JP4310089B2 - ころ軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ころ軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来例として、図8に示すような針状ころ軸受がある(例えば特許文献1参照)。図中、81は針状ころ軸受の全体、82はシェル形の外輪、83は複数の針状ころ、84は保持器リングである。
【0003】
外輪82は、一枚の金属板をプレス加工することにより製作されるもので、円筒部82aの軸方向両側に屈曲片82b,82cが設けられている。この屈曲片82b,82cは、円筒部82aに対して180度屈曲されることで、上半分の断面が横向きのU字形になっている。
【0004】
上記2つの屈曲片82b,82cの先端面が針状ころ83の案内面になっており、また、2つの屈曲片82b,82cの内周面が保持器リング84の案内面になっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−264930号公報(図15、図16)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記針状ころ軸受81は、屈曲片82b,82cの強度が高い点、屈曲片82b,82cによる針状ころ83および保持器リング84のガイドが良好となる点において、優れている。
【0007】
しかしながら、屈曲片82b,82cを円筒部82aに対して180度屈曲させているために、これらの屈曲片82b,82cの軸方向長さ分について、針状ころ83の長さが規定される場合には針状ころ軸受81の総長さが長くなってしまい、また、針状ころ軸受81の総長さが制約される場合には針状ころ83の長さが短くなってしまう。しかも、屈曲片82b,82cを円筒部82aに対して180度屈曲させる状態を確保するときの加工を容易とするために、現状では外輪4全体の厚みを可能な範囲でできるだけ薄くしているが、例えば外輪82に対して過大な衝撃荷重が加わるような条件では、外輪82が破損するおそれがある。このことに対しては、外輪82の厚みを可及的に厚くすればよいのであるが、あまり厚くすると、外輪82の軸方向両側の屈曲片82b,82cを円筒部82aに対して180度屈曲した状態にすることがきわめて困難になる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、外筒とそれに挿通される軸体との間に形成される環状空間に配置されるころ軸受であって、前記外筒の内周面に嵌合固定されかつ金属板をプレス加工して製作されるシェル形の外輪と、この外輪の内周に配置されかつ前記軸体の外周面を内輪軌道とする複数のころと、前記外輪の内周に収納されて円周数ヶ所に前記ころを保持する保持器リングとを含み、前記外輪の少なくとも軸方向一側に、径方向に沿う面よりも外輪の内側へ倒れこむように1箇所でのみ屈曲されてその先端に向けて直線状に延びる径方向斜め内向きの屈曲片が設けられており、前記ころの端面が、当該ころの回転軸線に対して直交する面に対してほぼ平行な形状とされており、前記保持器リングの軸方向一端が、前記ころそれぞれの中心を結ぶ円の直径よりも小さくかつ前記外輪の屈曲片の内径側に所定隙間を介して配置されており、前記屈曲片の先端側の厚み範囲内に、回転するころの軸方向変位に伴い当該ころの端面に対して面で接触しうるころ案内面と、前記保持器リングの外周面に対して面で接触しうる保持器案内面が、それぞれ面取り形成されており、前記ころ案内面の径方向の幅と前記保持器案内面の軸方向の幅は、それぞれ前記屈曲片の厚みより小さくなるように形成されている。
【0009】
なお、上記外筒とは、ころ軸受の外径側に配置される筒状の部材のことである。また、上記軸体とは、ころ軸受の内径側に配置される部材のことであり、中空部材や中実部材のいずれであってもよい。
【0010】
