JP4385591B2 - 樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

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    • B82NANOTECHNOLOGY
    • B82YSPECIFIC USES OR APPLICATIONS OF NANOSTRUCTURES; MEASUREMENT OR ANALYSIS OF NANOSTRUCTURES; MANUFACTURE OR TREATMENT OF NANOSTRUCTURES
    • B82Y30/00Nanotechnology for materials or surface science, e.g. nanocomposites

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラーレン類を含有する高強度かつ耐熱性に優れた硬化性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
1990年にC60の大量合成法が確立されて以来、フラーレン類(本発明においてフラーレン類とは、フラーレン及びフラーレン誘導体をいう。)に関する研究が一層精力的に展開されるとともに、フラーレン類の用途開発が望まれている。これら用途のうちでも、電気電子機器、自動車、建築資材、工業機械の部品など様々な製品へ応用される樹脂組成物への適用は、フラーレン類の用途として大きく期待される分野の一つである。
【0003】
上記樹脂組成物に用いる樹脂としては、様々なものが考えられるが、用途が多種多様である点から、硬化性樹脂(例えば熱で硬化を行う熱硬化性樹脂)を用いることが考えられる。硬化性樹脂を含有する樹脂組成物の具体的な用途としては、電気電子機器、通信機部品、自動車部品、日用雑貨などの各種成形材料、印刷回路用積層板などの積層品、家具、室内装飾用材料、食器、接着剤、塗料、化粧板などを挙げることができる。硬化性樹脂は多くの場合、主たる構成成分である樹脂(主剤)や硬化剤のほか、補強剤、着色剤、難燃剤など有機、無機化合物たる各種添加剤を添加して用いられるほか、紙、布、ガラス繊維、炭素繊維などに含浸し、複合材料としても用いられる。
【0004】
ここで、上述したような樹脂組成物の機械的特性や耐熱性を向上させることは、電気電子機器、自動車、建築資材、工業機械のいずれの用途でも望まれる。従って、上記硬化性樹脂及び上記フラーレン類を用いた樹脂組成物で前記機械的特性の向上が達成できれば、フラーレン類を用いた樹脂組成物の用途が大きく開けるようになる。
【0005】
しかしながら、本発明者が調査をした限りにおいては、フラーレン類を上記硬化性樹脂と共に用いることにより、樹脂組成物の機械的特性や耐熱性を向上させたという報告は今までにない。硬化性樹脂及びフラーレン類を用いる樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂であるポリイミド樹脂にC60を含有させることにより、低い誘電率が得られることが知られている程度である(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−98160号公報(実施例1、2、比較例1、2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、フラーレン類を上記硬化性樹脂と共に用いた樹脂組成物の耐熱性及び機械的特性を向上させるべく、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂を用い、鋭意検討を行った。
【0008】
しかしながら、熱硬化性樹脂にフラーレン類を添加して製造した樹脂組成物は、期待する機械的特性や耐熱性の改良を発揮することはなかった。
【0009】
また、熱硬化性樹脂を形成する前駆体(モノマー)にフラーレン類を添加し、これを加熱して前記前駆体を重合させて熱硬化性樹脂とフラーレン類とを含有する樹脂組成物も製造したが、このようにして得た樹脂組成物においても、期待する機械的特性や耐熱性の改良が得られることはなかった。
【0010】
以上のことから、硬化性樹脂を用いた樹脂組成物であって、良好な機械的特性および耐熱性を有する樹脂組成物の開発が望まれている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記実情の下、本発明者はさらに鋭意検討を行った結果、フラーレン類を添加しても機械的特性や耐熱性の向上が得られない樹脂組成物においては、硬化性樹脂中に存在するフラーレン類の平均粒径が大きく、フラーレン類の分散が不十分であることが判明した。
【0012】
上記知見に鑑み、本発明者は、硬化性樹脂中に分散するフラーレン類を特定の平均粒径の範囲に制御することにより、フラーレン類を含有する硬化性樹脂組成物の機械的特性や耐熱性が改良できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明は請求項1に記載するように、硬化性樹脂とフラーレン類とを含有する樹脂組成物であって、上記フラーレン類がC60及びC70を併用するものであり、上記フラーレン類の平均粒径が0.001μm以上30μm以下であり、上記硬化性樹脂がフェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、アルキド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、フラン系樹脂、ケトン系樹脂、キシレン系樹脂、及びトリアジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類以上の樹脂であることを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【0014】
本発明によれば、上記樹脂組成物内のフラーレン類の平均粒径が上記範囲内であることにより、機械的特性および耐熱性の優れた樹脂組成物とすることが可能となるのである。
