JP4352706B2 - 動力伝達に適した樹脂歯車 - Google Patents

動力伝達に適した樹脂歯車 Download PDF

Info

Publication number
JP4352706B2
JP4352706B2 JP2003005903A JP2003005903A JP4352706B2 JP 4352706 B2 JP4352706 B2 JP 4352706B2 JP 2003005903 A JP2003005903 A JP 2003005903A JP 2003005903 A JP2003005903 A JP 2003005903A JP 4352706 B2 JP4352706 B2 JP 4352706B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
gear
polyamide
power transmission
water
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2003005903A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2004218712A (ja
Inventor
俊一 矢部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NSK Ltd filed Critical NSK Ltd
Priority to JP2003005903A priority Critical patent/JP4352706B2/ja
Publication of JP2004218712A publication Critical patent/JP2004218712A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4352706B2 publication Critical patent/JP4352706B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Gears, Cams (AREA)

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、動力伝達に適した樹脂歯車に関し、特に電動パワーステアリング装置のパワーアシスト部を構成する歯車減速機構等に使用される歯車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用の電動パワーステアリング装置では、電動モータに比較的高回転、低トルクのものが使用されるため、電動モータとステアリングシヤフトとの間に歯車減速機構が組み込まれている。歯車減速機構としては、平歯車その他の歯車を使用した歯車減速機構も知られているが、一組で大きな減速比が得られる等の理由から、ウォームとウォームホイールとから構成される周知のウォーム歯車減速機構を使用するものが一般的である。
【0003】
このようなウォーム歯車減速機構(以下、単に減速ギアという)では、電動モータの回転軸に連結される駆動歯車であるウォームと、このウォームに噛み合うウォームホイールから構成されている。
【0004】
このような減速ギアでは、ウォームとウォームホイールの両方を金属製にすると、ハンドル操作時に歯打ち音や振動音等の不快音が発生するという不都合があるので、この対策として、従来は、ウォームを金属製とした場合は、ウォームホイールとして、金属製のハブ、即ち芯金の外周部に合成樹脂材からなるブランク円板を一体に形成し、このブランク円板の円周部に切削その他の手段で歯を形成して樹脂製の歯部が一体形成された合成樹脂製の歯部を備えたウォームホイールを使用し、歯打ち音や振動音等の不快音の発生を抑えていた。
【0005】
上記樹脂製の歯部の材料としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等のベース樹脂に、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維補強材を配合した材料のほか、補強材を含有しないMC(モノマーキャスト)ナイロン、ポリアミド6、ポリアミド66等も使用されている。
【0006】
寸法安定性やコストを考慮した場合は、繊維補強材を含有しないMCナイロンが使用されるほか、繊維補強材としてガラス繊維を含有したポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等が使用される(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特公平6−60674号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した芯金の外周部に一体に形成した樹脂部を構成する合成樹脂材であるポリアミド系樹脂は、耐疲労性に優れるものの、吸水性が高く、水分を吸収してウォームホイールのギアの歯部分が膨張し、製造初期にはウォームとウォームホイールとの間に存在していた隙間が無くなったり、更に膨張してウォームを圧迫する可能性があった。
【0009】
このようにウォームホイールが膨張すると、ウォームとウォームホイールとの間の摩擦抵抗が大きくなってハンドル操作が重くなったり、ギア部の圧迫や摩擦抵抗の増大によりギア部が摩耗或いは破損して、電動パワーステアリング装置が機能しなくなってしまうという不都合が発生する。
【0010】
