JP4434500B2 - 液体封入式マウント - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は防振技術に属するものであって、自動車のエンジン等の防振支持手段として用いられ、振動減衰にオリフィス内での液体の流動抵抗を利用した液体封入式マウントに関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンを車体フレームに弾性的に支持する液体封入式マウントには、上下方向の入力振動だけでなく、水平方向の入力振動に対しても防振効果を発揮するようにしたものがあり、その典型的な従来技術が、例えば特公昭63−61533号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術の液体封入式マウントによれば、マウントの径方向(水平方向)に対する加振周波数が低周波数である場合はオリフィス内の液柱共振による良好な減衰が得られるが、加振周波数が高くなると動ばね定数が上昇し、振動絶縁性が低下する問題が指摘される。
【0004】
また、従来の技術によれば、上下方向の入力振動をダンピングするための第一液室と第二液室が弾性体の下側に設けられ、横方向の入力振動をダンピングするための液室が弾性体の上側に設けられているため、上下方向に対する製品サイズが大きくなり、上下方向の取付スペースや重量が増大する問題が指摘される。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたもので、その主な技術的課題は、マウントの径方向の入力振動に対して、高い加振周波数域でも優れた振動絶縁性を発揮させることにある。
【0006】
また、他の技術的課題は、液体封入式マウントの小型化及び軽量化を図ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した技術的課題は、本発明によって有効に解決することができる。
【0008】
【0009】
すなわち、請求項1の発明に係る液体封入式マウントは、ケースとその内周に配置された内周取付部材との間に弾性体及びダイアフラムが設けられ、前記弾性体によって前記ダイアフラムと反対側に画成された第一液室と前記弾性体によって前記ダイアフラムとの間に画成された第二液室との間が主オリフィスを介して互いに連通され、前記第一液室と第二液室との間に介在する前記弾性体は、前記内周取付部材の周りを略円錐状に延びる主弾性部と、この主弾性部の外側を前記内周取付部材を中心とする180°対称に延びる一対の副弾性部と、各副弾性部の円周方向両端と前記主弾性部の間に形成された複数の弾性リブ部とからなり、前記主弾性部、副弾性部及び弾性リブ部で画成された180°対称の一対の副液室と、前記第二液室の一部をなす凹所が前記弾性体に円周方向交互に形成され、前記副液室間が、副オリフィスを介して互いに連通されたものである。
【0010】
上記構成によれば、ケースの軸心と平行な方向の変位入力に対しては、第一液室と第二液室との間で主オリフィス内を封入液が移動することによって、防振機能を発揮するものである。また径方向の変位入力に対しては、加振方向が一対の副液室の対向方向である場合は、副オリフィス内を封入液が液柱共振することによる減衰が得られ、加振方向が一対の副液室の対向方向と直交する方向である場合は、副液室の容積変化が生じないので高い周波数域まで動ばね定数が低く維持される。しかも第一液室と第二液室が弾性体によって分離されているので、弾性体側の第一液室とダイアフラム側の第二液室との間を仕切るための部材が不要になり、第二液室の容積の一部が弾性体の凹所によって分担されているため、第二液室の形成のために必要なサイズも小さくすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
図1は本発明に係る液体封入式マウントの好ましい実施の形態を軸心を通る平面で切断して示す断面図、図2はこの液体封入式マウントの内部を構成する加硫成形体の斜視図、図3は図1におけるV−V’線の位置で軸心と直交する平面で切断して示す断面図、図4は図1におけるVI−VI’線の位置で軸心と直交する平面で切断して示す断面図、図5は図1におけるVII−VII’線の位置で軸心と直交する平面で切断して示す断面図、図6は図1におけるVIII−VIII’線の位置で軸心と直交する平面で切断して示す断面図である。
