JP4321153B2 - 光学活性なシクロプロパン化合物の製造方法 - Google Patents
光学活性なシクロプロパン化合物の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性なシクロプロパン化合物の製造方法およびそれに用いる中間体等に関する。
【0002】
【従来の技術】
(+)−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸類に代表される光学活性なシクロプロパン化合物は、合成ピレスロイド系殺虫剤等の農薬、医薬等の合成中間体として重要な化合物である。かかる光学活性なシクロプロパン化合物の製造方法として、光学活性なビスオキサゾリン化合物と銅化合物とから調製される不斉銅錯体を触媒として、プロキラルなオレフィン類を不斉シクロプロパン化する方法が知られている(例えば特許文献1、非特許文献1参照。)。しかしながら、かかる方法は、ジアステレオ選択性(トランス体/シス体比)やエナンチオ選択性は比較的良好であるものの、目的とする光学活性なシクロプロパン化合物の収率が80%程度であり、工業的にはさらなる収率向上が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−171874号公報
【非特許文献1】
Tetrahedron Lett.,32,7373(1991)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況のもと本発明者らは、さらに収率よく光学活性なシクロプロパン化合物を製造する方法を開発すべく、より高性能な不斉銅触媒について鋭意検討したところ、オキサゾリン環の4位にオルト置換フェニル基を有することを特徴とする、新規化合物の光学活性なビスオキサゾリンと銅化合物とから調製される不斉銅錯体を触媒として用いることにより、良好なジアステレオ選択性(トランス体/シス体比)やエナンチオ選択性を達成しつつ、しかも90%以上の高収率で、光学活性なシクロプロパン化合物が得られることを見出した。かかる新規なビスオキサゾリン化合物は対応する光学活性な2−アミノ−2−フェニルエタノール化合物から製造されるが、かかる光学活性な2−アミノ−2−フェニルエタノール化合物は新規化合物であるため、本発明者らは、その製造方法についても鋭意検討した結果、合成容易なラセミのフェニルグリシン類から新規なラセミの2−アミノ−2−フェニルエタノール化合物を得、かかるラセミの2−アミノ−2−フェニルエタノール化合物を光学活性なカルボン酸で光学分割することにより光学活性な2−アミノ−2−フェニルエタノール化合物が得られることを見出し、本発明に至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、式(1)
【化12】
(式中、R1は低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基またはトリフルオロメチルチオ基を表わし、R2は炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基または置換されていてもよいアラルキル基を表わし、R3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表わす。ここで、R2がアルキル基を表わす場合は、同じ炭素原子に結合する二つのR2が結合してその結合炭素原子とともに環を形成してもよい。また、*は不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性なビスオキサゾリン化合物と銅化合物とから調製される不斉銅錯体の存在下、式(2)
【化13】
(式中、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルケニル基、アリール基、アラルキル基またはアルコキシカルボニル基を表わす。ただし、R4とR6が同一の基を表わす場合は、R5とR7は互いに異なる基を表わす。)
で示されるプロキラルなオレフィンと式(3)
N2CHCO2R8 (3)
(式中、R8は炭素数1〜6のアルキル基を表わす。)
で示されるジアゾ酢酸エステルとを反応させることを特徴とする式(4)
【化14】
(式中、R4、R5、R6、R7およびR8は上記と同一の意味を表わす。)
で示される光学活性なシクロプロパン化合物の製造方法およびそれに用いる中間体等を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は以下の4つの部分から構成されている。
【0007】
(A)式(8)
【化15】
(式中、R1およびR2は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるアミノアルコール(以下、アミノアルコール(8)と略記する。)の製造工程。
【0008】
(B)上記アミノアルコール(8)を光学分割することによる式(5)
【化16】
(式中、R1、R2および*は上記と同一の意味を表わす。)
で示される光学活性なアミノアルコール(以下、光学活性なアミノアルコール(5)と略記する。)の製造工程。
【0009】
(C)上記光学活性なアミノアルコール(5)を出発原料とする式(1)
【化17】
(式中、R1、R2、R3および*は上記と同一の意味を表わす。)
で示される光学活性なビスオキサゾリン化合物(以下、光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)と略記する。)の製造工程。
【0010】
(D)上記光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)と銅化合物とから調製される不斉銅錯体の存在下における式(4)
【化18】
(式中、R4、R5、R6、R7およびR8は上記と同一の意味を表わす。)
で示される光学活性なシクロプロパン化合物(以下、光学活性なシクロプロパン化合物(4)と略記する。)の製造工程。
【0011】
そこで、まず(A)工程、すなわちアミノアルコール(8)の製造方法について説明する。
【0012】
アミノアルコール(8)は式(9)
【化19】
(式中、R1は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるアミノ酸(以下、アミノ酸(9)と略記する。)と式(10)
R9OH (10)
(式中、R9は低級アルキル基を表す。)
で示されるアルコール(以下、アルコール(10)と略記する。)とを塩素化剤の共存下に反応させて式(11)
【化20】
(式中、R1およびR9は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるアミノ酸エステル塩酸塩(以下、アミノ酸エステル塩酸塩(11)と略記する。)を得、
【0013】
次いで、得られたアミノ酸エステル塩酸塩(11)とトリフルオロ酢酸無水物またはトリフルオロ酢酸塩化物とを3級アミンの存在下に反応させて式(12)
【化21】
(式中、R1およびR9は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるN−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステル(以下、N−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステル(12)と略記する。)を得、
【0014】
次いで、得られたN−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステル(12)と式(13)
R2−MgX (13)
(式中、R2は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルキレン基、置換されていてもよいフェニル基または置換されていてもよいアラルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。ここで、R2がアルキレン基であるときには、メチレン鎖の両末端がMgXのグリニャール試薬になっていることを表す。)
で示されるグリニャール試剤(以下、グリニャール試剤(13)と略記する。)とを反応させて式(14)
【化22】
(式中、R1は上記と同一の意味を表わし、R2は炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基または置換されていてもよいアラルキル基を表わす。ここで、R2がアルキル基を表わす場合は、同じ炭素原子に結合する二つのR2が結合してその結合炭素原子とともに環を形成してもよい。)
で示されるトリフルオロアセチルアミノアルコール(以下、トリフルオロアセチルアミノアルコール(14)と略記する。)を得、次いで、得られたトリフルオロアセチルアミノアルコール(14)と塩基とを反応させることにより製造できる。
【0015】
まず、アミノ酸(9)とアルコール(10)とを塩素化剤の共存下に反応させることにより、アミノ酸エステル塩酸塩(11)が得られる。
【0016】
アミノ酸(9)の式中、R1は低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基またはトリフルオロメチルチオ基を表わす。
【0017】
低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数1〜4の低級アルキル基が挙げられる。低級アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数1〜4の低級アルコキシ基が挙げられる。
【0018】
低級アルキルチオ基としては、前記低級アルコキシ基の酸素原子が硫黄原子に代わった、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数1〜4の低級アルキルチオ基が挙げられる。
【0019】
かかるアミノ酸(9)としては、例えば2−メチルフェニルグリシン、2−エチルフェニルグリシン、2−メトキシフェニルグリシン、2−エトキシフェニルグリシン、2−n−プロポキシフェニルグリシン、2−イソプロポキシフェニルグリシン、2−n−ブトキシフェニルグリシン、2−tert−ブトキシフェニルグリシン、2−メチルチオフェニルグリシン、2−tert−ブチルチオフェニルグリシン、2−(トリフルオロメチル)フェニルグリシン、2−(トリフルオロメトキシ)フェニルグリシン、2−(トリフルオロメチルチオ)フェニルグリシン等が挙げられる。
【0020】
これらのアミノ酸(9)は、市販のものを用いてもよいし、例えばベンズアルデヒド化合物とシアン化ナトリウム等のシアノ化合物と炭酸アンモニウムとを反応させ、次いで水酸化カリウム等のアルカリで処理する(例えば日本化学会編実験化学講座第四版22巻195頁参照。)等の公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0021】
アルコール(10)の式中、R9は低級アルキル基を表す。低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基等の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数1〜4の低級アルキル基が挙げられる。
【0022】
かかるアルコール(10)としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、2−メチルプロパノール等が挙げられ、その使用量は通常、アミノ酸(9)に対し1モル倍以上である。
【0023】
アミノ酸(9)とアルコール(10)との反応は通常、溶媒の存在下で行われる。かかる溶媒としては、例えば、ヘキサン、へプタン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル溶媒、酢酸エチル等のエステル溶媒、アセトニトリル等のニトリル溶媒等の単独または混合溶媒を用いることもできるし、アルコール(10)を過剰に用いて溶媒とすることもできる。
【0024】
溶媒の使用量は特に制限されないが、アミノ酸(9)および反応で生成するアミノ酸エステル塩酸塩(11)を攪拌できる量であればよく、アミノ酸(9)に対し、通常1重量倍以上である。
【0025】
塩素化剤としては、カルボン酸の酸クロライド化に一般に用いられるものであれば特に限定されず、例えば塩化チオニル、塩化カルボニル、塩化オキサリル、五塩化リン等が挙げられる。
【0026】
塩素化剤の使用量は特に制限されないが、通常、アミノ酸(9)に対し1倍モル以上、好ましくは1.1〜2モル倍程度用いられる。
【0027】
本エステル化反応は通常、0℃〜反応混合物の還流温度、好ましくは10℃〜60℃程度の範囲で行われる。反応時間は、反応温度や反応スケールにもよるが、通常1〜5時間程度である。
【0028】
反応後、生成したアミノ酸エステル塩酸塩(11)は通常、反応混合物中に溶解あるいは一部または全部が析出しているので、例えば、濃縮処理後に濾過、あるいはそのまま濾過することにより、取り出すことができる。濃縮処理後に濾過する場合は、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル溶媒を用いてアミノ酸エステル塩酸塩(11)をスラリー状にし、濾過器に移送してもよい。濾過処理によって取り出されるアミノ酸エステル塩酸塩(11)は、通常、未反応のアルコール(10)および未反応の塩素化剤等の不純物を含んでいるため、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル溶媒で洗浄処理することが好ましい。洗浄したアミノ酸エステル塩酸塩(11)は、そのまま、あるいは必要に応じて乾燥処理を行った後、次の反応に用いることができる。もちろん、例えば再結晶等の精製処理を行った後、次の反応に用いてもよい。
