JP4395577B2 - エネルギー線硬化性接着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエネルギー線硬化性接着剤組成物に関し、さらに詳しくは、密着性に優れ、高温高湿下の環境における接着信頼性が付与されたエネルギー線硬化性接着剤組成物、それを用いた接着方法および該接着方法により得られる接着物に関する。
【0002】
【従来の技術】
様々な分野において、成形材料として熱可塑性オレフィン系樹脂成形品の技術が進展し、耐熱、耐湿性に優れた熱可塑性成形品が開発され、他の材料からこの熱可塑性樹脂への置き換えが進行している。
しかし、極性基を有しない熱可塑性オレフィン系樹脂と他の被着体の接着において温度変化による線膨張係数の差および/または高湿条件下での接着性組成物の吸湿により接着面が剥離するという問題があり、短時間で硬化し、両者と高い密着性を有し高温高湿下での接着信頼性が高い接着剤は知られていない。
例えば、特開平7−138332号公報および特開平7―90228号公報にアクリル系の熱可塑性オレフィン系樹脂用接着剤が記載されているが、本発明者らが検討を行ったところ、これらの接着剤では充分な耐水性が得られないことがわかった。
また、エポキシ系の光硬化型接着剤組成物は一般的に耐熱性に富み、凝集力が高く、接着強度が大きいことが知られているが、その反応性が低いため、充分な接着強度を出すために光照射後に熱処理が必要であるという問題がある。例えば、特開平6−264043号公報に記載されるエポキシ系接着剤についても、光硬化だけでは完全硬化せず、後処理として熱硬化が必要である。
さらに、低分子量のエポキシ化合物の大半は変異原性試験が陽性で、有害性があり、安全性の面から配合が制限されていた。
一方、特開平11−140279では、分子中に1個以上のオキセタン環および1個以上のフェニル基を有する化合物を配合することにより硬化速度および密着性が向上することが記載されている。しかし、この組成物は鋼板に対しコーティング剤として使用できることしか記載されていない。オレフィン系樹脂への接着性に関して特開平11−140279に記載される組成物について検証を行ったが、オレフィン樹脂に対して高い接着性を示すものではなかった。
このため、本発明者らは、オレフィン系樹脂成形品に高い密着性を示す光硬化型の接着剤を開発した(特願2000−251779)。しかしながら、この接着剤は、せん断方向へは非常に高い接着力を示したが、剥離接着の強度が低いという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、オレフィン系樹脂成形品と被着体との接着において、引張せん断接着強度および剥離接着強度に優れるエネルギー線硬化性接着剤組成物を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の組成を有するエネルギー線硬化性組成物が、極性基を有しないオレフィン系樹脂成形品同士あるいは、その他の被着体との接着において、引張せん断強度にも優れ、且つ剥離に対しても高い接着強度を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、後記式(1)で表される炭素数6〜30の長鎖アルキル基を有するカチオン重合性化合物(A)、後記式(2)で表される1個のフェニル基と1個のオキセタニル基を有する化合物(B)、多官能オキセタン化合物および/または多官能エポキシ化合物(C)、ならびにカチオン重合開始剤(D)からなるエネルギー線硬化性接着剤組成物(以下、単にエネルギー線硬化性組成物ともいう)である。
【0005】
【発明の実施の形態】
炭素数が6〜30の長鎖アルキル基を有するカチオン重合性化合物(A)
本発明における長鎖アルキル基を有するカチオン重合性化合物(A化合物と称することもある)とは、炭素数が6〜30の分岐があっても良いアルキル基を有し、少なくとも1つのカチオン重合性基を有する化合物であり、後記式(1)で表される化合物である。この長鎖のアルキル基としては、上記の炭素数が6〜30の分岐があっても良いアルキル基であり、炭素数が6〜24の分岐があっても良いアルキル基が好ましいものである。
また、カチオン重合性基として、オキセタニル基を有する化合物であり、オキセタニル基を有する化合物は(「オキセタン化合物」ともいう)、反応性が良好であり、短時間で光硬化が達成されるため好ましく使用される。
【0006】
A化合物は、下記式(1)で表されるものである。
【0007】
【化3】
【0008】
式(1)中、R1は水素原子またはメチル基若しくはエチル基などの炭素数1〜6の分岐があっても良いアルキル基を示し、R2は炭素数6〜30の分岐があっても良いアルキル基を示す。
【0009】
