JP4358491B2 - シート及びその成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はゴム変性スチレン系重合体を用いたシート及びその成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
包装用成形体の材料として、透明性を必要とするものには塩化ビニル樹脂が使用されている。しかし、塩化ビニル樹脂は、廃棄物として焼却する際に発生する塩化水素による焼却炉の腐食間題、大気中に放出された塩化水素による大気汚染間題に加え、焼却炉で発生するダイオキシン類の原因物質のひとつとして考えられており、このような問題から塩化ビニル樹脂に代わる材料が求められてきている。これらの問題が生じない代替材料としてポリカーボネート、透明ABS等が一部市場で実績はあるものの、両者ともに価格が高く低価格の塩化ビニル樹脂の代替材料としての実用性に欠ける欠点があった。、電子部品包装用成形体の材料としては剛性、耐衝撃性の良好なことも必要とされ、透明で、衝撃強度に優れ、剛性が高く、低価格の代替材料が望まれていた。
【0003】
一方、低価格の材料としてスチレン系重合体が存在する。スチレン系重合体は、透明性、成形性、剛性に優れた合成樹脂であるところから、家庭用品、電気製品、包装等の成形材料として広く用いられてきた。そして、利用分野が拡大するにつれてスチレン系重合体の衝撃強度向上が強く求められるようになってきた。スチレン系重合体の衝撃強度を向上させるために、ゴム状弾性体を分散粒子として含有するスチレン系重合体、即ちゴム変性スチレン系重合体があり、バランスに優れた透明樹脂として知られている。
本願発明と関連する出願としては特開2001−106258号、特開2000−238878号、特開2000−154257号がある。
【0004】
、ポリスチレンにスチレン−ブタジエンブロック共重合体をブレンドして衝撃強度を向上させる技術も知られている。しかし、このスチレン系重合体組成物は、成形加工時の熱履歴によりスチレン−ブタジエンブロック共重合体が架橋し、いわゆるゲル状物質が生成し、成形品外観を悪化させるという欠点を有している。さらに、このスチレン系重合体組成物は価格が高いという難点もあり、ゴム状弾性体を分散粒子として含有するスチレン系重合体、即ちゴム変性スチレン系重合体があり、スチレン系樹脂の特徴である優れた成形加工性もあいまって広い分野で使用されてきている。
【0005】
これらの透明樹脂は用途に応じて各種加工法により成形加工がなされるが、電子部品や食品等の包装材料に使用される場合、最終製品の経済性,性能を考慮し樹脂材料はシート化,熱成形を経て容器となる加工法が多くみられる。、これらの熱成形加工は予めシート化された樹脂が加熱,引き延ばしにより賦型される加工法で熱板成形,圧空成形,真空成形等いくつかの方法があるが複雑形状成形品や深い成形絞りを要する容器等ではオス型のアクションと真空成形が組合わさったプラグアシストの真空成形がしばし使用されている。
【0006】
透明樹脂を使った真空成形容器では当然ながら良好な透明性をもった成形品が求められるが、上述の性能バランスを満足するゴム変性スチレン系重合体でも良好な賦型品が得られるも、成形時の急激な引き延ばしにより成形品中のゴム粒子が急激な形状変化を引き起こし成形品表面に曇りを起こすことが課題とされてきた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような技術状況の基で、透明で、耐衝撃強度に優れ、外観の良好な真空成形性に優れたシート及びその成形品を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1)多層構成(A:表層,B:中間層,C:裏面層)が以下の成分からなる多層シート及びそれを用いた成形品である。
A)、C)スチレン系単量体単位35〜75質量%及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位65〜25質量%を含有する重合体からなるスチレン系重合体。
B)スチレン単量体単位30〜50質量%とブタジエン単量体単位70〜50質量%からなるゴム状弾性体からなる分散相が1〜20質量部であり、スチレン系単量体単位35〜75質量%及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位65〜25質量%を含有する重合体からなる連続相が99〜80質量部であるゴム変性スチレン系重合体。
【0009】
【発明の実施の形態】
(ゴム状弾性体)
以下に本発明を詳しく説明する。
