JP4380134B2 - 電子ビーム描画方法、光学素子用金型の製造方法、光学素子の製造方法及び電子ビーム描画装置 - Google Patents

電子ビーム描画方法、光学素子用金型の製造方法、光学素子の製造方法及び電子ビーム描画装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材に対して電子ビームを照射し、前記電子ビームを所定の描画時間内に所定のドーズ量にて走査することにより、前記基材の少なくとも一面にブレーズを所定ピッチ毎に形成するための電子ビーム描画方法、光学素子用金型の製造方法、光学素子の製造方法及び電子ビーム描画装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、情報記録媒体として、例えばCD及びDVD等が広く使用されている。そして、これらの記録媒体を読み取る読取装置などの精密機器には、多くの光学素子が利用されている。これらの機器に利用される光学素子、例えば光レンズ等は、低コスト化並びに小型化の観点から、ガラス製の光レンズよりも樹脂製の光レンズを用いることが多い。このような樹脂製の光レンズは、一般の射出成形によって製造されており、射出成形用の成形型も、一般的な切削加工によって形成されている。
【0003】
ところで、前記光レンズの内、例えばCD/DVD等の互換性を有する読取装置に用いられるものにあっては、その収差補正を行うために、表面にバイナリーパターンやブレーズ形状の回折格子構造が形成されている。
【0004】
特に、近年のDVD用ピックアップレンズのように、高密度の記録媒体を読み取る場合には、回折格子構造のパターンもさらに微細化する必要が生じ、そのため、前記バイナリーパターンやブレーズ形状の回折構造もサブミクロンオーダで微細化することが要求されるケースがあるため、このようなものを描画加工する装置として、電子ビームによる光露光の手法を用いた電子ビーム描画装置を利用することが提案されている。
【0005】
このような電子ビーム描画装置においては、光レンズの原型である基材の表面に対して電子ビームを照射し、これを所定の描画時間内に所定のドーズ量にて走査することで、前記バイナリーパターンやブレーズ形状の回折構造を描画している(例えば、特願2001−371007号明細書(段落〔0052〕−〔0074〕、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の電子ビーム描画装置においては、入射電子が基板中で大きく角度を変えて散乱し広い範囲に広がる現象、いわゆる後方散乱が生じ後方散乱電子が入射方向と逆方向に散乱し、レジスト層への再入射による吸収エネルギーにより所望の形状が得られないいわゆる近接効果が生じ、特にピッチの異なるブレーズを組み合わせて描画する場合に、単にブレーズのピッチの幅に応じて線形にドーズ分布の傾斜を変えるのみでは、後方散乱の及ぶ範囲以下のピッチ幅とそれ以上のピッチ幅とで、後方散乱による吸収エネルギーの分布が大きく変化するために、ブレーズの形状に差異が生じるという問題があった。
【0007】
また、電子ビーム描画装置のドーズ量の最小ドーズ分解能は、D/A変換器の最小時間分解能により決定されるため、このような電子ビーム描画装置におけるドーズ量の調整は、特に高い電流値にて時間をかけないように描画を行う場合には段階的となり、例えば、ブレーズ形状の回折構造等を描画する際には、なだらかなブレーズ傾斜面を形成しようとしても、前記最小ドーズ分解能の差により、描画/現像後に得られるブレーズ傾斜面の形状は、階段状になり、さらに後方散乱の影響により段の手前で抉りを生じていた。
【0008】
このような形状の不具合は、光レンズの光学特性の低下、特に回折効率の低下を招く要因となり、また、製品の品質を鑑みた場合には、製品価値を低下させる要因ともなるため、光レンズの回折効率を向上させると共に、製品価値も高めるためには、ブレーズ傾斜面は、可能な限りブレーズ形状を安定化させ、さらにブレーズ傾斜面をなだらかにする必要が生じた。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、後方散乱による近接効果の影響を考慮しブレーズのピッチに応じたドーズ量で描画することによりブレーズの形状の安定化が可能な電子ビーム描画方法、光学素子用金型の製造方法、光学素子の製造方法及び電子ビーム描画装置を提供することにある。
【0010】
また、D/A変換器の最小時間分解能により決定される電子ビーム描画装置の最小ドーズ分解能に起因する段差と後方散乱による段差手前の抉りを抑制することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、基材に対して電子ビームを照射し、前記電子ビームを所定のドーズ量にて走査することにより、前記基材の少なくとも一面に異なるピッチを含む複数のブレーズを形成し、このブレーズの少なくとも1ピッチに当該ブレーズの区切り位置から立ち上がる側壁部と、該側壁部の頂点から隣接する他のブレーズの側壁部の最下点とをつなぐ傾斜部とを形成するための電子ビーム描画方法であって、前記ブレーズのピッチが前記電子ビームの後方散乱による近接効果の影響が発生し始める境界ピッチより小さいときには第1のドーズ関数に基づいてドーズ量を求め、前記ブレーズのピッチが前記境界ピッチ以上のときには前記第1のドーズ関数と異なる第2のドーズ関数に基づいてドーズ量を求めるステップと、前記ピッチに応じて前記求められた各ドーズ量にて前記傾斜部を描画するステップと、を含むことを特徴としている。
【0013】
また、請求項記載の発明は、基材に対して電子ビームを照射し、前記電子ビームを所定のドーズ量にて走査することにより、前記基材の少なくとも一面に異なるピッチを含む複数のブレーズを形成し、このブレーズの少なくとも1ピッチに当該ブレーズの区切り位置から立ち上がる側壁部と、該側壁部の頂点から隣接する他のブレーズの側壁部の最下点とをつなぐ傾斜部とを形成するための電子ビーム描画方法であって、前記ブレーズのピッチが前記電子ビームの後方散乱による近接効果の影響が発生し始める境界ピッチより小さいときには第1のドーズ関数に基づいて第1のドーズ分布を求め、前記ブレーズのピッチが前記境界ピッチ以上のときには前記第1のドーズ関数と異なる第2のドーズ関数に基づいて第1のドーズ分布を求めるステップと、前記第1または第2のドーズ関数に基づき求めた前記第1のドーズ分布の前記側壁部からの距離に応じて段階的に変化するドーズ量における隣接する異なるドーズ量を第1のドーズ量第2のドーズ量とした際に、前記基材の前記第1のドーズ量にて描画される部分と前記第2のドーズ量にて描画される部分との間に、前記第1のドーズ量と前記第2のドーズ量とを混在させて描画する特定構造描画部分を設けるための第2のドーズ分布を求めるステップと、前記第1及び第2のドーズ分布に基づいた各ドーズ量にて前記傾斜部を描画するステップと、を含むことを特徴としている。
【0014】
また、請求項記載の発明は、前記第1のドーズ量と前記第2のドーズ量の差は、前記電子ビームを照射する電子銃を駆動するためのD/A変換器の最小クロックに基づく最小調整単位のドーズ量であることを特徴としている。
【0015】
また、請求項記載の発明は、前記特定構造描画部分は、前記第1のドーズ量にて描画される凸部と前記第2のドーズ量にて描画される凹部とが交互に連なる断面略凹凸形状の凹凸部として描画されることを特徴としている。
【0016】
また、請求項記載の発明は、前記凹凸部の描画は、前記第1のドーズ量にて描画する走査ラインと前記第2のドーズ量にて描画する走査ラインとを交互に連ねて描画することを特徴としている。
【0017】
また、請求項記載の発明は、前記走査ラインを交互に連ねる描画は、前記凹凸部の1ピッチに対する凹部のデューティー比が、前記傾斜部の高さが低くなる側に向かうに従い段階的に小さくなるように、前記第1のドーズ量にて描画する走査ラインと前記第2のドーズ量にて描画する走査ラインの数を調整して描画することを特徴としている。
【0018】
また、請求項記載の発明は、前記走査ラインを交互に連ねる描画は、前記凹凸部を構成する前記凸部のピッチが、前記傾斜部の高さが低くなる側に向かうに従い段階的に小さくなる形状となるように、前記第1のドーズ量にて描画する走査ラインと前記第2のドーズ量にて描画する走査ラインの数を調整して描画することを特徴としている。
【0019】
また、請求項記載の発明は、前記走査ラインの数の調整は、前記傾斜部の傾斜角度に応じて前記特定構造部分の前記凹凸部を構成する前記第1のドーズ量にて描画する走査ラインと前記第2のドーズ量にて描画する走査ラインの延べ数を調整することを特徴としている。
【0020】
また、請求項記載の発明は、前記凹凸部の描画は、走査ライン上で前記第1のドーズ量と前記第2のドーズ量とを周期的に繰り返して描画することを特徴としている。
【0021】
また、請求項10記載の発明は、前記周期的に繰り返す描画は、前記前記第1のドーズ量にて描画する位置が隣接する各走査ライン間で略一致するように描画することを特徴としている。
【0022】
また、請求項11記載の発明は、前記周期的に繰り返す描画は、前記前記第1のドーズ量にて描画する位置が隣接する各走査ライン間で異なるように描画することを特徴としている。
【0023】
また、請求項12記載の発明は、前記周期的に繰り返す描画は、前記前記第1のドーズ量にて描画する位置が隣接する各走査ライン間で千鳥状となるように描画することを特徴としている。
【0024】
また、請求項13記載の発明は、前記凹凸部を構成する前記凸部及び前記凹部の幅より小さい前記電子ビームのビーム径にて描画することを特徴としている。
請求項14記載の発明は、前記第1のドーズ関数は、前記ピッチであるpと前記側壁部からの距離であるΔx(0<Δx≦p)とによりX=Δx/pと表されるブレーズ位置Xを変数とするドーズ関数F(X)を含み、前記第2のドーズ関数は、前記ドーズ関数F(X)と前記ブレーズ位置Xを変数としさらにピッチpをパラメータとして求められる係数Pを変数とする補正関数G(X,P)とを含むことを特徴とする。
【0025】
また、請求項15記載の発明は、請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の電子ビーム描画方法を用いて光学素子用金型を製造する光学素子用金型の製造方法であって、前記電子ビームを照射した基材を現像し、現像された前記基材の表面で電鋳を行い、成型用の金型を形成するステップを含むことを特徴としている。
【0026】
また、請求項16記載の発明は、請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の電子ビーム描画方法を用いて光学素子用金型を製造する光学素子用金型の製造方法であって、前記電子ビームを照射した基材を現像し、エッチング処理した前記基材に電鋳を行い、成型用の金型を形成するステップを含むことを特徴としている。
【0027】
また、請求項17記載の発明は、請求項15または請求項16に記載の光学素子用の金型製造方法を用いて形成した金型を用いて光学素子を形成することを特徴としている。
【0028】
また、請求項18記載の発明は、基材に対して電子ビームを照射し、前記電子ビームを所定のドーズ量にて走査することにより描画する描画手段を有し、前記基材の少なくとも一面に異なるピッチを含む複数のブレーズを形成し、このブレーズの少なくとも1ピッチに当該ブレーズの区切り位置から立ち上がる側壁部と、該側壁部の頂点から隣接する他の回折格子の側壁部の最下点とをつなぐ傾斜部とを形成するための電子ビーム描画装置であって、前記ブレーズのピッチが前記電子ビームの後方散乱による近接効果の影響が発生し始める境界ピッチより小さいときには第1のドーズ関数に基づき求められたドーズ量と、前記ブレーズのピッチが前記境界ピッチ以上のときには第2のドーズ関数に基づいて求められたドーズ量とから構成される第1のドーズ分布に関する情報を格納した第1の格納手段と、前記第1の格納手段の前記第1のドーズ分布に基づいて、前記傾斜部の描画を行うように前記描画手段を制御する制御手段と、を含むことを特徴としている。
【0030】
また、請求項19記載の発明は、基材に対して電子ビームを照射し、前記電子ビームを所定のドーズ量にて走査することにより描画する描画手段を有し、前記基材の少なくとも一面に異なるピッチを含む複数のブレーズを形成し、このブレーズの少なくとも1ピッチに当該ブレーズの区切り位置から立ち上がる側壁部と、該側壁部の頂点から隣接する他の回折格子の側壁部の最下点とをつなぐ傾斜部とを形成するための電子ビーム描画装置であって、前記ブレーズのピッチが前記電子ビームの後方散乱による近接効果の影響が発生し始める境界ピッチより小さいときには第1のドーズ関数に基づき求められたドーズ量と、前記ブレーズのピッチが前記境界ピッチ以上のときには前記第1のドーズ関数と異なる第2のドーズ関数に基づいて求められたドーズ量とから構成される第1のドーズ分布に関する情報を格納した第1の格納手段と、前記第1の格納手段に格納された前記第1のドーズ分布前記側壁部からの距離に応じて段階的に変化するドーズ量における隣接する異なるドーズ量を第1のドーズ量第2のドーズ量とした際に、前記第1のドーズ量にて描画される部分と前記第2のドーズ量にて描画される部分との間に、前記第1のドーズ量にて描画される部分と前記第2のドーズ量にて描画される部分とが混在した特定構造描画部分としての凹凸部を描画するべく、前記凹凸部を描画するための前記第1のドーズ量及び前記第2のドーズ量から構成される第2のドーズ分布に関する情報を格納した第2の格納手段前記第1の格納手段の前記第1のドーズ分布及び前記第2の格納手段の前記第2のドーズ分布に基づいて、前記傾斜部の描画を行うように前記描画手段を制御する制御手段と、を含むことを特徴としている。
【0031】
また、請求項20記載の発明は、前記第1のドーズ分布を、前記特定構造部分としての前記凹凸部に対応した第2のドーズ分布に補正するための演算を行う演算手段をさらに有することを特徴としている。
【0032】
また、請求項21記載の発明は、前記第1のドーズ量と前記第2のドーズ量の差は、前記電子ビームを照射する電子銃を駆動するためのD/A変換器の最小クロックに基づく最小調整単位のドーズ量であることを特徴としている。
