JP4306196B2 - 重合体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐圧縮永久歪性、伸び特性が良好で、低温特性と剛性のバランスが良い履物用材料に関する。特に本発明は、発泡体として履物用材料、とりわけ履物底材として好適な材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
共役ジエン系重合体は重合体中に不飽和二重結合を有するため、熱安定性、耐候性、耐オゾン性が劣る。そのため、その不飽和二重結合を水素添加してそれらを改善する方法が古くから知られている。例えば、特公昭48-30151号公報、特開昭52-96695号公報、特開昭56-30401号公報、特公昭59-37294号公報などに開示されている。
そして,これらの水添重合体は,ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂や他のゴム状重合体とブレンドすることにより,その特性が活かされ,熱可塑性樹脂の改質剤,自動車部品等の分野で広く使用されている。
例えば,特開昭56-30447号公報には、ジエン部のビニル結合構造を40%以上含有する共役ジエン重合体の水素添加物をαオレフィン重合体と組み合わせた組成物が開示されている。また,特開平2-36244号公報には、ビニル結合構造を10%以上含有する共役ジエン重合体の水素添加物と熱可塑性樹脂との組成物が開示されている。
【0003】
また、重合体鎖中にビニル結合含量の多いブロックとビニル結合含量の少ないブロックを有する共役ジエン重合体を水素添加する試みがなされている。
例えば、特開昭56-30455号公報には、1,2-ミクロ構造を高々15重量%で含有する第一のブロック及び1,2-ミクロ構造を少なくとも30%含有する第二のブロックを有するジブロック共重合体の水素化物をαオレフィン重合体と組み合わせた組成物が開示されている。また、特開平3-128957号公報には、1,2-ビニル結合含量が20%以下であるポリブタジエンブロックセグメントとブタジエン部分の1,2-ビニル結合含量が25〜95%であるブロックセグメントからなるブロック共重合体を水素添加した水添ジエン系重合体を熱可塑性樹脂および/またはゴム状重合体と組み合わせた熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。更に、特開平8-109288号公報には、共役ジエン重合体のビニル結合含量の最大値と最小値との差が15重量%である共役ジエン重合体ブロックを有するブロック共重合体を水添した水添ブロック共重合体とポリオレフィンとの組成物が開示されている。
かかる水添重合体を履物底材に使用することも特開2001−197902号公報に開示されているが、耐圧縮永久歪性の点では不十分であり、更なる性能向上の要求には応えられなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐圧縮永久歪性、伸び特性が良好で、低温特性と剛性のバランスが良く、且つ成形加工性に優れた履物用材料を提供することにある。また、本発明は、発泡体として履物用材料、とりわけ履物底材として好適な材料を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、本発明者らはある特定のビニル結合含量を有する共役ジエン重合体の水添重合体であって、しかも分子量の増加に伴い末端メチル基が増加する特定構造の重合体とポリオレフィン系樹脂及び/又はゴム状重合体から構成される重合体組成物が履物用材料として上記課題を効果的に解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
[1]共役ジエン化合物の重合体及び共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の共役ジエン系重合体の水添物であって、
1)ビニル芳香族化合物の含有量が50重量%以下、2)平均ビニル結合含量が20重量%以上50重量%未満、3)該共役ジエン系重合体に結合されている共役ジエン化合物部分の二重結合残基の80%以上が水添され、4)重量平均分子量が6万〜60万、および5)メルトフロ−比が6以上であり、かつ、
GPC/FTIR測定で得られる分子量と末端メチル炭素原子の個数の関係が,次の式を満たす水添重合体である成分(a)5〜85重量部と、
Va−Vb≧0.03Vc
(Vaはピ−クトップ分子量の2倍の分子量における重合体中の1000個当たりの炭素原子中に含まれる末端メチル炭素原子の個数、Vbはピ−クトップ分子量の1/2の分子量における同個数、Vcはピ−クトップ分子量における同個数である。)
ポリオレフィン系樹脂及びゴム状重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の成分(b)95〜15重量部から構成される履物材料用重合体組成物。
[2]成分(a)の水添重合体に、官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している下記式(3)〜式(4)のいずれかで表される変性水添重合体である成分(a−1)5〜85重量部とポリオレフィン系樹脂及びゴム状重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の成分(b)95〜15重量部から構成される請求項1に記載の履物用材料重合体組成物。
【化1】
(下記の式において、[P]は、履物材料用重合体組成物中の(a)を示す。
[C]は、下記式のいずれかで表される結合単位。
【化4】
[D]は、下記式で表される結合単位。
【化5】
上式で、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子である。、R3は炭素数1〜24の炭化水素基、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜24の炭化水素基である。R8は炭素数1〜48の炭化水素基、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜48の炭化水素基である。R3及びR8の炭化水素基には、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基以外の結合様式で、酸素原子、窒素原子、珪素原子等の元素が結合ししていても良い。)
【0021】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する水添重合体又は変性水添重合体(以後、これらを水添重合体等とも呼ぶ)は、水添前の重合体中の平均ビニル結合含量が20重量%以上50重量%未満,好ましくは23〜47重量%、更に好ましくは26〜44重量%である水添重合体である。ここに,ビニル結合含量とは,水添前の重合体中に1,2−結合,3,4−結合及び1,4−結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン化合物のうち,1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれているものの割合である。このビニル結合含量は、核磁気共鳴装置(NMR)により水添後の重合体であっても測定できる。ここで,ビニル結合含量は,重合条件,すなわちビニル量調整剤の種類,量及び重合温度等で調節できる。水添重合体の平均ビニル結合含量は、履物用材料としての低温特性と伸び特性等の観点から20重量%以上であり、一方剛性の観点から50重量%未満である。
【0022】