また、上記フラーレン類がC60及びC70を併用するものであることにより、C60およびC70が相互作用し、分散安定性が向上したものとすることができるからである。
さらに、上記硬化性樹脂は、樹脂の硬化原理がラジカル重合ではないことから、フラーレン類により、樹脂の硬化反応が阻害されることがないからである。
【0017】
上記請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載するように、上記フラーレン類が、C60100重量部に対して、C70が5重量部以上100重量部以下の範囲内で併用されたものであることが好ましい。
また、前記硬化性樹脂がエポキシ系樹脂であって、かつこれと硬化剤とが組み合わされて用いられるものであることが好ましい。
【0018】
また、本発明は請求項4に記載するように、硬化性樹脂とフラーレン類とを含有する樹脂組成物の製造方法であって、上記硬化性樹脂を形成するための前駆体と上記フラーレン類とを含有する樹脂組成物原料を分散処理する分散処理工程と、上記前駆体を重合させる重合工程とを有し、上記硬化性樹脂がフェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、アルキド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、フラン系樹脂、ケトン系樹脂、キシレン系樹脂、及びトリアジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類以上の樹脂であることを特徴とする樹脂組成物の製造方法を提供する。本発明によれば、上記前駆体とフラーレン類とを混合し、分散させる分散処理工程を有することにより、フラーレン類の分散処理が容易となり、また得られる樹脂組成物中におけるフラーレン類の平均粒径の制御が容易となるからである。
また、上記硬化性樹脂は、樹脂の硬化原理がラジカル重合ではないことから、フラーレン類により、樹脂の硬化反応が阻害されることがないからである。
【0019】
さらに、本発明は請求項5に記載するように、硬化性樹脂を形成するための前駆体とフラーレン類とを含有し、上記硬化性樹脂がフェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、アルキド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、フラン系樹脂、ケトン系樹脂、キシレン系樹脂、及びトリアジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類以上の樹脂であり、上記フラーレン類がC60及びC70を併用するものである樹脂組成物原料であって、分散処理された分散処理樹脂組成物原料を提供する。本発明によれば、このような分散処理樹脂組成物原料を得ることにより、フラーレン類の平均粒径を良好に制御することができるのみならず、フラーレン類と上記前駆体ひいては上記前駆体を重合させて得られる硬化性樹脂との疑似架橋的な拘束及び結合を非常に強固にすることができる。
また、上記フラーレン類がC60及びC70を併用するものであることにより、C60およびC70が相互作用し、分散安定性が向上したものとすることができる。
さらに、上記硬化性樹脂は、樹脂の硬化原理がラジカル重合ではないことから、フラーレン類により、樹脂の硬化反応が阻害されることがないからである。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、フラーレン類および硬化性樹脂を含有する機械的特性および耐熱性の良好な樹脂組成物、およびその製造方法に関するものである。それぞれについて以下詳細に説明する。
【0021】
A.樹脂組成物
まず、本発明の樹脂組成物について説明する。本発明の樹脂組成物は、硬化性樹脂とフラーレン類とを含有する樹脂組成物であって、上記フラーレン類の平均粒径が0.001μm以上30μm以下であることを特徴とするものである。このような樹脂組成物は、機械特性および耐熱性が良好となる。本発明の硬化性樹脂について以下、詳細に説明する。
【0022】
1.硬化性樹脂
まず、本発明に用いられる硬化性樹脂について説明する。
【0023】
本発明における硬化性樹脂とは、加熱または放射線、触媒などのような手段によって硬化される際に実質的に不融性かつ不溶性に変化し得る特性を有する樹脂であって、具体的には、例えば、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、フラン系樹脂、ケトン系樹脂、キシレン系樹脂、熱硬化性ポリイミド、スチリルピリジン系樹脂、トリアジン系樹脂などが挙げられる。これらのうちの上記硬化性樹脂は複数を併用してもよい。
【0024】
本発明に用いられる硬化性樹脂は、上記の中でも、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、アルキド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、フラン系樹脂、ケトン系樹脂、キシレン系樹脂、トリアジン系樹脂が好ましく、特に好ましい例としては、エポキシ系樹脂が挙げられる。これは、これらの硬化性樹脂の硬化原理がラジカル重合ではないため、フラーレン類による硬化反応の阻害がないからである。すなわち、硬化性樹脂を形成する際に、モノマーがラジカル重合により硬化反応を起こす場合、フラーレン類を添加すると、フラーレン類のラジカルトラップ機能により上記ラジカル重合による硬化反応が阻害されるおそれがある。このため、フラーレン類と共に用いる硬化性樹脂は、ラジカル重合によって硬化する樹脂ではない上記樹脂のいずれかとすることが好ましいのである。
【0025】
