JP4384862B2

JP4384862B2 - タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ

Info

Publication number: JP4384862B2
Application number: JP2003053608A
Authority: JP
Inventors: 鉄也國澤; 俊朗松尾
Original assignee: Sumitomo Rubber Industries Ltd
Current assignee: Sumitomo Rubber Industries Ltd
Priority date: 2003-02-28
Filing date: 2003-02-28
Publication date: 2009-12-16
Anticipated expiration: 2023-02-28
Also published as: JP2004263045A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用車向けタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【０００２】
【従来の技術】
タイヤの転がり抵抗を低減させるために、タイヤの軽量化が考えられる。従来のタイヤの軽量化方法としては、タイヤを構成するゴムの使用量を少なくする方法があげられるが、この方法ではタイヤの耐久性が低下してしまう。また、ゴムの使用量が少ないので、タイヤの剛性が低下し、操縦安定性も低下する傾向にある。また、ゴム配合における充填剤の量を減少させると、転がり抵抗を低減させることができるが、ゴムの補強性が低下してしまう。
【０００３】
従来、ゴム成分に、繊維の補強剤として熱可塑性エラストマー、オレフィン系樹脂を配合すると、ゴムの疲労性および低発熱性を両立すること（特許文献１および特許文献２参照）、ならびに、充填剤をあらかじめ混合したポリオレフィンをゴム組成物に配合すると、加工性および弾性率に優れること（特許文献３参照）が知られている。また、ゴム組成物に粒径が０．０１〜１μｍのポリオレフィンおよび結合剤を配合すると、低燃費性を維持しながらもゴム物性に優れたゴム組成物が得られること（特許文献４参照）、ならびに、ゴム、低結晶性または非結晶性で、融点が１００〜１４０℃のポリオレフィンを主成分とする樹脂強化エラストマーが、張強度、耐摩耗性および耐疲労性に優れること（特許文献５参照）が知られている。
【０００４】
しかし、これらの技術によると、ゴム組成物の混練りの温度が高く、ポリオレフィンの融点をこえ、配合されたポリオレフィンの分散が不充分であった。また、操縦安定性や軽量化の効果は見られなかった。
【０００５】
【特許文献１】
特開平７−３０９９７４号公報
【特許文献２】
特開平７−３０９９７５号公報
【特許文献３】
特開２００２−２１２３４２号公報
【特許文献４】
特開平１０−２６５６１６号公報
【特許文献５】
特開２００２−１２７０８号公報
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐久性を低下させることなく、タイヤを軽量化し、タイヤの転がり抵抗を低減させ、かつ操縦安定性を向上させることを目的とする。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、ジエン系ゴム１００重量部に対して、無機充填剤２０〜１２０重量部、ならびにポリプロピレン粉末５〜７０重量部を含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【０００８】
前記ポリプロピレン粉末の粒子径が５００μｍ以下であり、高結晶性のものであることが好ましい。
【０００９】
前記タイヤ用ゴム組成物の混練りにおける最高温度が１１０〜１６５℃であり、かつポリプロピレン粉末の融点以下であることが好ましい。
【００１０】
また、本発明は、前記タイヤ用ゴム組成物をベーストレッドに用いた空気入りタイヤに関する。
【００１１】
【発明の実施の形態】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム、無機充填剤、ポリプロピレン粉末を含む。
【００１２】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分としてスチレン−ブタジエンゴム（ＳＢＲ）、ブタジエンゴム（ＢＲ）、１，４付加イソプレンゴム（ＩＲ）、アクリロニトリル（ＮＢＲ）、天然ゴム（ＮＲ）などのジエン系ゴムを含む。
【００１３】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、無機充填剤として、カーボンブラックおよび／またはシリカを含む。前記カーボンブラックの種類としては、とくに制限はなく、たとえば、ＨＡＦ、ＩＳＡＦ、ＳＡＦなどがあげられる。また、前記シリカの種類としては、とくに制限はなく、たとえば、乾式法シリカ（無水ケイ酸）、湿式法シリカ（含水ケイ酸）などがあげられる。無機充填剤としてのカーボンブラックおよび／またはシリカの配合量は、ジエン系ゴム１００重量部に対して２０〜１２０重量部である。より好ましくは、３０〜１００重量部であり、さらに好ましくは３５〜８５重量部である。カーボンブラックおよび／またはシリカの配合量が２０重量部未満であると補強性が著しく低下し、１２０重量部をこえると転がり抵抗が悪化することになり好ましくない。