本発明において、水添前の共役ジエン系重合体には、平均ビニル結合含量が本発明で規定する要件を満たす範囲内において、その重合体鎖中に共役ジエン単独重合体ブロックに加えて、ビニル芳香族化合物の単独重合体ブロック及び/又は共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックが含まれていても良い。水添前の重合体中におけるこれらの重合体ブロックの含有量は、特に限定されないが、好ましくは50重量%以下,更に好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下である。場合により、ビニル芳香族化合物の単独重合体ブロックと共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックから構成される共役ジエン系重合体であっても良い。なお、ここで共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックは、ビニル芳香族化合物の含有量が5〜50重量%、好ましくは7〜40重量%、更に好ましくは10〜30重量%の重合体ブロックである。
【0023】
本発明で使用する水添重合体等は、ビニル芳香族化合物の含有量が50重量%以下、好ましくは30重量%以下であるが、特に好ましい水添重合体等は、共役ジエン化合物単独重合体、又はビニル芳香族化合物の含有量が20重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体の水添物である。
本発明において、共役ジエン系重合体を構成する共役ジエン化合物は1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどであるが、一般的なものとしては1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。その中でも,特に1,3−ブタジエンが好ましい。これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。本発明で使用する水添重合体は、実質的に共役ジエン化合物からなるが、必要によりビニル芳香族化合物が共重合されていても良い。
【0024】
ビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等があげられる。これらの含有量は、5重量%未満、好ましくは4重量%以下、更に好ましくは3重量%以下であることが推奨される。
本発明で使用する水添重合体等は、共役ジエン系重合体に結合されている共役ジエン化合物部分の二重結合残基の水添率が、重合体組成物における引張強度等の機械的強度や耐圧縮永久歪性の観点から80%以上、好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上の水添重合体である。
【0025】
本発明で使用する水添重合体等の重量平均分子量は、重合体組成物における引張強度等の機械的強度や耐圧縮永久歪性の観点から6万以上であり、成形加工性の観点から60万以下である。水添重合体の重量平均分子量は、好ましくは7万〜50万、更に好ましくは8〜40万である。また、分子量分布は成形加工性の点で1.2〜6、好ましくは、1.4〜5、更に好ましくは1.6〜4であることが推奨される。
【0026】
本発明において、水素添加前の共役ジエン系重合体又はその水添物中の共役ジエン化合物に基づくビニル結合含量及び水添重合体中のビニル結合含量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて知ることができる。また、本発明において、水素添加前の共役ジエン重合体又はその水添物の分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。尚、クロマトグラム中にピークが複数有る場合の分子量は、各ピークの分子量と各ピークの組成比(クロマトグラムのそれぞれのピークの面積比より求める)から求めた平均分子量をいう。水素添加前の共役ジエン系重合体又はその水添物の分子量分布は、同様にGPCによる測定から求めることができる。また、水添重合体等の水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて知ることができる。
【0027】
本発明で使用する水添重合体等のメルトフロ−比は、耐圧縮永久歪性及び加工性の点で6以上,好ましくは8〜30,より好ましくは9〜25、特に好ましくは10〜20である。ここでメルトフロ−比は,190℃,加重10Kgで測定したメルトフロ−と190℃,加重2.16Kgで測定したメルトフロ−との比である。
本発明で使用する水添重合体等は、重合体組成物とした場合の低温特性と剛性のバランス性能や耐圧縮永久歪性の観点から、GPC/FTIR測定で得られる分子量と末端メチル炭素原子の個数の関係が、次の式の関係を満たす水添重合体等が好ましい。
【0028】
Va−Vb≧0.03Vc
好ましくは
Va−Vb≧0.05Vc
更に好ましくは
Va−Vb≧0.07Vc
(ここで,Vaはピ−クトップ分子量の2倍の分子量における重合体中の1000個当たりの炭素原子中に含まれる末端メチル炭素原子の個数、Vbはピ−クトップ分子量の1/2の分子量における同個数、Vcはピ−クトップ分子量における同個数である。)
【0029】
本発明において特に好ましい水添重合体は、該水添重合体等のテトラヒドロフラン不溶成分におけるGPC/FTIR測定で得られる分子量と末端メチル炭素原子の個数の関係が、上記の式の関係を満たす水添重合体等である。なお、ここでテトラヒドロフラン不溶成分とは、水添重合体等を23℃でテトラヒドロフランに溶解処理を行った際、テトラヒドロフランに溶解しなかった成分のことを云う。また、GPCで測定した分子量のピ−クが複数存在する水添重合体の場合は,前述した方法で平均分子量を求め,その平均分子量をピ−クトップ分子量に替えて用いる。
【0030】
GPC−FTIRは,GPC(ゲル・パ−ミエ−ション・クロマトグラフ)の検出器としてFTIR(フ−リエ変換赤外分光光度計)を使用したもので,分子量で分別した各フラクション毎のミクロ構造を測定することが可能となる。末端メチル炭素原子の個数は、メチレン基に帰属される吸光度I(−CH2−)<吸収波数:2925cm−1>とメチル基に帰属される吸光度I(−CH3)<吸収波数:2960cm−1>の比,I(−CH3)/I(−CH2−)から求めることができる。この方法は,例えば,NICOLET FT−IR CUSTOMERNEWSLETTERのVol.2,No2,1994等に記載された方法である。本発明で使用する水添重合体等をポリブタジエンの水添物で例示すると,ピ−クトップ分子量の2倍の分子量における水素添加された1,2ビニル結合含量が,ピ−クトップ分子量の1/2の分子量における水素添加された1,2ビニル結合含量よりも一定の割合で増加した重合体であるといえる。
【0031】
本発明において、水素添加前の共役ジエン系重合体は、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の開始剤を用いてアニオンリビング重合により得られる。炭化水素溶媒としては、例えばn−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンの如き脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタンの如き脂環式炭化水素類、また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンの如き芳香族炭化水素である。
【0032】
また、開始剤としては、一般的に共役ジエン化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等が含まれ、アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等である。好適な有機アルカリ金属化合物としては、炭素数1から20の脂肪族および芳香族炭化水素リチウム化合物であり、1分子中に1個のリチウムを含む化合物、1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が含まれる。
【0033】