本発明において用いられるフェノール系樹脂とは、フェノール等のフェノール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド類との反応によって得られる樹脂であり、湿式法(一段法)又は乾式法(二段法)によって製造される樹脂である。具体的には、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、tert-ブチルフェノールなどの低級アルキルフェノール;ノニルフェノール、カシュー油、リグニンなどの高級フェノール;レゾルシン、カテコールなどの2価フェノール;が挙げられ、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等が挙げられる。
【0026】
本発明においては、中でもアルデヒド類としてホルムアルデヒドを用いたフェノール系樹脂が好適に用いられる。これら樹脂は、用途が広範で、フラーレン類を含有する樹脂組成物の対象樹脂として有効である。
【0027】
本発明で用いられるユリア系樹脂とは、尿素とホルムアルデヒドとから誘導される樹脂が好適に用いられる。これら樹脂は、用途が広範で、フラーレン類を含有する樹脂組成物の対象樹脂として有効である。
【0028】
本発明で用いられるメラミン系樹脂とは、メラミンとホルムアルデヒドとから誘導される樹脂が好適に用いられる。これら樹脂は、用途が広範で、フラーレン類を含有する樹脂組成物の対象樹脂として有効である。
【0029】
また、本発明で用いられるベンゾグアナミン系樹脂とは、ベンゾグアナミンと、ホルムアルデヒドとから誘導される樹脂が好適に用いられる。これら樹脂は、用途が広範で、フラーレン類を含有する樹脂組成物の対象樹脂として有効である。
【0030】
本発明に用いられるアルキド系樹脂は、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応により得られる樹脂が好適に用いられる。これら樹脂は、用途が広範で、フラーレン類を含有する樹脂組成物の対象樹脂として有効である。
【0031】
本発明で用いられるエポキシ系樹脂としては、具体的に、ビスフェノールA、ビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールA、テトラフェニロールエタン、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、ポリプロピレングリコール、水素化ビスフェノールAなどのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ダイマー酸などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸、ヒダントインなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、p-アミノフェノール、p-オキシ安息香酸などのグリシジル混合型エポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0032】
本発明においては、中でもビスフェノールA、ビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールA、フェノールノボラック、及びo-クレゾールノボラックのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好適に用いられる。これら樹脂は、用途が広範で、フラーレン類を含有する樹脂組成物の対象樹脂として有効である。
【0033】
エポキシ樹脂は、通常、種々の硬化剤と組み合わせて使用される。硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、メンタンジアミン等の脂肪族ポリアミン;植物油脂肪酸/脂肪族ポリアミン/縮合物からなるアミドアミン;植物油脂肪酸(ダイマーまたはトリマー酸)/脂肪族ポリアミン縮合物からなるポリアミド;m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリト酸、ベンゾフェノン無水テトラカルボン酸、無水クロレンド酸、ドデシル無水コハク酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物;ルイス酸類(例えば、三フッ化ホウ酸−アミン錯体)、ルイス塩基類(例えば、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジド等の触媒性硬化剤;を挙げることができる。この他、硬化剤としては、ポリメルカプタン、ポリサルファイドも挙げることができる。
【0034】
上記硬化剤のうち、工業的入手の容易性から脂肪酸ポリアミン、芳香族ポリアミン、及び酸無水物を用いることが好ましく、脂肪族ポリアミンを用いることが特に好ましい。
【0035】
また、本発明で用いられるシリコーン系樹脂は、具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンなどの純シリコーン樹脂、純シリコーン樹脂をアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの変成用樹脂と反応させた変成シリコーンが好適に用いられる。これら樹脂は、用途が広範で、フラーレン類を含有する樹脂組成物の対象樹脂として有効である。
【0036】
本発明に用いられるウレタン系樹脂とは、イソシアネート化合物と活性水素化合物を主成分として構成される樹脂であり、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4'−メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が好適に用いられる。これら樹脂は、用途が広範で、フラーレン類を含有する樹脂組成物の対象樹脂として有効である。
【0037】
本発明に用いられるフラン系樹脂とは、フルフリルアルコールから得られる樹脂であって、フルフラール樹脂、フルフラールフェノール樹脂、フルフラールケトン樹脂、フルフリルアルコールフェノール樹脂等が好適に用いられる。これら樹脂は、用途が広範で、フラーレン類を含有する樹脂組成物の対象樹脂として有効である。
【0038】
