはなく、チェーン５が過張力になるようなことはない。また、作動油は上記のようにエンジンカバーＡ内に戻されるため、エンジン外部が作動油によって汚損されるのを防止することができる。

実施の形態で示すように、フランジ１２にバルブ取付け孔３７を形成し、そのバルブ取付け孔３７内にリリーフバルブ４０を組込むことによって、ハウジング１１の外径が大径化するようなことがなく、小型、軽量のリリーフバルブ付きチェーンテンショナを得ることができる。

この発明に係るチェーンテンショナの取付け装置を用いたチェーンの張力調整装置の概略図 図１に示すチェーンテンショナの初期セット状態を示す縦断正面図 図２の右側面図 図１に示すチェーンテンショナのチェーンの張力調整状態を示す縦断正面図 リリーフバルブの組込み部を拡大して示す断面図 締付けねじ部の拡大断面図

符号の説明

Ａ エンジンカバー
ａ テンショナ取付け孔
１１ ハウジング
１２ フランジ
１３ ボルト
１４ シリンダ室
１５ プランジャ
１６ リターンスプリング
１７ 雌ねじ
１８ スクリュロッド
１９ 雄ねじ
２２ スプリング
２５ 圧力室
２６ 給油通路
２７ チェックバルブ
３７ バルブ取付け孔
３８ 圧力逃がし孔
４０ リリーフバルブ
４５ 締付けねじ
５０ 油路
５１ シール接着材
５２ ガスケット

Claims (3)

1. エンジンカバーのテンショナ取付け孔に挿入されるハウジングの外周に、エンジンカバーの外表面に衝合されてボルト止めされるフランジを設け、ハウジングにはエンジンカバー内に位置する端面で開口するシリンダ室を形成し、そのシリンダ室内に、先端が閉塞し、後端が開口する筒状のチェーン押圧用のプランジャと、そのプランジャを外方に向けて押圧するリターンスプリングとを組込み、前記プランジャの後端部内周には鋸歯状の雌ねじを設け、その雌ねじにスクリュロッドの外周に形成された鋸歯状の雄ねじをねじ係合し、そのスクリュロッドとプランジャをスプリングにより伸張する方向に付勢し、前記ハウジングにはプランジャの背部に形成された圧力室に連通する給油通路を設け、その給油通路の油出口部にチェックバルブを組込み、そのチェックバルブから圧力室に供給される作動油によってプランジャに負荷される押し込み力を緩衝するようにしたチェーンテンショナの取付け装置において、
   前記フランジに、その外周から前記圧力室に連通するバルブ取付け孔と、エンジンカバーに対する衝合面からそのバルブ取付け孔に連通する圧力逃がし孔とを設け、前記バルブ取付け孔内に、圧力室内の圧力が設定圧力を超えた際に開放してバルブ取付け孔の圧力室側の入口と圧力逃がし孔とを連通させるリリーフバルブを組込み、そのリリーフバルブをフランジの外周からバルブ取付け孔内にねじ係合される締付けねじの締付けにより固定し、前記フランジのエンジンカバーに対する衝合面およびハウジングの外周面に圧力逃がし孔に漏洩した作動油をエンジンカバー内に導く油路を形成したことを特徴とするチェーンテンショナの取付け装置。
2. 前記締付けねじの外周にシール接着材を塗布した請求項１に記載のチェーンテンショナの取付け装置。
3. 前記フランジとエンジンカバーの衝合面間にガスケットを組込んだ請求項１又は２に記載のチェーンテンショナの取付け装置。

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