この発明は、上記課題を解決することを目的とするもので、予めポリアミド系樹脂で構成される樹脂部に吸水処理を施し、更なる吸水による寸法変化を抑制して、ギア部が摩耗或いは破損するおそれのない信頼性の高い電動パワーステアリング装置の歯車を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を解決するもので、請求項1の発明は、動力伝達に適した樹脂歯車であって、前記樹脂歯車は、ポリアミド樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物からなる樹脂部を金属製ハブの外周に一体的に成形した後に吸水処理し、該吸水処理された樹脂部に噛合用の歯を切削加工して構成された歯車であることを特徴とする動力伝達に適した樹脂歯車である。
【0012】
請求項2の発明は、動力伝達に適した樹脂歯車であって、前記樹脂歯車は、ポリアミド樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物からなる樹脂部を単独で吸水処理し、該吸水処理された樹脂部を金属製ハブの外周に圧入して一体的に成形した後、該樹脂部に噛合用の歯を切削加工して構成された歯車であることを特徴とする動力伝達に適した樹脂歯車である。
【0013】
そして、前記吸水処理された樹脂部を構成するポリアミド樹脂は、吸水率が樹脂重量に対して2乃至5重量%になるように吸水処理されているものとする。
【0014】
そして、前記金属製ハブと樹脂部との間には、片末端にエポキシ基或いはアミノ基のいずれかを有するシランカップリング剤からなる接着層を設けるとよい。
【0015】
そして、前記歯車は、ウォームホイール、はすば歯車、平歯車、傘歯車またはハイポイドギアのいずれであってもよい。
【0016】
そして、前記ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46から選ばれる少なくとも一つのポリアミド樹脂とすることができる。
【0017】
但し、シランカップリング剤からなる接着層を形成した場合には、金属製ハブに防錆処理を施し、前記樹脂部を圧入後に吸水処理を行ってもよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、この発明の動力伝達に適した樹脂歯車を減速機構に適用した電動パワーステアリング装置10の構成の一例を説明する正面図で、コラム式の電動パワーステアリング装置である。図1において、11は舵輪軸、12は舵輪軸ハウジング、13は電動モータ、20はラック・ピニオン式運動変換機構を示す。
【0020】
舵輪軸11は、図1では図示されていないが、上部舵輪軸11aと下部舵輪軸11bとから構成され、舵輪軸11は舵輪軸ハウジング12の内部に軸心回りに回転自在に支承されており、舵輪軸ハウジング12は、車室内部の所定位置に下部を前方に向けて傾斜した状態に固定されている。また、上部舵輪軸11aの上端には、図示されていない舵輪が固定されている。
【0021】
さらに、上部舵輪軸11aと下部舵輪軸11bとは、図示されていないトーションバーにより結合されており、舵輪から上部舵輪軸11aを経て下部舵輪軸11bに伝達される操舵トルクが、トーションバーにより検出され、検出された操舵トルクに基づいて電動モータ13の出力が制御される。
【0022】
ラック・ピニオン式運動変換機構20は、長手方向を車両の左右方向として車両前部のエンジンルーム内にほぼ水平に配置され、軸方向に移動自在なラック軸21と、ラック軸21の軸心に対して斜めに支承されてラック軸21の歯部に噛合する歯部を備えたピニオンを含むピニオン軸22、及びラック軸21とピニオン軸22を支承する筒状のラック軸ケース23とから構成される。
【0023】
ピニオン軸22と下部舵輪軸11bの下部とは、2個の自在継手25及び26で連結されている。また、下部舵輪軸11bの中間部分には後述するウォーム歯車減速機構30が配置され、電動モータ13から下部舵輪軸11bに対して操舵補助力が供給されるように構成されている。
【0024】
図2は、上記した電動パワーステアリング装置10のウォーム歯車減速機構30の構成を示す部分断面図で、31はウォームホイール、32はウォームホイール31に噛合するウォーム、33はギアケースである。ウォーム32はその両端にウォーム軸32a、32bが一体に形成されており、ウォーム軸32a、32bはそれぞれギアケース33に装着された玉軸受34a、34bにより回転自在に支承されている。また、ウォーム軸32bは、電動モータ13の駆動軸13aにスプライン、或いはセレーション結合している。
【0025】
ウォームホイール31のハブ、即ち芯金42は下部舵輪軸11bに結合し、電動モータ13の回転はウォーム32、ウォームホイール31を経て下部舵輪軸11bに伝達される。
【0026】
図3は、この発明の実施の形態のウォーム歯車減速機構30のウォームホイール31の構成を示す斜視図で、ウォームホイール31は、金属製のハブ、即ち芯金42の外周面に、適宜クロスローレット加工を施すなどの加工を行い、その加工面に合成樹脂で一体形成した円筒形の樹脂部43を設けたもので、樹脂部43の外周面にギア歯44を形成して構成されている。一方、ウォーム32は従来のウォームと同じく金属製のものとする。
【0027】
