JP4330749B2 - インサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインサート成形後にダイラインが殆ど見えないインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルム及びインサート成形性に優れたインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムに関する。さらに詳しくは加工適性に優れておりかつインサート成形用途に好適で表面性に優れ、高温時に低伸縮性である寸法安定性に優れたポリカーボネート樹脂フィルムとその成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は安価で軽量かつ透明性、成形性、光学特性、耐熱性、加工性、機械的強度に優れている等の特長を生かして種々の分野で幅広く使用されかつポリカーボネート樹脂フィルムとしても使用されており該フィルムに印刷や熱成形、真空成形、インサート成形、金属蒸着、スパッタリング等に幅広く利用されているが近年、印刷や熱成形等の加工技術の進歩に伴い生産速度が速く、かつ加工時間の短縮化による高温、高速化により加工条件も厳しくなっている。
【0003】
従来、ポリカーボネート樹脂を溶融してフィルム状に押出し複数個の冷却ロールを用いて製造するに当たり、溶融押出しされたシート状物をそのままの状態で挟持加圧しないで一個の冷却ロールで受ける片面タッチ方式で製造された該フィルムは、インサート成形で使用される際、成形品の表面にある該フィルムのダイラインが外観上問題となっている。
【0004】
ダイラインはTダイから押出される溶融樹脂がTダイの金属壁面に付着したその付着跡が洗浄痕となって表われるダイラインと、Tダイのリップ口に付着した樹脂跡を通過した模様のダイラインとがあり、これらのダイラインの凹凸は約0.05〜1.0μm程度でその幅は約1〜1000μm程度の山と谷からなっている。
【0005】
特に、インサート成形に使用されるポリカーボネート樹脂フィルムは、通常、少なくとも片面を例えば印刷、ハードコート等の表面加工して使用される。この表面加工した該フィルムをインサート成形した際、成形品表面の外観は表面加工によりダイラインが浮き出てくるまたは増幅されて目立つため、自動車の窓、携帯電話の表示窓、電卓・複写機の表示部分等に使用した場合、被写体または文字等が歪んで見える。即ち、透視像を歪めるなどの不具合が発生するため好ましくなく、製品としての価値が大幅に低下するという問題が発生していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、インサート成形用に用いた時、ダイラインが外観上殆ど目立たないインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムでかつ寸法安定性に優れたインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムを提供することにある。
【0007】
本発明者は、従来の技術を解決すべく鋭意検討した結果ポリカーボネート樹脂を溶融してフィルム状に押出されたシート状物をそのままの状態で挟持加圧しないで一個の冷却ロールで受ける片面タッチ方式で製造する際に、溶融押出しするTダイに着目し、該先端部分であるリップ口のエッジのRおよび表面粗さRaが特定範囲のTダイを使用し、かつ冷却時の温度及び引取による延伸で二次成形時に収縮が起こることに着目し引き取るロールの回転速度と温度をある範囲に制御して生産すれば、上記課題を達成し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明はリップエッジのRが0.005〜0.05mmであり、かつ表面粗さRaが0.005μm以下であるTダイから押出した溶融ポリカーボネート樹脂を片面タッチ方式の冷却ロールで冷却して製造された、厚さが0.05〜0.5mmであるポリカーボネート樹脂フィルムであって、該ポリカーボネート樹脂フィルムのダイラインの凹凸差△Dtおよびダイラインの幅Dwが下記式(1)および下記式(2)
0.1≦△Dt≦0.5 …(1)
1≦Dw≦500 …(2)
[式中、△Dtはフィルムダイラインの凹凸差(μm)、Dwはダイラインの幅(μm)]を満足するインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムに係るものである。また本発明はポリカーボネート樹脂をインサート成形する際に金型内に、インサートするフィルムとしては前記に記載したポリカーボネート樹脂フィルムを使用することを特徴とするポリカーボネート樹脂のインサート成形品にも係わる。