【0032】
これらの図において、マウントケース1は、下端部に設けたブラケット13を介して車体フレーム(図示省略)側に取り付けられる外筒12と、その内周に嵌着された中間内筒16、上側リング17及び下側リング18とからなる。中間内筒16の上端部及び上側リング17は、外筒12の上端開口縁に形成されたカシメ部12bに固定され、下側リング18は、外筒12の下部に段差部12aをもって形成された小径部12cの内周面に圧入嵌着されている。
【0033】
上面に突出された取付ボルト21を介して例えば被支持体であるエンジン(図示省略)側に連結される内周取付部材としてのボス2の上端には、取付ボルト21の基部外周に位置して鍔部材24が設けられており、また、下端寄りの部分には、下側が小径となるような円錐状リング25が嵌着されている。
【0034】
マウントケース1とボス2との間には、ゴム等のエラストマ材料で成形された弾性体3が介在している。詳しくは、この弾性体3は、外周がマウントケース1における中間内筒16の下部に形成された環状段差部16aに加硫接着されると共に、内周がボス2における円錐状リング25の下向きテーパ面に加硫接着されて、外周側が低位置になる円錐状の主弾性部31と、その上側にボス2を中心とする180°対称に形成された一対の副弾性部32と、各副弾性部32の円周方向両端と主弾性部31の間に半径方向に延びるように形成された円周方向4本の弾性リブ部33とからなる。
【0035】
主弾性部31と、副弾性部32及びその両端の弾性リブ部33とで囲まれた部分は、中間内筒16の窓部16bを介して外周側へ開放された一対の凹所3aとなっており、副弾性部32,32間の部分は図1に示されるように上方へ開放された凹所3bとなっている。すなわち、弾性体3には、外周側へ開放された一対の凹所3aと、上方へ開放された一対の凹所3bが、円周方向交互に形成されており、それぞれ180°対称となっている。
【0036】
ダイアフラム4は、弾性体3の上側に配置され、外周部全周がマウントケース1における上側リング17に加硫接着されると共に、内周部全周がボス2における鍔部材24に加硫接着されている。
【0037】
マウントケース1における下側リング18の下端開口部は、エラストマからなる円盤状のサブダイアフラム6によって閉塞されている。このサブダイアフラム6は外周部全周が下側リング18に加硫接着され、また、サブダイアフラム6の下面側は、マウントケース1における外筒12の下端開口12d及びブラケット13の開口部13aを介して外部に開放されている。
【0038】
弾性体3の下側の空間、すなわちボス2と、弾性体3の主弾性部31と、マウントケース1における下側リング18と、サブダイアフラム6とによって囲まれた空間は、第一液室Aとなっている。また、弾性体3の上側の空間、すなわちダイアフラム4と、ボス2の鍔部材24と、弾性体3の凹所3b、副弾性部32及び弾性リブ部33と、マウントケース1の上部とによって囲まれた空間は、第二液室Bとなっている。更に、弾性体3に形成された各凹所3aとこれに対応する各窓部16bは、外周側から外筒12で塞がれており、これによって、弾性体3の内部に一対の副液室Dが画成されている。
【0039】
マウントケース1における中間内筒16の下部に段付き形成された小径部分の外周には、弾性体3を形成しているエラストマの一部34によって、円周方向に延びる有端の溝34a,34bが互いに上下二段に形成されている。そして、この溝34a,34bの外周が外筒12で塞がれることによって、主オリフィスC及び副オリフィスEが形成されている。
【0040】
このうち、下側の主オリフィスCは、その円周方向一端Caが、図6に示されるように、中間内筒16の下端に形成された切欠部16cを介して第一液室Aに開放されると共に、円周方向他端Cbが、中間内筒16の窓部16b,16bの間に位置して円周方向一箇所に開設された開口部16dと、この開口部16dからエラストマの一部34に形成された凹部34cを介して、第二液室Bに開放されている。したがって第一液室Aと第二液室Bは、主オリフィスCを介して互いに連通していることになる。
【0041】
また、上側の副オリフィスEは、図2及び図4に示されるように、円周方向両端Ea,Ebが、それぞれ中間内筒16の環状段差部16aに形成された切欠部16e,16fを介して、一対の副液室Dのそれぞれに開放されている。したがって、副液室D,Dは、副オリフィスEを介して互いに連通している。