ウォームホイール31の樹脂部43は、耐疲労性に優れるポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46をベース樹脂とすることが好ましい。また、これらのベース樹脂に、他のポリアミド樹脂や、ウォームとウォームホイールとの間に一般的に使用される低極性基油からなるグリース基油への濡れ性を改善する酸無水物で変性されたポリオレフィン樹脂などの樹脂を組み合わせたり、耐衝撃性を改善するエチレンプロピレン非共役ジエンゴム(EPDM)等のゴム状物質を組み合わせてもよい。
【0028】
これらのベース樹脂は、樹脂単独でも一定以上の耐久性を示し、ウォームホイール31の相手材である金属製のウォーム32の摩耗に対して有利に働き、減速ギアとして十分に機能する。しかしながら、より過酷な使用条件で使用されるとギア歯44が摩耗したり破損することも予想されるので、信頼性を高めるために補強材を配合することが好ましい。
【0029】
補強材としては、ガラス繊維(GF)、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等が好ましく、前記したポリアミド樹脂との接着性を考慮してシランカップリング剤で表面処理したものが更に好ましい。また、これらの補強材は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0030】
衝撃強度を考慮すると、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状物を配合することが好ましく、さらに、ウォーム32の損傷を考慮すると、ウィスカー状物を繊維状物と組み合わせて配合することが好ましい。混合使用する場合の混合比は、繊維状物及びウィスカー状物の種類により異なり、衝撃強度やウォーム32の損傷を考慮して適宜選択するものとする。
【0031】
これ等の補強材は、樹脂全体の5〜40重量%、特に10〜30重量%の配合比率とすることが好ましい。補強材の配合比率が5重量%未満の場合には、機械的強度の改善が少なく好ましくない。また、補強材の配合比率が40重量%を越える場合は、ウォーム32を損傷し易くなり、ウォーム32の摩耗が促進されて減速ギアとしての耐久性が不足する可能性があり、好ましくない。
【0032】
更に、ベース樹脂には、成形時及び使用時の熱による劣化を防止するために、ヨウ化物系熱安定化剤やアミン系酸化防止剤を、それぞれ単独あるいは併用して添加することが好ましい。
【0033】
ウォームホイール31の樹脂部43は、補強材を除いたほぼ樹脂成分のみの重量(これを100重量%とする)に対して、吸水処理により、水分が2〜5重量%になるように制御している。
【0034】
図4は、23℃、相対湿度60%及び80%の環境に放置した場合の、非強化のポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド46(PA46)の平衡水分量(飽和水分量)を示す図である。
【0035】
図4に示すように、平衡水分量は、相対湿度が高くなると大きくなる傾向にある。また、ポリアミドの平衡水分量は、分子構造中のアミド結合の比率に関係があり、アミド結合の多い順番になっている(PA46>PA6>PA66)。
【0036】
したがって、それに伴う寸法変化も、この順番に対応しており、ポリアミド46が最も大きいので、吸水処理による水分量も高めの3〜5重量%にすることが好ましい。
【0037】
吸水処理による水分量が2重量%未満の場合は、電動パワーステアリング装置の実使用時における吸水寸法変化を十分に相殺しきれず、膨潤による不具合を抑制するのが難しい。それに対して吸水処理による水分量が5重量%を越える場合は、膨潤による寸法変化を抑制する効果は高いことが予想されるが、実使用時に高温に晒された場合、逆に水分が抜けることも想定され、それによって寸法が小さくなり、伝達効率が低下する可能性もあり好ましくない。
【0038】
吸水処理としては、別体で成形した樹脂部(切削代を残した外径部に歯形状を有するものが好ましい)、あるいは芯金をコアにしたインサート成形樹脂部一体品を、水中あるいは高湿度に保った恒温恒湿槽中(例えば温度80℃、相対湿度90%)に放置する方法がある。
【0039】
樹脂部43の吸水処理を行う場合において芯金42と一体で吸水処理するときは、錆の発生を防止するために、露出した芯金42の表面へのグリースの塗布、脱離可能なマスキング剤の塗布、芯金42の表面への防錆メッキ処理等を行う必要がある。グリースの塗布や脱離可能なマスキング剤の塗布は、芯金42と樹脂部43との間に水分が入り込むのを防止して、継ぎ目より樹脂部43にかかるところまで行うとより好ましい。
【0040】
また、芯金42と一体で吸水処理を行うと、錆の他に、樹脂部との間に僅かな隙間が発生するが、この隙間が樹脂部43のギア歯44の耐久性に悪影響を及ぼすことも想定されるので、吸水処理は樹脂部43だけを単独で行う方法が好ましい。
【0041】
単独で吸水処理した樹脂部43は、芯金42に圧入(樹脂部43を恒温槽で加熱して膨張させた状態で圧入)した後、樹脂部43のギア歯44の切削加工を行う。
【0042】
樹脂部43を芯金42に圧入する前に、芯金42にシランカップリング剤を塗布し、圧入後高周波加熱を行なって、芯金42の外周部と樹脂部43の内周部との間に接着層を形成すると、更なる吸水による寸法変化を抑制することができ、より効果的である。高周波加熱を行なうと、芯金42の外周部に隣接する樹脂部43の内周部(界面)のみが溶融し、圧入によって発生した残留応力の除去を併せて行うこともできる。
【0043】
金属製のハブ、即ち芯金42の外周部にシランカップリング剤からなる接着層を形成する場合は、芯金42に防錆処理(例えばクロムメッキ)を施してからシランカップリング剤の接着層を形成し、ここに樹脂部43を圧入後に吸水処理を行ってもよい。