この場合、外輪の少なくとも軸方向一側に設ける屈曲片を従来例のように大きな角度(180度)をつけて屈曲させていないから、従来例に比べて軸方向寸法を小さくするうえで有利となる。しかも、仮に外輪の強度アップのために当該外輪の厚みを厚くする場合においても精度よく加工しやすくなる。また、前記屈曲片に対してころが干渉したときでも、ころの端面が前記屈曲片の先端側に設けたころ案内面に対してエッジ当たりせずに面当たりするから、ころの回転調子に悪影響を与えずに済む。
【0012】
また、保持器リングの周速を遅くできるので、保持器リングが外輪の屈曲片の保持器案内面に対して干渉したときに、保持器リングと外輪の屈曲片との摩耗や発熱を抑制することが可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1から図4に本発明の実施形態1を示している。この実施形態1では、ころ軸受として針状ころ軸受を例に挙げる。図に示すように、外筒1の内周に軸体2を同心状に挿通し、この外筒1と軸体2との間の環状空間に針状ころ軸受3が介装される。
【0014】
詳しくは、針状ころ軸受3は、シェル形の外輪4と、複数の針状ころ5と、保持器リング6とを含む構成である。
【0015】
シェル形の外輪4は、外筒1の内周面に対して例えば圧入により嵌合固定されるもので、円筒部4aの軸方向両側に屈曲片4b,4cが設けられている。このシェル形の外輪4は、一枚の金属板(薄鋼板など)をプレス加工により屈曲して製作されるものである。
【0016】
針状ころ5は、その両端面が回転軸線に対して直交する面に対してほぼ平行な形状とされており、外周面と端面との角部が丸く面取りされている。なお、針状ころ5の端面は、ほぼ平行であるが、多少波打った形状になったものでもよい。この針状ころ5は、外輪4の2つの屈曲片4b,4cで軸方向への変位量が規制されている。なお、針状ころ5の端面と2つの屈曲片4b,4cとの間には所定の隙間が設けられている。
【0017】
保持器リング6は、円筒形の部材の円周数ヶ所に径方向内外に貫通するポケット6aを設けた形状であり、外輪4の屈曲片4b,4cの内径側に配置されている。詳しくは、保持器リング6の外径は、図2に示すように、針状ころ5それぞれの中心を結ぶ円の直径(PCD)よりも小さく設定されるとともに、ポケット6aの周方向幅Wが針状ころ5の直径Rよりも小さく設定されることによって、針状ころ5が保持器リング6のポケット6aから内径側へ抜け出ないようになっている。この保持器リング6は、一枚の金属板(薄鋼板など)をプレス加工により屈曲して製作されるものである。
【0018】
ところで、上記シェル形の外輪4において、第1の屈曲片4bは、円筒部4aと同じ厚みに設定されているが、第2の屈曲片4cや円筒部4aにおいて第2の屈曲片4c寄りの領域は、円筒部4aの軌道面領域の厚みよりも薄く設定されている。このように第2の屈曲片4cを薄肉にしている理由は、この第2の屈曲片4cが外輪4をプレス加工により有底円筒形に絞り成形した後で、曲げ加工されるものであり、この後曲げ作業を容易とするためである。
【0019】
この実施形態では、上記軸方向両側に設けてある屈曲片4b,4cの屈曲形状を工夫している。
【0020】
つまり、屈曲片4b,4cは、図3に示すように、径方向に沿う面Xよりも外輪4の内側へ倒れこむように屈曲されることで、径方向斜め内向き姿勢にされている。なお、円筒部4aに対する屈曲片4b,4cの屈曲角θ1は、90度を越えて180度未満、好ましくは、135度に設定することができる。前記屈曲角θ1を135度に設定する場合、径方向に沿う面Xと屈曲片4b,4cの中心線Yとで挟む角度θ2は45度になる。
【0021】
そして、上記外輪4における屈曲片4b,4cの先端面7b,7cは、ともに針状ころ5それぞれの中心を結ぶ円の直径(PCD)や保持器リング6の外周面に対してほぼ平行に設定されている。この屈曲片4b,4cの先端面7b,7cは、保持器リング6が径方向に変位したときに、保持器リング6の外周面に対して面で接触して保持器リング6を案内する案内面となる。
【0022】
また、外輪4の屈曲片4b,4cの先端において内側の角部には、上記径方向に沿う面Xに対してほぼ平行なテーパ状の面取り8b,8cが形成されている。この面取り8b,8cは、針状ころ5が軸方向に変位したときに、針状ころ5のほぼ平坦な端面に対して面で接触して針状ころ5を案内する案内面となる。この屈曲片4b,4cの面取り8b,8cは屈曲片4b,4cの先端面7b,7cに対してほぼ直交している。