本発明で用いられるケトン系樹脂はケトン類とアルデヒド類との縮合により製造される樹脂であり、ケトン類として例えばアセトン、エチルメチルケトンジエチルケトン、t−ブチルメチルケトンなどの脂肪族ケトン、アセトフェノン、2’−ブチロナフトン、プロピオフェノンなどの芳香族ケトンが好適に用いられる。またアルデヒド類としては例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクリルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられ、又ケトン樹脂の変性物であるケトン樹脂の水素添加によるカルボニル基の水酸基化物、あるいはジイソシアナートとの反応による樹脂等も好適に用いられる。これら樹脂は、用途が広範で、フラーレン類を含有する樹脂組成物の対象樹脂として有効である。
【0039】
本発明に用いられるキシレン系樹脂とは、キシレン又はメシチレンとホルマリンとを強酸触媒下で反応させて得られる樹脂であり、得られる樹脂は主としてキシレン核又はメシチレン核がメチレン、アセタールまたはエーテル結合で結ばれ、末端にキシレン核又はメシチレン核及び一部メチロール基やメトキシメチル基等を有する多分子性の構造をもつものが好適に用いられる。これら樹脂は、用途が広範で、フラーレン類を含有する樹脂組成物の対象樹脂として有効である。
【0040】
本発明のトリアジン系樹脂は、実質的に、トリアジン環が、その2,4,6の位置の少なくとも2つの位置においてカルボジイミド基(−N=C=N−)又はジヒドロカルボジイミド基(−NH−CH=N−)を介して結合した構造を有する重合物質であり、例えばトリアジン樹脂、ビスマレイミド・トリアジン(BT)樹脂等のトリアジン系樹脂が好適に用いられる。これら樹脂は、用途が広範で、フラーレン類を含有する樹脂組成物の対象樹脂として有効である。
【0041】
上記硬化性樹脂のうち、工業的に広く用いられる点から、エポキシ系樹脂を用いることが好ましい。
【0042】
また、硬化性樹脂は、常温(25℃)、常湿(50%RH)において通常固体であるが、硬化性樹脂を形成する前駆体(例えば、硬化性樹脂を形成するモノマー)は、液体又は固体であるのが通常である。
【0043】
2.フラーレン類
本発明に用いられるフラーレン類としては、フラーレン、フラーレン誘導体、ならびにフラーレンおよびフラーレン誘導体の混合物を挙げることができる。
【0044】
フラーレンとは球殻状の炭素分子であり、本発明の目的を満たす限り限定されないが、C60、C70、C74、C76、C78、C80、C82、C84、C86、C88、C90、C92、C94、C96、C98、C100等又はこれら化合物の2量体、3量体等を挙げることができる。
【0045】
本発明において、これらフラーレンの中でも好ましいのは、C60、C70、又はこれらの2量体、3量体である。C60、C70は工業的に得やすく、また樹脂に対する分散性にすぐれているので特に好ましい。また、これらフラーレンの複数を併用してもよく、このように複数を併用する場合は、C60およびC70を併用することが好ましい。この組み合わせで用いることにより、樹脂に対する均一分散性が高くなるからである。
【0046】
このように、C60およびC70を併用する場合、C60を100重量部とした場合におけるC70の下限は通常5重量部以上であり、特に7重量部以上、中でも10重量部以上とすることが好ましい。上記範囲内で用いることにより、C60とC70との相互作用が良好となり、分散安定性が向上するからである。
【0047】
一方、同様にC60を100とした場合におけるC70の上限は、通常100重量部以下、さらには90重量部以下であり、特に80重量部以下、中でも70重量部以下とすることが好ましい。C70の含有量を上記範囲内とすることにより、C60とC70との相互作用が不十分となり併用する意義が薄れる場合があるといった不都合を防止することができるからである。
【0048】
また、本発明に用いられるフラーレン誘導体とは、フラーレンを構成する少なくとも1つの炭素に有機化合物の一部分を形成する原子団や無機元素からなる原子団が結合した化合物をいう。フラーレン誘導体を得るために用いるフラーレンとしては、本発明の目的を満たす限り限定されず、上記具体的に示したフラーレンのいずれを用いてもよい。フラーレン誘導体としては、例えば、水素化フラーレン、酸化フラーレン、水酸化フラーレン、ハロゲン(F、Cl、Br、I)化フラーレン等を用いることができる。
【0049】
なお、本発明においては、これらフラーレン誘導体を複数種類を併用しても構わない。
【0050】
このようなフラーレンは、例えば、抵抗加熱法、レーザー加熱法、アーク放電法、燃焼法などにより得られたフラーレン含有スートから抽出分離することによって得られる。この際、必ずしも完全に分離する必要はなく、性能を損なわない範囲でフラーレンの含有率を調整することができる。また、フラーレン誘導体は、フラーレンに対して従来公知の方法を用いて合成することができる。例えば、求核剤との反応(求核付加反応)、環化付加反応、光付加(環化)反応、酸化反応等を利用して、所望のフラーレン誘導体を得ることができる。
【0051】
このようにして得られたフラーレン類は、常温(25℃)、常湿(50%RH)では、通常粉末状の性状を有し、その二次粒径は、通常10nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、通常1mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0052】
3.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、上記硬化性樹脂とフラーレン類とを有するものである。以下、これら硬化性樹脂と上記フラーレン類との混合割合、本発明の樹脂組成物にさらに添加することができる添加剤および充填剤等について、それぞれ説明する。
【0053】
(1)硬化性樹脂とフラーレン類との混合割合
まず、本発明の樹脂組成物中における上述した硬化性樹脂とフラーレン類との割合について説明する。
