JP4289538B2 - 画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像データから作成されたプリントデータによって駆動制御されるプリントヘッドを用いてその表面層にインクが付与された被記録媒体を加熱装置によって加熱することにより表面層に付与されたインクを被記録媒体の定着層に昇華定着させる画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクのような印刷用液体を被記録媒体を付与して印刷物を得る印刷技術として、例えば、熱転写シートにインクジェットプリンタ等でまず一次画像を形成し、次いで画像が形成された熱転写シートを被記録シートに重ね合わせて加圧・加熱を施すことにより、熱転写シートに形成されていた画像(インク)を熱転写シートのインク定着層に熱昇華転写して熱転写シートに二次画像を形成して、最終的な印刷物を得る熱転写技術が、特開平10−16188号公報などからよく知られている。
また、特開平10−230589号公報には、被記録シートのインク定着層にあらかじめラミネート材層を設けておき、このラミネート材層上からインクジェットプリンタ等で画像形成を行い、その後加熱ローラを通じて加圧・加熱することによりラミネート材層を透明化するとともにインク色素を定着層に定着させて印刷物を得る熱定着印刷技術が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような画像形成装置では、一般的に副走査方向に搬送される被記録媒体に昇華性インクを吐出することによってその上にインク滴(ここではこれを昇華前プリントドットと呼ぶ)からなる画像を形成した後、加熱定着工程においてさらにそのインク滴を加熱によって昇華させて被記録媒体の定着層に昇華インク色素(ここではこれを昇華後プリントドットと呼ぶ)を定着させることで、鮮やかに発色した昇華後プリントドットからなる最終的な画像を得る。
【0004】
このため加熱昇華定着工程におけるインクの定着層への昇華定着特性は最終製品としての印刷物の品質に大きな影響を与えることから非常に重要である。この昇華定着特性は、使用するインクや被記録媒体の種類及び加熱昇華方法の違いなどに依存することになるが、本出願人の知見による典型的な昇華定着特性によれば、加熱昇華定着工程における加熱装置による被記録媒体に対する加熱が、加熱時間に関して又は加熱温度に関してあるいはその両方に関して不足している場合、最終画像(昇華後プリントドット)において高いシャープネスが得られるがその濃度が低くなる傾向があり、過剰である場合高い濃度が得られるがそのシャープネスが低くなる傾向がある。これは、インク滴の不十分な昇華をもたらす加熱不足が濃度は不十分であるが拡散のないシャープな昇華後プリントドットを作り出し、インク滴の十分すぎる昇華をもたらす加熱過剰が大きな拡散のためぼやけているが高い濃度、つまり広い濃度ダイナミックレンジをもつ昇華後プリントドットを作り出すためと思われる。
【0005】
このようなシャープネスと濃度ダイナミックレンジに関する相反する特性のため、まず折衷案として両者の特性が中間となる加熱(加熱時間又は加熱温度あるいはその両方に関して)を被記録媒体に与えるように加熱装置を制御することが提案されるが、プリントすべき画像によっては、シャープネスと濃度ダイナミックレンジの内どちらかだけを特に優先するということが少なくなく、そのような折衷案は必ずしも多くのプリントユーザを満足させる結果にはならない。