JP4330925B2 - スローアウェイ式リーマ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被削材の下穴を所定の直径に仕上げ加工するためのリーマに関し、特にスローアウェイ式リーマに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スローアウェイ式リーマ(以下、リーマという)は、一般的に副切れ刃の外径およびバックテーパを調整する機構を備えており、その調整機構が簡易であること、調整が容易であること、調整の精度が高いことが望まれる。例えば、調整が容易に行えるような構成を有したリーマとして、図8に示すものがある。図8(a)はこのリーマの正面図であり、図8(b)はこのリーマの先端視側面図である。図8(c)はこのリーマのチップ座付近の拡大正面図である。
【0003】
このリーマは、図8に示すように工具本体(12)の先端部にスローアウェイチップ(40)(以下、チップという)を保持するチップ保持部(42)を形成し、リテーナ(60)を介してチップ(40)を工具本体(12)に取付ける。そして、前記リテーナ(60)に切欠が形成され、該チップ(40)がクランプねじ(142)によってチップ保持部(42)の座面(114)に着座されるとともに、前記リテーナ(60)の受面(86)に受けられる。前記リテーナ(60)の軸方向側面(96)に傾斜面(100)を形成し、該工具本体(12)に調節ねじ(146)を設けて、前記調節ねじ(146)の先端部(148)のテーパ外周面が前記傾斜面(100)と接触する。前記調節ねじ(146)を回転させることにより、前記リテーナ(60)および該チップ(40)の半径方向位置、つまり該リーマの外径が調節される。
【0004】
この従来リーマは、調節ねじ(146)を締め込み、又は、緩めることによって、リテーナ(60)を座面(114)上において微小角度回転させ、チップ(40)の副切れ刃(62B)の外径が変えられる。この外径の調節に伴って副切れ刃(62B)のバックテーパも僅かに変わる。そして、リテーナ(60)の側面(94)が工具本体(12)の端面(118)と当接した状態を保ちつつ、リテーナ(60)がチップ(40)を該工具本体(12)に強固に固定することができ、且つ、チップ(40)の該工具本体(12)に対する位置を調節できる。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】
特開2002−273621号公報(第2頁乃至第9頁、図1乃至図3)
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来リーマにおける外径の調節は、調節ねじ(146)を回転操作するだけの容易な操作で実現する。しかしながら、外径の調節に伴って副切れ刃(62B)のバックテーパは変化し、加工穴内壁の仕上げ面あらさが安定しないという問題があった。特に高送り加工では、バックテーパの変動は、上記仕上げ面あらさを劣化させるため、高能率加工を妨げる要因となっていた。また、バックテーパを調節するためには、外径の調節ねじ(146)に加え、バックテーパの調節ねじが必要であり、外径を調節した後バックテーパの調節をする必要があった。このバックテーパの調節は、副切れ刃(62B)の先端の半径と後端の半径の差を調節することによって行われる。前記半径の差は、ダイヤルゲージ等の測定器を用いて測定することとなる。このバックテーパは、大きすぎると加工穴内壁の仕上げ面あらさを劣化させてしまい、逆になくなると副切れ刃(62B)と加工穴内壁との接触長さが不必要に長くなり切削抵抗を増加させてしまう。そのため、前記半径の差を数μmの値に調節しなければならず、この調節作業は容易といえるものではなかった。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みなされたものであり、その目的は、外径およびバックテーパの調節が容易であるとともに、加工穴内壁の仕上げ面あらさを安定させるリーマを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のスローアウェイ式リーマは、軸線(O)を中心とする略円柱状の工具本体の先端部に、副切れ刃を該工具本体の外周面から突出させてスローアウェイチップが着脱自在に設けられたスローアウェイ式リーマにおいて、前記副切れ刃は、該軸線(O)回りの回転形状が少なくとも1つの円弧、または、少なくとも1つの円弧と、この円弧の該軸線(O)方向後端に連なる少なくとも1つの直線と、で形成され、前記円弧が該工具本体の径方向外側に凸状をなし、前記副切れ刃の外径が最大となる点に対し、該軸線(O)方向の後端側の外径が上記最大外径より小さくされるとともに、該スローアウェイチップは、前記副切れ刃の該軸線(O)方向における中間の位置より先端側の位置を該工具本体の径方向外側に向かって付勢されることを特徴とするスローアウェイ式リーマである。