【0054】
本発明において、硬化性樹脂に対するフラーレン類の添加量の下限は、硬化性樹脂100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、特に好ましくは0.25重量部以上である。上記範囲とすれば、樹脂組成物の機械的特性及び耐熱性が改善できるようになるからである。一方、硬化性樹脂に対するフラーレン類の添加量の上限は、硬化性樹脂100重量部に対して通常、70重量部以下、好ましくは60重量部以下、より好ましくは50重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。上記範囲内とすれば、硬化性樹脂原料中に均一に分散させることが可能となり、フラーレン類の平均粒径を所定範囲に制御することも容易となるからであり、フラーレン類が過度に多い場合は、硬化して得られる樹脂組成物が脆くなる場合もあるからである。
【0055】
(2)樹脂組成物内におけるフラーレン類の平均粒径
本発明の樹脂組成物においては、含有されるフラーレン類の平均粒径が所定の範囲に制御されることが好ましい。本発明においては、上記フラーレン類の平均粒径を、30μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは、5μm以下とする。フラーレン類が硬化性樹脂中で均一に分散されるためには、平均粒径が小さい方が好ましいが、現実的には、下限値は0.001μmとなる。
【0056】
本発明においては、上述した範囲内で硬化性樹脂内に含有されるフラーレン類の平均粒径を、0.001μm以上30μm以下の範囲内としたところに特徴を有するものである。本発明においては、平均粒径を上述した範囲とすることにより、樹脂組成物の耐熱性を向上させることができるのである。
【0057】
フラーレン類は製造直後は粒子状の形態を有し、その粒度分布は数nmオーダーから数mmオーダーの範囲(10−9〜10−3mの範囲)と非常に広範にわたる。従ってこのようなフラーレンをそのまま用いると、樹脂組成物中でのフラーレン類の粒子径の分布が不均一となり、樹脂組成物の性能が安定しない。すなわち、粒径分布が広範なフラーレン類を樹脂組成物に含有させると、樹脂組成物中において小粒径のフラーレン類が多数分布する領域は、耐熱性や機械的強度が高くなる。一方で、樹脂組成物中において大粒径のフラーレン類が少数分布する領域は、耐熱性や機械的強度の改善が得られにくい。このため、一つの製造ロット内又は複数の製造ロット間において樹脂組成物の性能が安定せず、実使用可能な樹脂組成物を得ることができなくなる。
【0058】
ここで、樹脂組成物中に存在するフラーレン類のうち、樹脂組成物の性能を最も不安定にするのは、数十μmオーダー、より具体的には30μm程度よりも大きい粒径を有するフラーレン類である。このため、本発明においては、樹脂組成物中に存在するフラーレン類の粒径を30μm以下とする。
【0059】
そして、本発明の樹脂組成物は、硬化性樹脂中に、フラーレンを含有することにより、硬化性樹脂とフラーレン分子が、疑似架橋的に強い拘束力あるいは結合を有すると考えられ、さらにフラーレン類の粒径が、上記範囲内であることにより、上記擬似架橋的作用を有する点が多く形成されるため、機械的性質や耐熱性が向上すると考えられるのである。
【0060】
本発明における平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、樹脂組成物の断面を観察して樹脂組成物中に存在するフラーレン類の凝集粒子30個の粒径を測定してその平均を計算する方法により得た値を用いることとする。
【0061】
(3)添加剤および充填剤
本発明の樹脂組成物は、目的に応じて添加剤や充填剤等を含有していてもよい。
【0062】
用いられる添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤(耐熱安定剤)、ドリッピング防止剤、離型剤、充填剤等が挙げられ、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、他の添加剤、例えば、滑剤、可塑剤、難燃助剤、安定剤(紫外線吸収剤、耐候安定剤など)、着色剤(顔料、染料)、帯電防止剤、核剤、衝撃改良剤、摺動剤、分散剤、抗菌剤などを含有していてもよい。添加剤の効果を十分に発揮させるために、樹脂組成物全体の重量に対する添加剤の含有量は、通常10wt%以下、好ましくは5wt%以下、より好ましくは3wt%以下とする。一方、上記添加剤を用いる効果を確実に発揮させるために、上記添加剤は通常0.01wt%以上用いられる。
【0063】
また、用いられる充填剤としては、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、電気的性質の性能に優れた成形品を得るために、目的に応じて繊維状、粒子状、板状または中空状の充填剤等が挙げられる。繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維状物などの無機質繊維状物が挙げられる。特に代表的な繊維状充填剤はガラス繊維、またはカーボン繊維である。なお、ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質も使用することができる。粒子状充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、硅藻土、ウォラストナイトの如き硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他炭化硅素、窒化硅素、各種金属粉末等が挙げられる。粒子状充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔等が挙げられる。また、中空状充填剤としては、シラスバルーン、金属バルーン、ガラスバルーン等が挙げられる。これらの充填剤は、有機シラン、有機ボラン、有機チタネート等を使用して表面処理を施すことが好ましい。これらの充填剤は1種または2種以上併用することができる。繊維状充填剤、特にガラス繊維またはカーボン繊維と粒子状または板状充填剤は特に機械的強度と寸法精度、電気的性質等を兼備する上で好ましい組み合わせである。