【0044】
高周波加熱時に、芯金42の温度を200℃〜450℃に加熱して行うと、接着力が強固になる。加熱雰囲気は、大気中でもよいが、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で行うと、樹脂等の酸化劣化が抑制でき、好ましい。
【0045】
シランカップリング剤は、その化学構造の一端に加水分解性基であるアルコキシ基を有しており、このアルコキシ基が加水分解して水酸基に変化し、この水酸基が金属表面の水酸基と脱水縮合を起こすことにより、金属との間で高い結合力を持つ共有結合を形成する。また、他端には有機官能基を有しており、この有機官能基がポリアミド樹脂の分子構造中のアミド結合と結合する。そして、これらの結合により芯金42と樹脂部43とが強固に結合される。
【0046】
なお、有機官能基としては、アミノ基、エポキシ基が好適であり、このような有機官能基を有するシランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。特に、有機官能基としてエポキシ基をもつものは、アミド結合との反応性が高く、より好ましい。
【0047】
接着層を芯金42の外周部とより強固に結合させるためには、芯金42の外周面に表面水酸基を増やすのがよいが、このためには酸素プラズマ等による表面処理を施すと、更に好適である。
【0048】
また、接着力の増加を含めて、芯金42と樹脂部43との密着性の向上と芯金42との境界部の滑り抜け防止を目的にして、芯金42の外周面には、予めショットブラストやローレット加工等を施しておいてもよく、特にローレット加工が好ましい。ローレット加工のV字状の溝の深さは0.2〜0.8mm、特に0.3〜0.7mmが適当である。
【0049】
以上、本発明の実施の形態として、円筒ウォームギアのウォームホイールを例示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、歯車形状として、図6に示す平歯車、図7に示すはすば歯車、図8に示す傘歯車、図9に示すハイポイドギア等が可能である。
【0050】
次に、ウォームホイールの複数の実施例及び複数の比較例について、寸法安定性、及び耐久性についての評価結果を説明する。
【0051】
(実施例1)
芯金:溝の深さ0.5mmのローレット加工を施した外径65mm、幅16mmのスチール鋼(材料記号S45C)。脱脂処理の後、接着層形成を目的としてエポキシ基を有するシランカップリング剤であるγ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(日本ユニカー(株)製「A−187」)の10重量%メタノール溶液に浸漬後、大気中で乾燥してシランカップリング剤の被膜を形成した。
【0052】
樹脂部:使用樹脂はポリアミド66(GF30重量%含有、宇部興産(株)製UBEナイロン2020GU6、Cu系添加剤含有)。外径部に切削代を残したはすば形状を有し、内径64mm、外径83mm、幅15.5mmの寸法の樹脂部を別体で射出成形で製作し、これを温度80℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に入れ、吸水処理を行なった(吸水量:全重量に対して1.54重量%、樹脂重量に対して2.2重量%)。
【0053】
高周波融着:吸水処理を行なった樹脂部を、温度140℃で20分加熱し、樹脂部を膨張させてから芯金に圧入した。その後、芯金温度が350℃に上昇するまでアルゴンガス中で高周波加熱して芯金に樹脂部を融着(接着)し、水中に入れて急冷した。その後、樹脂部に歯を切削加工し、最終的にウォームホイールに仕上げた。最終加工後の樹脂部の水分量は加熱により多少減少し、樹脂重量に対して2.0重量%であった。
【0054】
(実施例2)
実施例1と殆ど同じであり、使用樹脂を以下のものに変更した。
【0055】
使用樹脂:ポリアミド6(GF30重量%含有、宇部興産(株)製UBEナイロン1015GU6、Cu系添加剤含有)。高周波融着も実施。最終加工後の樹脂部の水分量は樹脂重量に対して2.5重量%。
【0056】
(実施例3)
実施例1と殆ど同じであり、使用樹脂を以下のものに変更した。
【0057】
使用樹脂:ポリアミド46(非強化、DSM JSRエンジニアリングプラスチックス(株)製スタニールTW341、熱安定剤含有)。高周波融着も同様に実施した。最終加工後の樹脂部の水分量は樹脂重量に対して4.5重量%。
【0058】
(実施例4)
実施例1とほぼ同じ(使用樹脂、水分量も同じ)。相違点は、シランカップリング剤の塗布なし。高周波加熱を実施し、圧入による残留応力を除去。
【0059】
(実施例5)
実施例3とほぼ同じ(使用樹脂、水分量も同じ)。相違点は、シランカップリング剤の塗布なし。高周波加熱を実施し、圧入による残留応力を除去。
【0060】
(比較例1)
実施例1と同じ芯金を使用し、芯金をコアにして樹脂部を射出成形機でインサート成形。使用樹脂:実施例1と同じ。最終加工後の樹脂部の水分量:樹脂重量に対して0.2重量%(大気中で放置)。
【0061】
(比較例2)
実施例1と同じ芯金を使用し、芯金をコアにして樹脂部を射出成形機でインサート成形。使用樹脂:実施例2と同じ。最終加工後の樹脂部の水分量:樹脂重量に対して0.2重量%(大気中で放置)。
【0062】
(比較例3)