具体的にはn−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンの反応生成物等があげられる。さらに、米国特許5,708,092号明細書に開示されている1−(t−ブトキシ)プロピルリチウムおよびその溶解性改善のために1〜数分子のイソプレンモノマーを挿入したリチウム化合物、英国特許2,241,239号明細書に開示されている1−(t−ブチルジメチルシロキシ)ヘキシルリチウム等のシロキシ基含有アルキルリチウム、米国特許5,527,753号明細書に開示されているアミノ基含有アルキルリチウム、ジイソプロピルアミドリチウムおよびヘキサメチルジシラジドリチウム等のアミノリチウム類も使用することができる。
【0034】
本発明において有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン化合物を重合する際に、重合体に組み込まれる共役ジエン化合物に起因するビニル結合(1,2または3,4結合)の含量を増やすために、ビニル量調整剤として第3級アミン化合物またはエーテル化合物を添加する。第3級アミン化合物としては一般式R1R2R3N(ただしR1、R2、R3は炭素数1から20の炭化水素基または第3級アミノ基を有する炭化水素基である)の化合物である。たとえば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’−ジオクチル−p−フェニレンジアミン等である。
【0035】
またエーテル化合物としては、直鎖状エーテル化合物および環状エーテル化合物から選ばれ、直鎖状エーテル化合物としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類が挙げられる。また、環状エーテル化合物としてはテトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5−ジメチルオキソラン、2,2,5,5−テトラメチルオキソラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
【0036】
本発明において、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン系重合体を得る方法は、バッチ重合であっても連続重合であっても、或いはそれらの組み合わせであってもよく、最終的に本発明の規定を満足するものであればよい。重合温度は、一般に0℃乃至180℃、好ましくは30℃乃至150℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、特に好適には0.1乃至10時間である。又、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。更に、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガスなどが混入しないように留意する必要がある。
【0037】
本発明において、前記重合終了時に2官能以上のカップリング剤を必要量添加してカップリング反応を行うこともできる。2官能カップリング剤としては公知のものいずれでも良く、特に限定されない。例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。また、3官能以上の多官能カップリング剤としては公知のものいずれでも良く、特に限定されない。
【0038】
例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物、一般式R4−nSiXn(ただし、Rは炭素数1から20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3から4の整数を示す)で示されるハロゲン化珪素化合物、例えばメチルシリルトリクロリド、t−ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素およびこれらの臭素化物等、一般式R4−nSnXn(ただし、Rは炭素数1から20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3から4の整数を示す)で示されるハロゲン化錫化合物、例えばメチル錫トリクロリド、tーブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物が挙げられる。炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も使用できる。
【0039】
本発明において、共役ジエン系重合体として重合体の少なくとも1つの重合体鎖末端に極性基含有原子団が結合した末端変性共役ジエン系重合体を使用することもできる。極性基含有原子団としては、例えば水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等から選ばれる極性基を少なくとも1種含有する原子団が挙げられる。末端変性共役ジエン重合体は、共役ジエン系重合体の重合終了時にこれらの極性基含有原子団を有する化合物を反応させることにより得られる。極性基含有原子団を有する化合物としては、具体的には、特公平4-39495号公報に記載された末端変性処理剤を使用できる。
【0040】
本発明において成分(a−1)として使用する変性水添重合体は、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性水添重合体が好ましく、前述の式(1)〜式(5)のいずれかで表される構造を有する。かかる変性水添重合体は、有機リチウム化合物を重合触媒として上述のような方法で得た共役ジエン系重合体のリビング末端に、官能基含有の変性剤を付加反応させることにより、重合体に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している変性物(以後、変性重合体と呼ぶ)に水素を添加することにより得ることができる。
【0041】
変性重合体を得る他の方法として、リビング末端を有さない共重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、有機アルカリ金属が付加した重合体に官能基含有の変性剤を付加反応させる方法が上げられる。後者の場合、重合体の水添物を得た後にメタレーション反応させ、上記の変性剤を反応させて変性水添重合体を得ることもできる。なお、変性剤の種類により、変性剤を反応させた段階で一般に水酸基やアミノ基等は有機金属塩となっていることもあるが、その場合には水やアルコール等活性水素を有する化合物で処理することにより、水酸基やアミノ基等にすることができる。
本発明において、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している変性水添重合体を得るために使用される変性剤としては、下記のものが挙げられる。
【0042】
例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、4,4’−ジグリシジルージフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジルージベンジルメチルアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシランである。
【0043】
また、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジメトキシシランである。
【0044】
また、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルメシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルフェノキシシラン、トリス(γ−グリシドキシプロピル)メトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシエチルトリエトキシシランである。
【0045】
また、ビス(γ−メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、トリス(γ−メタクリロキシプロピル)メトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジエトキシシランである。
【0046】
また、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルメトキシシランである。
