JP4361010B2 - 発酵アルコール飲料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
1.小麦粉100gに対して水を60g〜70g加える。
2.混練機で20〜30分練り上げる。
3.出来上がった生地は室温に10〜30分放置して熟成させる。
4.熟成した生地を3〜5倍量の水で洗い、ふすま・澱粉・湿グルテンに分離する。
5.湿グルテンを脱水・熱風乾燥して粉砕する。
公知の小麦グルテンの製造方法にはマーチン法やバッター法などあるが、いずれの方法でもかまわない。使用する小麦グルテンは保管や取扱いの関係から、ペースト状のものではなく、熱風乾燥した粉砕物とし、水分は6〜7重量%、粗タンパクは80重量%以上、粗脂肪は2重量%以下、炭水化物は10重量%前後のものが望ましい。
小麦をカッターミルで微粉砕した小麦粉砕物と小麦グルテン各々9gに45℃のお湯を加え、3重量%溶液を作製する。タンパク分解酵素は、プロテアーゼPアマノG(天野エンザイム社製)を用いた。タンパク分解酵素を各々0.18g(サンプル量に対して2重量%相当)添加し、45℃で3時間攪拌する。その後90℃、10分オートクレーブ処理して酵素を失活させ、20℃まで氷冷した後、ろ紙でろ過する。結果を表2に示す。小麦粉砕物はろ過が著しく遅く、長時間を要したため途中で作業を中断した。これに比べ小麦グルテンはタンパク分解酵素による処理で、ろ過の問題はまったく生じなかった。すなわち、本実施例により、小麦グルテンは小麦とは異なり、ビール・発泡酒製造工程中のろ過不良を生じないことが明らかとなった。
小麦グルテン及び大豆タンパク、各々3gにサンプル量の100倍量のお湯(約80℃)を加えて、1重量%の溶液を作製し、攪拌・溶解して不溶物があれば、ろ紙でろ過する。その後95℃・90分オートクレーブにより煮沸処理し、得られたものを抽出液とする。得られた抽出液の全窒素含量・α−アミノ態窒素含量を表3に示した。比較のため同様の方法で処理したコーンタンパクの一種であるグルーテンミールの値を示した。抽出液作製の際には攪拌したが、溶解しないものがかなり残った。小麦グルテンやグルーテンミール及び大豆タンパクを、ただ溶解しただけでは十分な窒素やアミノ酸が得られないことが明らかとなった。
小麦グルテン及び大豆タンパク、各々9gを45℃のお湯300ccに溶解し、タンパク分解酵素を1.8g(サンプル量に対し2重量%)添加して3時間攪拌する。その後90℃・10分オートクレーブ処理して酵素を失活させ、20℃まで氷冷した後、ろ紙でろ過する。得られた酵素分解液の全窒素含量・α−アミノ態窒素含量を表4に示した。タンパク分解酵素は、プロテアーゼPアマノG(天野エンザイム社製)を用いた。比較のため同様の方法で処理したグルーテンミールの値を示した。小麦グルテン及び大豆タンパクを酵素分解する事によって全窒素、アミノ酸類が溶出し、その含量はグルーテンミールを大幅に上回った。すなわち、本実施例と実施例2の結果から、小麦グルテン及び大豆タンパクは単に煮沸抽出しただけでは分解されなく、タンパク分解酵素で処理する事によって、酵母の生育に必要な窒素が溶出され、発酵アルコール飲料の窒素原料としての利用が可能性となることが明らかと成った。
大豆タンパクについてはビール用アルコール飲料への利用などの報告があるが、小麦グルテンについてはこれらの情報がほとんどない。小麦グルテンのアルコール飲料への利用の可能性を探るため、発泡酒麦汁に小麦グルテン分解液を添加して、その効果を調査した。
(1)麦芽25重量%、搗精大麦及び澱粉質原料(米等)35重量%を粉砕して混合し、50℃〜120℃の温度範囲で糖化した「もろみ」のろ液。
(2)液糖40重量%。
(3)(1)、(2)を混合しこれにホップを添加して煮沸し、ろ過などにより固形物を取り除き、ろ液を冷却して糖化液とする。