上記実状に鑑み、本発明の課題は、冒頭部で述べたタイプの画像形成装置を出発技術として、その加熱昇華定着過程において生じる被記録媒体に対する加熱挙動に依存したシャープネスと濃度ダイナミックレンジの相反する特性の問題を解決する画像形成装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、画像データから作成されたプリントデータによって駆動制御されるプリントヘッドを用いてその表面層にインクが付与された被記録媒体を加熱装置によって加熱することにより表面層に付与されたインクを被記録媒体の定着層に昇華定着させる画像形成装置において、本発明では、前記被記録媒体に対する加熱挙動を制御してインクの表面層から定着層への昇華定着特性を決定する加熱制御部が備えられ、この加熱制御部は、前記被記録媒体に対する加熱を不足させることで濃度ダイナミックレンジよりシャープネスを優先させた高シャープネス制御モードと、前記被記録媒体に対する加熱を過剰にすることでシャープネスより濃度ダイナミックレンジを優先させた広濃度ダイナミックレンジ制御モードを有し、前記加熱装置での加熱によって作成したテストプリントのテストチャートの濃度値から、加熱温度や加熱時間とシャープネスゾーンやダイナミックレンジゾーンとの間の関係テーブルを作成する加熱制御モード別制御データ管理部を備え、前記加熱制御部は、前記加熱制御モード別制御データ管理部が出力する目標加熱温度又は目標加熱時間あるいはその両方を受け取り温度制御を行う加熱制御モード設定部を備えている。
【0007】
この構成では、濃度ダイナミックレンジ特性を犠牲にしても高いシャープネスを必要とする場合には加熱制御部は高シャープネス制御モードで動作し、加熱装置による被記録媒体に対する加熱挙動をその昇華前プリントドットが昇華し過ぎないものとするとともに、シャープネス特性を犠牲にしても広い濃度ダイナミックレンジを必要とする場合には加熱制御部は広濃度ダイナミックレンジ制御モードで動作し、加熱装置による被記録媒体に対する加熱挙動をその昇華前プリントドットが十二分に昇華するものとする。これにより、プリントすべき画像によってあるいはプリントユーザの希望によって決定されるシャープネスと濃度ダイナミックレンジの内の一方を優先したプリントが加熱制御部の制御モードを切り換えるだけで可能となる。
【0008】
シャープネス特性と濃度ダイナミックレンジ特性のいずれかの優先度合いは、プリントすべき画像によってあるいはプリントユーザの希望によって明確に決定されるわけではなく、かなり微妙な感覚によることが多い。このため、前記高シャープネス制御モードと広濃度ダイナミックレンジ制御モードとの間の加熱挙動を段階的又は無段階的に調整可能であることはこの画像形成装置の汎用性を高めることになる。その際、この画像形成装置がプロショップのようなところで用いられる場合、オペレータの熟練度を重視して、無段階的に調整可能に構成されることが好都合であるし、逆に一般的なプリントショップにおいて熟練度の低いオペレータによって扱われるような場合、段階的に調整可能に構成されることが好都合である。もちろん、段階的調整と無段階的調整の両方が可能となるような構成を採用してもよい。
【0009】
前述した加熱装置による被記録媒体に対する加熱挙動制御の具体例の一つとして、加熱装置における被記録媒体に対する加熱温度の調整が挙げられる。加熱装置の加熱温度を高く設定することで、昇華前プリントドットの昇華を強く促進し、非常に高い濃度の昇華後プリントドットが得られるようになるし、加熱装置の加熱温度を低く設定することで、昇華前プリントドットの昇華を抑制し、濃度は十分に上がらなくとも拡散のないシャープな昇華後プリントドットが得られる。
【0010】
加熱装置による被記録媒体に対する加熱挙動制御の具体例の他の一つとして、加熱装置における被記録媒体に対する加熱時間の調整が挙げられる。例えば、加熱装置内での被記録媒体の滞在時間を調整することにより被記録媒体に対する加熱時間の調整が可能となる。加熱装置内での被記録媒体の滞在時間を長く設定することで、昇華前プリントドットの昇華を強く促進し、非常に高い濃度の昇華後プリントドットが得られるようになるし、加熱装置内での被記録媒体の滞在時間を短く設定することで、昇華前プリントドットの昇華を抑制し、濃度は十分に上がらなくとも拡散のないシャープな昇華後プリントドットが得られる。
【0011】
もちろん、加熱装置による被記録媒体に対する加熱挙動制御の具体例として、加熱装置における被記録媒体に対する加熱温度と加熱時間の両者を調整することも除外できない。この両者の組み合わせで、昇華の度合いをより広い範囲で調整できるからである。この加熱温度と加熱時間の両者を調整するということは被記録媒体に与える熱エネルギを調整するということであり、この観点から、例えば加熱流ファンなどを使用した加熱装置の場合、加熱流ファンによる加熱流風量の調整も本発明の加熱挙動制御の1つとして挙げることができる。