【0029】
アミノ酸エステル塩酸塩(11)の式中、R1およびR9は上記と同一の意味を表わす。
【0030】
かかるアミノ酸エステル塩酸塩(11)としては、例えば2−メチルフェニルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−エチルフェニルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−メトキシフェニルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−エトキシフェニルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−n−プロポキシフェニルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−イソプロポキシフェニルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−n−ブトキシフェニルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−tert−ブトキシフェニルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−メチルチオフェニルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−tert−ブチルチオフェニルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−(トリフルオロメチル)フェニルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−(トリフルオロメトキシ)フェニルグリシンメチルエステル塩酸塩、2−(トリフルオロメチルチオ)フェニルグリシン メチルエステル塩酸塩、
【0031】
および上記化合物において、エステル部分のメチル基がエチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基にそれぞれ置き換わった化合物等が挙げられる。
【0032】
かくして得られたアミノ酸エステル塩酸塩(11)とトリフルオロ酢酸無水物またはトリフルオロ酢酸塩化物とを反応させることにより、N−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステル(12)を得ることができる。
【0033】
トリフルオロ酢酸無水物またはトリフルオロ酢酸塩化物の使用量は、特に制限されないが、通常、アミノ酸エステル塩酸塩(11)に対し0.8モル倍以上、好ましくは1.0〜1.5モル倍程度の範囲で用いられる。
【0034】
アミノ酸エステル塩酸塩(11)とトリフルオロ酢酸無水物またはトリフルオロ酢酸塩化物との反応は通常、3級アミンの存在下に行われる。
【0035】
3級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン等が挙げられる。
【0036】
3級アミンの使用量は特に制限されないが、通常、トリフルオロ酢酸無水物またはトリフリオロ酢酸塩化物よりも過剰に用いられ、アミノ酸エステル塩酸塩(11)に対し1.5モル倍以上、好ましくは1.8〜2.5モル倍程度の範囲で用いられる。
【0037】
アミノ酸エステル塩酸塩(11)とトリフルオロ酢酸無水物またはトリフリオロ酢酸塩化物との反応は通常、溶媒の存在下で行われる。かかる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されないが、例えばヘキサン、へプタン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル溶媒、酢酸エチル等のエステル溶媒、アセトニトリル等のニトリル溶媒等の単独または混合溶媒が挙げられる。
【0038】
溶媒の使用量は特に制限されないが、アミノ酸エステル塩酸塩(11)および反応で生成する3級アミン塩を攪拌できる量であればよく、アミノ酸エステル塩酸塩(11)に対し、通常1重量倍以上が用いられる。
【0039】
本トリフルオロアセチル化反応は、通常0℃以下、好ましくは−20℃〜−50℃程度の範囲で行われる。反応時間は、反応温度や反応スケールにもよるが、通常1〜5時間程度である。
【0040】
反応後、生成した3級アミン塩は通常、反応混合物中に溶解あるいは一部または全部が析出しているが、例えば、抽出処理、水洗処理することにより、除去することができる。かくして得られる有機層について、必要に応じ脱水処理を行った後、濃縮処理等の操作により、N−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステル(12)を得ることができる。得られたN−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステル(12)は、そのまま次の反応に用いてもよいし、必要に応じて蒸留、再結晶、カラムクロマト等の精製処理を行った後に次の反応に用いてもよい。
【0041】
N−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステル(12)の式中、R1およびR9は上記と同一の意味を表わす。
【0042】
かかるN−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステル(12)としては、例えばN−(トリフルオロアセチル)−2−メチルフェニルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−エチルフェニルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−メトキシフェニルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−エトキシフェニルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−n−プロポキシフェニルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−イソプロポキシフェニルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−n−ブトキシフェニルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−tert−ブトキシフェニルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−メチルチオフェニルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−tert−ブチルチオフェニルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−(トリフルオロメチル)フェニルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−(トリフルオロメトキシ)グリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−(トリフルオロメチルチオ)フェニルグリシン メチルエステル、
【0043】
および上記化合物において、エステル部分のメチル基がエチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基にそれぞれ置き換わった化合物等が挙げられる。
【0044】
かくして得られたN−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステル(12)とグリニャール試剤(13)とを反応させることにより、トリフルオロアセチルアミノアルコール(14)を得ることができる。
【0045】
グリニャール試剤(13)の式中、R2は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルキレン基、置換されていてもよいフェニル基または置換されていてもよいアラルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表わす。
【0046】
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0047】
置換されていてもよいフェニル基としては、例えば無置換のフェニル基、例えば3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基等の上記の炭素数1〜6のアルキル基で置換されたフェニル基、例えば2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基等の炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されたフェニル基等が挙げられる。
【0048】
置換されていてもよいアラルキル基としては、例えば上記の炭素数1〜6のアルキル基と上記の置換されていてもよいフェニル基またはナフチル基とから構成されるものであり、例えばベンジル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0049】
炭素数2〜6のアルキレン基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等の直鎖状のアルキレン基が挙げられ、この場合のグリニヤール試剤とはその両末端がMgXのグリニャール試薬になっていることを表わす。
【0050】
かかるグリニャール試剤(13)としては、例えばメチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、n−プロピルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、イソブチルマグネシウムクロリド、n−ペンチルマグネシウムクロリド、n−ヘキシルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムクロリド、2−メチルベンジルマグネシウムクロリド、3−メチルベンジルマグネシウムクロリド、4−メチルベンジルマグネシウムクロリド、2−メトキシベンジルマグネシウムクロリド、3−メトキシベンジルマグネシウムクロリド、4−メトキシベンジルマグネシウムクロリド、1−ナフチルメチルマグネシウムクロリド、2−ナフチルメチルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリド、2−メチルフェニルマグネシウムクロリド、3−メチルフェニルマグネシウムクロリド、4−メチルフェニルマグネシウムクロリド、2−メトキシフェニルマグネシウムクロリド、3−メトキシフェニルマグネシウムクロリド、4−メトキシフェニルマグネシウムクロリド、エチレンジマグネシウムクロリド、トリメチレンジマグネシウムクロリド、テトラメチレンジマグネシウムクロリド、ヘプタメチレンジマグネシウムクロリド、ヘキサメチレンジマグネシウムクロリド、および上記の化合物のマグネシウムクロリドがマグネシウムブロミドに置き換わった化合物等が挙げられる。
【0051】
グリニャール試剤(13)の使用量は通常、N−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステル(12)に対して2モル倍(MgX換算)以上用いれば良く、上限は特に制限されないが、経済上の理由から2.1〜2.7モル倍程度用いることが好ましい。
【0052】
N−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステル(12)とグリニャール試剤(13)との反応は通常、溶媒の存在下で行われる。かかる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されないが、例えばジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル溶媒が挙げられる。また必要に応じ、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒等を上記のエーテル溶媒に混合して用いることもできる。
【0053】
溶媒の使用量は特に制限されないが、N−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステル(12)に対して、通常1重量倍以上、好ましくは3〜20重量倍程度用いられる。
【0054】
本グリニャール反応は、通常−20℃以上、反応混合物の還流温度以下の温度範囲で、好ましくは−10℃〜30℃程度の範囲で実施される。反応時間は、反応温度や反応スケールにもよるが、通常1〜15時間程度である。
【0055】