実施例1と同じ芯金を使用し、芯金をコアにして樹脂部を射出成形機でインサート成形。使用樹脂:実施例3と同じ。最終加工後の樹脂部の水分量:樹脂重量に対して0.3重量%(大気中で放置)。
【0063】
(比較例4)
実施例1と殆ど同じであり、吸水処理、高周波融着も同様に実施した。最終加工後の樹脂部の水分量は樹脂重量に対して1.0重量%。
【0064】
(比較例5)
実施例3と殆ど同じであり、吸水処理、高周波融着も同様に実施した。最終加工後の樹脂部の水分量は樹脂重量に対して1.0重量%。
【0065】
(比較例6)
実施例3と殆ど同じであり、吸水処理、高周波融着も同様に実施した。最終加工後の樹脂部の水分量は樹脂重量に対して7.0重量%。
【0066】
図5は上記した実施例1乃至4及び比較例1乃至6についての、寸法安定性及び耐久性の評価結果を説明する図である。
【0067】
まず、寸法安定性については、上記実施例1乃至4及び比較例1乃至6について、以下の環境条件A及びBの下に放置し、70時間及び300時間経過後のギアの外径寸法の変化量を測定した。いずれの条件においても、変化量が40μm以下を合格として「O」で表示、40μmを越えるものを不合格として「X」で表示した。
【0068】
条件A:温度60℃、相対湿度90%
条件B:温度80℃、相対湿度90%
また、耐久性については、上記実施例1乃至4及び比較例1乃至6を、実際の電動パワーステアリング装置に組み込み、以下の環境条件C、D、E、Fにて操舵操作を繰り返して耐久性を判定した。いずれの条件においても、10万回の操舵操作に耐えることができたギアを合格として「O」で表示、10万回の操舵操作に耐えられなかったギアを不合格として「X」で表示、10万回の操舵操作に耐えることができたが効率が10%以上低下したギアを効率低下として「Δ」として示した。
【0069】
条件C:温度30℃、相対湿度50%
条件D:温度50℃、相対湿度90%
条件E:温度80℃、相対湿度50%
条件F:温度80℃、相対湿度90%
図5に示すように、芯金42の外周部と樹脂部43の内周部との間に接着層を設け、水分調整を行った実施例1〜3は、最も寸法安定性に優れ、それに伴って高温度高湿度の過酷な環境の下でも耐久性に優れていることが分かった。
【0070】
水分調整のみを行った実施例4、5は寸法安定性がやや劣り、高湿度環境ではより高温になるほど寸法の変化が大きくなり、耐久性が低下した。また、水分量が5%を越えている比較例6は、吸水による寸法変化は相殺され、問題はないものの、高温度低湿度で使用すると水分量が低下し、寸法収縮により効率が低下することが分かった。
【0071】
以上説明した実施の形態は、この発明の動力伝達に適した樹脂歯車を電動パワーステアリング装置の減速機構に適用した例で説明したが、この発明に係る歯車は、電動パワーステアリング装置の減速機構ばかりでなく、用途にかかわりなく歯車機構一般に適用できることは言うまでもない。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明は、動力伝達に適した樹脂歯車であって、歯車の樹脂部をポリアミド樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物で構成し、吸水率が樹脂重量に対して2乃至5重量%になるように吸水処理したものであるから、ポリアミド樹脂の優れた耐疲労性などの耐久性を維持しつつ、吸水による寸法変化を抑制し、寸法安定性に優れた信頼性の高い動力伝達に適した樹脂歯車を提供することができる。
【0073】
また、歯車の金属製ハブと樹脂部との間に、片末端にエポキシ基或いはアミノ基のいずれかを有するシランカップリング剤からなる接着層を設けることにより、更なる吸水による寸法変化を抑制することができる。これにより、吸水による寸法変化のために使用が困難であった、最も耐疲労性に優れた非強化ポリアミド46樹脂の使用も可能になるなど、従来の樹脂歯車からは得られない顕著な作用効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を実施するに適した電動パワーステアリング装置の構成の一例を説明する正面図。
【図2】図1に示す電動パワーステアリング装置のウォーム歯車減速機構の構成を示す部分断面図。
【図3】ウォーム歯車減速機構のウォームホイールの構成を示す斜視図。
【図4】23℃、相対湿度60%及び80%の環境に放置した場合の、非強化のポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド46(PA46)の平衡水分量(飽和水分量)を示す図。
【図5】実施例1乃至4及び比較例1乃至6についての、寸法安定性及び耐久性の評価結果を説明する図。
【図6】本発明が適用可能な歯車の例示としての平歯車の外観を示す図。
【図7】本発明が適用可能な歯車の例示としてのはすば歯車の外観を示す図。
【図8】本発明が適用可能な歯車の例示としての傘歯車の外観を示す図。
【図9】本発明が適用可能な歯車の例示としてのハイポイドギアの外観を示す図。
【符号の説明】
10 電動パワーステアリング装置
11 舵輪軸
11a 上部舵輪軸
11b 下部舵輪軸
12 舵輪軸ハウジング
13 電動モータ
13a 駆動軸
20 ラック・ピニオン式運動変換機構
21 ラック軸
22 ピニオン軸
23 ラック軸ケース
25、26 自在継手
30 ウォーム歯車減速機構
31 ウォームホイール
32 ウォーム
32a、32b ウォーム軸
33 ギアケース
34a、34b 玉軸受
42 ハブ(芯金)
43 樹脂部
44 ギア歯