請求項22記載の発明は、前記第1のドーズ関数は、前記ピッチであるpと前記側壁部からの距離であるΔx(0<Δx≦p)とによりX=Δx/pと表されるブレーズ位置Xを変数とするドーズ関数F(X)を含み、前記第2のドーズ関数は、前記ドーズ関数F(X)と前記ブレーズ位置Xを変数としさらにピッチpをパラメータとして求められる係数Pを変数とする補正関数G(X,P)とを含むことを特徴とする。
【0033】
【発明の実施形態】
以下、本発明に係る電子ビーム描画方法、光学素子用金型の製造方法、光学素子の製造方法及び電子ビーム描画装置の一実施形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0034】
[第一の実施形態]
(基材の構成)
まず、電子ビームにより描画される基材の構成について、図1から図4を参照しつつ説明する。尚、本実施形態においては、曲面形状を成す基材の一面に円描画を行いつつ、ブレーズ形状を形成する場合を例に取り以下に説明を続けるが、本発明はこれに限らず、前記基材の一面は、例えば平面であっても良い。
【0035】
図1に、当該基材の一面に描画される描画パターン(円描画)並びにその細部の描画形状を示す。同図に示すように、基材2の一面には描画パターンの一例として円描画が施され、描画部分の一部であるE部分を拡大すれば、基材2には、複数のブレーズ3からなる回折格子構造が形成されている。ブレーズ3は、傾斜部3b及び側壁部3aを形成し、当該側壁部3bは、周方向に沿って平面状に複数段形成されている。より詳細には、図2に示すように、基材2は、少なくとも一面に形成された曲面部2aを有し、回折格子を傾けて各ブレーズのピッチp(図ではp1)毎に形成し、この回折格子の少なくとも1ピッチp1に、当該ピッチの区切り目位置にて前記曲面部2aより立ち上がる側壁部3aと、隣接する各側壁部3a、3a間に形成された傾斜部3bと、側壁部3aと傾斜部3bとの境界領域に形成された溝部3cとが形成される。
【0036】
傾斜部3bは、一端が一方の側壁部3aの基端に接し、他端が他方の側壁部3aの先端に接する傾斜面を構成している。尚、この複数のブレーズ3からなる回折格子構造は、後述するように、曲面部2a上に塗布された塗布剤(レジスト)を電子ビーム描画装置により描画することで形成され、ブレーズ3の傾斜部3bは、後述する電子ビーム描画装置の描画により、なだらかな傾斜面として形成されている。
【0037】
この傾斜部3bには、傾斜部3bの一部であるF部分を拡大したときに、図3(a)、(b)に示すように、傾斜部3bには、後述する電子ビーム描画装置の電子ビームを最小ドーズ分解能単位に段階的に変化されたドーズ量にて描画される傾斜部3baと、前記段階的に変化されたドーズ量の双方が混在するドーズ混在傾斜部3bbとが形成されていてもよい。また、図3(c)には、傾斜部3baのみで傾斜部3bを形成した例を示した。
【0038】
このドーズ混在傾斜部3bbは、複数の凹凸からなるバイナリーパターン形状(バイナリー構造)に描画されることが好ましく、各凹凸部間の距離は同図(a)に示すように、一定、若しくは、同図(b)に示すように、傾斜部3bの高さが低くなる方向に行くに従い、その距離が広くなるように構成されることが好ましい。但し、この際に重要となるのは、凹凸部を構成する各凹部及び凸部の幅が、各々、当該凹凸部を描画する電子ビームの近接効果(後方散乱による近接効果とは異なる)で予測される広がりよりも小さく、より好ましくは、当該凹凸部を描画する電子ビームの径よりも小さくなるように構成されることある。尚、このことの詳細については、後述する電子ビーム描画装置の(基材の形状について)ところで説明する。
【0039】
説明に戻って、例えば、図3(b)に示すように、傾斜部3bの高さが低くなる方向に行くに従い、その距離が広くなるように構成される場合には、より具体的には、図4に示すように、ドーズ混在傾斜部3bbは、複数、例えば3つ(実際には、傾斜面の傾斜角度に応じた適切な個数)の凸部BI1、BI2、BI3により構成され、凸部BI1は、高さd1で長さT1、凸部BI2は、高さd1で長さT2、凸部BI3は、高さd1で長さT3にて構成される。
【0040】
この凸部BI1、BI2、BI3の上面は、本発明における「第1のドーズ量」にて描画される部分であり、各凸部BI1、BI2、BI3間の凹部の底面は、本発明における「第2のドーズ量」にて描画される部分である。尚、此処にいう第1のドーズ量と第2のドーズ量との差は、後述する電子ビーム描画装置のD/A変換器の最小クロックに基づき調整可能なドーズ最小単位となっている。
【0041】
ここで、凹凸部のピッチをU1=U2=U3、各凸部BI1、BI2、BI3間の距離をV1、V2、V3とし、U1=T1+V1、U2=T2+V2、U3=T3+V3とすると、例えば、この時、T1>T2>T3、V1<V2<V3とすることで、デューティー比を、(T1/V1)>(T2/V2)>(T3/V3)と傾斜部3bの高さが低くなる側に行くにつれ小さくすることができ、第1のドーズ量にて描画される部分である凸部BI1、BI2、BI3の長さT1、T2、T3を第2のドーズ量にて描画される部分側に行くにつれ段階的に減らす構成とすることができる。尚、このことの詳細については、後述する電子ビーム描画装置の(基材の形状について)ところで説明する。
【0042】
尚、前述のように、ドーズ混在傾斜部3bbの各凹凸部間の距離を一定とする場合には、デューティー比は、(T1/V1)=(T2/V2)=(T3/V3)とする。また、ドーズ混在傾斜部3bbに設ける凹凸の個数は、ブレーズの大きさや傾斜角度に応じて可変するようにしても良い。従って、例えば、曲面部2aの中心領域のブレーズでは凹凸の個数は少なく、周辺部側のブレーズになるにつれ凹凸の個数は多くするように構成しても良い。但し、何れの場合であってもこのドーズ混在傾斜部3bbの凹凸が形成される範囲(U1+U2+U3)は、ブレーズの傾斜角度(より詳しくは、そのブレーズを描画する際のドーズ量の変位量)に応じて決定されることとなる。尚、この詳細については、後述する電子ビーム描画装置の(処理手順について)のところで説明する。
【0043】
尚、円描画は、複数の直線部によって近似して描画する構成としても良く、また、基材2としては、光学素子、例えばピックアップレンズ等にて構成することが好ましい。このように円描画を複数の直線部によって近似して描画することの詳細については、後述する電子ビーム描画装置の(制御系の具体的構成)のところで説明する。
【0044】
次に、このような基材2を形成するために用いられる電子ビーム描画装置の具体的構成について説明する。
【0045】
(電子ビーム描画装置の構成)
図5に、本実施形態における電子ビーム描画装置の全体構成を示す説明図を示す。同図に示すように、当該電子ビーム描画装置1は、基材2を走査するための大電流で高解像度の電子線プローブを形成して、これを高速に描画対象の基材2上で走査するものであり、高解像度の電子線プローブを形成する電子ビームを生成してターゲットに対してビーム照射を行う電子ビーム生成手段である電子銃12と、この電子銃12からの電子ビームを通過させるスリット14と、スリット14を通過する電子ビームの前記基材2に対する焦点位置を制御するための電子レンズ16と、電子ビームが出射される経路上に配設されたアパーチャー18と、電子ビームを偏向させることでターゲットである基材2上の走査位置等を制御する偏向器20と、偏向を補正する補正用コイル22とを含み構成されている。尚、これらの各部は、鏡筒10内に配設されて電子ビーム出射時には真空状態に維持される。
【0046】
さらに、電子ビーム描画装置1は、描画対象となる基材2を載置するための載置台であるXYZステージ30と、このXYZステージ30上の載置位置に基材2を搬送するための搬送手段であるローダ40と、XYZステージ30上の基材2の表面の基準点を測定するための測定手段である測定装置80と、XYZステージ30を駆動するための駆動手段であるステージ駆動手段50と、ローダを駆動するためのローダ駆動装置60と、鏡筒10内及びXYZステージ30を含む筐体11内を真空となるように排気を行う真空排気装置70と、これらの制御を司る制御手段である制御回路100とを含み構成されている。
【0047】
尚、電子レンズ16は、高さ方向に沿って複数箇所に離間して設置される各コイル17a、17b、17cの各々の電流値によって電子的なレンズが複数生成されることで各々制御され、電子ビームの焦点位置が制御される。
【0048】
測定装置80は、基材2に対してレーザーを照射することで基材2を測定する第1のレーザー測長器82と、第1のレーザー測長器82にて発光されたレーザー光(第1の照射光)が基材2を反射し当該反射光を受光する第1の受光部84と、前記第1のレーザー測長器82とは異なる照射角度から照射を行う第2のレーザー測長器86と、前記第2のレーザー測長器86にて発光されたレーザー光(第2の照射光)が基材2を反射し当該反射光を受光する第2の受光部88と、を含み構成されている。尚、本例の第1のレーザー測長器と第1の受光部とで「第1の光学系」を構成し、第2のレーザー測長器と第2の受光部とで「第2の光学系」を構成している。
【0049】
ステージ駆動手段50は、XYZステージ30をX方向に駆動するX方向駆動機構52と、XYZステージ30をY方向に駆動するY方向駆動機構54と、XYZステージ30をZ方向に駆動するZ方向駆動機構56と、XYZステージ30をθ方向に駆動するθ方向駆動機構58とを含み構成されている。尚、この他、Y軸を中心とするα方向に回転駆動可能なα方向駆動機構、X軸を中心とするβ方向に回転駆動可能なβ方向駆動機構を設けて、ステージをピッチング、ヨーイング、ローリング可能に構成してもよい。これにより、XYZステージ30を3次元的に動作させたり、アライメントを行うことが可能になる。
【0050】
制御回路100は、電子銃12に電源を供給するための電子銃電源部102と、この電子銃電源部102での電流、電圧などを調整制御する電子銃制御部104と、電子レンズ16(複数の各電子的なレンズ)を動作させるためのレンズ電源部106と、このレンズ電源部106での各電子レンズに対応する各電流を調整制御するレンズ制御部108とを含み構成される。
【0051】
さらに、制御回路100は、補正用コイル22を制御するためのコイル制御部110と、偏向器20にて成形方向の偏向を行う成形偏向部112aと、偏向器20にて副走査方向の偏向を行うための副偏向部112bと、偏向器20にて主走査方向の偏向を行うための主偏向部112cと、成形偏向部112aを制御するためにデジタル信号をアナログ信号に変換制御する高速D/A変換器114aと、副偏向部112bを制御するためにデジタル信号をアナログ信号に変換制御する高速D/A変換器114bと、主偏向部112cを制御するためにデジタル信号をアナログ信号に変換制御する高精度D/A変換器114cとを含み構成される。
【0052】
さらに、制御回路100は、偏向器20における位置誤差を補正する、即ち、位置誤差補正信号などを各高速D/A変換器114a、114b、及び高精度D/A変換器114cに対して供給して位置誤差補正を促す、或いは、コイル制御部110に対して当該信号を供給することで補正用コイル22にて位置誤差補正を行う位置誤差補正回路116と、これら位置誤差補正回路116並びに各高速D/A変換器114a、114b及び高精度D/A変換器114cを制御して電子ビームの電界を制御する電界制御手段である電界制御回路118と、描画パターンなどを前記基材2に対して生成するためのパターン発生回路120とを含み構成される。
【0053】
さらに、制御回路100は、第1のレーザー測長器82を上下左右に移動させることによるレーザー照射位置の移動及びレーザー照射角の角度等の駆動制御を行う第1のレーザー駆動制御回路130と、第2のレーザー測長器86を上下左右に移動させることによるレーザー照射位置の移動及びレーザー照射角の角度等の駆動制御を行う第2のレ−ザー駆動制御回路132と、第1のレーザー測長器82でのレーザー照射光の出力(レーザーの光強度)を調整制御するための第1のレーザー出力制御回路134と、第2のレーザー測長器86でのレーザー照射光の出力を調整制御するための第2のレーザー出力制御回路136と、第1の受光部84での受光結果に基づき、測定結果を算出するための第1の測定算出部140と、第2の受光部88での受光結果に基づき、測定結果を算出するための第2の測定算出部142とを含み構成される。
【0054】
さらに、制御回路100は、ステージ駆動手段50を制御するためのステージ制御回路150と、ローダ駆動装置60を制御するローダ制御回路152と、上述の第1、第2のレーザー駆動回路130、132・第1、第2のレーザー出力制御回路134、136・第1、第2の測定算出部140、142・ステージ制御回路150・ローダ制御回路152を制御する機構制御回路154と、真空排気装置70の真空排気を制御する真空排気制御回路156と、測定情報を入力するための測定情報入力部158と、入力された情報や他の複数の情報を記憶するための記憶手段であるメモリ160と、各種制御を行うための制御プログラムを記憶したプログラムメモリ162と、後述する制御系300(詳細は後述する)と、これらの各部の制御を司る、例えばCPUなどにて形成された制御部170とを含み構成されている。
【0055】
また、本実施形態の電子ビーム描画装置1では、測定情報入力部158などを含む、所謂「操作系」乃至は「操作手段」においては、アナログスキャン方式/デジタルスキャン方式の選択、基本的な形状の描画パターンの複数からの選択等、各種コマンド操作が可能となっている。
【0056】
上述のような構成を有する電子ビーム描画装置1において、ローダ40によって搬送された基材2がXYZステージ30上に載置されると、真空排気装置70によって鏡筒10及び筐体11内の空気やダストなどを排気した後、電子銃12から電子ビームが照射される。
【0057】
電子銃12から照射された電子ビームは、電子レンズ16を介して偏向器20により偏向され、偏向された電子ビームB(以下、この電子レンズ16を通過後の偏向制御された電子ビームに関してのみ「電子ビームB」と符号を付与することがある)は、XYZステージ30上の基材2の表面、例えば曲面部(曲面)2a上の描画位置に対して照射されることで描画が行われる。
【0058】
この際に、測定装置80によって、基材2上の描画位置(描画位置のうち少なくとも高さ位置)、若しくは後述するような基準点の位置が測定され、制御回路100は、当該測定結果に基づき、電子レンズ16のコイル17a、17b、17cなどに流れる各電流値などを調整制御して、電子ビームBの焦点深度の位置、即ち焦点位置を制御し、当該焦点位置が前記描画位置となるように移動制御される。