【００１４】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ポリプロピレン（以下、ＰＰという）粉末を含む。ＰＰ粉末は、重合後乾燥されたものでも、重合後乾燥されたものを凍結粉砕したものでもよく、製造方法は、特に限定されない。本発明で使用するＰＰ粉末は、粒径の細かいものをいう。ＰＰ粉末の粒径は、５００μｍ以下であることが好ましく、１〜３００μｍであることがより好ましく、１〜１００μｍであることがさらに好ましい。ＰＰ粉末の粒径が５００μｍをこえると、ＰＰ粉末はゴム中に分散せず異物として残り、耐久性を低下させるので好ましくない。ＰＰ粉末は、融点が高い点および硬度の観点から、高結晶性であることが好ましい。結晶化度が高いほど融点があがるので、結晶化度が高いほうが好ましい。
【００１５】
ＰＰ粉末の配合量は、ジエン系ゴム１００重量部に対して５〜７０重量部である。より好ましくは、１０〜６０重量部であり、さらに好ましくは１０〜５５重量部である。ＰＰ粉末の含有量が５重量部未満であると、軽量化や転がり抵抗の低減が達成されず、操縦安定性の向上が期待できない。また、７０重量部をこえると、ゴムの強度が低下し、コスト高となるので好ましくない。
【００１６】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、プロセスオイル（パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル）を配合することができる。プロセスオイルの配合量は、ジエン系ゴム１００重量部に対して、好ましくは１〜６０重量部、より好ましくは１〜３０重量部である。プロセスオイルの配合量が１重量部未満であると、加工性の面で悪化する傾向があり、６０重量部をこえると、ゴムの硬度が低下して、操縦安定性が悪化する傾向がある。
【００１７】
さらに、本発明のタイヤ用ゴム組成物には、前記シリカと併用してシランカップリング剤を配合することができる。また、ゴム成分、無機充填剤、ＰＰ粉末のほかに、通常ゴム組成物として使用される配合剤、たとえば、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、伸展油、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【００１８】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分、カーボンブラックおよび／またはシリカからなる無機充填剤、ＰＰ粉末および必要に応じてそのほかの配合剤を、通常の加工装置、たとえば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混練りすることにより得られる。
【００１９】
前記タイヤ用ゴム組成物の混練りにおける最高温度は、１１０〜１６５℃であり、かつポリプロピレン粉末の融点以下であることが好ましい。より好ましくは、１１０〜１６０℃であり、さらに好ましくは１１０〜１５５℃である。混練りにおける最高温度が１１０℃未満では混練りが不充分になることが多く、分散状態が悪化するので好ましくない。また、最高温度が１６５℃をこえると、ＰＰ粉末の融点が１６５℃付近であるために、ＰＰ粉末が溶けてしまい、層転換してゴムがまとまらず、シート加工性を低下させるので好ましくない。
【００２０】
本発明のタイヤは、前記タイヤ用ゴム組成物を、とくにタイヤのトレッドに用いて、通常の方法によって製造される。すなわち、前記タイヤ用ゴム組成物を未加硫の段階でタイヤのトレッド部の形状に押し出し加工し、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り合わせて未加硫タイヤを成形する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱・加圧してタイヤを得る。
【００２１】
本発明のタイヤ用ゴム組成物はタイヤを構成するゴム配合に適用することができるが、ベーストレッドに用いるのが最も好ましい。キャップトレッドに適用した場合、耐摩耗性を低下させる傾向にあるので好ましくない。
【００２２】
【実施例】
つぎに本発明のタイヤ用ゴム組成物を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【００２３】
実施例１〜３および比較例１〜６
硫黄、加硫促進剤を除く成分を、（株）神戸製鋼所製１．７Ｌバンバリーを用いて混練りした後、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤を加えて二軸ローラーにて練り込んだ。得られた混合物を１５０℃において３０分間加硫することでタイヤ用ゴム組成物を得た。実施例、比較例で用いた各成分を表１に示す。使用したＰＰ粉末は、粒子径７０μｍ、融点１６５℃の出光石油化学（株）製のＨ−７００であった。実施例および比較例では、ベーストレッドにＰＰ粉末またはＰＰ粉末を溶解させペレット状にしたＰＰを用いて作製したが、本発明はこれらのみに制限させるものではない。
【００２４】
【表１】