本発明によるその他の特徴及び利点は、以下図面を用いた実施形態の説明により明らかになるだろう。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず、本発明による画像形成装置で扱われる被記録媒体1の一例を図1を用いて説明する。この被記録媒体1はPET(ポリエチレンテレフタレート)等のフィルムシートからなる基材10の表面にウレタン樹脂等でインクつまりインク色素のための定着層11を形成し、さらにその上にインクを浸透させることができる浸透層としての表面層12を形成している。基材10の表面がインク色素を定着することができる性質を持っている場合、定着層11を省略することができる。この被記録媒体1の表面層12にインクジェットプリンタ等でインク滴を付与することで昇華前プリントドットによるプリント画像が形成された後、適正な温度に加熱されると表面層12に付与されていたインク滴(昇華前プリントドット)は昇華を始め、そのインク滴が表面層12を浸透して定着層11にインク色素が昇華後プリントドットとして昇華定着される。従って、表面層12を引き剥がすことにより、定着層11に昇華後プリントドットによって形成されたプリント画像をもつ非常に光沢感のある鮮やかな画像記録済みシートが最終印刷物100として得られる。つまり、この加熱昇華過程においては、昇華前プリントドットとして表面層12に付与されたインク色素が表面層12を浸透して定着層11に達し、そこで昇華後プリントドットとしてプリント画像を形成する。なお、この被記録媒体1では最終的に表面層12を定着層11又は基材10から引き剥がす必要があるのでそれらの間に易剥離剤を与えておくと好都合である。
【0013】
このような被記録媒体1を用いて最終印刷物100を作製する画像形成装置の一例を図2と図3を用いて説明する。この画像形成装置は、図2に示すようにプリントステーションPSとオペレートステーションOSとから構成されている。
【0014】
プリントステーションPSは、インクジェットプリントユニットIUとこのインクジェットプリントユニットIUの排紙側に装着された加熱定着ユニットHUとこれらをカバーするハウジングによって構成されている。
【0015】
図3から明らかなように、プリントステーションPSでは、ここでは図示されていないロールシートカートリッジに格納されているロール状に巻かれた被記録媒体1を巻き戻しながらプリント面であるその表面層12がプリントヘッドとしてのインクジェットヘッド2のインク吐出口側に来るように被記録媒体1がシート搬送機構6によって搬送される。インクジェットヘッド2は被記録媒体1の搬送方向に対して横断方向につまり主走査方向にヘッド送り機構3によって往復移動可能に支持されており、被記録媒体1の表面層12に吐出口からインクを吐出しながらのインクジェットヘッド2の主走査方向の移動毎に被記録媒体1が副走査方向に搬送されていくことによって順次プリント画像が形成されていく。カラープリント画像を形成するために異なる主要色を吐出可能な複数の吐出口モジュールがインクジェットヘッド2に用意されている。例えば、写真画質のカラープリント画像が要求される場合には、通常、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどのインクに加え同色の濃淡インクが用いられる。インクジェットヘッド2としては汎用的なインクジェットプリンタに搭載されているものが流用されるので、ここではこれ以上の説明を省略する。
【0016】
インクジェットヘッド2から吐出されたインク滴2aによって表面層12にプリント画像を形成された被記録媒体1はインクジェットプリントユニットIUを通り抜けて、インクの定着層11への加熱定着が行われる加熱定着領域を作り出している加熱定着ユニットHUに送られる。この加熱定着ユニットHUには加熱装置4が備えられている。
【0017】
