JP4419323B2 - ブラウン管保護用フィルム積層体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルフィルムを基材とするブラウン管保護用フィルム積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィルム上に各種ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの層を形成させて、該ポリエステルフィルムの易接着性を向上させる技術が、特開昭55−15825号公報、特開昭58−78761号公報、特開昭60−248232号公報などに開示されている。また、各種の易接着フィルム上に表面硬化層を形成させる技術が特開昭62−263237号公報、特開昭63−147798号公報などに開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが一般に、基材フィルムとなる二軸配向ポリエステルフィルムは、概して他の材料、例えばアクリレートを主成分とするハードコートとの接着性が悪いことが知られている。また、ポリエステルフィルムはハンドリング性を良くするために、不活性粒子をフィルム中に含有させることにより、フィルム表面に凹凸を形成させることが一般に行われているが、このようなフィルムを光学用途に適用する場合、該不活性粒子がフィルムの透明性悪化の一因となる。
【0004】
さらに、二軸配向ポリエステルフィルムからなる基材フィルムを製造する際、原料ポリマー中に異物が存在すると、フィルム製造時の延伸工程においてこの異物の周囲でポリエステル分子の配向が乱れ、光学的歪みが発生する。このような異物に基づく光学欠陥は、この光学的歪みによって、実際の異物の大きさよりもかなり大きなサイズとして認識されるため、光学用フィルムとしての品質を著しく損なう。例えば、大きさ20μm程度の異物でも、光学的には50μm以上の大きさとして認識され、さらには100μm以上の大きさの光学欠陥として認識される場合もある。また、透明性の高いフィルムを得るには、基材フィルム中に易滑性を付与するための不活性粒子を含有させないか、透明性を阻害しない程度の含有量に留めておくことが望ましいが、粒子含有量が少なくフィルムの透明性が高くなるほど、微小な異物による光学欠陥はより鮮明となる傾向にある。また、フィルム厚が増すほど、フィルム単位面積当たりの異物の含有量が増加する傾向にあり、この問題は一層大きくなる。
【0005】
他方、基材フィルムの透明性を高くするために、基材フィルム中に粒子を含有させないか、透明性を阻害しない程度の含有量に留めると、フィルムの易滑性が不十分となり製造時・使用時のハンドリング性が悪化する。そのため、接着層に易滑性付与を目的とした粒子を添加する必要があるが、透明性を確保するため、平均粒径が可視光線の波長以下の極めて小さい粒子を用いる必要がある。しかし、これらの微細粒子は粗大凝集物となりやすく、こうした粗大凝集物を含有する接着層を基材フィルムに形成させると光学欠陥の原因となる。
【0006】
本発明の目的は、上述のような問題点および要求特性に鑑み、接着性、光学特性、耐スクラッチ性などに優れたブラウン管保護用フィルム積層体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明のブラウン管保護用フィルム積層体は、基材フィルムである二軸配向ポリエステルフィルムの片面に接着性改質層を形成させ、該接着性改質層上に表面硬化層を形成させたブラウン管保護用フィルム積層体において、
前記基材フィルム内には実質的に粒子が含まれておらず、
且つ当該基材フィルムの表面に存在する、高さが1μm以上で最大径が20μm以上の凸部を形成する異物と、該凸部を起点として100μm以内に存在する深さ0.5μm以上の凹部とからなる異形部が5個/m2以下であり、
さらに前記接着性改質層が、ポリエステル系樹脂に少なくとも1種の重合性不飽和単量体がグラフトされた自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を構成成分として含み、且つ、該重合性不飽和単量体成分として分子内に二重結合を有する酸無水物の少なくとも1種が含まれているところに要旨を有するものである。
【0008】
なお、上記接着性改質層を構成する自己架橋性ポリエステル系共重合体が、上記重合性不飽和単量体成分として少なくとも無水マレイン酸とスチレンあるいはその誘導体を含むものであり、且つ上記接着性改質層の表面および内部に存在する最大径が20μm以上の異物が3個/m2以下である場合は、本発明の目的を達成する上で好ましい態様である。
【0009】
また、上記基材フィルムの厚みとしては、100〜300μmであることが推奨される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のブラウン管保護用フィルム積層体(以下、単に「フィルム積層体」ということがある)の基材フィルムである二軸配向ポリエステルフィルム(以下、単に「基材フィルム」ということがある)の原料となるポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートあるいはこれらの樹脂を構成する成分を主成分とする共重合ポリエステル樹脂が用いられるが、中でもポリエチレンテレフタレートが好適である。
【0011】
こうした共重合ポリエステル樹脂の場合、副成分である上記共重合成分の比率が高すぎると、フィルム積層体の強度、透明性、耐候性などが劣る場合もあるため、共重合体全量に対し20質量%未満であることが好ましい。
【0012】
上記の共重合ポリエステル樹脂に用いられる共重合成分(副成分)のうち、ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられ、この他、ジカルボン酸の一部を置換し得るものとして、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能カルボン酸などが挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪酸グリコール;p−キシレングリコールなどの芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらのジカルボン酸成分およびグリコール成分は、1種または2種以上を同時に使用可能である。
【0013】
本発明に係る基材フィルムは、基材として要求される強度などの機械的性質や熱的性質を確保する必要から、二軸配向ポリエステルフィルムでなければならない。また、基材フィルムの厚みは、100μm以上であることが好ましい。厚みが100μm未満では剛性が不十分となる傾向がある。なお、基材フィルムの厚みの好ましい上限は300μm、さらに好ましくは250μm以下である。また、基材フィルムは、そのヘイズ値が3.0%以下、好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.0%以下であることが推奨される。ヘイズ値が上記範囲を超えると、この基材フィルムを用いたブラウン管保護用フィルム積層体をブラウン管に接着させた場合、画面の鮮明度が低下するので好ましくない。
【0014】
本発明のフィルム積層体は、ブラウン管保護用、すなわち光学用部材に使用されるため、光学欠陥の原因となる異物を可能な限り低減させる必要がある。基材フィルム中に存在し得る異物は、大きく(A)原料ポリエステル樹脂中の触媒(重縮合反応触媒、エステル交換反応触媒)、添加剤(アルカリ金属塩・アルカリ土類金属塩のような静電密着改良剤や、リン酸またはリン酸塩のような熱安定剤など)の凝集物、およびこれらの金属還元物に起因するもの、(B)外部から混入した汚染物、(C)高融点有機物、などに分類される。
【0015】
本発明のフィルム積層体では、後述するように、基材フィルムを製造する際の溶融ポリエステル樹脂の押出工程において、該溶融樹脂を濾過して異物を除去することが好ましいが、濾材を通過する微細な異物であっても、シート状溶融物の冷却過程において異物の周囲で結晶化が進み、これが後述する延伸工程において延伸の不均一性を引き起こし、微小な厚みの差異を生じさせてレンズ状態となる。そしてこの部分では光があたかもレンズがあるかの様に屈折または散乱し、肉眼で観察した時には実際の異物より大きく見えるようになる。この微小な厚みの差は、異物による凸部の高さと、該凸部を起点として延伸により形成された凹部の深さの差として観測することができ、凸部の高さが1μm以上であり、該凸部を起点として100μm以内に存在する凹部の深さが0.5μm以上であるものでは、レンズ効果により、大きさが20μmの形状の物でも肉眼的には50μm以上の大きさとして認識され、さらには100μm以上の大きさの光学欠陥として認識される場合もある。