【0008】
上述した構成のリーマによれば、副切れ刃は、外径が最大となる位置から軸線(O)方向の後端側では外径が縮小し、バックテーパが付与される。そのため、前記副切れ刃と加工穴内壁との接触長さが不必要に長くならず、切削抵抗が低減され、びびりが防止され、加工穴径が安定する。また、前記付勢によって、副切れ刃は、該軸線(O)方向の先端部が工具本体の径方向外側に向かって移動し、該リーマの外径が調節され、同時に副切れ刃のバックテーパも確保される。チップを付勢するにあたっては、副切れ刃の該軸線(O)方向における中間の位置より先端側の1つの位置のみを付勢すればよいので、該リーマの外径の調節機構が簡易であり、且つ、外径の調整が非常に容易となる。
【0009】
該リーマの外径を調節するに伴い、副切れ刃は、該軸線(O)に対する傾きが僅かに変化することになる。しかし、前記副切れ刃の回転形状は、円弧をなすので上記傾きの影響を受けることがない。よって、加工穴内壁の仕上げ面は、副切れ刃の傾きの変化にかかわらず同一円弧で形成されるので、仕上げ面あらさが安定する。特に高送り加工したときの仕上げ面あらさは、副切れ刃の回転形状が直線をなすものに対して大幅に向上する。
【0010】
副切れ刃の該軸線(O)回りの回転形状における円弧の曲率半径は、10mm〜200mmの範囲であることが好ましい。これは、上記曲率半径が10mm未満では、加工穴内壁の仕上げ面のうねりによる凹凸が大きくなり表面あらさが劣化してしまうからであり、上記曲率半径が200mm以上になると、副切れ刃の傾きの影響を排除できず加工穴内壁の仕上げ面あらさが不安定になるからである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施例を図1乃至図5を参照しながら説明する。図1(a)はこの実施例のリーマ先端部の正面図であり、図1(b)は図1(a)におけるA−A断面図である。図2(a)乃至(c)はこの実施例リーマに装着されるチップの形状を示す図であり、図2(d)乃至(f)は別のチップ形状を示す図である。図3(a)乃至(c)はこの実施例のリーマの副切れ刃の軸線(O)回りの回転形状を示す図である。図4(a)は副切れ刃の外径の調節前後におけるチップの移動状態を示す図であり、図4(b)は図3(a)に示すチップの副切れ刃の拡大図である。図5は従来リーマと本実施例のリーマそれぞれの加工穴内壁の仕上げ面を示す図である。
【0012】
図1に示すようにこの実施例のリーマは、工具本体(1)が軸線Oを中心とする略円柱状をなし、該工具本体(1)の先端部外周には凹状をなす切りくずポケット(2)が形成され、この切りくずポケット(2)の該工具本体(1)の回転方向(K)を向く壁面に沿って凹状のチップ座(3)が形成されている。前記チップ座(3)は、上記回転方向(K)に向く底面(3a)と、該工具本体の径方向外側と上記軸線方向先端側に向く側壁(3b、3c)と、が備えられている。また、図示しない後端側には、該リーマを工作機械に把持するためのシャンク部が形成されている。
【0013】
工具本体(1)の先端部外周にはガイドパッド(20)が設けられる。図1(b)に示すように、前記ガイドパッド(10)は、例えば該工具本体(1)の軸線(O)方向に沿って周方向に3カ所設けられる。なお、これらガイドパッドの周方向の配置は等角度間隔でも不等角度間隔であってもよい。これらガイドパッド(20)は、その外周面(20a)の外径を副切れ刃(11)の外径と同一か、または、わずかに小さく設定され、加工穴と摺接することによって該工具本体(1)を支持し直進性を高める。
【0014】