加熱定着領域を通過した被記録媒体1では、そのプリント画像を形成しているインク(色素)が定着層11に定着しているので、表面層12を剥離することによって、きれいに発色した画像を有する最終印刷物100が得られる。なお、被記録媒体1の一連の搬送はここではローラ方式で示されている搬送機構6によって行われているが、ベルト方式など他の搬送方式を採用してもよい。
【0018】
もともと長尺シートである被記録媒体1は、そこに形成されるプリント画像のサイズに合わせてカットする必要があるので、シートカッター手段5が備えられている。この実施形態では、シートカッター手段5は、インクジェットヘッド2に取り付けられた第1シートカッター5Aと加熱装置4の搬送方向で後方側の領域に設けられた第2シートカッター5Bから構成されている。第1シートカッター5Aはその刃51がインクジェットヘッド2に取り付けられていることからヘッド送り機構3の駆動により被記録媒体1をカットすることができるのに対して、第2シートカッター5Bではその刃52を往復移動させるための専用の送り機構53が備えられている。
【0019】
従って、連続的に複数のプリント画像を形成する場合には被記録媒体1をその全体長さ分の後端で第1シートカッター5Aでカットし、それぞれのプリント画像単位のカットは第2シートカッター5Bで行い、単一のプリント画像を形成する場合には第1シートカッター5Aで被記録媒体1をプリント画像サイズにカットして加熱装置4に送り込む。
【0020】
前記加熱装置4は断熱材製の壁体40で形成された加熱空間の内部に、この加熱空間内の空気温度の上昇を図る電気ヒータ41と加熱空間の内の温度を計測する温度センサ42と電気ヒータ41によって加熱された加熱空気を送るファン43と、ファン43を駆動するファンモータ44と、電気ヒータ41からの熱が被記録媒体に直接照射される現象を阻止する遮蔽板45を備えている。この加熱空間の内部において被記録媒体1を所定温度に加熱された空気に接触させることで、被記録媒体1に対して非接触加熱を行い、この加熱によるインクの昇華定着を実現している。被記録媒体1の加熱空間内通過のために、搬送機構6は加熱空間を挟む位置に駆動ローラと従動ローラとでなる圧着形の搬送ローラユニットを設けている。
【0021】
尚、この実施形態では、加熱装置4を、加熱空気によって被記録媒体1を加熱するように構成したが、これに代えて、加熱空間の内部に赤外線ヒータ(遠赤外線ヒータを含む)を配置して、赤外線の輻射熱ビームによって被記録媒体1の加熱を行うように構成することも可能である。
【0022】
本発明による画像形成装置で使用される昇華性インクは、前述したような被記録媒体1に付与された後行われる加熱昇華において、標準的には、80℃程度で昇華が始まり、180℃の加熱温度で2分程度の加熱時間により昇華定着状態が得られるが、加熱温度が低かったり加熱時間が短かった場合、インク(昇華前プリントドット)の昇華が十分でなく、定着層11に達するインク色素が少ないことから、定着層11に形成される昇華後プリントドットの形状は拡散のないシャープなものとなる代わりに、その濃度が不十分となる傾向となり、逆に、加熱温度が高かったり加熱時間が長かった場合、インク(昇華前プリントドット)の昇華が過剰となり、定着層11に達するインク色素が多いことから、定着層11に形成される昇華後プリントドットの濃度は高くなる代わりに、昇華時の拡散が大きくにじみの発生を伴ってその境界線はぼやける傾向となる。前者の場合のように、昇華後プリントドットがにじみのないシャープなものであると結果的に昇華後プリントドットによって形成される画像も高いシャープネスを持つことになるし、後者のように昇華後プリントドットが高い濃度を示すものであると結果的に昇華後プリントドットによって形成される画像も最低濃度(いわゆる白色)から最高濃度までの幅が広くなり、広い濃度ダイナミックレンジを持つことになる。
【0023】