【0009】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法または溶融法で反応させて得られるものである。二価フェノールの代表的な例としては2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられ、なかでもビスフェノールAが好ましい。これらの二価フェノールは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0010】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0011】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。更に、ポリカーボネート樹脂には、必要に応じて添加剤例えば多価アルコールと脂肪酸のエステルまたは部分エステル等の離型剤、亜リン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等の熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、アセトフェノン系、サリチル酸エステル等の紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、増白剤、難燃剤等を配合しても良い。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0012】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で10,000〜100,000が好ましく、15,000〜35,000がより好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり好ましい。本発明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mLにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
【0013】
本発明のインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムは、フィルムのダイラインの凹凸差△Dt(μm)及びダイラインの幅Dw(μm)が下記式を満足するものである。
0.1≦△Dt≦0.5 …(1)
1≦Dw≦500 …(2)
【0014】
フィルムダイラインの凹凸差△Dtとダイラインの幅Dwが上記式(1)、(2)を満足することは、該フィルムを用いてインサート成形した際、成形品のダイラインは殆ど目立たなくなり、得られた成形品の外観も良好になる。またこの適度な表面性を有することは、該フィルムがインサート成形時にスームズに装着でき、皺のないインサート成型品が得られる利点がある。一方、上記式(1)、(2)の範囲を逸脱したフィルムを用いた場合は、インサート成形品の外観、即ちフィルムのダイラインが増幅して目立ち外観不良が発生するので、△DtとDwの値は△Dtは0.2〜0.4μmが好ましい。Dwは1〜300μmが好ましく、50〜300μmがより好ましい。最も好ましくは100〜300μmである。
【0015】
このダイラインは形状によって目立ち具合が違ってくる。例えば同じ△DtであってもDwが大きい緩やかなカーブを描いたものは目立ちにくく、Dwが小さい急峻なカーブを描いたものは目立ち易い。それ故、△DtとDwの比をR(△Dt/Dw)とすると0.0002〜0.5が好ましく、0.0007〜0.01がより好ましい。最も好ましくは0.001〜0.004である。
【0016】
また、成型時に挟持加圧する両面タッチ品のフィルムは、ダイラインはないがギヤマークがあるのでインサート成形した際、ギヤマークが目立ちインサート成形品の外観が不良(ギヤマークが目立つ、増幅する)になる。
【0017】
本発明のインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムは、加熱温度が160℃での巾方向の加熱伸縮率(%)STDと押出方向の加熱伸縮率(%)SMDの比が下記式(3)を満足するものが好ましい。
0.3≦STD/SMD≦3 …(3)
このSTD/SMDの比が上記比を満足することは、インサート成形時に縦・横の加熱伸縮率の比がほぼバランス状態に保たれ、収縮応力の偏りが起こらず、均一な応力がフィルムにかかる。それ故、インサート成形時のフィルム皺の発生を抑止でき、インサート成形品の外観が良好になる。一方、この範囲を逸脱すると収縮応力に偏りができ、得られるフィルムの押出方向または巾方向のうち一方で縮みがさらに他方向は伸びが発生する等の伸縮バランスが崩れ、インサート成形品の外観が不良(皺の発生)になる。このSTD/SMDの比は0.4〜2が好ましく、0.5〜1.1がより好ましい。
【0018】
また、STDとSMDは各々下記式(4)または(5)を満足するものである。
−5.0≦STD≦−0.2 …(4)
−5.0≦SMD≦−0.2 …(5)
STDとSMDが適度な加熱伸縮率をもつことで、インサート成形中に発生した伸縮応力がフィルムを適度な緊張状態に保持することができる。この加熱伸縮率が−5.0%より小さくなると伸縮が大きく、外観不良が発生する。また−0.2%を越えると、加熱によりフィルムが伸びるため、外観不良が発生し実用に供し難くなり、本発明の課題が達成できない。
【0019】
本発明のポリカーボネート樹脂フィルムを製造するには、Tダイから押出した溶融ポリカーボネート樹脂を、片面タッチ方式の複数個の鏡面冷却ロールで冷却してフィルムに成形する。その厚さは0.05〜0.5mmが好ましい。この際使用する装置としては特別な装置である必要はなく、製膜、フィルムまたはシートの製造に使用される装置が任意に採用される。
【0020】
ポリカーボネート樹脂フィルムのダイラインを少なくする方法としては押出成形時に溶融樹脂の温度の調整や溶融粘度の選定、あるいは冷却ロールとTダイとのエアーギャップ、さらに溶融樹脂フィルムが冷却ロールに接する落下位置の調整あるいは冷却ロールに接した溶融ポリカーボネート樹脂フィルムに高電圧を付与する方法、使用するTダイのリップエッジRと表面粗さRaを特定範囲にする方法等があげられる。中でも使用するTダイのリップエッジRと表面粗さRaを特定範囲にする方法が好ましい。
