JP4342814B2 - タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用車向けタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省エネルギーを目的として、タイヤの転がり抵抗を低減させるための種々の方法が取り上げられている。タイヤの転がり抵抗を低減させる方法としては、タイヤの軽量化が挙げられるが、タイヤを構成するゴムのトレッドの量を少なくし、タイヤの軽量化を図ると、耐摩耗性が悪化する。また、サイドウォール部の量を少なくすると、タイヤの横剛性が低下し、操縦安定性が悪化する。
【0003】
また、ゴムの比重を小さくするために、ゴム配合中に含まれる充填剤を低減すれば、タイヤの軽量化と転がり抵抗の低減ができるが、ゴムの補強性の低下をもたらし、耐摩耗性や耐カット性などの面で劣ることになる。
【0004】
これらを解決するために、ジエン系ゴムよりも硬く、充填剤よりも比重の軽いポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン粉末を、充填剤の代わりとしてゴム中に配合することが知られている。
【0005】
詳細には、ゴム成分に熱可塑性エラストマー、オレフィン系樹脂を配合すると、ゴムの疲労性および低発熱性を両立すること(特許文献1および特許文献2参照)、ならびに、充填剤をあらかじめ混合したポリオレフィンをゴム組成物に配合すると、加工性および弾性率に優れること(特許文献3参照)が知られている。また、ゴム組成物にポリオレフィンを配合すると、低燃費性を維持しながらもゴム物性に優れたゴム組成物が得られること(特許文献4参照)、ならびに、ゴムおよびポリオレフィンを主成分とする樹脂強化エラストマーが、張強度、耐摩耗性および耐疲労性に優れること(特許文献5参照)が知られている。しかし、これらのオレフィン系の粉末はジエン系のゴムとの接着が劣るので、容易に破壊の核となりやすいことが判っている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−309974号公報
【特許文献2】
特開平7−309975号公報
【特許文献3】
特開2002−212342号公報
【特許文献4】
特開平10−265616号公報
【特許文献5】
特開2002−12708号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物において、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン粉末を充填剤の代わりとして用いても、タイヤの耐摩耗性や耐カット性などの耐久性を低下させることなく、タイヤを軽量化し、タイヤの転がり抵抗を低減させ、かつ操縦安定性を向上させるタイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、ジエン系ゴム100重量部に対して、無機充填剤20〜120重量部およびポリオレフィン粉末5〜70重量部を含み、かつ前記ポリオレフィン粉末の重量に対して5〜15重量%のエチレンプロピレンゴムを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0009】
前記ポリオレフィン粉末の粒子径が500μm以下であることが好ましい。
【0010】
前記タイヤ用ゴム組成物の混練りにおける最高温度が165℃以下であることが好ましい。
【0011】
前記エチレンプロピレンゴムは、エチリデンノルボルネンが第三モノマーとして重合されたエチレンプロピレンゴムであることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記タイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム、無機充填剤、ポリオレフィン粉末、ならびにエチレンプロピレンゴムを含む。
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分としてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、1,4付加型イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル(NBR)、天然ゴム(NR)などのジエン系ゴムを含む。
【0015】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、無機充填剤として、カーボンブラックおよび/またはシリカを含む。前記カーボンブラックの種類としては、とくに制限はなく、たとえば、HAF、ISAF、SAFなどがあげられる。また、前記シリカの種類としては、とくに制限はなく、たとえば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などがあげられる。無機充填剤としてのカーボンブラックおよび/またはシリカの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対して20〜120重量部である。