上述したように、昇華前プリントドットによって表面層12に画像を形成された被記録媒体1に対する加熱装置4による加熱挙動、つまり加熱温度や加熱時間に依存して最終的に得られる昇華後プリントドットによって定着層11に形成される画像のシャープネスと濃度ダイナミックレンジが変化するが、その概略的な様子が図4と図5に模式的に示されている。このようなグラフあるいはテーブルは、加熱装置4の加熱挙動と最終画像におけるシャープネスや濃度ダイナミックレンジとの関係は装置毎に微妙に異なるので、装置毎に行われる所定のテストパターンを有するテストプリントを通じて作成されることが望ましい。異なる加熱温度や加熱時間でもって行われる複数回のテストプリントから図4と図5に示されるグラフ(関数)ないしはテーブルが作成されると、濃度ダイナミックレンジを犠牲にして高いシャープネスを得る高シャープネスゾーンやシャープネスを犠牲にして広い濃度ダイナミックレンジを得る広濃度ダイナミックレンジゾーンを決定することができる。高シャープネスゾーンと広濃度ダイナミックレンジゾーンとの間には中間ゾーンが存在することになる。
【0024】
加熱装置4を高シャープネス制御モードで駆動したい場合には高シャープネスゾーンに属する加熱温度と加熱時間を用い、加熱装置4を広濃度ダイナミックレンジ制御モードで駆動したい場合には広濃度ダイナミックレンジゾーンに属する加熱温度と加熱時間を用いるとよい。また、加熱時間が一定である場合には、加熱温度を調整するだけで、高シャープネス制御モードから広濃度ダイナミックレンジ制御モードの状態を作り出すことができるし、加熱温度が一定である場合には、加熱時間を調整するだけで、高シャープネス制御モードから広濃度ダイナミックレンジ制御モードの状態を作り出すことができる。
【0025】
ただし、インクジェットヘッド2が主走査方向に往復移動するとともに被記録媒体1が副走査方向に搬送されることにより被記録媒体1にインク付与され、その被記録媒体1がインクジェットプリントユニットIUと加熱定着ユニットHUの間を連続的に搬送されるように構成された画像形成装置では、プリントサイズ、正確には主走査方向のプリント長さによって搬送速度が変動し、結果的に加熱装置4を通過する時間、つまり加熱時間が変動することになるので、このようなプリントサイズによる加熱時間の変動を考慮して、高シャープネス制御モードや広濃度ダイナミックレンジ制御モードのために加熱温度を設定する必要がある。
【0026】
インクジェットヘッド2、ヘッド送り機構3、加熱装置4、シートカッター手段5、そして搬送機構6などは、コントローラ7によって統括制御されている。搬送機構6によって搬送される被記録媒体1の位置を把握するため搬送機構6によって形成される搬送ラインの所定位置にシート検出センサ60が設置されており、その検出信号もコントローラ7に送られる。さらに、ロールシートカートリッジもしくは被記録媒体1を巻き取り支持している軸体に付与されているIDコードを検出する被記録媒体種別検出センサ61もその検出信号をコントローラ7に送るべく設置されており、コントローラ7はこの検出信号から装填されている被記録媒体1の仕様、例えば搬送方向に直角な方向の長さつまり被記録媒体幅を認識することができる。
【0027】
この画像形成装置のコントローラ7は、オペレートステーションOS側の第1コントローラ7AとプリントステーションPS側の第2コントローラ7Bとから構成され、お互いに通信ケーブルによってデータ交換可能に接続されており、1つのコントローラのごとく機能することができる。
【0028】
図2に示されているように、オペレートステーションOSには、第1コントローラ7Aとしても機能する汎用のコンピュータ80、モニター81、キーボード82、マウス83、及び現像済みの銀塩式のフィルムFの撮影画像をカラー画像データに光電変換するフィルムスキャナ85、さらにはデータ保持メディア(CDやCD−R、あるいは、MO、さらにコンパクトフラッシュやスマートメディア等の半導体でなる媒体だけではなくデータ通信回線からなる通信メディアも含む)からカラー画像データを取り出す画像取得ユニット84(ここではコンピュータ80に内蔵されている)、前述したように加熱装置4を高シャープネス制御モード又は広濃度ダイナミックレンジ制御モードあるいは必要の場合それらの中間的な制御モードで駆動させることを指令する加熱制御モード切換器86、さらに図4や図5で示したような加熱温度と加熱時間が最終的に得られる画像のシャープネスや濃度ダイナミックレンジに与える度合いを適切なテストチャートを有するテストプリントを通じて測定してそれらの関係を取得する際に用いられる濃度測定器としてのフラットベットスキャナ87が備えられている。