前記式(1)において、R2としては炭素数が6〜24または炭素数6〜18の分岐があっても良いアルキル基が好ましく、2−エチルヘキシル基等の分岐アルキル基が他成分との相溶性の面で特に好ましい。
特に、R1がエチル基であり、R2が2−エチルヘキシル基であるオキセタン化合物は、優れた希釈剤、硬化促進剤、柔軟性付与剤および表面張力低下剤として本発明に好ましく使用される。
【0010】
本発明では、上記A化合物を複数併用することもできる。
【0011】
1個のフェニル基と1個のオキセタニル基を有する化合物(B)
本発明におけるエネルギー線硬化性組成物において、1個のフェニル基と1個のオキセタニル基を有する化合物(B)は(B化合物と称することもある)、剥離接着強度を向上させる目的で使用される。
B化合物は、下記式(2)で表わされる化合物である。
【0012】
【化4】
【0013】
式(2)中、R3は水素原子またはメチル基若しくはエチル基などの炭素数1〜6の分岐があっても良いアルキル基を示し、R4は、炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R5は、存在しないかまたは炭素数1〜6のアルキレン基を示し、Zは、酸素原子、2価の硫黄原子、メチレン基またはエステル基を示す。
【0014】
本発明のB化合物として好ましいものとして下記式(3)を挙げることができる。
【0015】
【化5】
【0016】
式(3)において、R3は水素原子またはメチル基若しくはエチル基などの炭素数1〜6の分岐があっても良いアルキル基である。
【0017】
本発明では、B化合物を複数併用することもできる。
【0018】
多官能オキセタン化合物および/または多官能エポキシ化合物(C)
本発明におけるエネルギー線硬化性組成物において、多官能オキセタン化合物および多官能エポキシ化合物(C)は(C化合物と称することもある)、組成物の硬化速度を向上させ、さらに硬化後の強度を制御する目的で使用される。
多官能オキセタン化合物(C−1)
C化合物における多官能オキセタン化合物(C−1)としては、下記式(3)で表される化合物またはビス(3−アルキル−3−オキセタニルメチル)エーテルが挙げられる。このビス(3−アルキル−3−オキセタニルメチル)エーテルのアルキルとは、メチル基またはエチル基などの炭素数1〜6の分岐があっても良いものであり、特にエチル基ではビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成(株)製:略号DOX)が例示される。
【0019】
【化6】
【0020】
式(4)中、R6は水素原子またはメチル基若しくはエチル基などの炭素数1〜6の分岐があっても良いアルキル基を示し、R7は炭素数1〜6のアルキレン基、鎖状若しくは分岐状ポリ(アルキレン)基、キシリレン基またはエステル結合から成る群から選ばれるm価基を示し、Zは酸素原子、2価の硫黄原子、メチレン基またはエステル基等を示し、mは2、3または4である。
【0021】
多官能エポキシ化合物(C−2)
C化合物における多官能エポキシ化合物(C−2)は、A化合物および後記オレフィンユニットの連鎖を有する高分子化合物(F)との相溶性があれば特に限定されない。例えば、ジシクロペンタジエンオキサイド、リモネンジオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアルコール、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン1,2−ジ(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、o−、m−、p−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル等が例示される。
【0022】
カチオン重合開始剤(D)
カチオン重合開始剤(D)としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルフォニウム塩、セレニウム塩、ピリジニウム塩、フェロセニウム塩、フォスフォニウム塩、チオピリジニウム塩が使用できるが、熱的に比較的安定である芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルフォニウム塩等のオニウム塩開始剤が好ましく使用される。オニウム塩開始剤を活性化するためには、赤外線照射も可能だが、照射により発生する熱の基材への影響を考慮した場合、紫外線または可視光を照射した方が好ましい。
【0023】
芳香族ヨードニウム塩および芳香族スルフォニウム塩等のオニウム塩開始剤を使用する場合、対アニオンとしては、BF4 -、AsF6 -、SbF6 -、PF6 -、B(C6F5)4 -などが挙げられる。特にB(C6F5)4 -をアニオンとしたヨードニウム塩は長鎖アルキル基を有するカチオン重合性化合物との相溶性も良く好適である。
