JP4069673B2 - 内径加工用スローアウェイ式切削工具 - Google Patents
内径加工用スローアウェイ式切削工具 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内径加工用スローアウェイ式切削工具に関し、特に、ボーリング(中ぐり)などの内周面加工に適した内径加工用スローアウェイ式切削工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、中ぐり等の内径加工に用いられるボーリングバーは、形状の設計が容易でチップ交換に際しても刃先の取付け精度が高いスローアウェイチップをホルダの先端に取り付けたスローアウェイ式のものが多用されている。
【0003】
かかるボーリングチップにおいては、小さい内径の穴への中ぐり加工等の要求が高く、この要求に対応するために、例えば、特開平11−320217号に記載されるように、チップの周面に小さな径の突出部を形成し、該突出部の先端に切刃を設けたスローアウェイチップが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−320217号のようにチップ本体の周面に突出部を形成したチップでは、穴の中ぐり加工は可能となるものの、切刃の位置精度が悪くなるとともに、切削時にびびり振動が発生しやすくなり、特に小さい内径の穴加工を行う際には切刃の位置が大きくずれて、加工精度が悪くなってしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記課題に対してなされたもので、内径加工の加工精度を向上させることが可能なスローアウェイ式切削工具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に対して検討した結果、チップ本体の複数の周面のうち一対の長い辺を各々含むチップ本体の周面に隣接して設けられる突出部を備えたスローアウェイチップにおいて、チップ本体の複数の周面のうち一対の長い辺を各々含むチップ本体の周面のいずれか一方と他の2つの周面とを含む3つの周面が、ホルダに当接してクランプされるクランプ面であり、かつ、突出部の形成位置をクランプされる周面の延長線よりも内側となるようにするとともに、このクランプされる周面を表面粗さ(Ry)が0.8μm以下の研磨面とすることによって、スローアウェイチップの寸法精度が向上して切刃の位置精度が向上するとともにチップのクランプ力が向上することによってビビリ振動を低減できることを知見し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明の内径加工用スローアウェイ式切削工具は、すくい面をなす上面が、対向する一対の辺が他の辺に比べて長い概略多角形状であるチップ本体と、先端に切刃が形成されるとともに、前記チップ本体の周面から一体的に突出して、かつ、前記チップ本体の複数の周面のうち前記一対の長い辺を各々含むチップ本体の周面に隣接して設けられる突出部と、を備えたスローアウェイチップと、先端に前記スローアウェイチップが取り付けられるチップポケットが設けられたホルダと、を具備してなり、前記チップ本体の複数の周面のうち前記一対の長い辺を各々含むチップ本体の周面のいずれか一方と他の2つの周面とを含む3つの周面が、前記ホルダに当接してクランプされるクランプ面であるとともに、該クランプ面は、表面粗さ(Ry)が0.8μm以下の研磨面であり、前記突出部は、上面視において、前記長い辺の延長線よりも内側に位置させたことを特徴とするものである。
【0008】
より具体的には、前記チップ本体は、上面視において、概略六角形形状であることを特徴とする。
また、前記チップ本体の複数の周面のうち少なくとも3面以上がクランプ面であることが望ましい。
さらに、前記クランプ面は、前記長い辺を含むチップ本体の周面と、前記チップ本体の複数の周面のうち対向する2つの周面と、を含んでなることが望ましい。
【0009】
またさらに、上面視において、前記突出部先端に配設される切刃と前記クランプされる周面の延長線との最近接する部分の隙間は0.1〜1mmであることが望ましい。
【0010】
また、前記切刃の先端はR=0.03〜0.4mmのコーナーRを有することが望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の内径加工用スローアウェイ式切削工具の一例について、その概略平面図である図1を基に説明する。
【0012】
図1の内径加工用スローアウェイ式切削工具1は、ホルダ2の先端に配設したチップポケット3に、概略多角形状のチップ本体5と、チップ本体5の周面から一体的に突出する複数の突出部6、6’を備え、突出部6、6’の先端それぞれに切刃7、7’を設けたスローアウェイチップ(以下、単にチップと略す。)8を取り付けてなる。