【0047】
また、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジイソプロペンオキシシラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジプロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−プロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−ブチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−(2−メトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−(2−エトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ−(2−エトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルエチレンチオウレア、N,N‘−ジエチルプロピレンウレア、N−メチル−N’−エチルプロピレンウレア、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノンである。
【0048】
また、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン(N−メチルピロリドン)、1−エチル−2−ピロリドン、1−プロピル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−イソプロピル−2−ピロリドン、1,5−ジメチル−2−ピロリドン、1−メトキシメチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−ピペリドン、1,4−ジメチル−2−ピペリドン、1−エチル−2−ピペリドン、1−イソプロピル−2−ピペリドン、1−イソプロピル−5,5−ジメチル−2−ピペリドン等が挙げられる。
【0049】
有機リチウム化合物を重合触媒として上述のような方法で得た共重合体のリビング末端に上記の変性剤を反応させることにより、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性剤の残基が結合している変性重合体が得られる。尚、本発明においては、重合体のリビング末端に変性剤を反応させる際に、一部変性されていない重合体が変性重合体に混在しても良い。変性水添重合体に混在する未変性の重合体の割合は、好ましくは70wt%以下、より好ましくは60wt%以下、更に好ましくは50wt%以下であることが推奨される。
本発明で使用する水添重合体等は,上述したような方法で,直接連続重合し,その後水添して得る方法が好ましい。しかし,別の方法として,低ビニル結合含量で低分子量の重合体の水添重合体等と,高ビニル含量で高分子量の重合体の水添重合体等とのブレンド物であっても,本発明で規定する要件を満たしていればよい。
【0050】
本発明で使用する水添重合体を得るために使用する水添触媒としては、特に制限はされない。従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニュウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。具体的な水添触媒としては、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特公昭63-4841号公報、特公平1-37970号公報、特公平1-53851号公報、特公平2-9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。
【0051】
好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物および/または還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
【0052】
本発明において、水添反応は一般的に0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は0.1から15MPa、好ましくは0.2から10MPa、更に好ましくは0.3から5MPaが推奨される。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0053】
上記のようにして得られた水添重合体等の溶液は、必要に応じて触媒残査を除去し、水添重合体を溶液から分離することができる。溶媒の分離の方法としては、例えば水添後の反応液にアセトンまたはアルコール等の水添重合体等に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、反応液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、または直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。尚、本発明の水添重合体等には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
【0054】
本発明においては、上記の変性水添重合体に、該変性水添重合体の官能基と反応性を有する架橋剤(以後、これを成分(c)とも呼ぶ)を反応させた二次変性水添重合体(以後これを成分(a−2)とも呼ぶ)を重合体組成物の構成成分として使用することができる。なお、本発明においては、上述の式(1)〜式(5)のいずれかで表される変性水添重合体に成分(c)の架橋剤を反応させた二次変性水添重合体を、以後成分(a−3)とも呼ぶ。
【0055】
本発明において、成分(c)の架橋剤は上記の変性水添重合体の官能基と反応性を有する官能基を有する架橋剤であり、好ましくはカルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する架橋剤である。架橋剤は、これらの官能基から選ばれる官能基を少なくとも2個有する架橋剤である。但し官能基が酸無水物基の場合、酸無水物基が1個の架橋剤であっても良い。変性水添重合体に架橋剤を反応させる場合、変性水添重合体に結合されている官能基1当量あたり、架橋剤が0.3〜10モル、好ましくは0.4〜5モル、更に好ましくは0.5〜4モルであることが推奨される。変性水添重合体と架橋剤を反応させる方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、後述する溶融混練方法や各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法などが挙げられる。
【0056】
架橋剤として具体的なものは、カルボキシル基を有する架橋剤としては、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、カルバリル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0057】
酸無水物基を有する架橋剤としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、シス−4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキシテトラヒドロキシフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
イソシアネート基を有する架橋剤としてはトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、多官能芳香族イソシアナート等が挙げられる。エポキシ基を有する架橋剤としてはテトラグリジジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、エチレングリコールジグリシジル、プロピレングリコールジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート等の他、変性水添重合体を得るために使用される変性剤として記載されているエポキシ化合物などが挙げられる。
