JP4351024B2 - 熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法 - Google Patents

熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法 Download PDF

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本発明は、熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法に係り、特に、熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合において、その攪拌接合部や熱影響部での破断の発生を効果的に防止して、延性に優れた、ひいてはプレス成形性に優れた接合材を有利に得ることの出来る摩擦攪拌接合方法に関するものである。
従来から、熱処理型アルミニウム合金からなる板材を、プレス成形用のブランク材として用い、かかるブランク材に対してプレス成形を施すことによって、多種多様なプレス製品が、製造されてきている。そして、このような熱処理型アルミニウム合金板材のプレス加工においては、高い強度が得られるT6調質のアルミニウム合金板材よりも、かかるT6調質のものに比して軟らかい、延性に優れたT4調質のアルミニウム合金板材が、好適に採用されている。
一方、近年では、プレス加工後の切削やトリミングの省略による材料歩留りの向上や、製造工程の簡略化等を目的として、複数のアルミニウム合金材を接合した後に、その接合材に対して、プレス加工や曲げ加工等が行なわれるようになってきている。具体的には、複数のアルミニウム合金材を互いに突き合わせて溶接することによって接合し、一体化して、1枚のプレス成形用ブランク材、所謂テーラードブランク材を製造し、そして、このプレス成形用ブランク材に対して所定のプレス成形を行なうようにした技術が、例えば、自動車の内装パネル用のプレス製品の製造等の分野において、多く採用されてきているのである。
このようなプレス成形技術においては、上記した材料歩留りの向上や製造工程の簡略化等の他にも、一般的なプレス成形技術では使用困難な小型の金属板を、ブランク材の形成材料として利用することが出来、また、かかるプレス成形用ブランク材として、厚さの異なるアルミニウム合金材を一体的に接合してなるブランク材を用いれば、必要な部位に必要なだけの強度が付与されたプレス製品を容易に得ることが出来る等といった利点も、享受され得ることとなる。
ところで、そのようなプレス成形用ブランク材を得るために、アルミニウム合金材を接合する方法としては、従来より、TIG溶接や、MIG溶接、レーザ溶接、摩擦攪拌接合等の各種の接合手法が採用されているが、それらの中でも、摩擦攪拌接合法にあっては、溶融溶接に比して入熱が少なく軟化や歪みが少ない固相接合により、充分な接合強度乃至は継手強度を実現することが出来るところから、特に注目を浴びている。しかしながら、摩擦攪拌接合方式によって、T4調質材を突き合わせて接合しても、攪拌接合部の近傍の熱影響部における軟化は避けらず、それ故、摩擦攪拌接合によって製造されたブランク材を、何等の後処理も施すことなく、そのままプレス成形した際には、最も強度乃至は硬さが低い熱影響部に、応力が局所的に集中し、かかる熱影響部が優先的に変形して破断が起きてしまうことが、往々にしてあり、この熱影響部での破断により、プレス形状やその伸び乃至は延び(変形量)が制限されてしまうことが問題となるのである。
これに対し、接合する部材として熱処理型アルミニウム合金材を用い、それを摩擦攪拌接合した後、時効硬化処理を施すことにより、熱影響部も含めた接合部全体の継手強度を向上せしめる試みが、数多く為されている(例えば、特許文献1〜3参照)。また、特許文献4においては、高い継手強度を確保することを目的として、TIG溶接やMIG溶接、レーザ溶接、摩擦攪拌接合等を実施するに先立ち、アルミニウム合金材に対して、予め、最高強度が得られる時効処理条件より低い温度又は短い時間で時効処理を行なう、亜時効処理の採用が、明らかにされている。そして、そのような亜時効処理条件としては、その実施例中において、炉の温度:160℃〜200℃で、3時間の熱処理を行なうことが、明らかにされている。
このように、接合後に時効硬化処理を行なったり、接合前に亜時効処理を行なうことによって、確かに、継手強度は向上するものの、接合材のプレス成形性や延性については、全く検討されておらず、依然として、熱影響部の強度が接合部や母材に比して低く、かかる熱影響部に応力が集中して破断が生じ易く、プレス形状や伸び(成形量)が制約される問題を内在している。
また、特許文献5においては、摩擦攪拌接合に先立って、プローブの移動方向前方部分を、レーザ光、ガス炎、ヒータ等の外部熱源を用いて、500℃以下、好ましくは100℃〜300℃の温度となるように加熱(前方加熱)する摩擦攪拌接合法が提案され、これにて、接合不良を生じることなく、良好に接合することが可能となると共に、接合速度を向上させて、プローブの寿命を長くすることが出来るようになることが、明らかにされている。更に、特許文献6や特許文献7には、摩擦攪拌接合を開始するまでの時間を短縮したり、熱影響部を含む接合部位の割れ防止のために、接合部位の前方及び後方を、溶接トーチや誘導加熱にて、100℃〜300℃の温度範囲で加熱する方法も、提案されている。しかしながら、これらの前方加熱方式は、摩擦攪拌接合に先立って、アルミニウム合金材に対して熱処理が実施されているものの、単に、変形抵抗の低減や開始時間の短縮等を目的とするに過ぎないものであって、アルミニウム合金材の改質を、何等、目的としてはいない。