【0016】
基材フィルム中に粒子が実質的に含まれていない透明性の高いフィルムでは、上記微細な凹凸による光学欠陥はより鮮明に現われる傾向にある。また、厚手のフィルムの表面は薄手のフィルムより急冷されにくくて結晶化が進む傾向にあるので、こうした傾向は一層顕著になる。
【0017】
よって、本発明のフィルム積層体では、基材フィルムの表面に存在する高さが1μm以上で最大径が20μm以上の凸部を形成する異物と、該凸部を起点として100μm以内に存在する深さ0.5μm以上の凹部とからなる異形部を可能な限り少なく抑えることが望まれるが、その数が5個/m2程度まであれば実用面で実質的な障害となることはないので、本発明では上記サイズ以上の異形部の数をで5個/m2以下と定めている。該異形部のより好ましい数は3個/m2以下、さらに好ましくは2個/m2以下である。ちなみに、上記粗大な異形部の数が上記範囲を超えると、ブラウン管保護用フィルム積層体としての品質を大きく損なうことになるからである。
【0018】
上記の異形部の数は、前記(A)〜(C)でも述べた如く異物量を低減させることにより減少させることができる。
【0019】
基材フィルムとして用いられるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とグリコールをエステル化反応させ、次いで重縮合反応を行う重縮合法、あるいはジカルボン酸塩とグリコールをエステル交換反応させ、次いで重縮合反応を行うエステル交換法など、従来公知の方法によって製造される。
【0020】
このポリエステル樹脂には、重縮合触媒、さらに場合によってはエステル交換反応触媒、およびリン酸またはリン酸塩などの熱安定剤が必須成分として用いられる。また、これら以外に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を適量含有させ、これらの金属塩とリン原子のモル比を制御することで、シート状溶融ポリエステル樹脂を回転冷却ロール上に静電印加法により密着固化させ、厚みの均一な未延伸シートを安定して得ることができる。
【0021】
ポリエステル樹脂の代表的な重縮合触媒としては、三酸化アンチモン、アンチモングリコラートなどのSb系触媒、Ge系触媒、Ti系触媒などがある。これらのうち、透明性、熱安定性および価格の観点から、フィルム用ポリエステル樹脂の重縮合触媒としては、一般に、三酸化アンチモン(Sb23)が使用されている。
【0022】
特に、重縮合触媒としてSb23を使用した場合、重合時および/または未延伸ポリエステルフィルムの製造時に、Sb23が金属Sbに還元され、フィルム表面に凝集物として析出し易くなる。これが上記(A)の異物に該当するため、重縮合時間を著しく遅くしない範囲で、できるだけSb23の含有量を低減させることが好ましい。上記のような異形部の数を上記範囲内とするためには、ポリエステル樹脂中のSb23の含有量を、金属Sb換算で50〜250ppm、好ましくは60〜200ppm、さらに好ましくは70〜150ppmとすることが推奨される。
【0023】
また、上記ポリエステル樹脂中には、粒子が実質的に含有されていないことが必要である。「粒子が実質的に含有されていない」とは、原子吸光分析法や発光分析法など予め他の分析法での分析結果から作成した検量線を用いて、蛍光X線分析法で粒子に起因する元素を定量した際に検出限界以下となる含有量を意味する。
【0024】
しかしながら、例えば、エステル交換反応触媒に用いられる酢酸カルシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、リン酸カルシウム粒子などでは、元素としてカルシウムが共通しており、該カルシウム元素が触媒のものでなのか、粒子のものでなのかの判別が困難な場合がある。このような場合には、ポリエステル樹脂またはポリエステルフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム(=2/3:体積比)で溶解し、次いで遠心分離して粒子を分離した後、デカンテーションを行い、原子吸光分析法や発光分析法などによって、上澄み液中に存在する触媒起因のカルシウム元素量を定量する。そしてポリエステル中の総カルシウム元素量と、上記触媒起因のカルシウム元素量との差から、粒子起因のカルシウム元素量を算出することができる。
【0025】
また、重縮合完了後、ポリエステル樹脂を孔径が7μm以下(初期濾過効率95%)のナイロン製フィルターで濾過処理したり、ペレット化のために押出機から溶融ポリエステル樹脂のストランドを冷却水中に押出す際に、予め冷却水を濾過処理(フィルター孔径:1μm以下)し、且つ、この工程を密閉した部屋で行い、ヘパフィルターで環境中に存在する1μm以上の異物を低減させておくことが好ましい。
【0026】
さらに、後述するポリエステル樹脂の未延伸シート製造の際にも、該ポリエステル樹脂が溶融している段階で、該樹脂中に含まれる異物を除去するために精密濾過を行う。精密濾過に用いられる濾材は特に限定はされないが、ステンレススチール焼結体の濾材が、ポリエステル樹脂の重合触媒が還元されて生成する金属Sbなどや、重合からペレット化までの段階で混入するSi、Ti、Ge、Cuを主成分とする凝集物および高融点有機物の除去性能に優れることから好適である。濾材の濾過可能な粒子サイズは15μm以下(初期濾過効率95%)であることが好ましい。15μmを超えるものでは、除去の必要がある20μm以上のサイズの粒子の除去が不十分となる場合がある。上記のような濾過性能を有する濾材を使用して溶融樹脂の精密濾過を行うことにより生産性が低下する場合があるが、光学欠陥の少ないブラウン管保護用フィルム積層体を得るには極めて好適である。
【0027】
上記の基材フィルムには、各種の添加剤が含有されていてもよい。好ましい添加剤としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。なお、基材フィルム中には易滑性付与を目的とした粒子は添加しない。
【0028】
また、基材フィルムの原料であるポリエステル樹脂ペレットの固有粘度は、0.45〜0.70dl/gであることが好ましい。固有粘度が上記範囲を下回ると、耐引き裂き性が低下する。他方、上記範囲を超えると、該ペレットから基材フィルムを製造する際に行う上記の精密濾過において、濾圧の上昇が大きくなり、該濾過の実施が困難となる。
【0029】
本発明でいう接着性とは、後記実施例に記載の方法によって測定される表面硬化層との接着性が85%以上であることを意味し、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
【0030】
上記基材フィルムの片面に、接着性改質層を形成させる。形成方法としては、未延伸または一軸延伸後の基材フィルムの片面に接着性改質層を設け、その後二軸あるいは一軸方向に延伸・熱固定処理するインラインコート法が好ましく採用される。インラインコート法により形成される接着性改質層に、適切な粒径の微粒子を含有させることにより易滑性をもたせておけば、良好な巻き取り性、キズ発生防止機能を付与できる。このため、この方法により、フィルム積層体の透明性を低下させる一因である粒子の添加量を可能な限り抑えることができる。
【0031】
本発明のブラウン管保護用フィルム積層体の接着性改質層は、ポリエステル系樹脂に少なくとも1種の重合性不飽和単量体がグラフトされた自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を構成成分として含み、且つ、該重合性不飽和単量体として分子内に二重結合を有する酸無水物の少なくとも1種が含まれているものである。また、本発明のさらに好ましい実施態様では、上記重合性不飽和単量体が、少なくとも無水マレイン酸とスチレンまたはその誘導体の組合せである。
【0032】
接着性改質層の主体となるポリエステル系樹脂は、基材フィルムであるポリエステルフィルムとの接着性は良好であるが、表面硬化層(後述する)に好ましく用いられるアクリル系樹脂などとの接着性が不足気味となる。また、重合性不飽和単量体の重合物が、例えばアクリル系樹脂のみからなるものでは、表面硬化層として好ましいアクリル系樹脂との接着性には優れるものの、基材フィルムであるポリエステルフィルムとの接着性に劣る傾向がある。さらに、ポリエステル系樹脂とアクリル系樹脂を混合して用いても、接着性の改善効果は十分でない。