【0059】
或いは、測定結果に基づき、制御回路100は、ステージ駆動手段50を制御することにより、前記電子ビームBの焦点位置が前記描画位置となるようにXYZステージ30を移動させる。
【0060】
また、本例においては、電子ビームの制御、XYZステージ30の制御の何れか一方の制御によって行っても、双方を利用して行ってもよい。
(測定装置)
次に、測定装置80について、図6を参照しつつ説明する。測定装置80は、より詳細には、図6に示すように、第1のレーザー測長器82、第1の受光部84、第2のレーザー測長器86、第2の受光部88などを有する。
【0061】
基材2の位置をZ方向に変化させつつ、第1のレーザー測長器82により電子ビームと交差する方向から基材2に対して第1の光ビームS1を照射し、基材2を透過する第1の光ビームS1の受光によって、第1の光強度分布が検出される。
【0062】
この際に、図6に示すように、第1の光ビームS1は、基材2の平坦部2bにて反射されるため、第1の強度分布に基づき、基材2の平坦部2b上の(高さ)位置が測定算出されることになる。しかし、この場合には、基材2の曲面部2a上の(高さ)位置を測定することができない。
【0063】
そこで、本例においては、さらに第2のレーザー測長器86を設けている。即ち、基材2の位置をZ方向に変化させつつ、第2のレーザー測長器86によって、第1の光ビームS1と異なる電子ビームとほぼ直交する方向から基材2に対して第2の光ビームS2を照射し、基材2を透過する第2の光ビームS2が第2の受光部88に含まれるピンホール84を介して受光されることによって、第2の光強度分布が検出される。
【0064】
この場合、図7(A)〜(C)に示すように、第2の光ビームS2が曲面部2a上を透過することとなるので、前記第2の強度分布に基づき、基材2の平坦部2bより突出する曲面部2a上の(高さ)位置を測定算出することができる。
【0065】
具体的には、第2の光ビームS2がXY基準座標系における曲面部2a上のある位置(x、y)の特定の高さを透過すると、この位置(x、y)において、図7(A)〜(C)に示すように、第2の光ビームS2が曲面部2aの曲面にて当たることにより散乱光SS1、SS2が生じ、この散乱光分の光強度が弱まることとなる。このようにして、図8に示すように、第2の受光部88にて検出された第2の光強度分布に基づき、位置が測定算出される。
【0066】
この算出の際には、図8に示すように、第2の受光部88の信号出力Opは、図9に示す特性図のような、信号出力Opと基材の高さとの相関関係を有するので、制御回路100のメモリ160などにこの特性、即ち相関関係を示した相関テーブルを予め格納しておくことにより、第2の受光部88での信号出力Opに基づき、基材の高さ位置を算出することができる。
【0067】
そして、この基材の高さ位置を、例えば描画位置として、前記電子ビームの焦点位置の調整が行われ描画が行われることとなる。
【0068】
(描画位置算出の原理の概要)
次に、当該電子ビーム描画装置1における、描画を行う場合の描画位置算出の原理の概要について説明する。
【0069】
先ず、基材2は、図10(A)、(B)に示すように、例えば樹脂等による光学素子例えば光レンズ等にて形成されることが好ましく、断面略平板状の平坦部2bと、この平坦部2bより突出形成された曲面をなす曲面部2aと、を含んで構成されている。この曲面部2aの曲面は、球面に限らず、非球面などの他のあらゆる高さ方向に変化を有する自由曲面であってよい。
【0070】
このような基材2において、予め基材2をXYZステージ30上に載置する前に、基材2上の複数例えば3個の基準点P00、P01、P02を決定してこの位置を測定しておく(第1の測定)。これによって、例えば、基準点P00とP01によりX軸、基準点P00とP02によりY軸が定義され、3次元座標系における第1の基準座標系が算出される。ここで、第1の基準座標系における高さ位置をHo(x、y)(第1の高さ位置)とする。これによって、基材2の厚み分布の算出を行うことができる。
【0071】
一方、基材2をXYZステージ30上に載置した後も、同様の処理を行う。即ち、図10(A)に示すように、基材2上の複数例えば3個の基準点P10、P11、P12を決定してこの位置を測定しておく(第2の測定)。これによって、例えば、基準点P10とP11によりX軸、基準点P10とP12によりY軸が定義され、3次元座標系における第2の基準座標系が算出される。
【0072】
さらに、これらの基準点P00、P01、P02、P10、P11、P12により第1の基準座標系を第2の基準座標系に変換するための座標変換行列などを算出して、この座標変換行列を利用して、第2の基準座標系における前記Ho(x、y)に対応する高さ位置Hp(x、y)(第2の高さ位置)を算出して、この位置を最適フォーカス位置、即ち描画位置として電子ビームの焦点位置が合わされるべき位置とすることとなる。これにより、上述の基材2の厚み分布の補正を行うことができる。
【0073】
尚、上述の第2の測定は、電子ビーム描画装置1の第1の測定手段である測定装置80を用いて測定することができる。
【0074】
そして、第1の測定は、予め別の場所において他の測定装置を用いて測定しおく必要がある。このような、基材2をXYZステージ30上に載置する前に予め基準点を測定するための測定装置としては、上述の測定装置80と全く同様の構成の測定装置200(第2の測定手段)を採用することができる。
【0075】
この場合、測定装置からの測定結果は、例えば、図5に示す測定情報入力部158にて入力されたり、制御回路100と接続される不図示のネットワークを介してデータ転送されて、メモリ160などに格納されることとなる。もちろん、この測定装置が不要となる場合も考えられる。
【0076】
上記のようにして、描画位置が算出されて、電子ビームの焦点位置が制御されて描画が行われることとなる。
【0077】
具体的には、図10(C)に示すように、電子ビームの焦点深度FZ(ビームウエストBW)の焦点位置を、3次元基準座標系における単位空間の1フィールド(m=1)内の描画位置に調整制御する。(この制御は、上述したように、電子レンズ16による電流値の調整もしくはXYZステージ30の駆動制御の何れか一方又は双方によって行われる。)尚、本例においては、1フィールドの高さ分を焦点深度FZより長くなるように、フィールドを設定してあるがこれに限定されるものではない。ここで、焦点深度FZとは、図11に示すように、電子レンズ16を介して照射される電子ビームBにおいて、ビームウエストBWが有効な範囲の高さを示す。尚、電子ビームBの場合、図11に示すように、電子レンズ16の幅D、電子レンズ16よりビームウエスト(ビーム径の最も細い所)BWまでの深さfとすると、D/fは、0.01程度であり、例えば50nm程度の解像度を有し、焦点深度は例えば数十μ程度ある。
【0078】
そして、図10(C)に示すように、例えば1フィールド内をY方向にシフトしつつ順次X方向に走査することにより、1フィールド内の描画が行われることとなる。さらに、1フィールド内において、描画されていない領域があれば、当該領域についても、上述の焦点位置の制御を行いつつZ方向に移動し、同様の走査による描画処理を行うこととなる。
【0079】
次に、1フィールド内の描画が行われた後、他のフィールド、例えばm=2のフィールド、m=3のフィールドにおいても、上述同様に、測定や描画位置の算出を行いつつ描画処理がリアルタイムで行われることとなる。このようにして、描画されるべき描画領域について全ての描画が終了すると、基材2の表面における描画処理が終了することとなる。
【0080】
尚、本例では、この描画領域を被描画層とし、この被描画層における曲面部2aの表面の曲面に該当する部分を被描画面としている。
【0081】
さらに、上述のような各種演算処理、測定処理、制御処理などの処理を行う処理プログラムは、プログラムメモリ162に予め制御プログラムとして格納されることとなる。
【0082】
(ドーズ分布について)
図12には、当該電子ビーム描画装置の特徴的構成部分である制御系の機能ブロック図が開示されている。
【0083】
同図に示すように、電子ビーム描画装置1のメモリ160は、形状記憶テーブル161を有し、この形状記憶テーブル161には、例えば、基材2の曲面部2aにブレーズ3の傾斜部3b及び側壁部3aを所望の通りに各ブレーズのピッチp毎に形成する際の描画位置に対応する理想ドーズ分布や、この理想ドーズ分布を当該電子ビーム描画装置のドーズ最小単位にて近似した設定ドーズ分布や、ブレーズ3の傾斜部3bにドーズ混在傾斜部3bbを形成する際の凹凸部に関するドーズ分布(凸部の長さや各凸部間の距離に関するドーズ分布)等を予め定義したドーズ分布情報161aが格納されている。
【0084】
さらに、メモリ160には、理想ドーズ分布を表すブレーズのピッチpが境界ピッチより小さいときの第1の理想ドーズ関数(第1のドーズ関数)F(X)及び境界ピッチ以上のときの第2の理想ドーズ関数(第2のドーズ関数)F(X)+G(X,P)(詳細は後述の(理想ドーズ関数について)で述べる)、及び、設定ドーズ分布を表す設定ドーズ関数D(n)と、ドーズ混在傾斜部3bbを形成する範囲を設定するミキシング定数w[%]との相関関係を定義するミキシング領域演算情報161b、設定ドーズ関数D(n)をこのミキシング領域演算情報161bに基づいて補正演算したドーズ分布補正演算情報161c、その他の情報161dなどが格納されている。尚、此処に言う理想ドーズ分布を表す理想ドーズ関数とは、例えばF(X)は、図13に示すように、所望のブレーズ3の形状を得るための理想的なドーズ分布を表す関数のことであり、また、此処に言う設定ドーズ分布を表す設定ドーズ関数D(n)とは、例えば、図14に示すように、前記理想ドーズ分布を当該電子ビーム描画装置のドーズ最小単位にて近似することで得られ、当該電子ビーム描画装置にて実際に設定される場合のドーズ分布を表す関数のことである。さらに、此処にいうドーズ分布補正演算情報161cとは、例えば、図15に示すように、前記設定ドーズ関数D(n)に対して、前記ミキシング領域演算情報161bに基づいて後述する補正演算を行った後のドーズ関数を示すドーズ分布情報のことである。因みに、これら図13〜図15に示すドーズ関数(ドーズ分布)は、何れも同一のドーズ分布を表すものとなっている。また、これらドーズ関数(ドーズ分布)は、基材のブレーズ3が形成される一面が平面である場合を示しており、そのドーズ量及びドーズ位置は、あくまでも一例として示されている。
【0085】
また、プログラムメモリ162には、これらの処理を行う処理プログラム163a(より詳細には、例えば後述する図26〜図28のS101〜S117までの一連の処理など)、前記ドーズ分布情報161a、ミキシング領域演算情報161b、ドーズ分布補正演算情報161cなどの情報を基に、ブレーズ3の傾斜部3bに対してドーズ混在傾斜部3bbをどの描画ラインの位置に対して割り当てるか、ブレーズ3の形成位置に応じてドーズ混在傾斜部3bbの凹凸の個数を変更する場合にはその変更処理を含む処理等を演算により算出するなどのドーズ分布補正演算プログラム163b(より詳細には、例えば後述する図29のS301〜S313までの一連の処理など)、その他の処理プログラム163cなどを有している。尚、本実施形態のメモリ160にて「第1の格納手段及び第2の格納手段」を構成でき、また、本実施形態のプログラムメモリ162と制御部170とで「制御手段」を構成できる。
【0086】
この際、制御手段は、ドーズ分布の特性に基づいてドーズ量を算出しつつ前記ブレーズ3の傾斜部3b及び側壁部3aの描画を行うように制御する。また、ドーズ混在傾斜部3bbを形成する場合には前記傾斜部3bの傾斜部3ba及びドーズ混在傾斜部3bbの描画を行うように制御する。
【0087】
この際、制御手段は、測定手段にて測定された描画位置に基づき、電子レンズの電流値を調整して前記電子ビームの焦点位置を前記描画位置に応じて可変制御するとともに、前記焦点位置について、ドーズ分布に基づいてドーズ量を算出しつつ前記ブレーズ3の傾斜部3b及び側壁部3aの描画を行うように制御する。また、ドーズ混在傾斜部3bbを形成する場合には前記傾斜部3bの傾斜部3ba及びドーズ混在傾斜部3bbの描画を行うように制御する。
【0088】
また、メモリ160のドーズ分布情報161aは、基材2の曲面部2a、ブレーズ3の傾斜部3b及び側壁部3a等の形状及びブレーズのピッチpに応じた第1のドーズ分布に関する情報を含んでいる。そして、ドーズ分布補正演算プログラム163bは、前記第1のドーズ分布を、さらに前記ドーズ混在傾斜部3bbの凹凸部に対応するドーズ量を混在させた第2のドーズ分布(ドーズ分布補正演算情報161c)に補正するための演算を行う。このドーズ分布補正演算プログラム163b及び制御部170により、本発明にいう「演算手段」を構成できる。
【0089】
さらに、制御手段には、前記理想ドーズ関数や後述するミキシング領域:mix_w[%]等を設定するための設定手段181や、例えばライン毎のドーズ情報等を表示可能な表示手段182を備えることとする。
【0090】
このような構成を有する制御手段において、制御部170は、処理プログラム163aにより所定の描画アルゴリズムを実行しつつ、ドーズ混在傾斜部3bbのドーズ量を算出するルーチンに至ると、ドーズ分布補正演算プログラム163bを実行し、元来のドーズ分布(第1のドーズ分布)に対して描画位置に応じたドーズ混在傾斜部3bbの凹凸部を形成するための補正された第2のドーズ分布を算出するために、ある程度の基本的情報、即ち、ドーズ分布情報161a、或いは、ミキシング領域演算情報161bに格納されたテーブル等を参照しつつ、対応するドーズ分布補正演算情報161cを算出した後、この算出したドーズ分布特性情報161cを前記メモリ160の所定の一時記憶領域に格納し、そのドーズ分布補正演算情報161bに基づいて描画を行う。
【0091】