ゴム状弾性体とは、スチレンとブタジエンを主要な構成成分とするものが好ましく、中でもスチレン−ブタジエンブロック共重合体が好ましい。スチレン−ブタジエンブロック共重合体のスチレン単量体単位とブタジエン単量体単位の重量比は30〜50:70〜50であることが好ましい。ポリスチレン部分の重量平均分子量(Mw)は45,000〜75,000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)は1.20〜1.80であることが好ましい。これらの範囲においてゴム変性スチレン系重合体の優れた透明性を得ることができる。ポリスチレン部分の分子量は、スチレン−ブタジエンブロック共重合体を文献「RUBBERCHEMISTRYAND TECHNOLOGY」、Vol.58、P16(Y.Tanaka,et.al.,1985)に記載の方法でオゾン分解して得たポリスチレンをGPCで測定し、各ピークに対応する分子量を標準ポリスチレンを用いて作成した検量線から求めて算出することができる。
【0010】
(スチレン−ブタジエンブロック共重合体)
スチレン−ブタジエンブロック共重合体は、有機溶媒中で有機リチウム化合物を開始剤としてスチレン単量体とブタジエン単量体を特定の条件下に重合することによって得られる。有機溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素あるいはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等公知の有機溶媒が使用できる。有機リチウム化合物は分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等が使用できる。スチレン−ブタジエンブロック共重合体のポリスチレン部分の重量平均分子量(Mw)は、スチレン単量体とブタジエン単量体の添加量に対する開始剤の添加量割合を調整することにより制御される。スチレン−ブタジエンブロック共重合体のポリスチレン部分の重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)は、酢酸、ステアリン酸のような有機酸、エタノール、ブタノールのようなアルコールあるいは水等の失活剤を、重合途中に使用量あるいは添加時期を調整して添加することにより制御することができる。
【0011】
(スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体)
スチレン系単量体とは、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等を挙げることができるが、好ましくはスチレンである。これらスチレン系単量体は、単独で用いてもよいが二種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体とは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート等があげられるが、好ましくはメチルメタクリレートはn−ブチルアクリレートである。これらの(メタ)アクリル酸エステル系単量体は単独で用いてもよいが二種類以上を併用してもよい。
必要に応じてこれらの単量体と共重合可能なビニル系単量体、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を共重合させることもできる。
【0012】
ゴム変性スチレン系重合体の性能を損なわない範囲で、高級脂肪酸金属塩及び/は高級脂肪酸エステル及び/又はポリエチレンワックスを添加することもできる。透明性の低下を引き起こさない範囲であれば他種のゴム状弾性体を添加することも可能である。
【0013】
(製造方法)
ゴム変性スチレン系重合体、スチレン系重合体の製造には、常用されている塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等を用いることができる。回分式重合法、あるいは連続式重合法のいずれの方法も用いることができる。これらの重合法は、重合開始剤としてアゾビスブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ化合物や、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、エチル−3,3−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブチレート等の有機過酸化物を用いることができる。、分子量調節剤としてt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、4−メチル−2,4−ジフェニルペンテン−1を、、可塑剤としてブチルベンジルフタレート等を必要に応じて添加してもよい。
【0014】