【0064】
添加剤として充填剤等を用いる場合、充填剤等の効果を十分に発揮させるために、樹脂組成物全体の重量に対する充填剤等の含有量は、通常90wt%以下、好ましくは70wt%以下、より好ましくは60wt%以下とする。一方、上記添加剤を用いる効果を確実に発揮させるために、上記添加剤は通常0.1wt%以上用いられる。
【0065】
4.成型体
本発明の樹脂組成物は、プレス成形、押出成形、射出成形など公知の方法で成形体とすることができる。このような成形体は、フラーレン類が添加されていない樹脂組成物によるものと比較して、機械的性質や耐熱性にすぐれ、電気電子機器、自動車、建築資材、工業機械の部品など様々な製品に広く利用することができる。
【0066】
B.樹脂組成物の製造方法
次に、本発明は樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0067】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、硬化性樹脂とフラーレン類とを含有する樹脂組成物の製造方法であって、前記硬化性樹脂を形成するための前駆体と前記フラーレン類とを含有する樹脂組成物原料を分散処理する分散処理工程と、前記前駆体を重合させる重合工程とを有することを特徴とする方法である。
【0068】
上述の通り、本発明においては、樹脂組成物中に含有させるフラーレン類の粒径を0.001μm以上30μm以下の範囲に制御する必要がある。しかし、製造直後のフラーレン類の粒度分布は数nmオーダーから数mmオーダーの範囲(10−9〜10−3mの範囲)と非常に広範であるため、樹脂組成物に含有させる際に、フラーレン類の粒径を0.001μm以上30μm以下の範囲に制御する必要がある。
【0069】
樹脂組成物中においてフラーレン類の粒径を30μm以下にするためには、フラーレン類と硬化性樹脂を形成する前駆体とを混合する前に、フラーレン類を分級して粒径をあらかじめ整えておく方法を採用してもよい。しかし、このような分級作業は、樹脂組成物製造工程を増やすことによる製造コストの上昇を引き起こす。そして、このコスト上昇に見合う程の樹脂組成物の性能改良が得られるとは考えにくい。
【0070】
このため、本発明の製造方法においては、上記前駆体とフラーレン類とを混合しつつフラーレン類の分散処理を行うことにより、粒径の大きいフラーレン類を小粒径化してフラーレンの粒度分布を整えつつ上記前駆体中への分散を行う、分散処理工程を用いることとした。このようにフラーレン類を小粒径化しつつフラーレン類の分散処理を行うことにより、樹脂組成物の製造コスト上昇を有効に抑制することができるようになる。上記分散処理工程を用いる利点はもう一つある。上記分散処理工程においては、前記前駆体とフラーレン類とを接触させながらフラーレン類の分散処理を行うため、前記前駆体とフラーレン類と強く拘束されるようになる。このため、前駆体を重合させて硬化性樹脂を得た場合に、硬化性樹脂とフラーレンとの疑似架橋的な結合又は拘束力をより強固なものとして、樹脂組成物の耐熱性や機械的強度の改良効果をより大きくすることができる。
【0071】
尚、本発明においてフラーレン類の樹脂組成物中での分散がよいとは、多数のフラーレン類の粒子が硬化性樹脂中に均一に存在することをいう。
【0072】
本発明の製造方法をより具体的に以下に説明する。
【0073】
まず、硬化性樹脂を形成する前駆体(例えば硬化性樹脂を形成するモノマーを挙げることができ、これら前駆体は通常、常温常湿では液体の性状を有する。)中にフラーレン類を混合して樹脂組成物原料を得る。次に、フラーレン類の平均粒径を所定範囲に制御するために、この樹脂組成物原料を分散処理した後、必要に応じてさらなる前駆体を加えて分散処理樹脂組成物原料を得る。そして、この分散処理樹脂組成物原料に必要に応じてさらに他の前駆体を含有させた後、加熱、紫外線照射、触媒の添加等を行い、前記前駆体を重合させる重合工程を行い、樹脂組成物を得る。なお、上記方法においては、工業的に広く用いられているという点から、前記前駆体を重合させる重合工程において加熱を行うことが好ましい。
【0074】
本発明によれば、硬化性樹脂を形成する前駆体の時点でフラーレン類と混合して分散工程を行うことにより、フラーレン類の分散処理が容易となり、得られる樹脂組成物中におけるフラーレン類の平均粒径の制御が容易となる。
【0075】
上記前駆体が液体である場合は、前駆体及びフラーレン類を含有する原料の粘度調整等のためにさらに溶媒を用いてもよい。また、上記前駆体が固体である場合は、前駆体を加熱溶融してフラーレン類を添加しても良いし、上記前駆体及びフラーレン類に溶媒を添加してもよい。このような溶媒としては、特に制限はないが、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトンを挙げることができる。上記粘度調整の観点から、前駆体に対して用いる溶媒の量は、その下限が通常1wt%以上、好ましくは5wt%以上であり、一方、その上限は通常50wt%以下、好ましくは40wt%以下とする。
【0076】
また、フラーレン類を、硬化性樹脂を形成する前駆体に添加する際には、フラーレン類は固体状態で添加しても、液体に溶解または分散させて添加しても、少量の液体で湿潤させて添加してもよく、同時に他の添加剤と混合して添加してもよい。
【0077】
本発明においては、硬化性樹脂を形成するための前駆体中及びフラーレン類を含有する樹脂組成物原料に分散処理を行い、分散処理樹脂組成物原料を得る。
【0078】
分散処理樹脂組成物を得るために、分散処理を行う際に用いる装置としては、例えば、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、プラネタリーミキサー、ボールミル、サンドミル、ロール、二軸混練機等を挙げることができる。
【0079】