特開平11−104860号公報 特開2000−61663号公報 特開2002−346770号公報 特開2001−321948号公報 特開平10−225781号公報 特開2003−80381号公報 特開2003−94175号公報
ここにおいて、本発明者らが、上記の如き事情に鑑み、熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合材におけるプレス成形性等の問題を悉く解消すべく鋭意検討した結果、攪拌接合部、熱影響部及び母材の強度バランスを制御することにより、具体的には、攪拌接合部や熱影響部の硬さを母材の硬さ以上とすることにより、プレス成形時における攪拌接合部や熱影響部への応力集中を回避することが可能であることを知見した。
そして、本発明者らは、更に、攪拌接合部、熱影響部及び母材の強度バランスを制御するために、冶金学的観点から、摩擦攪拌接合後の攪拌接合部、熱影響部及び母材部分の各金属組織について、研究を重ねた結果、攪拌接合部の近傍に生じる、最も低い硬さを有する熱影響部にあっては、その金属組織が復元された状態(復元組織)となっていることを知見した。そして、T4調質された熱処理型アルミニウム合金材に対して、予め、金属組織中のGPゾーン(またはクラスター)を一旦消滅せしめる復元処理を行ない、更にその復元処理の後に、摩擦攪拌接合を行なうようにすれば、母材の強度乃至は硬さが、熱影響部の強度乃至は硬さと同程度か、それ以下に効果的に低減され、その結果、プレス成形時における熱影響部への応力集中による破断が有利に防止され、且つ、応力が面積の大きな母材部分で効果的に分散されることとなって、接合材全体の変形量が有利に増大せしめられ、これにより、接合材の延性乃至は破断伸びが効果的に高められ、プレス成形性が有利に向上せしめられ得ることを、見出したのである。
従って、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、その解決課題とするところは、攪拌接合部、熱影響部及び母材の強度バランスを制御することにより、攪拌接合部や熱影響部での破断を防止して、延性、ひいてはプレス成形性に優れた接合材を有利に得ることが出来る熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法を提供すること、及びそのような熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法によって有利に製造される、プレス成形性が高められたプレス成形用接合材を提供することにある。
そして、本発明にあっては、上記した課題の解決のために、熱処理型アルミニウム合金材からなる母材を摩擦攪拌接合する方法であって、かかる熱処理型アルミニウム合金材にT4調質を施した後、該T4調質した熱処理型アルミニウム合金材に対して、150℃〜350℃の温度に昇温し、該温度で300秒以下の時間、保持する熱処理を施すことからなる復元処理を行ない、そしてその復元処理の施された、復元状態にある熱処理型アルミニウム合金材を、摩擦攪拌接合して、生じた攪拌接合部の硬さが母材の硬さよりも大きく、且つ該母材より該攪拌接合部に向かって硬さが大きくなるようにしたことを特徴とする熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法を、その第一の態様とするものである。
また、本発明に従う熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法における望ましい第二の態様にあっては、前記復元処理における昇温速度及び降温速度が、それぞれ、2℃/秒以上である
さらに、本発明に従う熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法の第三の態様においては、前記熱処理型アルミニウム合金材として6000系アルミニウム合金材が用いられ、且つ前記復元処理が、前記T4調質した熱処理型アルミニウム合金材を、200℃〜350℃の温度に昇温し、かかる温度で300秒以下の時間、保持する熱処理にて実施される。
加えて、本発明の第四の態様においては、前記熱処理型アルミニウム合金材として2000系アルミニウム合金材が用いられ、且つ前記復元処理が、前記T4調質した熱処理型アルミニウム合金材を、150℃〜300℃の温度に昇温し、かかる温度で300秒以下の時間、保持する熱処理とされることとなる。
更にまた、本発明に従う熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法の第五の態様によれば、前記熱処理型アルミニウム合金材として7000系アルミニウム合金材が用いられ、且つ前記復元処理が、前記T4調質した熱処理型アルミニウム合金材を、150℃〜250℃の温度に昇温し、かかる温度で300秒以下の時間、保持する熱処理にて実施される。
ところで、本発明にあっては、その好ましい第六の態様として、前記復元処理の後、該復元処理の施された前記熱処理型アルミニウム合金材を、その自然時効による引張強さの上昇量が10MPaを超えない間に、前記摩擦攪拌接合が行なわれるようにする手法が、採用される。