【0033】
そこで、分子内に二重結合を有する酸無水物に起因するカルボキシル基を導入することで、接着性改質層と表面保護層との接着性の向上を図るのである。さらに、上記の分子内に二重結合を有する酸無水物をグラフトすることで、後述するように、ポリエステル系グラフト共重合体は自己架橋性を有するようになる。なお、ここでいう「グラフト共重合体」とは、共重合ポリエステルの分子を主鎖とし、これに、主鎖とは異なる重合体からなる枝ポリマーを導入した共重合体をいう。
【0034】
上記自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体(以下、単に「グラフト共重合体」ということがある)の製造には、通常、ポリエステル系樹脂を有機溶剤中に溶解させた状態で、ラジカル開始剤および重合性不飽和単量体混合物を反応させてグラフトすることにより行う。グラフト反応終了後の生成物は、所望のポリエステル系樹脂−重合性不飽和単量体混合物のグラフト共重合体の他に、グラフト化を受けなかったポリエステル系樹脂およびポリエステル系樹脂にグラフトしなかった重合性不飽和単量体混合物からの重合体をも含有しているが、上記の自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体とは、これらすべてを含むものであってもかまわない。
【0035】
ポリエステル系樹脂に重合性不飽和単量体をグラフトさせたグラフト共重合体の酸価は600eq/106 g以上、好ましくは1200eq/106 g以上であることが推奨される。反応物の酸価が上記範囲を下回ると、本発明の目的である基材フィルムと表面硬化層の接着性が不十分となる。
【0036】
また、本発明の目的を達成する上で好ましいポリエステル系樹脂と重合性不飽和単量体の質量比率は、ポリエステル系樹脂/重合性不飽和単量体=40/60〜95/5の範囲であり、さらに好ましくは55/45〜93/7、特に好ましくは60/40〜90/10の範囲である。ポリエステル系樹脂の比率が40質量%未満であると、基材フィルムとの優れた接着性を発揮することができない。他方、ポリエステル系樹脂の比率が95質量%より大きいと、表面硬化層に好ましく用いられるアクリル系樹脂との接着性が低下し、特に親水性ポリエステル樹脂使用時には高湿度下での接着性、すなわち耐湿性の低下が著しくなる。
【0037】
上記の自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体は、有機溶媒の溶液または分散液、あるいは、水系溶媒の溶液または分散液の形態で得られる。特に、水系溶媒の分散液つまり、水分散樹脂の形態が、作業環境やその後の塗布性の点で好ましい。このような水分散樹脂は、通常、有機溶媒中で、上記ポリエステル系樹脂に、親水性重合性不飽和単量体を含む重合性不飽和単量体混合物をグラフト重合し、次いで、水添加、有機溶媒留去することで得られる。
【0038】
上記水分散樹脂は、レーザー光散乱法により測定される平均粒子径が好ましくは500nm以下であり、平均半透明ないし乳白色の外観を呈する。重合方法の調整により多様な粒径の水分散樹脂が得られるが、この粒子径は10〜500nmが適当であり、分散安定性の点で、400nm以下が好ましく、より好ましくは300nm以下である。平均粒径が上記範囲を超えるとこの樹脂を積層した後の表面光沢に低下がみられ、被覆物の透明性が低下し、上記範囲未満では耐湿性が低下するため、好ましくない。
【0039】
水分散樹脂とする場合のグラフトに使用する親水性重合性不飽和単量体には、単量体の状態で親水基を有するものの他、グラフト反応後に親水基に変換させ得る官能基を有するものも含まれる。親水基を有する重合性不飽和単量体としては、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩基などを含む重合性不飽和単量体などが挙げられる。他方、親水基に変換できる官能基を有する重合性不飽和単量体としては、分子内に二重結合を有する酸無水物や、グリシジル基、クロル基などを有する重合性不飽和単量体などが挙げられる。これらの中で、水分散性の点から、カルボキシル基が好ましく、カルボキシル基を有するか、カルボキシル基を発生し得る官能基を有する重合性不飽和単量体が好ましい。なお、本発明では既述の通り、上記のグラフト共重合体は、分子内に二重結合を有する酸無水物を必ず使用して得られるものであるが、水分散性のさらなる向上の観点から、上記他の親水性重合性不飽和単量体も使用できる。
【0040】
接着性改質層に使用できるポリエステル系樹脂に用いられるジカルボン酸の組成としては、ジカルボン酸成分全量を100モル%とした場合、芳香族ジカルボン酸60〜99.5モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜40モル%、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸0.5〜10モル%であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸が上記範囲を下回る場合や、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸が上記範囲を超える場合は、表面硬化層との密着強度が低下する。また、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸が上記範囲を下回ると、ポリエステル系樹脂に対する上記重合性不飽和単量体のグラフト効率が低下し、他方、上記範囲を超えると、グラフト反応後期において、反応系内の粘度が増大しすぎて、反応の均一な進行が妨げられる。より好ましくは、ジカルボン酸成分全量を100モル%とした場合、芳香族ジカルボン酸70〜98モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜30モル%、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸2〜7モル%である。
【0041】
上記芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸などが挙げれらる。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸などが挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸およびその酸無水物などが挙げられる。
【0042】
また、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物;2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族ジカルボン酸およびその酸無水物などが挙げられる。これらのうち、重合性の観点から、フマル酸、マレイン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸などの無水物が好ましく用いられる。
【0043】
接着性改質層に使用できるポリエステル系樹脂に用いられるグリコール成分としては、炭素数2〜10の脂肪族グリコールおよび/または炭素数6〜12の脂環族グリコールおよび/またはエーテル結合含有グリコールが挙げられる。炭素数2〜10の脂肪族グリコールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールなどが挙げられる。炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の二つのフェノール性水酸基に、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。また、これらの他に、必要に応じて、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなども使用できる。
【0044】
上記ポリエステル系樹脂には、さらに3個以上カルボキシル基を有するポリカルボン酸および/または3個以上の水酸基を有するポリオールを共重合することもできる。3個以上カルボキシル基を有するポリカルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)などが挙げられる。3個以上の水酸基を有するポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。上記のポリカルボン酸またはポリオールは、夫々全カルボン酸成分あるいは全グリコール成分に対し、5モル%以下、好ましくは3モル%以下の範囲で用いることが推奨される。ポリカルボン酸あるいはポリオールの量が上記範囲を超えると、重合時にゲル化が起きやすい。