【0042】
第一液室A、第二液室B及びこれを連通する主オリフィスCからなる密閉空間と、各副液室D及びこれを連通する副オリフィスEからなる密閉空間には、それぞれ例えばシリコーンオイル等、適当な粘性を有する液体が充填されている。この封入液は、サブダイアフラム6及び下側リング18からなる加硫成形体と、弾性体3、ボス2及び中間内筒16からなる加硫成形体を、液体中で外筒12に組み込み、ダイアフラム4、鍔部材24及び上側リング17からなる加硫成形体を、液体中でボス2及び外筒12に組み込むことによって、当該液体封入式ブッシュを組み立てる際に、前記液体の一部が封入されたものである。
【0043】
主オリフィスCは、円周方向に長く延在されていることによって、その内部に存在する封入液の液柱共振周波数が低く、例えば車体のバウンド等のようなショック入力によるマウントケース1の軸心と平行な方向(図1におけるVZ方向)の変位の周波数と略合致するように設定されている。そして、主オリフィスCによる狭くて長い流路内を封入液が高速で流れる際に、流動抵抗による有効な減衰力を発生するものである。
【0044】
副オリフィスEは、その内部に存在する封入液の液柱共振周波数が、例えばエンジンのシェイク等による、マウントケース1の径方向における副液室D,Dの対向方向(図4のVX方向)の振動周波数と略合致するように設定されており、封入液の流動抵抗による有効な減衰力を発生するものである。
【0045】
ボス2の内端(下端)には、撹拌板22がボルト・ナット23を介して取り付けられており、この撹拌板22は、第一液室A内に位置している。図1に示されるように、撹拌板22と弾性体3の主弾性部31の内面との間には所要の隙間Gが形成されており、この隙間Gに存在する封入液の液柱共振周波数が、撹拌板22の面積及び隙間Gの軸方向幅等によって、所定の周波数域に設定されている。なお、この撹拌板22は円形の皿状であるが、円周方向一部に切欠を形成したものでも良い。
【0046】
サブダイアフラム6は、エラストマで成形されているため、第一液室Aの圧力変化によって、厚さ方向へ撓むことができる。このサブダイアフラム6を厚さ方向へ変形させるように作用する第一液室Aの液柱共振周波数は、例えばエンジンの機関振動の振幅が増大する周波数域に設定される。
【0047】
以上のように構成された液体封入式マウントによれば、第二液室Bを弾性体3の上側に設けることによって、小型化及び軽量化が可能である。すなわち、第一液室Aと第二液室Bが弾性体3の下側に設けられている場合は、第一液室Aと第二液室Bとの間にオリフィス部材を介在させる必要があるが、上記構成によれば、このようなオリフィス部材が不要になるからである。しかも、第二液室Bの容積の一部が弾性体3の凹所3bによって分担されているため、第二液室Bの形成のために必要なサイズも小さくできるからである。
【0048】
この液体封入式マウントは、先に説明したように、マウントケース1がブラケット13を介して車体フレーム側に結合され、ボス2が取付ボルト21を介してエンジン側に結合され、エンジンを弾性的に支持するもので、次のような防振機能を奏する。
【0049】
すなわち、入力振動が、例えばエンジンの機関振動等による上下方向(図1におけるVZ方向)の継続的な振動である場合は、主オリフィスC内の封入液はその液柱慣性が大きく、殆ど流動しないが、弾性体3(主弾性部31)が上下に反復変形されることによる第一液室Aの液圧変化は、この第一液室A内の封入液がサブダイアフラム6の厚さ方向への変形を伴いながら共振することによって、有効に吸収される。このため動ばね定数が低下し、機関振動等に対する優れた振動絶縁性を発揮する。また、第一液室A内の撹拌板22は、振動入力によってボス2と一体的に振動変位し、これに伴って主弾性部31との間の隙間Gに存在する封入液を半径方向へ反復移動させることにより、減衰力を発生させる。
【0050】
また、上記VZ方向の入力振動が、例えば車体のバウンド等により、第一液室Aの大きな液圧変化を発生させる低周波数帯域のかつ大振幅の振動である場合は、封入液は、主オリフィスC内を、第一液室Aと第二液室Bのうち相対的に低圧となる側へ向けて、液柱共振により反復移動される。そして、この時の流動抵抗による高減衰を発生し、良好な緩衝性を得ると共に、その振動を短時間で制止する。
【0051】