【0021】
使用するTダイは、そのリップエッジのRが0.005〜0.05mmかつ表面粗さRaが0.005μm以下であることが好ましい。リップエッジのRは、リップエッジを面取りしたコーナー部分の半径を称し、0.005mm未満であるとリップ口が鋭利な刃先になるため清掃又はTダイ組み立て時などに破損する可能性が高くなり好ましくない。また、従来から一般に使用されているTダイのリップエッジのRは0.2〜0.3mmのものが用いられているが、かかるTダイでは長時間の連続成形で溶融したポリカーボネート樹脂がリップ口に付着して、ダイラインがフィルム表面に観察されるという問題が生じていたが0.05mm以下のリップエッジを採用することで樹脂が付着しにくく、ダイラインがフィルム表面に観察されなくなる。また、そのリップエッジは左右対称であることが望ましく、対称であればリップ口から吐出された溶融樹脂フィルムが落下する時波打つことなくロールに接触し、フィルム表面にうねりが発生するという問題が生じ難く好ましい。
【0022】
さらに、Tダイのリップエッジの表面粗さRaは0.005μm以下が好ましく、より好ましくは0.0001〜0.005μmであり、更に好ましくは0.0002〜0.003μmであり、最も好ましくは0.0003〜0.001μmである。0.005μm以下であると、得られるポリカーボネート樹脂フィルム表面に現れるダイラインが淡くなり外観が良好になる。
【0023】
一般的にTダイは、金属角材を切削機により加工して作製される。本発明で使用されるTダイのリップエッジR部分と所定の表面粗さRaを有する部分は表面仕上げとして非常に精密な研磨処理が施され、さらに腐食防止のためクロム鍍金などの鍍金処理が施される。本発明におけるTダイのリップエッジの表面粗さは、リップ口から約1cmまでのエッジ部分の表面粗さである。なお、リップエッジ部分の表面粗さは、リップエッジ部と同じ表面仕上げ処理を施したリップエッジ部よりリップ口内面上部の平面部分の表面粗さを測定した値で代用することができる。
【0024】
本発明のフィルムの製造方法を図によって説明する。図1は本発明に適したフィルムの製造装置の一例を示す概略図である。図中の1はTダイス、2は第1冷却ロール、3は第2冷却ロール、4は第3冷却ロール、5は一対の引取ロールであり、第1〜第3冷却ロールはいずれもその表面は鏡面仕上げになっており、その内部には熱媒体が循環し、温度を制御できるようになっている。また、図2は本発明の特定範囲のダイラインを有するフィルムを製造する一例を示すTダイのリップエッジR部分6、7の概略図である。
【0025】
まず溶融ポリカーボネート樹脂をTダイス1からシート状に押出す。この際の溶融押出しには格別の条件を必要とせず、通常のポリカーボネート樹脂シートの溶融押出し条件が任意に採用される。次いで押出されたシート状物は、そのままの状態で第1冷却ロール2と第2冷却ロール3との間に供給しながら中央の第2冷却ロール3に密着させてから他端の第3ロール4に受け継がれた後、一対の引取ロール5によって引取られる。
【0026】
この際、第2冷却ロール3に対する第3冷却ロール4の回転速度を1.001〜1.015倍にすることが好ましい。第2冷却ロール3に対する第3冷却ロール4の回転速度をこの範囲に保つと加熱伸縮のバランスが良好でインサート成形時に皺の発生のない成形品が得られる。
【0027】
さらに、前記第1冷却ロール2の温度は130〜145℃、第2冷却ロール3の温度は135〜150℃、第3冷却ロール4の温度は145〜155℃に設定することが好ましい。これら第1〜3冷却ロール2〜4の温度制御は、従来のロール温度制御手段により容易に行える。
【0028】
本発明の上記ポリカーボネート樹脂フィルムはインサート成形する際に、金型内にインサートするフィルムとして好適に使用することができる。かかるフィルムは、通常、少なくとも片面を表面加工して使用される。この表面加工としては、例えば印刷、ハードコート等があげられ、加工層は単一であっても複層であってもよい。この層の厚さは一般に0.1〜20μmである。片面を加工されたフィルムの場合は加工された面(両面加工の場合は所望の面)を金型表面側にし、フィルムをセッティングする。次いで熱可塑性樹脂を射出成形する。
【0029】
かかる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられるが、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0030】
更に本発明の上記ポリカーボネート樹脂フィルムは、特にポリカーボネート樹脂をインサート成形する際に、金型内にインサートするフィルムとして使用することができる。ポリカーボネート樹脂は通常280℃以上の成形温度で射出成形されることから、金型内にインサートするフィルムにおいても高度な耐熱性が要求され、本発明のポリカーボネート樹脂フィルムは高温時の加熱伸縮率も小さいものが好ましく採用され、また、該フィルムの厚みは0.05〜0.5mmの範囲が好ましく、0.1〜0.5mmの範囲がより好ましく、特に0.2〜0.4mmの範囲が好ましい。
【0031】
本発明で製造されるポリカーボネート樹脂フィルムは、その特性を生かして電気部品、自動車部品等のインサート成形品に広く利用され、具体的には電気部品の各種窓材即ち、車両(建設機械、自動車、バス、新幹線、電車車輌等)等の窓材のグレージング製品、各種銘板、写真カバー、プロジェクションテレビやプラズマディスプレーの前面板やフレネルレンズ用途にも好適である。