(4)一方、小麦グルテン35gとタンパク分解酵素0.7g(小麦グルテン2重量%相当)を45℃・2リットルのお湯に溶かし、1.75重量%の小麦グルテン溶解液を作製して3時間攪拌する。その後90℃・10分オートクレーブ処理して酵素を失活させ、20℃まで氷冷した後、ろ紙ろ過したろ液をグルテン分解液とする。タンパク分解酵素は、プロテアーゼPアマノG(天野エンザイム社製)を用いた。
(5)コントロールとして(3)の糖化液100重量%、試験区として糖化液80重量%+グルテン分解液20重量%、糖化液80重量%+水20重量%の溶液を作製し、それぞれにビール酵母を添加して、5℃〜14℃で発酵させる。
発酵前溶液については糖度・pH・全窒素含量・α−アミノ態窒素含量を、発酵液についてはpH・全窒素含量と消費量およびα−アミノ態窒素含量と消費量を表5に、発酵経過を図1に、試飲結果を表6に示した。発酵前溶液は小麦グルテン分解液及び水の添加によって糖度が低下する。pHは殆ど変化しない。全窒素・α−アミノ態窒素は、水添加では添加量(20重量%)に応じて減少したが、小麦グルテン分解液添加では大幅に上昇した。表5に示されるように、発酵液は小麦グルテン分解液添加でpHがコントロールよりやや高くなった。全窒素・α−アミノ態窒素の含量・消費量は、水添加では発酵前溶液と同様、添加量に応じてコントロールに比べ約20重量%減少した。小麦グルテン分解液添加ではコントロールに比べ、含量で2〜3倍、消費量は1.6〜1.7倍となった。
「小麦グルテン50重量%+大豆タンパク50重量%」「大豆タンパク100重量%」を其々タンパク分解酵素で分解した溶液を、ビール酵母で発酵させた。タンパク分解酵素は、プロテアーゼPアマノG(天野エンザイム社製)を用いた。
本発明において、発酵させる発酵前溶液は次の通りである。
(1)α−アミノ態窒素含量が酵母の発酵に十分と思われる約120mg/lとなるよう、既測定値から、小麦グルテン2.9g+大豆タンパク2.4g、大豆タンパク4.8gとタンパク分解酵素(サンプル量に対し2重量%)を45℃・200mlのお湯に加え3時間攪拌する。その後90℃・10分オートクレーブ処理して酵素を失活させ、20℃まで氷冷した後、ろ紙ろ過した液。
(2)液糖。
発酵手順は次の通りである。
〔1〕上記(1)・(2)を混合し、これにホップを添加して煮沸する。
〔2〕ろ過などにより、固形物を除く。
〔3〕ろ液を冷却する。
〔4〕ビール酵母を添加する。
〔5〕5℃〜14℃で発酵させる。
発酵前溶液については糖度・pH・全窒素含量とα−アミノ態窒素含量を、発酵液についてはpH・全窒素含量と消費量・α−アミノ態窒素含量と消費量を分析し、その結果を表7に示した。
(1)大豆タンパクは糖の切れが良く、良好な発酵で、発酵液に異臭は感じられず、発酵液はスッキリした味わいとなった。しかし、香味は平板でややボディ感が不足する。
(2)小麦グルテンと大豆タンパクを混合して分解したものは、酵母による窒素及びα−アミノ態窒素の消費量が多く、問題ないレベルで発酵した。また、発酵液はボディ感があり、醸造酒らしいものとなった。
(3)上記のことから以下のように考察される:すなわち、小麦グルテンと大豆タンパクを混合したものは、発酵に問題はなく、分析値及び香味の良好な発酵液製造が可能である。
規模を大きくした場合の香味評価とより詳細な分析を行うため、「小麦グルテン50重量%+大豆タンパク50重量%」「大豆タンパク100重量%」を窒素源として2系列・2klのプラントで試験醸造した。
(1)糖化釜に湯を張り、1系列には小麦グルテン5kg+大豆タンパク5kgを、もう1系列には大豆タンパク10kgを投入する。
(2)それぞれの糖化釜にタンパク分解酵素を240g(上記原料の2.4重量%)投入し、180分攪拌する。タンパク分解酵素は、プロテアーゼPアマノG(天野エンザイム社製)を用いた。
(3)麦汁煮沸釜に78℃の湯を張り、上記(2)を移し、それぞれの系に液糖380kgを溶解する。
(4)色付けのため、カラメル麦芽を小麦グルテン+大豆タンパクの試験区に9kg、大豆タンパクの区に8kg加える。