【0045】
ポリエステル系樹脂の分子量は、重量平均で5000〜50000であることが好ましい。分子量が上記範囲を下回ると表面保護層との接着強度が低下し、他方、上記範囲を超えるものでは重合時にゲル化の問題が生ずる。
【0046】
ポリエステル系樹脂にグラフトされる上記の重合性不飽和単量体としては、フマル酸;フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸のモノエステルまたはジエステル;マレイン酸およびその無水物;マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸のモノエステルまたはジエステル;イタコン酸およびその無水物;イタコン酸のモノエステルまたはジエステル;フェニルマレイミドなどのマレイミドなど;スチレン;α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体;ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどである。この他、例えば、アルキル(メタ)クリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基など);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有アクリル単量体:アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有アクリル単量体;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有アクリル単量体;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有アクリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するアクリル単量体などのアクリル系単量体が挙げられる。好ましくは、無水マレイン酸およびそのエステルであり、さらに無水マレイン酸とスチレンあるいはその誘導体との混合物が推奨される。これらの重合性不飽和単量体は1種もしくは2種以上を用いてグラフト共重合させることができる。
【0047】
ポリエステル系樹脂に重合性不飽和単量体をグラフトさせる方法としては特に限定されないが、通常、ポリエステル系樹脂を有機溶剤中に溶解状態に置き、ラジカル開始剤および重合性不飽和単量体混合物を反応させることにより行う。
【0048】
ラジカル開始剤としては、公知の有機過酸化物や有機アゾ化合物を用いることができる。有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレートなどが、有機アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルパレロニトリル)などが挙げられる。これらラジカル開始剤の使用量は、重合性不飽和単量体に対し、少なくとも0.2質量%、好ましくは0.5質量%である。この他、グラフトされる枝ポリマーの長さを調節するための連鎖移動剤、例えば、オクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールなどを必要に応じて用いることもできる。この場合の添加量は、重合性不飽和単量体に対し、5質量%以下であることが好ましい。
【0049】
グラフト反応を行う際に用いられる反応溶媒は、沸点が50〜250℃の水性有機溶媒が好ましい。ここで、水性有機溶媒とは、20℃における水に対する溶解度が、少なくとも10g/リットル、好ましくは20g/リットル以上であるものをいう。沸点が上記範囲を超えるものは、蒸発速度が遅く、後述する接着性改質層の塗工の際に、該接着性改質層の高温焼付によっても充分に取り除くことができない。また沸点が上記範囲を下回るものは、それを溶媒としてグラフト反応を行う場合、上記沸点以下の温度で解裂するラジカル開始剤を用いねばならないので、取り扱い上の危険性が増大する。ポリエステル系樹脂の溶解能が高く且つ分子内に二重結合を有する酸無水物を含む重合性不飽和単量体混合物およびその重合体を比較的良く溶解する第一群の水性有機溶媒としては、例えば、酢酸エチルなどのエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソランなどの環状エーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコ−ルメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルプロピルエ−テル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコ−ルブチルエ−テルなどのグリコールエーテル類;メチルカルビト−ル、エチルカルビト−ル、ブチルカルビト−ルなどのカルビトール類;エチレングリコ−ルジアセテ−ト、エチレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコールあるいはグリコールエーテルの低級エステル類;ダイアセトンアルコールなどのケトンアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのN−置換アミド類;N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0050】
この他、ポリエステル系樹脂はほとんど溶解しないが、分子内に二重結合を有する酸無水物および他の重合性不飽和単量体を比較的よく溶解し得る第二群の水性有機溶媒として、低級アルコール類、低級カルボン酸類、低級アミン類などが挙げられる。さらに同様の性質を有するため、水もこの第二群の水性有機溶媒に含めることができる。なお、これらのうち、上記のグラフト反応に特に好ましいものは、炭素数1〜4のアルコール類およびグリコール類である。
【0051】
グラフト反応を単一の溶媒で行う場合は、上記第一群の水性有機溶媒から選択することができる。混合溶媒を用いる場合は、第一群の水性有機溶媒から2種以上を選択する場合の他、第一群の水性有機溶媒から少なくとも1種選択し、さらに第二群の水性有機溶媒から1種以上を選択することができる。反応溶媒として上記のように単一の溶媒を用いても、混合溶媒を用いてもグラフト反応を行うことは可能であるが、混合溶媒を採用する場合は、その組成により、グラフト反応の進行挙動、反応生成物およびその水分散体の外観、性状などに差異が見られることから、第一群および第二群の水性有機溶媒のそれぞれ1種からなる混合溶媒を使用することが推奨される。
【0052】
第一群の溶媒中ではポリエステル系樹脂の分子鎖は広がりの大きい鎖の伸びた状態にあり、一方、第一群/第二群の混合溶媒中では広がりの小さい糸まり状に絡まった状態にあることが、これら溶液中のポリエステル系樹脂の粘度測定により確認されている。共重合ポリエステル樹脂の溶解状態を調節し分子間架橋を起こりにくくすることがゲル化防止に有効であるが、効率の高いグラフト化とゲル化抑制の両立は、後者の混合溶媒において達成できる。第一群/第二群の混合溶媒の質量比率は、95/5〜10/90、好ましくは90/10〜20/80、より好ましくは85/15〜30/70である。最適の混合比率は、使用する共重合ポリエステルの溶解性などに応じて決定される。
【0053】
上記のグラフト共重合体は塩基性化合物で中和することが好ましく、これにより容易に水分散化することができる。塩基性化合物としては塗膜形成時、あるいは硬化剤配合による焼付硬化時に揮散する化合物が望ましく、アンモニア、有機アミン類などが好適である。好ましい化合物の例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、アミノエタノールアミン、N−メチルーN,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。塩基性化合物は、グラフト反応後の生成物中に含まれるカルボキシル基含有量に応じて、少くとも部分中和、若しくは、完全中和によって水分散体のPH値が5.0−9.0の範囲となるように使用することが好ましい。
【0054】