(スチレン系重合体)
シートの表層(A及びC)はスチレン系単量体単位35〜75質量%及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位65〜25質量%を含有する重合体からなるスチレン系重合体であることが好ましい。透明性等の性能を損なわずに少量であればゴム状弾性体を添加することができる。この場合ゴム変性スチレン系重合体と同様の組成となるが、その構成もゴム状弾性体が分散相となり、スチレン系単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含有する重合体が連続相となる。ゴム状弾性体の添加量は3質量部以下が好ましく、連続相は100質量部未満97質量部以上となる。
【0015】
(ゴム変性スチレン系重合体)
ゴム変性スチレン系重合体に含まれるゴム状弾性体は1〜20質量部である。ゴム状弾性体が1質量部未満では優れた衝撃強度を得ることができず、20質量部を越えると透明性、成形性が低下し好ましくない。
ゴム変性スチレン系重合体の連続相を形成するスチレン系単量体単位と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の質量比は35〜75:65〜25であり、好ましくは42〜59:58〜41である。スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の質量比が35〜75:65〜25の範囲外では、ゴム変性スチレン系重合体及びゴム変性スチレン系樹脂組成物の透明性が低下する。スチレン系単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含有する重合体の添加量は90〜80質量部である。
【0016】
多層構成とは異種のシート材料を重ね合わせて作られるものである。シートを製造する方法には特に制限はなく、従来公知の多層シートの製造方法を採用することができる。ラミネートが可能な種々の樹脂成形装置、例えば、カレンダー装置あるいはTダイ押出機でのラミネート融着や表層と中層を同時に押出成形できるフィードブロックを持ったシート押出機等を用いて通常のシート化条件において製造することができる。
【0017】
各構成層の材料には、これまでに説明した本発明を発現する構成以外に酸化防止剤、耐候剤、滑剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、あるいは鉱油等の添加剤を、本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の性能を損なわない範囲で配合してもよい。配合する時期については重合開始前、重合反応途中、重合体の後処理、重合体の造粒、成形、加工等の任意の段階を適宜選べる。
【0018】
シートは成形して各種包装容器に好適に使用することができる。例えば圧空成形、プレス成形、真空成形等がある。なかでも真空成形が好ましい。深い絞り形状では賦型補助が可能なプラグアシストによる成形方式等が多く用いられる。プラグアシストによる成形方式としては、例えばプラグアシストフォーミング、プラグアシストリバースドローフォーミング、プラグアシスト−エアスリップフォーミング等による成形方式が挙げられる。
【0019】
海島構造でゴム補強した透明樹脂は、表面での急激な伸びと急冷による白化現象を引き起こす。A、C層のゴム状弾性体が3重量部を超えると上記の理由から得られた成形品はシート成形品に比べ著しい透明性低下を示すので好ましくない。
【0020】
生産性,経済性からシート生産ではスクラップ材のリターンが一般的に行われる。その際に最終シートの透明性を維持するには基材となる透明スチレン系樹脂(B)と相溶性が良く、屈折率の近い材料を表層A,Cには選定するとよい。25℃における材料Aの屈折率=材料Bの屈折率±0.01、材料Cの屈折率=材料Bの屈折率±0.01とするとよい。屈折率をあわせることによりシート及びその成形品は、表層,基材を分別回収することなくそのまま回収して溶融成形しても透明な成形体を得ることができるので環境にも優しいリサイクルにも適応した透明シートとして用いられる。
【0021】
A、C層は、0.005〜0.05mmの範囲であることが好ましい。0.005mm未満の表層では、シート加工時の多層化で安定した均一構造を得ることが難しく、0.05mmを超えるとゴム分の少ない表層では、ノッチ効果からシートの物性やシートの生産性の低下を引き起こすので好ましくない。
【0022】
中間層には、シートの透明性、強度物性等の要求性能を満足する範囲であれば、異なる樹脂層を適宜追加することも可能である。
【0023】