【0058】
シラノール基を有する架橋剤としては変性水添重合体を得るために使用される変性剤として記載されているアルコキシシラン化合物の加水分解物等が挙げられる。アルコキシシラン基を有する架橋剤としてはビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルファン、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジスルファン、エトキシシロキサンオリゴマー等の他、変性水添重合体を得るために使用される変性剤として記載されているシラン化合物などであるが挙げられる。
【0059】
本発明において特に好ましい架橋剤は、カルボキシル基を2個以上有するカルボン酸又はその酸無水物、或いは酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基を2個以上有する架橋剤であり、例えば無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、トルイレンジイソシアナート、テトラグリジジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルファン等である。
【0060】
本発明で使用する変性水添重合体は、該変性水添重合体に結合している官能基が上述した架橋剤と反応性を有すると同時に、窒素原子や酸素原子、或いはカルボニル基を変性水添重合体中に有しているためこれらとポリオレフィン系樹脂及び/又はゴム状重合体、無機充填材、極性基含有添加剤等の極性基間での水素結合等の物理的な親和力により相互作用が効果的に発現され、本発明が目的とする効果を更に発揮できる。また、本発明で使用する二次変性水添重合体には、該二次変性水添重合体に結合している官能基が官能基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はゴム状重合体、無機充填材、極性基含有添加剤等と反応性を有すると同時に、窒素原子や酸素原子、或いはカルボニル基が二次変性水添重合体中に含まれるためこれらとポリオレフィン系樹脂及び/又はゴム状重合体、無機充填材、極性基含有添加剤等の極性基間での水素結合等の物理的な親和力により相互作用が効果的に発現され、本発明が目的とする効果を発揮できる。
【0061】
本発明においては、成分(a)である水添重合体 5〜85重量部、好ましくは10〜75重量部、更に好ましくは15〜65重量部と成分(b)である熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体 95〜15重量部、好ましくは90〜25重量部、更に好ましくは85〜35重量部を組み合わせて各種成形材料に適した重合体組成物を得ることができる。
また、本発明においては、成分(a−1)である変性水添重合体 5〜85重量部、好ましくは10〜75重量部、更に好ましくは15〜65重量部と成分(b)である熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体 95〜15重量部、好ましくは90〜25重量部、更に好ましくは85〜35重量部を組み合わせて各種成形材料に適した重合体組成物を得ることができる。
【0062】
更に、本発明においては、成分(a−1)である変性水添重合体 5〜85重量%、好ましくは10〜75重量%、更に好ましくは15〜65重量%と成分(b)である熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体 95〜15重量%、好ましくは90〜25重量%、更に好ましくは85〜35重量%からなる組成物100重量部と、架橋剤成分(c) 0.01〜20重量部、好ましくは0.02〜10重量部、更に好ましくは0.05〜7重量部からなる重合体組成物を得ることができる。
また、本発明においては、成分(a−2)又は成分(a−3)である二次変性水添重合体 5〜85重量部、好ましくは10〜75重量部、更に好ましくは15〜65重量部と成分(b)である熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体 95〜15重量部、好ましくは90〜25重量部、更に好ましくは85〜35重量部からなる重合体組成物を得ることができる。
【0063】
本発明で使用するポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、エチレンを50重量%以上含有するエチレンとこれと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブチレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びその加水分解物、エチレンとアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル等の炭素数C1〜C24のアルコールやグリシジルアルコール等とアクリル酸とのエステルであるアクリル酸エステル類との共重合体、エチレンとメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル等の炭素数C1〜C24のアルコールやグリシジルアルコール等とメタアクリル酸とのエステルであるメタクリル酸エステル類との共重合体、エチレン−アクリル酸アイオノマーや塩素化ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂である。
【0064】
また、ポリプロピレン、プロピレンを50重量%以上含有するプロピレンとこれと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブチレン共重合体、プロピレン−ブチレン共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、プロピレン−オクテン共重合体、プロピレンと前記アクリル酸エステル類との共重合体、プロピレンとメタクリル酸エステル類との共重合体や塩素化ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂、エチレン−ノルボルネン樹脂等の環状オレフィン系樹脂,ポリブテン系樹脂などが挙げられる。共重合体は,ランダム共重合体,ブロック共重合体のいずれでもよい。
【0065】
これらのポリオレフィン系樹脂は単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。本発明におけるポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(JIS K6758に準拠:230℃,2.16Kg荷重)は0.5〜200g/10分、好ましくは0.1〜150g/10分の範囲にあることが望ましい。ポリオレフィン系樹脂の重合方法は従来公知の方法いずれでもよく、遷移重合、ラジカル重合、イオン重合等があげられる。本発明において、ポリオレフィン系樹脂の密度は一般に0.9以上である。また、本発明で使用するポリオレフィン系樹脂は、上記の成分(c)で予め変性されていても良い。
【0066】
ゴム状重合体としては、ブタジエンゴム及びその水素添加物(但し本発明の水添重合体とは異なる)、スチレン−ブタジエンゴム及びその水素添加物、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びその水素添加物、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマ−、ブチルゴム,アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、スチレンーブタジエンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体及びその水素添加物等のスチレン系エラストマ−、天然ゴムなどが挙げられる。これらのゴム状重合体は、官能基を付与した変性ゴムであっても良い。また、これらのゴム状重合体は、上記の成分(c)で予め変性されていても良い。なお、本発明において、オレフィン系エラストマ−は、一般に密度が0.9未満である。