前記チップ座(3)に装着されるチップ(10)は、図2(a)、(d)、(g)に示すように上面(10a)が略長方形平板状をなす。対向する長辺の稜線が副切れ刃(11)をなし、この副切れ刃(11)に対して鈍角に斜戴した稜線が主切れ刃(12)をなす。これら副切れ刃(11)と主切れ刃(12)は、該チップ(10)の中心を基準として対称に一対に設けられ2回使用できる。該チップ(10)は、図2(a)乃至(c)に示したように、前記副切れ刃(11)が曲率半径R1の円弧で形成され、前記副切れ刃(11)に繋がる側面(10c)が前記副切れ刃形状に対応する曲面で形成されている。ただし、前記側面(10c)は、該チップ(10)を該工具本体(1)に装着するときの取付基準面となるので、平坦面であることが望ましい。したがって、図2(d)乃至(f)に例示したように、副切れ刃(11)に繋がる側面は、曲面をなす第1側面(10e)より下面側に平坦な第2側面(10c)が設けられてもよい。また、図2(g)乃至(i)に例示したように、副切れ刃(11)は、チップ(10)の上面(10a)に副切れ刃(11)の稜線に沿う円錐面(10f)が設けられ、この円錐面(10f)とこの円錐面(10f)に繋がる側面(10c)との交差する稜線に曲率半径R1の円弧状の切れ刃(11)が形成されてもよい。
【0015】
該チップ(10)は図2に示すように、その中央部に上下面(10a、10b)の法線方向に貫通する取付穴(13)が形成されている。この取付穴(13)は、該チップ(10)の上面(10a)から下面(10b)に向かうにつれ直径を縮小するテーパ穴が一部形成されている。そして、この取付穴(13)を臨むように、工具本体(1)のチップ座(3)の底面(3a)にはねじ穴(図示しない)が形成されている。このねじ穴は、前記取付穴(13)に対してチップ座(3)の両側壁(3b、3c)寄りに若干偏心して形成されている。そして、クランプねじ(14)は、その頭部が取付穴(13)のテーパ内周面に対応した形状に形成されており、前記ねじ穴に締め込むことにより、頭部が取付穴(13)のテーパ内周面に偏心した状態で係合する。そして、チップ(10)は、その下面(10b)をチップ座(3)の底面(3a)に押し付けられるとともに、副切れ刃(11)に対する取付基準面(10c、10d)がチップ座(3)の両側壁(3b、3c)に向かって押し付けられ、チップ座(3)内に強固にクランプされる。
【0016】
チップ(10)が工具本体(1)に装着されたとき、副切れ刃(11)の該軸線(O)回りの回転形状は、図3(a)に示すように、曲率半径(R1)の円弧からなり、該工具本体(1)の径方向外側に向かって凸状をなしている。そして、前記副切れ刃(11)の外径が最大となる点(11C)は、前記副切れ刃(11)の該軸線(O)方向における先端部(11A)と後端部(11B)との間にあり、前記副切れ刃(11)は、前記点(11C)より後端側では外径が縮小しバックテーパが付与されている。前記円弧の曲率半径(R1)は10mm〜200mmの範囲に設定されている。
【0017】
該工具本体(1)の先端部内部には、該軸線(O)に略直交する同一軸線上にねじ穴(15a)と挿入穴(15b)とが設けられている。図1(b)に示すように前記挿入穴(15b)は、チップ座(3)の側壁(3b)に開口し、且つ、該工具本体(1)の径方向外側に向いている。また、前記ねじ穴(15a)は、前記挿入穴(15b)に連通し該工具本体(1)の外周面(1a)に開口する。これらねじ穴(15a)と挿入穴(15b)は、該軸線(O)方向において、副切れ刃(11)の該軸線(O)方向における中間の位置よりも先端側の位置に設けられている。
【0018】
前記ねじ穴(15a)には調節ねじ(16a)が螺合され、前記挿入穴(15b)には調節楔(16b)が挿入される。前記調節ねじ(16a)を螺回しチップ座(3)側に進出させると、前記調節楔(16b)は、その楔面(16c)が該チップ(10)の副切れ刃(11)に対する取付基準面(10c)を押圧し、該チップ(10)を該工具本体(1)の径方向外側に向かって付勢する。そうすると、図4(a)および(b)に示すように該チップは、副切れ刃(11)の先端部(11A)が上記径方向の外側に位置を変えるように、僅かに回転する。そして、前記副切れ刃(11)の外径がD1からD2へ拡大し、外径の調節が行われることになる。
【0019】
図4(b)に示すように、副切れ刃(11)の外径D1がD2に拡大すると、副切れ刃(11)は、調節前の状態に対してα゜傾き、バックテーパ(BT2)を確保する。よって、副切れ刃(11)と加工穴内壁との接触が不必要に長くならないので、切削抵抗が増加しない。さらに、副切れ刃(11)の該軸線(O)回りの回転形状は、上述したように副切れ刃(11)がα゜傾いた場合にも、調節前と同一の円弧で構成されるので、加工穴内壁の仕上げ面形状は実質的に変わらず、表面あらさが安定する。このように、この実施例のリーマは、1つの調節ねじ(16a)を回転操作するだけで、該リーマの外径を調節することができ、バックテーパを調節する部材および調節する作業を必要としない。そのため、調節機構が簡単であり、調節作業が容易且つ短時間で行える。そのうえ、加工穴内壁の表面あらさが安定するという効果を有する。