さらに、ミキシング領域演算情報161bに格納されるテーブル、具体的にはドーズ混在傾斜部3bbの凹凸部のドーズ分布に関するテーブルの態様の一例について、図16を参照して説明する。図16には、図3(b)のドーズ混在傾斜部3bbの凹凸部の描画パターンに対応するドーズ分布に関するテーブル161eの具体例が開示されている。図16の例では、描画0〜13ラインまでは、ドーズ量0にて傾斜部3baを構成し、14〜25ラインまでは、ドーズ量0及び100にてドーズ混在傾斜部3bbを構成している。具体的には、14ライン、18〜19ライン、22〜24ラインは、ドーズ量100にてドーズ混在傾斜部3bbの凹部を構成している。同様に、15〜17ライン、20〜21ライン、25ラインは、ドーズ量0にてドーズ混在傾斜部3bbの凸部を構成している。さらに、26〜38ラインまでは、ドーズ量100にて、再度、傾斜部3baを構成し、39〜50ラインまでは、ドーズ量100及び150にて、再度、ドーズ混在傾斜部3bbを構成している。具体的には、39ライン、43〜44ライン、47〜49ラインは、ドーズ量150にてドーズ混在傾斜部3bbの凹部を構成している。同様に、40〜42ライン、45〜46ライン、50ラインは、ドーズ量100にてドーズ混在傾斜部3bbの凸部を構成している。以降、ドーズ分解能(ドーズ最小単位)50にて段階的に傾斜部3ba及びドーズ混在傾斜部3bbを構成していく。
【0092】
尚、本例では、例えば1ラインピッチを10nm〜30nmとし、最低ドーズ量を100、ドーズ分解能(ドーズ最小単位)を50としている。
【0093】
このように、ドーズ混在傾斜部3bbの凹凸部を形成するためのドーズ分布をライン毎に用意したテーブルを利用することで、ドーズ分布補正演算プログラム163b及び制御部170による補正演算を簡単にすることができ、より簡単にドーズ混在傾斜部3bbの凹凸部に関する描画を行うことができる。尚、このようなテーブルを利用することなく所定のプログラムにより補正演算を行う場合の具体的な処理ステップについては、図3(a)に示すようなドーズ混在傾斜部3bb(凹凸部)を描画する場合を例に採り、後述する(処理手順について)のところで説明する。
(制御系の具体的構成)
次に、描画ラインを描画する際に、例えば、円描画を正多角形で近似して直線的に走査する場合の各種処理を行うための制御系の具体的構成について、図17を参照しつつ説明する。図17には、本実施形態における電子ビーム描画装置の制御系の詳細な構成が開示されている。
【0094】
電子ビーム描画装置の制御系300は、図17に示すように、例えば円描画時に正多角形(不定多角形を含む)に近似するのに必要な(円の半径に応じた)種々のデータ(例えば、ある一つの半径kmmの円について、その多角形による分割数n、各辺の位置各点位置の座標情報並びにクロック数の倍数値、さらにはZ方向の位置などの各円に応じた情報等)、さらには円描画に限らず種々の曲線を描画する際に直線近似するのに必要な種々のデータ、各種描画パターン(矩形、三角形、多角形、縦線、横線、斜線、円板、円周、三角周、円弧、扇形、楕円等)に関するデータを記憶する描画パターン記憶手段である描画パターンデータメモリ301と、を含んで構成される。
【0095】
また、制御系300は、前記描画パターンデータメモリ301の描画パターンデータに基づいて、描画条件の演算を行う描画条件演算手段310と、前記描画条件演算手段310から(2n+1)ライン(n=0、1、2・・)である場合は(2n+1)であるが、(n=1、2、・・)である場合は(2n−1)としてもよい)乃ち奇数ラインの描画条件を演算する(2n+1)ライン描画条件演算手段311と、(2n+1)ライン描画条件演算手段311に基づいて1ラインの時定数を設定する時定数設定回路312と、(2n+1)ライン描画条件演算手段311に基づいて1ラインの始点並びに終点の電圧を設定する始点/終点電圧設定回路313と、(2n+1)ライン描画条件演算手段311に基づいてカウンタ数を設定するカウンタ数設定回路314と、(2n+1)ライン描画条件演算手段311に基づいてイネーブル信号を生成するイネーブル信号生成回路315と、奇数ラインの偏向信号を出力するための偏向信号出力回路320と、を含んで構成されている。
【0096】
さらに、制御系300は、前記描画条件演算手段310から(2n)ライン乃ち偶数ラインの描画条件を演算する(2n)ライン描画条件演算手段331と、(2n)ライン描画条件演算手段331に基づいて1ラインの時定数を設定する時定数設定回路332と、(2n)ライン描画条件演算手段331に基づいて1ラインの始点並びに終点の電圧を設定する始点/終点電圧設定回路333と、(2n)ライン描画条件演算手段331に基づいてカウンタ数を設定するカウンタ数設定回路334と、(2n)ライン描画条件演算手段331に基づいてイネーブル信号を生成するイネーブル信号生成回路335と、偶数ラインの偏向信号を出力するための偏向信号出力回路340と、(2n)ライン描画条件演算手段310に基づいて、次の等高線に移動するときなどにブランキングを行うブランキングアンプ350と、描画条件演算手段310での描画条件と、奇数ラインの偏向信号出力回路320並びに偶数ラインの偏向信号出力回路340からの情報とに基づいて、奇数ラインの処理と偶数ラインの処理とを切り換える切換回路360と、を含んで構成されている。
【0097】
奇数ラインの偏向信号出力回路320は、走査クロックCL1と、カウンタ数設定回路314からの奇数ラインカウント信号CL6と、イネーブル信号発生回路315のイネーブル信号とに基づいてカウント処理を行う計数手段であるカウンタ回路321と、カウンタ回路321からのカウントタイミングと、始点/終点電圧設定回路313での奇数ライン描画条件信号CL3とに基づいて、DA変換を行うDA変換回路322と、このDA変換回路322にて変換されたアナログ信号を平滑化する処理(偏向信号の高周波成分を除去する等の処理)を行う平滑化回路323と、を含んで構成される。
【0098】
偶数ラインの偏向信号出力回路340は、走査クロックCL1と、カウンタ数設定回路334からの偶数ラインカウント信号CL7と、イネーブル信号発生回路335のイネーブル信号とに基づいてカウント処理を行う計数手段であるカウンタ回路341と、カウンタ回路341からのカウントタイミングと、始点/終点電圧設定回路333での偶数ライン描画条件信号CL5とに基づいて、DA変換を行うDA変換回路342と、このDA変換回路342にて変換されたアナログ信号を平滑化する処理を行う平滑化回路343とを含んで構成される。
【0099】
尚、これらの制御系300を構成する各部は、何れも図5に示すCPU等の制御部170(制御手段)にて制御可能な構成としている。また、これら制御系300は、X偏向用の制御系とY偏向用の制御系を各々形成する構成としてもよい。
【0100】
尚また、本実施形態の描画パターンデータメモリ310と描画条件演算手段310などを含む制御系300で、「演算手段」を構成できる。この「演算手段」は、走査される走査ライン上に、DA変換器の最小時間分解能の整数倍の時間に対応する距離に相当する少なくとも2点の各位置を演算する機能を有する。この場合、制御部170の「制御手段」は、前記演算手段にて演算された各位置間を前記電子ビームによりほぼ直線的に走査するように制御することとなる。また、同様にして、本発明の他の態様の「演算手段」では、略円状に走査される走査ライン上に、DA変換器の最小時間分解能の整数倍の時間に対応する距離を一辺とする多角形の各頂点位置を算出する機能を有する。また、制御手段は、演算手段にて演算された各位置間を前記電子ビームによりほぼ直線的に走査するのは同様である。
【0101】
上記のような構成を有する制御系300は、概略次のように作用する。即ち、描画条件演算手段310が描画パターンデータメモリ301から直線近似による走査(描画)に必要な情報を取得すると、所定の描画条件の演算処理を行い、例えば一つの円に対して正多角形の各辺に近似された場合の各辺のうち最初の辺、奇数番目のラインに関する情報は、(2n+1)ライン描画条件演算手段311へ、次の辺、偶数番目のラインに関する情報は、(2n)ライン描画条件演算手段331へ各々伝達される。
【0102】
これにより、例えば、(2n+1)ライン描画条件演算手段311は、奇数ラインに関する描画条件を生成し、走査クロックCL1と生成された奇数ライン描画条件生成信号CL2とに基づいて、偏向信号出力回路320から奇数ライン偏向信号CL9を出力する。
【0103】
一方、例えば、(2n)ライン描画条件演算手段331は、偶数ラインに関する描画条件を生成し、走査クロックCL1と生成された偶数ライン描画条件生成信号CL4とに基づいて、偏向信号出力回路340から偶数ライン偏向信号CL10を出力する。
【0104】
これら奇数ライン偏向信号CL9と偶数ライン偏向信号CL10は、描画条件演算手段310のもとに切換回路360によって、その出力が交互に切り換わる。したがって、ある一の円について、正多角形に近似され、各辺が算出されると、ある一つの辺、奇数番目の辺が描画されると、次の辺、偶数番目の辺が描画され、さらに次ぎの辺、奇数番目の辺が描画される、という具合に交互に各辺が直線的に描画(走査)されることとなる。
【0105】
そして、ある一の円について描画が終了すると、描画条件演算手段310は、その旨をブランキングアンプ350に伝達し、他の次の円を描画するように促す処理を行う。このようにして、各円について多角形で近似した描画を行うこととなる。
【0106】
(理想ドーズ関数について)
ここで、第1のドーズ分布を求めるための理想ドーズ関数F(X)及びF(X)+G(X,P)について説明する。まず、後方散乱のブレーズ形状への影響についての概要を図18を用いて説明する。図18(a)にブレーズのピッチpが後方散乱半径より小さい場合、図18(b)にブレーズのピッチpが後方散乱半径より大きい場合のドーズ分布、後方散乱による吸収エネルギー分布、および現像して得られる形状を示した。図18(a)に示したようにブレーズのピッチpが後方散乱半径より小さい場合には、後方散乱による吸収エネルギー分布は一様となる。従って現像後得られる形状は、後方散乱による吸収エネルギーにより全体の位置が高さ方向に変化するもののブレーズ形状には影響を及ぼさない。ところが、図18(b)に示したようにブレーズのピッチpが後方散乱半径より大きい場合には、後方散乱による吸収エネルギー分布は大小を周期的に繰り返し、その吸収エネルギー分布の影響により、ブレーズ形状は、同図に示す如く変形する。
【0107】
次に、上述の第1の理想ドーズ関数F(X)及び後方散乱の影響を鑑みた第2の理想ドーズ関数F(X)+G(X,P)を求める手順を図19から図22を用いて説明する。図19は、理想ドーズ関数を求めるための作業手順を示すフローチャートであり、図20〜図22は、その手順の説明のための説明図である。
【0108】
まず、図19に示すように、シミュレーションまたは当該電子ビーム描画装置を用いての得られるブレーズ形状を基にブレーズのピッチが数μm以下のブレーズ(或いは最小ピッチ近傍のピッチのブレーズ)について所望の形状が得られるような例えば図20に示すような基準となる第1の理想ドーズ関数F(X)を決定する(S501)。ただし、Xはブレーズ位置であって、ブレーズのピッチpと側壁部3aからの距離であるΔx(0<Δx≦p)とにより、X=Δx/pで与えられる(図20参照)。また、X=Δx/pとすることによりブレーズのピッチpの変化に応じてF(X)から得られる理想ドーズ分布をピッチ方向に線形に伸縮することができる。ここで、前述の設定ドーズ関数D(n)は、nを変数としているが、このnはあるブレーズのn番目の走査ラインのことであり、そのn番目の走査ラインにおけるドーズ量を求める場合には、そのブレーズのピッチpを走査ラインピッチで除算して得られる全走査ライン数をkとし、ブレーズ位置XをX=n/kとすればよい。
【0109】
次に、図21(a)に示すようなブレーズのピッチpを変化させた設計形状について(ただし、ピッチpは必要範囲内で変化させれば良い)、S501で求めた第1の理想ドーズ関数F(X)を用いてドーズ分布を求め描画を行い第1の理想ドーズ関数F(X)によるブレーズ形状を得る(またはシミュレーションによりブレーズ形状を得る)。図21(b)に示す如く、得られたブレーズ形状と設計形状を比較して、その差異からブレーズ形状の許容範囲内及び許容範囲外を判断して境界ピッチ幅を決定する(S502)。
【0110】
さらに、図22に示すような境界ピッチ幅以上の得られたブレーズ形状と設計形状の差分ΔD及び現像前のレジスト層表面からの距離で得られたブレーズ形状または設計形状のいずれか大きい方の距離Dから、補正比率ΔD/Dをブレーズ位置Xを変数としピッチpから求まる係数Pを含む補正比率関数g(X,P)として求める。g(X,P)は、各ブレーズ位置Xに於いてΔD/Dを細かく求めてもよいが、−側の最大補正位置にあたるΔD1/D1と+側の最大補正位置にあたるΔD2/D2のみを求め、3次式以上の関数で近似することが可能である。また、Pは、最大補正比率ΔD1/D1はピッチとの相関があるため、その相関式(h(p))で求まる係数、P=h(p)として求める。ここで、g(X,P)をドーズ量の補正量に換算したドーズ量補正関数G(X,P)を求める(S503)。
【0111】
そして、理想ドーズ関数として、
ブレーズピッチ<境界ピッチの時、第1の理想ドーズ関数=F(X)
ブレーズピッチ≧境界ピッチの時、第2の理想ドーズ関数=F(X)+G(X,P)
とし(S504)、設定手段181により境界ピッチと共にドーズ分布情報161aに設定する。
【0112】
また、上述の説明では2つの理想ドーズ関数を用いた場合を示したが、境界ピッチを複数設けてそれぞれの間でそれぞれに応じたドーズ量補正関数G(X,P)を用いて細かく補正を行っても良い。
【0113】
このように、ブレーズのピッチに応じた補正を行なうことで、後方散乱による近接効果の影響を鑑みつつ所望のブレーズ形状を得ることができる。ここで、上述の理想ドーズ関数を当該電子ビーム描画装置に適用した例を、図23に示す。
【0114】
図23(a)及び(b)には、同じ理想ドーズ関数例えば、F(X)を用いた描画/現像後の基材の断面形状を走査型プローブ顕微鏡にて測定した結果を示した。同図(a)に示したブレーズは、ピッチが7μm程度であり、所望のブレーズ形状が得られているが、同図(b)に示したブレーズは、ピッチが30〜50μm程度であり、ブレーズ形状は後方散乱の影響を受け変形している。そこで、同図(c)には上述のG(X,P)を、h(p)を楕円の式で与えてPを求め、G(X,P)を3次式で求めて補正した描画/現像後の基材の断面形状を走査型プローブ顕微鏡にて測定した結果を示したが、同図(b)と比べて明らかなように所望のブレーズ形状が得られている。
【0115】
また、上述の説明では、境界ピッチ以上のピッチのブレーズについては基準となる第1の理想ドーズ関数にさらにドーズ量補正関数を用いて補正するように説明したが、新たに別の理想ドーズ関数を求めるようにしても良い。