上記のグラフト共重合体では、重合性不飽和単量体の重合物の重量平均分子量は500〜50000であることが好ましい。重合性不飽和単量体の重合物の重量平均分子量を500未満にコントロールすることは一般に困難であり、仮に500未満にしようとするとグラフト効率が低下し、ポリエステル系樹脂への親水性基の付与が十分に行なわれない傾向にある。すなわち、重合性不飽和単量体のグラフト重合物は分散粒子の水和層を形成するが、十分な厚みの水和層をもたせ、安定な分散体を得るためには重合性不飽和単量体のグラフト重合物の重量平均分子量が500以上であることが好ましい。また、重合性不飽和単量体のグラフト重合物の重量平均分子量の上限は、溶液重合における重合性の点で50000が好ましい。上記範囲内での分子量のコントロールは開始剤量、単量体滴下時間、重合時間、反応溶媒、単量体組成あるいは必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行なうことができる。
【0055】
また、上記のポリエステル系グラフト共重合体は自己架橋性を有する。これは、常温では架橋しないが、乾燥時の熱で、(1)反応物中に存在するカルボキシル基の脱水反応、(2)反応物中に存在するエステル基の分子間のエステル化またはエステル交換反応、(3)熱ラジカルによる水素引き抜き反応、などの分子間反応を行い、架橋剤なしで架橋する。これにより初めて、本発明の目的である接着性、さらには良好な耐湿性を発現できる。基材フィルムへの塗工後の架橋性については様々の方法で評価できるが、例えば、ポリエステル系樹脂および重合性不飽和単量体の重合物の両者を溶解するクロロホルム溶媒での不溶分率で調べることができる。80℃以下で乾燥し、120℃で5分間熱処理して得られるグラフト共重合体の不溶分率が、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。グラフト共重合体の不溶分率が50%未満の場合は、接着性、耐湿性が十分でないばかりでなく、ブロッキングも起こしてしまう。
【0056】
上記グラフト共重合体は、そのままで本発明に係る接着性改質層を形成し得るが、さらに架橋剤(硬化用樹脂)を配合して硬化を行うことにより、接着性改質層に高度の耐湿性を付与し得る。
【0057】
架橋剤としては、アルキル化フェノール類、クレゾール類などのホルムアルデヒドとの縮合物のフェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加物、この付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物などのアミノ樹脂;多官能性エポキシ化合物;多官能性イソシアネート化合物;ブロックイソシアネート化合物;多官能性アジリジン化合物;オキサゾリン化合物などを用い得る。
【0058】
フェノールホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、アルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチル)フェノール、p−tert−アミルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−、m−、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4’−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニル−o−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物などが挙げられる。
【0059】
アミノ樹脂としては、例えば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロール−N,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられ、この中でも、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、およびメチロール化ベンゾグアナミンなどが好ましい。
【0060】
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0061】
多官能性イソシアネート化合物としては、低分子または高分子の芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートを用い得る。具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのイソシアネート化合物の3量体などが挙げられる。さらに、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物、またはポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類などの高分子活性水素化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物も挙げられる。
【0062】
ブロック化イソシアネートは、上記イソシアネート化合物とブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて調製したものである。イソシアネートブロック化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類;チオフェノール、メチルチオフェノールなどのチオフェノール類;アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類;t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第3級アルコール類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、ν−ブチロラクタム、β−プロピルラクタムなどのラクタム類;芳香族アミン類;イミド類;アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物;メルカプタン類;イミン類;尿素類;ジアリール化合物類;重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。
【0063】
これらの架橋剤は、それぞれ単独で、または2種以上混合して用い得る。架橋剤の配合量としては、グラフト共重合体100質量部に対して、5〜40質量部が好ましい。
【0064】
架橋剤の配合方法としては、(a)架橋剤が水溶性である場合、直接グラフト共重合体の水系溶媒溶液または分散液中に溶解または分散させる方法、または(b)架橋剤が油溶性である場合、グラフト化反応終了後、反応液に添加する方法がある。これらの方法は、架橋剤の種類、性状により適宜選択し得る。さらに架橋剤には、硬化剤や促進剤を併用し得る。
【0065】
本発明のブラウン管保護用フィルム積層体を製造するに当たっては、既述の通り、接着性改質層を形成する際には、上記のグラフト共重合体を溶かした水性塗布液の塗布が好ましく採用される。該水性塗布液を基材フィルム表面に塗布する際には、基材フィルムへの濡れ性を向上させ、均一に塗布できるようにするため、公知のアニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤を塗布液中に適量添加して用いることもできる。塗布液に用いる溶剤には、水の他、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類を、塗布液全量に対し60質量%未満の割合で用いてもよい。さらに、塗布液全量に対し10質量%未満の割合で、上記アルコール類以外の有機溶剤を、溶解可能な範囲で混合することも可能である。ただしこの場合、アルコール類と他の有機溶剤との合計量が、塗布液全量に対し60質量%未満であることが推奨される。このように、アルコール類を含めた有機溶剤の含有量が上記範囲内であれば、塗布液の塗布後の乾燥性が良好であると共に、水のみを用いる場合と比較して接着性改質層の外観が向上するといった効果がある。他方、上記合計量が上記範囲を超えると溶剤の蒸発速度が速く、基材フィルム上への塗工中に塗布液の濃度変化が生じ、粘度が上昇して塗工性が低下し、接着性改質層が外観不良となる恐れがあり、さらには火災などの危険性も増大する。
【0066】
