JP4324093B2 - 加工性と耐汚染性に優れたプレコート金属板及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プレコート金属板に関し、より詳しく言えば、加工性と耐汚染性を両立するプレコート金属板とその製造方法に関する。ここでは、プレコート金属板を塗装金属板とも称する。
建材、家電、雑貨、自動車などの分野においては、鋼板等の金属板を成形加工後に組立・塗装するという従来のポストコート方式に代わって、予め塗装を施された塗装金属板(プレコート金属板(略称PCM))を成形加工し、接合して製品とするプレコート方式が多く採用されるようになってきた。その使用により、需要家での塗装工程が省略でき、塗装廃棄物等による公害・環境問題の解決が図れ、更に塗装のためのスペースを他の用途に転活用できるなどのメリットがあることから、その需要量は着実にのびてきている。
塗装金属板は、需要家の様々な要望に応えるために、種々の特性を備えたものが実用に供されている。例えば、加工性に優れたもの、耐汚染性に優れたもの、耐候性に優れたもの、耐食性に優れたものなど、使用目的に応じた各種の製品が存在する。
塗装金属板の塗膜は、金属板上に形成した下塗り層(プライマーコート層)と上塗り層(トップコート層)の2層構造で構成されるのが一般的であり、場合により、下塗り層と金属板との間に下地処理層(クロメート処理層、あるいはクロムフリーの下地処理層など)、あるいは上塗り層の上にクリアコート層、を含むこともある。
基本的構成である2層構造の塗膜の塗装金属板は、通常、金属板上に下塗り層の塗料を塗布し焼き付け後に、上塗り層の塗料を塗布し焼付けるという、2回の塗布と2回の焼付け(一般に2コート2ベークと称される)により製造される。
複数の塗料膜を金属板に塗布後、同時に焼付けて、塗装金属板を製造する方法も知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。特許文献1には、スライドホッパー方式のカーテンコータを用いて、スライド面上に複数層の液膜からなる塗料膜を形成し、スライド面を流下した塗料膜をコータの先端部からカーテン膜として下方の鋼帯に供給し、鋼帯上に複数の塗料膜を塗布後、同時に焼付ける多層同時塗装の技術により、塗装金属板を製造する方法が記載されている。引用文献2には、引用文献1と同様の多層同時塗装の技術を使用し、粗度Raが0.8μm以下の金属板上に複数層の液膜からなる塗料膜を形成後、同時に焼付けることで、高鮮映性の塗装金属板を製造する方法が記載されている。引用文献2において、塗膜層間の界面の粗度Raについては言及されていない。
プライマー硬化塗膜を介し、又は介さずに、2層の上塗り塗料膜(上塗り着色ベース塗料層と上塗りクリア塗料層で構成される)をウエットオンウエットで形成(すなわち、焼付け前の上塗り着色ベース塗料層の上に上塗りクリア塗料層を形成)後、1回の焼付けで、2層の上塗り塗膜層を形成する方法も知られている(例えば、特許文献3、特許文献4)。特許文献4では、上塗りクリア塗料の水酸基含有樹脂のガラス転移温度が−20〜80℃であることが規定され、上塗り着色ベース層のポリエステル樹脂のガラス転移温度は−10〜80℃であるのが好ましいとされている。
特開平6−190334号公報 特開平6−190335号公報 特開平11−19583号公報 特開平11−90322号公報
需要家の要望に応えるため種々の特性の塗装金属板が提供されているとは言っても、加工性と耐汚染性に関しては、両者をともに満足するものは知られていない。下塗り層(プライマーコート層)と上塗り層(トップコート層)の2層構造の塗膜を有する塗装金属板においては、上塗り層のガラス転移温度(Tg)を上げて硬度を高くすることにより耐汚染性を確保しようとすると、塗装金属板の成形加工時に上塗り層塗膜が剥離しやすくなり、加工性が低下する傾向がある。
一方、2層の塗料をウエットオンウエット方式で塗布すると2層の密着性が向上し、加工性が向上すると言われているが、下層が未硬化の状態で上層をカーテン塗布すると界面が乱れて混層が起きやすく、所望の2層構造の塗膜を得るのが難しなり、塗装金属板を安定して製造することができない。ダイコータで2層を同時被覆することは可能であるが、この場合にも混層が生じることがあり、それへの対処が容易でないため、やはり塗装金属板を安定して製造するのが困難である。