Claims (6)

  1. 動力伝達に適した樹脂歯車であって、
    前記樹脂歯車は、ポリアミド樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物からなる樹脂部を金属製ハブの外周に一体的に成形した後に吸水処理し、該吸水処理された樹脂部に噛合用の歯を切削加工して構成された歯車であること
    を特徴とする動力伝達に適した樹脂歯車。
  2. 動力伝達に適した樹脂歯車であって、
    前記樹脂歯車は、ポリアミド樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物からなる樹脂部を単独で吸水処理し、該吸水処理された樹脂部を金属製ハブの外周に圧入して一体的に成形した後、該樹脂部に噛合用の歯を切削加工して構成された歯車であること
    を特徴とする動力伝達に適した樹脂歯車。
  3. 前記吸水処理された樹脂部を構成するポリアミド樹脂は、吸水率が樹脂重量に対して2乃至5重量%になるように吸水処理されていること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の動力伝達に適した樹脂歯車。
  4. 前記金属製ハブと樹脂部との間に、片末端にエポキシ基或いはアミノ基のいずれかを有するシランカップリング剤からなる接着層が設けられていること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の動力伝達に適した樹脂歯車。
  5. 前記歯車は、ウォームホイール、はすば歯車、平歯車、傘歯車またはハイポイドギアであること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の動力伝達に適した樹脂歯車。
  6. 前記ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46から選ばれる少なくとも一つのポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の動力伝達に適した樹脂歯車。
JP2003005903A 2003-01-14 2003-01-14 動力伝達に適した樹脂歯車 Expired - Lifetime JP4352706B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003005903A JP4352706B2 (ja) 2003-01-14 2003-01-14 動力伝達に適した樹脂歯車

