JP4284899B2 - 熱収縮性フィルム、これを用いたラベル、及び容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器等の被覆、結束、外装などに用いられる包装材として好適な熱収縮性フィルム、特に加熱保存容器への優れた適用性を有し、ボトルに被せる装着工程などの特有の工程を経る場合に適した腰の強さを有する熱収縮性フィルム、これを用いたラベルおよび容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱収縮性フィルムは、収縮性という機能を有するため、接着剤や留め具等の固定手段を用いず、フィルム自体の収縮力と賦形性によって対象物に積層一体化させることができる。従って、積層や被覆による対象物の機械的保護ばかりでなく、結束、封緘などの機能も有する。さらに熱収縮フィルム自体に特殊な機能を有する場合、積層により、対象物に後付にてその特殊機能を付加することができる。この性質は、対象物の保存や流通時における保護と、表示性および意匠性の付与が主目的である包装分野に於いて有効に用いられている。例えば、ガラス製およびプラスチック製のボトルを含む瓶や、缶などの各種容器、及びパイプ、棒、木材、各種棒状体などの長尺物、または枚様体等の、被覆用、結束用、外装用又は封緘用として利用される。具体的には、表示、保護、結束、および機能化による商品価値の向上などを目的として、瓶のキャップ部、肩部、及び胴部の一部又は全体を被覆する用途に用いられる。さらに、箱、瓶、板、棒、ノートなどの被包装物を複数個ずつ集積して包装する用途や、被包装物にフィルムを密着させて該フィルムにより包装する(スキンパッケージ)用途などにも用いられる。このときフィルムにあらかじめ表示、意匠目的の造形が付与されている場合、ラベルという商品となる。
【0003】
熱収縮性フィルムの素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、脂肪族系ポリオレフィン、およびその誘導体、塩酸ゴムなどが用いられている。通常、これらの素材からなるフィルムをチューブ状に成形し、例えば瓶にかぶせたり、パイプなどを集積した後、熱収縮させることにより包装や結束が行なわれる。しかし、従来の熱収縮性フィルムは、いずれも耐熱性が乏しく、高温でのボイル処理やレトルト処理に耐えないため、食品、衛生用品、医薬品用途に適用する場合、高温での殺菌処理ができないという欠点がある。例えばレトルト処理を行うと、従来のフィルムは処理中に破損しやすいという問題点があった。
【0004】
また、熱収縮性フィルムの有用性から、従来、熱収縮性フィルムではないフィルム、ラベルが使用されてきた分野にも熱収縮性フィルムが用いられるようになっている。特に飲料容器のラベルは、紙や熱収縮性フィルムではないフィルムからなる貼り付けラベルから熱収縮性ラベルに置き換わってきたものが多い。このような場合、容器及び内容物の保護のために特殊な機能が必要とされ、特に、収縮装着後に経験する高温環境が多様化しているため、熱収縮性フィルムの耐熱性の向上が要求されている。例えば、従来はガラス瓶や金属缶入り飲料に対してのみ行われていた加熱保存が、プラスチックボトルの耐熱性改良により、プラスチックボトル入り飲料に対しても可能となった。そのため街中や駅の売店にてホットウォーマー等の保温ケース中に、缶飲料と共に熱収縮性フィルムのラベルを装着したボトルが置かれるようになってきた。このような場合、従来の熱収縮性フィルムは、装着された容器の加熱保存中や保存後に、軟化、脆化等によるラベル欠陥を生じ易い。特にホットウォーマーは、飲料の温度を約55℃にするために、容器の載置されるホットプレート部は約50℃〜75℃にコントロールされているが、プレート内で部分的、一時的に120℃を超える場合もある。更に、ホットウォーマー内で容器が転倒した場合などは、ホットプレートの表面に熱収縮性フィルムが圧接され、過酷な温度、圧力条件により、フィルムの欠陥が拡大することもあり、また、このような欠陥はラベルの最外層表面において著しい。
【0005】