【0013】
チップ8の具体的な形状について説明すると、例えば、チップ本体5の形状は、特にボーリング加工や溝入れ加工等の内径加工を施す部分が被削材の広くフラットな面に内径加工を施すような場合においても容易に内径加工が可能であり、後述する突出部6の長さを長くできるとともに、研磨の容易さの点、クランプ力を高める点で、対向する一対の辺10a、10dが他の辺に比べて長い概略六角形形状であることが望ましく、その寸法は長軸aが9〜15mm、特に10〜13mm、短軸bが6〜10mm、特に6.5〜9mmであることが望ましい。この対向する一対の長い辺10a、10dに隣接して、特に長い辺10a、10dの延長線方向より5〜45°内側になる方向に突出部6、6’が形成されている。
【0014】
また、チップ8を図1のP方向から見た正面図である図3に示すように、チップ8の厚みt1は加工に耐えうる強度を持つ上では、2〜5mm、特に2.5〜4mmであることが望ましい。
【0015】
さらに、突出部6の形状は、小さな内径の穴に対しても中ぐり加工等の内径加工が容易にできる点で、直径1〜2mmの円柱状、楕円柱、またはコーナーRを有する一辺が0.5〜1mmの四角柱状で、その突き出し長さLはチップ本体5の長軸aに対する比L/aが0.2〜0.5、特に0.3〜0.4であることが望ましい。
【0016】
また、チップ本体5の厚みt1に対する突出部6の厚みt2は、小径の穴加工ができるとともに突出部6の剛性、強度を高めて突出部6のたわみや破損を防止できる点で、厚み比(t2/t1)が0.4〜1であることが望ましい。
【0017】
突出部6の先端に形成される切刃7は、中ぐり加工に適するように突出部6が進行方向に対して前方に配置される形状や、引き加工に適するように突出部6が進行方向に対して後方に配置される形状等適宜調整される。さらに、切刃7には適宜ブレーカを形成することもできる。
【0018】
本発明によれば、チップ8をチップ本体5の複数の周面10a、10b、10cにてクランプするとともに、該クランプ面10a、10b、10c(および10d)を表面粗さ(Ry)が0.8μm以下、特に0.5μm以下の研磨面としたことが大きな特徴であり、これによって、チップ8の取り付け位置精度が向上することから、切刃7、7の位置精度を著しく向上させることができるとともに、チップ8のクランプ力を高めて切削時のびびり振動を抑制することができる結果、安定した精度の高い内径加工が可能となる)。すなわち、チップ8の位置精度が悪いとクランプ力が低下し、クランプ力が低下するとびびり振動等により切刃位置が狂う可能性がある。なお、ホルダは基本的に交換しないので交換するチップの位置精度がよければ問題はなく、チップポケットの壁面の表面粗さは通常は問題にならない。クランプ面10a〜10dの表面粗さ(Ry)が0.8μmを超えるとチップ8の取り付け位置精度が低下して切刃7の位置ずれが生じるとともに、チップ8のクランプ力が極端に低下して、切削時のびびり振動が増大する。
【0019】
また、本発明によれば、クランプ面10a〜10dの表面粗さ(Ry)を上記範囲に制御して研磨加工を容易かつ精度の高いものとするために、突出部6がクランプ面10a、10cの延長線AおよびBよりも内側に位置することが重要である。このように構成すると、突出部が研磨加工の際に邪魔にならないので研磨加工が容易かつ精度よくできる。また、かかる構成によれば、チップ8をホルダ2に取り付けた際にチップポケット3内に収納されるほうの突出部6’が収納時の妨げとなることはなく、チップポケット3を単純な形状にできることから、チップポケット3の寸法精度が高く、チップ8の取付け精度を向上できるという効果もある。
【0020】
なお、研磨加工時に切刃7を誤って加工し切刃7の形状が変化してしまうことを防止する点で、突出部6先端に配設される切刃7’とクランプ面10aの延長線との最近接する部分の隙間が0.1〜1mmであることが望ましい。
【0021】
さらに、本発明によれば、切削面の平滑性を高め、切刃7の強度を高める点で、図2の切刃7部分の要部拡大図に示すように、切刃7がR=0.03〜0.4mmのコーナーRを有することが望ましい。R<0.03mmの場合は、切刃強度が低下するとともに、研削面が粗くなりやすい。また、R>0.4mmの場合は、切削抵抗が増大して切れ味が悪くなりびびりが発生しやすくなる。
【0022】
なお、上記チップ8は、例えば超硬合金、サーメット、セラミック、ダイヤモンド、CBN等からなり、また、かかる母材の表面の少なくとも切刃7部分にTiC、TiCN、TiN、TiAlN、Al2O3の群から選ばれる少なくとも1種の硬質膜を被覆することもできる。