【0067】
本発明の履物用材料重合体組成物には、必要によりポリオレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合しても良い。ポリオレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合樹脂、前記のビニル芳香族化合物の重合体、前記のビニル芳香族化合物と他のビニルモノマー、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸及びアクリルメチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等との共重合樹脂である。
【0068】
また、ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(MBS)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂及びその加水分解物、アクリル酸及びそのエステルやアミドの重合体、メタクリル酸及びそのエステルやアミドの重合体、ポリアクリレ−ト系樹脂,アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルの重合体、これらのアクリロニトリル系モノマーを50重量%以上含有する他の共重合可能なモノマーとの共重合体であるニトリル樹脂、ナイロン-46、ナイロン-6、ナイロン-66、ナイロン-610、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン-6ナイロン-12共重合体などのポリアミド系樹脂である。
【0069】
また、ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂,ポリ−4,4'−ジオキシジフェニル−2,2'−プロパンカーボネートなどのポリカーボネート系重合体、ポリエーテルスルホンやポリアリルスルホンなどの熱可塑性ポリスルホン、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルなどのポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリ4,4'−ジフェニレンスルフィドなどのポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルケトン重合体又は共重合体,ポリケトン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオキシベンゾイル系重合体、ポリイミド系樹脂、1,2−ポリブタジエン、トランスポリブタジエンなどのポリブタジエン系樹脂などである。
これらの熱可塑性樹脂の数平均分子量は一般に1000以上、好ましくは5000〜500万、更に好ましくは1万〜100万である。またこれらの熱可塑性樹脂は2種以上を併用しても良い。またこれらの熱可塑性樹脂は、上記の成分(c)で予め変性されていても良い。
【0070】
本発明の履物用材料には、必要により、加工性を改良するために軟化剤を配合することが出来る。軟化剤としては鉱物油又は液状もしくは低分子量の合成軟化剤が適している。なかでも、一般にゴムの軟化、増容、加工性向上に用いられるプロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30〜45%のものがナフテン系、また芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれる。本発明で用いる軟化剤は、ナフテン系及び/又はパラフィン系のものが好ましい。合成軟化剤としては、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、流動パラフィン等が使用可能であるが、上記鉱物油系ゴム用軟化剤が好ましい。軟化剤の配合量は、成分(a)の水添重合体100質量部に対して0〜200質量部、好ましくは0〜100質量部の範囲で使用できる。
【0071】
本発明においては、上記の重合体組成物を加硫剤で加硫して履物用材料とすることができる。重合体組成物の加硫物は、優れた耐圧縮永久歪特性を発揮するため、とりわけ履物底材として好適に利用できる。
加硫剤としては、有機過酸化物及びアゾ化合物などのラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用され、硫黄含有化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物などが含まれる。加硫剤の使用量は、通常は、成分(a)と成分(b)の合計量100重量部に対し0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部の割合で用いられる。
【0072】
有機過酸化物(以下、成分(e)とも呼ぶ)としては、具体的にはジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドなどがあげられる。
【0073】
これらの中では、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシク−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ジ−ter−ブチルパーオキサイド等が好ましい。
【0074】
また上記有機過酸化物を使用して架橋するに際しては、加硫促進剤として硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N−4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミド等のペルオキシ架橋用助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーなどを併用することができる。これらの加硫促進剤の使用量は、通常は、成分(a)と成分(b)の合計量100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部の割合で用いられる。
【0075】
また硫黄加硫に際して、加硫促進剤として、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒドーアミン系、アルデヒドーアンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系加硫促進剤などが必要に応じた量で使用される。また、加硫助剤として、亜鉛華、ステアリン酸などが必要に応じた量で使用される。
本発明における重合体組成物は、通常実施される加硫方法で加硫され、例えば、120〜200℃の温度で、好適には140〜180℃の温度で加硫される。なお、本発明においては、金属イオン架橋、シラン架橋、樹脂架橋などの方法により重合体組成物を架橋させたものや、押出成形や射出成形などにより成形した後、電子線、放射線等による物理的架橋、水架橋などの方法により重合体組成物を架橋させたもの(本発明においては、これらも加硫物と呼ぶこととする)を履物用材料として使用することができる。
【0076】
本発明における重合体組成物は、発泡体として履物用材料として使用することができる。発泡体を得る方法は、化学的方法、物理的方法等があり、各々、無機系発泡剤、有機系発泡剤等の化学的発泡剤、物理発泡剤等の発泡剤の添加等により材料内部に気泡を分布させて得ることができる。発泡材料とすることにより、軽量化、柔軟性向上、意匠性向上等を図ることができる。特に重合体組成物の加硫物の発泡体は、軽量で柔軟性があり、優れた耐圧縮永久歪特性を発揮するためとりわけ履物底材として好適に利用できる。
【0077】
無機系発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウム、金属粉等を例示することができる。