反応後、反応混合物を、塩酸、硫酸、燐酸等の鉱酸の水溶液で処理し、抽出処理、濃縮処理等の通常の操作により、生成したトリフルオロアセチルアミノアルコール(14)を取り出すことができる。得られたトリフルオロアセチルアミノアルコール(14)は、そのまま次の反応に用いてもよいし、必要に応じて、例えば蒸留、再結晶、カラムクロマト等の精製処理を行った後、次の反応に用いてもよい。
【0056】
トリフルオロアセチルアミノアルコール(14)の式中、R1は上記と同一の意味を表わし、R2は炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基または置換されていてもよいアラルキル基を表わす。
【0057】
ここで、炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいアラルキル基としては、例えば上記と同一のものが挙げられる。
【0058】
また、R2がアルキル基を表わす場合は、同じ炭素原子に結合する二つのR2が結合してその結合炭素原子とともに環を形成してもよく、その場合に形成される環としては、例えばシクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環等が挙げられる。
【0059】
かかるトリフルオロアセチルアミノアルコール(14)としては、例えば1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−メチル−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−エチル−2−ブタノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−n−プロピル−2−ペンタノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メトキシ−1−ナフチル2−メチルフェニル)−2−n−ブチル−2−ヘキサノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−イソブチル−4−メチル−2−ペンタノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−n−ペンチル−2−ヘプタノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−ベンジル−3−フェニル−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−(3−メチルベンジル)−3−(3−メチルフェニル)−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−(2−メチルベンジル)−3−(2−メチルフェニル)−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−(4−メチルベンジル)−3−(4−メチルフェニル)−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−(2−メトキシベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−(3−メトキシベンジル)−3−(3−メトキシフェニル)−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−(4−メトキシベンジル)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロパノール、
【0060】
1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−(1−ナフチルメチル)−3−(1−ナフチル)−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチルフェニル)−2−(2−ナフチルメチル)−3−(2−ナフチル)−2−プロパノール、2−(トリフルオロアセチルアミノ)−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジフェニルエタノール、2−(トリフルオロアセチルアミノ)−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(3−メチルフェニル)エタノール、2−(トリフルオロアセチルアミノ)−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(4−メチルフェニル)エタノール、2−(トリフルオロアセチルアミノ)−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(2−メトキシフェニル)エタノール、2−(トリフルオロアセチルアミノ)−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(3−メトキシフェニル)エタノール、2−(トリフルオロアセチルアミノ)−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)エタノール、1−[(トリフルオロアセチルアミノ)−(2−メチルフェニル)メチル]シクロプロパノール、1−[(トリフルオロアセチルアミノ)−(2−メチルフェニル)メチル]シクロブタノール、1−[(トリフルオロアセチルアミノ)−(2−メチルフェニル)メチル]シクロペンタノール、1−[(トリフルオロアセチルアミノ)−(2−メチルフェニル)メチル]シクロヘキサノール、1−[(トリフルオロアセチルアミノ)−(2−メチルフェニル)メチル]シクロヘプタノール、
【0061】
および、上記各化合物において、2−メチルフェニル基上の「メチル(式(14)中のR1に相当。)」が、エチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、メチルチオ、tert−ブチルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシまたはトリフルオロメチルチオに、それぞれ置き換わった化合物等が挙げられる。
【0062】
かくして得られたトリフルオロアセチルアミノアルコール(14)を塩基と反応させることにより、アミノアルコール(8)を得ることができる。
【0063】
塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられ、通常、水溶液として用いられる。
【0064】
塩基の使用量は特に限定されないが、通常、トリフルオロアセチルアミノアルコール(14)に対して1モル倍以上用いる。また経済上の理由から、1.2〜2.5モル倍程度用いることが好ましい。
【0065】
トリフルオロアセチルアミノアルコール(14)と塩基との反応は通常、溶媒中で行われる。かかる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、1−メチルプロパノール、2−メチルプロパノール等のアルコール類、水およびこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0066】
溶媒の使用量は特に制限されないが、トリフルオロアセチルアミノアルコール(14)に対して、通常2重量倍以上、好ましくは3〜15重量倍程度用いられる。
【0067】
本、脱トリフルオロアセチル化反応は、通常0℃以上、反応混合物の還流温度以下の温度範囲で実施され、好ましくは10℃〜60℃程度の範囲である。反応時間は、反応温度や反応スケールにもよるが、通常1〜10時間程度である。
【0068】
反応後、例えば、反応混合物を濃縮処理し、水に不溶の溶媒で抽出処理することにより、アミノアルコール(8)を含む有機層が得られる。水に不溶の溶媒としては特に限定されないが、例えばヘキサン、へプタン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル溶媒、酢酸エチル等のエステル溶媒等の単独または混合溶媒が挙げられる。得られた有機層に対し、濃縮処理、濾過処理等の通常の操作を行うことにより、アミノアルコール(8)を取り出すことができる。得られたアミノアルコール(8)は、そのまま次の反応に用いてもよいし、必要に応じて、例えば蒸留、再結晶、カラムクロマト等の精製処理を行った後、次の反応に用いてもよい。
【0069】
かかるアミノアルコール(8)としては、例えば1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−メチル−2−プロパノール、1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−エチル−2−ブタノール、1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−n−プロピル−2−ペンタノール、1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−n−ブチル−2−ヘキサノール、1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−イソブチル−4−メチル−2−ペンタノール、1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−n−ペンチル−2−ヘプタノール、1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−ベンジル−3−フェニル−2−プロパノール、1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(3−メチルベンジル)−3−(3−メチルフェニル)−2−プロパノール、1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(2−メチルベンジル)−3−(2−メチルフェニル)−2−プロパノール、1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(4−メチルベンジル)−3−(4−メチルフェニル)−2−プロパノール、1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(2−メトキシベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)−2−プロパノール、1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(3−メトキシベンジル)−3−(3−メトキシフェニル)−2−プロパノール、1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(4−メトキシベンジル)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロパノール、
【0070】
1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(1−ナフチルメチル)−3−(1−ナフチル)−2−プロパノール、1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(2−ナフチルメチル)−3−(2−ナフチル)−2−プロパノール、2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジフェニルエタノール、2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(3−メチルフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(4−メチルフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(2−メトキシフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(3−メトキシフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)エタノール、1−[アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロプロパノール、1−[アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロブタノール、1−[アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロペンタノール、1−[アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロヘキサノール、1−[アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロヘプタノール、
【0071】
および、上記各化合物において、2−メチルフェニル基上の「メチル(式(8)中のR1に相当。)」が、エチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、メチルチオ、tert−ブチルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシまたはトリフルオロメチルチオに、それぞれ置き換わった化合物等が挙げられる。
【0072】
