JP4271164B2 - 自動車の前部車体構造 - Google Patents

Description

本発明は、フロントバンパーの、車体左右方向に延びる部分が車体前後方向に延びる部分に向かって屈曲する左右の屈曲部の下部に、車体に接続された足払いプレートを設けた自動車の前部車体構造に関する。

自動車のフロントバンパーの裏面の略全長に亘って突出部材（足払いプレート）を設け、フロントバンパーが歩行者に衝突したときに、フロントバンパーを座屈させることなく歩行者の膝から下の部分を払って歩行者をボンネット上に掬いあげることで衝突の衝撃を軽減するものが、下記特許文献１により公知である。
特開２００１−８８６３４号公報

ところで、上記従来のものは、フロントバンパーが他の自動車等に軽衝突した場合に、突出部材（足払いプレート）を確実に座屈させる構成を備えていないので、突出部材（足払いプレート）を支持する車体が変形するなどして被害が大きくなる可能性があり、しかも突出部材（足払いプレート）がフロントバンパーの略全長に亘って配置されているので、その重量やコストが嵩む問題があった。

本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、足払いプレートを小型軽量化するとともに、その足払い機能を確保しながら他の自動車等との衝突時に車体の損傷をできるだけ軽減することを目的とする。

上記目的を達成するために、請求項１に記載された発明によれば、フロントバンパーの、車体左右方向に延びる部分が車体前後方向に延びる部分に向かって屈曲する左右の屈曲部の下部に、車体に接続された足払いプレートを設けた自動車の前部車体構造であって、前記足払いプレートは、軽衝突時の衝突エネルギーが所定値を超えた場合に変形して車体の変形を防止する、車体左右方向に延びる襞状のエネルギー吸収部と、そのエネルギー吸収部の前方において車体前後方向に延びる複数本の補強リブとを有しており、エネルギー吸収部の前端部が、前上方に向かって傾斜する傾斜壁となっていて、その傾斜壁の先端に、前記補強リブの後端が連なっていることを特徴とする自動車の前部車体構造が提案される。

請求項１の構成によれば、フロントバンパーの、車体左右方向に延びる部分が車体前後方向に延びる部分に向かって屈曲する左右の屈曲部の下部に設けられた足払いプレートが、軽衝突時にフロントバンパーに入力する衝突エネルギーが所定値を超えた場合に変形して車体の変形を防止するエネルギー吸収部を有するので、フロントバンパーが歩行者に衝突したときには衝突エネルギーが所定値以下となって足払いプレートは変形せず、歩行者の膝よりも下の部分を払って歩行者をボンネット上に掬いあげ、衝突の衝撃を軽減することができる。また自動車が他の自動車等と軽衝突して衝突エネルギーが所定値を超えるとエネルギー吸収部において足払いプレートが変形するため、そこで衝突エネルギーを吸収して車体の損傷を回避することができる。その際、足払いプレートの前部は補強リブにより剛性が高められているため、その後方のエネルギー吸収部が容易に変形して、足払いプレートは確実に折れ曲がる。それにより、衝突の衝撃でバルクヘッドやフロントサイドフレームが損傷するのを防止することができる。しかもフロントバンパーの左右の屈曲部にのみ足払いプレートを設けたので、フロントバンパーの全体に足払いプレートを設ける場合に比べて軽量で安価である。

以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。

図１〜図６は本発明の一実施例を示すもので、図１は自動車の車体前部の斜視図、図２は図１の２方向矢視図、図３は図２の３部拡大図、図４は図３の４−４線断面図、図５は足払いプレートの斜視図、図６は軽衝突時の作用説明図である。

図１〜図４に示すように、自動車の車体前部に配置されたバルクヘッド１１の中央にラジエータ１２が支持されており、バルクヘッド１１の前面に配置されたフロントバンパー１３の正面に形成された図示せぬ開口部から取り入れた外気がラジエータ１２に導かれる。バルクヘッド１１は、バルクヘッドアッパー１４、バルクヘッドロア１５および左右のバルクヘッドサイド１６，１６で枠状に構成されており、ラジエータ１２の下部両端はバルクヘッドロア１５に固定した２個のゴムブッシュ１７，１７に支持ピン１８，１８を嵌合させて支持され、ラジエータ１２の上部両端はバルクヘッドアッパー１４に図示せぬブラケットを介して固定される。

フロントバンパー１３の車体左右方向に延びる部分が車体前後方向に延びる部分に向かって屈曲する屈曲部１３ａ，１３ａが、左右のバルクヘッドサイド１６，１６に一対のブラケット２１，２１を介して支持される。またバルクヘッドロア１５の左右両端部であって、フロントバンパー１３の左右の屈曲部１３ａ，１３ａの下部に対応する位置に、左右一対の足払いプレート２６，２６が設けられる。