(基材の形状について)
次に、ブレーズの傾斜部上に、上述のドーズ混在傾斜部(凹凸部)を形成することにより、現像後のブレーズの傾斜面が後方散乱による抉りを抑制するようになだらかに形成されることについて説明する。
【0116】
図14及び図24には、従来の電子ビーム描画装置における設定ドーズ分布と、走査型プローブ顕微鏡にて測定された描画/現像後の基材の断面形状が示されており、一方、図15及び図25には、本発明に係る電子ビーム描画装置における設定ドーズ分布と、走査型プローブ顕微鏡にて測定された描画/現像後の基材の断面形状が示されている。
【0117】
尚、図14及び図15に示すドーズ分布は、互いに同一のものを表している。また、これらドーズ分布は、回折構造のブレーズ3が形成される一面が平面である場合を示しており、そのドーズ量及びドーズ位置は、あくまでも一例が示されている。
【0118】
また、図24及び図25に示されるように、ブレーズ3´、3は、側壁部3´a、3a及び傾斜部3´b、3bを有し、側壁部3´a、3aと傾斜部3´b、3bとの間には溝部3´c、3cを有する。また、これら図における横軸は、回折格子構造のブレーズの断面方向に沿った位置を示し(単位:μm)、縦軸は、回折格子構造のブレーズの高さ方向に沿った位置を示している(単位:nm)。
【0119】
図14に示すように、従来の電子ビーム描画装置においては、理想ドーズ分布を当該装置の最小ドーズ分解能(ドーズ最小単位)にて近似することにより得られる設定ドーズ分布、即ち、設定ドーズ関数D(n)に基づいて基材の描画が行われる。そして、その描画/現像後に得られるブレーズ3´の側壁部3´a及び傾斜部3´bの形状は、図24に示されるように、その傾斜部3´bに電子ビーム描画装置の最小ドーズ分解能に起因する複数の段差が形成されたものとなる。
【0120】
一方、図15に示すように、本発明に係る電子ビーム描画装置においては、前記設定ドーズ関数D(n)に対して、ミキシング領域演算情報161bに格納されるテーブルを基に後述する補正演算を行った後のドーズ分布補正演算情報161cに基づいて基材の描画が行われる。この際、ブレーズ3の傾斜部3bには、前述の傾斜部3ba及びドーズ混在傾斜部3bbが描画される。尚、ドーズ混在傾斜部3bbは複数の凹凸部により構成される。そして、その描画/現像後に得られるブレーズ3の側壁部3a及び傾斜部3bの形状は、図25に示されるように、その傾斜部3bが、図24に示されるブレーズ3´の傾斜部3´bと比較してなだらかに形成されたものとなる。
【0121】
ここで、図25に示される傾斜部3bが、図24に示される3´の傾斜部3´bと比較してなだらかに形成されることの詳細について説明すると次のようになる。
【0122】
一般に、基材に電子ビームを照射した場合には、基材の内部においては少なからず電子ビームの拡散が生じ、その近傍領域には、あたかもその部分が電子ビームにより描画されたような効果が及ぼされることになる。これを本発明では電子ビームによる“近接効果”と称することとする(ただし、従来技術で触れた後方散乱による近接効果とは異なる)。ところで、本発明において電子ビームによりブレーズ3の傾斜部3bにドーズ混在傾斜部3bbを描画する場合にも、ブレーズ3の傾斜部3b内においては電子ビームの拡散が生じ、これを構成する凹凸部の各凹部及び凸部間にて、この電子ビームによる“近接効果”が生じることとなる。従って、これを現像した場合には、凹凸部は、実際には厳密なバイナリー形状とはならない。さらに、前述のように、ドーズ混在傾斜部3bbを構成する凹凸部の各凹部及び凸部の幅は、各々、当該凹凸部を描画する電子ビームの径よりも小さく構成されるため、これを電子ビームにより描画した場合には、電子ビームによる描画領域の重複により凹凸部に複数回(例えば2〜3回)にわたって描画される部分が生じるため、これを現像した場合には、凹凸部は、結果として中間的な高さを有する凹凸形状となる。このことが本発明において重要な要点となる。
【0123】
即ち、この結果、ブレーズ3の傾斜部3bの傾斜部3ba間の段差は、これらの中間的な高さを有するドーズ混在傾斜部3bbにより、従来のブレーズ3´の傾斜部3´bにおける段差と比較して1/2の高さを有する段差となるため、よりなだらかな傾斜面を構成することとなる。
【0124】
尚、前述のように、ドーズ混在傾斜部3bbを構成する凸部の凹凸部に対するデューティー比を傾斜部3bの高さが低くなる側に行くにつれ小さくした場合には、凸部の高さを段階的に低くしていくことが可能となるため、さらになだらかな傾斜面を構成することができる。
【0125】
(処理手順について)
次に、上述のような構成を有する基材を、3次元的に描画可能な電子ビーム描画装置を用いて作成する際の処理手順について、図26乃至図28及び図29を参照しつつ説明する。
【0126】
図26に示すように、先ず、母型材(基材)をSPDT(Single Point Diamond Turning:超精密加工機によるダイアモンド切削)により非球面の加工を行う際に、同心円マークの同時加工を実施する(ステップ、以下「S」101)。この際、光学顕微鏡で、例えば±1μ以内の検出精度の形状が形成されることが好ましい。
【0127】
次に、FIBにて例えば3箇所にアライメントマークを付ける(S102)。ここに、十字形状のアライメントマークは、電子ビーム描画装置内で±20nm以内の検出精度を有することが好ましい。
【0128】
さらに、前記アライメントマークの、同心円マークとの相対位置を光学顕微鏡にて観察測定し、非球面構造の中心に対する位置を測定し、データベース(DB)(乃至はメモリ(以下、同))へ記録しておく(S103)。尚、この測定精度は、±1μ以内であることが好ましく、中心基準とした3つのアライメントマークの位置、x1y1、x2y2、x3y3をデータベース(DB)へ登録する。
【0129】
また、レジスト塗布/ベーキング後の母型(基材)の各部の高さとアライメントマークの位置(Xn、Yn、Zn)を測定しておく(S104)。ここで、中心基準で補正した母型(基材):位置テーブルTbl1(OX、OY、OZ)、アライメントマーク:OA(Xn、Yn、Zn)(いずれも3*3行列)を、データベース(DB)へ登録する。
【0130】
次に、斜面測定用の測定装置(高さ検出器)に、測定ビームの位置をあわせるとともに、電子ビームをフォーカスしておく等、その他各種準備処理を行う(S105)。
【0131】
この際、ステージ上に取り付けたEB(電子ビーム)フォーカス用針状(50nmレベル)の較正器に高さ検出用の測定ビームを投射すると共に、SEMモードにて電子ビーム描画装置で観察し、フォーカスを合わせる。
【0132】
次いで、図27に示すように、母型(基材)を電子ビーム描画装置内へセットし、アライメントマークを読み取り(XXn、YYn、ZZn)、変換マトリックスMaを算出して、電子ビーム描画装置内の母型の各部位置を求める(S106)。この際に、電子ビーム描画装置内においては、S106に示されるような各値をデータベース(DB)に登録することとなる。
【0133】
さらに、母型(基材)の形状から、最適なフィールド位置を決定する(S107)。ここで、フィールドは同心円の扇型に配分する。また、フィールド同士は、若干重なりを持たせる。そして、中央で第一輪帯にかからない部分は配分しない。
【0134】
そして、各フィールドについて、隣のフィールドのつなぎアドレスの計算を行う(S108)。この計算は平面として計算を行う。尚、多角形の1つの線分は、同一フィールド内に納める。ここに、「多角形」とは、上述の制御系の項目で説明したように、円描画を所定のn角形で近似した場合の少なくとも1本の描画ラインをいう。
【0135】
次に、対象とするフィールドについて、同一焦点深度領域の区分として、同一ラインは、同じ区分に入るようにする。また、フィールドの中央は、焦点深度区分の高さ中心となる(S109)。ここに、高さ50μ以内は、同一焦点深度範囲とする。また、1〜数箇所程度に分割される。
【0136】
次いで、対象とするフィールドについて、同一焦点深度領域内での(x、y)アドレスの変換マトリクス(Xc、Yc)によりビーム偏向量を算出する(S110)。このXc、Ycは各々図示の式(16)の通りとなる。ここに、Wdはワークディスタンス、dは該当焦点深度区分の中央からZ方向偏差を示す。
【0137】
さらに、図28に示すように、対象とするフィールドについて、となりとのつなぎアドレスを換算する(S111)。ここで、S108にて算出したつなぎ位置をS110の式(16)を用いて換算する。
【0138】
そして、対象とするフィールドについて、中心にXYZステージを移動し、高さをEB(電子ビーム)のフォーカス位置に設定する(S112)。即ち、XYZステージにてフィールド中心にセットする。また、測定装置(高さ検出器)の信号を検出しながら、XYZステージを移動し、高さ位置を読み取る。
【0139】
また、対象とするフィールドについて、一番外側(m番目)の同一焦点深度内領域の高さ中心に電子ビーム(EB)のフォーカス位置を合わせる(S113)。具体的には、テーブルを参照し、XYZステージを所定量フィールド中心の高さ位置との差分を移動する。
【0140】
次に、対象とする同一焦点深度内について、一番外側(n番目)のラインのドーズ量及び多角形の始点、終点の計算をする。尚、スタート(始点)、エンド(終点)は、隣のフィールドとのつなぎ点とする(S114)。この際、始点、終点は整数にするものとし、ドーズ量は、ラジアル位置(入射角度)で決まった最大ドーズ量と格子の位置で決められた係数に最大ドーズ量を掛け合わせたもので表される。
【0141】
以降、S113からS115を規定回数実施する(S115)。
【0142】
ここで、図29に示すフローチャートを用いて、本発明の特徴的な部分である、上述のS113〜115における各描画ラインのドーズ量の決定方法について説明する。尚、以下においては、図3(a)に示すように、傾斜部3bに、各凹凸部間の距離が一定であるドーズ混在傾斜部3bbを形成する場合について説明する。また、図29には、ブレーズのピッチが境界ピッチより小さい場合を示してあるので、理想ドーズ関数は、上述の第1の理想ドーズ関数のF(X)を用いているが、ブレーズのピッチが境界ピッチより大きい場合には、図29中のF(X)に代えて第2の理想ドーズ関数のF(X)+G(X,P)を用いれば良い。
【0143】
ここで、各種パラメータを次のように定義する。
【0144】
ドーズ関数:F(X)、X=n/k
ドーズ最小単位:min_dose
ドーズ設定値:Dn(整数)
nの四捨五入値:Round(n)
また、以下にDnを求める説明をするが、設定ドーズ関数D(n)は、
D(n)=Dn×min_dose
で求まる。
【0145】
まず、設定手段181により、ミキシング領域:mix_w[%]のw[%]を入力する(S301)。尚、此処にいうw[%]とは、図30におけるm/Mの値のことを指し、また、此処にいうミキシング領域:mix_w[%]とは、w[%]により与えられるドーズ混在傾斜部3bbの凹凸部が形成される範囲(例えば、図4におけるU1+U2+U3)のことを指し、具体的には、同図に示すように、第1の理想ドーズ関数F(X)と設定ドーズ関数D(n)とを同一の描画位置をもって重ねた場合に、設定ドーズ関数D(n)によるドーズ量が変化するブレーズ位置における第1の理想ドーズ関数F(X)によるドーズ量を示す点を点Pとし、点Pとドーズ量が変化するブレーズ位置の最下点Oとの距離をMとした場合に、点Pから最下点Oの方向にそのMに対してw[%]に相当する距離mの地点から水平線を引き、第1の理想ドーズ関数F(X)と交わる点Qから、さらに垂直線を引いたときに設定ドーズ関数D(n)と交わる点Rと前記ブレーズ位置Oとの間の領域のことを指している。
【0146】
このようにミキシング領域:mix_w[%]を定義することで、第1の理想ドーズ関数F(X)の傾きに応じてドーズ混在傾斜部3bbを設ける範囲を決定することができるので、例えば、ブレーズの傾斜面の角度が描画位置に応じて変化するような場合であっても、これに適切に対応することができる。
【0147】
制御部170は、処理プログラム163aにより所定の描画アルゴリズムを実行しつつ、ドーズ混在傾斜部3bbのドーズ量を算出するルーチンに至ると、ドーズ分布補正演算プログラム163bを実行し、元来のドーズ分布(第1のドーズ分布)に対して描画位置に応じたドーズ混在傾斜部3bbの凹凸部を形成するための補正された第2のドーズ分布を算出する。
【0148】
具体的には、まず、描画位置n=0(n=0〜k、k:最外描画位置)、初期設定値N=1とした上で(S302)、描画位置nに応じた第1の理想ドーズ関数で与えられるドーズ量をドーズ最小単位(最小ドーズ分解能値)で割った値とその値の四捨五入値との差R(x)を算出する(S303)。
【0149】
R(x)=F(X)/min_dose−Round(F(X)/min_dose)・・・〔式1〕、X=n/k
次に、w/100>1−(0.5−R(x)×2)・・・〔式2〕
を判断する(S304)。
【0150】
ここで、Yesと判断された場合には、次に、N=1を判断する(S307)。
【0151】
当然、初期設定値N=1としているので、描画位置n=0におけるドーズ設定値Dnは、
Dn=Round(F(X)/min_dose)とされる(S309)。
【0152】
ところで、S304において、Noと判断された場合には、次に、
mix_w/100<(0.5−R(x)×2)を判断する(S305)。
【0153】
ここで、Yesと判断された場合には、次に、N=1を判断する(S308)。
【0154】
当然、初期設定値N=1としているので、描画位置n=0におけるドーズ設定値Dnは、
Dn=Round(F(X)/min_dose)−1とされる(S310)。
【0155】
ところで、S305において、Noと判断された場合には、描画位置nにおけるドーズ設定値Dnは、
Dn=Round(F(X)/min_dose)とされる(S306)。
【0156】
S309、或いは、S310から引き続いて、その描画位置nにおけるドーズ設定値D(n)をドーズ分布情報161aとしてメモリ160に格納する(S311)。
【0157】
次に、n=kを判断する(S312)。
【0158】
当然、n=0としているので、Noと判断され、n=n+1、N=−Nとする(S313)。
【0159】
以降、n=n+1、N=−Nとした上で、S312においてn=kと判断されるまでS303〜S312が規定回数繰り返される。