マウントケース1の径方向(水平方向)への振動入力に対しては、マウントケース1とボス2の相対変位が、互いの偏心方向になされる。そして、この振動変位の方向が、図4におけるVX方向、すなわち副液室D,Dの対向方向である場合は、副液室D,Dが加圧と減圧を半周期毎に交互に受け、エンジンシェイク等による所定の周波数域においては、副液室D,Dのうち相対的に低圧となる側へ向けて副オリフィスE内に液柱共振による封入液の流れを生じるので、これに伴う流動抵抗によって、有効な減衰力を得ることができる。
【0052】
また、マウントケース1の径方向への振動入力において、その振動変位の方向が、図4におけるVY方向、すなわち副液室D,Dの対向方向と直交する方向である場合は、副液室D,Dは、形状の変化は受けるがその容積は殆ど変化しないため、副オリフィスE内での封入液の流れは生じない。このため、VY方向のばね定数は弾性体3にのみ依存され、高い周波数域まで低動ばねに維持されて、優れた振動絶縁性を発揮する。
【0053】
なお、上述した各実施の形態において、サブダイアフラム6及び撹拌板22は、必要に応じて設けられるものであり、本発明は、このようなサブダイアフラムや撹拌板を設けない仕様の液体封入式マウントについても適用することができる。
【0054】
【発明の効果】
請求項1の発明に係る液体封入式マウントによれば、マウントケースの径方向の振動に対して、互いに対向する一対の副液室間で副オリフィス内を封入液が移動することにより減衰機能を得るものであり、その減衰発生に方向性を有するため、効率的な減衰発生方向や減衰の大きさを任意に設定することができる。
【0055】
また、一対の副液室の対向方向と直交する方向には開放空間となっているため、高い周波数域まで動ばね定数が低く抑えられ、マウントケースの径方向の振動に対する優れた振動絶縁性を発揮することができる。
【0056】
また、第一液室と第二液室が弾性体によって分離されたことによって、弾性体側の第一液室とダイアフラム側の第二液室との間を仕切るための部材が不要になり、小型化及び軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る液体封入式マウントの実施の形態を軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図2】 この液体封入式マウントの内部を構成する加硫成形体を示す斜視図である。
【図3】 図1におけるV−V’線の位置で軸心と直交する平面で切断して示す断面図である。
【図4】 図1におけるVI−VI’線の位置で軸心と直交する平面で切断して示す断面図である。
【図5】 図1におけるVII−VII’線の位置で軸心と直交する平面で切断して示す断面図である。
【図6】 図1におけるVIII−VIII’線の位置で軸心と直交する平面で切断して示す断面図である。
【符号の説明】
1 マウントケース
2 ボス
3 弾性体
3a,3b 凹所
31 主弾性部
32 副弾性部
33 弾性リブ部
4 ダイアフラム
A 第一液室
B 第二液室
C 主オリフィス
D 副液室
E 副オリフィス
Claims (1)
- マウントケース(1)とその内周に配置された内周取付部材(2)との間に弾性体(3)及びダイアフラム(4)が設けられ、
前記弾性体(3)によって前記ダイアフラム(4)と反対側に画成された第一液室(A)と前記弾性体(3)によって前記ダイアフラム(4)との間に画成された第二液室(B)との間が主オリフィス(C)を介して互いに連通され、
前記第一液室(A)と第二液室(B)との間に介在する前記弾性体(3)は、前記内周取付部材(2)の周りを略円錐状に延びる主弾性部(31)と、この主弾性部(31)の外側を前記内周取付部材(2)を中心とする180°対称に延びる一対の副弾性部(32)と、各副弾性部(32)の円周方向両端と前記主弾性部(31)の間に形成された複数の弾性リブ部(33)とからなり、
前記主弾性部(31)、副弾性部(32)及び弾性リブ部(33)で画成された180°対称の一対の副液室(D,D)と、前記第二液室(B)の一部をなす凹所(3b)が前記弾性体(3)に円周方向交互に形成され、前記副液室(D,D)間が、副オリフィス(E)を介して互いに連通されたことを特徴とする液体封入式マウント。
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