また、かかる本発明に従う熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法の第七の態様においては、前記復元処理が、ソルトバス、オイルバス、空気炉、赤外線加熱又は誘導加熱の何れかの加熱手段による熱処理にて行なわれる構成が、採用される。
さらに、本発明の望ましい第八の態様においては、前記熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合されるべき被接合部位に沿って、所定の加熱手段を用いて、前記復元処理が順次実施される一方、かかる復元処理の済んだ前記被接合部位に対して、前記摩擦攪拌接合が順次実施されることとなる。
また、本発明は、上述せる如き熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法によって得られるプレス成形用接合材も、また、その態様の一つとしている。
かくの如き本発明に従う熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法によれば、熱処理型アルミニウム合金材に、T4調質を施した後、更に復元処理を施しているところから、T4調質されたアルミニウム合金材の金属組織中に形成された、微細な化合物からなるGPゾーン(またはクラスター)が一旦消滅せしめられた状態となる。そして、このようなGPゾーンが消滅した熱処理型アルミニウム合金材同士を突き合わせて、摩擦攪拌接合を行なうと、攪拌接合部は、溶体化処理を行なった場合と同様の組織となって、その強度乃至は硬さは、母材や熱影響部よりも高くなる。また、熱影響部は、時効硬化が僅かに起こった復元組織となり、その強度乃至は硬さは母材と同等以上、且つ攪拌接合部よりも低くなる。一方、未接合部(熱影響部を含む接合部以外の部位)である母材は、復元組織のままとなり、その強度乃至は硬さは最も低くなる。この結果、継手部を含んだ部位に対してプレス成形を行なっても、従来のように熱影響部に局所的に応力が集中してかかる熱影響部で破断が起こるようなことが有利に防止され、母材で応力が分散するようになって変形量が増大し、これにより、接合材の破断伸び乃至は延性が効果的に高められて、プレス成形性が有利に向上せしめられるようになるのである。
なお、かかる本発明に従う熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法において、特に、上記した第三〜第五の態様を採用すれば、熱処理型アルミニウム合金材の種類に応じて、復元処理の熱処理条件が緻密に設定されているところから、攪拌接合部、熱影響部及び母材の強度バランスをより一層効果的に制御することが可能となり、延性、ひいてはプレス成形性に優れた接合材を更に有利に得ることが出来る。
また、本発明に従う熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法の第六の態様によれば、母材の強度乃至は硬さを、より一層確実に、攪拌接合部や熱影響部の強度乃至は硬さよりも低くすることが出来る。
さらに、本発明に従う熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法の第七の態様によれば、所望とする条件の熱処理を有利に実施することが可能となる。
加えて、本発明に従う熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法の第八の態様によれば、接合すべき一対の熱処理型アルミニウム合金材に対して、復元処理操作と摩擦攪拌接合操作とが、それぞれ、別々の場所で別々に実施されることなく、同一のライン上で、順次、引き続いて行なわれるようになっているところから、上述せる如きプレス成形性に優れた接合材を、連続的に効率良く製造することが出来る。更に、復元処理後、摩擦攪拌接合が実施されるまでの自然時効による時効硬化も起こらないことから、母材の強度乃至は硬さを、攪拌接合部や熱影響部の強度乃至は硬さよりも、より一層確実に低くすることが可能となる。
また、本発明に従うプレス成形用接合材にあっては、上述せる如き熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法によって製造されるところから、プレス成形時に、熱影響部での破断が防止されて、変形量が有利に増大せしめられ、その結果、自由なプレス形状やより大きな加工量でのプレス成形が可能となる。
ところで、かくの如き本発明に従う熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法において、熱処理型アルミニウム合金材の材質としては、時効硬化熱処理によって強度を高めることが可能な、従来より公知の熱処理型のアルミニウム合金、例えば、JIS呼称の合金番号にて、6000系(Al−Mg−Si系)、2000系(Al−Cu−Mg系)、7000系(Al−Zn−Mg系)等のアルミニウム合金が用いられることとなる。より具体的には、6000系合金としては、JIS A6061合金、JIS A6063合金等のSi含有量が少ないものや、AA6016合金、AA6111合金等のSi含有量が多いものでも良い。また、2000系合金としては、JIS A2014合金、JIS A2017合金、JIS A2024合金等を例示することが出来る一方、7000系合金としては、JIS A7075合金、JIS A7N01合金等を挙げることが出来る。