さらに、PET製ボトル,PEN製ボトル、ナイロン複合ボトル、バリアー層蒸着ボトルなどの収容物充填ラインやこれに連なる熱収縮性フィルムによる包装ラインは高速化の傾向があり、用いられる熱収縮性フィルムに対しても高速包装過程を経ても優れた収縮仕上がり外観性が要求されるようになっている。なかでも、チューブ状のラベル形状として、該ラベルを円筒形に開き、ボトルに被せる装着工程においては、いわゆる腰の弱いフィルムの場合、ボトルに接触したときの衝撃によりラベルが腰折れ状態で装着されたり、最悪の場合、ラベルが装着用の器具とボトルとの間で圧縮されて挫屈状態となり、装着不能となる場合があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ボトルに被せる装着工程などの特有の工程を経る場合に適した腰の強さを有し、熱収縮率が十分に大きく、熱収縮時にフィルムに収縮むらが発生せず、美麗な外観をもち、さらに収縮後に高温条件下にさらされてもその外観を安定して保持し、とくにホットウォーマー等の保温装置中での加熱保存に最適な熱収縮性フィルム、これを用いたラベル、及び容器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ポリスチレン系樹脂から主としてなり、2層以上の多層構造とし、主収縮方向において、温度110℃の環境下、51.18gfの張力を1分間負荷させる処理後の、前記処理前の長さに対する長さ変化率が15%以上66%以下であり、折り径175mm、主収縮軸方向と直行する方向の長さ120mmのラベル形状とし、該ラベルを底面が四角形の筒体とした場合の筒体の上下方向の圧縮強度が6100mN以上であり、主収縮方向において、100℃から10℃毎に150℃までの各温度で、1分間加熱する処理後の、前記処理理前の長さに対するそれぞれの長さ変化率の最大値である最大熱収縮率が61%以上77%以下であることを特徴とする熱収縮性フィルムである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の熱収縮性フィルムを構成する素材は、後述の長さ変化率で表される熱収縮特性を現出可能であれば特に限定されないが、ポリエステル系樹脂および/またはポリスチレン系樹脂であるのが、フィルム形成時に所望の熱収縮特性を得やすく、好ましい。
【0009】
上記ポリエステル系樹脂を構成するポリエステルは特に限定されないが、ジカルボン酸成分とジオール成分とを構成成分とするポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルが挙げられる。なお、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを構成するポリエステル系樹脂は2種以上のポリエステルを含有していても良い。上記のポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。上記のポリエステルを構成するジオール成分としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0010】
上記構成成分以外の単量体成分としては、例えば、ビスフェノールSのエチレンオキサイド誘導体、セバチン酸等が挙げられる。
【0011】
本発明の熱収縮性フィルムを構成する素材として、ポリエステル系樹脂を用いる場合、2種以上のポリエステルの混合及びその配合比、2種以上のポリエステル成分の共重合体の使用およびその成分量比、上記構成成分以外の単量体成分を含有するポリエステル共重合体の使用およびその成分量比、さらには後述のような延伸条件等の製造条件の調整、添加剤の配合などにより、所望の熱収縮特性を得ることができる。このようなポリエステル系樹脂を用いることにより、ポリエステルの優れた耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性に加え、熱収縮特性、接着性の向上が得られる。
【0012】
上記ポリエステルは、いずれも従来の方法により重合して製造され得る。例えば、ジカルボン酸とジオールとを直接反応させる直接エステル化法、ジカルボン酸ジメチルエステルとジオールとを反応させるエステル交換法などを用いて、ポリエステルが得られる。重合は、回分式および連続式のいずれの方法で行われてもよい。
【0013】