【0024】
本発明のエネルギー線硬化性組成物において、長鎖アルキル基を有するカチオン重合性化合物(A)、フェニル基を有するオキセタン化合物(B)および多官能オキセタン化合物および/またはエポキシ化合物(C)の合計が100質量部としたときA化合物は5〜85質量部、B化合物は5〜40質量部、C化合物は10〜90質量部を含む。カチオン重合開始剤(D)は、このA化合物、B化合物およびC化合物を含むもの100質量部に対し0.1〜20質量部添加するものである。
【0025】
A化合物が5質量部より少ないと接着性組成物の相溶化が困難であり、85質量部特に90質量部を超えると硬化物の硬度が低下し、接着強度等が低下する。また、B化合物が5質量部より少ないと剥離強度向上の効果が不十分であり、40質量部をより多いときは組成物の相溶性が低下し白濁もしくは、分離する。C化合物が10質量部より少ないと硬化速度および硬化物の硬度が低下し、90質量部を超えると硬化物の硬度が高すぎるため、基材への密着性が低下する。
【0026】
本発明のエネルギー線硬化性組成物には、カチオン重合開始剤(D)の活性をさらに高めるため、ラジカル重合開始剤(E)を併用することが好ましい。
ラジカル重合開始剤(E)としては、ベンゾフェノン、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル類、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンジルジメチルケタール類、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン類、カンファーキノン等のα−ジカルボニル化合物等が挙げられ、中でもチオキサントン類が最もオニウム塩の活性を高め好適である。
ラジカル重合開始剤(E)は、エネルギー線硬化性組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部使用することが好ましい。
【0027】
さらに本発明のエネルギー線硬化性組成物にオレフィンユニットの連鎖を有する高分子化合物(F)を添加することにより、オレフィン系熱可塑性樹脂成形品に対する接着強度が増大することを見出した。オレフィンユニットの連鎖を有する高分子化合物は、分子中にエチレンユニット、ブチレンユニット、エチレン−ブチレンユニット等のポリオレフィンユニットの連鎖を少なくとも10以上有する高分子化合物であり、溶解性に優れることから、数平均分子量が1,000〜10,000の化合物を用いるのが好ましい。また、オキセタニル基およびエポキシ基と反応し得る構造たとえばエポキシ基などのカチオン反応性部位を有する高分子化合物を用いると更に好ましい。
【0028】
オレフィンユニットの連鎖を有する高分子化合物(F)としては、ポリオレフィン系オレフィンユニットの連鎖を有する高分子化合物が好ましく、エチレン・ブチレン、エチレン・ブチレン・スチレン、エチレン・ブチレン・イソプレン、エチレン・ブチレン・ブタジエン等のユニットを含有することが好ましく、またこれらのブロックコポリマーを水素添加あるいは酸化等で変性させエポキシ基、フェニル基などの官能基を導入した高分子化合物は相溶性が良くさらに好ましい。その添加量は本発明のエネルギー線硬化性組成物に相溶する限り添加でき、配合組成にもよるが、エネルギー線硬化性組成物100質量部に対し、1〜200質量部であることが好ましい。
【0029】
本発明のエネルギー線硬化組成物には、硬化前の組成物の粘度や相溶性等の調製、並びに硬化後の樹脂のガラス転移温度や屈折率等の制御を目的とし、カチオン重合性化合物を添加こともできる。カチオン重合性化合物は特に限定されないが、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などのカチオン重合性基を1分子中に1個以上含有しているものである。カチオン重合性化合物を本発明のエネルギー線硬化組成物100質量部に対し50質量部より多く添加すると系全体の相溶性が低下し組成物が分離したり、長鎖アルキル基を有するカチオン重合性化合物(A)およびフェニル基を含有するオキセタン化合物(B)の添加した効果が薄れる。このため、この添加量はエネルギー線硬化組成物100質量部に対し0.1〜50質量部添加することが好ましい。
【0030】
本発明のエネルギー線硬化組成物を用いてオレフィン系樹脂などとガラスや金属などとの接着を行うとき、これらとの密着性を向上させるために本発明のエネルギー線硬化組成物にシランカップリング剤を添加することもできる。この、シランカップリング剤とは無機材料や金属材料を樹脂組成物とを化学的に結合する性質を有するものである。このシランカップリング剤の併用により、無機材料や金属材料への密着性をさらに改良することができる。