また、そのような熱処理型アルミニウム合金材の形状としては、接合されるべき被接合部位の端部を、接合相手方の被接合部位の端部に突き合わせることが可能な形状のものであれば、圧延や押出、鍛造等の公知の手法にて製作された、板状や管状、棒状等、各種の形状の熱処理型アルミニウム合金材(熱処理型Al合金材)が、何れも、採用されることとなるが、一般には、板材や押出形材が有利に用いられる。
そして、それらの形状の中でも、板状の圧延材は、例えば、次のようにして形成されることとなる。即ち、先ず、所定の化学成分組成とされたアルミニウム合金が、通常の半連続鋳造法によって造塊され、次いで、この得られた鋳塊に対して均質化処理が施された後、熱間圧延が行われて、熱間圧延板が製造される。また、所定の化学成分組成に調整されたアルミニウム合金の溶湯を、連続鋳造法(溶湯圧延法)により、直接に、連続鋳造板として製造する。そして、これらの熱間圧延板或いは連続鋳造板に対して、冷間圧延が行なわれて、所定の厚さを有する平板形状の板材とされる。なお、かかる冷間圧延の前や、冷間圧延の途中において、必要に応じて、中間焼鈍処理が実施されることもある。
次いで、上述せる如き板材や押出形材等の熱処理型Al合金材の複数を用いて、摩擦攪拌接合が行なわれることとなるが、本発明においては、先ず、熱処理型Al合金材に対して、T4調質が実施される。つまり、熱処理型Al合金材に対して、溶体化処理が施された後、焼入れが行なわれ、そして自然時効されることにより、T4調質材が得られるのである。特に、6000系合金材を用いる場合には、ベークハード性(塗装焼付硬化性)を付与するために、必要に応じて、焼入れの後、40℃〜120℃の温度で、24時間以内の予備時効を行なうようにすることも出来る。
その後、かかるT4調質された熱処理型Al合金材には、その摩擦攪拌接合に先立って、復元処理が施される。なお、ここにおいて、復元処理とは、T4調質された熱処理型Al合金材の金属組織中に自然時効により形成されたGPゾーン(またはクラスター)を一旦消滅させる処理のことであり、本発明においては、かかる復元処理が、T4調質された熱処理型Al合金材を、150℃〜350℃の温度に昇温し、その昇温した温度で300秒以下の間、より好ましくは、60秒以下の間、保持する熱処理にて、実施されることとなる。また、かかる保持時間の下限は、特に制限されるものではなく、目的とする温度に昇温した後、直ちに降温するようにしても良い。
なお、上記の復元処理において、熱処理温度(復元処理温度)が150℃に満たず、低い場合には、GPゾーン(またはクラスター)が充分に消滅せず、つまり、復元が充分に行なわれず、母材の強度乃至は硬さを有効に低減せしめることが出来なくなる一方、熱処理温度が350℃を超えるようになると、過時効となって、金属組織中に形成された析出物が粗大化して、復元組織が得られなくなる。また、上記熱処理温度での保持時間が長過ぎると、復元されるものの、復元に続いて、時効硬化が生じたり、或いは過時効による軟化が生じ、目的とする復元組織が得られなくなる。
また、上述せる如き熱処理温度(復元処理温度)は、被接合材たる熱処理型Al合金の種類に応じて、更に細かく設定されることが、より一層望ましく、例えば、熱処理型Al合金として、6000系Al合金材を使用する場合には、上述せる範囲の中でも、好ましくは200℃〜350℃、更に好ましくは200℃〜300℃が有利に採用される。また、2000系Al合金材の場合には、上述せる範囲の中でも、好ましくは150℃〜300℃、更に好ましくは180℃〜300℃とされることが望ましい。更に、7000系Al合金材の場合には、上述せる如き範囲の中でも、好ましくは150℃〜250℃、更に好ましくは170℃〜250℃とされることが望ましい。
さらに、上述せる如き目的とする熱処理温度に、熱処理型Al合金材を昇温せしめたり、かかる熱処理温度から降温せしめるに際して、その昇温速度や降温速度としては、特に制限されるものではないものの、上記した復元を効果的に実現するためには、昇温速度も降温速度も、それぞれ、好適には2℃/秒以上、更に好適には4℃/秒〜50℃/秒となるように設定されることが、望ましい。
かくして、上述せる如き所定の熱処理が施されることによって、T4調質された熱処理型Al合金材には、その金属組織に形成されたGPゾーン(またはクラスター)が一旦消滅し、復元組織となる。これによって、復元処理の施された、復元状態にある熱処理型Al合金材は、その強度乃至は硬さが、全体的に下がるようになるのである。
そして、本発明においては、そのような復元処理により、熱処理型Al合金の強度乃至は硬さが低減せしめられた状態で、次の摩擦攪拌接合が、実施されることとなる。しかしながら、前記復元処理の施された熱処理型Al合金材は、強度乃至は硬さの小さな復元状態から、自然時効によって、再びその金属組織中にGPゾーン(またはクラスター)が形成されて、強度乃至は硬さが上昇する。このため、摩擦攪拌接合法による接合操作は、自然時効によって熱処理型Al合金材の強さ乃至は硬さが上昇し過ぎない、復元状態のうちに、換言すればGPゾーンが実質的に再度形成されるまでに実施されることが望ましいのである。具体的には、熱処理型Al合金材の引張強さの上昇量、即ち、摩擦攪拌接合時の熱処理型Al合金材の引張強さから、復元処理後の熱処理型Al合金材の引張強さを差し引いた値が、10MPaを超えない間、より好ましくは5MPaを超えない間に実施せしめられることが、望ましい。何故なら、時効硬化による引張強さの上昇量が10MPaを超えるようになると、接合後において、母材の強度乃至は硬さが、熱影響部の強度乃至は硬さよりも高くなってしまい、所望とする強度バランスを得ることが出来なくなるからである。なお、ここにおいて、「引張強さ」は、JIS−Z−2241の「金属材料引張試験方法」に準じて測定され得るものである。