【0160】
このようにしてドーズ設定値Dnは決定され、Dn×min_doseで求まる設定ドーズD(n)に基づいて描画を行うことで、例えば、図3(A)に示すようなドーズ混在傾斜部3bbの凹凸部を描画することができる。
【0161】
以下、図28に戻って説明を続ける。
【0162】
次に、XYZステージの移動、次のフィールドの描画を行う準備を行う(S116)。この際、フィールド番号、時間、温度などデータベース(DB)への登録を行う。
【0163】
以降、前記S109からS117を規定回数実施する(S117)ことにより、図3(a)に示すように、各ブレーズ3の傾斜部3bに、各凹凸部間の距離が一定であるドーズ混在傾斜部3bbを形成することができる。
【0164】
尚、前述のように、例えば図3(b)に示すように、各ブレーズ3の傾斜部3bに、各凹凸部間の距離が、傾斜部3bの高さが低くなる方向に行くに従い広くなるように構成されるドーズ混在傾斜部3bbを形成する場合には、例えば図16に示すような、ドーズ混在傾斜部3bbの凹凸部を形成するためのドーズ分布をライン毎に用意したテーブルを利用することで、補正演算を簡単に行いドーズ混在傾斜部3bbの凹凸部に関する描画を行うことが可能となる。
【0165】
また、図3(c)に示したミキシング領域を有さないブレーズを描画するには、mix_w[%]のw[%]に0%を入力するか、Dnを図29のフローチャートに示す手順を用いないでDn=Round(F(X)/min_dose)としてDnを決定しても良い。
【0166】
[第二の実施形態]
次に、本発明に係る第二の実施形態について、図31及び図32に基づいて説明する。尚、以下においては、前記第一の実施形態と実質的に同様の構成に関しては説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0167】
(基材の構成)
第一の実施形態では、ブレーズ3の傾斜部3bの断面方向(傾斜方向)に傾斜部3bbとドーズ混在傾斜部3bbの凹凸部とを構成する場合を例示したが、本実施形態においては、電子ビームの走査方向にドーズ混在傾斜部の凹凸部を形成する場合について説明する。
【0168】
即ち、本実施形態における基材の特徴は、電子ビームの走査方向にドーズ混在傾斜部の凹凸部を形成するべく、電子ビームにより走査される描画線(走査方向のライン)を描画するにあたりブランキング区間を設け、このブランキング区間を前記ドーズ混在傾斜部の凹部とし、線描画部分を前記ドーズ混在傾斜部の凸部とすることにある。
【0169】
以下、本実施形態における基材の具体的な構成について説明する。図31に、本実施形態における基材の一面に形成されるブレーズの傾斜部200bの部分拡大図を示す。
【0170】
同図に示すように、本実施形態のブレーズの傾斜部200bは、断面方向から見た場合には、第一の実施形態におけるブレーズ3の傾斜部3bと大きな変わりはない。
【0171】
しかしながら、これを上方から見た場合には、電子ビームの走査方向(図における上下方向)に第1のドーズ量及び第2のドーズ量(但し、第2のドーズ量>第1のドーズ量、第2のドーズ量−第1のドーズ量=ドーズ最小単位)にて描画されたドーズ混在傾斜部200bbが、ブランキング区間BKに対応する凸部(第1のドーズ量にて描画)と、その他の区間に対応する凹部(第2のドーズ量にて描画)とから形成されている。尚、同図における斜線領域は、傾斜部200bの断面方向においては、凹部BJ1〜BJ3の底面に対応している。
【0172】
一方、その他の領域である傾斜部200baでは、通常通りに、第1のドーズ量及び第2のドーズ量にて描画された平面を形成し、傾斜部200bの断面方向においては、階段状に傾斜面を構成することとなる。
【0173】
同様にして、他の位置にあるブレーズの傾斜部200bに対しても、ドーズ混在傾斜部200bbの領域と、通常の傾斜部200baの領域を構成する。
【0174】
尚、前述のように、ドーズ混在傾斜部200bbを構成する凹凸部の各凹部及び凸部の幅は、各々、当該凹凸部を描画する電子ビームの径よりも小さく構成するものとする。
【0175】
このように、電子ビームの走査方向にドーズ混在傾斜部の凹凸部を形成した場合にも、第一の実施形態における基材と同様に、これを電子ビームにより描画した場合には、ブレーズの傾斜部200b内において電子ビームの拡散が生じ、これを構成する凹凸部の各凹部及び凸部間において、この電子ビームによる“近接効果”が生じることとなるため、これを現像した場合には、凹凸部は、実際には厳密なバイナリー形状とはならない。さらに、前述のように、ドーズ混在傾斜部200bbを構成する凹凸部の各凹部及び凸部の幅は、各々、当該凹凸部を描画する電子ビームの径よりも小さく構成されるため、これを電子ビームにより描画した場合には、電子ビームによる描画領域の重複により複数回(例えば2〜3回)にわたって描画される部分が生じるため、これを現像した場合には、凹凸部は、その結果として、中間的な高さを有する凹凸形状となる。
【0176】
この結果、ブレーズの傾斜部200bの傾斜部200ba間の段差は、これらの中間的な高さを有するドーズ混在傾斜部200bbにより、従来のブレーズの傾斜部間の段差と比較して1/2の高さを有する段差となるため、よりなだらかな傾斜面を構成することとなる。
【0177】
尚、前述のように、傾斜部200baの凹凸部に対する凸部のデューティー比を傾斜部200bの高さが低くなる側に行くにつれ小さくした場合には、ドーズ混在傾斜部200bb内における凸部の高さを段階的に低くしていくことが可能となるため、よりなだらかな傾斜面を構成することができる。
【0178】
(電子ビーム描画装置の制御系の構成)
次に、上述のようなドーズ混在傾斜部200bbを形成するべく、描画ラインの各領域に応じて、第1のドーズ量及び第2のドーズ量にて描画を行うための具体的な制御系の構成について、図32を参照しつつ説明する。
【0179】
本実施形態における制御系700は、例えば、前記第一の実施形態における図5の制御回路100内に組み込まれるもので、ドーズ混在傾斜部200bbを形成するべく線描画を行う場合に、周期的にブランキングを設ける(ドーズ混在傾斜部200bbの領域内に所定間隔毎に凹凸を形成する)ための2つのモード(例えば、第2のドーズ量にて線描画を行う第1モード、ブランキングにより第1のドーズ量にて線描画を行う第2のモード)を利用したモード切換制御を行うものであり、図32に示すように、電子ビームを基材の表面上に走査(スキャン)するために所定のクロック(信号)に基づいてデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換器であるスキャンDAC702と、このスキャンDAC702にて変換されたアナログ信号に基づいて、ビーム偏向信号を生成出力するためのビーム偏向信号出力回路703と、前記クロック(信号)のクロックを計数(カウント)するカウンタ711と、ドーズパターン周期n1に関する情報を格納した第1レジスタ713、ブランキング区間を形成するためのブランキング期間をn3−n2(但し、符号720に示すように、n1>n3、n3>n2)とした場合に、n2に関する情報を格納した第2レジスタ715と、n3に関する情報を格納した第3レジスタ717と、カウンタ711にてカウントされた計数値と第1レジスタ713に格納された情報とを比較してカウンタ711のリセットを実行可能な第1比較器712と、カウンタ711にてカウントされた計数値と第2レジスタ715に格納された情報とを比較する第2比較器714と、カウンタ711にてカウントされた計数値と第3レジスタ717に格納された情報とを比較する第3比較器716と、第2比較器714にて比較された比較結果と、第3比較器717にて比較された比較結果との論理積を算出する論理ゲート718と、論理ゲート718から出力される結果に基づいて、所定の期間ブランキングオフとするブランキングオフ信号を生成出力するブランキングオフ信号出力回路719と、を含んで構成されている。
【0180】
尚、上述のスキャンDAC702、ビーム偏向信号出力回路703で、「ビーム偏向制御系」を構成でき、カウンタ711、第1比較器712、第1レジスタ713、第2比較器714、第2レジスタ715、第3比較器716、第3レジスタ717、論理ゲート718、ブランキングオフ出力回路719により「モード切換手段であるブランキング制御系」を構成できる。
【0181】
上記のような構成を有する制御系700において、クロックに基づくビーム偏向信号出力回路703からの偏向信号によって、特定の描画ライン(描画線)の描画が行われる。
【0182】
この際、クロックに基づいてn3>n2なるn2のカウント値に至り、カウンタ711が当該カウント値を出力すると、第2比較器714は、例えば出力信号を「L」レベルから「H」レベルとし、「H」レベルの信号を出力して、論理ゲート718の一方の入力に入力する。
【0183】
次に、クロックに基づいてn3>n2なるn3のカウント値に至り、カウンタ711が当該カウント値を出力すると、第3比較器716は、例えば出力信号を「L」レベルから「H」レベルとし、「H」レベルの信号を出力して、論理ゲート718の他方の入力に入力する。
【0184】
この間、論理ゲート718の一方の入力が「L」レベル、他方の入力が「L」レベル、あるいは、一方の入力が「H」レベル、他方の入力が「L」レベルの場合には、論理ゲート718は、「H」を出力するので、「ブランキングオン(期間)」となり、第2のドーズ量にて線描画が行われる。
【0185】
一方、論理ゲート718の一方の入力が「H」レベル、他方の入力が「H」レベル、あるいは、一方の入力が「L」レベル、他方の入力が「H」レベルの場合には、論理ゲート718は、「L」を出力するので、この間「ブランキングオフ」となり、第1のドーズ量にて線描画が行われる。
【0186】
他方、クロックに基づいてn1>n3>n2なるn1のカウント値に至り、カウンタ711が当該カウント値を出力すると、第1比較器712は、信号を出力し、カウンタ711をリセットする。
【0187】
このようにして、n1の周期毎に、以上の「ブランキングオフ」、「ブランキングオン」が繰り返され、例えば、図31におけるドーズ混在傾斜部200bbの領域内において、描画ラインにブランキング区間BKを持たせて、第1のドーズ量にて描画される凸部と第2のドーズ量にて描画される凹部による、言わば、描画ライン方向でのバイナリー構造を形成することができる。
【0188】
このように、描画ライン方向でのバイナリー構造を形成することでも、ブレーズの傾斜部200bにドーズ混在傾斜部200bbの領域を設けることができる。
【0189】
尚、本実施形態においては、ブランキング区間BKを一定としているが、例えば、描画ライン毎にブランキング区間を変化させた構成としても良い。
【0190】
[第三の実施形態]
次に、本発明に係る第三の実施形態について、図33に基づいて説明する。尚、以下においては、前記第一の実施形態及び第二の実施形態と実質的に同様の構成に関しては説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0191】
第一の実施形態では、ブレーズ3の傾斜部3bの断面方向(傾斜方向)に傾斜部3bbとドーズ混在傾斜部3bbの凹凸部とを構成する場合を例示し、また、第二の実施形態では、電子ビームの走査方向にドーズ混在傾斜部200bbの凹凸部を形成する場合を例示したが、本実施形態においては、これらを組み合わせて、ブレーズの傾斜部の断面方向(傾斜方向)に傾斜部とドーズ混在傾斜部の凹凸部とを構成し、さらに、このドーズ混在傾斜部の凸部において電子ビームの走査方向にも凹凸部を形成する場合について説明する。
【0192】
より詳細には、ブレーズの傾斜部の断面方向(傾斜方向)に傾斜部とドーズ混在傾斜部の凹凸部とを構成し、さらに、このドーズ混在傾斜部の凸部において電子ビームにより走査される描画線(走査方向のライン)を描画するにあたり、ブランキング区間を設け、このブランキング区間を前記ドーズ混在傾斜部の凸部における凹部とし、線描画部分を前記ドーズ混在傾斜部の凸部における凸部とするものである。
【0193】
具体的には、図33に示すように、本実施形態のブレーズの傾斜部400bは、断面方向から見た場合には、第一の実施形態におけるブレーズ3の傾斜部3bと特に変わりはない。
【0194】
しかしながら、これを上方から見た場合には、傾斜部400bのドーズ混在傾斜部400bbにおける電子ビームの走査方向(図における上下方向)に第1のドーズ量及び第2のドーズ量(但し、第2のドーズ量>第1のドーズ量、第2のドーズ量−第1のドーズ量=ドーズ最小単位)にて描画された凹凸部が、ブランキング区間BKに対応して形成されている。
【0195】
一方、その他の領域である傾斜部400baでは、通常通りに、第1のドーズ量及び第2のドーズ量にて描画された平面を形成し、傾斜部400bの断面方向においては、階段状に傾斜面を構成することとなる。
【0196】
同様にして、他の位置にあるブレーズの傾斜部400bに対しても、ドーズ混在傾斜部400bbの領域と、通常の傾斜部400baの領域を構成する。
【0197】
尚、前述のように、ドーズ混在傾斜部400bbを構成する凹凸部の各凹部及び凸部の幅は、各々、当該凹凸部を描画する電子ビームの径よりも小さく構成するものとする。
【0198】
このように、電子ビームの走査方向にドーズ混在傾斜部400bbの凹凸部を形成した場合にも、第一の実施形態及び第二の実施形態における基材と同様に、これを電子ビームにより描画した場合には、ブレーズの傾斜部400b内において電子ビームの拡散が生じ、これを構成する凹凸部の各凹部及び凸部間において、この電子ビームによる“近接効果”が生じることとなるため、これを現像した場合には、凹凸部は、実際には厳密なバイナリー形状とはならない。さらに、前述のように、ドーズ混在傾斜部400bbを構成する凹凸部の各凹部及び凸部の幅は、各々、当該凹凸部を描画する電子ビームの径よりも小さく構成されるため、これを電子ビームにより描画した場合には、電子ビームによる描画領域の重複により複数回(例えば2〜3回)にわたって描画される部分が生じるため、これを現像した場合には、凹凸部は、その結果として、中間的な高さを有する凹凸形状となる。
【0199】
この結果、ブレーズの傾斜部400bの傾斜部400ba間の段差は、これらの中間的な高さを有するドーズ混在傾斜部400bbにより、従来のブレーズの傾斜部間の段差と比較して1/2の高さを有する段差となるため、よりなだらかな傾斜面を構成することとなる。