成形品は、ICマガジンやキャリアテープ等の産業部品包装容器やアイスクリーム、飲料等のカップといった食品包装容器など真空成形を行う多岐にわたった製品分野で好適に用いられる。
シートおよび成形品は電子部品包装容器にも好適に使用することができる。
電子部品包装容器とは、電子部品を包装するための容器であり、真空成形トレー、キャリアテープ(エンボスキャリアテープ)等がある。それらはシートを真空成形、圧空成形、プレス成形することにより製造することができる。本発明のシートはエンボスキャリアテープに特に好適に用いることができる。
電子部品としては特に限定されない。例えばIC、LED(発行ダイオード)、抵抗、液晶、コンデンサー、トランジスター、圧電素子レジスター、フィルター、水晶発振子、水晶振動子、ダイオード、コネクター、スイッチ、ボリュウム、リレー、インダクタ等がある。ICの形式は特に限定されない。例えばSOP、HEMT、SQFP、BGA、CSP、SOJ、QFP、PLCC等がある。
電子部品包装体とは電子部品を電子部品包装容器により包装したものを意味する。電子部品は真空成形トレー、キャリアテープ(エンボスキャリアテープ)等の電子部品包装容器に収納され使用に供される。キャリアテープでは電子部品を収納した後にカバーテープにより蓋をしたものを含む。
【0024】
【実施例】
次に実施例をもって本発明を更に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。尚、以下記載中に「部」,「%」とあるのはそれぞれ「質量部」,「質量%」を意味する。
【0025】
最初に、実施例及び比較例で使用したスチレン系重合体の製造について述べる。
【0026】
ゴム変性スチレン系重合体−1
スチレン58.5部、メチルメタクリレート36.0部及びn−ブチルアクリレート5.5部のモノマー混合物に、スチレン−ブタジエンブロック共重合体A(スチレン単量体単位含量40%、ポリスチレン部分のMw62,500、Mw/Mn=1.52)を10.0部溶解し、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.04部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.2部を添加し、撹拌しながら90℃で8時間加熱した後、冷却して塊状重合を停止した。ついで該反応混合液に新たに重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.2部を添加した。純水200部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.001部、第三リン酸カルシウム0.5部を懸濁安定剤として添加し、撹拌しながら混合液を分散させた。そしてこの混合液を100℃で2時間、115℃で3.5時間、130℃で2.5時間加熱重合させた。反応終了後、洗浄、脱水ならびに乾燥してビーズ状のゴム変性スチレン系重合体(共重合体−1)を得た。次に得られたビーズ状の重合体を2軸押出機(東芝機械社製TEM−35B)にてシリンダー温度220℃で押出を行いペレット化したゴム変性スチレン系重合体(P1)を得た。P1の組成を表1に示した。その材料物性を表2に示した。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
スチレン系重合体−2
スチレン54部、メチルメタクリレート46.0部のモノマー混合物に、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.04部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.2部を添加し、撹拌しながら90℃で8時間加熱した後、冷却して塊状重合を停止した。以下P1作成時と同様に操作し、ビーズ状の変性スチレン系重合体,更に2軸押出機(東芝機械社製TEM−35B)にてシリンダー温度220℃で押出を行うことでペレット化したスチレン系重合体(P2)を得た。スチレン系重合体(P2)を得た。得られたP2の組成を表1に、その物性を表2に示した。
【0030】
スチレン系重合体−3
MS樹脂デンカTXポリマー 商品名:TX−400−300LをP3として試験に使用した。P3の組成を表1に、その物性を表2に示した。
【0031】
ゴム変性スチレン系重合体−4