本発明の熱収縮性フィルムを構成する素材として、ポリスチレン系樹脂を用いるときは、2種以上のポリスチレン系樹脂の混合及びその配合比、2種以上のポリスチレン成分の共重合体の使用およびその成分量比、スチレン以外の単量体成分を含有するポリスチレン共重合体の使用およびその成分量比、さらには後述のような延伸条件等の製造条件の調整、可塑化剤、ポリスチレン重合時あるいは重合体への相溶化剤等の添加剤の配合などにより、所望の熱収縮特性を得ることができる。特に、アイソタクティック構造を有するポリスチレン系樹脂や、シンジオタクティック構造を有するポリスチレン系樹脂を含有することが好ましい。さらに好ましくは、ポリスチレン系樹脂として、シンジオタクティック構造を有するポリスチレン系樹脂を用いるのがよい。アイソタクティック構造を有するポリスチレン系樹脂や、シンジオタクティック構造を有するポリスチレン系樹脂を用いることにより、機械的強度、加熱保存時などの耐熱性が向上する。このようなポリスチレン系樹脂を用いることにより、ポリスチレンの、密度が低く、リサイクル工程での分離に有利である点に加え、耐熱性、特に加熱保存時などの耐熱性に優れ、フィルム形成後に経時的に収縮することによる印刷ピッチの変化が低減し、ラベルとして高精度の印刷を行うこともできる。更に印刷インクに含まれる溶剤に対する耐久性も向上し、印刷性に優れる。
【0014】
上記シンジオタクティック構造を有するポリスチレン系樹脂は、側鎖であるフェニル基および/または置換フェニル基を核磁気共鳴法により定量するタクテイシテイにおいて、ダイアッド(構成単位が二個)で好ましくは75%以上、さらに好ましくは85%以上であるのがよく、また、ペンタッド(構成単位が5個)で好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上であるのがよい。
【0015】
本発明に使用するポリスチレン系樹脂を構成するポリスチレン成分としては、ポリスチレン、ポリ(p−、m−、またはo−メチルスチレン)、ポリ(2,4−、2,5−、3,4−、または3,5−ジメチルスチレン)、ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン)等のポリ(アルキルスチレン)、ポリ(p−、m−、またはo−クロロスチレン)、ポリ(p−、m−、またはo−ブロモスチレン)、ポリ(p−、m−、またはo−フルオロスチレン)、ポリ(o−メチル−p−フルオロスチレン)等のポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(p−、m−、またはo−クロロメチルスチレン)等のポリ(ハロゲン化置換アルキルスチレン)、ポリ(p−、m−、またはo−メトキシスチレン)、ポリ(p−、m−、またはo−エトキシスチレン)等のポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(p−、m−、またはo−カルボキシメチルスチレン)等のポリ(カルボキシアルキルスチレン)ポリ(p−ビニルベンジルプロピルエーテル)等のポリ(アルキルエーテルスチレン)、ポリ(p−トリメチルシリルスチレン)等のポリ(アルキルシリルスチレン)、さらにはポリ(ビニルベンジルジメトキシホスファイド)等が挙げられる。
【0016】
本発明の熱収縮性フィルムを構成する素材として、ポリスチレン系樹脂を用いる場合、フィルムの少なくとも1層を構成するポリスチレン系樹脂が、熱収縮開始温度を低くすることや、耐衝撃性の向上を目的として、可塑化剤、相溶化剤等を、ポリスチレン重合時あるいは重合体へ配合するのが好ましい。
【0017】
本発明の熱収縮性フィルムを構成する素材として、ポリスチレン系樹脂を用いる場合、特に、フィルムの少なくとも1層を構成するポリスチレン系樹脂に対し、熱可塑性樹脂および/またはゴム成分を添加することが好ましい。上記熱可塑性樹脂としてはアタクチック構造を有するポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂をはじめ、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン4、ポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。上記ゴム成分としては、スチレン系化合物をその構成成分として含有するゴム状共重合体が好ましく、スチレンとゴム成分から、それぞれ一種以上を選んで共重合したランダム、ブロックまたはグラフト共重合体が挙げられる。このようなゴム状共重合体としては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、さらにこれらのブタジエン部分の一部あるいは全部を水素化したゴム、アクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体ゴム、アクリロニトリル−アルキルアクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体ゴム、メタクリル酸メチル−アルキルアクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体ゴム等が挙げられる。上記の、スチレン系化合物をその構成成分として含有するゴム状共重合体は、スチレン単位を有するため、主としてシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂に対する分散性が良好であり、その結果、ポリスチレン系樹脂に対する物性改良効果が大きい。特に、相溶性調整剤としては、上記のスチレン系化合物をその構成成分として含有するゴム状共重合体が好適である。