【0200】
尚、前述のように、ドーズ混在傾斜部400bbの凹凸部に対する凸部のデューティー比を傾斜部400bの高さが低くなる側に行くにつれ小さくした場合には、ドーズ混在傾斜部400bb内における凸部の高さを段階的に低くしていくことが可能となるため、よりなだらかな傾斜面を構成することができる。
【0201】
[第四の実施形態]
次に、本発明に係る第四の実施形態について、図34に基づいて説明する。尚、本実施形態では、ブレーズの傾斜部のドーズ混在傾斜部の凸部における電子ビームの走査方向の描画ラインにおいて、様々なパターンのブランキング区間を設けることで種々の形状の凹凸部を形成する場合について説明する。
【0202】
例えば、図34(A)に示すドーズ混在傾斜部801は、ブランキング区間801aが斜め方向に位置するように構成されている。
【0203】
図34(B)に示すドーズ混在傾斜部802は、隣接する各描画ライン間で各ブランキング区間802a、802aを千鳥状に配置して、互いに隣り合わないように構成されている。
【0204】
図34(C)に示すドーズ混在傾斜部803は、場所に応じて凸部803bの長さが異なるように構成されている。
【0205】
図34(D)に示すドーズ混在傾斜部804は、ブランキング区間804aを斜めに傾斜して形成した場合において、一定線群をもってその傾斜方向を変えるように構成されている。
【0206】
図34(E)に示すドーズ混在傾斜部805は、複数の線群毎にブランキング区間805aの位置を変えるように構成されている。
【0207】
以上のような各種描画パターンにてブランキング部を設けた構成としても、第一乃至第三の実施形態と同様に、これを電子ビームにより描画した場合には、ブレーズの傾斜部内において電子ビームの拡散が生じ、これを構成する凹凸部の各凹部及び凸部間において、この電子ビームによる“近接効果”が生じることとなるため、これを現像した場合には、凹凸部は、実際には厳密なバイナリー形状とはならない。さらに、前述のように、ドーズ混在傾斜部を構成する凹凸部の各凹部及び凸部の幅は、各々、当該凹凸部を描画する電子ビームの径よりも小さく構成されるため、これを電子ビームにより描画した場合には、電子ビームによる描画領域の重複により複数回(例えば2〜3回)にわたって描画される部分が生じるため、これを現像した場合には、凹凸部は、その結果として、中間的な高さを有する凹凸形状となる。
【0208】
この結果、ブレーズの傾斜部間の段差は、これらの中間的な高さを有するドーズ混在傾斜部により、従来のブレーズの傾斜部間の段差と比較して1/2の高さを有する段差となるため、よりなだらかな傾斜面を構成することとなる。
【0209】
[第五の実施形態]
次に、本発明に係る基材を形成するための金型の一実施形態について、図35〜図36に基づいて説明する。尚、第一乃至第四の実施形態においては、本発明に係る電子ビーム描画方法及び電子ビーム描画装置の一実施形態について開示したが、本実施形態では、本発明に係る金型、具体的には、前記基材として光学素子等の光レンズを射出成形によって製造するための金型を製造する工程について説明する。
【0210】
先ず、機械加工により金型(無電解ニッケル等)の非球面加工を行う(加工工程)。次に、図35(A)に示すように、金型により前記半球面を有する基材200の樹脂成形を行う(樹脂成形工程)。さらに、基材500を洗浄した後に乾燥を行う。
【0211】
次いで、図35(B)に示すように、樹脂の基材500の表面上の処理を行う(樹脂表面処理工程)、具体的には、基材500の位置決めを行い、レジストLを滴下しつつスピナーを回転させて、スピンコートを行う。また、プリペークなども行う。
【0212】
スピンコーティングの後には、当該レジスト膜の膜厚測定を行い、レジスト膜の評価を行う(レジスト膜評価工程)。そして、図35(C)に示すように、基材500の位置決めを行い、当該基材500をX、Y、Z軸にて各々制御しつつ前記第1から第4の実施形態のように3次元の電子ビームによるバイナリー構造を含むブレーズ状の回折格子構造を有する曲面部の描画を行う(描画工程)。
【0213】
次に、基材500上のレジスト膜Lの表面平滑化処理を行う(表面平滑化工程)。さらに、図35(D)に示すように、基材200の位置決めなどを行いつつ、現像処理を行う(現像工程)。さらにまた、表面硬化処理を行う。
【0214】
次いで、SEM観察や膜厚測定器などにより、レジスト形状を評価する工程を行う(レジスト形状評価工程)。
【0215】
さらに、その後、ドライエッチングなどによりエッチング処理を行う。
【0216】
この際、回折格子構造502のD部を拡大すると、傾斜部502b及び側壁部502aからなる複数のブレーズにて回折格子構造が形成されている。さらに傾斜部502bに、ドーズ混在傾斜部502abを形成しても良い。このドーズ混在傾斜部502abは、例えば凸部の幅が傾斜面方向に向かうに従い幅狭となるように形成される。このブレーズは、周辺部に向かうに従い回折格子面の角度が急となるため、ドーズ混在傾斜部502abも回折格子面の角度変化に応じて変化するように形成しても良い。
【0217】
次に、表面処理がなされた基材500に対する金型504を作成するために、図36(A)に示すように、金型電鋳前処理を行った後、電鋳処理などを行い、図36(B)に示すように、基材500と金型504とを剥離する処理を行う。そして、剥離した金型504に対して、表面処理を行う(金型表面処理工程)。そして、金型504の評価を行う。
【0218】
この際、金型504には、B部を拡大して示すと、前記基材500のブレーズに対応するように、凹部505が形成され、これら各凹部505には、前記基材500の傾斜部502bのドーズ混在傾斜部502abが形成された場合には、ドーズ混在傾斜部502abに対応するように、複数の凹凸部506が形成されることとなる。
【0219】
このようにして、評価後、当該金型504を用いて、図36(C)に示すように、射出成形により成形品を作成する。その後、当該成形品の評価を行う。
【0220】
この際、図36(C)に示すように、最終成型基材である射出成型品510には、前記第一乃至第四の実施形態の基材同様の構成が完成され、曲面部上に複数のブレーズからなる回折格子構造511が形成される。そして、C部を拡大して示すと、回折格子の1つのピッチが側壁部512a及び傾斜部512bからなるブレーズを構成する。また、この傾斜部512bには、ドーズ混在傾斜部512abが構成されていても良い。
【0221】
以上のように本実施形態によれば、前記第一乃至第四の実施形態の基材として光学素子(例えばレンズ)を形成する場合に、描画装置を用い曲面部上に回折格子を描画する際にあわせ、後方散乱による近接効果の影響を鑑みて描画し、また、ブレーズの傾斜部上に第1のドーズ量にて描画される凸部と、第2のドーズ量にて描画される凹部とからなるドーズ混在傾斜部を描画し、金型形状としてブレーズの一部に、このドーズ混在傾斜部を成形させる様にし、当該金型を用いて光学素子を射出成形により製造できるため、製造にかかるコストダウンを図ることができる。
【0222】
以上に説明したように、本実施形態における電子ビーム描画方法、光学素子用金型の製造方法、光学素子の製造方法及び電子ビーム描画装置によれば、基材に回折格子としてのブレーズを形成する場合に、ブレーズのピッチに応じて理想ドーズ関数を選択して理想ドーズ量を求めることで、ピッチの変化によるブレーズ形状への後方散乱による近接効果の影響を鑑みたドーズ量で描画できるので所望のブレーズ形状を得ることが可能である。また、その傾斜面を描画するべく最小ドーズ分解能単位にて異なる2つのドーズ量にて描画される部分の間にこれら2つのドーズ量が混在して描画されるドーズ混在領域部分が設けられ、当該ドーズ混在領域部分が現像された場合には、前記異なる2つのドーズ量にて描画される部分の中間的な高さを有する部分となるため、従来において、電子ビーム描画装置のD/A変換器の最小時間分解能により決定された最小ドーズ分解能に起因する段差を、より細かく分割して構成することができ、これをもって、よりなだらかなブレーズ傾斜面を形成することができ、段差手前に発生する後方散乱の影響による抉りを抑制することができる。また、この基材を用いて金型を製作することで、基材を射出成形により製造することが可能となるため、製造にかかるコストダウンを図ることができる。
【0223】
尚、本発明に係る電子ビーム描画方法、光学素子用金型の製造方法、光学素子の製造方法及び電子ビーム描画装置については、そのいくつかの特定の実施形態を例に説明してきたが、これらは本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく【本発明の実施形態】の本文中に記述した実施形態に対して種々の変形が可能である。
【0224】
例えば、上述の実施形態では、光レンズ等の光学素子の基材を直接描画する場合について説明したが、樹脂等の光レンズを射出成形により形成するための成形型(金型)を加工する場合に、上述の原理や処理手順、処理手法を用いてもよい。
【0225】
また、上述の実施形態では、ブレーズの傾斜部及び側壁部の描画と、ドーズ混在傾斜部の凹凸部の描画とを一連の走査で描画する手順について説明したが、このような手順に限らず、先ずブレーズの描画を行った後に、ドーズ混在傾斜部の凹凸部の描画を行うようにしてもよい。
【0226】
また、最終成型基材としては、一面にブレーズ状の回折格子を有し、各ブレーズに前記ドーズ混在傾斜部を有していればよく、他方の面は、通常の平面、あるいは、偏光板機能、波長板機能、等を有する面を備えた光学素子として形成するかは任意である。
【0227】
また、基材としては、曲面部を有しなくても、平面或いは傾斜面等が形成されているものであってもよい。
【0228】
加えて、上述した電子ビーム描画装置に限らず、複数の各電子ビームにより各々独立して多重描画可能に構成した場合であってもよい。例えば、基材上の一方の描画線を描画しつつ、他方の描画線を描画可能に形成した構成であってもよい。
【0229】
また、上述の各実施形態の電子ビーム描画装置において処理される処理プログラム、説明された処理、メモリ内のデータ(各種テーブル等)の全体若しくは各部を情報記録媒体に記録した構成であってもよい。この情報記録媒体としては、例えばROM、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ並びに集積回路等を用いてよく、さらに当該情報を他のメディア例えばハードディスク等に記録して構成して用いてよい。
【0230】
さらに、上記実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。つまり、上述の各実施形態同士、或いは、それらの何れかと各変形例の何れかとの組み合わせによる例をも含むことは言うまでもない。この場合において、本実施形態において特に記載しなくとも、各実施形態及び変形例に開示した各構成から自明な作用効果については、当然のことながら本例においても当該作用効果を奏することができる。また、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除された構成であってもよい。
【0231】
そして、これまでの記述は、本発明の実施形態の一例のみを開示しており、所定の範囲内で適宜変形及び/又は変更が可能であるが、各実施形態は例証するものであり、制限するものではない。
【0232】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る電子ビーム描画方法、光学素子用金型の製造方法、光学素子の製造方法及び電子ビーム描画装置によれば、基材に回折格子としてのブレーズを形成する場合に、ブレーズのピッチに応じて理想ドーズ関数を選択して理想ドーズ量を求めることで、ピッチの変化によるブレーズ形状への後方散乱による近接効果の影響を鑑みたドーズ量で描画できるので所望のブレーズ形状を得ることが可能である。また、その傾斜面を描画するべく最小ドーズ分解能単位にて異なる2つのドーズ量にて描画される部分の間にこれら2つのドーズ量が混在して描画されるドーズ混在領域部分が設けられ、当該ドーズ混在領域部分が現像された場合には、前記異なる2つのドーズ量にて描画される部分の中間的な高さを有する部分となるため、従来において、電子ビーム描画装置のD/A変換器の最小時間分解能により決定された最小ドーズ分解能に起因する段差を、より細かく分割して構成することができ、これをもって、よりなだらかなブレーズ傾斜面を形成することができ、段差手前に発生する後方散乱の影響による抉りを抑制することができる。また、この基材を用いて金型を製作することで、基材を射出成形により製造することが可能となるため、製造にかかるコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る基材の概略構成の一例を示す説明図である。
【図2】基材のブレーズの部分を詳細に示す説明図である。
【図3】ブレーズの傾斜部の部分を詳細に示す説明図である。
【図4】傾斜部のドーズ混在傾斜部を詳細に示す説明図である。
【図5】本発明に係る電子ビーム描画装置の概略構成の一例を示す説明図である。
【図6】測定装置の原理を説明するための説明図である。
【図7】基材の面高さを測定する手法を説明するための説明図である。
【図8】測定装置の投光と受光との関係を示す説明図である。
【図9】信号出力と基材の高さとの関係を示す特性図である。
【図10】本発明に係る電子ビーム描画装置にて描画される基材を示す説明図及びその描画原理を説明するための説明図である。
【図11】電子ビーム描画装置におけるビームウエストを説明するための説明図である。
【図12】本発明に係る電子ビーム描画装置において、所定のドーズ分布にて描画を行うためのドーズ量を制御する制御系の詳細を示す機能ブロック図である。
【図13】所望のブレーズ形状を得るための理想的なドーズ分布を表す理想ドーズ関数を説明するための説明図である。
【図14】所望のブレーズ形状を得るために従来の電子ビーム描画装置において設定されるドーズ分布を表す設定ドーズ関数を説明するための説明図である。
【図15】所望のブレーズ形状を得るために本発明に係る電子ビーム描画装置において設定されるドーズ分布を表す設定ドーズ関数を説明するための説明図である。
【図16】ドーズ混在傾斜部を形成するためのドーズ量分布の一例を示す説明図である。