続いて(B)工程、すなわち上記アミノアルコール(8)を光学分割することによる、本発明の新規な化合物である光学活性なアミノアルコール(5)の製造方法について説明する。
【0073】
本工程に用いられるアミノアルコール(8)は通常ラセミ体であるが、いずれか一方の対掌体が他方よりもやや過剰な光学純度の低い光学異性体の混合物であってもよい。
【0074】
アミノアルコール(8)の光学分割剤となる光学活性なタートラニル酸には、(2R,3R)体と(2S,3S)体の二種類の光学異性体が存在するが、目的とする光学活性な2−アミノ−2−フェニルエタノール類に応じて、適宜選択すればよい。
【0075】
光学活性なタートラニル酸の使用量は、アミノアルコール(8)に対して、通常0.1〜1モル倍程度である。
【0076】
アミノアルコール(8)と光学活性なタートラニル酸との反応は通常、溶媒の存在下で行われる。かかる溶媒としては特に限定されないが、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール溶媒、酢酸エチル等のエステル溶媒、アセトニトリル等のニトリル溶媒、水等の単独または混合溶媒が挙げられる。かかる溶媒のなかでも、エーテル溶媒、アルコール溶媒またはこれらと水との混合溶媒が好ましい。
【0077】
溶媒の使用量は特に限定されないが、アミノアルコール(8)に対して、通常0.5〜100重量倍、好ましくは1〜50重量倍程度である。溶媒は予めアミノアルコール(8)もしくは光学活性なタートラニル酸に加えておいてもよい。
【0078】
アミノアルコール(8)と光学活性なタートラニル酸との反応は通常、アミノアルコール(8)を溶媒に溶解させた溶液と光学活性タートラニル酸とを混合することにより実施される。その混合順序は特に制限されないが、通常はアミノアルコール(8)の溶媒溶液に光学活性なタートラニル酸が加えられる。光学活性なタートラニル酸は、連続的に加えてもよいし、間欠的に加えてもよい。また、光学活性タートラニル酸は、そのまま用いてもよいし、溶媒溶液として用いてもよい。
【0079】
反応温度は、通常0℃以上、反応混合物の還流温度以下の範囲であれば特に制限されない。
【0080】
反応終了後、光学活性なアミノアルコール(5)は、光学活性なタートラニル酸とジアステレオマー塩を形成しており、通常は一方のジアステレオマー塩の一部が反応マス中に晶出している。これをそのまま取り出してもよいが、該反応マスを冷却するか、あるいは、濃縮することにより、さらに多くの該ジアステレオマー塩を晶出させて取り出すことが好ましい。条件によっては、該ジアステレオマー塩が反応マス中に完溶していることもあり、この場合には、反応マスを冷却するか、あるいは濃縮することにより、該ジアステレオマー塩を晶出させて取り出すことができる。
【0081】
晶出させた一方の光学活性なアミノアルコール(5)と光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩は、通常の濾過操作によって容易に取り出すことができる。
【0082】
かくして得られる光学活性なアミノアルコール(5)と光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩としては、例えば光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−エチル−2−ブタノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−n−プロピル−2−ペンタノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−n−ブチル−2−ヘキサノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−イソブチル−4−メチル−2−ペンタノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−n−ペンチル−2−ヘプタノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−ベンジル−3−フェニル−2−プロパノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(3−メチルベンジル)−3−(3−メチルフェニル)−2−プロパノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(2−メチルベンジル)−3−(2−メチルフェニル)−2−プロパノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(4−メチルベンジル)−3−(4−メチルフェニル)−2−プロパノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(2−メトキシベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)−2−プロパノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(3−メトキシベンジル)−3−(3−メトキシフェニル)−2−プロパノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(4−メトキシベンジル)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロパノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、
【0083】
光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(1−ナフチルメチル)−3−(1−ナフチル)−2−プロパノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(2−ナフチルメチル)−3−(2−ナフチル)−2−プロパノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジフェニルエタノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(3−メチルフェニル)エタノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(4−メチルフェニル)エタノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(2−メトキシフェニル)エタノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(3−メトキシフェニル)エタノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)エタノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−[アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロプロパノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−[アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロブタノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−[アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロペンタノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−[アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロヘキサノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性な1−[アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロヘプタノールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩、
【0084】
および、上記ジアステレオマー塩において、2−メチルフェニル基上の「メチル(式(5)中のR1に相当。)」が、エチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、メチルチオ、tert−ブチルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシまたはトリフルオロメチルチオに、それぞれ置き換わった各化合物と光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩等が挙げられる。
【0085】
かくして得られる光学活性なアミノアルコール(5)と光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩は、そのまま、あるいは、例えば洗浄、再結晶等によりさらに精製した後、アルカリ処理することにより、容易に光学活性なアミノアルコール(5)に導くことができる。
【0086】
アルカリ処理は通常、ジアステレオマー塩とアルカリとを混合することにより行なわれ、混合温度は、通常0〜100℃程度の範囲である。
【0087】
用いられるアルカリとしては例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられ、通常は水溶液が用いられる。アルカリの水溶液を用いる場合のアルカリ濃度は、通常1〜50重量%、好ましくは3〜20重量%程度の範囲である。アルカリの使用量は、ジアステレオマー塩に対して、通常1〜5モル倍程度である。
【0088】
ジアステレオマー塩をアルカリ処理すると、通常、光学活性なアミノアルコール(5)は、該アルカリ処理マスから油層として分液あるいは固体として析出しており、これをそのまま分離して取り出してもよいし、また、該アルカリ処理マスに水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理し、得られた有機層から有機溶媒を留去して、光学活性なアミノアルコール(5)を取り出してもよい。水に不溶の有機溶媒としては特に限定されないが、例えばジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル溶媒、酢酸エチル等のエステル溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられ、その使用量は、用いたジアステレオマー塩に対して、通常0.5〜50重量倍程度の範囲である。かかる水に不溶の有機溶媒は、ジアステレオマー塩をアルカリ処理する際に予め加えておいても何ら問題ない。
【0089】
また、ジアステレオマー塩を予め酸処理した後、アルカリ処理することにより、光学活性なアミノアルコール(5)を取り出すこともできる。ジアステレオマー塩を予め酸処理すると、光学活性なタートラニル酸が遊離するため、遊離した光学活性なタートラニル酸を分離した後にアルカリ処理することが好ましい。
【0090】
酸処理は通常、ジアステレオマー塩と酸の水溶液とを混合することにより行われ、混合温度は通常0〜100℃程度の範囲である。
【0091】
用いられる酸としては通常、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸の水溶液が挙げられ、その濃度は通常1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%程度の範囲である。また、かかる酸の使用量は、ジアステレオマー塩に対して、通常1〜5モル倍、好ましくは1〜2モル倍程度の範囲である。
【0092】
遊離した光学活性なタートラニル酸の分離方法としては、例えば、ジアステレオマー塩を予め酸処理したマスに、水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理する方法等が挙げられる。水に不溶の有機溶媒としては、上記のものと同様のものが挙げられ、その使用量は、用いたジアステレオマー塩に対して、通常0.5〜20重量倍程度である。かかる水に不溶の有機溶媒は、ジアステレオマー塩を酸処理する際に予め加えておいても何ら問題ない。
【0093】
また、遊離した光学活性なタートラニル酸の結晶の一部もしくは全部が酸処理マス中に析出している場合には、これをそのまま、あるいは、必要に応じてさらに冷却した後、濾過処理することにより、遊離した光学活性なタートラニル酸を分離することもできる。
【0094】
酸処理に次いで行うアルカリ処理では通常、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液が用いられ、その濃度は通常1〜50重量%、好ましくは5〜20重量%程度の範囲である。かかるアルカリは通常、処理マスのpHの値が10以上となる量が用いられる。また、処理温度は通常0〜100℃程度の範囲である。
【0095】