【0018】
ゴム成分としては、他に、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ポリエーテル−エステルゴム、ポリエステル−エステルゴム等が使用できる。
【0019】
本発明の熱収縮性フィルムを構成する素材として、ポリスチレン系樹脂を用いる場合、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量は好ましくは10,000以上、さらに好ましくは50,000以上である。重量平均分子量が10,000未満のものは、フィルムの強伸度特性や耐熱性が低下しやすい。重量平均分子量の上限は特に限定されないが、1,500,000以上となると、延伸張力の増大に伴う破断の発生等が生じることがあるため、1,500,000未満であることが好ましい。
【0020】
本発明の熱収縮性フィルムには、静電密着性、易滑性、延伸性、加工適性、耐衝撃性等を向上させるためや、粗面化、不透明化、空洞化、軽量化等を目的として、他の樹脂、可塑化剤、相溶性調整剤、無機粒子、有機粒子、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤等を適宜配合できる。
【0021】
本発明の熱収縮性フィルムを構成する素材として、上記のようなポリエステル系樹脂および/またはポリスチレン系樹脂を用いることにより、各種の熱収縮特性に優れ、ラベル形成時などのインクとの接着性などの印刷性に優れ、フィルムの印刷面にピンホールなどが発生することもない。さらに、廃棄性に優れ、焼却された場合の環境への影響も少ない。
【0022】
本発明の熱収縮性フィルムは、2層以上の多層構成であるのが好ましい。多層構成とすることにより、均等な収縮性、収縮後の高温条件下での耐熱性、腰の強さが向上する。特に、本発明の熱収縮性フィルムは、それぞれポリエステル系樹脂からなる2層以上の多層構成、あるいはそれぞれポリスチレン系樹脂からなる2層以上の多層構成であるのが好ましく、それぞれポリスチレン系樹脂からなる2層以上の多層構成である場合は、少なくとも1層がシンジオタクティック構造を有するポリスチレン系樹脂を含有するのが好ましい。
【0023】
2層以上の多層構成とする場合、積層方法は特に限定されず、フィルム形成と同時に積層しても、別個にフィルム形成した後積層しても良い。別個にフィルム形成した後積層する場合、フィルムの延伸前あるいは延伸後に、フィルムに溶解した樹脂を塗布するコーティング法、複数のフィルムやシートを接着するドライラミネート法、サーマルラミネート法、フィルムに押出法により積層する押出ラミネート法等が挙げられ、フィルム形成と同時に積層する場合、複数層を溶融共押出する方法(CCF法)等が挙げられる。各層が互いに物性が近い樹脂からなる場合、フィルムの延伸前にCCF法により積層する方法が好ましい。
【0024】
2層以上の多層構成とする場合、各層の層構成や厚み比率は特に限定されないが、3層構成以上であって各表面層が同組成の樹脂からなる場合、中心層は表面層より厚みが大きいのが好ましい。
【0025】
上記のような本発明の熱収縮性フィルムを構成する素材は、従来一般に使用される押し出し法、カレンダー法等の方法によりフィルム状に形成される。フィルムの形状は、例えば平面状またはチューブ状であり、特に限定されない。延伸方法も、従来一般に使用されるロール延伸法、長間隙延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法等の方法を使用できる。上記方法のいずれにおいても、延伸は逐次2軸延伸、同時2軸延伸、1軸延伸、及びこれらの組合わせのいずれによって行ってもよい。上記2軸延伸では、縦横方向の延伸は同時に行われてもよいが、どちらか一方を先に行う逐次2軸延伸が効果的であり、その縦横の順序はどちらが先でもよい。