本発明の目的は、加工性と耐汚染性を両立する塗装金属板を提供すること、併せてそのような塗装金属板の製造方法を提供することである。
本発明者らは、ポリエステルを主剤樹脂とする下塗り層(プライマーコート層)と、分子量5000以上の高分子ポリエステルを主剤樹脂とする上塗り層(トップコート層)とを組み合わせ、両層の硬度をそれぞれ適切に調整し、且つ両層の界面の凹凸、すなわち界面の粗度を適切に調整することにより、加工性に優れるとともに耐汚染性にも優れた塗装金属板が得られることを見いだした。また、この塗装金属板を製造するのには、スライドコーターにより下塗り塗料層と上塗り塗料層を同時にカーテン塗布し、その後同時に焼付ける方法が、特に適していることを見いだした。本発明は、これらの知見に基づくものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)金属板上に形成した下塗り層とその上の上塗り層とを有し、下塗り層がポリエステルを主剤樹脂とする塗膜、上塗り層が分子量5000以上の高分子ポリエステルを主剤樹脂とする塗膜から形成されており、下塗り層と上塗り層との界面の粗度Raが0.3〜0.7μmであり、且つ、下塗り層のガラス転移温度(Tg)が5〜25℃、上塗り層のガラス転移温度が35〜60℃であることを特徴とするプレコート金属板。
(2)スライドコーターを利用する下塗り層及び上塗り層の同時塗布・同時焼付により作製された、(1)に記載のプレコート金属板。
(3)スライドコーターを使用して、ガラス転移温度が5〜25℃の塗膜をもたらすポリエステルを主剤樹脂とする下塗り層塗料膜と、ガラス転移温度が35〜60℃の塗膜をもたらす分子量5000以上の高分子ポリエステルを主剤樹脂とする上塗り層塗料膜を積層した複合塗料膜を、金属板上にカーテン塗布し、焼付けて、下塗り層と上塗り層をそれらの界面の粗度Raが0.3〜0.7μmとなるように同時に形成することを特徴とするプレコート金属板の製造方法。
本発明では、上塗り層のガラス転移温度(Tg)を下塗り層のガラス転移温度より高くしてそれぞれ所定の範囲内に収めるようにし、且つ両層の界面の粗度Raを所定の範囲内にすることことにより、層間密着性を向上させて塗装金属板の加工性を確保するとともに、耐汚染性も確保することができる。
本発明の塗装金属板は、金属板上に形成した下塗り層とその上の上塗り層とを有し、下塗り層はポリエステルを主剤樹脂とする塗膜、上塗り層は分子量5000以上の高分子ポリエステルを主剤樹脂とする塗膜から形成される。更に、下塗り層と上塗り層との界面の粗度Raが0.3〜0.7μmであり、また、下塗り層のガラス転移温度(Tg)が5〜25℃、上塗り層のガラス転移温度が35〜60℃であることが必要である。
本発明では、鋼板を初めとする種々の金属板を使用することができる。使用できる鋼板としては、例えば、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛めっき鋼板、亜鉛−鉄合金めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、クロムめっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板、錫めっき鋼板等の鋼板を挙げることができる。以下では、代表的な金属板である鋼板を例に、本発明を説明することにする。
鋼板を使用する場合、それには、必要に応じて下地処理(塗装前処理)を施すことができる。下地処理としては、水洗、湯洗、酸洗、アルカリ脱脂、研削、研磨、クロメート処理、リン酸亜鉛処理、複合酸化皮膜処理その他のノンクロメート型の処理等がある。これらを単独又は組み合わせて、鋼板の塗装前処理を行うことができる。
本発明による塗装鋼板における下塗り層は、ガラス転移温度(Tg)が5〜25℃の塗膜をもたらすポリエステルを主剤樹脂とする塗料から形成される。Tgは樹脂の原料で決まるので、所定のTgが得られる原料を選択する。一般には、架橋点の多い原料から得られる樹脂はTgが高くなる。使用するポリエステル樹脂の分子量は、特に限定されるものでないが、一般には2000〜20000程度、より好ましくは4000〜15000程度の分子量のものを使用することができる。