ジアステレオマー塩を予め酸処理した後に、アルカリ処理すると、通常、光学活性なアミノアルコール(5)は、該アルカリ処理マスから油層として分液あるいは固体として析出しており、該油層あるいは該固体をそのまま分離して取り出してもよい。また、該アルカリ処理マスに水に不溶の有機溶媒を加え抽出処理し、得られる有機層から有機溶媒を留去して、光学活性なアミノアルコール(5)を取り出してもよい。水に不溶の有機溶媒としては、上記のものと同様のものが挙げられ、その使用量は特に限定されないが、処理に用いたジアステレオマー塩に対して、通常0.5〜50重量倍程度である。かかる水に不溶の有機溶媒は、アルカリ処理を行う際に予め加えておいても何ら問題ない。
【0096】
このようにしてジアステレオマー塩を、アルカリ処理、あるいは、予め酸処理した後にアルカリ処理することにより、光学活性なアミノアルコール(5)を取り出すことができる。
【0097】
かかる光学活性なアミノアルコール(5)としては、例えば(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−メチル−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−エチル−2−ブタノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−n−プロピル−2−ペンタノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−n−ブチル−2−ヘキサノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−イソブチル−4−メチル−2−ペンタノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−n−ペンチル−2−ヘプタノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−ベンジル−3−フェニル−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(3−メチルベンジル)−3−(3−メチルフェニル)−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(2−メチルベンジル)−3−(2−メチルフェニル)−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(4−メチルベンジル)−3−(4−メチルフェニル)−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(2−メトキシベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(3−メトキシベンジル)−3−(3−メトキシフェニル)−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(4−メトキシベンジル)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロパノール、
【0098】
(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(1−ナフチルメチル)−3−(1−ナフチル)−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチルフェニル)−2−(2−ナフチルメチル)−3−(2−ナフチル)−2−プロパノール、(R)−2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジフェニルエタノール、(R)−2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(3−メチルフェニル)エタノール、(R)−2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(4−メチルフェニル)エタノール、(R)−2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(2−メトキシフェニル)エタノール、(R)−2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(3−メトキシフェニル)エタノール、(R)−2−アミノ−2−(2−メチルフェニル)−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)エタノール、1−[(R)−アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロプロパノール、1−[(R)−アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロブタノール、1−[(R)−アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロペンタノール、1−[(R)−アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロヘキサノール、1−[(R)−アミノ−(2−メチルフェニル)メチル]シクロヘプタノール、
【0099】
および、上記各化合物において、2−メチルフェニル基上の「メチル(式(5)中のR1に相当。)」が、エチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、メチルチオ、tert−ブチルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシまたはトリフルオロメチルチオに、それぞれ置き換わった化合物、ならびに上記各化合物の立体配置(R)が(S)に代わった化合物等が挙げられる。
【0100】
また、用いた光学活性なタートラニル酸は、例えば次のような操作により容易に回収でき、回収した光学活性なタートラニル酸は、アミノアルコール(8)の光学分割に再利用できる。
【0101】
ジアステレオマー塩を予め酸処理することなく、アルカリ処理した場合には、光学活性なアミノアルコール(5)を取り出した後の処理マスを酸処理することにより、光学活性なタートラニル酸を回収することができる。
【0102】
光学活性なアミノアルコール(5)を取り出した後の処理マスの酸処理には通常、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸水溶液が用いられ、その濃度は通常1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%程度の範囲である。かかる酸は、処理マスのpHが通常2.5以下、好ましくは2以下となる量が用いられる。
【0103】
光学活性なアミノアルコール(5)を取り出した後の処理マスを酸処理すると、通常、光学活性なタートラニル酸の一部もしくは全部が該酸処理マス中に晶出しており、該酸処理マスをそのまま、あるいは、必要に応じてさらに冷却した後、濾過処理することにより、光学活性なタートラニル酸を回収することができる。また、該酸処理マスに水に不溶の有機溶媒を加え抽出処理して、得られる有機層から有機溶媒を留去して、光学活性なタートラニル酸を回収することもできる。水に不溶の有機溶媒としては、上記のものと同様のものが挙げられ、かかる水に不溶の有機溶媒は、酸処理の際に予め加えておいてもよい。水に不溶の有機溶媒として、アミノアルコール(8)と光学活性なタートラニル酸との反応に用いられる溶媒を用いた場合には、抽出処理により得られる光学活性なタートラニル酸を含む有機層をそのままアミノアルコール(8)の光学分割に再使用することができる。
【0104】
ジアステレオマー塩を予め酸処理した後にアルカリ処理した場合には、上述のとおり濾過処理もしくは水に不溶の有機溶媒による抽出処理等を施して、光学活性なタートラニル酸を分離することにより回収することができる。この場合も、水に不溶の有機溶媒として、アミノアルコール(8)と光学活性なタートラニル酸との反応に用いられる溶媒を用いた場合には、抽出処理により得られる光学活性なタートラニル酸を含む有機層をそのままアミノアルコール(8)の光学分割に再使用することができる。
【0105】
一方、ジアステレオマー塩を形成した光学活性なアミノアルコールと対掌体の関係にある他方の光学活性体は、ジアステレオマー塩を濾過操作により取り出した後の濾液に含まれている。場合によっては、該濾液から溶媒を留去することにより光学純度よく他方の光学活性体を得ることができるが、通常、濾液には、晶出せず溶媒に溶け込んだジアステレオマー塩、未反応のアミノアルコール(8)や光学活性なタートラニル酸等が含まれているため、かかる濾液をアルカリ処理して得られる油層、もしくは、予め酸処理した後にアルカリ処理して得られる油層から有機溶媒を留去することにより、光学純度のやや低いアミノアルコールとして回収することができる。
【0106】
アミノアルコール(8)と光学活性なタートラニル酸との反応を2−プロパノール等の親水性溶媒中で行った場合には、ジアステレオマー塩を取り出した後の濾液を濃縮し、得られる濃縮残渣をアルカリ処理あるいは予め酸処理した後にアルカリ処理することが好ましい。かかるアルカリ処理あるいは予め酸処理した後のアルカリ処理は、上述したジアステレオマー塩から光学活性なアミノアルコール(5)を取り出す方法に準じておこなわれる。
【0107】
続いて(C)工程、すなわち上記光学活性なアミノアルコール(5)を出発原料とする、光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)の製造方法について説明する。
【0108】
光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)は、光学活性な2−アミノ−2−フェニルエタノール類(5)と式(6)
【化23】
(式中、R3は上記と同一の意味を表わし、Zはアルコキシ基またはハロゲン原子を表わす。)
で示されるジカルボニル化合物(以下、ジカルボニル化合物(6)と略記する。)とを反応させて式(7)
【化24】
(式中、R1、R2、R3および*は上記と同一の意味を表わす。)
で示される光学活性なジアミド化合物(以下、光学活性なジアミド化合物(7)と略記する。)を得、次いで、得られた光学活性なジアミド化合物(7)とルイス酸とを反応させることにより得られる。
【0109】
ジカルボニル化合物(6)の式中、Zはアルコキシ基またはハロゲン原子を表わす。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0110】
かかるジカルボニル化合物(6)としては、例えばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、ジメチルマロン酸ジメチル、ジエチルマロン酸ジメチル、ジ(n−プロピル)マロン酸ジメチル等のマロン酸ジエステル化合物、例えばマロン酸ジクロリド、ジメチルマロン酸ジクロリド、ジエチルマロン酸ジクロリド、ジ(n−プロピル)マロン酸ジクロリド、マロン酸ジブロミド等のマロン酸ハロゲン化物が挙げられる。
【0111】
ジカルボニル化合物(6)の使用量は特に制限されないが、光学活性なアミノアルコール(5)に対して、通常0.3〜2モル倍、好ましくは0.5〜1モル倍程度である。
【0112】
光学活性なアミノアルコール(5)とジカルボニル化合物(6)との反応は通常、その両者を溶媒の存在下に接触、混合させることにより行われる。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に制限されず、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒等の単独または混合溶媒が挙げられる。
【0113】
ジカルボニル化合物(6)として、Zがアルコキシ基であるジエステル化合物を用いる場合の反応温度は、通常50〜250℃、好ましくは60〜180℃程度の範囲である。また、ジカルボニル化合物(6)として、Zがハロゲン原子であるジカルボン酸ハロゲン化物を用いる場合の反応温度は、通常−30〜100℃、好ましくは−10〜50℃程度の範囲である。なお、この場合、副生するハロゲン化水素を捕捉するため、例えばトリエチルアミン等の塩基の共存下に反応を実施することが好ましい。
【0114】
反応後、例えば反応混合物に水を加えて抽出処理することにより、光学活性なジアミド化合物(7)を含む有機層を得ることができる。該有機層をそのまま次の反応に用いてもよいし、該有機層を濃縮処理することにより光学活性なジアミド化合物(7)を取り出してから次の反応に用いてもよい。もちろん、取り出した光学活性なジアミド化合物(7)を、例えばカラムクロマトグラフィ、再結晶等、通常の精製手段により精製した後に次の反応に用いてもよい。
【0115】
かかる光学活性なジアミド化合物(7)としては、例えばN,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−エチルブチル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−n−プロピルペンチル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−n−ブチルヘキシル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−イソブチル−4−メチルペンチル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−n−ペンチルヘプチル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−n−ヘキシルオクチル]プロパン−1,3−ジアミド、