本発明の熱収縮性フィルムを構成する素材としてポリエステル系樹脂および/またはポリスチレン系樹脂を使用する場合の好ましい条件について以下に示す。延伸倍率は1.0倍から6.0倍であるのが好ましく、所定の一方向の倍率と該方向と直行する方向の倍率が同じであっても異なっていてもよい。延伸工程においては、フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上(Tg+50)℃以下の温度で予熱を行うのが好ましい。延伸後の熱固定では、延伸を行った後に、30℃〜150℃の加熱ゾーンを約1秒〜30秒通すことが好ましい。また、フィルムの延伸後であって、熱固定を行う前、もしくは行った後に、適度な度合で弛緩処理を行ってもよい。さらに、上記延伸後、伸張あるいは緊張状態に保ってフィルムにストレスをかけながら冷却する工程、あるいは、該処理に引き続いて緊張状態を解除した後にさらに冷却工程を付加してもよい。
【0026】
本発明の熱収縮性フィルムの全体厚さは特に限定されないが、6〜250μmの範囲であるのが好ましい。
【0027】
本発明の熱収縮性フィルムは、主収縮方向において、温度110℃の環境下、51.18gfの張力を1分間負荷させる処理後の、前記処理前の長さに対する長さ変化率が0%以上90%以下である必要がある。好ましくは、前記長さ変化率が0%以上70%以下であるのがよく、さらに好ましくは0%以上50%以下であるのがよい。
【0028】
熱収縮性フィルムが最も過酷な条件に晒されるのは、ラベル等として熱収縮装着させた後の圧縮状態において、ホットウォーマー等により加熱保存される場合である。従って、加熱保存時に受けやすい温度110℃の環境下、収縮挙動と同時に起こっている圧縮力によるクリープの度合いを、圧縮の代わりに張力によるクリープの度合いを限定することにより、加熱保存時の耐熱性を向上させることができる。クリープの度合いは長さ変化率によって表される。上記長さ変化率が上記範囲にあるものは最も過酷な加熱保存状態等における耐熱性に優れる。前記長さ変化率が小さい程クリープを起こしにくい。
【0029】
なお、本発明の熱収縮性フィルムはラベルとした場合に、ボトルに装着して熱収縮させた後ボトルから剥離した状態で、ボトルの最大径部分に相対した部分が、主収縮方向において、温度110℃の環境下、51.18gfの張力を1分間負荷させる処理後の、前記処理前の長さに対する長さ変化率が0%以上90%以下であるのが好ましい。ラベルを形成してボトルに装着し、熱収縮させた場合、ボトルの最大径部分に相対する部分は収縮がほとんどないため、主収縮方向において、温度110℃の環境下、51.18gfの張力を1分間負荷させる処理後の、前記処理前の長さに対する長さ変化率が0%以上90%以下であれば、耐熱性は問題ないが、上記熱収縮後の長さ変化率が0%以上90%以下であることにより、より過酷な加熱保存状態等における耐熱性に優れる。
【0030】
上記長さ変化率を上記範囲方法とする方法としては、例えば、熱収縮性フィルムを構成する樹脂の種類や配合比、特にガラス転移温度の高い原料樹脂の選択やフィルムの層構成の選択、フィルムの結晶性を高くすること、フィルムを構成する樹脂の相溶性を高くすること、フィルムの製造条件の調整、特に延伸条件を制御して収縮応力を多く残存させ、硬さに寄与させる、延伸工程における温度経過時間及びフィルムの配向状態の制御により、フィルムの結晶化度や配向結晶を制御する等の方法などが挙げられる。特に、2層以上の多層構造とすることにより、フィルム最外層の腰を強くする方法が好ましい。
【0031】
本発明の熱収縮性フィルムは、折り径175mm、主収縮軸方向と直行する方向の長さ120mmのラベル形状とし、該ラベルを底面が四角形の筒体とした場合の筒体の上下方向の圧縮強度が5000mN以上である必要がある。圧縮強度が5000mN未満であると、チューブ状のラベル形状として、該ラベルを円筒形に開き、ボトルに被せる装着工程において、ラベルの腰折れや装着用の器具とボトルとの間の挫屈状態により、装着不能となる。上記圧縮強度が6000mN以上であると、軽度の腰折れなどの変形によるラベルの位置ずれも防止できて好ましい。
【0032】