【００２５】
測定項目
硬度（ＪＩＳ−Ａ）
調製したタイヤ用ゴム組成物の硬度を、２５℃でＪＩＳ−Ａ硬度計で測定した。
【００２６】
粘弾性
（株）岩本製作所製のＶＥＳ−Ｆ−３を用いて、周波数１０Ｈｚ、初期歪み１０％、動歪み２％で６０℃におけるＥ＊（複素弾性率）とｔａｎδ（損失正接）を測定した。このＥ＊値が大きいほど剛性が高く、操縦安定性に優れる。またｔａｎδ値が小さいほど転がり抵抗が低減されている。
【００２７】
引張試験
ＪＩＳ−Ｋ６２５１に準じて３号ダンベルを用いて、調製したタイヤ用ゴム組成物の引張試験を実施し、破断強度（ＴＢ）、破断伸び（ＥＢ）を測定した。示された数値が大きいほどゴムの強度が良好である。
【００２８】
引裂試験
ＪＩＳ−Ｋ６２５２に準じて、調製したタイヤ用ゴム組成物の試験を行なった。示された数値が大きいほどゴムの強度が良好である。
【００２９】
操縦安定性
１９５／６０Ｒ１５サイズのタイヤを常法で作製し、これらのタイヤを装着した普通乗用車を使用して、テストコースにおいて官能試験を実施した。特にハンドル応答性について、比較例１を６点として相対評価した。点数が高いほど操縦安定性が良好である。
【００３０】
タイヤの軽量化
作製したタイヤの重量を無風状態下で、重量計にて測定した。ばらつきを考慮して、同一規格のタイヤでＮ＝３以上で測定し、その平均値をタイヤ重量とした。表２に記載の値は基準タイヤと比べた時の軽量化の程度を示している。
【００３１】
評価結果
【００３２】
【表２】

【００３３】
実施例１における破断強度（ＴＢ）、破断伸び（ＥＢ）、引裂試験の結果は、比較例１と比較するとほぼ同等であり、硬度およびＥ＊値が高くなり、操縦安定性を向上させた。また、タイヤの軽量化も達成された。ｔａｎδ値も低減されており、転がり抵抗の低減に有効であった。実施例３におけるゴム強度は、やや低下したものの、硬度およびＥ＊値は大幅に改善され、操縦安定性を大幅に改善させ、タイヤの軽量化も達成された。一方、比較例２では硬度およびＥ＊値が若干高くなったが、操縦安定性や軽量化という点では、高い効果がみられず、ｔａｎδ値もあまり低減されず、転がり抵抗の低減は達成されなかった。また、比較例３では、ゴム強度が著しく低下した。ペレット状のＰＰを配合した比較例４〜６では、破断強度が著しく低下していた。
【００３４】
一般に、ポリプロピレンの比重は１以下（０．９１）であり、一方、タイヤ用ゴム組成物の比重は１以上である。本発明のように、タイヤ用ゴム組成物に低比重のポリプロピレン粉末を配合することで、タイヤの軽量化が達成される。
【００３５】
【発明の効果】
本発明によれば、耐久性を低下させることなく、タイヤを軽量化し、タイヤの転がり抵抗を低減させ、かつ操縦安定性の改善が達成される。

Claims

ジエン系ゴム１００重量部に対して、無機充填剤２０〜１２０重量部およびポリプロピレン粉末３５〜７０重量部を含み、
混練りにおける最高温度が１１０〜１６５℃であり、かつポリプロピレン粉末の融点以下であるタイヤ用ゴム組成物をベーストレッドに用いた空気入りタイヤ。
前記ポリプロピレン粉末の粒子径が５００μｍ以下であり、高結晶性のものである請求項１記載の空気入りタイヤ。