また、分散処理を行う時間は、用いる装置によって異なるものの、通常は、30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上である。分散処理の時間が過度に短いと、フラーレン類を硬化性樹脂を形成する前駆体中に十分に分散させることができなくなる場合がある。一方、分散処理を行う時間は、フラーレン類の分散が良好に行うためには長い方が好ましいが、生産効率を考慮すれば、通常は24時間以下、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下とする。
【0080】
また、分散処理を行う温度は、特に制限はされないが、10℃以上200℃以下の範囲で行えばよい。
【0081】
また、上記分散処理樹脂組成物原料を加熱、光照射、または触媒添加を行って上記前駆体を重合させる熱硬化工程における、硬化性樹脂を形成するための硬化条件は、用いる樹脂によって異なるものであり、硬化性樹脂ごとの従来公知の方法を用いればよい。
【0082】
本発明の具体的な方法としては、例えばエポキシ樹脂の場合、液状のエポキシ化合物にフラーレンを加えて、ホモジナイザー等を用いて混合してフラーレン類を十分に分散して分散処理樹脂組成物原料を得た後、液状のアミン化合物等の硬化剤を規定量加えて攪拌して、型に注ぎ、オーブン等で加熱して硬化物を得る方法が挙げられる。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0084】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
【0085】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、(A)エポキシ化合物、(B)アミン化合物、(C)フラーレン類、(D)リン系難燃剤は以下のものを用いた。尚、(A)及び(B)が硬化性樹脂を形成する際の前駆体となる。なお、実施例中で「部」とは「重量部」を意味する。
【0086】
(A)エポキシ化合物
ジャパンエポキシレジン社製(商品名:エピコート828、エポキシ当量=189)のエポキシ化合物を用いた。
【0087】
(B)アミン化合物
ジャパンエポキシレジン社製(商品名:エピキュア113、アミン価=98(KOHmg/g))のアミン化合物を用いた。
【0088】
(C)フラーレン類
フロンティアカーボン社製(商品名:ミックスフラーレン、C70/C60=37/100)のフラーレン類を用いた。以下実施例では、MFと表記する。
【0089】
(D)リン系難燃剤
アクゾノーベル社製のTPP(リン酸トリフェニル)のリン系難燃剤を用いた。以下、実施例ではTPPと表記する。TPPは、常温(25℃)では固体であるが、融点が49.5℃と低いため、加熱により容易に液体となる。
【0090】
(実施例1)
エピコート828を90重量部、MFを10重量部用意し、これにトルエンを20重量部加えた後、直径0.5mmのジルコニアビーズ 480重量部とともにペイントシェーカーで3時間分散混合(分散処理)を行った。尚、分散処理は、室温(25℃)で行った。
【0091】
次に、この混合液からビーズを分離し、得られた分散液に、エピキュア113を添加した。ここで、エピキュア113の添加量は、分散液中に存在するエピコート828に対して0.32倍(28.8重量部)になるように加えた。この分散液をよく攪拌した後、アルミカップ上に流し入れ、80℃で1時間、その後150℃で3時間、オーブン中で反応させ、エピコート828を重合させて、フラーレン類を硬化性樹脂(エポキシ樹脂)中に含有する樹脂組成物を製造した。樹脂組成物中のエポキシ樹脂100重量部に対するMFの含有量は8.4重量部となる。
【0092】
得られた樹脂組成物を約5mg秤量してTG−DTAによる耐熱性試験に供した。また、硬化物中の分散粒径をSEMで観察した。それらの測定条件は下記のとおりである。評価結果を表1に示す。
【0093】
<TG−DTA測定条件>
装置:セイコーインスツルメンツ社製TG−DTA320
試料量:約5mg
温度範囲:室温〜500℃
昇温速度:10℃/分
ガス流量:空気200mL/分
これにより得られた減量曲線から10wt%減量温度を読み取り、耐熱性の指標とした。
【0094】
<硬化物中の分散粒径の測定条件>
装置:日立株式会社製System S‐4100走査型電子顕微鏡(SEM)測定条件:加速電圧 3kV
蒸着 Pt−Pd 約4μm
測定:SEM観察により樹脂組成物の断面を観察し、樹脂組成物中に存在するフラーレン類の凝集粒子30個の粒径を測定してその平均を計算した。
【0095】
得られた硬化物中に分散するフラーレン類の平均粒径および耐熱性10wt%減量温度を表1に示す。
【0096】
(比較例1)
MFを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を製造した。
【0097】
得られた樹脂組成物を約5mg秤量してTG−DTAによる耐熱性試験に供した。得られた硬化物の10wt%減量温度を表1に示す。
【0098】
(実施例2)
エピコート828 90重量部、MF 10重量部にトルエン 20重量部を加え、卓上攪拌機で1000rpm、1時間分散混合を行った。尚、分散処理は室温(25℃)で行った。得られた分散液にエピキュア113を分散液中に存在するエピコート828に対して0.32倍(28.8重量部)になるように加え、よく攪拌した後、アルミカップ上に流し入れ、80℃で1時間、その後150℃で3時間、オーブン中で反応させ、エピコート828を重合させて、フラーレン類を硬化性樹脂(エポキシ樹脂)中に含有する樹脂組成物を製造した。樹脂組成物中のエポキシ樹脂100重量部に対するMFの含有量は、7.8重量部となる。得られた硬化物を約5mg秤量してTG−DTAによる耐熱性試験に供した。
【0099】
得られた硬化物中に分散するフラーレン類の平均粒径および耐熱性10wt%減量温度を表1に示す。
【0100】
(比較例2)