上記圧縮強度を上記範囲方法とする方法としては、例えば、フィルム厚みを大きくする方法も挙げられるが、コスト性の点からはフィルム厚みは65μm以下であるのが好ましく、さらに好ましくは55μm以下、透明性を考慮すると45μm以下であるのが特に好ましい。従って、上記圧縮強度を上記範囲方法とするためには、原料樹脂を固くする方法、例えば、熱収縮性フィルムを構成する樹脂の種類や配合比の調整や、各特性を有する樹脂からなる2層以上の多層構造とする方法が挙げられる。ポリスチレン系樹脂を使用する場合、立体規則性の高い樹脂を使用する方法もあるが、低温収縮性や高収縮性を維持するためには、樹脂の種類や配合比、特にSBRなどのゴム成分の種類や配合比を調整する方法および多層構成とする方法が好ましい。
【0033】
本発明の熱収縮性フィルムは、主収縮方向において、100℃から10℃毎に150℃までの各温度で、1分間加熱する処理後の、前記処理前の長さに対する長さ変化率の最大値である最大熱収縮率が40%以上であるのが好ましい。最大熱収縮率が40%未満であると、一般に使用されるボトルの胴部分のラベル(胴ラベル)として使用する場合に収縮が不足し、ボトルに密着させにくくなる。さらに好ましくは、最大熱収縮率が50%以上であるのがよい。最大熱収縮率が50%以上であれば、高い収縮性の必要なPETボトルのラベルとしても収縮不足が生じない。さらに好ましくは最大熱収縮率が60%以上、特に好ましくは70%以上であるのがよい。最大熱収縮率が上記範囲であれば、複雑な形状の容器に対するフルラベルとしても収縮不足が生じない。
【0034】
最大熱収縮率を上記範囲方法とする方法としては、例えば、熱収縮性フィルムを構成する樹脂の種類や配合比、特に熱収縮性フィルムを構成する素材の相溶状態の調整や、フィルムの製造条件の調整、特に高延伸倍率化、熱固定の低減等が挙げられる。
【0035】
本発明の熱収縮性フィルムは、容器等の被覆、結束、外装などに用いられる包装材として好適に用いられ、本発明の熱収縮性フィルムを用いることにより美麗な外観を得ることができる。特に、本発明の熱収縮性フィルムにより構成されるラベルは、被覆性に優れ、容器の包装用として好適である。また本発明の熱収縮性フィルムは、加熱保存容器への優れた適用性を有し、本発明の熱収縮性フィルムにより構成されるラベルを装着した容器等は、収縮後に高温条件下にさらされても、ラベルがその外観を安定して保持し、ホットウォーマーのような加熱保存装置内での過酷な条件下においても溶融、軟化、脆化、破断等の欠陥を生じない。また、ボトルに被せる装着工程などの特有の工程を経る場合に適した腰の強さを有し、高速包装過程を経ても優れた収縮仕上がり外観性が得られる。従って、本発明の熱収縮性フィルムにより構成されるラベルは、耐熱プラスチックボトル、ガラス瓶、金属容器、陶磁器等の種々の容器のラベルとして使用することができる。
【0036】
以下に、試験例、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
試験例
1.試験方法
圧縮強度
実施例1〜7、比較例1、参考例1の熱収縮性フィルムを、折り径175mm、主収縮軸方向と直行する方向(非収縮方向)の長さ120mmのラベル形状とし、該ラベルを折り返した底面が四角形となる筒体を5点作成した。各筒体の上下方向の圧縮強度(単位:mN)を、ストログラフ(東洋精機(株)製、型式:V10−C)を用い、圧縮モード、クロスヘッドスピード200mm/分で測定し、最大値をフィルムの圧縮強度とした。
【0038】
(2)加熱、張力負荷処理後の長さ変化率
実施例1〜7、比較例1、参考例1の熱収縮性フィルムを、主収縮方向を長手方向として幅5mm、長さ100mmに裁断し、中程に長手方向に50mm間隔で標線を記して試験片とした。該試験片の一方の端に、50gの分銅を、重量1.18gのクリップを用いて取り付け、他方の端を適当な冶具にて固定してフィルムおよび分銅が垂下するようにした。これを110℃に設定した熱風循環式恒温器((株)鵬製作所製、FX−1:ダンパー閉、クイックヒーターON)中に、試験片が恒温器の中央に位置するように静置し、1分間加熱した。恒温器中から、試験片を取り出して冷却した後、標線間の距離(A:単位mm)を測定し、加熱、張力負荷処理(温度110℃の環境下、51.18gfの張力を1分間負荷)後の処理前の長さに対する長さ変化率D(単位%)を下記の式1を用いて算出した。なお、「主収縮方向」は、フィルムの縦方向及び横方向について、下記の最大熱収縮率を測定し、該最大熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。実施例及び比較例のフィルムにおいては横方向が主収縮方向であった。
D(%)={(A−50)/50 }×100 式1
【0039】
(3)最大熱収縮率