この画像形成装置では、フィルムスキャナー85や画像取得ユニット84を通じて第1コントローラ7Aに転送されたカラー画像データは、種々のデータ処理が行われた後、プリントデータとして第2コントローラ7Bに送られ、プリントステーションPSにおいて被記録媒体1にプリント画像が形成され、その被記録媒体1は加熱制御モード切換器86によって設定入力された制御モードにより駆動する加熱装置4によって加熱昇華処理を受ける。
【0029】
コントローラ7は、CPU、ROM、RAM、I/Oインタフェース回路などからなるマイクロコンピュータシステムを中核部材とした第1コントローラ7Aと第2コントローラ7Bから構成されており、図6に示されるように、第1コントローラ7Aでは、I/Oインタフェース回路を介して、画像データを送り込む画像取得ユニット84、フィルムスキャナ85、フラットベットスキャナ87、加熱制御モード切換器86などの周辺機器が接続されており、第2コントローラ7Bでは、I/Oインタフェース回路を介して、インクジェットヘッド2、ヘッド送り機構3、加熱装置4、搬送機構6などのプリントステーションPSに組み込まれている周辺機器が接続されている。第1コントローラ7Aと第2コントローラ7Bはそれぞれの通信モジュールを介してデータ伝送が可能であり、例えば、第1コントローラ7Aにおいて画像処理及び補正処理が施された画像データが最終的プリントデータに変換され、通信モジュール74a、74bを介して第2コントローラ7Bに伝送された後は被記録媒体1への昇華性インクの付与などのために利用される。
【0030】
コントローラ7による各機能はハードウエア又はソフトウエアあるいはその両方により作り出されるが、ここでは特に本発明に関連する機能要素だけをとり挙げるならば、オペレータによるキーボード82やマウス83の操作を通じて指定されたプリント画像サイズを設定するプリントサイズ設定部70、画像データ入力部9から転送された画像データに対してプリントサイズ設定部70で設定されたプリント画像サイズに基づき解像度変更やトリミングなどを施すとともに画像補正設定部72aとの相互作用により色補正やヘッドシェーディング補正などの画像補正処理を施す画像処理部72、画像処理された画像データから誤差拡散等の2値化の手法を用いてインクジェットヘッド2のためのプリントデータを作り出すプリントデータ生成部73、フラットベットスキャナ87から送られてきたテストプリントのテストチャートの濃度値から図5で示したような加熱温度や加熱時間と高シャープネスゾーンや広濃度ダイナミックレンジゾーンとの間の関係テーブルをマウス操作やキーボード操作を通じてのオペレータ操作の助けを借りて作成する加熱制御モード別制御データ管理部90、転送されてきたプリントデータに基づいてインクジェットヘッド2を駆動して吐出口からインク滴を放出するプリント制御部75、インクジェットヘッド2の駆動と同時にインクジェットヘッド2を主走査方向に移動させるヘッド送り制御部76、インクジェットヘッド2の主走査方向の1回の移動毎に被記録媒体1を間欠送りするとともに被記録媒体1を加熱装置4に送り込む搬送制御部77、加熱装置4の電気ヒータ41やファンモータ44を駆動制御する加熱制御部78、被記録媒体種別検出センサ61によって読み取られたIDコードから装填されている被記録媒体1の幅などの情報を取得する被記録媒体種別決定部79などが代表的なものである。なお、加熱制御部78には、加熱装置4における加熱挙動、例えば高シャープネス制御モードや広濃度ダイナミックレンジ制御モードを指令する加熱制御モード切換器86から指令されたモードに基づき加熱制御モード別制御データ管理部90が出力する目標加熱温度又は目標加熱時間あるいはその両方を受け取る加熱制御モード設定部78aが含まれており、例えば温度センサ42からの検出信号が目標加熱温度に一致するように電気ヒータ41等を制御する。加熱時間の制御は、加熱空間の長さが十分な場合、電気ヒータ41のON/OFF制御で可能であるが、加熱空間の長さが不十分な場合搬送制御部77による被記録媒体搬送速度の制御が必要となる。