シランカップリング剤としては、1分子中にエポキシ基及びトリメトキシシリル基あるいはトリエトキシシリル基を有するエポキシシラン類が好ましく用いられる。
ガラスや金属への接着を行うときのシランカップリング剤の好ましい使用範囲は、特に限定されないが、本発明のエネルギー線硬化性組成物100質量部に対して0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部が特に好ましい。
【0031】
さらに、本発明のエネルギー線硬化性組成物に充填剤を添加することで組成物の粘度または硬化時の体積収縮率を低減、さらに硬化した組成物の熱耐久性を改良することができる。充填剤としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等を挙げることができる。
【0032】
本発明のエネルギー線硬化性組成物は、オレフィン系樹脂成形品とレンズ・ミラー等の無機透明材料、成形性に優れたポリフェニレンスルフィド・エポキシ樹脂等の成形樹脂と透明なオレフィン系樹脂成形品との接着性に優れ、特にオレフィン系樹脂成形品と無機透明部材との接着おいて好ましく使用される。
【0033】
本発明におけるエネルギー線硬化性組成物を接着剤層に用いる場合、エネルギー線硬化性組成物を被着体の両方または片方に塗布し、直ちに塗布面を貼り合せ、動かない様に固定し、その後、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、メタルハロゲンランプ、太陽光等の光源により、エネルギー線を照射することにより、硬化が短時間でおこり、強い接着力が得られる。照射量はエネルギー線硬化性樹脂組成物の反応性にもよるが、照度が100mW/cm2で1〜60秒程度の短時間で硬化させることができる。
【0034】
本発明のエネルギー線硬化性組成物の成分である長鎖アルキル基を有するカチオン重合性化合物(A)はオレフィン表面に対する密着性を向上させ、フェニル基含有オキセタン化合物(B)は剥離強度を向上させ、多官能オキセタン化合物および/または多官能エポキシ化合物(C)は硬度の向上と共に硬化速度を向上させる。また、ラジカル重合開始剤(E)をカチオン重合開始剤(D)に共存させることで低照射エネルギー照射且つ速硬化を達成できる。さらに、オレフィンユニットの連鎖を有する高分子化合物(F)を添加することで、オレフィン表面に対する密着性がさらに向上し、エネルギー線硬化性組成物の粘度調整も可能となる。
【0035】
オレフィン系樹脂成形品同士またはガラスなどの無機材料との接着に本発明の樹脂組成物を使用すると、常態でも引張りせん断接着強度が1MPaを超え、さらには、剥離強度も向上する。
【0036】
エネルギー線硬化性組成物は透明な光学材料であるノルボルネン樹脂との強い密着性を示すことから、本発明におけるエネルギー線硬化性組成物は光ピックアップ部品のノルボルネン樹脂性レンズと基材との接着、ノルボルネン樹脂シートの貼り合せ、およびノルボルネン樹脂とプリズムとの接着等に好適である。
【0037】
【実施例】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明する。
実施例においては、以下を使用した。
・長鎖アルキル基を有するカチオン重合性化合物(A)として3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成(株)製:略号EHOX)
・フェニル基含有オキセタン化合物(B)として3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(東亞合成(株)製:略号POX)
・多官能オキセタン化合物(C−1)としてビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成(株)製:略号DOX)
・多官能エポキシ化合物(C−2)として3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボネート(ユニオンカーバイド社製:略号UVR−6110)
・カチオン重合開始剤(D)としてトリルクミルアイオドニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ローヌ・プーラン社製:略号2074)
・ラジカル重合開始剤(E)として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバ・スペシャリティーケィ・ミカルズ株式会社製:略号DC1173)
・オレフィンユニットの連鎖を有する高分子化合物(F)として油化シェル社製EKP−207(略号EKP−207)