このため、例えば、復元処理後の熱処理型Al合金材を20℃の温度で保管する場合、6000系Al合金材にあっては、復元処理後、約60日以内に、また2000系Al合金材にあっては、復元処理後、約20日以内に、更に7000系Al合金材にあっては、復元処理後、約20日以内に、摩擦攪拌接合を行なうことが望ましいのである。また、かかる保管温度が高くなる程、時効硬化が早く進むところから、例えば、6000系Al合金材を40℃で保管する場合には、復元処理後、1週間以内或いは2週間以内に摩擦攪拌接合を実施することが望ましい。要するに、引張強さがあまり上昇しないうちに、言い換えれば、復元処理による効果が失われないうちに摩擦攪拌接合を実施することが肝要なのである。
ところで、復元状態にある熱処理型Al合金材を摩擦攪拌接合して、目的とする接合材を形成せしめるに際しては、従来と同様な手法が採用され得るのであり、例えば、先ず、図1に示されるように、復元処理の施された熱処理型Al合金材(ここでは、板材)の二枚を突き合わせ、かかる二つの熱処理型Al合金材10a,10bを突き合わせた状態下で、それら二つの熱処理型Al合金材10a,10bが長手方向(接合方向)及び幅方向に相対的に移動することがないように、常法に従って拘束する。そして、回転工具12を軸回りにピン14と一体的に高速回転させて、突き合わされた熱処理型Al合金材10a,10bの突合せ部16に該回転工具12のピン14を差し込み、かかる回転工具12及びピン14を、突合せ部16に沿って、つまり図1の紙面に対して垂直な方向に、相対的に移動せしめることにより、二つの熱処理型Al合金材10a,10bを、その突合せ部16において、摩擦攪拌接合せしめるのである。なお、その際、回転工具12及びピン14は、突合せ部に沿って移動せしめられたり、或いは、拘束された熱処理型Al合金材10a,10bが移動せしめられたりされることとなる。
このように、摩擦攪拌接合が行なわれると、二つの熱処理型Al合金材10a,10bの突合せ部16には、図2の上段に示されるように、それら二つの熱処理型Al合金材10a,10bに跨る攪拌接合部18が、長手方向(図2中、紙面に垂直な方向)に、連続的に延びるように形成されるのである。また、かかる攪拌接合部18に隣接する周辺域には、熱影響部20(HAZ部:熱の影響を受ける部位)が存在せしめられる。
このため、通常であれば、図2の下段に示されるように、熱影響部20の硬さが最も低くなるものの、本実施形態においては、摩擦攪拌接合に先立って、復元処理が実施されているところから、摩擦攪拌接合後、攪拌接合部18は、溶体化処理を行なった場合と同様の組織となって、その硬さは、図2の中段に示されるように、母材22や熱影響部20よりも大きくなる。より具体的には、攪拌接合部18は、450℃以上の温度に達することで、Si、Mg、Cu等のクラスターを形成する合金成分が固溶し、接合後の自然時効による硬化速度が、熱影響部20や母材22よりも効果的に高められて、最も硬くなるのである。また、熱影響部20は、熱を受けても軟化が起こることなく、復元組織に僅かな時効硬化が起こった状態となって、その硬さは、前記攪拌接合部18と比べて小さいものの、母材22の硬さと同じか、それ以上になる。更に、摩擦攪拌接合による熱の影響を何等受けない母材22は、復元組織のままの状態であり、その硬さは最も小さくなる。この結果、本実施形態の接合材における、接合方向に直角な方向の硬さ分布は、図2の中段に示されるように、左右の母材22から攪拌接合部18(突合せ部16)に向かって大きくなる、台形形状となるのである。
これに対し、復元処理が行なわれない場合には、摩擦攪拌接合後、攪拌接合部18は、溶体化処理を行なった場合と同様の組織となって、その硬さは、図2の下段に示されるように、T4調質された母材22と同程度か、或いは母材22より僅かに小さな硬さとなる一方、熱影響部20は復元状態の金属組織となって、最も軟らかくなる。このため、かかる接合材に応力が加えられると、最も小さな硬さを有する熱影響部20に応力が集中して、熱影響部20が優先的に変形し、破断が惹起される。
なお、本発明者らの検討によれば、上述せる如き復元処理の施された復元組織を有する熱処理型Al合金材を、TIG溶接やMIG溶接等の溶融溶接方式で接合したところで、図2の中段に示されるような台形形状の硬さ分布は得られず、熱影響部において、硬さが最も低くなることが認められている。更に、接合部及び接合部に隣接している熱影響部の一部は、一旦溶融されるために、鋳造組織が変質し、延性が低下してしまうこととなる。
以上のように、本発明に従う熱処理型Al合金材の摩擦攪拌接合方法にあっては、復元状態とされた熱処理型Al合金材に対して、摩擦攪拌接合を行なうようにしているところから、攪拌接合部18、熱影響部20及び母材22の強度バランスが制御され、母材22の硬さが最も小さくされた接合材が有利に得られるのである。その結果、接合材に応力が加えられても、熱影響部20に応力集中が生じるようなことが効果的に防止されて、応力が母材22全体で分散されるようになる。これにより、接合材全体の変形量が有利に増大せしめられ得、以て、自由なプレス形状やより大きな加工量でのプレス成形が可能となる。換言すれば、接合材のプレス成形性が、極めて効果的に高められ得るのである。