【0023】
なお、上記第1屈曲片4bは、外輪4を一枚の金属板からプレス加工で絞る過程で屈曲形成される。また、上述した第2の屈曲片4cと円筒部4aにおいて第2の屈曲片4b寄りの薄肉領域は、外輪4を一枚の金属板からプレス加工で絞る前の段階でプレス加工により潰すことにより形成するか、あるいは前記段階において切削加工により形成することができる。また、第1,2屈曲片4b,4cの先端面7b,7cや面取り8b,8cは、プレス加工などで押し潰したり、あるいは切削加工などにより削ったりすることで形成することができる。
【0024】
以上説明した実施形態1では、上記外輪4の屈曲片4b,4cについて従来例のように折り返さずに斜め姿勢にしているから、従来例に比べて軸方向寸法を小さくすることができる。しかも、外輪4の強度アップのために当該外輪4の厚みを厚くする場合においても精度よく加工できるようになる。ちなみに、上記実施形態1で示した外輪4については、強度アップのために、円筒部4aおよび第1屈曲片4bの厚みを図10に示す従来例に比べて50%厚くしている。但し、外輪4の厚みを厚くしない場合には、前述したように針状ころ軸受3を軸方向でコンパクトにできるという点で従来例よりも優れている。
【0025】
また、上記外輪4の屈曲片4b,4cの先端側に、針状ころ5の案内用の面取り8b,8cと保持器リング6の案内用の面7b,7cを設けているので、図4に示すように、屈曲片4b,4cに対して針状ころ5が軸方向に変位して干渉したときや保持器リング6が径方向に変位して干渉したときに、屈曲片4b,4cに対して針状ころ5の端面や保持器リング6の外周面をエッジ当たりさせずに面当たりさせることができる。そのため、針状ころ5や保持器リング6の回転調子に悪影響を与えずに済むので、針状ころ軸受3の転がり特性の安定化に貢献できる。
【0026】
このように、上記実施形態の針状ころ軸受3は、従来例の針状ころ軸受の優れた点を継承しながら、軸方向でのコンパクト化と、外輪4の強度アップとを図ることができる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。
【0028】
(1)図5に本発明の実施形態2を示している。この実施形態2では、上記実施形態1で示した外輪4の第2屈曲片4cの先端面7cを、当該第2屈曲片4cの中心線Yに対して直交させているとともに、この第2屈曲片4cの先端において内側角部と外側角部にテーパ状の面取り9c1,9c2を形成している。なお、第1屈曲片4bの姿勢や形状については、上記実施形態1と同じにしている。詳しくは、上記内側角部の面取り9c1は、針状ころ5の端面に対してほぼ平行に、また、上記外側角部の面取り9c2は、保持器リング6の外周面に対してほぼ平行にそれぞれ設定されている。例えば、径方向に沿う面Xと第2屈曲片4cの中心線Yとで挟む角度θ2を45度とする場合、第2屈曲片4cの先端面7cと針状ころ5それぞれの中心を結ぶ円の直径(PCD)とで挟む角度θ3は45度に、また、面取り9c1,9c2と前記先端面7cとで挟む角度θ4はそれぞれ45度に設定される。これにより、針状ころ5や保持器リング6が第2屈曲片4cに対して干渉したときに、エッジ当たりせずに、面で接触することになるので、針状ころ5や保持器リング6の回転調子に悪影響を与えずに済む。なお、第1屈曲片4bの姿勢や形状については、この項目で説明した第2屈曲片4cと同様の構成にしてもよい。
【0029】
(2)図6に本発明の参考例を示している。この参考例では、上記実施形態1で示した外輪4の第2屈曲片4cの先端全体に丸い面取り10を形成している。なお、第1屈曲片4bの姿勢や形状については、上記実施形態1と同じにしている。この場合、第2屈曲片4cの先端に対して針状ころ5や保持器リング6が干渉したときに、エッジ当たりせずに、線または面で接触することになるので、針状ころ5や保持器リング6の回転調子に悪影響を与えずに済む。なお、第1屈曲片4bの姿勢や形状については、この項目で説明した第2屈曲片4cと同様の構成にしてもよい。
【0030】