ブタジエン39部、スチレン26部、純水150部、オレイン酸カリウム0.5部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.13部、ロンガリット0.03部、硫酸第一鉄0.002部、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム塩0.003部ピロリン酸ナトリウム0.1部、t−ドデシルメルカプタン1.0部を撹拌機付きオートクレーブに仕込み温度45℃にて17時間重合した。得られたスチレン−ブタジエンゴムラテックスの数平均粒子径は0.08umであった。ラテックスにナトリウムスルホサクシネート0.005部を加えて安定化させた。このラテックスに撹拌下で塩化水素水溶液を加えることでラテックス粒子を凝集肥大化させ、数平均粒子径0.2umのゴムラテックスを得た。このラテックスにスチレン19.5部、MMA13.5部、n−ブチルアクリレート2部、ジビニルベンゼン0.04部、t−ブチルフェノール0.5部、ジラウリルチオプロピオネート0.5部を添加した後、塩酸により共重合体を析出し、中和洗浄、脱水乾燥して粉末状の共重合体−2を得た。次に、共重合体1と共重合体−2とを80/20の比率で均一混合し2軸押出機(東芝機械社製TEM−35B)にてシリンダー温度220℃で押出を行うことでペレット化したゴム変性スチレン系重合体(P4)を得た。得られたP4の組成を表1に、その物性を表2に示した。
【0032】
スチレン系重合体−5
ポリスチレン樹脂(GPPS)デンカスチロール 商品名:MW−1−301をP5として試験に使用した。P5の組成を表1に、その物性を表2に示した。
【0033】
次に多層シートの作成について述べる。
上述のスチレン系樹脂(P1〜P5)をサンプルとして、T−ダイ方式の多層押出機を用い各構成の多層シートを作成した。尚、多層押出機はメインの中芯用が65mmφのフルフライトスクリューの単軸押出機1台,表層用に30mmφのフルフライトスクリューの単軸押出機を2台からなり各々の溶融樹脂がフィードブロックで合流多層化される試験押出機を使用した。尚、シート化における各シリンダー温度は230℃にて運転、成形した。
【0034】
真空成形
試作したシートはプラグアシスト方式の浅野製作所製の真空成形機を使って図1の形状に成形した。尚、シートはA層側をプラグ側となるよう真空成形機に取り付け、成形条件はシート加熱によりシート表面が120℃に達した時点で真空成形を開始した。
【0035】
エンボスキャリアテープ成形
試作シートは幅27mmにスリットし、EDG社製のエンボスキャリアテープ圧空成形機を用いてエンボスキャリアテープ(W24mm,P16mm,A011.25mm,B014.8mm,K05.8mm)の成形を行った。
【0036】
リサイクル試験
試作したシートは粉砕機を用い押出機に供給可能なサイズまで粉砕し、多層シートを作成時と同様な条件で65mmφのフルフライトスクリュータイプの押出機のみ運転し、0.8mm厚のシートを作成した。尚、シリンダー温度は230℃で運転、成形した。
○:リサイクル性良好
×:リサイクル性不良(白濁)
【0037】
各測定方法及び判定基準
ペレットをインラインスクリュー射出成形機(東芝社製IS−50EP)にてシリンダー温度230℃で射出成形した試験片を試料に用いて求めた。但し、MFRは上記ペレットを用いた。各組成値及び各物性値の測定方法は次の通りである。
(1)アイゾット衝撃強度:ASTMD256に準拠して、12.7×64×6.4mm厚の試験片に深さ2.54mmのノッチを入れ、打撃速度3.46m/秒で測定した。
(2)MFR:JIS K7210に準拠し、温度200℃、荷重5Kgfで測定した。
(3)曇度:ASTM D1003に準拠し、30×90×2mm厚の試験片を用いて測定した。
(4)屈折率:30×90×2mm厚の試験片を用いて測定した。(25℃雰囲気にて測定)
(5)組成確認:重合体の組成は熱分解ガスクロマトグラフィーにより標準物質を用いて作成した検量線を使い、各含有成分の定量を行った。
(6)肉厚測定:全体肉厚はマイクロメータにより測定した。、多層シートの各層の厚みは、シート断面を砥粒を使って平滑化したのちに光学顕微鏡で観察し各層の厚みを算出した。
(7)折り曲げ試験:シート押出によって作ったサンプルシートを引き取り方向、反引き取り方向の2方向に折り曲げを行いシートの割れの発生を目視観察した。
○:良好(割れなし)
×:不良(割れあり)
(8)インパクト試験:真空成形品を図2の様に置き、成形品の底面中央部(A部)に500gの錘(先端10R)を1mの高さから落とし、成形品の割れを観察した。
○:良好(割れなし)
×:不良(割れあり)
(9)カップ成形品の透明性:目視により測定した。
○:良好(曇りなし)
×:不良(表面曇りあり)
(10)ゴム変性スチレン系重合体のゴム状弾性体の量:赤外吸収スペクトル法により予め求めたゴム状弾性体のスチレンとブタジエンの重量比と赤外吸収スペクトル法により求めたゴム変性スチレン系重合体中のブタジエンの重量比から、ゴム変性スチレン系重合体中のゴム状弾性体の量を求めた。赤外吸収スペクトルは日本バイオラッドラボラトリーズ社製 FTS−575C型を用いて測定した。