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジニトロソ-N,N’-ジメチルテレフタルアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド等を例示することができる。
【0078】
物理的発泡剤としては、ペンタン、ブタン、ヘキサン等の炭化水素、塩化メチル、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、窒素、空気等のガス、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ハイドロフルオロカーボン等のフッ素化炭化水素等を例示することができる。これらの発泡剤は組み合わせて使用してもよい。発泡剤の配合量は、通常は、成分(a)と成分(b)の合計量100重量部に対して0.1〜8重量部、好ましくは0.3〜6重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
【0079】
本発明において、履物用材料となる重合体組成物には,必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は,熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。例えば,シリカ,タルク、マイカ、けい酸カルシュウム、ハドロタルサイト、カオリン、珪藻土、グラファイト、炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム等の無機充填剤,カ−ボンブラック等の有機充填材,ステアリン酸,ベヘニン酸,ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム,エチレンビスステアロアミド等の滑剤,離型剤,有機ポリシロキサン,ミネラルオイル等の可塑剤,ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系、硫黄系及びアミン系熱安定剤等の酸化防止剤である。
また、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤,難燃剤,帯電防止剤,有機繊維,ガラス繊維,炭素繊維,金属ウィスカ等の補強剤,酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックなどの着色剤、その他「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)などに記載されたものが挙げられる。
【0080】
本発明において、重合体組成物の製造方法は,特に制限されるものではなく,公知の方法が利用できる。例えば,バンバリーミキサー,単軸スクリュー押出機,2軸スクリュー押出機,コニーダ,多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法,各成分を溶解又は分散混合後,溶剤を加熱除去する方法等が用いられる。本発明においては押出機による溶融混合法が生産性、良混練性の点から好ましい。
本発明において、履物用材料となる重合体組成物は、そのままで或いは各種添加剤を配合した組成物として、シート、フィルム、各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成型品、真空成形品、押出成形品、不織布や繊維状の成形品等多種多様の成形品にして履物用材料として活用できる。特に本発明の履物用材料は、履物の底材等に好適である。
【0081】
【発明の実施の形態】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、以下の実施例において、重合体の特性や物性の測定は、次のようにして行った。
A.重合体の特性及び物性
1)ビニル結合含量及び水添率
水添重合体等を用いて核磁気共鳴装置(BRUKER社製、DPX−400)で測定した。
【0082】
2)分子量及び分子量分布
GPC〔装置は、ウォーターズ製〕で測定し、溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度35℃で行った。分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量(ポリスチレン換算分子量)である。また,分子量分布は,得られた重量平均分子量と数平均分子量の比である。
【0083】
3)末端メチル炭素原子の個数(GPC/FTIR)
水添重合体等、及び該水添重合体等のテトラヒドロフラン不溶成分の末端メチル炭素原子の個数は、次のようにして測定した。なお、水添重合体等のテトラヒドロフラン不溶成分の測定試料は、次のようにして調製した。1gの水添重合体等を100mlのテトラヒドロフランに23℃で振とうさせながら1時間溶解した。溶解した成分と溶解しなかった成分を分離し、テトラヒドロフランに溶解しなかった成分を測定試料とした。
【0084】
末端メチル炭素原子の個数は、GPC〔装置は、ウォーターズ社製〕で測定し、検出器としてFT−IR〔装置は、パ−キンエルマ−社製〕を用いた。測定条件は、下記のとおりである。
・カラム;AT−807S(1本)〔昭和電工社製〕とGMH−HT6(2本)〔東ソ−社〕を直列に接続
・移動相;トリクロロベンゼン
・カラム温度;140℃
・流量;1.0ml/分
・試料濃度;20mg/20ml
・溶解温度;140℃
4)水添重合体等のメルトフロ−比
JIS K6758に準拠して測定した190℃、荷重10kgのメルトフロ−レ−トと, 190℃、荷重2.16kgのメルトフロ−の比である。
【0085】
B.水添触媒の調製
水添反応に用いた水添触媒は、下記の方法で調製した。
(1)水添触媒I
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
【0086】
(2)水添触媒II
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン2リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジ−(p−トリル)40ミリモルと分子量が約1,000の1,2−ポリブタジエン(1,2−ビニル結合量約85%)150グラムを溶解した後、n−ブチルリチウム60ミリモルを含むシクロヘキサン溶液を添加して室温で5分反応させ、直ちにn−ブタノール40ミリモルを添加攪拌して室温で保存した。
【0087】
C.水添重合体等の調製
<ポリマー1>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を2基使用して連続重合を行った。1基目の底部から,ブタジエン濃度が20重量%のヘキサン溶液を3.3L/hrの供給速度で、n−ブチルリチウムをブタジエン100gに対して0.11gになるような濃度に調整したヘキサン溶液を0.5L/hrの供給速度で、更にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのヘキサン溶液をn−ブチルリチウム1モルに対して0.23モルになるような供給速度でそれぞれ供給し、90℃で連続重合した。
1基目から出たポリマ−溶液を2基目の底部から供給,また同時に,ブタジエン濃度が20重量%のヘキサン溶液を3.3L/hrの供給速度で,更にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのヘキサン溶液をn−ブチルリチウム1モルに対して0.7モルになるような供給速度でそれぞれ供給し、90℃で連続重合した。2基目出口でのブタジエンの転化率はほぼ100%であった。
【0088】
次に、連続重合で得られたポリマーに、水添触媒Iをポリマー100重量部当たりTiとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度70℃で水添反応を行った。その後安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100重量部に対して0.3重量部添加した後、溶媒を除去した。