下塗り層を形成する塗料では、主剤樹脂のポリエステルのほかに、塗料組成物で一般に使用される種々の成分を使用することができる。例えば、メラミン樹脂系、イソシアネート系等の公知の硬化剤を使用することができる。下塗り層の塗料はまた、ストロンチウムクロメート等のクロメート系防錆顔料、あるいはカルシウムシリケート等のノンクロメート系防錆顔料を含むこともできる。更に、下塗り層の塗料は、必要に応じ、体質顔料、骨材、を含んでもよく、また着色顔料としてチタンホワイトなどを含んでもよい。塗料の溶剤には、炭化水素系、アノン/ソルベッソ(シクロヘキサノン(通称アノン)とソルベッソ150との1:1混合溶剤)等を使用することができる。主剤樹脂とその他の成分との配合割合は、塗料の塗布条件、形成する塗膜の要件などにより適宜決めることができる。例えば、硬化剤としてメラミン樹脂系のものを使用する場合、主剤樹脂100質量部に対し5〜40質量部の硬化剤を使用することができる。また、主剤樹脂100質量部に対し、溶剤は50〜200質量部、防錆顔料は20〜100質量部を使用することができる。
本発明の塗装金属板における上塗り層は、ガラス転移温度(Tg)が35〜60℃の塗膜をもたらす高分子ポリエステルを主剤樹脂とする塗料から形成される。
上塗り層の塗料においては、主剤樹脂のポリエステルの分子量が重要であり、分子量5000以上の高分子ポリエステルを使用する。ポリエステルの分子量が5000に満たない場合、架橋密度が高くなり、塗膜の加工性が著しく低下するので好ましくない。本発明では、上塗り層塗料で使用する分子量5000以上のポリエステルを「高分子ポリエステル」としており、下塗り層塗料で使用するポリエステルは、ここで言う「高分子ポリエステル」を含めた、より広い分子量範囲のものから選択することができる。分子量の高いポリエステルでTgを上げると、Tgが高くても加工性が担保される。
上塗り層の塗料は、必須成分である着色顔料を含む。上塗り層を形成する塗料も、主剤樹脂の高分子ポリエステルのほかに、メラミン樹脂系、イソシアネート系等の公知の硬化剤を含むことができる。このほかに、上塗り層の塗料は、必要に応じ、体質顔料、消泡剤、レベラー添加剤、ワックスなどを含むことができる。上塗り層の塗料では、一般に炭化水素系の溶剤が使用される。主剤樹脂とその他の成分との配合割合は、塗料の塗布条件、形成する塗膜の要件などにより適宜決めることができる。例えば、硬化剤としてメラミン樹脂系のものを使用する場合、主剤樹脂100質量部に対し5〜100質量部の硬化剤を使用することができる。また、主剤樹脂100質量部に対し、溶剤は50〜200質量部、ワックスは0.5〜5質量部を使用することができる。
本発明の塗装金属板で使用する塗料の上述の成分自体は、いずれも広く知られたものであり、特別なものではない。
本発明においては、上塗り層及び下塗り層の各塗膜のガラス転移温度(Tg)が重要であり、上塗り層のTgは35〜60℃、下塗り層のTgは5〜25℃であることが必要である。上塗り層のTgを下塗り層のTgより高くすることにより、加工時に成形型と接する上塗り層の硬度を上げて、曲げ加工時に下塗り層の方がより歪むようにし、上塗り層と下塗り層との密着性を向上させて、加工性を確保することができる。上塗り層の硬度を高くすることにより、耐汚染性が向上することにもなる。
上述のとおり、上塗り層のTgは35〜60℃であることが必要であり、35℃未満では、塗膜の加工性は良好であるが、塗膜の硬度が不足し、60℃を超えると、加工性が極端に低下する。下塗り層のTgは5〜25℃であることが必要であり、5℃未満では、塗装金属板の加工時に塗膜の凝集破壊(塗膜自体が破壊する)が起きて、塗膜の密着性が低下し、25℃を超えると、下塗り層内に亀裂が入り、塗膜の加工性が低下する。
特許文献4には、本発明の塗装金属板の上塗り層に相当する2層構造の上塗り塗膜層を形成する際に、両方の層の塗料樹脂のTgを調節することが記載されているが、それらのTgの範囲はほとんど重複(特に高温側で完全に重複)しており、本発明におけるように完全に分けられてはいない。