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003005903A JP4352706B2 (ja) 2003-01-14 2003-01-14 動力伝達に適した樹脂歯車

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2004218712A JP2004218712A (ja) 2004-08-05
JP4352706B2 true JP4352706B2 (ja) 2009-10-28

Family

ID=32896446

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003005903A Expired - Lifetime JP4352706B2 (ja) 2003-01-14 2003-01-14 動力伝達に適した樹脂歯車

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4352706B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6248210B2 (ja) * 2014-09-30 2017-12-13 積水化成品工業株式会社 樹脂発泡シート及び樹脂発泡成形品の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2004218712A (ja) 2004-08-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4182978B2 (ja) 電動パワーステアリング装置及びそれに使用する樹脂歯車
KR100783355B1 (ko) 코팅 풀리를 이용한 전동식 파워 스티어링 장치
US8753215B2 (en) Spline telescopic shaft and method for manufacturing the same and vehicle steering apparatus
KR20110055751A (ko) 전력 조향 장치용 기어
JP2006194296A (ja) 複合ギヤおよびその製造方法、並びに複合ギヤを含む電動パワーステアリング装置
JP5098377B2 (ja) 車両ステアリング用伸縮軸
WO2005005864A1 (ja) 歯車、これを用いた減速機、およびこれを備えた電動パワーステアリング装置
JP2005240940A (ja) 樹脂歯車
JP4352706B2 (ja) 動力伝達に適した樹脂歯車
JP2007331662A (ja) 電動パワーステアリング装置
JP2578386B2 (ja) ギヤの結合方法
JP2013144497A (ja) コラム式電動パワーステアリング装置
JP2008168890A (ja) 車両ステアリング用伸縮軸
JP2016137796A (ja) 電動パワーステアリング装置
JP5098167B2 (ja) 電動パワーステアリング装置用減速ギア
JP4281303B2 (ja) 電動パワーステアリング装置用減速ギア
JP2006077809A (ja) 樹脂製歯車
JP4250902B2 (ja) 電動パワーステアリング装置用減速ギア
JP6579360B2 (ja) ギヤの製造方法
JP2007168718A (ja) 電動パワーステアリング装置用減速ギア
JP4370973B2 (ja) 電動パワーステアリング装置
JP2006290062A (ja) 電動パワーステアリング装置用減速ギヤ
JP4433827B2 (ja) 樹脂製歯車
JP2006232111A (ja) 電動パワーステアリング装置用減速ギア
JP4269589B2 (ja) 電動パワーステアリング装置用減速ギア

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051124

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081015

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20081016

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081028

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090707

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090720

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120807

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120807

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130807

Year of fee payment: 4

S801 Written request for registration of abandonment of right

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R311801

R371 Transfer withdrawn

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371

S801 Written request for registration of abandonment of right

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R311801

ABAN Cancellation of abandonment
R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350