【図17】本発明に係る電子ビーム描画装置にてデジタル描画を行うための線描画を制御する制御系の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【図18】後方散乱のブレーズ形状への影響を説明するための図である。
【図19】本発明に係る理想ドーズ関数を求めるための手順を示すフローチャートである。
【図20】本発明に係る第1の理想ドーズ関数F(X)を説明するための説明図である。
【図21】境界ピッチを説明するための説明図であり、(a)は、ブレーズの設計形状を示す図であり、(b)は、設計形状と得られた形状の比較を示す図である。
【図22】補正比率ΔD/Dを説明するための説明図である。
【図23】本発明に係る電子ビーム描画装置にて描画された基材の現像後の断面形状及び従来の電子ビーム描画装置にて描画された基材の現像後の断面形状を示す図である。
【図24】従来の電子ビーム描画装置にて描画された基材の現像後の断面形状を示す図である。
【図25】本発明に係る電子ビーム描画装置にて描画された基材の現像後の断面形状を示す図である。
【図26】本発明に係る電子ビーム描画装置にて基材を描画する場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図27】本発明に係る電子ビーム描画装置にて基材を描画する場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図28】本発明に係る電子ビーム描画装置にて基材を描画する場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図29】本発明に係る電子ビーム描画装置にて基材にドーズ混在傾斜部を描画する場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図30】ドーズ混在傾斜部の形成範囲であるミキシング領域を決定する方法を説明するための説明図である。
【図31】本発明に係る基材のブレーズの傾斜部に描画されるドーズ混在傾斜部の一構成例を詳細に示す説明図である。
【図32】本発明に係る電子ビーム描画装置にて、ブランキング区間を設けた線描画を行うための制御系の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図33】本発明に係る基材のブレーズの傾斜部に描画されるドーズ混在傾斜部の一構成例を詳細に示す説明図である。
【図34】本発明に係る基材のブレーズの傾斜部に描画されるドーズ混在傾斜部の様々な構成例を詳細に示す説明図である。
【図35】本発明に係る基材を用いて成形用の金型を形成する場合の全体の処理手順を説明するための説明図である。
【図36】本発明に係る基材を用いて成形用の金型を形成する場合の全体の処理手順を説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 電子ビーム描画装置
2 基材
2a 曲面部
3 ブレーズ
3a 側壁部
3b 傾斜部
3ba 傾斜部
3bb ドーズ混在傾斜部
10 鏡筒
12 電子銃
14 スリット
16 電子レンズ
18 アパーチャー
20 偏向器
22 補正用コイル
30 XYZステージ
40 ローダ
50 ステージ駆動手段
60 ローダ駆動装置
70 真空排気装置
80 測定装置
82 第1のレーザ測長器
84 第1の受光部
86 第2のレーザー測長器
88 第2の受光部
100 制御回路
110 コイル制御部
112a 成形偏向部
112b 副偏向部
112c 主偏向部
116 位置誤差補正回路
118 電界制御回路
120 パターン発生回路
130 第1のレーザー駆動制御回路
132 第2のレーザー駆動制御回路
134 第1のレーザー出力制御回路
136 第2のレーザー出力制御回路
140 第1の測定算出部
142 第2の測定算出部
150 ステージ制御回路
152 ローダ制御回路
154 機構制御回路
156 真空排気制御回路
158 測定情報入力部
160 メモリ
162 プログラムメモリ
170 制御部
300 制御系

Claims (22)

  1. 基材に対して電子ビームを照射し、前記電子ビームを所定のドーズ量にて走査することにより、前記基材の少なくとも一面に異なるピッチを含む複数のブレーズを形成し、このブレーズの少なくとも1ピッチに当該ブレーズの区切り位置から立ち上がる側壁部と、該側壁部の頂点から隣接する他のブレーズの側壁部の最下点とをつなぐ傾斜部とを形成するための電子ビーム描画方法であって、
    前記ブレーズのピッチが前記電子ビームの後方散乱による近接効果の影響が発生し始める境界ピッチより小さいときには第1のドーズ関数に基づいてドーズ量を求め、前記ブレーズのピッチが前記境界ピッチ以上のときには前記第1のドーズ関数と異なる第2のドーズ関数に基づいてドーズ量を求めるステップと、
    前記ピッチに応じて前記求められた各ドーズ量にて前記傾斜部を描画するステップと、を含むことを特徴とする電子ビーム描画方法。
  2. 基材に対して電子ビームを照射し、前記電子ビームを所定のドーズ量にて走査することにより、前記基材の少なくとも一面に異なるピッチを含む複数のブレーズを形成し、このブレーズの少なくとも1ピッチに当該ブレーズの区切り位置から立ち上がる側壁部と、該側壁部の頂点から隣接する他のブレーズの側壁部の最下点とをつなぐ傾斜部とを形成するための電子ビーム描画方法であって、
    前記ブレーズのピッチが前記電子ビームの後方散乱による近接効果の影響が発生し始める境界ピッチより小さいときには第1のドーズ関数に基づいて第1のドーズ分布を求め、前記ブレーズのピッチが前記境界ピッチ以上のときには前記第1のドーズ関数と異なる第2のドーズ関数に基づいて第1のドーズ分布を求めるステップと、
    前記第1または第2のドーズ関数に基づき求めた前記第1のドーズ分布の前記側壁部からの距離に応じて段階的に変化するドーズ量における隣接する異なるドーズ量を第1のドーズ量第2のドーズ量とした際に、前記基材の前記第1のドーズ量にて描画される部分と前記第2のドーズ量にて描画される部分との間に、前記第1のドーズ量と前記第2のドーズ量とを混在させて描画する特定構造描画部分を設けるための第2のドーズ分布を求めるステップと、
    前記第1及び第2のドーズ分布に基づいた各ドーズ量にて前記傾斜部を描画するステップと、を含むことを特徴とする電子ビーム描画方法。
  3. 前記第1のドーズ量と前記第2のドーズ量の差は、前記電子ビームを照射する電子銃を駆動するためのD/A変換器の最小クロックに基づく最小調整単位のドーズ量であることを特徴とする請求項に記載の電子ビーム描画方法。
  4. 前記特定構造描画部分は、前記第1のドーズ量にて描画される凸部と前記第2のドーズ量にて描画される凹部とが交互に連なる断面略凹凸形状の凹凸部として描画されることを特徴とする請求項または請求項に記載の電子ビーム描画方法。
  5. 前記凹凸部の描画は、前記第1のドーズ量にて描画する走査ラインと前記第2のドーズ量にて描画する走査ラインとを交互に連ねて描画することを特徴とする請求項に記載の電子ビーム描画方法。
  6. 前記走査ラインを交互に連ねる描画は、前記凹凸部の1ピッチに対する凹部のデューティー比が、前記傾斜部の高さが低くなる側に向かうに従い段階的に小さくなるように、前記第1のドーズ量にて描画する走査ラインと前記第2のドーズ量にて描画する走査ラインの数を調整して描画することを特徴とする請求項に記載の電子ビーム描画方法。
  7. 前記走査ラインを交互に連ねる描画は、前記凹凸部を構成する前記凸部のピッチが、前記傾斜部の高さが低くなる側に向かうに従い段階的に小さくなる形状となるように、前記第1のドーズ量にて描画する走査ラインと前記第2のドーズ量にて描画する走査ラインの数を調整して描画することを特徴とする請求項に記載の電子ビーム描画方法。
  8. 前記走査ラインの数の調整は、前記傾斜部の傾斜角度に応じて前記特定構造描画部分の前記凹凸部を構成する前記第1のドーズ量にて描画する走査ラインと前記第2のドーズ量にて描画する走査ラインの延べ数を調整することを特徴とする請求項乃至請求項のいずれかに記載の電子ビーム描画方法。
  9. 前記凹凸部の描画は、走査ライン上で前記第1のドーズ量と前記第2のドーズ量とを周期的に繰り返して描画することを特徴とする請求項に記載の電子ビーム描画方法。
  10. 前記周期的に繰り返す描画は、前記前記第1のドーズ量にて描画する位置が隣接する各走査ライン間で略一致するように描画することを特徴とする請求項に記載の電子ビーム描画方法。
  11. 前記周期的に繰り返す描画は、前記前記第1のドーズ量にて描画する位置が隣接する各走査ライン間で異なるように描画することを特徴とする請求項に記載の電子ビーム描画方法。
  12. 前記周期的に繰り返す描画は、前記前記第1のドーズ量にて描画する位置が隣接する各走査ライン間で千鳥状となるように描画することを特徴とする請求項に記載の電子ビーム描画方法。
  13. 前記凹凸部を構成する前記凸部及び前記凹部の幅より小さい前記電子ビームのビーム径にて描画することを特徴とする請求項乃至請求項12のいずれかに記載の電子ビーム描画方法。
  14. 前記第1のドーズ関数は、前記ピッチであるpと前記側壁部からの距離であるΔx(0<Δx≦p)とによりX=Δx/pと表されるブレーズ位置Xを変数とするドーズ関数F(X)を含み、前記第2のドーズ関数は、前記ドーズ関数F(X)と前記ブレーズ位置Xを変数としさらにピッチpをパラメータとして求められる係数Pを変数とする補正関数G(X,P)とを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の電子ビーム描画方法。
  15. 請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の電子ビーム描画方法を用いて光学素子用金型を製造する光学素子用金型の製造方法であって、
    前記電子ビームを照射した基材を現像し、現像された前記基材の表面で電鋳を行い、成型用の金型を形成するステップを含むことを特徴とする光学素子用金型の製造方法。
  16. 請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の電子ビーム描画方法を用いて光学素子用金型を製造する光学素子用金型の製造方法であって、
    前記電子ビームを照射した基材を現像し、エッチング処理した前記基材に電鋳を行い、成型用の金型を形成するステップを含むことを特徴とする光学素子用金型の製造方法。
  17. 請求項15または請求項16に記載の光学素子用の金型製造方法を用いて形成した金型を用いて光学素子を形成することを特徴とする光学素子の製造方法。
  18. 基材に対して電子ビームを照射し、前記電子ビームを所定のドーズ量にて走査することにより描画する描画手段を有し、前記基材の少なくとも一面に異なるピッチを含む複数のブレーズを形成し、このブレーズの少なくとも1ピッチに当該ブレーズの区切り位置から立ち上がる側壁部と、該側壁部の頂点から隣接する他の回折格子の側壁部の最下点とをつなぐ傾斜部とを形成するための電子ビーム描画装置であって、
    前記ブレーズのピッチが前記電子ビームの後方散乱による近接効果の影響が発生し始める境界ピッチより小さいときには第1のドーズ関数に基づき求められたドーズ量と、前記ブレーズのピッチが前記境界ピッチ以上のときには前記第1のドーズ関数と異なる第2のドーズ関数に基づいて求められたドーズ量とから構成される第1のドーズ分布に関する情報を格納した第1の格納手段と、
    前記第1の格納手段の前記第1のドーズ分布に基づいて、前記傾斜部の描画を行うように前記描画手段を制御する制御手段と、
    を含むことを特徴とする電子ビーム描画装置。
  19. 基材に対して電子ビームを照射し、前記電子ビームを所定のドーズ量にて走査することにより描画する描画手段を有し、前記基材の少なくとも一面に異なるピッチを含む複数のブレーズを形成し、このブレーズの少なくとも1ピッチに当該ブレーズの区切り位置から立ち上がる側壁部と、該側壁部の頂点から隣接する他の回折格子の側壁部の最下点とをつなぐ傾斜部とを形成するための電子ビーム描画装置であって、
    前記ブレーズのピッチが前記電子ビームの後方散乱による近接効果の影響が発生し始める境界ピッチより小さいときには第1のドーズ関数に基づき求められたドーズ量と、前記ブレーズのピッチが前記境界ピッチ以上のときには前記第1のドーズ関数と異なる第2のドーズ関数に基づいて求められたドーズ量とから構成される第1のドーズ分布に関する情報を格納した第1の格納手段と、
    前記第1の格納手段に格納された前記第1のドーズ分布前記側壁部からの距離に応じて段階的に変化するドーズ量における隣接する異なるドーズ量を第1のドーズ量第2のドーズ量とした際に、前記第1のドーズ量にて描画される部分と前記第2のドーズ量にて描画される部分との間に、前記第1のドーズ量にて描画される部分と前記第2のドーズ量にて描画される部分とが混在した特定構造描画部分としての凹凸部を描画するべく、前記凹凸部を描画するための前記第1のドーズ量及び前記第2のドーズ量から構成される第2のドーズ分布に関する情報を格納した第2の格納手段
    前記第1の格納手段の前記第1のドーズ分布及び前記第2の格納手段の前記第2のドーズ分布に基づいて、前記傾斜部の描画を行うように前記描画手段を制御する制御手段と、を含むことを特徴とする電子ビーム描画装置。
  20. 前記第1のドーズ分布を、前記特定構造描画部分としての前記凹凸部に対応した第2のドーズ分布に補正するための演算を行う演算手段をさらに有することを特徴とする請求項19に記載の電子ビーム描画装置。
  21. 前記第1のドーズ量と前記第2のドーズ量の差は、前記電子ビームを照射する電子銃を駆動するためのD/A変換器の最小クロックに基づく最小調整単位のドーズ量であることを特徴とする請求項19または請求項20に記載の電子ビーム描画装置。
  22. 前記第1のドーズ関数は、前記ピッチであるpと前記側壁部からの距離であるΔx(0<Δx≦p)とによりX=Δx/pと表されるブレーズ位置Xを変数とするドーズ関数F(X)を含み、前記第2のドーズ関数は、前記ドーズ関数F(X)と前記ブレーズ位置Xを変数としさらにピッチpをパラメータとして求められる係数Pを変数とする補正関数G(X,P)とを含むことを特徴とする請求項18乃至請求項21のいずれかに記載の電子ビーム描画装置。
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