本発明の塗装金属板においては、上塗り層と下塗り層との界面の粗度Raが0.3〜0.7μmであることも重要である(本発明におけるRaの測定は、下記の実施例で説明される)。界面のRaをこの範囲内にすることにより、上塗り層と下塗り層との密着性を確保して、塗膜の加工性を向上させることができる。界面のRaが0.3μm未満では、上塗り層と下塗り層との密着性が不十分で、塗膜の加工性を損ないかねない。界面のRaが0.7μmを超えると、上塗り層の色むらが生じ、もしくは平滑性が低下して、外観が悪くなる。
上塗り層と下塗り層との界面の上記範囲内の粗度Raは、特に、スライドコーターを利用して上塗り層と下塗り層の各塗料膜を重ねて金属板上に同時に塗布し、続いて同時に焼付ける、下記で説明する本発明の方法を使用し、そして次に説明するように、上塗り層と下塗り層の塗料の表面張力差を利用し、あるいはレベラー添加剤を利用して、実現することが可能である。
上塗り層と下塗り層との界面の粗度Raは、上塗り層と下塗り層の塗料の表面張力の差が大きくなると、小さくなることが分った。おのおのの塗料の表面張力は、塗料の成分と組成により決まることから、それらを調整することで界面の粗度Raを調整することが可能である。また、レベラー添加剤を利用して界面のRaを調整することも可能であり、この場合、上塗り層の塗料だけにレベラー添加剤を添加するよりも、上塗り層と下塗り層の塗料の両方に添加した方が、小さい表面張力差で同等のRaを得ることができる。レベラーとしては、例えば、アクリル系レベラーやシリコン系レベラー(BYK−Chemie社製BYK141など)を使用することができる。本発明で使用可能なレベラーのこのほかの例として、非シリコン系レベラーのホモゲノールL18、ホモゲノールL95、ホモゲノールL1820(花王社)、BYK057、BYK051、BYK052、BYK053、BYK055、BYK077(BYK−Chemie社)など、シリコン系レベラーのホモゲノールL100(花王社)、BYK080、BYK141、BYK065、BYK066、BYK070、BYK088(BYK−Chemie社)などを挙げることができるが、使用可能なレベラーはこれらに限定されない。
上塗り層と下塗り層との界面の粗度Raは、このほかに、例えば金属板上に塗布した塗料の乾燥速度等の乾燥条件により制御することもできよう。
このように、本発明の塗装金属板は、スライドコーターを利用して、上塗り層と下塗り層の各塗料膜を積層した複合塗料膜を作り、移動する金属板上にこの複合塗料膜をカーテン状に自然落下させて塗布し、次いで金属板上の複合塗料膜を同時に焼付けて、製造することができる。
スライドコーターを利用して金属板上に複数層の塗料膜を同時に形成し、次いで同時に焼付けて塗装金属板を製造する方法自体は、例えば特許文献1、2に記載されている。しかし、上塗り層及び下塗り層用のそれぞれ特定の塗料を使用して、スライドコーターにより上塗り層と下塗り層をそれらの界面の粗度Raが0.3〜0.7μmとなるように同時に形成することで、加工性と耐汚染性を兼ね備えた塗装金属板が得られることは、どちらの文献にも記載されていない。特許文献2では、塗装すべき金属板の粗度Raについて規定されているが、金属板上の塗膜中の2層の界面の粗度については何も言及されていない。更に、特許文献2では塗装金属板の鮮映性向上のために、上塗り層の塗料と下塗り層の塗料の表面張力差を大きくし(実施例によれば7mN/mの差がある)、上塗り層の塗料の表面張力の方を小さくして上塗り層の塗料の広がりをよくしている。このことから、上塗り層と下塗り層との界面は平らになりやすく、本発明におけるほど大きな粗度Raになることはない。スライドコーターを利用して金属板上に複数層の塗料膜を同時に塗布し同時に焼付けることを記載するその他の特許文献(例えば、特開平7−80394号公報、特開平7−80395号公報など)にも、界面の粗度Raの調整により加工性にも耐汚染性にも優れた塗装金属板を得ることは記載されていない。
特許文献3、4でも、ウエットオンウエットのためにローラーカーテン塗装やスリット式カーテン塗装を利用することが記載されている。しかし、この場合には、最初に上塗り着色ベース塗料膜を形成してから、その上に上塗りクリア塗料膜を形成しており、2層を同時に塗布してはいない。一方、これらの特許文献には、ダイコート法で上塗り着色ベース塗料層と上塗りクリア塗料層を同時に形成することが記載されている。しかし、特に、塗装金属板の幅が広く、600mm以上であって、合計の塗膜厚みが10〜20μmと薄くなると、ダイコート法では厚みの均一性を確保するのが困難になる。