【0020】
該リーマの外径の調節後、該チップ(10)の取付基準面(10c、10d)の一部は、チップ座(3)の側壁(3b、3c)から僅かに離れる。このとき、該チップ(10)は、クランプねじ(14)によってチップ座の両側壁(3b、3c)に向かって押し付けられているため、調節楔(16b)の楔面(16c)とチップ座の側壁(3b、3c)とによって常に押圧された状態となり、強固にクランプされている。
【0021】
この実施例のリーマは、副切れ刃(11)の外径を所定の寸法に調節した後、後端側に設けられたシャンク部(図示しない)を工作機械の主軸(図示しない)に把持され回転駆動される。そして、該リーマは、該軸線(O)を被削材に予め加工された加工穴(図示しない)の中心軸線に一致するように位置決めされ、該軸線(O)方向先端側へ送りを与えられ、前記加工穴の仕上げ加工を行う。
【0022】
副切れ刃(11)によって切削された加工穴内壁の仕上げ面(W)は、副切れ刃(11)の該軸線(O)回りの回転形状が転写され、図5(b)の斜線部で示すように該リーマの1回転当たりの送り(f)のピッチで凹凸を繰り返す。図5(a)に示すように副切れ刃(11)が直線の場合、副切れ刃(11)の該軸線(O)に対する傾き(α゜)が大きくなるにしたがい、仕上げ面(W)の最大高さ(Ry)が大きくなっていくが、本実施例のリーマでは、上記傾き(α゜)が大きくなっても、副切れ刃(11)の円弧部が仕上げ面(W)に転写されるので、仕上げ面(W)の表面あらさにおける最大高さ(Ry)は実質的に変化せず、表面あらさが安定する。また、仕上げ面(W)に周期的に発生する継ぎ目(X)の凸部が尖鋭にならず、目視での送りマークが目立たないので、仕上げ面外観が向上する。
【0023】
副切れ刃(11)の回転形状における円弧の曲率半径(R1)は、副切れ刃(11)の該軸線(O)方向の長さや送り条件に応じて、10mm〜200mmの範囲で適宜設定される。これは、上記曲率半径(R1)が10mm未満では、加工穴内壁の仕上げ面(W)に形成された凹凸の山と谷の差(Ry)が大きくなり表面あらさが劣化してしまうからであり、上記曲率半径(R1)が200mm以上になると、副切れ刃(11)の該軸線(O)に対する傾きが大きくなった場合、加工穴内壁の仕上げ面(W)に副切れ刃(11)の円弧が転写されなくなり、仕上げ面あらさが不安定となるからである。
【0024】
本発明の実施例における副切れ刃(11)の該軸線(O)回りの回転形状は、円弧で形成され、該リーマの外径を調節するに伴い、副切れ刃(11)が傾斜したときに、前記円弧で形成されればよい。したがって、副切れ刃(11)の上記回転形状は、上述したもの以外に、図2(b)と(c)に示すように、2つ以上の円弧を隣接させたもの、又は、円弧と直線とを隣接させたものであってもよい。
【0025】
図3(b)において、副切れ刃(11)の該軸線(O)回りの回転形状は、該軸線(O)方向において先端から後端側に向かって3つの異なる曲率半径(R2、R3、R4)の円弧(11a、11b、11c)が隣接している。これら3つの円弧(11a、11b、11c)は、該工具本体の径方向外側に向かって凸状をなし、曲率半径(R2、R3、R4)は10mm〜200mmの範囲に設定される。外径が最大となる点(11C)は、副切れ刃(11)の該軸線(O)方向の先端部(11A)と後端部(11B)との間にあり、前記点(11C)より後端側の円弧にはバックテーパが付与されている。前記点(11C)を有する円弧(11c)の曲率半径(R3)が最も大きく、この円弧が加工穴内壁の仕上げ面に転写されることとなる。
【0026】
図3(c)において、副切れ刃(11)の該軸線(O)回りの回転形状は、曲率半径R5の円弧(11e)と、その円弧の後端に隣接する直線(11f)と、からなる。前記円弧(11e)は径方向外側に向かって凸状をなし、曲率半径R5が10mm〜200mmの円弧をなす。外径が最大となる点(11C)は、この円弧上の先端部(11A)と後端部(11F)との間にあり、前記点(11C)より後端側の円弧と直線にはバックテーパが付与されている。そしてこの円弧が加工穴内壁の仕上げ面に転写されることとなる。