【0023】
また、図1、3およびチップ8を図1のQ方向から見た図4に示すように、チップ本体5には厚さ方向に貫通するクランプねじ用の貫通孔12が配設されており、貫通孔12およびホルダ2のチップポケット3内に形成されるネジ孔(図示せず)内にクランプネジ11をネジ止めすることによってチップ8をホルダ2に装着することができる。なお、貫通孔12のすくい面4側の周縁にはテーパを形成することが望ましい。
【0024】
なお、チップ8をクランプする形態としては、上記クランプネジ11によるねじ止め以外にも、シャンクへクランプ駒を装着してクランプオン方式とする方法であってもよく、この場合にはチップ本体5には貫通孔12に代えて凹状のクランプ駒の受け部(図示せず)を設けるか、またはチップ本体5の主面が平坦面であってもよい。
【0025】
また、上述したチップ8を保持するホルダ2は、例えば、断面が角形をなす柱状のシャンク13の先端に図1に示すようなチップポケット3を形成してなり、ホルダ2のシャンク13を刃物台(図示せず)の所定位置に固定して中ぐり加工等を行う。
【0026】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の内径加工用スローアウェイ式切削工具によれば、先端に切刃が形成された突出部をチップ本体の複数の周面のうち一対の長い辺を各々含むチップ本体の周面に隣接して設けたスローアウェイチップにおいて、チップ本体の複数の周面のうち一対の長い辺を各々含むチップ本体の周面のいずれか一方と他の2つの周面とを含む3つの周面が、ホルダに当接してクランプされるクランプ面であり、かつ、突出部の形成位置をクランプ面の延長線よりも内側となるようにするとともに、該クランプ面を表面粗さ(Ry)が0.8μm以下の研磨面とすることによって、スローアウェイチップの寸法精度が向上して切刃位置精度が向上するとともにチップのクランプ力が向上することによってビビリ振動の低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内径加工用スローアウェイ式切削工具の概略平面図である。
【図2】図1の内径加工用スローアウェイ式切削工具のスローアウェイチップの切刃部分の要部拡大図である。
【図3】図1の内径加工用スローアウェイ式切削工具のスローアウェイチップを矢印P方向から見た図である。
【図4】図1の内径加工用スローアウェイ式切削工具のスローアウェイチップを矢印Q方向から見た図である。
【符号の説明】
1 内径加工用スローアウェイ式切削工具
2 ホルダ
3 チップポケット
5 チップ本体
6 突出部
7 切刃
8 スローアウェイチップ
10(10a、10b、10c) クランプ面
11 クランプネジ
12 貫通孔
13 シャンク
Claims (5)
- すくい面をなす上面が、対向する一対の辺が他の辺に比べて長い概略多角形状であるチップ本体と、先端に切刃が形成されるとともに、前記チップ本体の周面から一体的に突出して、かつ、前記チップ本体の複数の周面のうち前記一対の長い辺を各々含むチップ本体の周面に隣接して設けられる突出部と、を備えたスローアウェイチップと、
先端に前記スローアウェイチップが取り付けられるチップポケットが設けられたホルダと、を具備してなり、
前記チップ本体の複数の周面のうち前記一対の長い辺を各々含むチップ本体の周面のいずれか一方と他の2つの周面とを含む3つの周面が、前記ホルダに当接してクランプされるクランプ面であるとともに、
該クランプ面は、表面粗さ(Ry)が0.8μm以下の研磨面であり、
前記突出部は、上面視において、前記長い辺の延長線よりも内側に位置する内径加工用スローアウェイ式切削工具。 - 前記チップ本体は、上面視において、概略六角形形状であることを特徴とする請求項1記載の内径加工用スローアウェイ式切削工具。
- 前記クランプ面は、前記長い辺を含むチップ本体の周面と、前記チップ本体の複数の周面のうち対向する2つの周面と、を含んでなることを特徴とする請求項1または2記載の内径加工用スローアウェイ式切削工具。
- 上面視において、前記突出部先端に配設される切刃と前記クランプされる周面の延長線との最近接する部分の隙間が0.1〜1mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の内径加工用スローアウェイ式切削工具。
- 前記切刃の先端がR=0.03〜0.4mmのコーナーRを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の内径加工用スローアウェイ式切削工具。
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