【0116】
N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−ベンジル−3−フェニルプロピル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−(2−メチルベンジル)−3−(2−メチルフェニル)プロピル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−(3−メチルベンジル)−3−(3−メチルフェニル)プロピル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−(4−メチルベンジル)−3−(4−メチルフェニル)プロピル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)プロピル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)−3−(3−メトキシフェニル)プロピル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシベンジル)−3−(4−メトキシフェニル)プロピル]プロパン−1,3−ジアミド、
【0117】
N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−(1−ナフチルメチル)−3−(1−ナフチル)プロピル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−(2−ナフチルメチル)−3−(2−ナフチル)プロピル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニルエチル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2,2−ジ(3−メチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2,2−ジ(4−メチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2,2−ジ(2−メトキシフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2,2−ジ(3−メトキシフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−(1−ヒドロキシシクロプロピル)メチル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−(1−ヒドロキシシクロブチル)メチル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−(1−ヒドロキシシクロペンチル)メチル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)メチル]プロパン−1,3−ジアミド、N,N’−ビス[(1R)−(2−メチルフェニル)−(1−ヒドロキシシクロヘプチル)メチル]プロパン−1,3−ジアミド、
【0118】
および、上記各化合物において2−メチルフェニル基上の「メチル(式(7)中のR1に相当。)」が、エチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、メチルチオ、tert−ブチルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシまたはトリフルオロメチルチオに、それぞれ置き換わった化合物、
【0119】
上記各化合物において「プロパン−1,3−ジアミド」が、「2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジアミド」、「2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジアミド」、「2,2−ジ(n−プロピル)プロパン−1,3−ジアミド」に、それぞれ置き換わった化合物ならびに上記各化合物の立体配置(1R)が(1S)に代わった化合物等が挙げられる。
【0120】
かくして得られた光学活性なジアミド化合物(7)とルイス酸とを反応させることにより、光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)を得ることができる。
【0121】
かかる操作は通常、溶媒の存在下に実施される。溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されず、上記の光学活性なジアミド化合物(7)の製造に用いられる溶媒と同様のものが挙げられる。その使用量は特に限定されないが、光学活性なジアミド化合物(7)に対して、通常2〜200重量倍程度である。反応温度は、通常50〜250℃、好ましくは60〜180℃程度の範囲である。
【0122】
ルイス酸としては、例えばチタンテトライソプロポキシド等のチタンテトラアルコキシド、塩化チタン等のハロゲン化チタン、アルミニウムトリイソプロポキシド等のアルミニウムトリアルコキシド、塩化アルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、ジエチル塩化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、二塩化ジメチルスズ、塩化スズ等のハロゲン化スズ、塩化亜鉛等のハロゲン化亜鉛、ジイソプロポキシ亜鉛等のアルコキシ亜鉛化合物、塩化ジルコニウム等のハロゲン化ジルコニウム、塩化ハフニウム等のハロゲン化ハフニウム等が挙げられる。かかるルイス酸は単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。かかるルイス酸の使用量は特に限定されないが、光学活性なジアミド化合物(7)に対して、通常0.001〜5モル倍、好ましくは0.01〜1モル倍程度の範囲である。
【0123】
反応終了後、例えば得られた反応液を濃縮処理することにより、光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)が得られる。得られたビスオキサゾリン化合物は、そのまま後述する不斉銅錯体の調製に用いてもよいが、例えばカラムクロマトグラフィ、再結晶等、通常の精製手段により精製した後に用いることが好ましい。また、例えば炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液と反応液とを混合し、必要に応じて不溶分を濾別した後、抽出処理し、得られた有機層を濃縮処理することにより、光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)を取り出すこともできる。
【0124】
かかる光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)としては、例えばビス[2−[(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジメチルオキサゾリン]]メタン、2,2−ビス[2−[(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジメチルオキサゾリン]]プロパン、3,3−ビス[2−[(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジメチルオキサゾリン]]ペンタン、4,4−ビス[2−[(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジメチルオキサゾリン]]ヘプタン、
【0125】
および、上記各化合物において「(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジメチルオキサゾリン」が、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジエチルオキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ−n−プロピルオキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ−n−ブチルオキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジイソブチルオキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ−n−ペンチルオキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ−n−ヘキシルオキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジベンジルオキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ(2−メチルベンジル)オキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ(3−メチルベンジル)オキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ(4−メチルベンジル)オキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ(2−メトキシベンジル)オキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ(3−メトキシベンジル)オキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ(4−メトキシベンジル)オキサゾリン、
【0126】
(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ(1−ナフチルメチル)オキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ(2−ナフチルメチル)オキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジフェニルオキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ(3−メチルフェニル)オキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ(4−メチルフェニル)オキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ(2−メトキシフェニル)オキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ(3−メトキシフェニル)オキサゾリン、(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジ(4−メトキシフェニル)オキサゾリン、スピロ[(4R)−(2−メチルフェニル)オキサゾリン−5,1’−シクロプロパン]、スピロ[(4R)−(2−メチルフェニル)オキサゾリン−5,1’−シクロブタン]、スピロ[(4R)−(2−メチルフェニル)オキサゾリン−5,1’−シクロペンタン]、スピロ[(4R)−(2−メチルフェニル)オキサゾリン−5,1’−シクロヘキサン]またはスピロ[(4R)−(2−メチルフェニル)オキサゾリン−5,1’−シクロヘプタン]に、それぞれ置き換わった化合物、
【0127】
上記各化合物において、2−メチルフェニル基上の「メチル(式(1)中のR1に相当。)」が、エチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、メチルチオ、tert−ブチルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシまたはトリフルオロメチルチオに、それぞれ置き換わった化合物、
【0128】
ならびに上記各化合物の立体配置(4R)が(4S)に代わった化合物等が挙げられる。
【0129】
さらに、上記各化合物は、2つのビスオキサゾリン骨格が、いずれも同じ立体配置であるが、2つのビスオキサゾリン骨格のうちの一方の立体配置が(4R)で、他方が(4S)である、例えば2−[2−[(4R)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジメチルオキサゾリン]]−2−[2−[(4S)−(2−メチルフェニル)−5,5−ジメチルオキサゾリン]]プロパン等の化合物も挙げられる。
【0130】
最後に(D)工程、すなわち上記の光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)と銅化合物から調製される不斉銅錯体の存在下における、光学活性なシクロプロパン化合物(4)の製造工程について説明する。
【0131】
光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)と銅化合物とから調製される新規な不斉銅錯体の存在下に、式(2)
【化25】
(式中、R4、R5、R6およびR7は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるプロキラルなオレフィン(以下、プロキラルなオレフィン(2)と略記する。)と式(3)