・シランカップリング剤としてγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー株式会社製:略号A−187)
【0038】
実施例1〜3、比較例1〜3
下記表1に示す割合(重量)で各成分を混合して組成物を調製した。
【0039】
【表1】
【0040】
調製した組成物について、それらの外観および粘度(温度25℃、mPa・s)を測定した後、下記の条件で接着を行ない、剥離強度を測定した。
【0041】
1.試験に用いた被着体
ノルボルネン樹脂:25mm×50mm×3mmの日本ゼオン(株)製のゼオネックス480R(商品名)を使用した。
2.接着条件
接着面積:12.5mm×25mm
照射光源:メタルハロゲンランプ
硬化時の積算光量:2,000mJ/cm2(365nm)
上記の条件で被着材を接着した。
各組成物における接着処理後の膜厚は、平均100μmであった。
3.接着強度の測定
(1)光照射後、23℃×50%RH環境下で1時間静置した。
(2)剥離強度の測定
万力で片方のテストピースを押さえ、プッシュプルゲージにて他方の端を押し、剥離したときの負荷(N)を剥離強度とした。
(3)引張せん断強度の測定
引張せん断強度は、引張速度20mm/minで測定した。強度は、MPaで表示した。
(4)接着強度および引張せん断強度の測定おいて被着体が破損もしくは被着体にクラックが入った際には基材破壊(※で表示)とした。
測定結果は、下記表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
比較例1の組成物はフェニル基を有するオキセタン化合物(B)であるPOXを配合していない。比較例2の組成物はPOXを配合していないが、オレフィンユニットの連鎖を有する高分子化合物(F)であるEXP207を配合している。比較例3の組成物はPOXの代わりに強固な共有結合性の架橋構造を作り得るカチオン重合性シランカップリング剤A−187を添加した。
実施例1の組成物では比較例1のEHOXの量を減らしてPOXを添加した。実施例2の組成物では実施例1のEHOXの一部をEKP−207に変更した。実施例3の組成物では、実施例2よりもPOXを増量した。
【0044】
比較例1と実施例1の接着力を比較すると、EHOXの一部をPOXに代えることで、剥離強度の向上が見られた。
比較例2、3と実施例2の接着力の比較より、A−187を添加することでも、剥離強度が向上する傾向が見られたが、実施例3でPOXを添加することで基材破壊を示すほどにより剥離強度が向上し、その上、引張せん断接着強度も基材破壊するほど高い値を示した。また、A−187を添加した比較例2の組成物は室温保存2週間で、濁りが生じ、液安定性が悪かったが、実施例1〜3の組成物では3ヶ月保存していても白濁はなく安定であった。
実施例2と3の接着力の比較より、POXの添加量を増量することで、剥離強度の向上が確認できた。
POXの添加により剥離強度が向上する理由としては、POXのフェニル基とポリマー分子鎖間に働く、立体的および電子的な相互作用によるものと考えられる。
【0045】
【発明の効果】
本発明の光エネルギー線硬化性接着剤組成物は光硬化型接着剤としてオレフィン系樹脂の接着に用いると引張せん断接着強度だけではなく、剥離強度にも優れており、貼り合せだけではなくポッティングなどの接着方法においても高い接着性を示す。また、保存安定性についても優れている。
Claims (5)
- 下記式(1)で表される炭素数6〜30の長鎖アルキル基を有するカチオン重合性化合物(A)、下記式(2)で表される1個のフェニル基と1個のオキセタニル基を有する化合物(B)、多官能オキセタン化合物および/または多官能エポキシ化合物(C)、ならびにカチオン重合開始剤(D)からなるエネルギー線硬化性接着剤組成物。
6のアルキレン基を示し、Zは、酸素原子、2価の硫黄原子、メチレン基またはエステル基を示す。〕 - ラジカル重合開始剤(E)を含有することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー線硬化性接着剤組成物。
- オレフィンユニットの連鎖を有する高分子化合物(F)を含有することを特徴とする請求項2に記載のエネルギー線硬化性接着剤組成物。
- 請求項1〜3にそれぞれ記載のエネルギー線硬化性接着剤組成物を、被着体の両方または片方に塗布し、塗布面を貼り合せた後、エネルギー線を照射する接着方法。
- 請求項1〜3にそれぞれ記載のエネルギー線硬化性接着剤組成物を、被着体の両方または片方に塗布し、塗布面を貼り合せた後、エネルギー線を照射するにより製造された接着物。
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