実施例1〜7、比較例1、参考例1の熱収縮性フィルムを、主収縮方向を長手方向として、幅15mmとなるように裁断し、長手方向に200mm間隔で標線を記して試験片とした。100℃から10℃毎に150℃までの各温度に設定した熱風循環式恒温器((株)鵬製作所製、FX−1:ダンパー閉、クイックヒーターON)中に、試験片が恒温器の中央に位置するように静置し、それぞれ1分間加熱した。恒温器中から、試験片を取り出して冷却した後、標線間の距離(B:単位mm)を測定し、処理後の処理前の長さに対する長さ変化率D’(単位%)を下記の式2を用いて算出した。この長さ変化率D’の内、最大値を最大熱収縮率とした。
D’(%)={(200−B)/200 }×100 式2
【0040】
(4)収縮斑
実施例1〜7、比較例1、参考例1の熱収縮性フィルムにメタリック裏印刷を施し、後述の角形耐熱PETボトル用ラベルとなるサイズ(主収縮方向が円形の断面となり、主収縮方向と直行する方向の長さが16cm)の円筒形にチューブ化してラベルを形成した。該ラベルを350ccの角形耐熱PETボトルに首部まで被せ、シュリンクトンネルを通過させた。シュリンクトンネルにおける条件は、第1ゾーンが100℃で滞留時間4.5秒、第2ゾーンが140℃で滞留時間5秒とした。シュリンクトンネル通過後、熱収縮したラベルの収縮むらによる印刷の濃淡を目視により、下記の基準に従って評価した。
◎;むら、しわ、ゆるみ等の欠点が認められず、非常に良好
○;むら、しわ、ゆるみ等の欠点がほとんど認められず、良好
△;むら、しわ、ゆるみ等の欠点が明確に認められ、良好でない
×;むら、しわ、ゆるみ等の欠点が多く、不良
【0041】
(5)加熱保存耐性
上記(4)の収縮斑評価に使用した、実施例1〜7、比較例1、参考例1の熱収縮性フィルムからなるラベルを装着したボトル(加熱後)にできるだけ空気を除去して水を充たし、キャップにより密封した。該ボトルを110℃に加熱した実験室用ホットプレート上に横向きに載置して72時間放置した後、ラベルの状態を目視により、下記の基準に従って評価した。
○;ラベルに欠陥があまり認められず、良好
△;ラベルに欠陥が明確に認められ、良好でない
×;ラベルに欠陥が多く、不良
【0042】
2.試験結果
上記試験(1)〜(5)の結果を表2に示す。
【0043】
【実施例】
[原料樹脂]
表1に示す配合の各樹脂組成物(組成物A〜G)をそれぞれ予め配合して溶融混練し、押し出してペレタイズし、チップとした後、乾燥した。
【0044】
実施例1
表1における組成物Fと組成物Gとを、それぞれ30mmφの単軸押出機に投入し、組成物Fが中心層(b層)、組成物Gが両表面層(a層,c層)となる3層を構成し、厚み比率がa層:b層:c層=1:2:1となるように、マルチマニフォールドダイより260℃で溶融押出し、40℃の冷却ロールにエアーナイフ法により密着させて冷却固化し、無定形シートを得た。該無定形シートを、110℃に予熱し、延伸温度90℃で横方向に倍率5.0倍に延伸した後、60℃で15秒熱固定処理を行って、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。該フィルムの片面の全面に半調印刷により画像を形成し、実施例とした。
【0045】
実施例2
表1における組成物Fと組成物Bとを、それぞれ30mmφの単軸押出機に投入し、組成物Fが中心層(b層)、組成物Bが両表面層(a層,c層)となる3層を構成するようにした以外は、実施例1と同様にして、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0046】
実施例3
表1における組成物Bと組成物Aとを、それぞれ30mmφの単軸押出機に投入し、組成物Bが中心層(b層)、組成物Aが両表面層(a層,c層)となる3層を構成するようにした以外は、実施例1と同様にして、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0047】
実施例4
表1における組成物Cと組成物Aとを、それぞれ30mmφの単軸押出機に投入し、組成物Cが中心層(b層)、組成物Aが両表面層(a層,c層)となる3層を構成するようにした以外は、実施例1と同様にして、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0048】
実施例5
表1における組成物Dと組成物Aとを、それぞれ30mmφの単軸押出機に投入し、組成物Dが中心層(b層)、組成物Aが両表面層(a層,c層)となる3層を構成するようにした以外は、実施例1と同様にして、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0049】