【0027】
以上説明した図3(b)および(c)に示すような回転形状を有する副切れ刃(11)においては、上述した1つの円弧からなる副切れ刃(11)と同様の作用効果が得られる。図3(a)乃至(c)に示した副切れ刃(11)の軸線(O)回りの回転形状においては、該副切れ刃(11)の外径の調節をした後に、先端部(11A)および後端部(11F)の直径が外径寸法より小さく設定されるべきである。さらに好ましくは、該副切れ刃(11)の上記回転形状において、前記先端部(11A)の直径は、前記先端部(11A)から該リーマの1回転当たりの送り量だけ後端側の位置における直径よりも小さいべきである。そうすれば、加工穴内壁は、該副切れ刃を形成する円弧、または、円弧と直線によって加工されることになり、仕上げ面の表面あらさが良好となる。また、該副切れ刃(11)の軸線(O)回りの回転形状における円弧の曲率半径が大きくなると、該副切れ刃(11)の外径と、先端部(11A)および後端部(11B)の直径との差が非常に小さくなるため、該副切れ刃(11)の上記回転形状における円弧の曲率半径の製造誤差は、前記曲率半径の−30%〜30%の範囲とされるのが好ましい。さらに好ましくは−20%〜20%の範囲とされるべきである。
【0028】
次に、本発明の第2の実施例を図6に示す。図6(a)はこの実施例のリーマの先端部の正面図であり、図6(b)は、図6(a)に示すリーマのD−D断面図である。この実施例のリーマは、チップ(10)をロケータ(40)を介して工具本体(1)に着座させたものである。この実施例のリーマに用いられるチップ(10)は、第1の実施例に用いられたものと同一チップである。チップ(10)はクランプねじ(14)によって側壁(3b、3c)に押し付けられ、チップ座(3)の底面(3a)に強固に固定される。ロケータ(40)は工具本体(1)のロケータ取付座(6)の底面(6a)にねじ(41)によって着座される。そして、前記ロケータ(17)が該軸線(O)の先端側を調節ねじ(16a)と調節楔(16b)とによって付勢されることにより、前記ロケータ(40)に固定されたチップ(10)は、その副切れ刃(11)の先端部(11A)を該工具本体(1)の径方向外側に移動させられる。
【0029】
次に、本発明の第3の実施例を図7に示す。図7(a)はこの実施例のリーマの先端部の正面図である。図7(b)は図7(a)に示すリーマのE−E断面図である。この実施例のリーマは、チップ(10)がその上面に形成された傾斜面(10e)をクランプ駒(42)に押圧されることによってチップ座(3)に着座される。前記クランプ駒(42)にはねじ穴(42b)が設けられ、このねじ穴(42b)に左右ねじ(43)の一方のねじ(43a)が螺合し、他方の逆ねじ(43b)が工具本体(1)に設けられたねじ穴(17)に螺合する。この左右ねじ(43)を回転させると、クランプ駒(42)は、その押圧部(42a)がチップ(10)上面に設けられた傾斜面(10e)を押圧し、チップ(10)をチップ座(3)の底面(3a)へ押し付けるとともに、該軸線(O)に向かって押し付ける。副切れ刃(11)の外径の調節は、第1の実施例と同様に調節ねじ(16a)を回転させ、副切れ刃(11)の先端部(11A)を該工具本体(1)の径方向外側に移動させることによって行われる。このときにも、チップ(10)は、クランプ駒(42)の押圧部(42a)によって該軸線(O)に向かって、押圧されているので、強固に固定されている。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のリーマは、軸線(O)を中心とする略円柱状の工具本体の先端部に、副切れ刃を該工具本体の外周面から突出させてスローアウェイチップが着脱自在に設けられたスローアウェイ式リーマにおいて、
前記副切れ刃は、該軸線(O)回りの回転形状が少なくとも1つの円弧、または、少なくとも1つの円弧と、この円弧の該軸線(O)方向後端に連なる少なくとも1つの直線と、で形成され、前記円弧が該工具本体の径方向外側に凸状をなし、前記副切れ刃の外径が最大となる点に対し、該軸線(O)方向の後端側の外径が上記最大外径より小さくされるとともに、該スローアウェイチップは、前記副切れ刃の該軸線(O)方向における中間の位置より先端側の位置を該工具本体の径方向外側に向かって付勢されることを特徴とするスローアウェイ式リーマである。
【0031】