本発明では、上塗り塗料層と下塗り塗料層を一緒に焼付けており、それにより上塗り層から下塗り層にかけての塗膜の硬さの変化が連続的(又はほぼ連続的)になって、これもまた上塗り塗料層と下塗り塗料層との密着性の向上、ひいては加工性の向上に寄与するものと考えられる。上塗り塗料層と下塗り塗料層を別々に焼付けた場合には、両層の界面において塗膜の硬さの変化が不連続になり、ここで破壊が起きやすくなって、加工性を低下させることになりかねない。
上塗り塗料層と下塗り塗料層を同時に焼付ける方法は、特に限定されず、例えば熱風、誘導加熱などを利用することができ、複数の方法を併用してもよい。放射線硬化型の塗膜層の場合、放射線照射を併用することも可能である。生産性の観点から、強制加熱乾燥による焼付けほど好ましくはないが、塗膜層は自然乾燥させてもよい。加熱による場合、金属板温度を40〜250℃まで上げるのが一般的である。
上塗り層の好適な厚みは平均厚みで10〜30μmである。10μmよりも薄い場合には、耐汚染性が十分確保できず、30μmよりも厚い場合には経済性に劣り、また加工性が低下する場合がある。上塗り層のより好ましい厚みは12〜20μmである。
平均膜厚の測定には、公知の方法のいずれを用いてもよいが、簡便には、重量法で測定することが可能である。
下塗り層の厚みは、加工性と、場合により耐食性その他の性能から適宜決めればよいが、一般的に好適な膜厚は2〜15μmである。2μmよりも薄いと耐食性に劣り、15μmよりも厚いと経済性に劣るとともに、加工性が低下する場合がある。下塗り層のより好ましい厚みは5〜10μmである。
次に、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
以下の例では、溶融亜鉛めっき鋼板(厚さ0.6mm、幅200mm)に塗装下地処理としてノンクロメート処理(日本パーカライジング社製E300N)を施したものを使用した。
下塗り層の塗料としては、日本ペイント社より入手したもので、ポリエステル(主剤樹脂、分子量12000)100質量部、硬化剤(ウレタン8質量部(ウレタンBの場合4質量部)又はメラミン樹脂20質量部)、リン酸系非クロム防錆顔料50質量部、溶剤(シクロヘキサノンとソルベッソ150(S150)の1:1質量比の混合溶剤)170質量部から調製した塗料を使用した(溶剤以外の成分の量は固形分としてのもの)。場合により、溶剤の20%(例4)又は40%(例5)をEEP(エチル−3−エトキシプロピオネート)に置き換えた。
上塗り層の塗料としては、日本ペイント社より入手したもので、高分子ポリエステル(主剤樹脂、分子量18000)100質量部、硬化剤(メラミン樹脂。上塗り層のTgをコントロールするため添加量を10〜40質量部の範囲で変化させた)、チタンホワイト着色顔料80質量部、溶剤(シクロヘキサノンとソルベッソ150の1:1質量比の混合溶剤)200質量部から調製した塗料を使用した(溶剤以外の成分の量は固形分としてのもの)。
下塗り層及び上塗り層の塗料を、スライドコーターにより鋼板上に同時被覆し、表1に示した最高到達板温(PMT)で同時に焼付けた試料を作製した(同時焼付けの場合、表1では上層のデータ欄のみにPMTを示した)。比較例として、2コート2ベーク(2C2B)(下塗り層と上塗り層の塗料をカーテン塗布で別々に塗布及び焼付け)、2コート1ベーク(2C1B)(カーテン塗布で別々に塗布(ウエットオンウエット)した下塗り層と上塗り層を同時に焼付け)の試料を作製した。
下塗り層と上塗り層のTgを、島津製作所製TMA(熱機械分析装置、DT−30型)を用い、加熱速度10℃/min、荷重20gでの針侵入深さから測定した。得られた結果を表1に示す。
下塗り層と上塗り層の界面の粗度Raは、以下のように測定した。
すなわち、塗装した鋼板を切断して得た切断片を樹脂に埋め込み研磨して、塗膜の表面に垂直な断面を平滑にし、3500倍の走査型電子顕微鏡写真を撮影した。写真の上にOHPに用いる透明シートをかぶせ、界面の凹凸を精密にトレースした後に、図1に示すように縦線を施した部分の面積を画像処理装置で測定して,その平均値として次の式から界面のRaを求めた。