本発明では、易滑性を付与する滑剤粒子を基材フィルム中には添加しないため、接着性改質層形成後の耐スクラッチ性、フィルムの巻き上げ性を向上させるために、接着性改質層形成用の上記塗布液に粒子を添加して、接着性改質層表面に適度な突起を形成することが好ましい。このような目的で添加する粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデンなどの無機粒子;架橋高分子粒子;シュウ酸カルシウムなどの有機粒子などが挙げられる。中でもシリカが、基材フィルムの原料であるポリエステル樹脂に比較的近い屈折率を有していることから、高い透明性を獲得できる点で最も好適である。
【0067】
上記粒子の平均径は、通常1.0μm以下、好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下であることが推奨される。平均粒径が上記範囲を超えると、積層後のフィルム表面が粗面化し、透明性が低下する傾向がある。また、上記粒子の含有量は、塗布・乾燥後の接着性改質層全量に対し、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下とすることが推奨される。粒子の含有量が上記範囲を超えると、接着性改質層−表面保護層間の接着性が損なわれることがある。
【0068】
接着性改質層には、上記粒子が2種類以上存在してもよく、同種の粒子で平均径の異なるものが存在していてもよい。いずれにしても、粒子全体の平均径および含有量が上記の範囲を満足することが好ましい。
【0069】
なお、接着性改質層の表面および内部に存在する最大径が20μm以上の異物が3個/m2以下、好ましくは2個/m2以下、さらに好ましくは1個/m2以下が推奨される。上記のサイズの異物は光学欠陥となるため、その個数が上記範囲を超えると、ブラウン管保護用フィルム積層体としての品質を大きく損なうからである。ところが、粗大サイズの異物であっても、その個数が3個/m2以下であれば、肉眼で観察される上記光学欠陥は実用上ほとんど問題にならないからである。
【0070】
こうした異物には、基材フィルムの異物として例示した上記(A)〜(C)のものがあり、上記の易滑性付与目的で添加される粒子の粗大凝集物も含まれる。よって、接着性改質層形成用の上記塗布液を基材フィルムに塗布する際には、塗布液中の粒子の粗大凝集物を除去するため、塗布直前に塗布液が精密濾過されるようなプロセスを採用することが好ましい。上記の精密濾過を実施する際の濾材としては、濾過可能な粒子サイズが25μm以下(初期濾過効率95%)であることが必要である。25μmを超えるものでは粗大凝集物が十分除去できず、塗布液を基材フィルムに塗布、乾燥後一軸延伸、あるいは二軸延伸した際(後述する)に接着層に粒子の粗大凝集物が広がって、多くの光学欠陥が発生する。さらに、このような粗大凝集物は、その周囲で基材フィルム分子の配向の乱れ、引いては光学的歪を引き起こし、結果として100μm以上の光学欠陥として認識される場合もある。濾材は、上記性能さえ有していれば、そのタイプ・材質については特に限定されない。タイプとしては、例えば、フィラメント型、フェルト型、メッシュ型などのものが挙げられ、材質としては、ステンレススチール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどが挙げられる。
【0071】
また、上記塗布液の基材フィルムへの塗布工程に際しては、該工程を行う室内を密閉し、さらに室内の空気中の異物を可能な限りヘパフィルターなどで除去する方法などを採用することが好ましい。
【0072】
上記塗布液には、接着性改質層としての機能および透明性を損なわない範囲で、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、有機フィラーおよび潤滑剤などの各種添加剤を配合してもよい。さらに、塗布液が上記のように水性である場合は、接着性改質層としての機能および透明性を損なわない範囲で、他の水溶性樹脂、水分散性樹脂およびエマルジョンなどを添加して、性能の向上を図ることも可能である。
【0073】
表面硬化層に用いられる樹脂としては特に限定されないが、アクリル系樹脂が好ましい。中でも、活性線(紫外線など)の照射によって硬化する活性線硬化性のアクリル系単量体から得られるアクリル系樹脂が好ましく用いられる。
【0074】
本発明のブラウン管保護用フィルム積層体は、粘着剤・接着剤を介してブラウン管に貼り付けて用いられる。上記の粘着剤・接着剤には、フィルム積層体およびブラウン管の両者と接着性が良好で、透明性を低下させたり光学欠陥を生じさせないものであれば特に限定されず、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系などの従来公知のものが使用できる。例えば、フィルム積層体あるいはブラウン管表面に塗布後、これを介して両者を張り合わせ、その後活性線(紫外線など)の照射によって硬化する活性線硬化性タイプの接着剤などが、貼り付け工程を簡略化でき、接着剤中ヘの異物の混入も防止できる点で好ましく用いられる。
【0075】
なお、粘着剤・接着剤として、基材であるポリエステルフィルムとの接着性に劣るアクリル系樹脂などを採用する場合は、基材フィルム−粘着剤・接着剤間の接着性を向上させるために、基材フィルムの表面硬化層を形成させた面と反対の面に、上記接着性改質層を形成させることが好ましい。
【0076】
以下に、本発明のブラウン管保護用フィルム積層体の製造方法について、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)を採用した場合を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
基材フィルムとしてPETを使用するに当たっては、前述した如く製造工程で、例えばSb23の如き異物源となる触媒を極力低減し、且つ不溶性夾雑物の混入を可及的に抑えた方法により製造されたPETであって、易滑性付与を目的とした粒子を実質的に含有していないPETのペレットを使用する。このペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押出し、冷却固化せしめて未延伸PETシートを製造する。この際、溶融PETが約280℃に保たれた任意の場所で、該樹脂中に含まれる異物を除去するために上述した精密濾過を行う。
【0078】
未延伸シートを冷却する方法としては、ダイスから回転冷却ドラム上に溶融PETをシート状に押出し、このシート状溶融PETを回転冷却ドラムに密着させながら、急冷してシートとする公知の方法が適用できる。このシート状物のエア面(冷却ドラムとの接触面と反対面)を冷却する方法としては、公知の方法が適用することができる。例えば、シート面に槽内の冷却用液体に接触させる方法、蒸散する液体をシートエア面にスプレーノズルで塗布する方法、高速気流を吹きつけて冷却する方法などを単独で、または併用して行うことができる。また、シート状溶融PETを回転冷却ドラムに密着させる方法としては、例えば、シート状溶融PETにエアナイフを使用する方法や静電荷を印加する方法などが挙げられる。これらの方法のうち、後者の静電印加法が、厚みむら制御の点から好適である。
【0079】
なお、先にも説明したように、溶融PET樹脂の押出工程において、濾材を通過する微細な異物であっても、シート状溶融物の冷却過程において異物の周囲で結晶化が進み、これが後述する延伸工程において延伸の不均一性を引き起こし、微小な厚みの差異を生じさせてレンズ状態となる。そしてこの部分では光があたかもレンズがあるかの様に屈折または散乱し、肉眼で観察した時には実際の異物より大きく見えるようになる。この微小な厚みの差は、異物による凸部の高さと、該凸部を起点として延伸により形成された凹部の深さの差として観測することができ、凸部の高さが1μm以上であり、該凸部を起点として100μm以内に存在する凹部の深さが0.5μm以上であるものでは、レンズ効果により、大きさが20μmの形状の物でも肉眼的には50μm以上の大きさとして認識され、さらには100μm以上の大きさの光学欠陥として認識される場合もある。
【0080】
透明性の高いフィルムを得るには、基材フィルム中に易滑性付与のための粒子が実質的に含まれていない方が好ましいが、粒子の添加量が少なくて透明性が高いほど、微細な凹凸による光学欠陥はより鮮明に現われる傾向にある。また、厚手のフィルムの表面は薄手のフィルムより急冷されにくくて結晶化が進む傾向にあるので、こうした傾向は一層顕著になる。
【0081】
よって、該基材フィルムの製造工程では、異物の混入ないし外部からの付着を極力抑え、基材フィルムの表面に存在する、高さが1μm以上で最大径が20μm以上の凸部を形成する異物と、該凸部を起点として100μm以内に存在する深さ0.5μm以上の凹部とからなる異形部が5個/m2以下となるように制御することが重要となる。
【0082】