エピコート828、エピキュア113をそれぞれ90重量部、28.8重量部を混合して、よく攪拌した後、60℃で溶融させた液体状のTPPを13重量部加えて、更によく攪拌した後、アルミカップ上に流し入れ、80℃で1時間、その後150℃で3時間、オーブン中で反応させ、硬化物を得た。得られた硬化物を約5mg秤量してTG−DTAによる耐熱性試験に供した。得られた硬化物の10wt%減量温度を表1に示す。
【0101】
【表1】
Figure 0004385591
【0102】
表1より、硬化物中に分散するフラーレン類の平均粒径を10μm以下に抑えることにより、耐熱性に優れた硬化性樹脂組成物が得られることがわかる。比較例1の結果から、フラーレン類を添加しないと、耐熱性が不十分であり、比較例2の結果から、耐熱性を向上させるために難燃剤を用いると、フラーレン類を用いない場合よりも耐熱性が悪くなることが分かる。
【0103】
(実施例3)
実施例1において、MFを樹脂組成物のエポキシ樹脂100重量部に対して0.8重量部としたこと、及びアルミカップのかわりに規定のシリコン製の型を用いたこと、以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0104】
このようにして得た樹脂組成物を、100mm×18mm×4mm厚に精密切断機で切り出し、3点曲げ試験に供することにより、樹脂組成物の機械的特性を評価した。各試験の測定条件は下記のとおりである。評価結果を表2に示す。
【0105】
<3点曲げ試験測定条件>
装置:インテスコ社製 IM20
試験片サイズ:100mm長×8mm幅×4mm厚
サポートスパン:60mm
クロスヘッド速度:2mm/分
サポートスパン及びクロスヘッドノーズの曲率半径:3mm
得られた歪み−応力曲線から、曲げ強度(単位:MPa)を計算した。
【0106】
(実施例4)
実施例3において、MFを樹脂組成物のエポキシ樹脂100重量部に対して0.08重量部用いたこと以外は実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。
【0107】
このようにして得た樹脂組成物を、実施例3同様、3点曲げ試験に供することにより、樹脂組成物の機械的特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0108】
(比較例3)
比較例1と同様の材料を用い、実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。
【0109】
このようにして得た樹脂組成物を、実施例3同様、3点曲げ試験に供することにより、樹脂組成物の機械的特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0110】
【表2】
Figure 0004385591
【0111】
表2の結果から、MFを樹脂組成物中に少量含有させるだけで、曲げ強度が改良され、樹脂組成物の機械的特性が向上することがわかる。
【0112】
【発明の効果】
本発明によれば、フラーレン類を含有する高強度かつ耐熱性に優れた硬化性樹脂組成物を得ることができる。

Claims (5)

  1. 硬化性樹脂とフラーレン類とを含有する樹脂組成物であって、前記フラーレン類がC60及びC70を併用するものであり、前記フラーレン類の平均粒径が0.001μm以上30μm以下であり、
    前記硬化性樹脂がフェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、アルキド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、フラン系樹脂、ケトン系樹脂、キシレン系樹脂、及びトリアジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類以上の樹脂であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記フラーレン類が、C60100重量部に対して、C70が5重量部以上100重量部以下の範囲内で併用されたものであることを特徴
    とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記硬化性樹脂がエポキシ系樹脂であって、かつこれと硬化剤とが組み合わされて用いられるものである請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 硬化性樹脂とフラーレン類とを含有する樹脂組成物の製造方法であって、前記硬化性樹脂を形成するための前駆体と前記フラーレン類とを含有する樹脂組成物原料を分散処理する分散処理工程と、前記前駆体を重合させる重合工程とを有し、前記硬化性樹脂がフェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、アルキド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、フラン系樹脂、ケトン系樹脂、キシレン系樹脂、及びトリアジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類以上の樹脂であることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  5. 硬化性樹脂を形成するための前駆体とフラーレン類とを含有し、前記硬化性樹脂がフェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、アルキド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、フラン系樹脂、ケトン系樹脂、キシレン系樹脂、及びトリアジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類以上の樹脂であり、前記フラーレン類がC60及びC70を併用するものである樹脂組成物原料であって、分散処理された分散処理樹脂組成物原料。
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