図５から明らかなように、足払いプレート２６は金属板をプレス成形したもので、バンパーフェイス１９の裏面に当接する前縁部２６ａがＪ字状に折り返されており、その前縁部２６ａの後方に車体前後方向に延びる複数本の補強リブ２６ｂ…が形成され、更に補強リブ２６ｂ…の後方には車体左右方向に延びる襞状のエネルギー吸収部２６ｃが形成される。エネルギー吸収部２６ｃの前端部は、前上方に向かって傾斜する傾斜壁となっていて、その傾斜壁の先端に、補強リブ２６ｂの後端が連なっている。エネルギー吸収部２６ｃの車幅方向内端にはボルト孔２６ｄが形成されており、このボルト孔２６ｄを貫通するボルト２７がバルクヘッドロア１５の前縁を貫通してナット２８に締結される。また足払いプレート２６の後縁の車幅方向外端寄りの位置にクリップ孔２６ｅが形成されており、このクリップ孔２６ｅを貫通するクリップ２９がバルクヘッドロア１５の前縁に固定される。

従って、自動車のフロントバンパー１３が歩行者に衝突したとき、フロントバンパー１３で歩行者の膝よりも下の部分を払って歩行者をボンネット上に掬いあげ、衝突の衝撃を軽減することができる。このとき、フロントバンパー１３が簡単に座屈してしまうと歩行者をうまくボンネット上に掬い上げることができなくなるが、本実施例ではフロントバンパー１３の下部とバルクヘッド１１との間に左右一対の足払いプレート２６，２６を設けたので、フロントバンパー１３の下部の剛性を適度に高めて歩行者の膝よりも下の部分を効果的に払うことができる。特に、補強リブ２６ｂ…によって足払いプレート２６の前後方向の剛性が高められる。

また自動車が他の自動車や固定物と軽衝突した場合、足払いプレート２６，２６の剛性が高過ぎると、その足払いプレート２６，２６が取り付けられたバルクヘッド１１や、そのバルクヘッド１１に連なるフロントサイドフレームが損傷して被害が拡大する問題があるが、本実施例によれば、フロントバンパー１３への軽衝突により各々の足払いプレート２６に前後方向に圧縮荷重が作用すると、足払いプレート２６の前部は補強リブ２６ｂ…により剛性が高められているため、その後方のエネルギー吸収部２６ｃが容易に変形して図６に示すように折れ曲がり、衝突の衝撃でバルクヘッド１１やフロントサイドフレームが損傷するのを防止することができる。その際、前述のようにエネルギー吸収部２６ｃの前端部が前上方に向かって傾斜する傾斜壁となっていて、その傾斜壁の先端に補強リブ２６ｂの後端が連なっているので、足払いプレート２６の前部は、図６に矢印で示すように上方に向けて回転する。

尚、フロントバンパー１３が歩行者に対して強く衝突した場合にも、足払いプレート２６，２６がエネルギー吸収部２６ｃ，２６ａにおいて折れ曲がることで、歩行者の脚部に対する衝撃を弱めることができる。

以上のように、フロントバンパー１３の裏面をバルクヘッド１１に支持する左右一対の足払いプレート２６，２６に前後方向の荷重によって容易に折れ曲がるエネルギー吸収部２６ｃ，２６ｃを設けたので、歩行者との衝突時には足払いプレート２６，２６でフロントバンパー１３の座屈を抑制して歩行者を確実にボンネット上に掬い上げ、また自動車等との軽衝突時にはエネルギー吸収部２６ｃ，２６ｃにおいて足払いプレート２６，２６を変形させてバルクヘッド１１の損傷を回避することができる。しかもフロントバンパー１３の左右の屈曲部１３ａ，１３ａにのみ足払いプレート２６，２６を設けたので、フロントバンパー１３の全体に足払いプレートを設ける場合に比べて軽量で安価である。

またフロントバンパー１３を装着する前の車体をオーバーヘッドコンベアで搬送する場合、足払いプレート２６が作業者の顔の高さになるが、その前縁部２６ａをＪ字状に折り返したことにより作業者の顔を傷つける虞がない。

以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。

例えば、足払いプレート２６をバルクヘッドロア１５に固定するクリップ２９を軽衝突時に破断する強度に設定しておけば、軽衝突時にクリップ２９が破断して足払いプレート２６がボルト２７まわりに回転することで、衝突の衝撃がバルクヘッド１１に一層伝わり難くすることができる。

自動車の車体前部の斜視図 図１の２方向矢視図 図２の３部拡大図 図３の４−４線断面図 足払いプレートの斜視図 軽衝突時の作用説明図

符号の説明

１３ フロントバンパー
１３ａ 屈曲部
２６ 足払いプレート
２６ｂ 補強リブ
２６ｃ エネルギー吸収部

Claims (1)

1. フロントバンパー（１３）の、車体左右方向に延びる部分が車体前後方向に延びる部分に向かって屈曲する左右の屈曲部（１３ａ）の下部に、車体に接続された足払いプレート（２６）を設けた自動車の前部車体構造であって、
   前記足払いプレート（２６）は、軽衝突時の衝突エネルギーが所定値を超えた場合に変形して車体の変形を防止する、車体左右方向に延びる襞状のエネルギー吸収部（２６ｃ）と、そのエネルギー吸収部（２６ｃ）の前方において車体前後方向に延びる複数本の補強リブ（２６ｂ）とを有しており、
   エネルギー吸収部（２６ｃ）の前端部が、前上方に向かって傾斜する傾斜壁となっていて、その傾斜壁の先端に、前記補強リブ（２６ｂ）の後端が連なっていることを特徴とする自動車の前部車体構造。

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