得られた未延伸シートを、80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して、80〜180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き160〜240℃の熱処理ゾーンに導き、1〜60秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で、必要に応じて、幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0083】
この工程中の任意の段階でポリエステルフィルムの片面(場合によっては両面)に、前述したポリエステル系グラフト共重合体の水性溶液を塗布する。上記水性塗布液を塗布するには、公知の任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法およびカーテン・コート法などが挙げられ、これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて行うことができる。
【0084】
上記水性塗布液を塗布する工程は、通常の塗布工程、すなわち二軸延伸し熱固定した基材フィルムに塗布する工程でもよいが、該フィルムの製造工程中に塗布するインラインコート法が好ましい。さらに好ましくは、結晶配向が完了する前の基材フィルムに塗布する。水性塗布液中の固形分濃度は、30質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。該水性塗布液の塗布量(フィルム単位面積当りの固形分重量)は、0.04〜5g/m2であることが好ましく、さら好ましくは0.2〜4g/m2である。該水性塗布液が塗布されたフィルムは、延伸および熱固定のためにテンターに導かれ、そこで加熱されて、熱架橋反応により安定な接着性改質層を形成できる。
【0085】
また、上記の接着性改質層中には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂、例えば上記の自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体以外の樹脂が配合されていてもよい。さらに、接着性改質層中には本発明の効果を損わない範囲で各種の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などを配合して用いてもよい。上記の通り、特に、塗剤中に無機粒子および/または有機粒子を添加配合し二軸延伸をしたものは、易滑性が向上するので好ましい。
【0086】
次に、上記接着性改質層上に表面保護層を形成させる。表面硬化層は、例えば、活性線硬化性単量体混合物を主成分とする溶液組成物を接着性改質層上に塗布し、必要に応じて乾燥した後、活性線で硬化することにより形成することができる。 さらに、表面硬化層の表面(接着性改質層との接着面に反対の面)に光反射防止処理や防汚処理を施すことも好ましい態様である。
【0087】
こうして得られる本発明のブラウン管保護用フィルム積層体は、表面硬化層と反対の面(基材フィルム表面か、場合によっては接着性改質層表面)を、上述したような粘着剤・接着剤を介してブラウン管に貼り合わせることで使用される。
【0088】
以上のようなブラウン管保護用フィルム積層体をブラウン管に設けたものは、表面硬度が高く、耐磨耗性に優れると同時に、接着性改質層を設けたため、表面保護層−基材フィルム間の耐久性(接着性)に優れている。さらにガラス製であるブラウン管の破損時にも、破片が飛散しないため、安全性の高いブラウン管を得ることができる。
【0089】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下に示す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0090】
[基材フィルム用PET樹脂の製造]
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸が86.4部およびエチレングリコールが64.4部からなるスラリーを仕込み、撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモンを0.017部およびトリエチルアミンを0.16部添加した。次いで加熱昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った。
【0091】
その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水和物0.071部、次いでリン酸トリメチル0.014部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012部、次いで酢酸ナトリウム0.0036部を添加した。得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下で260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、孔径5μm(初期濾過効率95%)のナイロン製フィルターで濾過処理を行った。
【0092】
次に、空気中に存在する径が1μm以上の異物を、ヘパフィルターで減少させた密閉室内で、上記重縮合反応生成物であるPETをペレット化した。ペレット化は、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を流しながら、冷却水槽中に溶融PETを押出機のノズルから押出し、形成されたストランド状PET樹脂をカットする方法で行った。得られたPETのペレットは、固有粘度が0.62dl/g、Sb含有量が144ppm、Mg含有量が58ppm、P含有量が40ppm、カラーL値が56.2、カラーb値が1.6であり、不活性粒子および内部析出粒子は実質的に含有していなかった。
【0093】
[グラフト共重合体用ポリエステル系樹脂の調製]
撹拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート345部、1,4ブタンジオール211部、エチレングリコール270部、およびテトラ−n−ブチルチタネート0.5部を仕込み、160℃から220℃まで、4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、フマル酸14部およびセバシン酸160部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、29.3Pa(0.22mmHg)の減圧下で1.5時間反応させ、淡黄色透明のポリエステル系樹脂A−1を得た。同様の方法で、別の共重合組成のポリエステル系樹脂A−2を得た。A−1、A−2について、核磁気共鳴分析で測定した組成および重量平均分子量を表1に示す。
【0094】
【表1】
Figure 0004419323
【0095】
実施例1
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、表1に示す共重合ポリエステル樹脂A−1を75部、メチルエチルケトン56部およびイソプロピルアルコール19部を入れ、65℃で加熱、撹拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、無水マレイン酸15部を添加した。次いで、スチレン10部、およびアゾビスジメチルバレロニトリル1.5部を12部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1ml/minでポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノール5部を添加した。次いで、水300部とトリエチルアミン15部を反応溶液に加え、1時間撹拌した。その後、反応器内の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、淡黄色透明の水分散グラフト共重合樹脂B−1を得た。この水分散グラフト共重合樹脂B−1の25%水分散液を40部、水を24部およびイソプロピルアルコールを36部混合し、これにアニオン性界面活性剤を1質量%、滑剤(日産化学工業社製、スノーテックスOL)を5質量%添加し塗布液とした(以下、塗布液C−1と略記する。)。
【0096】