N2CHCH2R8 (3)
(式中、R8は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるジアゾ酢酸エステル(以下、ジアゾ酢酸エステル(3)と略記する。)とを反応させることにより、光学活性なシクロプロパン化合物(4)を得ることができる。
【0132】
まず光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)と銅化合物とを反応させることにより、不斉銅錯体を得ることができる。
【0133】
かかる光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)には、上述のとおり二つの不斉炭素原子が存在し、これらを不斉中心とする少なくとも二種類の光学活性体が存在するが、そのいずれを用いてもよい。
【0134】
銅化合物としては、例えば一価もしくは二価の銅化合物が挙げられ、具体的には、トリフルオロメタンスルホン酸銅、酢酸銅、臭化銅、塩化銅、テトラキスアセトニトリル銅等が挙げられ、なかでもトリフルオロメタンスルホン酸銅、トリフルオロメタンスルホン酸銅が好適である。なお、かかる銅化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0135】
光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)の使用量は、銅化合物に対し、通常0.8〜5モル倍であり、好ましくは0.9〜2モル倍程度の範囲である。
【0136】
光学活性なビスオキサゾリン化合物(1)と銅化合物とを、通常、溶媒の存在下に接触させることにより、新規な不斉銅錯体が調製される。溶媒としては、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒等が挙げられる。また次の反応に用いるプロキラルなオレフィン(2)が液体である場合には、該プロキラルなオレフィン(2)を溶媒として用いてもよい。かかる溶媒の使用量は特に制限されないが、銅化合物に対して、通常10〜500重量倍程度である。
【0137】
なお、上記操作は通常、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で実施され、その調製温度は、通常0〜100℃程度である。
【0138】
本反応により調製された不斉銅錯体は、該調製液から例えば濃縮処理等により取り出してから次の反応に用いてもよいし、取り出すことなく調製液のまま用いてもよい。
【0139】
かくして調製された不斉銅錯体の存在下、プロキラルなオレフィン(2)とジアゾ酢酸エステル(3)とを反応させることにより、光学活性なシクロプロパン化合物(4)を得ることができる。
【0140】
プロキラルなオレフィン(2)の式中、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基等の炭素数1〜6のアルキル基、これらアルキル基の一つもしくは二つ以上の水素原子が、ハロゲン原子で置換された、例えばクロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロエチル基等が挙げられる。ハロゲン原子で置換されていてもよいアルケニル基としては、例えばビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基、これらアルケニル基の一つまたは二つ以上の水素原子が、ハロゲン原子で置換された、例えば1−クロロ−2−プロペニル基等が挙げられる。
【0141】
アリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3−メトキシフェニル基等が、アラルキル基としては、例えば上記アルキル基と上記アリール基とから構成されるもの等が挙げられる。
【0142】
アルコキシカルボニル基としては、例えば上記アルキル基とカルボキシル基とから構成されるメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基等が挙げられる。
【0143】
かかるプロキラルなオレフィン(2)としては、例えばプロペン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−クロロ−1−ブテン、2−ペンテン、2−ヘプテン、2−メチル−2−ブテン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、2−クロロ−5−メチル−2,4−ヘキサジエン、2−フルオロ−5−メチル−2,4−ヘキサジエン、1,1,1−トリフルオロ−5−メチル−2,4−ヘキサジエン、2−メトキシカルボニル−5−メチル−2,4−ヘキサジエン、1,1−ジフルオロ−4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,1−ジクロロ−4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,1−ジブロモ−4−メチル−1,3−ペンタジエン、1−クロロ−1−フルオロ−4−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フルオロ−1−ブロモ−4−メチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−2,4−ヘキサジエン、1−フルオロ−1,1−ジクロロ−4−メチル−2−ペンテン、1,1,1−トリクロロ−4−メチル−3−ペンテン、1,1,1−トリブロモ−4−メチル−3−ペンテン、2,3−ジメチル−2−ペンテン、2−メチル−3−フェニル−2−ブテン、2−ブロモ−2,5−ジメチル−4−ヘキセン、2−クロロ−2,5−ジメチル−4−ヘキセン、2,5−ジメチル−6−クロロ−2,4−ヘキサジエン等が挙げられる。
【0144】
ジアゾ酢酸エステル(3)の式中、炭素数1〜6のアルキル基としては、上記と同様のものが挙げられ、かかるジアゾ酢酸エステル(3)としては、例えばジアゾ酢酸メチル、ジアゾ酢酸エチル、ジアゾ酢酸n−プロピル、ジアゾ酢酸イソプロピル、ジアゾ酢酸n−ブチル、ジアゾ酢酸イソブチル、ジアゾ酢酸tert−ブチル等が挙げられる。
【0145】
不斉銅錯体の使用量は、ジアゾ酢酸エステル(3)に対して、銅金属換算で、通常0.0001〜0.05モル倍であり、好ましくは、0.0005〜0.01モル倍程度の範囲である。
【0146】
プロキラルなオレフィン(2)の使用量は特に限定されないが、ジアゾ酢酸エステル(3)に対し、通常1モル倍以上であり、好ましくは1.2モル倍以上である。その上限は特になく、例えばプロキラルなオレフィン(2)が液体である場合には、上述したように溶媒をかねて大過剰量用いてもよい。
【0147】
プロキラルなオレフィン(2)とジアゾ酢酸エステル(3)との反応は、不斉銅錯体、プロキラルなオレフィン(2)およびジアゾ酢酸エステル(3)の三者を接触、混合させることにより実施され、その混合順序は特に制限されないが、ジアゾ酢酸エステル(3)がプロキラルなオレフィン(2)と接触する前に不斉銅錯体と接触することによるフマル酸エステルあるいはマレイン酸エステルの生成を避ける必要があるため、通常は不斉銅錯体とプロキラルなオレフィン(2)の混合物に、ジアゾ酢酸エステル(3)を加える方法等が用いられる。
【0148】
本、不斉シクロプロパン化反応は通常、溶媒の存在下に実施される。かかる溶媒としては、例えばジクロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、酢酸エチル等のエステル溶媒等の単独または混合溶媒が挙げられ、その使用量は特に制限されないが、容積効率や反応液の性状等を考慮すると、ジアゾ酢酸エステル(3)に対して、通常2〜30重量倍、好ましくは5〜20重量倍程度の範囲である。また、かかる溶媒は、予めプロキラルなオレフィン(2)、ジアゾ酢酸エステル(3)および/または不斉銅錯体と混合しておいてもよい。また、上述したように、プロキラルなオレフィン(2)が液体である場合には、かかるプロキラルなオレフィン(2)を溶媒として用いてもよい。
【0149】
プロキラルなオレフィン(2)とジアゾ酢酸エステル(3)との反応は、通常アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で実施される。また、水は反応に悪影響を及ぼすため、例えば反応系内に脱水剤を共存させて反応を実施することも可能であるが、予め脱水処理したプロキラルなオレフィン(2)や溶媒等を用いることにより、反応系内に存在する水分量を低く抑えておくことが好ましい。
【0150】
反応温度は、通常−50〜150℃、好ましくは−20〜80℃程度の範囲である。
【0151】
反応終了後、例えば反応液を濃縮処理することにより、光学活性なシクロプロパン化合物(4)を取り出すことができる。取り出した光学活性なシクロプロパン化合物(4)は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ等の通常の精製手段により、さらに精製してもよい。
【0152】
かかる光学活性なシクロプロパン化合物(4)としては、例えば光学活性な2−メチルシクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロ−1−エテニル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2,2,2−トリクロロエチル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2,2,2−トリブロモエチル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2,2−ジブロモ−1−エテニル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2,2−ジフルオロ−1−エテニル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2−フルオロ−2−クロロ−1−エテニル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2−フルオロ−2−ブロモ−1−エテニル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2−フルオロ−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2−クロロ−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2−メトキシカルボニル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2−クロロ−2−メチルプロピル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(2−ブロモ−2−メチルプロピル)シクロプロパンカルボン酸エチル、光学活性な2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸エチル等、および上記化合物のエチルエステル部分が、例えばメチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、tert−ブチルエステル等に、それぞれ置き換わった化合物等が挙げられる。
【0153】
なお、かかる光学活性なシクロプロパン化合物(4)は、公知の加水分解方法に準じて加水分解せしめることにより、R8が水素原子である光学活性なシクロプロパンカルボン酸化合物に変換することもできる。
【0154】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、得られた光学活性なアミノアルコール(5)の光学純度は、光学活性カラムを用いる高速液体クロマトグラフ分析法によって求めた。
【0155】
実施例1
2−メトキシフェニルグリシン(ラセミ体)22.3gとメタノール(脱水品)100mLの混合物中に、塩化チオニル16mLを、35℃で1時間かけて滴下し、さらに同温度で3時間攪拌、反応させた。反応混合物を濃縮処理し、得られた濃縮残渣に、ジエチルエーテル(脱水品)100mLを加えた後、濾過し、濾上物をジエチルエーテル(脱水品)25mLで洗浄した。得られた結晶を、内温50℃で減圧下に乾燥処理し、白色の2−メトキシフェニルグリシン メチルエステル塩酸塩21.5gを得た(収率:75%)。
【0156】
1H−NMR(300MHz,CD3OD,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);3.80(3H,s),3.88(3H,s),5.24(1H,s),7.02〜7.50(4H,m)
【0157】
実施例2