(5)ホップのα酸は各々34mg/l、28mg/lとなるよう添加した。
(6)ろ過などにより固形物を除き、ろ液を冷却する
(7)0.85重量%となるよう酵母を添加する
(8)5℃〜14℃で発酵させる
グループA(又はグループI):発酵が始まって直ぐに使用されるアミノ酸[アスパラギン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、スレオニン、セリン、リジン]。
グループB(又はグループII:発酵期間全体にわたって使用されるアミノ酸[イソロイシン、バリン、ヒスチジン、メチオニン、ロイシン]。
グループC(又はグループIII):グループAが大部分使用された後に使用されるアミノ酸[アラニン、アンモニア、グリシン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン]。
グループD(又はグループIV):ほとんど使用されないアミノ酸[プロリン]。
グループAに分類されるアミノ酸(酵母高資化性アミノ酸)は、上面発酵酵母・下面発酵酵母のいずれにも、直ぐに使用されることから、酵母の発酵にとって最も重要とみなされている。
(1)アミノ酸の組成は大豆タンパクではアスパラギン(グループA、以下“グループ”を除いて記す)、ロイシン(B)、フェニルアラニン(C)、リジン(A)アルギニン(A)の比率が高く、小麦グルテン+大豆タンパクではグルタミン(A)、ロイシン(B)、アルギニン(A)、フェニルアラニン(C)の比率が高く、これらのタンパクにおいては、表9のA〜Dのアミノ酸のそれぞれの合計の欄に示されるように、小麦グルテン+大豆タンパクでAに分類されるアミノ酸の総量・比率が多くなっている。
(2)試飲結果は実験室と同様の傾向を示した。すなわち大豆タンパクだけでは平板なすっきりした香味になるのに対して、小麦グルテンと大豆タンパクを混合することによって、よりビールに近い香味に改善できる。
(3)以上のことから、次のように考察される:すなわち、1)小麦グルテンと大豆タンパク混合液は、大豆タンパク単独使用に比べて、良好な香味を付与するが、このことは発酵前溶液のアミノ酸総量、特に酵母の発酵にとって重要な酵母高資化性アミノ酸(グループA)のアミノ酸比率を高めるためであると考察される。2)小麦グルテンは、グループAのアミノ酸比率を高め、酵母の発酵の促進により、製品の香味を改善する。なお、香味バランス上、水を除く総原料に対して、50重量%以下とすることが望ましい。
Claims (5)
- 原料を混合して発酵前溶液を調製し、該発酵前溶液を加熱・煮沸し、酵素の失活と色度の調整を行った後、ビール酵母を用いて発酵する発酵アルコール飲料の製造方法において、原料の一部にビール酵母高資化性アミノ酸高含有の小麦グルテン及び/又は大豆タンパクの分解物又はその調製物を用いることにより発酵アルコール飲料の味覚・風味の増進と、発酵アルコール飲料の製造における作業性の向上とを図ることを特徴とする発酵アルコール飲料の製造方法。
- 発酵液中のビール酵母高資化性アミノ酸総量を、400mg/L以上に調整することを特徴とする請求項1記載の発酵アルコール飲料の製造方法。
- 小麦グルテン及び/又は大豆タンパクの分解物又はその調製物のうち、小麦グルテンの添加率が、水を除く総原料に対して50重量%を超えないことを特徴とする請求項1又は2記載の発酵アルコール飲料の製造方法。
- 発酵アルコール飲料が、ビール又は雑酒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の発酵アルコール飲料の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか記載の発酵アルコール飲料の製造方法によって製造された味覚・風味の優れた発酵アルコール飲料。
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