かくして、上述せるようにして得られた接合材にあっては、優れたプレス成形性が付与されているところから、プレス成形用のブランク材等として有利に用いられ、プレス成形に供された後、船舶や車両、航空機等の殻やフロア、建材、熱交換器、アンテナ、自動車部品、橋架等に、有利に用いられることとなる。
ところで、摩擦攪拌接合に先立って実施される復元処理の加熱方式としては、特に限定されるものではなく、従来から公知の加熱手段を用いた熱処理が何れも採用され得る。例えば、復元処理工程と摩擦攪拌接合工程とが非連続的に実施されるオフラインの製造工程を採用する場合には、ソルトバス(塩浴)、オイルバス、空気炉、赤外線加熱又は誘導加熱のうちの何れかの加熱手段を用いて行なう熱処理が、設備的な面やコスト的な面から、好適に採用されることとなる。
また、本発明においては、復元処理と摩擦攪拌接合を、同一のライン上で連続的に実施することも可能であり、このようなオンラインの製造工程を採用する場合には、例えば、図3に示されるように、熱処理型Al合金材10a,10bの摩擦攪拌接合されるべき被接合部位(突合せ部16)に沿って、前記した復元処理(熱処理)が、被接合材の幅方向(接合方向に直角な方向)において、突合せ部16から母材部に至る充分な長さにて、望ましくは幅方向の全体に亘って、順次実施される一方で、かかる復元処理の済んだ被接合部位(突合せ部16)に対して、摩擦攪拌接合が順次実施されることとなる。なお、このようなオンラインの製造工程を採用する場合には、加熱手段として、赤外線加熱、誘導加熱、レーザ加熱、ガス炎加熱等が好適に採用されることとなる。この場合においても、復元処理(熱処理)は、被接合部位(突合せ部16)とその近傍だけでなく、加工時に加えられる応力が母材部分で有効に分散されて、大きな変形量が確保され得るように、熱処理型Al合金材の幅方向の広範囲に対して施される必要があることは、勿論言うまでもないところである。
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
例えば、上記の実施形態では、板厚が同じで、同一の熱処理型Al合金からなる板状の熱処理型Al合金材10a,10bを用いて、それらを接合せしめる例が示されているが、板厚の異なる熱処理型Al合金材が接合されても、また材質の異なる熱処理型Al合金材が接合されても良い。そして、板厚が異なる場合には、薄肉側の熱処理型Al合金材と厚肉側の熱処理型Al合金材の両方に対して、復元処理が施されても、或いは、薄肉側の熱処理型Al合金材のみに復元処理が施されても良い。要するに、接合後において、強度乃至は硬さが最も低くなる部位が、接合される熱処理型Al合金材のうちの何れかの母材となるように、前述せる如きT4調質や復元処理、摩擦攪拌接合が順次、実施されれば良いのである。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。
先ず、下記表1に示される如き化学成分組成を有する10種類のアルミニウム合金(A〜J)を、常法に従って、DC鋳造法により造塊した。そして、その得られた鋳塊に対して、それぞれ、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延を行なって、厚さが1.0mmのアルミニウム合金板材とした後、更に、溶体化処理、焼入れを行ない、室温で10日間の自然時効を経て、T4調質材とした。
Figure 0004351024
次いで、各T4調質材について、下記表2に示す条件で熱処理(復元処理)を行ない、20℃で3日間保管した後、かかる復元処理の施されたアルミニウム合金材を、それぞれ2枚ずつ用い、その幅方向の端面同士において相互に突き合わせた状態で、それらの突合せ部を摩擦撹拌接合法(FSW法)により突合せ接合して、接合材たる試験材1〜10を作製した。なお、何れのアルミニウム合金材にあっても、復元処理を行なってから、接合を実施するまでの引張強さの上昇量は、10MPa以下であることを、別途、確認した。また、摩擦攪拌接合に際しては、鋼製の回転工具を使用し、回転数:1000rpm、接合速度:400mm/分で、工具を水平移動させる条件を採用した。更に、回転工具の端部には、切削を目的として、深さ1mmの溝を8箇所設けた。
そして、接合後、得られた試験材1〜10を、20℃で7日間保管した後、それらの試験材の各々について、後述せるようにして、ビッカース硬さ試験、引張試験及び成形性試験を行ない、得られた結果を、それぞれ、下記表2に併せ示した。
−ビッカース硬さ試験−
試験材の接合方向に対して直角方向に試験片を切り出した。そして、かかる試験片の接合方向に直角な方向の断面を、樹脂埋め及び研磨した後、ビッカース硬さ試験機を用いて、JIS−Z−2244に準じて、荷重1kgfで、攪拌接合部、熱影響部及び母材部の硬さを測定した。
−引張試験−
引張試験における引張方向に対して、試験材の接合方向が直角となるように、また接合部が中央に位置するように、JIS−5号形の引張試験片を切り出した。そして、かかる試験片を用いて、室温で、JIS−Z−2241に準じて引張試験を行ない、引張強さ、耐力及び破断伸びを測定すると共に、破断位置を確認した。
−成形試験−