より好ましくは、30〜100重量部であり、さらに好ましくは35〜85重量部である。カーボンブラックおよび/またはシリカの配合量が20重量部未満であると補強性が著しく低下し、120重量部をこえると、転がり抵抗が悪化することになり、好ましくない。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ポリプロピレン(以下、PPという)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン粉末を含む。ここで、粉末とは、ペレット状ではなく、粒径の細かいものをいう。ポリオレフィン粉末の粒径は、500μm以下であることが好ましく、1〜300μmであることがより好ましく、1〜100μmであることがさらに好ましい。ポリオレフィン粉末の粒径が500μmをこえると、ポリオレフィン粉末はゴム中に分散せず異物として残り、ジエン系ゴムとの接着が劣るので破壊核となりやすく、耐久性を悪化させる。ポリオレフィン粉末の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対して5〜70重量部である。より好ましくは、10〜60重量部であり、さらに好ましくは10〜55重量部である。ポリオレフィン粉末の含有量が5重量部未満であると、軽量化や転がり抵抗の低減が達成されず、操縦安定性の向上が期待できない。また、70重量部をこえると、ゴムの強度が低下し、コスト高となるので好ましくない。
【0017】
前記ジエン系のゴムにPP粉末を混合する際、混練り時の温度は165℃以下であることが好ましく、120〜160℃であることが特に好ましい。165℃をこえる温度で混練すると、PP粉末が溶けてしまい、シート加工性が悪下する傾向がある。また、PEを用いる場合は140℃以下での混練りが好ましく、110〜135℃での混練が特に好ましい。140℃を越える温度で混練すると、PE粉末が溶けてしまい、シート加工性が悪下する傾向がある。
【0018】
さらに、上記のように練り温度に注意を払ってゴム練りしても、ジエン系のゴムとポリオレフィン粉末とのあいだでは接着性が悪く、とくに、ポリオレフィン粉末の配合量が多い場合には、オレフィン系の粉体がゴム自体の破壊の核となりやすく耐久性が劣るという現象がみられる。この破壊の核となって耐久性を落としてしまうという現象は、PEやPPなどのポリオレフィン粉末に親和性のあるエチレンプロピレンゴム(以下、EPDMという)を相溶化剤として少量混入することで解決できることを見出した。
【0019】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、相溶化剤として、EPDMを含む。前記EPDMとしては、エチリデンノルボルネンが第三モノマーとして重合されたエチレンプロピレンゴムが好ましい。
【0020】
EPDMの配合量は、ポリオレフィン粉末の重量に対して5〜15重量%であることが好ましく、5〜10重量%であることがより好ましい。配合量が5重量%未満であると、相溶化剤としての効果が小さくなる傾向があり、15重量%をこえるとゴム自体の耐久性が劣る。また、EPDMは、ゴム成分100重量部に対して、0.5〜10重量部配合されることが好ましく、0.5〜8重量部配合されることがさらに好ましい。配合量が、0.5重量部未満であると、相溶化剤としての効果が小さくなる傾向があり、10重量部をこえると、ゴム自体の耐久性が劣る傾向にがある。
【0021】
また、EPDMにおけるエチレンの共重合量は、50〜85mol%であることが好ましい。エチレンの共重合量が、50mol%未満であると、相溶化剤としての効果が小さくなる傾向があり、85mol%をこえると、ゴム自体の耐性が悪化する傾向がある。
【0022】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル)を配合することができる。プロセスオイルの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対して、好ましくは1〜60重量部、より好ましくは1〜30重量部である。プロセスオイルの配合量が、1重量部未満であると、加工性の面で悪化する傾向があり、60重量部をこえると、ゴムの硬度が低下して、操縦安定性が悪化する傾向がある。
【0023】
さらに、本発明のタイヤ用ゴム組成物には、前記シリカと併用してシランカップリング剤を配合することができる。また、ゴム成分、無機充填剤、ポリオレフィン粉末、EPDMのほかに、通常ゴム組成物として使用される配合剤、たとえば、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、伸展油、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0024】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分、カーボンブラックおよび/またはシリカからなる無機充填剤、ポリオレフィン粉末、EPDMおよび必要に応じてそのほかの配合剤を、通常の加工装置、たとえば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混練りすることにより得られる。