得られた水添重合体(ポリマー1)は、平均ビニル結合含量が32%、重量平均分子量が21.5万、分子量分布が1.95、水添率98%であった。また、Va−Vbが9、0.03Vcが3で関係式(1)を満足していた。
【0089】
<ポリマー2>
ポリマー1と同様にして連続重合で得られたリビングポリマーの溶液中に、変性剤として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを重合に使用したn−ブチルリチウムに対して当モル反応させて変性重合体を得た。
次に変性重合体の溶液に水添触媒IIをTiとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度70℃で水添反応を行った。その後安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100重量部に対して0.3重量部添加した後、溶媒を除去した。
得られた変性水添重合体(ポリマー2)は、平均ビニル結合含量が32%、重量平均分子量が21.5万、分子量分布が1.95、水添率93%であった。また、Va−Vbが8.5、0.03Vcが3で関係式(1)を満足していた。
【0090】
<ポリマー3>
ポリマー2に、該ポリマーに結合する官能基1当量あたり2.1モルの無水マレイン酸を配合して、30mmφ二軸押出機で210℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練し、ポリマー2の二次変性水添重合体(ポリマー3)を得た。
D.重合体組成物の調製及び発泡体の成形
表1に示した各配合成分をバンバリーミキサーで混練し、その後ロールミルで更に混練した後、厚さ12mmのシートに成形した。その後、そのシートを160℃に加熱して14分間発泡させた。
次に、圧縮成形機を用いてその発泡シートに150kg/cm2の圧力をかけて約10分間で室温から150℃に徐々に加熱し、150℃で3分間、150kg/cm2の圧力を保持した後、約10分かけて室温まで冷却した。その後圧力を開放して重合体組成物の発泡成形品を得た。
【0091】
E.発泡体の特性
1)硬さ
JIS K6253に従い、デュロメータタイプAで10秒後の値を測定した。
2)引張特性
JIS K6251に準拠して測定した。
3)引裂き強度
JIS K6252に準拠して測定した。
4)耐圧縮永久歪
ASTM−D395のB法に準拠して、50%の圧縮歪下、50℃、6時間放置の条件で測定した。
5)発泡体の比重
発泡体を直方体状に切り取り、その縦、横、厚さ、及び重量を測定して算出した。
【0092】
【実施例1、および2】
水添重合体としてポリマー1を用い、表1に示した配合組成及び表2に示したポリオレフィン系樹脂と水添重合体の配合重量比からなる重合体組成物を作製し、その発泡体を上記の方法で成形した。得られた発泡体の特性を表2に示した。得られた重合体組成物は、発泡特性も良好で耐圧縮永久歪性に優れた発泡体であり、履物底材として好適であった。
【0093】
【実施例3、および4】
ポリマー1の代わりにポリマー2、ポリマー3をそれぞれ用いて実施例1と同様にして重合体組成物を作製し、発泡体に成形した。得られた発泡体は、実施例1と同様に発泡特性も良好で耐圧縮永久歪性に優れた発泡体であり、履物底材として好適であった。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【発明の効果】
本発明は、耐圧縮永久歪性、伸び特性が良好で、低温特性と剛性のバランスが良い履物用材料を提供する。本発明の履物用材料は、かかる特性を生かして、とりわけ発泡体として履物底材に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で使用した、ポリマ−1のテトラヒドロフラン不溶物のGPC/FTIR測定で得られる分子量と重合体中の1000個当たりの炭素原子中に含まれる末端メチル炭素原子の個数を示す図である。
Claims (12)
- 共役ジエン化合物の重合体及び共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の共役ジエン系重合体の水添物であって、
1)ビニル芳香族化合物の含有量が50重量%以下、2)平均ビニル結合含量が20重量%以上50重量%未満、3)該共役ジエン系重合体に結合されている共役ジエン化合物部分の二重結合残基の80%以上が水添され、4)重量平均分子量が6万〜60万、および5)メルトフロ−比が6以上であり、かつ、
GPC/FTIR測定で得られる分子量と末端メチル炭素原子の個数の関係が,次の式を満たす水添重合体である成分(a)5〜85重量部と、
Va−Vb≧0.03Vc
(Vaはピ−クトップ分子量の2倍の分子量における重合体中の1000個当たりの炭素原子中に含まれる末端メチル炭素原子の個数、Vbはピ−クトップ分子量の1/2の分子量における同個数、Vcはピ−クトップ分子量における同個数である。)
ポリオレフィン系樹脂及びゴム状重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の成分(b)95〜15重量部から構成される履物材料用重合体組成物。 - 成分(a)の水添重合体の分子量分布が、1.2〜6の水添重合体である請求項1に記載の履物材料用重合体組成物。
- 成分(a)の水添重合体に、官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している下記式(3)〜式(4)のいずれかで表される変性水添重合体である成分(a−1)5〜85重量部とポリオレフィン系樹脂及びゴム状重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の成分(b)95〜15重量部から構成される請求項1に記載の履物用材料重合体組成物。
[C]は、下記式のいずれかで表される結合単位。
- 成分(a−1)と成分(b)の合計量100重量部に対して、架橋剤である成分(c)を 0.01〜20重量部配合してなる重合体組成物からなる請求項3項に記載の履物用材料重合体組成物。
- 成分(c)の架橋剤が、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を含有する架橋剤である請求項4に記載の履物用材料重合体組成物。
- 成分(a−1)の変性水添重合体が、分子量分布が1.2〜6の変性水添重合体である請求項3〜5のいずれかに記載の履物用材料重合体組成物。
- 請求項1の成分(a)である水添重合体が、該水添重合体に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合されている変性水添重合体に、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を含有する架橋剤を反応させてなる二次変性水添重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の履物用材料重合体組成物。
- 請求項3の成分(a−1)である変性水添重合体が、該変性水添重合体に、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を含有する架橋剤を反応させてなる二次変性水添重合体である請求項4〜7のいずれかに記載の履物用材料重合体組成物。
- 成分(b)のポリオレフィン系樹脂が、エチレン−酢酸ビニル系共重合体である請求項1〜8のいずれかに記載の履物用材料重合体組成物。
- 成分(b)のポリオレフィン系樹脂が、エチレン−アクリル酸エステル系共重合体又はエチレン−メタクリル酸エステル系共重合体である請求項1〜8のいずれかに記載の履物用材料重合体組成物。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の発泡体履物用材料重合体組成物。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の重合体組成物からなる履物底材。
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