(3)図7に本発明の実施形態3を示している。この実施形態3では、上記実施形態1で示した外輪4の第1屈曲片4bを、径方向に沿う姿勢、つまり円筒部4aに対してほぼ90度に設定している。なお、第2屈曲片4cの姿勢や形状については、上記実施形態1と同じにしている。詳しくは、第1屈曲片4bの先端面7bは、針状ころ5それぞれの中心を結ぶ円の直径(PCD)に対してほぼ平行に設定されている。なお、第2屈曲片4cの姿勢や形状については、上記実施形態2と同様の構成にしてもよい。
【0031】
(4)上記実施形態1から3に示した保持器リング6については、合成樹脂を射出成形することにより製作されるものとしてもよい。この場合、プレス加工で製作する場合に比べて簡単かつローコストで製作できる。しかも、保持器リング6を合成樹脂で製作した場合には、当該保持器リング6が外輪4の屈曲片4b,4cに対してすべり接触したときに、金属どうしのすべり接触とならないので、外輪4が損傷しにくくなる点で有利となる。なお、保持器リング6の素材とする合成樹脂については、高強度、高耐熱性を有する合成樹脂、例えばPES(ポリエーテルサルフォン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ナイロン46、ナイロン66などとすることができる。
【0032】
(5)上記実施形態1から3では、針状ころ軸受3を例に挙げたが、ころ軸受とすることができる。
【0033】
【発明の効果】
本発明では、シェル形の外輪の少なくとも軸方向一側に設ける屈曲片を従来例のように大きく折り返さずに斜め姿勢にしているから、従来例に比べて軸方向寸法を小さくすることができる。しかも、仮に外輪の強度アップのために当該外輪の厚みを厚くする場合においても精度よく加工できるようになる。また、前記屈曲片に対してころが干渉したときでも、ころの端面が前記屈曲片の先端側に設けた案内面に対してエッジ当たりせずに面当たりするから、ころの回転調子に悪影響を与えずに済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る針状ころ軸受の上半分を示す断面図
【図2】図1の(2)−(2)線断面の矢視図
【図3】図1の第2屈曲片を拡大して示す図
【図4】図3において針状ころおよび保持器リングが第2屈曲片に干渉した状態を示す図
【図5】本発明の実施形態2に係る針状ころ軸受で、図3に対応する図
【図6】本発明の参考例に係る針状ころ軸受で、図3に対応する図
【図7】本発明の実施形態3に係る針状ころ軸受の上半分を示す断面図
【図8】従来例の針状ころ軸受の上半分を示す断面図
【符号の説明】
1 外筒 2 軸体
3 針状ころ軸受 4 シェル形の外輪
5 針状ころ 6 保持器リング
4b 外輪の第1屈曲片 4c 外輪の第2屈曲片
8c 第2屈曲片の面取り
Claims (1)
- 外筒とそれに挿通される軸体との間に形成される環状空間に配置されるころ軸受であって、
前記外筒の内周面に嵌合固定されかつ金属板をプレス加工して製作されるシェル形の外輪と、この外輪の内周に配置されかつ前記軸体の外周面を内輪軌道とする複数のころと、前記外輪の内周に収納されて円周数ヶ所に前記ころを保持する保持器リングとを含み、
前記外輪の少なくとも軸方向一側に、径方向に沿う面よりも外輪の内側へ倒れこむように1箇所でのみ屈曲されてその先端に向けて直線状に延びる径方向斜め内向きの屈曲片が設けられており、
前記ころの端面が、当該ころの回転軸線に対して直交する面に対してほぼ平行な形状とされており、
前記保持器リングの軸方向一端が、前記ころそれぞれの中心を結ぶ円の直径よりも小さくかつ前記外輪の屈曲片の内径側に所定隙間を介して配置されており、
前記屈曲片の先端側の厚み範囲内に、回転するころの軸方向変位に伴い当該ころの端面に対して面で接触しうるころ案内面と、前記保持器リングの外周面に対して面で接触しうる保持器案内面が、それぞれ面取り形成されており、前記ころ案内面の径方向の幅と前記保持器案内面の軸方向の幅は、それぞれ前記屈曲片の厚みより小さくなるように形成されている、ころ軸受。
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