上述した構成のリーマによれば、副切れ刃は、外径が最大となる位置から軸線(O)方向の後端側では外径が縮小し、バックテーパが付与される。そのため、前記副切れ刃と加工穴内壁との接触長さが不必要に長くならず、切削抵抗が低減され、びびりが防止され、加工穴径が安定する。また、前記付勢によって、副切れ刃は、該軸線(O)方向の先端部が工具本体の径方向外側に向かって移動し、該リーマの外径が調節され、同時に副切れ刃のバックテーパも確保される。チップを付勢するにあたっては、副切れ刃の該軸線(O)方向における中間の位置より先端側の1つの位置のみ付勢すればよいので、該リーマの外径の調節機構が簡易であり、且つ、外径の調整が非常に容易となる。該リーマの外径を調節するに伴い、副切れ刃は、該軸線(O)に対する傾きが僅かに変化することになる。しかし、前記副切れ刃の回転形状は、円弧をなすので上記傾きの影響を受けることがない。よって、加工穴内壁の仕上げ面は、副切れ刃の傾きの変化にかかわらず同一円弧で形成されるので、仕上げ面あらさが安定する。特に高送り加工したときの上記仕上げ面あらさは、副切れ刃の回転形状が直線をなすものと比較すれば、大幅に向上する。
【0032】
以上のことから、本発明のリーマは、副切れ刃の外径およびバックテーパの調節を容易に行えるとともに、加工穴内壁の仕上げ面あらさを安定させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の第1の実施例の先端部の正面図である。
(b)図1(a)におけるA−A断面図である。
【図2】(a)本発明の第1の実施例に用いられるチップの正面図である。
(b)図2(a)に示すチップの側面図である。
(c)図2(a)におけるA−A断面図である。
(d)本発明の第1の実施例に用いられる他のチップの正面図である。
(e)図2(a)に示すチップの側面図である。
(f)図2(a)におけるB−B断面図である。
(g)本発明の第1の実施例に用いられる他のチップの正面図である。
(h)図2(d)に示すチップの側面図である。
(i)図2(d)におけるC−C断面図である。
【図3】(a)本発明の第1の実施例のリーマにおける副切れ刃の軸線(O)回りの回転形状である。
(b)本発明の第1の実施例のリーマにおける副切れ刃の軸線(O)回りの回転形状の変形例である。
(c)本発明の第1の実施例のリーマにおける副切れ刃の軸線(O)回りの回転形状の変形例である。
【図4】(a)本発明の第1の実施例における副切れ刃の外径の調節前後におけるチップの移動状態を示す図である。
(b)図4(a)に示すチップの副切れ刃の拡大図である。
【図5】(a)従来リーマの加工穴内壁の仕上げ面を示す図である。
(b)本発明の第1の実施例の加工穴内壁の仕上げ面を示す図である。
【図6】(a)本発明の第2の実施例の正面図である。
(b)図6(a)におけるD−D断面図である。
【図7】(a)本発明の第3の実施例の正面図である。
(b)図7(a)におけるE−E断面図である。
【図8】(a)従来のリーマの正面図である。
(b) 図8(a)に示すリーマの先端視側面図である。
(c) 図8(a)に示すリーマのチップ座付近の拡大正面図である。
【符号の説明】
1 工具本体
2 切りくずポケット
3 チップ座
10 チップ
11 副切れ刃
12 主切れ刃
16a 調節ねじ
16b 調節楔
40 ロケータ
42 クランプ部材
Claims (2)
- 軸線(O)を中心とする略円柱状の工具本体の先端部に、副切れ刃を該工具本体の外周面から突出させてスローアウェイチップが着脱自在に設けられたスローアウェイ式リーマにおいて、
前記副切れ刃は、該軸線(O)回りの回転形状が少なくとも1つの円弧、または、少なくとも1つの円弧と、この円弧の該軸線(O)方向後端に連なる少なくとも1つの直線と、から形成され、前記円弧が該工具本体の径方向外側に凸状をなし、前記副切れ刃の外径が最大となる点に対し、該軸線(O)方向の後端側の外径が上記最大外径より小さくされるとともに、該スローアウェイチップは、前記副切れ刃の該軸線(O)方向における中間の位置より先端側の位置を該工具本体の径方向外側に向かって付勢されることを特徴とするスローアウェイ式リーマ。 - 前記副切れ刃の該軸線(O)回りの回転形状における円弧の曲率半径が10mm〜200mmであることを特徴とする請求項1に記載のスローアウェイ式リーマ。
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