次に、上記のPETのペレットを135℃、133Paで6時間減圧乾燥し、押出機に供給して約280℃でシート状に溶融押出し、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷固化し、厚さ1400μmのキャストフィルムを得た。この際、溶融PETの異物除去用濾材として濾過可能な粒子サイズが10μm(初期濾過効率95%)のステンレススチール製焼結濾材を用いて精密濾過を行った。
【0097】
このキャストフィルムを、加熱したロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。
【0098】
その後、塗布液C−1を、濾過可能な粒子サイズ10μm(初期濾過効率95%)のフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法によって、上記PETフィルムの片面に塗布、乾燥した。この際のコート量は、0.5g/m2であった。塗布後引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して130℃に加熱された熱風ゾーンに導いて乾燥した後、幅方向に4.0倍に延伸した。引き続いてフィルム幅の長さを固定した状態で赤外線ヒーターによって250℃で0.6秒間加熱し、接着性改質層を形成した厚さ188μmの二軸配向PETフィルムを得た。
【0099】
次に、上記PETフィルムの接着性改質層上に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート70部、N−ビニルピロリドン30部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン4部を撹拌混合して得られた組成物を、バーコータを用いて硬化後の厚さが3μmとなるように均一に塗布した。これに、塗布面から9cmの高さにセットした80W/cmの照射強度を有する高圧水銀灯によって、紫外線を15秒間照射して硬化させ、ブラウン管保護用フィルム積層体とし、以下の各評価を行った。結果を表2に示す。
【0100】
[接着性1]
積層体の表面硬化層にJIS K5400の「8.5.2」(付着性・碁盤目法)に準じた試験を3回繰り返すことによって接着性を評価した。具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、表面硬化層と基材PETフィルムとの間にある接着性改質層を貫通して該基材PETフィルムに達する25個の升目状の切り傷をつけた。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン製405番:24mm幅)を升目状の切り傷に貼り付け、消しゴムでこすって完全に付着させた後、垂直に引き剥がした。さらに同一箇所にセロハン粘着テープを貼り付けて引き剥がす操作を繰返し、最初の操作も含めて3回行った。この操作後、目視により下式から接着性を求めた。
接着性(%)=(1−剥がれ面積/評価面積)×100
【0101】
[接着性2]
積層体を60℃、90RH%の雰囲気中に500時間静置した。その後取り出し、23℃、60RH%の雰囲気中に12時間以上放置した。これを、上記[接着性1]と同じ操作を行って評価した。
【0102】
[光学欠陥の測定]
下記の光学欠陥検出装置を用いて、100mm×100mmのフィルム積層体片10枚について、光学的に50μm以上の大きさと認識される欠陥を検出した。
【0103】
投光器として20W×2の蛍光灯をXYテーブル下方400mmに配置し、スリット幅10mmのマスクを設ける。投光器と受光器を結ぶ線上と、測定するフィルムの鉛直方向が成す角度を12°として光を入射すると、光学欠陥の存在箇所が光り輝く。その光量をXYテーブル上方500mmに配置したCCDイメージセンサカメラで電気信号に変換し、その電気信号を増幅し、微分してスレッシュホールレベルとコンパレータで比較して、光学欠陥の検出信号を出力した。また、CCDイメージセンサカメラから入力されたビデオ信号を自動解析して光学欠陥の大きさを計測し設定された大きさの欠陥の位置を表示した。
【0104】
[積層体中の粗大凝集物の大きさの測定]
上記の光学欠陥検出装置より検出した欠陥部分から、積層体中の粗大凝集物による光学欠陥を選び出した。この光学欠陥を含む部分を適当な大きさに切り取り、スケール付き顕微鏡によって積層体面に対して垂直方向から観察した際の大きさを測定し、20μm以上の最大径を有する異物の個数(個/m2)を求めた。
【0105】
実施例2
共重合ポリエステル樹脂として表1のA−2を使用した他は、実施例1と同様にして接着性改質層を形成した厚さ188μmの二軸配向PETフィルムを得た。さらにこれから、実施例1と同様にしてブラウン管保護用フィルム積層体を得、上記の各評価に供した。結果を表2に示す。
【0106】
比較例1
酸成分としてテレフタル酸:42モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸:8モル%、グリコール成分としてエチレングリコール:47モル%、ジエチレングリコール:3モル%、用いて得られるポリエステル系樹脂から、実施例1と同様にして水分散グラフト共重合樹脂を得た。この水分散体の25%水分散液を40部、水を24部およびイソプロピルアルコールを36部混合し、さらにアニオン性界面活性剤を1%、滑剤(日産化学工業社製、スノーテックスOL)を5%添加して水製塗布液を得た。これを用いて実施例1と同様にして接着性改質層を形成した厚さ188μmの二軸配向PETフィルムを得た。さらにこれから、実施例1と同様にしてフィルム積層体を得、上記の各評価に供した。結果を表2に示す。
【0107】
比較例2
平均粒径1.0μmのシリカを200μm含有し、且つ固有粘度が0.60dl/gのPETのペレットを基材フィルムの原料とし、溶融PETの異物除去用濾材として濾過可能な粒子サイズが20μm(初期濾過効率95%)のステンレススチール製焼結濾材を用いて精密濾過を行った他は、実施例1と同様にして厚さ188μmの二軸配向PETフィルムを得た。さらにこれから、実施例1と同様にしてフィルム積層体を得、上記の各評価に供した。結果を表2に示す。
【0108】
【表2】
Figure 0004419323
【0109】
また、実施例1、2および比較例1、2のフィルム積層体の表面硬化層を設けていない面を、粘・接着剤である「日本化薬株式会社製、AGR−100」を用いてブラウン管と貼り合わせた。これに1000mJ/cm2の紫外線を照射し、ブラウン管保護用フィルム積層体を貼り付けたブラウン管を得た。本発明の要件を満たす実施例1、2のフィルム積層体を貼り付けたブラウン管は、比較例1、2のフィルム積層体を貼り付けたブラウン管に比べ、画面の鮮明度が良好であった。
【0110】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、特定の結合を有する接着性改質層を設けると共に、基材フィルムや該接着性改質層において光学欠陥となり得る異形部や異物の数を制御することで、光学特性、耐スクラッチ性に優れると共に、表面硬化層の接着性に優れたブラウン管保護用フィルム積層体を提供することができた。

Claims (3)

  1. 基材フィルムである二軸配向ポリエステルフィルムの片面に接着性改質層を形成させ、該接着性改質層上に表面硬化層を形成させたブラウン管保護用フィルム積層体において、
    前記基材フィルム内には実質的に粒子が含まれておらず、
    且つ当該基材フィルムの表面に存在する、高さが1μm以上で最大径が20μm以上の凸部を形成する異物と、該凸部を起点として100μm以内に存在する深さ0.5μm以上の凹部とからなる異形部が5個/m2以下であり、
    さらに前記接着性改質層が、ポリエステル系樹脂に少なくとも1種の重合性不飽和単量体がグラフトされた自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を構成成分として含み、且つ、該重合性不飽和単量体成分として分子内に二重結合を有する酸無水物の少なくとも1種が含まれていることを特徴とするブラウン管保護用フィルム積層体。
  2. 前記接着性改質層を構成する自己架橋性ポリエステル系共重合体が、前記重合性不飽和単量体成分として少なくとも無水マレイン酸とスチレンあるいはその誘導体を含むものであり、且つ前記接着性改質層の表面および内部に存在する最大径が20μm以上の異物が3個/m2以下である請求項1に記載のブラウン管保護用フィルム積層体。
  3. 前記基材フィルムの厚みが100〜300μmである請求項1または2に記載のブラウン管保護用フィルム積層体。
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