【0031】
次に、フィルムスキャナ85を用いてカラーネガフィルムFから読み取られた撮影画像のカラー画像データを用いて被記録媒体1に撮影画像が形成される様子を図7の模式流れ図を用いて説明する。
【0032】
フィルムスキャナ85でカラーネガフィルムFの読取が行われると、フィルムスキャナ85のCCDの出力信号が増幅及びAD変換され12ビットのRGBカラー画像データとして画像データ入力部71に転送される(#01)。画像データ入力部71でカラー画像データはガンマ補正等のスキャナデータとしての典型的な補正を施された後、画像処理部72に送られる(#02)。これと前後して、オペレータがプリント注文伝票をみながらキーボード82やマウス83を操作し、プリント画像サイズを指定入力し、そのプリント画像サイズをプリントサイズ設定部70に設定する(#03)。
【0033】
画像処理部72は、まず送られてきた12ビットのカラー画像データに対して8ビットデータに変換して後、プリントサイズ設定部70から受け取った(#04)プリント画像サイズに基づいて仕上がりプリントサイズに対応した解像度変換や必要に応じてのトリミングを行う。さらに、デジタル写真プリントにおいて通常行われている色補正などの処理が、自動的に、あるいはオペレータによるキーボード82やマウス83の操作を通じて(#05)マニュアル的に行われる。これらの補正処理時には、各補正処理に見合った補正テーブルやフィルタが画像補正設定部72aによって画像処理部72にロードされる(#06)。
【0034】
画像処理部72においては、全ての画像処理を受けたカラー画像データはプリントデータ生成部73に送られる(#7)。なお、RGBカラー画像データは画像処理部72において他の画像処理の前後の適当な段階でCMYKカラー画像データに変換されてるので、プリントデータ生成部73へ送られるカラー画像データはCMYKカラー画像データである。
【0035】
プリントデータ生成部73は受け取った8ビットのCMYKカラー画像データからインクジェットヘッド2による面積階調による階調形成を行うための2値化処理を行って2値CMYKプリントデータを作りだし、プリント制御部75に転送する(#08)。
【0036】
プリント制御部75は転送されてきた2値CMYKプリントデータからインクジェットヘッド2のための駆動パルス信号を生成して(#09)、それによりインクジェットヘッド2の駆動素子を制御して被記録媒体1にインク滴を吹き付ける。同時にヘッド送り制御部75がヘッド送り機構3を駆動制御するとともに、搬送制御機構77が搬送機構を駆動制御することで、被記録媒体1に撮影画像が形成されていく(#10)。
【0037】
加熱装置4の加熱挙動制御に関しては、まず加熱制御モード切換器86から与えられた加熱制御モード(高シャープネス制御モード、広濃度ダイナミック制御モード)に基づいて(#21)、さらに場合によってはプリントサイズ設定部70からの送られてきたプリント画像サイズ情報をも考慮して(#22)加熱制御モード制御データ管理部90は、選択された加熱制御モードに適合する加熱温度を、必要の場合加熱時間をも加熱制御部78の加熱制御モード設定部78aに送る(#23)。加熱制御モード設定部78aが加熱制御モード制御データ管理部90から送られてきた加熱温度を目標温度として設定すると、加熱装置4の加熱挙動を制御する加熱制御部78は温度センサ42からの信号と比較しながら加熱装置4の加熱空間を温度調整する(#24)。その際、被記録媒体1の搬送速度の調整、つまり加熱時間の調整が必要な場合搬送制御部77に搬送速度の変更を指令する。
【0038】
表面層12に撮影画像を形成された被記録媒体1は、適切に温度調整された加熱空間を通過することにより、所望の加熱モードでもって加熱され、その際生じる加熱昇華により撮影画像は定着層11に転写(定着)される。これにより、最終的には所望通りのシャープネスあるいは濃度ダイナミックレンジを有する最終印刷物100が得られる。