試験材の接合部が中央に位置するように、直径120.0mmの円板状試験片を切り出した。そして、かかる試験片の表面に低粘度潤滑油を塗布した後、エリクセン試験機を用いて、張出し加工を行って、破断までの限界成形高さを測定した。なお、張出し加工は、材料流入を防止するために、試験片をロックビード付きのダイスで拘束し、直径50mmの球頭ポンチを用いて、成形速度2mm/sの条件で実施した。
Figure 0004351024
かかる表2の結果から明らかなように、試験材1〜10は、何れも、攪拌接合部、熱影響部及び母材のうち、母材の硬さが最も低い値となっている。また、引張試験の結果から、熱影響部で破断が起こることなく、母材で破断が起こっていると共に、破断伸びが16%以上となっており、更に、成形試験においては、何れの試験材も、限界成形高さが15.0mm以上の大きな値となっている。これらの結果から、本発明に従って復元処理が施された試験材1〜10は、プレス成形時に充分な変形が可能な、優れたプレス成形性を有するものであることが、分かる。
<比較例1>
また、比較のために、先ず、前記実施例で用いられたものと同じ化学成分組成を有する10種類の合金(A〜J)を、常法に従って、DC鋳造法により造塊した。得られた鋳塊に対して、それぞれ、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延を行なって、厚さが1.0mmのアルミニウム合金板材とした後、更に、溶体化処理、焼入れを行ない、室温で10日間の自然時効を経て、T4調質材とした。そして、各T4調質材について、熱処理(復元処理)を行なうことなく、T4調質されたアルミニウム合金材を、そのまま、それぞれ2枚ずつ用い、その幅方向の端面同士において相互に突き合わせた状態で、それらの突合せ部を、前記実施例と同様な条件で、摩擦撹拌接合法(FSW法)により突合せ接合して、接合材たる試験材11〜20を作製した。そして、摩擦攪拌接合後、得られた試験材11〜20を、20℃で7日間保管した後、それらの試験材の各々について、前述せるようにして、ビッカース硬さ試験、引張試験及び成形性試験を行ない、得られた結果を、それぞれ、下記表3に併せ示した。
Figure 0004351024
かかる表3の結果から明らかなように、試験材11〜20は、復元処理を行なわなかったため、何れも、攪拌接合部、熱影響部及び母材のうち、熱影響部のビッカース硬さが最も低い値となっており、かかる熱影響部で破断が生じている。また、どの試験材も、同一のアルミニウム合金材からなる前記試験材1〜10に比べて、伸びが小さく、限界成形高さも15.0mmに満たないことが分かる。
<比較例2>
また、比較のために、先ず、前記実施例で用いられたものと同じ化学成分組成を有する10種類の合金(A〜J)を、常法に従って、DC鋳造法により造塊した。得られた鋳塊に対して、それぞれ、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延を行なって、厚さが1.0mmのアルミニウム合金板材とした後、更に、溶体化処理、焼入れを行ない、室温で10日間の自然時効を経て、T4調質材とした。そして、各T4調質材について、下記表4に示す条件で熱処理を行ない、20℃で3日間保管した後、かかる熱処理の施されたアルミニウム合金材を、それぞれ2枚ずつ用い、その幅方向の端面同士において相互に突き合わせた状態で、それらの突合せ部を、前記実施例と同様な条件で、摩擦撹拌接合法(FSW法)により突合せ接合して、接合材たる試験材21〜50を作製した。かくして、摩擦攪拌接合後、得られた試験材21〜50を、20℃で7日間保管した後、それらの試験材の各々について、前述せるようにして、ビッカース硬さ試験、引張試験及び成形性試験を行ない、得られた結果を、それぞれ、下記表4に併せ示した。
Figure 0004351024
かかる表4の結果から明らかなように、試験材21,24,27,30,33,36,39,42,45,48は何れも、熱処理温度が低いため、T4調質されたアルミニウム合金材の金属組織が復元されず、母材のビッカース硬さが熱影響部よりも高く、熱影響部で破断が生じており、破断伸び及び限界成形高さは低い値となっている。また、試験材22,25,28,31,34,37,40,43,46,49は何れも、熱処理温度が高いため、過時効による軟化が生じ、所望とする復元組織が得られなかったところから、引張試験で母材破断となったものの、破断伸び及び限界成形高さは低い値となった。更に、試験材23,26,29,32,35,38,41,44,47,50は何れも、熱処理時間が長過ぎるため、過時効による軟化が生じ、所望とする復元組織が得られなかったところから、引張試験で母材破断となったものの、破断伸び及び限界成形高さは低い値となった。
<比較例3>
また、比較のために、先ず、前記実施例で用いられたものと同じ化学成分組成を有する10種類の合金(A〜J)を、常法に従って、DC鋳造法により造塊した。得られた鋳塊に対して、それぞれ、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延を行なって、厚さが1.0mmのアルミニウム合金板材とした後、更に、溶体化処理、焼入れを行ない、室温で10日間の自然時効を経て、T4調質材とした。そして、各T4調質材について、下記表5に示す条件で熱処理(復元処理)を行ない、40℃で30日間保管した後、かかる熱処理の施されたアルミニウム合金材を、それぞれ2枚ずつ用い、その幅方向の端面同士において相互に突き合わせた状態で、それらの突合せ部を、前記実施例と同様な条件で、摩擦撹拌接合法(FSW法)により突合せ接合して、接合材たる試験材51〜60を作製した。なお、何れのアルミニウム合金材にあっても、復元処理を行なってから、接合を実施するまでの引張強さの上昇量は、10MPaを超えていた。かくして、摩擦攪拌接合後、得られた試験材51〜60を、20℃で7日間保管した後、それらの試験材の各々について、前述せるようにして、ビッカース硬さ試験、引張試験及び成形性試験を行ない、得られた結果を、それぞれ、下記表5に併せ示した。