【0025】
本発明のタイヤは、前記タイヤ用ゴム組成物を用いて、通常の本発明によって製造される。すなわち、前記タイヤ用ゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの形状に押し出し加工し、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り合わせて未加硫のタイヤを成形する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱・加圧して本発明のタイヤを得る。
【0026】
【実施例】
つぎに本発明のタイヤ用ゴム組成物を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例1〜3および比較例1〜3
テスト内容
硫黄、加硫促進剤を除く成分を、(株)神戸製鋼所製1.7Lバンバリーを用いて混練りしたのち、オープンロール上で、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤を加えて練り込んだ。得られた混合物を、150℃において30分間加硫することでゴム組成物を得た。
【0028】
実施例、比較例で用いた各成分を表1に示す。使用したPP粉末は、粒子径70μmの出光石油化学(株)製のH−700であった。
【0029】
本テストについてはベーストレッドにPP粉末を使用して、ゴム組成物を作製したが、本発明はこれらのみに制限されるものではない。
【0030】
【表1】
【0031】
測定項目
(硬度(JIS−A))
調製したゴム組成物の硬度を、25℃でJIS−A硬度計で測定した。
【0032】
(粘弾性測定)
(株)岩本製作所製のVES−F−3を用いて、周波数10Hz、初期歪み10%、動歪み2%で60℃におけるE*(複素弾性率)とtanδ(損失正接)を測定した。このE*値が大きいほど剛性が高く、操縦安定性に優れる。またtanδ値が小さいほど転がり抵抗が低減されている。
【0033】
(引張試験)
JIS−K6251に準じて3号ダンベルを用いて、調製したタイヤ用ゴム組成物の引張試験を実施し、破断強度(TB)、破断伸び(EB)を測定した。示された数値が大きいほどゴムの強度が良好である。
【0034】
(引裂試験)
JIS−K6252に準じて、調製したタイヤ用ゴム組成物の試験を行なった。示された数値が大きいほどゴムの強度が良好である。
【0035】
(操縦安定性)
195/60R15のタイヤを常法で作製し、当該タイヤを装着した普通乗用車にてテストコースにおいて官能試験を実施した。とくにハンドル応答性について比較例1を6点として相対評価した。点数が高い方が操縦安定性が良好である。
【0036】
(タイヤの軽量化)
作製したタイヤを無風状態下で、重量計にて測定した。ばらつきを考慮して同一規格のタイヤでN=3以上で測定し、その平均値をタイヤ重量とした。表2記載の値は基準タイヤと比べた時の軽量化の程度を示している。
【0037】
評価結果
【0038】
【表2】
【0039】
実施例1における破断強度(TB)、破断伸び(EB)は、比較例1とほぼ同等であり、硬度およびE*値が高くなり、操縦安定性を向上させることができた。また、軽量化も達成された。実施例3におけるゴム強度は、やや低下したものの、硬度およびE*値が大幅に改善され、操縦安定性も改善され、さらに軽量化も達成された。
【0040】
一方、比較例2では硬度およびE*がやや高くなったが、操縦安定性や軽量化という点での効果が認められなかった。また、比較例3ではゴムの破壊時の引張強度や、引裂強度が基準と比較して、著しく低下した。
【0041】
一般にポリプロピレンは比重が1以下(0.91)であり、一方、タイヤ用ゴム組成物は比重が1以上である。本発明のように、タイヤ用ゴム組成物に低比重のポリプロピレン粉末を配合することで、タイヤの軽量化が達成される。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、耐久性を低下させることなく、タイヤを軽量化し、タイヤの転がり抵抗を低減させ、かつ操縦安定性の改善が達成される。
Claims (4)
- ジエン系ゴム100重量部に対して、無機充填剤20〜120重量部およびポリオレフィン粉末5〜70重量部を含み、かつ該ポリオレフィン粉末の重量に対して5〜15重量%のエチレンプロピレンゴムを含み、
前記エチレンプロピレンゴムが、エチリデンノルボルネンが第三モノマーとして重合されたエチレンプロピレンゴムである
タイヤ用ゴム組成物。 - 前記ポリオレフィン粉末の粒子径が500μm以下である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記タイヤ用ゴム組成物の混練りにおける最高温度が165℃以下である請求項1または2記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 請求項1、2または3記載のタイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
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