Ra=(∫0 1|f(x)|dx)/l
得られた結果を表1に示す。
なお、もっと簡便なRaの測定方法として、界面の凹凸を精密にトレースした後に、図1の中心線に相当する平均値の線を引き、トレースした曲線に沿ってシートを切り取り、平均値の線の上下の部分の重量を測定して、その重量を平均長さに換算してRaを求める方法を用いてもよい。
作製した各試料の耐汚染性、鉛筆硬度、加工性を、次のように評価した。
耐汚染性については、耐マジック汚染性の評価を行った。室温20℃で、赤色と黒色のマジックインキ(登録商標)をそれぞれ塗装面に塗布し、24時間放置後、塗装面のマジックインキをエタノールでふき取り、その痕跡程度により、全く痕跡の残らないものを◎、ほとんど痕跡の残らないものを○、薄くはなるが、はっきりと痕跡の分かるものを△、全くふき取れないものを×、と評価した。赤色と黒色それぞれについて評価し、評価が異なる場合は低い方の評価を採用した。
塗膜の硬さを示す鉛筆硬度の評価は、家電メーカー方式の傷付き硬度法で行った。傷付き硬度法では、塗膜に45°の角度で鉛筆芯で5回線を引き、2回以上塗膜を傷付けない鉛筆硬度で評価結果を表示する。評価試験は、三菱鉛筆社製のユニ鉛筆を使用し、20℃で行った。
加工性の評価は、20℃で180°折り曲げ試験を行い、折り曲げ加工部の塗膜に30倍の倍率で観察して亀裂や剥離が見られない限界のT数(180°折り曲げる部分に挟ませる同一厚さの板の枚数に相当し、例えば1枚挟むとき1T、2枚挟むとき2T)を求めることにより行った。例えば、2T曲げで亀裂が認められ3T曲げで亀裂が認められなかった場合は、評点は3Tとなる。
これらの評価結果を表2に示す。
Figure 0004324093
Figure 0004324093
例1、3、5、7、8、11、12は比較例である。2コート2ベーク(2C2B)で塗膜界面の粗度Raが0.1にも満たない例1では、加工性が不十分であった。ウエットオンウエットの比較例である例3では、塗膜に色むらが認められ、外観が不良であり、また加工性も不十分であった。塗膜界面の粗度Raが0.8と大きい例5でも、塗膜に色むらが認められ、外観が不良であった。2コート2ベーク(2C2B)で塗膜界面の粗度Raが0.1にも満たない例7では、加工性が劣り、加工後のテーピングで塗膜の剥離が認められた。下層のTgが25℃を越える例8では、耐マジック汚染性が劣り、且つ、塗膜に色むらが認められ、外観が不良であった。上層のTgが60度を超える例11では、加工性が不十分であった。上層のTgが35℃に満たない例12では、耐マジック汚染性が不十分であった。
本発明による塗装金属板は、優れた加工性とともに優れた耐汚染性を兼ね備えており、家電製品用や建材用等の幅広い分野において利用することができる。特に、本発明の塗装金属板は、深絞りのような苛酷な加工を必要とする用途において、耐汚染性を要求される場合に効果的に利用することができる。
下塗り層と上塗り層の塗膜界面のRa評価方法について説明する図である。

Claims (3)

  1. 金属板上に形成した下塗り層とその上の上塗り層とを有し、下塗り層がポリエステルを主剤樹脂とする塗膜、上塗り層が分子量5000以上の高分子ポリエステルを主剤樹脂とする塗膜から形成されており、下塗り層と上塗り層との界面の粗度Raが0.3〜0.7μmであり、且つ、下塗り層のガラス転移温度(Tg)が5〜25℃、上塗り層のガラス転移温度が35〜60℃であることを特徴とするプレコート金属板。
  2. スライドコーターを利用する下塗り層及び上塗り層の同時塗布・同時焼付により作製された、請求項1に記載のプレコート金属板。
  3. スライドコーターを使用して、ガラス転移温度が5〜25℃の塗膜をもたらすポリエステルを主剤樹脂とする下塗り層塗料膜と、ガラス転移温度が35〜60℃の塗膜をもたらす分子量5000以上の高分子ポリエステルを主剤樹脂とする上塗り層塗料膜を積層した複合塗料膜を、金属板上にカーテン塗布し、焼付けて、下塗り層と上塗り層をそれらの界面の粗度Raが0.3〜0.7μmとなるように同時に形成することを特徴とするプレコート金属板の製造方法。
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