【0032】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明をさらに説明する。なお、実施例中の評価は下記に示す方法で従った。
(1)ダイラインの確認方法
100Vのハロゲンランプ付きプロジェクター(エルモ(株))から5mの位置にポリカーボネート樹脂フィルムを吊り下げ、その位置から10cm後ろの白板に映った像を目視で観察してでダイライン有無を確認した。ダイラインがあった場合×、なかった場合を○で表示した。
(2)ダイラインの凹凸及び幅の測定
上記の方法で確認した中で最も影が濃いダイラインをJIS B 0601の方式で触針式表面粗さ計((株)東京精密製)によって、カットオフ0.8mm、測定長さ4mmの条件で測定し、ベースライン法にてダイラインの凹凸及び幅を測定した。
(3)加熱伸縮率
JIS K 6735の加熱伸縮率試験法に準用し、160℃×40分の加熱条件で行った。
(4)インサート成形品の外観
実施例及び比較例で得られたインサート成形後の成形品の外観(ダイライン、皺、横縞)を目視で判定した。インサート成形後外観が良好なものを○、ダイラインの模様が強調され目立つようになったもの、横縞の模様が目立つようになったもの、またはインサートフィルムが歪んで波打ちやたるみによる皺又は成形品に反りが生じる等外観が損なわれたものを×で表示した。
【0033】
[実施例1〜3および比較例1〜3]
ビスフェノールAとホスゲンから界面重合法により製造した粘度平均分子量24、500のポリカーボネート樹脂を図1、図2に示した製造装置によりスクリュー径120mmのTダイリップの付いた押出機にて温度約280℃で押出し、幅1000mmで連続的に押出し、Tダイのリップエッジの表面粗さRa、第2冷却ロールに対する第3冷却ロールの速度比、第1〜第3冷却ロールのそれぞれの温度を表1記載の通りに設定して冷却させながらポリカーボネート樹脂フィルムを成形し、引取ロールにより引取り、得られたフィルムに印刷を行った。印刷後のフィルムを印刷面が金型表面側になるように射出成形金型内に装着し、ポリカーボネート樹脂ペレット(パンライトL−1225 帝人化成製)を用いて310℃の成形温度でインサート成形を行った。得られたフィルムの物性値、インサート成形後の成形品の外観を評価し、表2にその結果を示した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】
本発明のダイラインの殆ど目立たない、さらに寸法安定性に優れたポリカーボネート樹脂フィルムは、フィルムのダイラインの凹凸及び幅を特定範囲にすることで、インサート成形後の外観にあるダイラインが殆ど目立たなくなり、さらにフィルムの縦・横の加熱伸縮率とその比を特定範囲にすることで、成形中に発生した収縮応力によりフィルムを緊張状態に保持することができ、縦・横の加熱伸縮率の比をほぼバランス状態に特定することで、応力の偏りが起こらず、均一な応力がフィルムにかかるので適度で均一な応力の発生により、インサート成形時のフィルム皺の発生を抑止できるので、インサートフィルムとして好適に用いられ、インサート成形による射出成形品に極めて有用であり、その工業的効果は格別のものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフィルムを製造する装置の概念図である。
【図2】本発明のフィルムを製造するTダイのリップエッジR部分の図である。
【図3】実施例1で得られたポリカーボネート樹脂フィルムのダイラインの測定チャート(山の形状)である。
【図4】比較例1で得られたポリカーボネート樹脂フィルムのダイラインの測定チャート(谷の形状)である。
【符号の説明】
1 Tダイス
2 第1冷却ロール
3 第2冷却ロール
4 第3冷却ロール
5 一対の引取ロール
6 リップエッジR
7 リップエッジR
Claims (3)
- リップエッジのRが0.005〜0.05mmであり、かつ表面粗さRaが0.005μm以下であるTダイから押出した溶融ポリカーボネート樹脂を片面タッチ方式の冷却ロールで冷却して製造された、厚さが0.05〜0.5mmであるポリカーボネート樹脂フィルムであって、該ポリカーボネート樹脂フィルムのダイラインの凹凸差△Dtおよびダイラインの幅Dwが下記式(1)および下記式(2)
0.1≦△Dt≦0.5 …(1)
1≦Dw≦500 …(2)
[式中、△Dtはフィルムダイラインの凹凸差(μm)、Dwはダイラインの幅(μm)]を満足するインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルム。 - 加熱温度が160℃の時の加熱伸縮率が下記式(3)〜(5)を満足する請求項1記載のインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルム。
0.3≦STD/SMD≦3 …(3)
−5.0≦STD≦−0.2 …(4)
−5.0≦SMD≦−0.2 …(5)
[式中、STDは巾方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)] - ポリカーボネート樹脂を用いてインサート成形品を製造する際に、金型内にインサートするフィルムが請求項1または2記載のインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムであるポリカーボネート樹脂インサート成形品。
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