Figure 0004351024
かかる表5の結果から明らかなように、試験材51〜60にあっては、何れも、復元状態から時効硬化が生じた状態で、摩擦攪拌接合が行なわれたため、攪拌接合部、熱影響部及び母材のうち、熱影響部のビッカース硬さが最も低い値となっており、かかる熱影響部で破断が生じている。また、どの試験材も、同一のアルミニウム合金材からなる前記試験材1〜10に比べて、伸びが小さく、限界成形高さも15.0mmに満たないことが分かる。
熱処理型Al合金材を摩擦撹拌接合する工程の一例を示す断面説明図であって、熱処理型Al合金材を突き合わせた状態(接合前の状態)を示している。 摩擦攪拌接合によって得られた接合材の攪拌接合部、熱影響部及び母材と、その硬さの関係を説明するための説明図であって、摩擦攪拌接合が施された平板状の熱処理型Al合金材の断面説明図と、本発明に従って、復元処理の後に摩擦攪拌接合が実施された接合材の硬さ分布を示すグラフと、復元処理が施されることなく摩擦攪拌接合が実施された、従来の接合材の硬さ分布を示すグラフとが、接合材の断面位置に関連付けて配置されている。 本発明に従って、同一ライン上で、復元処理操作と摩擦攪拌接合操作とを連続的に実施する工程の一例を示す説明図である。
符号の説明
10a,b 熱処理型アルミニウム合金材
12 回転工具
14 ピン
16 突合せ部
18 攪拌接合部
20 熱影響部
22 母材

Claims (8)

  1. 熱処理型アルミニウム合金材からなる母材を摩擦攪拌接合する方法であって、かかる熱処理型アルミニウム合金材にT4調質を施した後、該T4調質した熱処理型アルミニウム合金材に対して、150℃〜350℃の温度に昇温し、該温度で300秒以下の時間、保持する熱処理を施すことからなる復元処理を行ない、そしてその復元処理の施された、復元状態にある熱処理型アルミニウム合金材を、摩擦攪拌接合して、生じた攪拌接合部の硬さが母材の硬さよりも大きく、且つ該母材より該攪拌接合部に向かって硬さが大きくなるようにしたことを特徴とする熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法。
  2. 前記復元処理における昇温速度及び降温速度が、それぞれ、2℃/秒以上である請求項1に記載の熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法。
  3. 前記熱処理型アルミニウム合金材が6000系アルミニウム合金材であり、且つ前記復元処理が、前記T4調質した熱処理型アルミニウム合金材を、200℃〜350℃の温度に昇温し、かかる温度で300秒以下の時間、保持する熱処理である請求項1に記載の熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法。
  4. 前記熱処理型アルミニウム合金材が2000系アルミニウム合金材であり、且つ前記復元処理が、前記T4調質した熱処理型アルミニウム合金材を、150℃〜300℃の温度に昇温し、かかる温度で300秒以下の時間、保持する熱処理である請求項1に記載の熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法。
  5. 前記熱処理型アルミニウム合金材が7000系アルミニウム合金材であり、且つ前記復元処理が、前記T4調質した熱処理型アルミニウム合金材を、150℃〜250℃の温度に昇温し、かかる温度で300秒以下の時間、保持する熱処理である請求項1に記載の熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法。
  6. 前記復元処理の後、該復元処理の施された前記熱処理型アルミニウム合金材を、その自然時効による引張強さの上昇量が10MPaを超えない間に、前記摩擦攪拌接合することからなる請求項1乃至請求項5の何れかに記載の熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法。
  7. 前記復元処理が、ソルトバス、オイルバス、空気炉、赤外線加熱又は誘導加熱の何れかの加熱手段による熱処理にて、行なわれる請求項1乃至請求項6の何れかに記載の熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法。
  8. 前記熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合されるべき被接合部位に沿って、所定の加熱手段を用いて、前記復元処理が順次実施される一方、かかる復元処理の済んだ前記被接合部位に対して、前記摩擦攪拌接合が順次実施される請求項1乃至請求項7の何れかに記載の熱処理型アルミニウム合金材の摩擦攪拌接合方法。
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