(11)ゴム変性スチレン系重合体及びゴム非含有スチレン系重合体中の連続相の構成単位:ゴム変性スチレン系重合体及びゴム非含有スチレン系重合体をトルエンに溶解後、遠心分離を行い、上澄み液を分取しメタノールを加えスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を沈殿させた。この沈殿物を乾燥し、これを重クロロフォルムに溶解して2%溶液に調整し測定試料とし、FT−NMR(日本電子製 FX−90Q型)を用いて13Cを測定し、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系重合体のピーク面積から連続相の構成単位を求めた。
(12)エンボスキャリアテープ成形性:成形により得られたエンボスキャリアテープの賦形性を目視により評価した。
◎:賦形優秀
○:賦形良好
×:賦形不十分
(13)キャリアテープ成形品の透明性:ヒーター温度200℃で圧空成形したエンボスキャリアテープ(W24mm,P16mm,A011.25mm,B014.8mm,K05.8mm)の底面部の透明性をヘーズメーターを用いて評価した。
○:良好(成形前シートからの底面部のヘーズの増加が3未満)
×:不良(成形前シートからの底面部のヘーズの増加が3以上)
【0038】
実施例1〜実施例10
スチレン系共重合体P1〜P4の材料を用い、表3、表4の層構成となるシートを作成した。また、得られたシートは真空成形機により図1のカップ形状品の成形、圧空成形機によりエンボスキャリアテープ成形を行い、それらシート,成形品の評価結果を表3、表4に示した。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
比較例1〜比較例8
スチレン系共重合体P1,P2,P4,P5の材料を用い表5、表6の層構成となるシートを作成した。また、得られたシートは真空成形機により図1のカップ形状品の成形、圧空成形機によりエンボスキャリアテープ成形を行い、それらシート、成形品の評価結果を表5、表6に示した。
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、真空成形を経ても外観(透明性)悪化が少なく、強度物性に優れ、且つ経済性,リサイクル性に優れた透明シートを得ることができる。得られた真空成形性に優れた透明シートは、特に食品包装容器、電子部品包装容器に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で真空成形された成形品の断面図を示す。
【図2】実施例で真空成形された成形品のインパクト試験の概略図を示す。
【符号の説明】
A 成形品の底面中央部
Claims (8)
- 多層構成(A:表層,B:中間層,C:裏面層)が以下の成分からなり、A)およびC)の厚みが0.03〜0.05mm、B)の厚みが0.5〜1.75mmである熱成形用の多層シート。
A)、C)スチレン系単量体単位35〜75質量%及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位65〜25質量%を含有する重合体からなるスチレン系重合体。
B)スチレン単量体単位30〜50質量%とブタジエン単量体単位70〜50質量%からなるゴム状弾性体からなる分散相が1〜20質量部であり、スチレン系単量体単位35〜75質量%及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位65〜25質量%を含有する重合体からなる連続相が99〜80質量部であるゴム変性スチレン系重合体。 - 表層と裏面層のスチレン系重合体が、スチレン単量体単位30〜50質量%とブタジエン単量体単位70〜50質量%からなるゴム状弾性体からなる分散層を3質量部以下と、スチレン系単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含有する重合体の連続相を100質量部未満97質量部以上とを含有する請求項1のシート。
- 25℃における材料Aの屈折率=材料Bの屈折率±0.01、材料Cの屈折率=材料Bの屈折率±0.01である請求項1または請求項2に記載のシート。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシートを用いた成形品。
- 食料品包装容器である請求項4に記載の成形品。
- 電子部品包装容器である請求項4に記載の成形品。
- エンボスキャリアテープである請求項4に記載の成形品。
- ソフトトレーである請求項4に記載の成形品。
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