実施例1で得た2−メトキシフェニルグリシン メチルエステル塩酸塩21.5gとジクロロメタン(脱水品)130mLの混合物を冷却し、−50〜−40℃でトリエチルアミン(脱水品)27.1mLを滴下した後、トリフルオロ酢酸無水物14.4mLを、−50〜−45℃で1時間かけて滴下した。さらに同温度で1時間攪拌、反応させた後、0℃まで自然昇温させた。反応混合物に、冷却した水100mLと濃塩酸4mLの混合物を加え、冷却したジクロロメタン390mLで抽出処理した。得られた有機層を、冷却した水100mLで洗浄処理した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥処理した後、濃縮処理し、析出した結晶を濾過した。濾上物を冷却したジクロロメタン/n−ヘキサン=1/1(体積比)混合液で洗浄した後、内温50℃で減圧下に乾燥処理し、白色のN−(トリフルオロアセチル)−2−メトキシフェニルグリシン メチルエステル17.6gを得た(収率:65%)。
【0158】
融点 89〜90℃
1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);3.73(3H,s),3.86(3H,s),5.69(1H,d),6.92〜7.40(4H,m),7.51(1H,br.d)
【0159】
実施例3
メチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(3モル/L)100mLにテトラヒドロフラン(脱水品)200mLを加えた溶液を0〜5℃に冷却し、同温度で、実施例2で得たN−(トリフルオロアセチル)−2−メトキシフェニルグリシン メチルエステル17.5gとテトラヒドロフラン(脱水品)90mLの混合溶液を、15分間かけて滴下した後、室温まで自然昇温させ、同温度で2.5時間攪拌、反応させた。反応混合物を、氷450gと濃塩酸110mLの混合物中に、5℃以下で加えた後、冷却したトルエン400mLで抽出処理した。得られた水層を、冷却したトルエン400mLで抽出処理し、得られた有機層を、先に得られた有機層と合わせ、冷やした水200mLで洗浄処理した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥処理した後、濃縮処理し、得られた濃縮残渣を内温35℃で減圧下に乾燥処理して、黄白色固体状の1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メトキシフェニル)−2−メチル−2−プロパノール18.7gを得た。
【0160】
1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);1.09(3H,s),1.32(3H,s),3.89(3H,s),5.16(1H,d),6.94〜7.31(4H,m),7.75(1H,br.d)
【0161】
実施例4
実施例3で得た1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メトキシフェニル)−2−メチル−2−プロパノール18.7gに、2−プロパノール100mLとエタノール100mLを加え、混合した溶液に、22wt%水酸化カリウム水溶液35gを、室温下に30分間かけて滴下した後、50℃まで昇温させ、同温度で2時間攪拌、反応させた。反応混合物を濃縮処理し、得られた濃縮残渣に、クロロホルム300mLと水100mLを加え、抽出処理した。得られた有機層を、水50mLで洗浄処理し、得られた有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥処理した後、濃縮処理し、得られた濃縮残渣を、内温30℃で減圧下に乾燥処理して、橙赤色オイル状の1−アミノ−1−(2−メトキシフェニル)−2−メチル−2−プロパノール13.5gを得た。
【0162】
1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);1.05(3H,s),1.22(3H,s),1.80〜2.80(3H,br),3.82(3H,s),4.25(1H,s),6.86〜7.36(4H,m)
【0163】
実施例5
実施例4で得た1−アミノ−1−(2−メトキシフェニル)−2−メチル−2−プロパノール11.7gを2−プロパノール150mLに溶解し、内温80℃に昇温した。これに、(2R,3R)−タートラニル酸6.1gを2−プロパノール200mLに溶解させた溶液を加えた。その後、室温で一晩静置し、析出した光学活性な1−アミノ−1−(2−メトキシフェニル)−2−メチル−2−プロパノールと(2R,3R)−タートラニル酸とからなるジアステレオマー塩を濾取した。濾取したジアステレオマー塩を、氷水で冷やした2−プロパノール50mLで洗浄して、ジアステレオマー塩を得た。該ジアステレオマー塩に、2−プロパノール300mLと水34mLを加え、還流するまで昇温し、ジアステレオマー塩を溶解させた。その後、室温まで冷却し、析出したジアステレオマー塩を濾取した。濾取したジアステレオマー塩を、氷水で冷やした2−プロパノール50mLで洗浄して、白色結晶のジアステレオマー塩7.7gを得た。
【0164】
融点 197〜198℃。
元素分析値 C:59.9%、H:6.6%、N:6.6%(理論値 C:60.0%、H:6.7%、N:6.7%)。
【0165】
得られたジアステレオマー塩7.68gに1モル/L水酸化ナトリウム水溶液30mL、水120mLおよびクロロホルム300mLを加え、室温で抽出処理し、有機層と水層とに分離した。得られた有機層を水で洗浄した後、濃縮処理して(R)−1−アミノ−1−(2−メトキシフェニル)−2−メチル−2−プロパノール3.6gを得た(N−(トリフルオロアセチル)−2−メトキシフェニルグリシン メチルエステルからの通算収率:36%)。
【0166】
光学純度:R体比=99.85%
[α]D(c0.5,CH3OH) −30.6°
【0167】
1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);1.05(3H,s),1.22(3H,s),3.82(3H,s),4.25(1H,s),6.86〜7.36(4H,m)
【0168】
実施例6
窒素雰囲気下、実施例5で得た(R)−1−アミノ−1−(2−メトキシフェニル)−2−メチル−2−プロパノール1.5g、トリエチルアミン(脱水品)0.91gおよびジクロロメタン(脱水品)13mLを混合した後、内温−10℃に冷却した。ジメチルマロン酸ジクロリド0.65gを3分間かけて滴下し、室温まで昇温し、そのまま7時間攪拌、反応させた。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水18mLを加え、分液処理し、得られた有機層を水25mLで3回洗浄した後、濃縮処理した。得られた濃縮残渣を、内温40℃で減圧下に乾燥処理し、N,N’−ビス[(1R)−(2−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル]−2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジアミド1.8gを得た(収率:98%)。
【0169】
融点 171〜172℃
1H−NMR(300MHz,CD3OD,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);1.02(6H,s),1.23(6H,s),1.44(6H,s),3.79(6H,s),4.91(4H,s),5.23(2H,s),6.80〜7.22(8H,m)
【0170】
実施例7
実施例6で得たN,N’−ビス[(1R)−(2−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル]−2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジアミド1.8gとキシレン100mLを混合し、内温130℃で1時間攪拌した後、チタンテトライソプロポキシド106mgを加え、同温度で48時間攪拌、反応させた。反応終了後、反応液を濃縮処理し、得られた濃縮残渣をカラムクロマトグラフィ(中性アルミナ、ヘキサン/酢酸エチル=2/1(体積比))により精製処理し、淡黄色オイル状の2,2−ビス[2−[(4R)−(2−メトキシフェニル)−5,5−ジメチルオキサゾリン]]プロパン1.7gを得た。
【0171】
1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);0.85(6H,s),1.59(6H,s),1.68(6H,s),3.81(6H,s),5.26(2H,s),6.81〜7.28(8H,m)
【0172】
実施例8
窒素置換した50mLシュレンク管に、トリフルオロメタンスルホン酸銅18mg、実施例7で得た2,2−ビス[2−[(4R)−(2−メトキシフェニル)−5,5−ジメチルオキサゾリン]]プロパン25mgおよび1,2−ジクロロエタン5mLを加えた後、室温で10分攪拌し、不斉銅触媒を調製した。その後、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン7.8gを加え、内温40℃に調整し、ジアゾ酢酸エチル1.1gを2時間かけて滴下し、さらに同温度で30分間攪拌、反応させた。反応液をガスクロマトグラフィにより分析したところ、2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸エチルの収率は、91%であり(ジアゾ酢酸エチル基準)、トランス体/シス体=73/27であった。また、液体クロマトグラフィにより光学純度を分析したところ、トランス体の光学純度は84%ee、シス体の光学純度は34%eeであった。なお、トランス体とは、シクロプロパン環平面に対して、1位のエステル基と3位の2−メチル−1−プロペニル基とが、反対側にあるものをいい、シス体とは、シクロプロパン環平面に対して、1位のエステル基と3位の2−メチル−1−プロペニル基とが、同一側にあるものをいう。
【0173】
【発明の効果】
本発明によれば、プロキラルなオレフィンとジアゾ酢酸エステルとの反応による不斉シクロプロパン化反応において、オキサゾリン環の4位にオルト置換フェニル基を有する光学活性なビスオキサゾリン化合物を配位子とする不斉銅錯体を触媒として用いることにより、従来の手法の良好なジアステレオ選択性(トランス体/シス体比)やエナンチオ選択性を達成しつつ、さらにより収率よく目的とするシクロプロパン化合物を得ることができる。また、当該配位子は、入手が容易なオルト置換フェニルグリシンから、中間体として光学活性な2−アミノ−2−フェニルエタノール化合物を経るルートにより、容易に製造することが可能であるため、工業的に有利である。
Claims (10)
- 式(1)
で示される光学活性なビスオキサゾリン化合物と銅化合物とから調製される不斉銅錯体の存在下、式(2)
で示されるプロキラルなオレフィンと式(3)
N2CHCO2R8 (3)
(式中、R8は炭素数1〜6のアルキル基を表わす。)
で示されるジアゾ酢酸エステルとを反応させることを特徴とする式(4)
で示される光学活性なシクロプロパン化合物の製造方法。 - 式(5)
で示される光学活性なアミノアルコールと式(6)
で示されるジカルボニル化合物とを反応させて式(7)
で示される光学活性なジアミド化合物を得、次いで得られた光学活性なジアミド化合物とルイス酸とを反応させることを特徴とする式(1)
で示される光学活性なビスオキサゾリン化合物の製造方法。 - 式(8)
で示されるアミノアルコールと光学活性なタートラニル酸とを溶媒の存在下で反応させて式(5)
で示される光学活性なアミノアルコールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩を形成させ、得られたジアステレオマー塩のうちの一方のジアステレオマー塩を他方のジアステレオマー塩と分離した後、分離したジアステレオマー塩をアルカリ処理することを特徴とする式(5)で示される光学活性なアミノアルコールの製造方法。 - 式(8)
で示されるアミノアルコールと光学活性なタートラニル酸とを、溶媒の存在下で反応させることを特徴とする式(5)
で示される光学活性なアミノアルコールと光学活性なタートラニル酸とのジアステレオマー塩の製造方法。 - 式(9)
で示されるアミノ酸と式(10)
R9OH (10)
(式中、R9は炭素数1〜4の低級アルキル基を表す。)
で示されるアルコールとを塩素化剤の共存下に反応させて式(11)
で示されるアミノ酸エステル塩酸塩を得、次いで得られたアミノ酸エステル塩酸塩とトリフルオロ酢酸無水物またはトリフルオロ酢酸塩化物とを3級アミンの存在下に反応させて式(12)
で示されるN−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステルを得、次いで得られたN−(トリフルオロアセチル)アミノ酸エステルと式(13)
R2−MgX (13)
(式中、R2は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルキレン基、置換されていてもよいフェニル基または置換されていてもよいアラルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。ここで、R2がアルキレン基であるときには、メチレン鎖の両末端がMgXのグリニャール試薬になっていることを表す。)
で示されるグリニャール試剤とを反応させて式(14)
で示されるトリフルオロアセチルアミノアルコールを得、次いで得られたトリフルオロアセチルアミノアルコールと塩基とを反応させることを特徴とする式(8)
で示されるアミノアルコールの製造方法。
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