【0039】
加熱装置4における加熱挙動の制御モード、つまり高シャープネス制御モードや広濃度ダイナミックレンジ制御モード、さらにそれらの中間の制御モードを指令する加熱制御モード切換器86は、これらのモード間を無段階で設定するタイプとして構成してもよいし、これらのモード間を段階的に設定するタイプとして構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による画像形成装置で扱われる被記録媒体の一例を示す断面図
【図2】本発明による画像形成装置の一つの実施形態を示す外観図
【図3】画像形成装置のプリントステーションの構成を示す断面模式図
【図4】加熱温度や加熱時間に依存する昇華後プリントドットによって形成される画像のシャープネスと濃度ダイナミックレンジの関係及びシャープネスと濃度ダイナミックレンジの関係を説明する模式的なグラフ
【図5】加熱温度や加熱時間に依存する昇華後プリントドットによって形成される画像のシャープネスと濃度ダイナミックレンジの関係及びシャープネスと濃度ダイナミックレンジの関係を説明する別なグラフ
【図6】コントローラの機能を説明する機能ブロック図
【図7】入力された画像データに基づいて駆動されたインクジェットヘッドによって形成された画像を有する被記録媒体を加熱することにより最終的な印刷物を作り出す様子を示す模式流れ図
【符号の説明】
1 被記録媒体
2 インクジェットヘッド
3 ヘッド送り機構
4 加熱装置
6 搬送機構
7 コントローラ
7A 第1コントローラ
7B 第2コントローラ
42 温度センサ
72 画像処理部
73 プリントデータ生成部
75 プリント制御部
78 加熱制御部
78a 加熱制御モード設定部
86 加熱制御モード切換器
90 加熱制御モード別制御データ管理部
Claims (5)
- 画像データから作成されたプリントデータによって駆動制御されるプリントヘッドを用いてその表面層にインクが付与された被記録媒体を加熱装置によって加熱することにより表面層に付与されたインクを被記録媒体の定着層に昇華定着させる画像形成装置において、
前記被記録媒体に対する加熱挙動を制御してインクの表面層から定着層への昇華定着特性を決定する加熱制御部が備えられ、この加熱制御部は、前記被記録媒体に対する加熱を不足させることで濃度ダイナミックレンジよりシャープネスを優先させた高シャープネス制御モードと、前記被記録媒体に対する加熱を過剰にすることでシャープネスより濃度ダイナミックレンジを優先させた広濃度ダイナミックレンジ制御モードを有し、
前記加熱装置での加熱によって作成したテストプリントのテストチャートの濃度値から、加熱温度や加熱時間とシャープネスゾーンやダイナミックレンジゾーンとの間の関係テーブルを作成する加熱制御モード別制御データ管理部を備え、
前記加熱制御部は、前記加熱制御モード別制御データ管理部が出力する目標加熱温度又は目標加熱時間あるいはその両方を受け取り温度制御を行う加熱制御モード設定部を備えていることを特徴とする画像形成装置。 - 前記高シャープネス制御モードと広濃度ダイナミックレンジ制御モードとの間の加熱挙動が段階的又は無段階的に調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
- 前記加熱挙動の制御は前記被記録媒体に対する加熱温度の調整によって行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
- 前記加熱挙動の制御は前記被記録媒体に対する加熱時間の調整によって行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
- 前記加熱挙動の制御は前記被記録媒体に対する加熱温度と加熱時間の調整によって行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
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