実施例6
表1における組成物Eと組成物Aとを、それぞれ30mmφの単軸押出機に投入し、組成物Eが中心層(b層)、組成物Aが両表面層(a層,c層)となる3層を構成するようにした以外は、実施例1と同様にして、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0050】
実施例7
ポリエチレンテレフタレート(PET)を8wt%、ポリエチレンナフタレート(PEN)を2wt%、構成成分としてビスフェノールSのエチレンオキサイド誘導体を30mol%共重合してなるポリエチレンテレフタレートを60wt%、構成成分としてセバチン酸を30mol%共重合してなるポリエチレンテレフタレートを30wt%配合したポリエステル組成物(Pes1)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)を20wt%、構成成分としてネオペンチルグリコールを30mol%共重合してなるポリエチレンテレフタレートを60wt%、ポリブチレンテレフタレートを20wt%配合したポリエステル組成物(Pes2)とを用い、Pes1が両表面層(a層、c層)、Pes2が中心層(b層)となる3層を構成し、厚み比率がa層:b層:c層=1:2:1となるようにフィードブロック型の溶融共押出機によってCCF積層して、30℃の冷却ロールに静電印加法により密着させて冷却固化し、無定形シートを得た。該無定形シートを、90℃に予熱し、延伸温度80℃で横方向に倍率5.0倍に延伸した後、80℃で5秒熱固定処理を行って、厚さ40μmの熱収縮性フィルムを得た。該フィルムの片面の全面に半調印刷により画像を形成し、実施例とした。
【0051】
比較例1
表1における組成物Fのみを、それぞれ30mmφの単軸押出機に投入し、中心層(b層)、両表面層(a層,c層)の3層を構成するようにした以外は、実施例1と同様にして、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0052】
参考例1
表1における組成物Gのみを、それぞれ30mmφの単軸押出機に投入し、中心層(b層)、両表面層(a層,c層)の3層を構成するようにした以外は、実施例1と同様にして、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0053】
【発明の効果】
本発明の熱収縮性フィルムは、ボトルに被せる装着工程などの特有の工程を経る場合に適した腰の強さを有し、実用上充分に熱収縮率が大きく、熱収縮時に、収縮工程での温度のゆらぎや不均一にかかわりなく均等に収縮して、収縮むらが発生せず、美麗な外観を呈する。さらに収縮後に高温条件下にさらされても、たるみやしわが発生せず、その外観を安定して保持し、ラベルとして容器に装着して使用した場合、ホットウォーマー等により加熱保存しても欠陥が生じず、好適に使用できる。
【表1】
ゴム成分(G)
G1:スチレン(25wt%)−ブタジエンブロック共重合体
【表2】
Claims (4)
- ポリスチレン系樹脂から主としてなり、2層以上の多層構造とし、主収縮方向において、温度110℃の環境下、51.18gfの張力を1分間負荷させる処理後の、前記処理前の長さに対する長さ変化率が15%以上66%以下であり、折り径175mm、主収縮軸方向と直行する方向の長さ120mmのラベル形状とし、該ラベルを底面が四角形の筒体とした場合の筒体の上下方向の圧縮強度が6100mN以上であり、主収縮方向において、100℃から10℃毎に150℃までの各温度で、1分間加熱する処理後の、前記処理前の長さに対するそれぞれの長さ変化率の最大値である最大熱収縮率が61%以上77%以下であることを特徴とする熱収縮性フィルム。
- それぞれポリスチレン系樹脂からなる2層以上の多層構成であり、少なくとも1層がシンジオタクティック構造を有するポリスチレン系樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリスチレン系樹脂フィルム。
- 請求項1乃至2のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムから構成されることを特徴とするラベル。
- 請求項3記載のラベルを装着してなる容器。
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